【実施例】
【0051】
以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0052】
[実施例1]
砂糖31質量部、トレハロース10質量部、ココアパウダー15質量部、全脂粉乳15質量部、植物油脂A(20℃でのSFCの値が55%)29質量部、レシチン0.5質量部の配合により内層チョコレートを調製した。この内層チョコレートの20℃でのSFCの値は50%であった。
砂糖31質量部、トレハロース10質量部、ココアパウダー15質量部、全脂粉乳15質量部、植物油脂E(20℃のSFCが82%)29質量部、レシチン0.5質量部の配合により外層チョコレートを調製した。この外層チョコレートの20℃でのSFCの値は75%であった。外層チョコレートは、加圧式のミキサーにて1.5気圧下で所定時間撹拌して含気した。含気後の比重は0.7であった。
常法に従い、押出成形装置を用いて、その二重ノズルの内側ノズルからは上記内層チョコレートが、その外側ノズルからは上記外層チョコレートが、それぞれ押し出されて、押し出された内層と外層の質量の比が4:1となるようにし、その押出物を所定長さで切断することで、およそ2.8cm(たて)×2.0cm(よこ)×1.1cm(高さ)の形状に成形し、得られた成形物を、オーブンにより、220℃で3分間焼成して、複合油脂性菓子を得た。
【0053】
[実施例2]
内層チョコレートと外層チョコレートの質量比を9:1とした以外は、実施例1と同様にして、複合油脂性菓子を調製した。
【0054】
[実施例3]
内層チョコレートと外層チョコレートの質量比を1:1とした以外は、実施例1と同様にして、複合油脂性菓子を調製した。
【0055】
[実施例4]
内層チョコレートと外層チョコレートの質量比を1:2とした以外は、実施例1と同様にして、複合油脂性菓子を調製した。
【0056】
[実施例5]
内層チョコレートの配合のうち、植物油脂A(20℃でのSFCの値が55%)29質量部に代えて植物油脂B(20℃でのSFCの値が29%)29質量部を配合して、20℃でのSFCの値が29%である内層チョコレートを用いた以外は、実施例1と同様にして、複合油脂性菓子を調製した。
【0057】
[実施例6]
内層チョコレートの配合のうち、植物油脂A(20℃でのSFCの値が55%)29質量部に代えて植物油脂C(20℃でのSFCの値が0%)29質量部を配合して、20℃でのSFCの値が0%である内層チョコレートを用いた以外は、実施例1と同様にして、複合油脂性菓子を調製した。
【0058】
[実施例7]
内層チョコレートと外層チョコレートの質量比を1:3とした以外は、実施例1と同様にして、複合油脂性菓子を調製した。
【0059】
[実施例8]
実施例1の内層チョコレートの配合によるチョコレート80質量部に、更に濃縮クリーム12質量部、糖液6質量部、ブランデー2質量部を加えて配合して、水分含量が4.0質量%である内層チョコレートを調製した。
砂糖31質量部、トレハロース10質量部、ココアパウダー15質量部、全脂粉乳15質量部、植物油脂E(20℃のSFCが82%)29質量部、レシチン0.5質量部の配合により外層チョコレートを調製した。この外層チョコレートの20℃でのSFCの値は75%であった。外層チョコレートは、加圧式のミキサーにて1.5気圧下で所定時間撹拌して含気した。含気後の比重は1.0であった。
常法に従い、押出成形装置を用いて、その二重ノズルの内側ノズルからは上記内層チョコレートが、その外側ノズルからは上記外層チョコレートが、それぞれ押し出されて、押し出された内層と外層の質量の比が2:1となるようにし、その押出物を所定長さで切断することで、およそ2.8cm(たて)×2.0cm(よこ)×1.1cm(高さ)の形状に成形し、得られた成形物を、オーブンにより、220℃で3分間焼成して、複合油脂性菓子を得た。
【0060】
[実施例9]
実施例1の内層チョコレートの配合によるチョコレート40質量部に、更に濃縮クリーム36質量部、糖液18質量部、ブランデー6質量部を加えて配合して、水分含量が13.0質量%である内層チョコレートを調製した。この内層チョコレートを用いた以外は、実施例8と同様にして、複合油脂性菓子を調製した。
【0061】
[実施例10]
実施例1の内層チョコレートの配合によるチョコレート38質量部に、更に濃縮クリーム34質量部、糖液17質量部、ブランデー6質量部、水5質量部を加えて配合して、水分含量が17.0質量%である内層チョコレートを調製した。この内層チョコレートを用いた以外は、実施例8と同様にして、複合油脂性菓子を調製した。
【0062】
[実施例11]
外層チョコレートに含気せずに比重を1.2とした以外は、実施例8と同様にして、複合油脂性菓子を調製した。
【0063】
[実施例12]
外層チョコレートに含気せずに比重を1.2とした以外は、実施例9と同様にして、複合油脂性菓子を調製した。
【0064】
[実施例13]
加圧式ミキサーの圧力と撹拌時間を調整して外層チョコレートの比重を1.1とした以外は、実施例1と同様にして、複合油脂性菓子を調製した。
【0065】
[実施例14]
加圧式ミキサーの圧力と撹拌時間を調整して外層チョコレートの比重を0.2とした以外は、実施例1と同様にして、複合油脂性菓子を調製した。
【0066】
[実施例15]
内層チョコレートを加圧式のミキサーにて2気圧下で所定時間撹拌して含気し、含気後の比重を0.7とし、加圧式ミキサーの圧力と撹拌時間を調整して外層チョコレートの比重を0.6とした以外は、実施例1と同様にして、複合油脂性菓子を調製した。
【0067】
[実施例16]
内層チョコレートを加圧式のミキサーにて3気圧下で所定時間撹拌して含気し、含気後の比重を0.3とし、加圧式ミキサーの圧力と撹拌時間を調整して外層チョコレートの比重を0.2とした以外は、実施例1と同様にして、複合油脂性菓子を調製した。
【0068】
[実施例17]
内層チョコレートを加圧式のミキサーにて2気圧下で所定時間撹拌して含気し、含気後の比重を0.7とした以外は、実施例1と同様にして、複合油脂性菓子を調製した。
【0069】
[実施例18]
内層チョコレートを加圧式のミキサーにて2気圧下で所定時間撹拌して含気し、含気後の比重を0.7とし、加圧式のミキサー撹拌時間を調整して外層チョコレートの比重を0.8とした以外は、実施例1と同様にして、複合油脂性菓子を調製した。
【0070】
[比較例1]
焼成しない以外は、実施例4と同様にして、複合油脂性菓子を調製した。
【0071】
[比較例2]
焼成しない以外は、実施例7と同様にして、複合油脂性菓子を調製した。
【0072】
[比較例3]
内層チョコレートの配合のうち、植物油脂A(20℃でのSFCの値が55%)29質量部に代えて植物油脂D(20℃でのSFCの値が60%)29質量部を配合して、20℃でのSFCの値が55%である内層チョコレートを用い、且つ、焼成しない以外は、実施例4と同様にして、複合油脂性菓子を調製した。
【0073】
[比較例4]
実施例1の内層チョコレートの配合による生地を調製し、常法に従い、実施例1と同形状にモールド成形した。得られた成形物を、オーブンにより、220℃で3分間焼成して、複合油脂性菓子を得た。
【0074】
[比較例5]
焼成しない以外は、実施例8と同様にして、複合油脂性菓子を調製した。
【0075】
[比較例6]
実施例1の内層チョコレートの配合によるチョコレート36質量部に、更に濃縮クリーム32質量部、糖液16質量部、ブランデー6質量部、水10質量部を加えて配合して、水分含量が22.0質量%である内層チョコレートを調製した。この内層チョコレートを用いた以外は、実施例8と同様にして、複合油脂性菓子の調製を試みた。
【0076】
<試験例1>
表1に示す各複合油脂性菓子を28℃に1週間保存し、表面が軟化する現象の有無を観察した。結果を表1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
その結果、以下のことが明らかとなった。
【0079】
(1)比較例1(焼成なし)、比較例2(焼成なし)にみられるように、内層として、20℃でのSFCの値が50%であるチョコレートを用いた場合、焼成を行わないと、保存中に表面の軟化が発生した。これに対して、実施例1〜7にみられるように、内層として、20℃でのSFCの値が50%(実施例1〜4、実施例7)、あるいは20℃でのSFCの値が29%(実施例5)もしくは0%(実施例6)であるチョコレートを用いた場合でも、焼成することで、軟化の発生が抑制された。
【0080】
(2)実施例1〜7の複合油脂性菓子は、上記焼成条件によって、外層の表層が手で持ったときにべとつかない程度に焼成でき、且つ、それらの複合油脂性菓子は、外層の食感が軽く、内層はなめらかでやわらかく口溶けのよい、外層と内層のそれぞれチョコレートの食感のギャップをしっかりと感じることができる複合油脂性菓子であった。
【0081】
(3)比較例3(焼成なし)にみられるように、内層として、20℃でのSFCの値が55%であるチョコレートを用いると、焼成せずとも保存中に表面の軟化は発生しなかったが、内層の食感として、なめらかさや、やわらかさ、口溶けの良さが不十分であった。
【0082】
(4)比較例4(焼成あり)に見られるように、実施例1で用いた内層チョコレートのみを焼成した場合には、ダレにより原型を留めなかった。
【0083】
<試験例2>
表2に示す各複合油脂性菓子を28℃に1週間保存し、表面が軟化する現象の有無を観察した。結果を表2に示す。
【0084】
【表2】
【0085】
その結果、以下のことが明らかとなった。
【0086】
(1)比較例5(焼成なし)にみられるように、内層として、水分含量が4.0質量%であるチョコレートを用いた場合、焼成を行わないと、保存中に表面の軟化が発生してしまった。これに対して、実施例8〜12にみられるように、内層として、水分含量が4.0質量%、あるいは水分含量が13.0質量%もしくは17.0質量%であるチョコレートを用いた場合でも、焼成することで、軟化の発生が抑制された。
【0087】
(2)実施例8〜12の複合油脂性菓子は、上記焼成条件によって、外層の表層が手で持ったときにべとつかない程度に焼成でき、且つ、それらの複合油脂性菓子は、外層の食感が軽く、内層はなめらかでやわらかく口溶けのよい、外層と内層のそれぞれチョコレートの食感のギャップをしっかりと感じることができる複合油脂性菓子であった。
【0088】
(3)比較例6にみられるように、内層の含水チョコレートの水分含量が高すぎると、保形性がなく、押出成形装置による成形後、成形後の形状を維持できず、焼成することもできなかった。
【0089】
<試験例3>
表3に示す各複合油脂性菓子を、オーブンにより、同表に示す焼成条件で焼成した。得られた焼成物の内層の一部分を採取して試料とし、40℃においてマイクロメータでその試料の固形物の最大粒径を測定した。マイクロメータとしては、DIGIMATIC MICROMETER(商品名、株式会社ミツトヨ製)を用いた。結果を表3に示す。
【0090】
【表3】
【0091】
その結果、上記焼成条件によって、外層の表層が手で持ったときにべとつかない程度に焼成でき、且つ、それらの複合油脂性菓子は、外層の食感が軽く、内層はソフトで口溶けのよい、外層と内層のそれぞれチョコレートの食感のギャップをしっかりと感じることができる複合油脂性菓子であった。