特許第5921808号(P5921808)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5921808
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月24日
(54)【発明の名称】接続材料及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01B 5/00 20060101AFI20160510BHJP
   B22F 1/00 20060101ALI20160510BHJP
   B22F 1/02 20060101ALI20160510BHJP
   C09J 9/02 20060101ALI20160510BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20160510BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20160510BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20160510BHJP
   H01L 21/52 20060101ALI20160510BHJP
   H01R 4/04 20060101ALI20160510BHJP
【FI】
   H01B5/00 F
   B22F1/00 A
   B22F1/02 B
   C09J9/02
   C09J11/04
   C09J201/00
   H01B1/22 A
   H01L21/52 E
   H01R4/04
【請求項の数】3
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2010-510144(P2010-510144)
(86)(22)【出願日】2009年4月28日
(86)【国際出願番号】JP2009058375
(87)【国際公開番号】WO2009133897
(87)【国際公開日】20091105
【審査請求日】2012年3月2日
【審判番号】不服2014-18096(P2014-18096/J1)
【審判請求日】2014年9月10日
(31)【優先権主張番号】特願2008-118418(P2008-118418)
(32)【優先日】2008年4月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100160897
【弁理士】
【氏名又は名称】古下 智也
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100139000
【弁理士】
【氏名又は名称】城戸 博兒
(74)【代理人】
【識別番号】100152191
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 正人
(72)【発明者】
【氏名】林 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】今野 馨
(72)【発明者】
【氏名】平 理子
【合議体】
【審判長】 河口 雅英
【審判官】 小野田 誠
【審判官】 加藤 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−206469(JP,A)
【文献】 特開2006−083377(JP,A)
【文献】 特開2007−184143(JP,A)
【文献】 特開平04−362104(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/026120(WO,A2)
【文献】 国際公開第2006/101127(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/52
H01B5/00
C09J9/02
C09J11/04
C09J201/00
H01R4/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線光電子分光法で測定される酸素の状態比率が10%以下である銀粒子を含有し、
前記銀粒子の平均粒子径は0.1μm以上50μm以下であり、
前記銀粒子は、そのバルク金属表面が表面保護材で覆われた銀粒子であり、
前記表面保護材は、末端官能基としてヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、又はジスルフィド基を有し、且つ主骨格が直鎖アルカン骨格を持つ化合物である、焼結接合用接続材料。
【請求項2】
揮発性成分又はバインダー成分をさらに含有してなる、請求項1に記載の接続材料。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の接続材料を介して、半導体素子と半導体素子搭載用支持部材が接着された構造を有する半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性及び接着性に優れた接続材料及びこれを用いた半導体装置に関する。さらに詳しくは、IC、LSI、発光ダイオード(LED)等の半導体素子をリードフレーム、セラミック配線板、ガラスエポキシ配線板、ポリイミド配線板等の基板に接着するのに好適な接続材料及びこれを用いた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置を製造する際、半導体素子とリードフレーム(支持部材)とを接着させる方法としては、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂等の樹脂に銀粉などの充てん剤を分散させてペースト状(例えば、銀ペースト)にし、これを接着剤として使用する方法がある。
【0003】
この方法によれば、ディスペンサーや印刷機、スタンピングマシン等を用いて、ペースト状接着剤をリードフレームのダイパッドに塗布した後、半導体素子をダイボンディングし、加熱硬化により接着させ半導体装置とする。
【0004】
この半導体装置はさらに、封止材によって外部が封止され半導体パッケージされた後、配線基板上にはんだ付けされて実装される。最近の実装は、高密度及び高効率が要求されるので、はんだ実装は半導体装置のリードフレームを基板に直接はんだ付けする表面実装法が主流である。
【0005】
この表面実装には、基板全体を赤外線などで加熱するリフローソルダリングが用いられ、パッケージは200℃以上の高温に加熱される。このとき、パッケージの内部、特に接着剤層中に水分が存在すると、この水分が気化してダイパッドと封止材の間に回り込み、パッケージにクラック(リフロークラック)が発生する。
【0006】
このリフロークラックは、半導体装置の信頼性を著しく低下させるため、深刻な問題・技術課題となっており、半導体素子と半導体支持部材との接着に多く用いられている接着剤には、高温時の接着強度を始めとした信頼性が求められてきた。
【0007】
さらに、近年、半導体素子の高速化、高集積化が進むに伴い、従来から求められてきた接着強度などの信頼性に加えて、半導体装置の動作安定性を確保するために高放熱特性が求められるようになった。即ち、上記技術課題を解決するためには、放熱部材(リードフレーム)と半導体素子とを接合する接着剤に用いられる高い接着強度と高熱伝導性を兼ね備える接続材料が求められていた。
【0008】
また、従来の金属粒子同士の接触による導電性接着剤よりも高い放熱性を達成する手段の一つとして、焼結性に優れる平均粒子径0.1μm以下の金属ナノ粒子を用いることや、200℃以上の高温で金属微粒子を焼結させるような導電性接着剤が提案されている。上記のような従来技術は、例えば、特許文献1〜5に記載されている。
【0009】
従来、接着剤の高熱伝導性を確保する方法として、熱伝導率の高い銀粒子を高充てんする方法が取られていた。また、低融点金属を用い、金属結合で熱伝導パスの形成及び被着体とメタライズさせることで、高熱伝導化及び室温での強度の確保を図った例もある。さらに、金属ナノ粒子を用いた導電性接着剤の検討も進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−073811号公報
【特許文献2】特開2006−302834号公報
【特許文献3】特開2005−093996号公報
【特許文献4】特開平11−066953号公報
【特許文献5】特開2006−083377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来の熱伝導率の高い銀粒子を高充てんする方法では、近年のパワーIC、LEDで必要とされる20W/m・K以上の熱伝導率を確保するためには、銀粒子充てん量が95重量部以上と非常に多量の銀粒子が必要である。
【0012】
銀粒子充てん量が多くなった場合、粘度が上昇することでディスペンス時に糸引きなどが発生し、作業性が確保できなくなることが問題となり、作業性確保のために溶剤を多量に添加した場合、ボイド発生又は残存溶媒による接着強度の低下が問題となる。
【0013】
また、低融点金属を用い、金属結合で熱伝導パスの形成及び被着体とメタライズさせる方法では、パワーIC又はLEDなどのPKGを基板に実装する場合、リフロー炉内で260℃にさらされるが、その熱履歴により、接合部が再溶融し接続信頼性が得られないという問題がある。
【0014】
さらに、金属ナノ粒子を用いた方法では、接合部の再溶融の問題を避けることができるものの、ナノサイズの金属粒子を作製するために多くのコストがかかってしまうことや、金属ナノ粒子の分散安定性を得るために表面保護材が多量に必要になり、金属ナノ粒子を焼結するために200℃以上の高温や加重をかけなくてはならないなどといったことが問題となっている。
【0015】
そこで本発明は、加重をかけることなく200℃以下の硬化温度で接合した場合であっても、高い熱伝導率を有し、且つ硬化体を260℃で加熱した場合であっても、十分な接着強度を有する接続材料及びこれを用いた半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記事情に鑑み本発明は、X線光電子分光法で測定される酸素の状態比率が15%未満である金属粒子を含有する接続材料を提供する。かかる接続材料によれば、加重をかけることなく200℃以下の硬化温度で接合した場合であっても、高い熱伝導率を有し、且つ硬化体を260℃で加熱した場合であっても、十分な接着強度を有する。
【0017】
上記金属粒子は、その表面の酸化膜を除去する処理及び表面保護材による表面処理を施した金属粒子であることが好ましい。
【0018】
上記金属粒子の平均粒子径は0.1μm以上50μm以下であることが好ましく、また200℃以下で焼結された金属粒子であることが好ましい。
【0019】
本発明の接続材料は、揮発性成分又はバインダー成分をさらに含有してなることが好ましい。
【0020】
また、本発明は、バインダー(A)、フィラー(B)及び添加剤(C)を含む接続材料であって、フィラー(B)と添加剤(C)とを、接続材料における重量比と同じ重量比で混合し、加熱成型した成型体の熱伝導率が40W/mK以上となる接続材料を提供する。かかる接続材料によれば、作業性に優れた粘度を有し、接着強度を維持しつつ、熱伝導率の向上を図ることが可能である。
【0021】
なお、上記「加熱成型」とは、所定の大きさに成型した後に180℃で1時間加熱処理することをいい、また上記「熱伝導率」とは、実施例に記載の方法により測定されるものをいう。
【0022】
上記添加剤(C)の含有量は、バインダー(A)100重量部に対して1〜100重量部であることが好ましい。
【0023】
さらに、本発明は、上記本発明の接続材料を介して、半導体素子と半導体素子搭載用支持部材が接着された構造を有する半導体装置を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、加重をかけることなく200℃以下の硬化温度で接合した場合であっても、高い熱伝導率を有し、且つ硬化体を260℃で加熱した場合であっても、十分な接着強度を有する接続材料及びこれを用いた半導体装置を提供することができる。このような接続材料は、導電性接続材料、導電性接着剤又はダイボンディング材として好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】表面の酸化膜が少ない金属粒子に、表面保護材による表面処理が施された金属粒子の模式図である。
図2図1で示した金属粒子の表面保護材が脱離し、金属粒子同士が焼結した状態を示す模式図である。
図3】表面の酸化膜が多い金属粒子に、表面保護材による表面処理が施された金属粒子の模式図である。
図4図3で示した金属粒子の表面保護材は脱離するものの、金属粒子同士が焼結できない状態を示す模式図である。
図5】酸化膜が多い金属粒子について、表面の酸化膜を除去する処理及び表面保護材による表面処理を施した金属粒子の模式図である。
図6図5で示した金属粒子の表面保護材が脱離し、金属粒子同士が焼結した状態を示す模式図である。
図7】本発明の半導体装置の一例を示す模式断面図である。
図8】本発明の半導体装置の他の例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の接続材料は、X線光電子分光法で測定される酸素の状態比率が15%未満である金属粒子を含有するものである。
【0027】
上記金属粒子においては、酸素の状態比率が、10%未満であることが好ましく、5%未満であることがより好ましい。
【0028】
X線光電子分光法の分析装置としては、例えば、Surface Science Instrument社のS−Probe ESCA Model 2803を用いることができ、照射X線にはAlKα線を使用することができる。「状態比率」とは測定サンプル中の特定の元素の濃度であり、元素の強度から装置付属の相対感度係数を用いて算出した値で示される。なお、X線光電子分光法で測定される金属粒子の酸素の状態比率は、金属粒子表面上の酸化膜の量の指標となる。
【0029】
上記金属粒子としては、各種公知のものを使用することができる。例えば、金、白金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、鉄、アルミニウム等の導電性の粉体などが挙げられ、また、これらの金属粒子は単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。中でも特に、銀及び銅が価格、電気伝導性及び熱伝導性等の面で望ましい。
【0030】
上記金属粒子は、平均粒子径が0.1μm以上50μm以下であることが望ましい。0.1μm未満の粒子では製造上のコストが大きくなる傾向があり、50μmを超える粒子は粒子間の空隙が大きく、熱伝導率が低下する傾向がある。
【0031】
上記金属粒子はその表面の酸化膜を除去する処理及び表面保護材による表面処理を施した金属粒子であることが好ましい。
【0032】
このような金属粒子を用いることにより、上記本発明の効果が得られる理由は必ずしも明らかでないが、本発明者らの考察を図1〜6の模式図に基づいて説明する。
【0033】
まず、表面の酸化膜が少ない金属粒子に、表面保護材による表面処理を施した場合には、図1に示すような状態となっているものと考えられる。すなわち、バルク金属3上に、わずかに残った酸化膜2が存在するとともに、酸化膜2を避けるようにして、表面保護材1がバルク金属3を覆っている状態となっていると考えられる。
【0034】
この場合には、200℃以下で加熱することにより、図2に示すように表面保護材1が脱離し、活性なバルク金属3の表面が露出するので、この活性表面が他の金属粒子の活性表面と接触することにより焼結が促進され、金属粒子同士の金属結合のパスが形成される。このような金属粒子を含有する接続材料は、200℃以下で加熱した場合であっても、高い熱伝導率を有するものと考えられる。
【0035】
一方、図3に示すような酸化膜2が多い金属粒子の場合には、200℃以下で加熱すると、図4に示すように表面保護材1は脱離するものの、金属粒子の表面が広く酸化膜2により覆われているため、金属粒子同士の焼結が起こり難いと考えられる。
【0036】
これに対して、酸化膜2が多い金属粒子を用いた場合であっても、表面の酸化膜2を除去する処理及び表面保護材による表面処理を施した場合には、図5に示すように、酸化膜2が存在せず、バルク金属3の表面全体が表面保護材4で覆われた状態の金属粒子が得られる。
【0037】
この場合には、図1に示した金属粒子と同様に、200℃以下で加熱することにより、表面保護材4が離脱し、活性なバルク金属3の表面が露出するので、この活性表面が他の金属粒子の活性表面と接触することにより焼結が促進され、金属粒子同士の金属結合のパスが形成される。この際、図1の金属粒子と比較して活性なバルク金属3の表面が露出している面積が広いので、焼結はより促進されるものと考えられ、さらに高い熱伝導率が得られるものと考えられる。
【0038】
さらに本発明者らは、金属粒子の酸化膜の量を低減又は完全に除去し、金属粒子の再酸化かつ凝集を防止する金属粒子表面処理法も確立した。以下にその手法を示す。
【0039】
まず、表面保護材を溶解、分散させた酸性溶液中に金属粒子を添加し、攪拌しながら酸化膜を除去しつつ、表面保護を行う。
次に、溶液をろ過して金属粒子を取り出した後、金属粒子表面に物理的に吸着した表面保護材や酸成分を溶媒で洗浄した。その後、金属粒子を減圧乾燥させることで余分な溶媒を除去し、乾燥状態の表面処理された金属粒子を得る。
【0040】
なお、酸化膜除去のプロセスでは表面保護材を含まない酸性溶液中で酸化膜処理を行った場合、金属粒子同士が凝集し、酸化膜処理前の粒子と同等の平均粒子径を有する粉体状の金属粒子が得られないおそれがある。金属粒子の凝集を防ぐために酸性溶液中に表面保護材を添加し、酸化膜除去と表面処理を同時に行うことが好ましい。
【0041】
酸性溶液に制限はないが、酸として、硫酸、硝酸、塩酸、酢酸、リン酸等を用いることができる。酸の希釈溶媒も制限はないが、酸との相溶性が良好であり、且つ表面保護材の溶解性、分散性に優れる溶媒が望ましい。
【0042】
酸性溶液の酸の濃度は、酸化膜を除去するために、酸性溶液全体を100重量部としたとき、1重量部以上が望ましく、酸化膜の厚い金属粒子を含む場合は、5重量部以上がより望ましい。
また、酸の濃度が濃すぎると金属が多量に溶液に溶けてしまうため、50重量部以下が望ましく、粒子同士が凝集を防ぐためには40重量部以下がより望ましい。
【0043】
表面保護材は、金属表面への吸着が良好な末端官能基を有する化合物が望ましい。例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、ジスルフィド基を有する化合物が挙げられ、チオール基を有する化合物が好ましい。これらの表面保護材を用いることにより、再酸化や粒子の凝集を防止することができる。
また金属粒子の再酸化や余分な有機物の吸着汚染をさらに高度に防止するために、化合物の主骨格は保護材が密に充填されるような直鎖アルカン骨格を持つものが望ましい。
【0044】
アルカン骨格は、炭素鎖同士の分子間力によって密に充填されるように炭素数は4個以上がより望ましい。
また、200℃以下の低い温度で金属粒子が焼結するために、表面保護材の金属表面からの脱離温度が200℃より低い炭素数18個以下がより望ましい。
チオール基を有し、主骨格が直鎖アルカン骨格である化合物としては、例えば、1乃至18炭素原子を含む、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ドデシルメルカプタン、ステアリルメルカプタンのようなメルカプタン又はシクロアルキルメルカプタンは、5乃至7炭素原子を含む、シクロペンチル、シクロヘキシル又はシクロヘプチルメルカプタンのようなメルカプタンなどが挙げられる。
【0045】
酸性溶液中の表面保護材の濃度は、酸性溶液全体を100重量部としたとき、金属粒子同士の凝集を防ぐために0.0001重量部以上が望ましく、表面保護材の金属粒子への過剰な物理吸着を防ぐために0.1重量部以下が望ましい。
【0046】
上記金属粒子の接続材料中の割合は、接続材料全体を100重量部としたとき、熱伝導率向上のために、80重量部以上が望ましく、高温はんだと同等以上の熱伝導率を達成するためには87重量部以上がより望ましい。
また、接続材料をペースト状にするためには金属粒子の割合は、接続材料全体を100重量部としたとき、99重量部以下が望ましく、ディスペンサーや印刷機での作業性向上のために、95重量部以下であることがより望ましい。
【0047】
本発明に用いられる揮発性成分としては、金属粒子との混合物に所定の熱履歴をかけた際、金属粒子が焼結するものであれば特に制限はない。
揮発性成分の一例として、エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールイソブチルエーテル、ジエチレングリコールヘキシルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブタノール、乳酸エチル、乳酸ブチル、γ−ブチロラクトン、α−テルピネオール、イソホロン、p−シメン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アニソール、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリルアミド、m−クレゾール、o−クロルフェノール、セロソルブアセテート、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、スルホラン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、モノグライム、ジグライム、ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、セロソルブアセテート、シクロヘキサノン等が挙げられる。
【0048】
上述の揮発性成分は、1種又は必要に応じて2種以上の成分を混合して使用できる。揮発性成分の含有量は、熱伝導性向上のために、接続材料全体を100重量部としたとき、20重量部以下が望ましい。
【0049】
本発明に用いられるバインダー成分(バインダー(A))は、有機高分子化合物又はその前駆体を含み、必要に応じて、反応性希釈剤、硬化剤、硬化性を向上させるための硬化促進剤、応力緩和のための可撓剤、作業性向上のための希釈剤、接着力向上剤、濡れ性向上剤、消泡剤及び低粘度化のための反応性希釈剤の一つ以上を含んでもよい。なお、本発明の接続材料は、ここに列挙した以外の成分を含んでいても差し支えない。
【0050】
上記有機高分子化合物又はその前駆体としては、特に制限はなく、例えば、熱硬化性樹脂又はその前駆体が好ましい。このような樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、マレイミド樹脂、シアネート樹脂又はその前駆体等が挙げられる。
【0051】
これらのうち、アクリル樹脂、マレイミド樹脂等の重合可能なエチレン性炭素−炭素二重結合を有する化合物又はエポキシ樹脂が、耐熱性、接着性に優れ、かつ適宜溶剤を使用することにより液状にできるため作業性に優れる点で好ましい。上記樹脂は単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0052】
上記熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を使用する場合、硬化剤、硬化促進剤を併用することが好ましい。上記エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物が好ましく、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD等とエピクロクヒドリドンとから誘導されるエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0053】
このような化合物としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物であれば特に制限はないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂[AER−X8501(旭化成工業(株)、商品名)、R−301(油化シェルエポキシ(株)、商品名)、YL−980(油化シェルエポキシ(株、)商品名)]、ビスフェノールF型エポキシ樹脂[YDF−170(東都化成(株)、商品名)]、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂[R−1710(三井石油化学工業(株)、商品名)]、フェノールノボラック型エポキシ樹脂[N−730S(大日本インキ化学工業(株)、商品名)、Quatrex−2010(ダウ・ケミカル社、商品名)]、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂[YDCN−702S(東都化成(株)、商品名)、EOCN−100(日本化薬(株)、商品名)]、多官能エポキシ樹脂[EPPN−501(日本化薬(株)、商品名)、TACTIX−742(ダウ・ケミカル社、商品名)、VG−3010(三井石油化学工業(株)、商品名)、1032S(油化シェルエポキシ(株)、商品名)]、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂[HP−4032(大日本インキ化学工業(株)、商品名)]、脂環式エポキシ樹脂[EHPE−3150、CELー3000(ダイセル化学工業(株)、商品名)、DME−100(新日本理化(株)、商品名)]、脂肪族エポキシ樹脂[W−100(新日本理化(株)、商品名)]、アミン型エポキシ樹脂 [ELM−100(住友化学工業(株)、商品名)、YH−434L(東都化成(株)、商品名)、TETRAD−X、TETRAC−C(三菱瓦斯化学(株)、商品名)]、レゾルシン型エポキシ樹脂[デナコールEX−201(ナガセ化成工業(株)、商品名)]、ネオペンチルグリコール型エポキシ樹脂[デナコールEX−211(ナガセ化成工業(株)、商品名)]、ヘキサンディネルグリコール型エポキシ樹脂[デナコールEX−212(ナガセ化成工業(株)、商品名)]、エチレン・プロピレングリコール型エポキシ樹脂[デナコールEX−810、811、850、851、821、830、832、841、861(ナガセ化成工業(株)、商品名)]、下記一般式(I)
【化1】
(式中、aは0〜5の整数を表す)で表されるエポキシ樹脂[E−XL−24、E−XL−3L(三井東圧化学(株)、商品名)]などが挙げられる。またこれらのエポキシ樹脂を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0054】
また、エポキシ樹脂として、1分子中にエポキシ基を1個だけ有するエポキシ化合物(反応性希釈剤)を含んでもよい。このようなエポキシ化合物は、本発明の接続材料の特性を阻害しない範囲で使用されるが、エポキシ樹脂全量に対して0〜30重量%の範囲で使用することが好ましい。
【0055】
このようなエポキシ化合物の市販品としては、PGE(日本化薬(株)、商品名)、PP−101(東都化成(株)、商品名)、ED−502、509、509S(旭電化工業(株)、商品名)、YED−122(油化シェルエポキシ(株)、商品名)、KBM−403(信越化学工業(株)、商品名)、TSL−8350、TSL−8355、TSL−9905(東芝シリコーン(株)、商品名)等が挙げられる。
【0056】
また、エポキシ樹脂硬化剤としては、特に制限はないが、例えば、フェノールノボラック樹脂[H−1(明和化成(株)、商品名)、VR−9300(三井東圧化学(株)、商品名)]、フェノールアラルキル樹脂[XL−225(三井東圧化学(株)、商品名)]、アリル化フェノールノボラック樹脂[AL−VR−9300(三井東圧化学(株)、商品名)]、下記一般式(II)
【化2】
(式中、Rはメチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基を示し、Rは水素又はメチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基を示し、bは2〜4の整数を示す)で表される特殊フェノール樹脂[PP−700−300(日本石油化学(株)、商品名)]、ビスフェノールF、A、AD、アリル化ビスフェノールF、A、AD、ジシアンジアミド、下記一般式(III)
【化3】
(式中、Rはm−フェニレン基、p−フェニレン基等の2価の芳香族炭化水素基、炭素数2〜12の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示す)で表される二塩基酸ジヒドラジド[ADH、PDH、SDH(いずれも日本ヒドラジン工業(株)、商品名)]、エポキシ樹脂とアミン化合物の反応物からなるマイクロカプセル型硬化剤[ノバキュア(旭化成工業(株)、商品名)]等が挙げられる。またこれらの硬化剤を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0057】
エポキシ樹脂硬化剤の配合量は、エポキシ樹脂100重量部に対して0.01〜90重量部とするのが好ましく、0.1〜50重量部とすることがより好ましい。エポキシ樹脂硬化剤の配合量が0.01重量部未満であると硬化性が低下する傾向があり、90重量部を超えると粘度が上昇し、作業性が低下する傾向がある。
【0058】
本発明の接続材料には必要に応じて硬化促進剤を添加することができる。硬化促進剤としては、有機ボロン塩化合物[EMZ・K、TPPK(北興化学工業(株)、商品名)]、三級アミン類又はその塩[DBU、U−CAT102、106、830、840、5002(サンアプロ社、商品名)]、イミダゾール類[キュアゾール、2P4MHZ、C17Z、2PZ−OK(四国化成(株)、商品名)]等が挙げられる。
【0059】
エポキシ樹脂硬化剤及び必要に応じて添加される硬化促進剤は、それぞれ単独で用いてもよく、また複数種のエポキシ樹脂硬化剤及び硬化促進剤を適宜組み合わせて用いてもよい。硬化促進剤の配合量は、エポキシ樹脂100重量部に対して20重量部以下が好ましい。
【0060】
本発明に用いられる重合可能なエチレン性炭素−炭素二重結合を有する化合物としては、アクリル酸エステル化合物又はメタクリル酸エステル化合物などが挙げられ、1分子中に1個以上のアクリル基又はメタクリル基を有する化合物であり、好ましくは下記の一般式(IV)〜(XIII)で表される化合物が使用される。
【0061】
一般式(IV):
【化4】
(式中、Rは水素又はメチル基を表し、Rは炭素数1〜100、好ましくは炭素数1〜36の2価の脂肪族又は環状構造を持つ脂肪族炭化水素基を表す)で示される化合物。
【0062】
一般式(IV)で示される化合物としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、アミルアクリレート、イソアミルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、イソデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、トリデシルアクリレート、ヘキサデシルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソステアリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシルアクリレート等のアクリレート化合物、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、ヘプチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ノニルメタクリレート、デシルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、ヘキサデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、イソステアリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシルメタクリレート等のメタクリレート化合物が挙げられる。
【0063】
一般式(V):
【化5】
(式中、R及びRは一般式(IV)におけるものと同じものを表す)で示される化合物。
【0064】
一般式(V)で示される化合物としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等がある。
【0065】
一般式(VI):
【化6】
(式中、Rは一般式(IV)におけるものと同じものを表し、Rは水素、メチル基又はフェノキシメチル基を表し、Rは水素、炭素数1〜6のアルキル基、ジシクロペンテニル基、フェニル基又はベンゾイル基を表し、bは1〜50の整数を表す)で示される化合物。
【0066】
一般式(VI)で示される化合物としては、ジエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリプロピレングリコールアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−ブトキシエチルアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、2−ベンゾイルオキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート等のアクリレート化合物、ジエチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、ポリプロピレングリコールメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、2−ブトキシエチルメタクリレート、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、2−フェノキシエチルメタクリレート、フェノキシジエチレングリコールメタクリレート、フェノキシポリエチレングリコールメタクリレート、2−ベンゾイルオキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルメタクリレート等のメタクリレート化合物等が挙げられる。
【0067】
一般式(VII):
【化7】
[式中、Rは一般式(IV)におけるものと同じものを表し、Rはフェニル基、ニトリル基、−Si(OR(Rは炭素数1〜6のアルキル基を表す)、
【0068】
【化8】
(R10、R11及びR12はそれぞれ独立に水素又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、R13は水素又は炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基を表す)を表し、cは0、1、2又は3の数を表す]で示される化合物。
【0069】
上記一般式(VII)及び(VII’)で示される化合物としては、ベンジルアクリレート、2−シアノエチルアクリレート、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、グリシジルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロピラニルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、1,2,2,6,6,−ペンタメチルピペリジニルアクリレート、2,2,6,6,−テトラメチルピペリジニルアクリレート、アクリロイルオキシエチルホスフェート、アクリロイルオキシエチルフェニルアシッドホスフェート、β−アクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、β−アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート等のアクリレート化合物、ベンジルメタクリレート、2−シアノエチルメタクリレート、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、グリシジルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、テトラヒドロピラニルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、1,2,2,6,6,−ペンタメチルピペリジニルメタクリレート、2,2,6,6,−テトラメチルピペリジニルメタクリレート、メタクリロイルオキシエチルホスフェート、メタクリロイルオキシエチルフェニルアシッドホスフェート等のメタクリレート、β−メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、β−メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート等のメタクリレート化合物等がある。
【0070】
一般式(VIII):
【化9】
(式中、R及びRは一般式(IV)におけるものと同じものを表す)で示される化合物。
【0071】
一般式(VIII)で示される化合物としては、エチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ダイマージオールジアクリレート等のジアクリレート化合物、エチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ダイマージオールジメタクリレート等のジメタクリレート化合物がある。
【0072】
一般式(IX):
【化10】
(式中、Rは一般式(IV)におけるものと同じものを表し、R、bは一般式(VI)におけるものと同じものを表す)で示される化合物。
【0073】
一般式(IX)で示される化合物としては、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート等のジアクリレート化合物、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート等のジメタクリレート化合物等がある。
【0074】
一般式(X):
【化11】
(式中、Rは一般式(IV)におけるものと同じものを表し、R14及びR15はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表す)で示される化合物。
【0075】
一般式(X)で示される化合物としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールAD1モルとグリシジルアクリレート2モルとの反応物、ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールAD1モルとグリシジルメタクリレート2モルとの反応物等がある。
【0076】
一般式(XI):
【化12】
(式中、Rは一般式(IV)におけるものと同じものを表し、R14及びR15は一般式(X)におけるものと同じものを表し、R16及びR17はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表し、d及びeはそれぞれ独立に1〜20の整数を表す)で示される化合物。
【0077】
一般式(XI)で示される化合物としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールADのポリエチレンオキサイド付加物のジアクリレート、ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールADのポリプロピレンオキサイド付加物のジアクリレート、ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールADのポリエチレンオキサイド付加物のジメタクリレート、ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールADのポリプロピレンオキサイド付加物のジメタクリレート等がある。
【0078】
一般式(XII)で示される
【化13】
(式中、Rは一般式(IV)におけるものと同じものを表し、R18、R19、R20及びR21はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表し、fは1〜20の整数を表す)で示される化合物。
【0079】
一般式(XII)で示される化合物としては、ビス(アクリロイルオキシプロピル)ポリジメチルシロキサン、ビス(アクリロイルオキシプロピル)メチルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー、ビス(メタクリロイルオキシプロピル)ポリジメチルシロキサン、ビス(メタクリロイルオキシプロピル)メチルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー等がある。
【0080】
一般式(XIII):
【化14】
(式中、Rは一般式(IV)におけるものと同じものを表し、g、h、i、j及びkはそれぞれ独立に1以上、好ましくは1〜10の数を表す)で示される化合物。
【0081】
一般式(XIII)で示される化合物としては、無水マレイン酸を付加させたポリブタジエンと分子内に水酸基を持つアクリル酸エステル化合物又はメタクリル酸エステル化合物を反応させて得られる反応物及びその水素添加物があり、1分子中に1個以上のアクリル基又はメタクリル基を有する化合物であれば特に制限はないが、例えば、MM−1000−80、MAC−1000−80(共に、日本石油化学(株)商品名)等がある。
【0082】
重合可能なエチレン性炭素−炭素二重結合を有する化合物は、上記の化合物を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0083】
上記熱硬化性樹脂としてエチレン性炭素−炭素二重結合を有する化合物を用いる場合、硬化剤触媒としてラジカル開始剤を併用することが好ましい。ラジカル開始剤としては特に制限はないが、ボイド等の点から過酸化物が好ましく、また接続材料の硬化性及び粘度安定性の点から過酸化物の分解温度が70〜170℃のものが好ましい。
【0084】
ラジカル開始剤の具体例としては、1,1,3,3−テトラメチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン、クメンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
【0085】
ラジカル開始剤の配合量は、重合可能なエチレン性炭素−炭素二重結合を有する化合物の総量100重量部に対して0.1〜10重量部が好ましく、0.5〜5重量部が特に好ましい。
【0086】
上述のバインダー成分は、1種又は必要に応じて2種以上の成分を混合して使用できる。バインダー成分の含有量は、接続材料全体を100重量部としたとき、3〜30重量部が望ましい。
【0087】
可撓剤の例としては、液状ポリブタジエン(宇部興産社製「CTBN−1300×31」、「CTBN−1300×9」等のアクリロニトリルブタジエン共重合体が挙げられ、分子内にエポキシ基、カルボキシル基、アミノ基及びビニル基から選ばれる少なくとも1種以上の官能基を有しているものが好ましい。
【0088】
アクリロニトリルブタジエン共重合体はあらかじめ上述のエポキシ樹脂と、エポキシ樹脂:アクリロニトリルブタジエン共重合体=10:90〜90:10(重量部)の比率で、80℃〜120℃で20分〜6時間程度反応させておくことができる。反応時には必要に応じて、ブチルセロソルブ、カルビトール、酢酸ブチルセロソルブ、酢酸カルビトール、エチレングリコールジエチルエーテル、α−テルピネオール等の比較的沸点の高い有機溶剤を用いることができる。
【0089】
アクリロニトリルブタジエン共重合体の数平均分子量としては500〜10000のものが好ましい。分子量が500未満であるとチップ反りの低減効果に劣る傾向があり、分子量が10000を超えると接続材料の粘度が上昇し作業性に劣る傾向がある。数平均分子量は、蒸気圧浸透法で測定した値又はゲルミエーションクロマトグラフィーにより標準ポリスチレンの検量線を利用して測定(以下、GPC法という)した値である。
【0090】
また、エポキシ化ポリブタジエンとしては、エポキシ当量が100〜500(g/eq)のものが好ましい。エポキシ当量が100未満では粘度が増大し、接続材料の作業性が低下する傾向があり、500を超えると熱時の接着強度が低下する傾向がある。なお、エポキシ当量は過塩素酸法により求めたものである。エポキシ化ポリブタジエンとして分子内に水酸基を持つものを使用してもよい。
【0091】
エポキシ化ポリブタジエンの数平均分子量としては、500〜10000のものが好ましい。分子量が500未満であるとチップ反りの低減効果に劣る傾向があり、分子量が10000を超えると接続材料の粘度が上昇し作業性に劣る傾向がある。数平均分子量は、GPC法により測定した値である。
【0092】
可撓剤は、半導体素子とリードフレームとを接着したことによって発生する応力を緩和する効果がある。可撓剤は、通常、有機高分子化合物及びその前駆体の総量を100重量部とするとき、0〜500重量部添加される。
【0093】
本発明の接続材料には、必要に応じてさらに、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等の吸湿剤、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、ジルコアルミネートカップリング剤等の接着力向上剤、ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等の濡れ向上剤、シリコーン油等の消泡剤、無機イオン交換体等のイオントラップ剤、重合禁止剤等を適宜添加することができる。
【0094】
ここで、シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、N,O−(ビストリメチルシリル)アセトアミド、N−メチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、4,5−ジヒドロイミダゾールプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−シアノプロピルトリメトキシシラン、メチルトリ(メタクリロイルオキシエトキシ)シラン、メチルトリ(グリシジルオキシ)シラン、2−エチルヘキシル−2−エチルヘキシルホスホネート、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、N−トリメチルシリルアセトアミド、ジメチルトリメチルシリルアミン、ジエチルトリメチルシリルアミン、トリメチルシリルイミダゾール、トリメチルシリルイソシアネート、ジメチルシリルジイソシアネート、メチルシリルトリイソシアネート、ビニルシリルトリイソシアネート、フェニルシリルトリイソシアンネート、テトライソシアネートシラン、エトキシシラントリイソシアネート等が挙げられる。
【0095】
上記チタネートカップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、ジイソプロポキシビス(2,4−ペンタジオネート)チタニウム(IV)、ジイソプロピルビストリエタノールアミノチタネート、チタニウムラクテート、アセトアセティックエステルチタネート、ジ−i−プロポキシビス(アセチルアセトナト)チタン、ジ−n−ブトキシビス(トリエタノールアミナト)チタン、ジヒドロキシビス(ラクタト)チタン、チタニウム−i−プロポキシオクチレングリコレート、チタニウムステアレート、トリ−n−ブトキシチタンモノステアレート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート等が挙げられる。
【0096】
重合禁止剤としては、例えば、キノン類、ヒドロキノン、ニトロ・ニトロソ化合物、アミン類、ポリオキシ化合物、p−tert−ブチルカテコール、ピクリン酸、ジチオベンゾイルジスルフィド等の含硫黄化合物、塩化第二銅、ジフェニルピクリルヒドラジル、トリ−p−ニトロフェニルメチル、トリフェニルフェルダジル、N−(3−N−オキシアニリノ−1,3−ジメチルブチリデン)アニリンオキシド等が挙げられるが、これらに制限するものではない。
【0097】
本発明の接続材料には、必要に応じてさらに、ブリード抑制剤を添加することができる。ブリード抑制剤としては、例えば、パーフロロオクタン酸、オクタン酸アミド、オレイン酸等の脂肪酸、パーフロロオクチルエチルアクリレート、シリコーン等がある。
【0098】
上記フィラー(B)としては、各種公知のもの、例えば、金、白金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、鉄、アルミニウム等の導電性の粉体を用いることができる。また、これらのフィラーは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。中でも特に、銀及び銅が価格、電気伝導性及び熱伝導性等の面で望ましい。
【0099】
上記添加剤(C)としては、上述の揮発性成分や表面保護剤を用いることができる。
【0100】
上記接続材料を製造するには、金属粒子、揮発性成分及びバインダーを、必要に応じて添加される希釈剤等とともに、一括又は分割して撹拌器、らいかい器、3本ロール、プラネタリーミキサー等の分散・溶解装置を適宜組み合わせ、必要に応じて加熱して混合、溶解、解粒混練又は分散して均一なペースト状とすればよい。
【0101】
図7は、本発明の接続材料を用いて製造される半導体装置の一例を示す模式断面図である。図7に示す半導体装置は、3つのリードフレーム(放熱体)12a,12b,12cと、リードフレーム12a上に、本発明の接続材料を介して接続されたチップ(発熱体)11と、これらをモールドするモールドレジン15とからなる。チップ11は、2本のワイヤ14を介してリードフレーム12b,12cにそれぞれ接続されている。
【0102】
図8は、本発明の接続材料を用いて製造される半導体装置の他の例を示す模式断面図である。図7に示す半導体装置は、基板16と、基板を囲むように形成された2つのリードフレーム17と、リードフレーム17上に、本発明の接続材料を介して接続されたLEDチップ18と、これらを封止する透光性樹脂19とからなる。LEDチップ18は、ワイヤ14を介してリードフレーム17に接続されている。
【0103】
本発明の半導体装置は、本発明の接続材料を用いて半導体素子を支持部材に接着することにより得られる。半導体素子を支持部材に接着した後、必要に応じ、ワイヤボンド工程、封止工程を行う。
【0104】
支持部材としては、例えば、42アロイリードフレーム、銅リードフレーム、パラジウムPPFリードフレーム等のリードフレーム、ガラスエポキシ基板(ガラス繊維強化エポキシ樹脂からなる基板)、BT基板(シアネートモノマー及びそのオリゴマーとビスマレイミドからなるBTレジン使用基板)等の有機基板が挙げられる。
【0105】
本発明の接続材料を用いて半導体素子をリードフレームなどの支持部材に接着させるには、まず支持部材上に接続材料をディスペンス法、スクリーン印刷法、スタンピング法等により塗布した後、半導体素子を圧着し、その後オーブン又はヒートブロック等の加熱装置を用いて加熱硬化することにより行うことができる。加熱硬化は、通常、100〜200℃で、5秒〜10時間加熱することにより行われる。さらに、ワイヤボンド工程を経た後、通常の方法により封止することにより完成された半導体装置とすることができる。
【実施例】
【0106】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれによって制限されるものではない。実施例及び参考例で用いた材料は以下のようにして作製したもの又は入手したものである。
【0107】
(1)エポキシ樹脂溶液: YDF−170(東都化成(株)、商品名、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量=170)7.5重量部及びYL−980(油化シェルエポキシ(株)、商品名、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量=185)7.5重量部を80℃に加熱し、1時間撹拌を続け、均一なエポキシ樹脂溶液を得た。
【0108】
(2)硬化促進剤: 2PZCNS−PW(四国化成工業(株)、商品名、イミダゾール)1.1重量部、
(3)揮発性成分: ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(以下、DMPAという)(ダイセル化学(株))、トルエン(関東化学(株))、γ−ブチロラクトン(三協化学(株))
【0109】
(4)金属粒子: K−0082P(METALOR、商品名、銀粉、平均粒子径1.6μm、酸素状態比率4%)、AgF10S(徳力化学研究所(株)、商品名、銀粉、平均粒子径10μm、酸素状態比率15%)
また、以下の手順でAgF10Sの酸化膜除去及び表面処理を施した表面処理Ag粉を作製した。
【0110】
塩酸(関東化学(株))28重量部をエタノール(関東化学(株))80重量部で希釈し、酸性溶液を調整した。この酸性溶液に表面保護材としてステアリルメルカプタン(東京化成工業(株))0.29重量部を添加し表面処理液を調製した。
【0111】
この表面処理液にAgF10Sを添加し、40℃に保ったまま1時間攪拌して酸化膜除去及び表面処理を行った。その後、ろ過によって表面処理液を取り除き、40℃のエタノールを加えて表面処理Ag粉を洗浄した。
【0112】
さらに、エタノールの洗浄液をろ過によって取り除き、その洗浄、ろ過の工程を10回程度繰り返して、表面処理Ag粉表面上に物理的に吸着しているステアリルメルカプタン及び塩酸を除去した。
【0113】
最後に洗浄後の表面処理Ag粉を減圧乾燥させることでエタノールを除去し、乾燥状態の表面処理Ag粉を得た。得られた表面処理Ag粉の酸素の状態比率は0%であり、酸化膜が完全に除去されていることを確認した。
【0114】
材料(1)及び(2)を、らいかい機で10分間混練し、バインダー成分を得た。
次に、表1に示す配合割合で、材料(3)及び(4)を加えてらいかい機で15分間混練し、接続材料を得た。
接続材料の特性を下記に示す方法で調べた。金属粒子、揮発性成分及びバインダー成分の組成、並びに特性の測定結果を表1及び表2に示す。
【0115】
(1)シェア強度:接続材料をAgめっきCuリードフレーム(ランド部:10×5mm)上に0.2mgを塗布し、この上に2mm×2mmのAgめっきCuチップ(厚さ 0.15mm)を接着し、さらにホットプレート(HHP−401)上で180℃、1時間加熱処理した。
【0116】
これを、万能型ボンドテスタ(デイジ社製、4000シリーズ)を用い、測定スピード500μm/s、測定高さ100μmで、260℃で30秒加熱した後の剪断強さ(シェア強度)(MPa)を測定した。
【0117】
(2)接続材料硬化物の熱伝導率:上記接続材料を180℃、1時間加熱処理し、10×10×1mmの試験片を得た。この試験片の熱拡散率をレーザーフラッシュ法(ネッチ社製、LFA 447、25℃)で測定し、さらにこの熱拡散率と、示差走査熱量測定装置(パーキンエルマー社製 Pyris1)で得られた比熱容量とアルキメデス法で得られた比重の積より、25℃における接続材料の硬化物熱伝導率(W/m・K)を算出した。
【0118】
【表1】
【0119】
【表2】
【0120】
表1及び表2に示されるように、実施例1〜3の表面処理Ag粉と揮発性成分からなる接続材料は、70W/m・K以上の高い熱伝導率、260℃で7MPa以上の高いシェア強度を発現することが明らかである。これに対し、参考例1〜3から酸素の状態比率が15%以上のAg粉(AgF10S)と揮発性成分からなる接続材料は180℃では金属粒子同士の焼結が起こらないために熱伝導率測定用の試験片が作製できず、シェア強度も発現しないことが明らかである。
【0121】
また、参考例4から酸素の状態比率が15%以上のAg粉(AgF10S)と揮発性成分及びバインダー成分からなる接続材料は3W/m・K以下の低い熱伝導率であるが、実施例4の表面処理Ag粉と揮発性成分及びバインダー成分からなる接続材料はシェア強度を維持したまま、20W/m・K以上の高い熱伝導率を発現することが明らかである。
【0122】
さらに、参考例5から酸素の状態比率が15%以上のAgF10Sとバインダー成分からなる接続材料は2W/m・K以下の低い熱伝導率であるが、実施例5の表面処理AgF10Sとバインダー成分からなる接続材料はシェア強度を維持したまま、20W/m・K以上の高い熱伝導率を発現することが明らかである。
【0123】
なお、実施例6及び7から酸素の状態比率が10%の表面処理AgF5Sと揮発性成分及びバインダー成分からなる接続材料は、参考例6及び7に示した酸素の状態比率が20%以上のAgF5Sと揮発性成分及びバインダー成分からなる接続材料よりも高い熱伝導率及びシェア強度を発現することが明らかである。
【0124】
(実施例8〜14及び参考例8〜11)
下記のバインダー(A)、フィラー(B)及び添加剤(C)を準備した。
バインダー(A):
バインダー(A)は、エポキシ樹脂溶液(A1)37.6重量部、アクリロニトニルブタジエン共重合体(A2)9.2重量部、エポキシ化ポリブタジエン(A3)18.4重量部、エポキシ樹脂硬化剤(A4)1.8重量部、硬化促進剤(A5)0.8重量部、希釈剤(A6)18.2重量部、メタクリル酸エステル化合物(A7)14.7重量部及びラジカル開始剤(A8)0.5重量部を、らいかい機にて10分間混練することにより調製した。
エポキシ樹脂溶液(A1):YDF−170(東都化成株式会社、商品名、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量=170)7.5重量部及びYL−980(ジャパンエポキシレジン株式会社、商品名、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量=185)7.5重量部を80℃に加熱し、1時間撹拌を続け、均一なエポキシ樹脂溶液を得た。
アクリロニトニルブタジエン共重合体(A2):
CTBNX−1300×9(宇部興産株式会社、商品名、カルボキシル基末端アクリロニトニルブタジエン共重合体)
エポキシ化ポリブタジエン(A3):
E−1000−8.0(日本石油化学株式会社、商品名)
エポキシ樹脂硬化剤(A4):
ジシアンジアミド
硬化促進剤(A5):
C17Z(四国化成株式会社、商品名、イミダゾール)
希釈剤(A6):
PP−101(東都化成株式会社、商品名、アルキルフェニルグリシジルエーテル)
メタクリル酸エステル化合物(A7):
エチレングリコールジメタクリレート
ラジカル開始剤(A8):
ジクミルパーオキサイド
フィラー(B):
AgC−224(福田金属箔粉株式会社、商品名、銀粉、平均粒子径10μm)
SPQ05J(三井金属鉱業株式会社、商品名、銀粉、平均粒子径0.85μm)
SA1507(メタロー、商品名、銀粉、平均粒子径15μm)
添加剤(C):
ジプロピレングリコールメチルエーテル
トルエン
プロピレングリコールメチルエーテルアセテート
ドデカンチオール
【0125】
準備したバインダー(A)、フィラー(B)及び添加剤(C)を、表3に示す配合割合で混合し、らいかい機にて15分間混練した後、5トル(Torr)以下で混練し、実施例8〜14及び参考例8〜11の接続材料を得た。
【0126】
実施例8〜14及び参考例8〜11の接続材料の特性、及びフィラー(B)と添加剤(C)との混合物成型体の特性を下記の方法で測定した。その結果を表3に示す。
【0127】
(1)粘度:EHD型回転粘度計(東京計器社製)を用いて、接続材料の25℃における0.5rpmの粘度(Pa・s)を測定した。
(2)ダイシェア強度(剪断強さ):接続材料をパラジウムめっきリードフレーム(PPF、ランド部:10×8mm)上に約0.2mgを塗布し、この上に2mm×2mmのシリコンチップ(厚さ 0.4mm)を圧着し、さらにクリーンオーブン(エスペック社製)で180℃、1時間加熱処理した。これを万能型ボンドテスタ(デイジ社製、4000シリーズ)を用いて、測定スピード500μm/s、測定高さ120μmで260℃で30秒加熱した後の剪断強さ(MPa)を測定した。
(3)フィラー(B)と添加剤(C)との混合物成型体の熱伝導率:フィラー(B)と添加剤(C)とを表3に示す配合割合で、総重量が20gとなるように配合し、乳鉢等で混練した。生成した粉体状あるいはペースト状の混合物を10×10×1mmとなるように成型し180℃、1時間加熱処理した。この成型物の熱拡散率をレーザーフラッシュ法(ネッチ社製、LFA 447、25℃)で測定し、さらにこの熱拡散率と、示差走査熱量測定装置(パーキンエルマー社製 Pyris1)で得られた比熱容量とアルキメデス法で得られた比重の積より、25℃におけるフィラー(B)と添加剤(C)との混合物成型体の硬化物の熱伝導率(W/m・K)を算出した。
(4)接続材料の硬化物の熱伝導率:上記接続材料を180℃、1時間加熱処理し、10×10×1mmの試験片を得た。この試験片の熱拡散率をレーザーフラッシュ法(ネッチ社製、LFA 447、25℃)で測定し、さらにこの熱拡散率と、示差走査熱量測定装置(パーキンエルマー社製 Pyris1)で得られた比熱容量とアルキメデス法で得られた比重の積より、25℃における接続材料の硬化物熱伝導率(W/m・K)を算出した。
【0128】
【表3】
【0129】
実施例8〜14の接続材料によれば、作業性に優れた粘度を有し、接着強度を維持しつつ、熱伝導率の向上を図ることが可能である。添加剤を含有しない参考例8の接続材料は、フィラー(B)と添加剤(C)との混合物成型体の熱伝導率が低く、接続材料の硬化体の熱伝導率も低くなる。添加剤を含有しない参考例9の接続材料は、接続材料の硬化物の熱伝導率は比較的高いものの、フィラー(B)の含有比率が高いために、接続材料の粘度が高い。参考例10の接続材料は、添加剤を含有しているが、フィラー(B)と添加剤(C)との混合物成型体の熱伝導率が低いため、接続材料の硬化体の熱伝導率が低くなる。参考例11の接続材料は、添加剤を有しており、接続材料の硬化体の熱伝導率は高いものの、フィラー(B)と添加剤(C)との混合物成型体の熱伝導率は低く、接続材料の粘度が高い。
【符号の説明】
【0130】
1,4…表面保護材、2…酸化膜、3…バルク金属、11…チップ、12a,12b,12c…リードフレーム、14…ワイヤ、15…モールドレジン、16…基板、17…リードフレーム、18…チップ、19…透光性樹脂。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8