【実施例】
【0065】
次に、実施例
等の各例により具体的に説明する
。以下に
各例における評価方法を記載する。
(1)微粒子の一次粒子径の測定方法
以下の各例における、「一次粒子径の範囲」は、走査型電子顕微鏡(SEM(Scanning Electron Microscope))を使用した観察により、任意に80個の微粒子の一次粒子径を測定して、最も小さい側の粒子径の微粒子数の5%と、最も大きい側の粒子径の微粒子数の5%を除いた、残り90%の粒子の一次粒子径の測定値の範囲であり、「微粒子の平均一次粒子径」は該残り90%の粒子の一次粒子径の測定値の平均値である。観察用試料の調製は、エタノールに分散した微粒子をポーラスアルミナフィルター(Whatman社製、商品名:アノディスク)に通過させながら溶媒を乾燥除去した後、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を行った。
(2)微粒子の平均二次粒子径の測定方法
動的光散乱型粒度分布測定装置(シスメックス社(Sysmex Corporation)製、型式:ゼータサイザーナノシリーズ(Zetasizer Nano Series) Nano−ZSを用いて測定した値である。
【0066】
(3)微粒子の平均アスペクト比の測定方法
微粒子の一次粒子径の測定方法と同様に、
各例においては走査型電子顕微鏡(SEM)を使用した観察により、任意に80個の微粒子の一次粒子径を測定して、最も小さい側の粒子径の微粒子数の5%と、最も大きい側の粒子径の微粒子数の5%を除いた、残り90%の粒子の一次粒子径のアスペクト比の平均値である。
(4)めっき膜状、及びデンドライト状の析出物の有無
走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して1000倍の倍率で観察した際に、観察像中にミクロンサイズのめっき膜状、及びデンドライト状析出物が1%以下(該百分率は、「[めっき膜状又はデンドライト状に凝縮した微粒子数/全微粒子数]×100(%)」から求められる割合である。)の場合にはめっき膜状、及びデンドライト状の凝集は「無し」とし、1%を超える場合にはめっき膜状、及びデンドライト状の凝集は「有り」とした。
【0067】
(5)微粒子の金属組成の同定方法
走査型電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型X線分光装置(SEM−EDX)を使用して、微粒子に対して金属組成の分析を実施した。また、X線回折測定装置((株)リガク製、型式:Geigerflex RAD-A)を用いた、X線源としてCuKαを用いたX線回折測定による微粒子の基本的な結晶構造分析も必要に応じて行った。
【0068】
(6)微粒子シェル部に存在する金属酸化物の結晶性と金属酸化物濃度の測定方法
透過型電子顕微鏡(TEM(Transmission Electron Microscope))を使用した観察により、一次粒子のシェル部における金属酸化物の結晶性を電子線回折によって解析した。さらに金属酸化物の組成を透過型電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型X線分光装置(TEM−EDX)を使用して、金属酸化物組成の分析を実施した。
【0069】
また、X線回折測定装置((株)リガク製、型式:Geigerflex RAD−A)を用い、X線源をCuKαとして行ったX線回折による分析結果から、微粒子(P)のシェル部に存在するアモルファス金属酸化物濃度([アモルファス金属酸化物の質量/微粒子(P)の質量]×100(質量%))を求めた。具体的には、微粒子(P)を示差熱熱重量同時測定装置(TG−DTA(Thermogravimetry/Differential Thermal Analysis))内に設置し、水素などの還元ガス雰囲気もしくはヘリウムなどの不活性雰囲気において、500℃以上まで加熱させて還元処理した際の重量変化から、微粒子中に含まれる金属酸化物の質量を測定した。次に、微粒子(P)のX線回折による分析を行い、金属元素(M)の最大強度であるメインピークの2θでのピーク高さ、及び金属元素(M)の酸化物の最大強度であるメインピークの2θでのピーク高さの強度比の変化から結晶性の金属、結晶性の金属酸化物、アモルファスの金属酸化物の比率を算出してアモルファスとして含まれる金属酸化物の質量を見積もった。比率を算出するための参照データとして、結晶性の金属粉、結晶性の金属酸化物粉、アモルファスの金属酸化物粉が既知の質量比で混合された粉体を標準試料として用いて、上記同様の操作から得られたピーク強度比から、質量比に対する検量線をあらかじめ作成した。ただし、試料の測定値が作成した検量線の検出限界を下回る場合には、原則的にアモルファスは未検出として算出した。
【0070】
以下の各例においては、上記金属元素(M)が、銅の場合は2θ=43度付近に存在するCu(111)面のピークと、2θ=36度付近に存在するCu
2O(111)面のピーク、亜鉛の場合は2θ=43度付近に存在するZn(101)面のピークと、2θ=34.5度付近に存在するZnO(002)面のピーク、スズの場合は2θ=32度付近に存在するSn(101)面のピークと、2θ=30度付近に存在するSnO(101)面のピーク、ニッケルの場合は2θ=44.5度付近に存在するNi(111)面のピークと、2θ=43.3度付近に存在するNiO(200)面のピークを解析対象としたが、金属元素(M)と酸素の比率が上記と異なる金属酸化物が形成されている場合も同様にメインピークの強度比によって定義できる。
【0071】
尚、微粒子(P)の加熱処理による金属酸化物の重量測定とX線回折によるアモルファス成分の質量比率の算出が困難な場合は、熱刺激電流(Thermally Stimulated Current)測定を用いることができる。具体的には、結晶性の金属粉、結晶性の金属酸化物粉、アモルファスの金属酸化物粉が既知の質量比で混合された粉体を標準試料として用いて熱刺激電流測定を行うことで、非晶質成分のガラス転移に伴う脱分極スペクトルの大きさに対して、アモルファス成分の質量比率と対応させた検量線を作成する。この検量線に基づいて、本発明の微粒子の熱刺激電流スペクトルから微粒子シェル部のアモルファス金属酸化物の質量%が算出可能となる。ただし、試料の測定値が使用機器の検出限界を下回る場合には、原則的にアモルファスは未検出として算出した。
【0072】
(7)微粒子の被覆分子構造の同定方法
顕微ラマン分光装置((株)東京インスツルメンツ製、型式:Nanofinder@30)とフーリエ変換赤外分光光度計(日本分光(株)製、型式:FT/IR−4100)を用いて、微粒子を被覆した化合物種を同定した。なお、顕微ラマン分光装置では必要に応じて、局在表面プラズモン共鳴によってラマン散乱強度を高めることが可能なナノサイズの凹凸構造体(Ag又はCu)に試料を塗布して解析した。
(8)微粒子における有機分散剤被覆量の測定方法
炭素・硫黄分析計((株)堀場製作所製、型式:EMIA−920V2)を用いて、有機分散剤で被覆された微粒子(P)中における有機分散剤(D)の割合([有機分散剤(D)/微粒子(P)]×100(質量%))を求めた。
【0073】
(9)微粒子に含まれる非金属元素、及びアルカリ土類金属元素の濃度の測定方法
ICP発光分光分析装置(バリアンテクノロジーズジャパンリミテッド、型式:Vista−Pro)を用いて、微粒子(P)に含まれる非金属元素(N)の割合([(N)/(P)](μg/g))、及びアルカリ土類金属元素(A2)の割合([(A2)/(P)](μg/g)をそれぞれ求めた。尚、1μg/gは、1gの微粒子(P)中に1μgの非金属元素(N)又はアルカリ土類金属元素(A2)が存在することに相当する。
【0074】
[実施例1]
無電解還元反応により銅微粒子を生成させ、得られた銅微粒子の評価を行った。尚、還元反応水溶液は非金属元素としてホウ素、アルカリ金属元素としてナトリウム、アルカリ土類金属元素としてカルシウム、有機分散剤としてポリビニルピロリドン、が含まれるように調製した。
(1)銅微粒子の調製
金属元素である銅の供給源として水酸化銅14.6g、アルカリ土類金属元素の供給源として水酸化カルシウム0.74g、有機分散剤としてポリビニルピロリドン50gを蒸留水960gへ添加して撹拌した後、この水溶液を窒素ガス雰囲気中に移した。次に、非金属元素であるホウ素と、アルカリ金属元素であるナトリウムの供給源でもある水素化ホウ素ナトリウム溶液を還元剤として上記水溶液へ添加することで還元反応水溶液1L(リットル)を調製した([非金属元素(N)/金属元素(M)]モル濃度比:0.47)。調製した還元反応水溶液の酸化還元電位は標準水素電極基準で−300mV以下、pHは約12であった。この還元反応水溶液を撹拌しながら浴温20℃で60分の間、酸化還元電位を−300mV以下となるように適宜、還元剤を滴下するなどして無電解還元反応させ続けた結果、溶液中に銅微粒子が析出した。得られた銅微粒子分散水溶液を遠心分離機に入れ、粒子成分を沈殿回収した。回収した銅微粒子にエタノールを加えて撹拌洗浄して遠心分離機で銅微粒子を回収するエタノール洗浄操作を2度行い、水洗して溶媒を乾燥除去した後、5gの銅微粒子を得た。
【0075】
(2)生成した銅微粒子の評価
(イ)銅微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した銅微粒子の一次粒子径は、20〜500nmの範囲で、平均一次粒子径は55nmであった。また、該銅微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、銅100質量%であった。
(ロ)銅微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いて銅微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該銅微粒子の平均二次粒子径は、350nmであった。これらの銅微粒子の平均アスペクト比は1.2で、形状は顆粒状であり、めっき膜状、及びデンドライト状の凝集は観察されなかった。
【0076】
(ハ)微粒子シェル部に存在する金属酸化物の結晶性と金属酸化物量の同定
透過型電子顕微鏡(TEM)による観察の結果、銅微粒子の一次粒子のコア部に結晶性の金属元素、シェル部にアモルファス化合物が確認された。さらに透過型電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型X線分光装置(TEM−EDX)を使用して、微粒子シェル部に存在するアモルファス化合物の組成分析を実施したところ、亜酸化銅(Cu
2O)であった。また、微粒子の加熱処理による金属酸化物の重量測定とX線回折によるアモルファス成分の質量比率から、微粒子(P)のシェル部に存在するアモルファス金属酸化物量([アモルファス金属酸化物の質量/微粒子(P)の質量]×100(質量%))を求めたところ、10質量%であった。
【0077】
(ニ)被覆有機分散剤の分子構造の同定
得られた銅微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、ポリビニルピロリドンに由来するピロリドン基(C
4H
6NO)に帰属するピークが検出された。
(ホ)有機分散剤の被覆量
炭素・硫黄分析計を用いた銅微粒子の分析では、有機分散剤であるポリビニルピロリドンで被覆された微粒子(P)中の有機分散剤の割合([有機分散剤(D)/微粒子(P)]×100(質量%))は、1質量%であった。
(ヘ)銅微粒子に含まれる非金属元素、及びアルカリ土類金属元素の測定
ICP発光分光・分析計を用いた銅微粒子の分析では、微粒子(P)に含まれるホウ素が15μg/g、カルシウムが10μg/g検出された。
【0078】
[実施例2]
無電解還元反応により銅微粒子を生成させ、得られた銅微粒子の評価を行った。尚、還元反応水溶液は非金属元素としてホウ素、アルカリ金属元素としてナトリウム、アルカリ土類金属元素としてカルシウム、有機分散剤としてポリビニルピロリドン、が含まれるように調製した。
(1)銅微粒子の調製
金属元素である銅の供給源として水酸化銅14.6g、アルカリ土類金属元素の供給源として水酸化カルシウム11g、有機分散剤としてポリビニルピロリドン5gを蒸留水960gへ添加して撹拌した後、この水溶液を窒素ガス雰囲気中に移した。次に、非金属元素であるホウ素と、アルカリ金属元素であるナトリウムの供給源でもある水素化ホウ素ナトリウム溶液を還元剤として上記水溶液へ添加することで還元反応水溶液1L(リットル)を調製した([非金属元素(N)/金属元素(M)]モル濃度比:1)。調製した還元反応水溶液の酸化還元電位は標準水素電極基準で−500mV以下、pHは約13であった。
【0079】
この還元反応水溶液を撹拌しながら浴温20℃で60分の間、酸化還元電位を−500mV以下となるように適宜、還元剤を滴下するなどして無電解還元反応させ続けた結果、溶液中に銅微粒子が析出した。得られた銅微粒子分散水溶液を遠心分離機に入れ、銅微粒子成分を沈殿回収した。回収した銅微粒子にエタノールを加えて撹拌洗浄して遠心分離機で銅微粒子を回収するエタノール洗浄操作を2度行い、水洗して溶媒を乾燥除去した後、5gの銅微粒子を得た。
【0080】
(2)生成した銅微粒子の評価
(イ)銅微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した銅微粒子の一次粒子径は、10〜150nmの範囲で、平均一次粒子径は20nmであった。また、該銅微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、銅100質量%であった。
(ロ)銅微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いて銅微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該銅微粒子の平均二次粒子径は、200nmであった。これらの銅微粒子の平均アスペクト比は1.1で、形状は顆粒状であり、めっき膜状、及びデンドライト状の凝集は観察されなかった。
【0081】
(ハ)微粒子シェル部に存在する金属酸化物の結晶性と金属酸化物量の同定
透過型電子顕微鏡(TEM)による観察の結果、銅微粒子の一次粒子のコア部に結晶性の金属元素、シェル部にアモルファス化合物が確認された。さらに透過型電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型X線分光装置(TEM−EDX)を使用して、微粒子(P)のシェル部に存在するアモルファス化合物の組成分析を実施したところ、亜酸化銅(Cu
2O)であった。また、微粒子の加熱処理による金属酸化物の重量測定とX線回折によるアモルファス成分の質量比率から、微粒子(P)のシェル部に存在するアモルファス金属酸化物量([アモルファス金属酸化物の質量/微粒子(P)の質量]×100(質量%))を求めたところ、27質量%であった。
【0082】
(ニ)被覆有機分散剤の分子構造の同定
得られた銅微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、ポリビニルピロリドンに由来するピロリドン基(C
4H
6NO)に帰属するピークが検出された。
(ホ)有機分散剤の被覆量
炭素・硫黄分析計を用いた銅微粒子の分析では、有機分散剤であるポリビニルピロリドンで被覆された微粒子(P)中の有機分散剤の割合([有機分散剤(D)/微粒子(P)]×100(質量%))は、0.4質量%であった。
(ヘ)銅微粒子に含まれる非金属元素、及びアルカリ土類金属元素の測定
ICP発光分光・分析計を用いた銅微粒子の分析では微粒子(P)中にホウ素が35μg/g、カルシウムが100μg/g検出された。
【0083】
[実施例3]
無電解還元反応により銅微粒子を生成させ、得られた銅微粒子の評価を行った。尚、還元反応水溶液は非金属元素としてホウ素、アルカリ金属元素としてナトリウム、アルカリ土類金属元素としてカルシウム、有機分散剤としてポリビニルピロリドン、が含まれるように調製した。
(1)銅微粒子の調製
アルカリ土類金属元素の供給源として酢酸カルシウム1水和物53gとした以外は実施例2と同様にして、5gの銅微粒子を得た。
生成した銅微粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)で撮影した写真を
図1、2にそれぞれ示す。
(2)生成した銅微粒子の評価
(イ)銅微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した銅微粒子の一次粒子径は、5〜60nmの範囲で、平均一次粒子径は15nmであった。また、該銅微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、銅100質量%であった。
(ロ)銅微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いて銅微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該銅微粒子の平均二次粒子径は、100nmであった。これらの銅微粒子の平均アスペクト比は1.1で、形状は顆粒状であり、めっき膜状、及びデンドライト状の凝集は観察されなかった。
【0084】
(ハ)微粒子シェル部に存在する金属酸化物の結晶性と金属酸化物量の同定
透過型電子顕微鏡(TEM)による観察の結果、銅微粒子の一次粒子のコア部に結晶性の金属元素、シェル部にアモルファス化合物が確認された。さらに透過型電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型X線分光装置(TEM−EDX)を使用して、微粒子シェル部に存在するアモルファス化合物の組成分析を実施したところ、亜酸化銅(Cu
2O)であった。また、微粒子の加熱処理による金属酸化物の重量測定とX線回折によるアモルファス成分の質量比率から、微粒子(P)のシェル部に存在するアモルファス金属酸化物量([アモルファス金属酸化物の質量/微粒子(P)の質量]×100(質量%))を求めたところ、50質量%であった。
【0085】
(ニ)被覆有機分散剤の分子構造の同定
得られた銅微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、ポリビニルピロリドンに由来するピロリドン基(C
4H
6NO)に帰属するピークが検出された。
(ホ)有機分散剤の被覆量
炭素・硫黄分析計を用いた銅微粒子の分析では、有機分散剤であるポリビニルピロリドンで被覆された微粒子(P)の有機分散剤の割合([有機分散剤(D)/微粒子(P)]×100(質量%))は、0.5質量%であった。
(ヘ)銅微粒子に含まれる非金属元素、及びアルカリ土類金属元素の測定
ICP発光分光・分析計を用いた銅微粒子の分析では、微粒子(P)に含まれるホウ素が70μg/g、カルシウムが13000μg/g検出された。
【0086】
[実施例4]
無電解還元反応により銅微粒子を生成させ、得られた銅微粒子の評価を行った。尚、還元反応水溶液は非金属元素としてホウ素とリン、アルカリ金属元素としてナトリウム、アルカリ土類金属元素としてカルシウム、有機分散剤としてポリビニルピロリドン、が含まれるように調製した。
(1)銅微粒子の調製
アルカリ土類金属元素の供給源として酢酸カルシウム1水和物88g、非金属元素であるリンの供給源としてホスフィン酸19.8gを添加した以外は実施例2と同様にして、5gの銅微粒子を得た。
【0087】
(2)生成した銅微粒子の評価
(イ)銅微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した銅微粒子の一次粒子径は、1〜40nmの範囲で、平均一次粒子径は8nmであった。また、該銅微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、銅100質量%であった。
(ロ)銅微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いて銅微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該銅微粒子の平均二次粒子径は、120nmであった。これらの銅微粒子の平均アスペクト比は1.1で、形状は顆粒状であり、めっき膜状、及びデンドライト状の凝集は観察されなかった。
【0088】
(ハ)微粒子シェル部に存在する金属酸化物の結晶性と金属酸化物量の同定
透過型電子顕微鏡(TEM)による観察の結果、銅微粒子の一次粒子のコア部に結晶性の金属元素、シェル部にアモルファス化合物が確認された。さらに透過型電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型X線分光装置(TEM−EDX)を使用して、微粒子シェル部に存在するアモルファス化合物の組成分析を実施したところ、亜酸化銅(Cu
2O)であった。また、微粒子の加熱処理による金属酸化物の重量測定とX線回折によるアモルファス成分の質量比率から、微粒子(P)のシェル部に存在するアモルファス金属酸化物量([アモルファス金属酸化物の質量/微粒子(P)の質量]×100(質量%))を求めたところ、80質量%であった。
【0089】
(ニ)被覆有機分散剤の分子構造の同定
得られた銅微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、ポリビニルピロリドンに由来するピロリドン基(C
4H
6NO)に帰属するピークが検出された。
(ホ)有機分散剤の被覆量
炭素・硫黄分析計を用いた銅微粒子の分析では、有機分散剤であるポリビニルピロリドンで被覆された微粒子(P)における、有機分散剤の割合([有機分散剤(D)/微粒子(P)]×100(質量%))は、0.5質量%であった。
(ヘ)銅微粒子に含まれる非金属元素、及びアルカリ土類金属元素の測定
ICP発光分光・分析計を用いた銅微粒子の分析では、微粒子(P)に含まれるホウ素が250μg/g、リンが1000μg/g、カルシウムが20000μg/g検出された。
【0090】
[実施例5]
無電解還元反応により銅微粒子を生成させ、得られた銅微粒子の評価を行った。尚、還元反応水溶液は非金属元素としてホウ素とリン、アルカリ金属元素としてナトリウム、有機分散剤としてポリビニルピロリドン、が含まれるように調製した。また、ポリビニルピロリドンの追加被覆処理も行った。
(1)銅微粒子の調製
酢酸カルシウム1水和物を添加せずに、非金属元素であるリンの供給源としてホスフィン酸1.98g、有機分散剤としてポリビニルピロリドン100gを添加した以外は実施例4と同様にして、5gの銅微粒子を得た。
(2)ポリビニルピロリドンの追加被覆
得られた銅微粒子をポリビニルピロリドン(10g/リットル)メタノール溶液へ添加して、浴温10℃で10分間、撹拌状態を保持した。その後、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に銅微粒子を採取し、水洗とアルコール洗浄によって溶媒を乾燥除去することで、ポリビニルピロリドンが追加被覆された銅微粒子を得た。該被覆された銅微粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した写真を
図3に示す。
【0091】
(3)生成した銅微粒子の評価
(イ)銅微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した銅微粒子の一次粒子径は、10〜80nmの範囲で、平均一次粒子径は25nmであった。また、該銅微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、銅100質量%であった。
(ロ)銅微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いて銅微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該銅微粒子の平均二次粒子径は、150nmであった。これらの銅微粒子の平均アスペクト比は1.2で、形状は顆粒状であり、めっき膜状、及びデンドライト状の凝集は観察されなかった。
【0092】
(ハ)微粒子シェル部に存在する金属酸化物の結晶性と金属酸化物量の同定
透過型電子顕微鏡(TEM)による観察の結果、銅微粒子の一次粒子のコア部に結晶性の金属元素、シェル部にアモルファス化合物が確認された。さらに透過型電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型X線分光装置(TEM−EDX)を使用して、微粒子シェル部に存在するアモルファス化合物の組成分析を実施したところ、亜酸化銅(Cu
2O)であった。また、微粒子の加熱処理による金属酸化物の重量測定とX線回折によるアモルファス成分の質量比率から、微粒子(P)のシェル部に存在するアモルファス金属酸化物量([アモルファス金属酸化物の質量/微粒子(P)の質量]×100(質量%))を求めたところ、45質量%であった。
【0093】
(ニ)被覆有機分散剤の分子構造の同定
得られた銅微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、ポリビニルピロリドンに由来するピロリドン基(C
4H
6NO)に帰属するピークが検出された。
(ホ)有機分散剤の被覆量
炭素・硫黄分析計を用いた銅微粒子の分析では、有機分散剤であるポリビニルピロリドンで被覆された銅微粒子(P)中の有機分散剤の割合([有機分散剤(D)/微粒子(P)]×100(質量%))は、20質量%であった。
(ヘ)銅微粒子に含まれる非金属元素の測定
ICP発光分光・分析計を用いた銅微粒子の分析では、微粒子(P)に含まれるホウ素が30μg/g、リンが70μg/g検出された。
【0094】
[実施例6]
無電解還元反応により銅微粒子を生成させ、得られた銅微粒子の評価を行った。尚、還元反応水溶液は非金属元素としてホウ素、アルカリ金属元素としてナトリウム、有機分散剤としてポリビニルピロリドン、が含まれるように調製した。
(1)銅微粒子の調製
金属元素である銅の供給源として水酸化銅14.6g、有機分散剤としてポリビニルピロリドン50g、非金属元素であるホウ素の供給源としてホウ酸27.8g、を蒸留水960gへ添加して撹拌した後、この水溶液を窒素ガス雰囲気中に移した。次に、非金属元素であるホウ素と、アルカリ金属元素であるナトリウムの供給源でもある水素化ホウ素ナトリウム溶液を還元剤として上記水溶液へ添加することで還元反応水溶液1L(リットル)を調製した([非金属元素(N)/金属元素(M)]モル濃度比:5)。調製した還元反応水溶液の酸化還元電位は標準水素電極基準で−800mV以下、pHは約13であった。この還元反応水溶液を撹拌しながら浴温20℃で60分の間、酸化還元電位を−800mV以下となるように適宜、還元剤を滴下するなどして無電解還元反応させ続けた結果、溶液中に銅微粒子が析出した。得られた銅微粒子分散水溶液を遠心分離機に入れ、粒子成分を沈殿回収した。回収した微粒子にエタノールを加えて撹拌洗浄して遠心分離機で微粒子を回収するエタノール洗浄操作を2度行い、水洗して溶媒を乾燥除去した後、5gの銅微粒子を得た。
【0095】
(2)生成した銅微粒子の評価
(イ)銅微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した銅微粒子の一次粒子径は、10〜70nmの範囲で、平均一次粒子径は20nmであった。また、該銅微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、銅100質量%であった。
(ロ)銅微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いて銅微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該銅微粒子の平均二次粒子径は、140nmであった。これらの銅微粒子の平均アスペクト比は1.1で、形状は顆粒状であり、めっき膜状、及びデンドライト状の凝集は観察されなかった。
【0096】
(ハ)微粒子シェル部に存在する金属酸化物の結晶性と金属酸化物量の同定
透過型電子顕微鏡(TEM)による観察の結果、一次粒子のコア部に結晶性の金属元素、シェル部にアモルファス化合物が確認された。さらに透過型電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型X線分光装置(TEM−EDX)を使用して、シェル部に存在するアモルファス化合物の組成分析を実施したところ、亜酸化銅(Cu
2O)であった。また、銅微粒子の加熱処理による金属酸化物の重量測定とX線回折によるアモルファス成分の質量比率から、微粒子(P)のシェル部に存在するアモルファス金属酸化物量([アモルファス金属酸化物の質量/微粒子(P)の質量]×100(質量%))を求めたところ、70質量%であった。
【0097】
(ニ)被覆有機分散剤の分子構造の同定
得られた銅微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、ポリビニルピロリドンに由来するピロリドン基(C
4H
6NO)に帰属するピークが検出された。
(ホ)有機分散剤の被覆量
炭素・硫黄分析計を用いた銅微粒子の分析では、有機分散剤であるポリビニルピロリドンで被覆された銅微粒子(P)中の有機分散剤の割合([有機分散剤(D)/微粒子(P)]×100(質量%))は、1.8質量%であった。
(ヘ)銅微粒子に含まれる非金属元素の測定
ICP発光分光・分析計を用いた銅微粒子の分析では、微粒子(P)に含まれるホウ素が1000μg/g検出された。
【0098】
[実施例7]
無電解還元反応により銅微粒子を生成させ、得られた銅微粒子の評価を行った。尚、還元反応水溶液は非金属元素としてホウ素とリン、アルカリ金属元素としてナトリウム、アルカリ土類金属元素としてカルシウム、有機分散剤としてポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール(分子量:500)が含まれるように調製した。
(1)銅微粒子の調製
有機分散剤としてポリビニルピロリドン1g、ポリビニルアルコール(分子量:500)10gを添加した以外は実施例4と同様にして、5gの銅微粒子を得た。
【0099】
(2)生成した銅微粒子の評価
(イ)銅微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した銅微粒子の一次粒子径は、15〜100nmの範囲で、平均一次粒子径は40nmであった。また、該銅微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、銅100質量%であった。
(ロ)銅微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いて銅微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該銅微粒子の平均二次粒子径は、250nmであった。これらの銅微粒子の平均アスペクト比は1.3で、形状は顆粒状であり、めっき膜状、及びデンドライト状の凝集は観察されなかった。
【0100】
(ハ)微粒子シェル部に存在する金属酸化物の結晶性と金属酸化物量の同定
透過型電子顕微鏡(TEM)による観察の結果、銅微粒子の一次粒子のコア部に結晶性の金属元素、シェル部にアモルファス化合物が確認された。さらに透過型電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型X線分光装置(TEM−EDX)を使用して、微粒子シェル部に存在するアモルファス化合物の組成分析を実施したところ、亜酸化銅(Cu
2O)であった。また、微粒子の加熱処理による金属酸化物の重量測定とX線回折によるアモルファス成分の質量比率から、微粒子(P)のシェル部に存在するアモルファス金属酸化物量([アモルファス金属酸化物の質量/微粒子(P)の質量]×100(質量%))を求めたところ、25質量%であった。
【0101】
(ニ)被覆有機分散剤の分子構造の同定
得られた銅微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、ポリビニルピロリドンに由来するピロリドン基(C
4H
6NO)と、ポリビニルアルコールに帰属するピークが検出された。
(ホ)有機分散剤の被覆量
炭素・硫黄分析計を用いた銅微粒子の分析では、有機分散剤であるポリビニルピロリドンとポリビニルアルコールで被覆された微粒子(P)における、有機分散剤の割合([有機分散剤(D)/微粒子(P)]×100(質量%))は、0.1質量%であった。
(ヘ)銅微粒子に含まれる非金属元素、及びアルカリ土類金属元素の測定
ICP発光分光・分析計を用いた銅微粒子の分析では、微粒子(P)に含まれるホウ素が5μg/g、リンが30μg/g、カルシウムが100μg/g検出された。
【0102】
[実施例8]
無電解還元反応により銅微粒子を生成させ、得られた銅微粒子の評価を行った。尚、還元反応水溶液は非金属元素としてホウ素とリン、アルカリ金属元素としてナトリウム、有機分散剤としてポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミドが含まれるように調製した。また、ポリビニルアルコールの追加被覆処理も行った。
(1)銅微粒子の調製
有機分散剤としてポリビニルピロリドン1g、ポリアクリルアミド10gを添加した以外は実施例5と同様にして、5gの銅微粒子を得た。
【0103】
(2)ポリビニルアルコールの追加被覆
銅微粒子をポリビニルアルコール(分子量:500)(10g/リットル)メタノール溶液へ添加して、浴温10℃で10分間、撹拌状態を保持した。その後、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に微粒子を採取し、水洗とアルコール洗浄によって溶媒を乾燥除去することで、ポリビニルアルコールが追加被覆された銅微粒子を得た。
【0104】
(3)生成した銅微粒子の評価
(イ)銅微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した銅微粒子の一次粒子径は、40〜200nmの範囲で、平均一次粒子径は75nmであった。また、該微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、銅100質量%であった。
(ロ)銅微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いて銅微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該銅微粒子の平均二次粒子径は、300nmであった。これらの銅微粒子の平均アスペクト比は1.3で、形状は顆粒状であり、めっき膜状、及びデンドライト状の凝集は観察されなかった。
【0105】
(ハ)微粒子シェル部に存在する金属酸化物の結晶性と金属酸化物量の同定
透過型電子顕微鏡(TEM)による観察の結果、銅微粒子の一次粒子のコア部に結晶性の金属元素、シェル部にアモルファス化合物が確認された。さらに透過型電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型X線分光装置(TEM−EDX)を使用して、微粒子シェル部に存在するアモルファス化合物の組成分析を実施したところ、亜酸化銅(Cu
2O)であった。また、微粒子の加熱処理による金属酸化物の重量測定とX線回折によるアモルファス成分の質量比率から、微粒子(P)のシェル部に存在するアモルファス金属酸化物量([アモルファス金属酸化物の質量/微粒子(P)の質量]×100(質量%))を求めたところ、10質量%であった。
【0106】
(ニ)被覆有機分散剤の分子構造の同定
得られた銅微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、ポリビニルピロリドンに由来するピロリドン基(C
4H
6NO)と、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミドに帰属するピークが検出された。
(ホ)有機分散剤の被覆量
炭素・硫黄分析計を用いた銅微粒子の分析では、有機分散剤であるポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミドで被覆された微粒子(P)における、有機分散剤の割合([有機分散剤(D)/微粒子(P)]×100(質量%))は、3質量%であった。
(ヘ)銅微粒子に含まれる非金属元素の測定
ICP発光分光・分析計を用いた銅微粒子の分析では、微粒子(P)に含まれるホウ素が5μg/g、リンが5μg/g検出された。
【0107】
[実施例9]
電解還元反応により銅微粒子を生成させ、得られた銅微粒子の評価を行った。尚、還元反応水溶液は非金属元素としてホウ素とリン、アルカリ金属元素としてナトリウム、アルカリ土類金属元素としてカルシウム、有機分散剤としてN−ビニル−2−ピロリドン、が含まれるように調製した。
(1)銅微粒子の調製
金属元素である銅の供給源として酢酸銅(II)の1水和物20g、有機分散剤としてN−ビニル−2−ピロリドン(炭素原子数:6)30g、非金属元素であるホウ素の供給源としてホウ酸3.1g、非金属元素であるリン、及びアルカリ金属元素の供給源としてホスフィン酸ナトリウムの1水和物5.3g、アルカリ土類金属元素の供給源として酢酸カルシウム1水和物1.76gを使用して、還元反応水溶液1L(リットル)を調製した([非金属元素(N)/金属元素(M)]モル濃度比:1)。還元反応水溶液のpHは約6.0であった。次に、この溶液中でSUS304製棒陰極(カソード電極)と白金板陽極(アノード電極)との間を浴温10℃で、カソードの酸化還元電位が標準水素電極基準で−1500mV以下となるように電圧を印加して、15分間、電解還元反応させ続けた結果、カソード外表面付近に銅微粒子が析出した。還元反応終了後の反応水溶液を、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に採取し、エタノール洗浄と水洗浄して溶媒を乾燥除去した後、1gの銅微粒子を得た。
【0108】
(2)生成した銅微粒子の評価
(イ)銅微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した銅微粒子の一次粒子径は、3〜75nmの範囲で、平均一次粒子径は15nmであった。また、該銅微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、銅100質量%であった。
(ロ)銅微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いて銅微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該銅微粒子の平均二次粒子径は、90nmであった。これらの銅微粒子の平均アスペクト比は1.1で、形状は顆粒状であり、めっき膜状、及びデンドライト状の凝集は観察されなかった。
【0109】
(ハ)微粒子シェル部に存在する金属酸化物の結晶性と金属酸化物量の同定
透過型電子顕微鏡(TEM)による観察の結果、銅微粒子の一次粒子のコア部に結晶性の金属元素、シェル部にアモルファス化合物が確認された。さらに透過型電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型X線分光装置(TEM−EDX)を使用して、シェル部に存在するアモルファス化合物の組成分析を実施したところ、亜酸化銅(Cu
2O)であった。また、微粒子の加熱処理による金属酸化物の重量測定とX線回折によるアモルファス成分の質量比率から、微粒子(P)のシェル部に存在するアモルファス金属酸化物量([アモルファス金属酸化物の質量/微粒子(P)の質量]×100(質量%))を求めたところ、40質量%であった。
【0110】
(ニ)被覆有機分散剤の分子構造の同定
得られた銅微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、N−ビニル−2−ピロリドンに由来するピロリドン基(C
4H
6NO)に帰属するピークが検出された。
(ホ)有機分散剤の被覆量
炭素・硫黄分析計を用いた銅微粒子の分析では、有機分散剤であるN−ビニル−2−ピロリドンで被覆された微粒子(P)中の有機分散剤の割合([有機分散剤(D)/微粒子(P)]×100(質量%))は、2.1質量%であった。
(ヘ)銅微粒子に含まれる非金属元素、及びアルカリ土類金属元素の測定
ICP発光分光・分析計を用いた銅微粒子の分析では、微粒子(P)に含まれるホウ素が80μg/g、リンが100μg/g、カルシウムが300μg/g検出された。
【0111】
[
参考例1]
電解還元反応により亜鉛微粒子を生成させ、得られた亜鉛微粒子の評価を行った。尚、還元反応水溶液は非金属元素としてホウ素とリン、アルカリ金属元素としてナトリウム、アルカリ土類金属元素としてカルシウム、有機添加剤としてN−メチル−2−ピロリドン、が含まれるように調製した。また、N−メチル−2−ピロリドンの追加被覆処理も行った。
(1)亜鉛微粒子の調製
金属元素である亜鉛の供給源として酢酸亜鉛(II)の2水和物22g、アルカリ土類金属元素の供給源として酢酸カルシウム1水和物3.52g、有機分散剤としてN−メチル−2−ピロリドン(炭素原子数:5)80gを添加した以外は実施例9と同様にして、1gの亜鉛微粒子を得た。
(2)N−メチル−2−ピロリドンの追加被覆
亜鉛微粒子をN−メチル−2−ピロリドン(10g/リットル)メタノール溶液へ添加して、浴温10℃で10分間、撹拌状態を保持した。その後、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に微粒子を採取し、水洗とアルコール洗浄によって溶媒を乾燥除去することで、N−メチル−2−ピロリドンが追加被覆された亜鉛微粒子を得た。
【0112】
(3)生成した亜鉛微粒子の評価
(イ)亜鉛微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した亜鉛微粒子の一次粒子径は、20〜350nmの範囲で、平均一次粒子径は65nmであった。また、該亜鉛微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、亜鉛100質量%であった。
(ロ)亜鉛微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いて亜鉛微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該亜鉛微粒子の平均二次粒子径は、300nmであった。これらの亜鉛微粒子の平均アスペクト比は1.2で、形状は顆粒状であり、めっき膜状、及びデンドライト状の凝集は観察されなかった。
【0113】
(ハ)微粒子シェル部に存在する金属酸化物の結晶性と金属酸化物量の同定
透過型電子顕微鏡(TEM)による観察の結果、亜鉛微粒子の一次粒子のコア部に結晶性の金属元素、シェル部にアモルファス化合物が確認された。さらに透過型電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型X線分光装置(TEM−EDX)を使用して、シェル部に存在するアモルファス化合物の組成分析を実施したところ、酸化亜鉛(ZnO)であった。また、微粒子の加熱処理による金属酸化物の重量測定とX線回折によるアモルファス成分の質量比率から、微粒子(P)のシェル部に存在するアモルファス金属酸化物量([アモルファス金属酸化物の質量/微粒子(P)の質量]×100(質量%))を求めたところ、45質量%であった。
【0114】
(ニ)被覆有機分散剤の分子構造の同定
得られた亜鉛微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、N−メチル−2−ピロリドンに由来するピロリドン基(C
4H
6NO)に帰属するピークが検出された。
(ホ)有機分散剤の被覆量
炭素・硫黄分析計を用いた亜鉛微粒子の分析では、有機分散剤であるN−メチル−2−ピロリドンで被覆された微粒子(P)における、有機分散剤の割合([有機分散剤(D)/微粒子(P)]×100(質量%))は、8.5質量%であった。
(ヘ)亜鉛微粒子に含まれる非金属元素、及びアルカリ土類金属元素の測定
ICP発光分光・分析計を用いた亜鉛微粒子の分析では、微粒子(P)に含まれるホウ素が350μg/g、リンが300μg/g、カルシウムが900μg/g検出された。
【0115】
[
参考例2]
電解還元反応によりスズ微粒子を生成させ、得られたスズ微粒子の評価を行った。尚、還元反応水溶液は非金属元素としてホウ素とリン、アルカリ金属元素としてナトリウム、アルカリ土類金属元素としてカルシウム、有機添加剤としてN−メチル−2−ピロリドン、が含まれるように調製した。また、N−メチル−2−ピロリドンの追加被覆処理も行った。
(1)スズ微粒子の調製
金属元素であるスズの供給源として酢酸スズ(II)25gを添加した以外は
参考例1と同様にして、1gのスズ微粒子を得た。
【0116】
(2)N−メチル−2−ピロリドンの追加被覆
参考例1と同様にして、N−メチル−2−ピロリドンが追加被覆されたスズ微粒子を得た。
(3)生成したスズ微粒子の評価
(イ)スズ微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成したスズ微粒子の一次粒子径は、45〜500nmの範囲で、平均一次粒子径は65nmであった。また、該スズ微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、スズ100質量%であった。
(ロ)スズ微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いてスズ微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該スズ微粒子の平均二次粒子径は、400nmであった。これらのスズ微粒子の平均アスペクト比は1.2で、形状は顆粒状であり、めっき膜状、及びデンドライト状の凝集は観察されなかった。
【0117】
(ハ)微粒子シェル部に存在する金属酸化物の結晶性と金属酸化物量の同定
透過型電子顕微鏡(TEM)による観察の結果、スズ微粒子の一次粒子のコア部に結晶性の金属元素、シェル部にアモルファス化合物が確認された。さらに透過型電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型X線分光装置(TEM−EDX)を使用して、シェル部に存在するアモルファス化合物の組成分析を実施したところ、酸化スズ(SnO)であった。また、微粒子の加熱処理による金属酸化物の重量測定とX線回折によるアモルファス成分の質量比率から、微粒子(P)のシェル部に存在するアモルファス金属酸化物量([アモルファス金属酸化物の質量/微粒子(P)の質量]×100(質量%))を求めたところ、70質量%であった。
【0118】
(ニ)被覆有機分散剤の分子構造の同定
得られたスズ微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、N−メチル−2−ピロリドンに由来するピロリドン基(C
4H
6NO)に帰属するピークが検出された。
(ホ)有機分散剤の被覆量
炭素・硫黄分析計を用いたスズ微粒子の分析では、有機分散剤であるN−メチル−2−ピロリドンで被覆された微粒子(P)中の有機分散剤の割合([有機分散剤(D)/微粒子(P)]×100(質量%))は、9質量%であった。
(ヘ)スズ微粒子に含まれる非金属元素、及びアルカリ土類金属元素の測定
ICP発光分光・分析計を用いたスズ微粒子の分析では、微粒子(P)に含まれるホウ素が800μg/g、リンが800μg/g、カルシウムが2500μg/g検出された。
【0119】
[
参考例3]
電解還元反応によりニッケル微粒子を生成させ、得られたニッケル微粒子の評価を行った。尚、還元反応水溶液は非金属元素としてホウ素とリン、アルカリ金属元素としてナトリウム、アルカリ土類金属元素としてカルシウム、有機分散剤としてN−メチル−2−ピロリドン、が含まれるように調製した。また、N−メチル−2−ピロリドンの追加被覆処理も行った。
(1)ニッケル微粒子の調製
金属元素であるニッケルの供給源として酢酸ニッケル(II)の4水和物26gを添加した以外は
参考例1と同様にして、1gのニッケル微粒子を得た。
(2)N−メチル−2−ピロリドンの追加被覆
参考例1と同様にして、N−メチル−2−ピロリドンが追加被覆されたニッケル微粒子を得た。
【0120】
(3)生成したニッケル微粒子の評価
(イ)ニッケル微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成したニッケル微粒子の一次粒子径は、30〜400nmの範囲で、平均一次粒子径は70nmであった。また、該微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、ニッケル100質量%であった。
(ロ)ニッケル微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いてニッケル微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該ニッケル微粒子の平均二次粒子径は、350nmであった。これらのニッケル微粒子の平均アスペクト比は1.2で、形状は顆粒状であり、めっき膜状、及びデンドライト状の凝集は観察されなかった。
【0121】
(ハ)微粒子シェル部に存在する金属酸化物の結晶性と金属酸化物量の同定
透過型電子顕微鏡(TEM)による観察の結果、ニッケル微粒子の一次粒子のコア部に結晶性の金属元素、シェル部にアモルファス化合物が確認された。さらに透過型電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型X線分光装置(TEM−EDX)を使用して、シェル部に存在するアモルファス化合物の組成分析を実施したところ、酸化ニッケル(NiO)であった。また、微粒子の加熱処理による金属酸化物の重量測定とX線回折によるアモルファス成分の質量比率から、微粒子(P)のシェル部に存在するアモルファス金属酸化物量([アモルファス金属酸化物の質量/微粒子(P)の質量]×100(質量%))を求めたところ、60質量%であった。
(ニ)被覆有機分散剤の分子構造の同定
得られたニッケル微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、N−メチル−2−ピロリドンに由来するピロリドン基(C
4H
6NO)に帰属するピークが検出された。
(ホ)有機分散剤の被覆量
炭素・硫黄分析計を用いたスズ微粒子の分析では、有機分散剤であるN−メチル−2−ピロリドンで被覆された微粒子(P)における、有機分散剤の割合([有機分散剤(D)/微粒子(P)]×100(質量%))は、10質量%であった。
(ヘ)スズ微粒子に含まれる非金属元素、及びアルカリ土類金属元素の測定
ICP発光分光・分析計を用いたニッケル微粒子の分析では、微粒子(P)に含まれるホウ素が450μg/g、リンが420μg/g、カルシウムが1500μg/g検出された。
【0122】
[実施例
10]
電解還元反応により銅−亜鉛合金微粒子を生成させ、得られた銅−亜鉛合金微粒子の評価を行った。尚、還元反応水溶液は非金属元素としてホウ素とリン、アルカリ金属元素としてナトリウム、アルカリ土類金属元素としてカルシウム、有機添加剤としてN−ビニル−2−ピロリドン、が含まれるように調製した。
(1)銅−亜鉛合金微粒子の調製
金属元素である銅の供給源として酢酸銅(II)の1水和物20g、亜鉛の供給源として酢酸亜鉛(II)の2水和物3.3g、有機分散剤としてN−ビニル−2−ピロリドン(炭素原子数:6)60g、を添加した以外は実施例9と同様にして、1gの銅−亜鉛合金微粒子を得た。
(2)生成した銅−亜鉛合金微粒子の評価
(イ)銅−亜鉛合金微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した銅−亜鉛合金微粒子の一次粒子径は、10〜95nmの範囲で、平均一次粒子径は25nmであった。また、該微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、銅90質量%、亜鉛10質量%(以下、銅−10%亜鉛合金のように表示することがある。)であった。
(ロ)銅−亜鉛合金微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いて銅−亜鉛合金微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該銅−亜鉛合金微粒子の平均二次粒子径は、120nmであった。これらの銅−亜鉛合金微粒子の平均アスペクト比は1.2で、形状は顆粒状であり、めっき膜状、及びデンドライト状の凝集は観察されなかった。
【0123】
(ハ)微粒子シェル部に存在する金属酸化物の結晶性と金属酸化物量の同定
透過型電子顕微鏡(TEM)による観察の結果、銅−亜鉛合金微粒子の一次粒子のコア部に結晶性の金属元素、シェル部にアモルファス化合物が確認された。さらに透過型電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型X線分光装置(TEM−EDX)を使用して、シェル部に存在するアモルファス化合物の組成分析を実施したところ、亜酸化銅(Cu
2O)と酸化亜鉛(ZnO)が混在していた。また、微粒子の加熱処理による金属酸化物の重量測定とX線回折によるアモルファス成分の質量比率、及び熱刺激電流測定の脱分極スペクトルの比率から、微粒子(P)のシェル部に存在するアモルファス金属酸化物量([アモルファス金属酸化物の質量/微粒子(P)の質量]×100(質量%))を求めたところ、50質量%であった。
【0124】
(ニ)被覆有機分散剤の分子構造の同定
得られた銅−亜鉛合金微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、N−ビニル−2−ピロリドンに由来するピロリドン基(C
4H
6NO)に帰属するピークが検出された。
(ホ)有機分散剤の被覆量
炭素・硫黄分析計を用いた銅−亜鉛合金微粒子の分析では、有機分散剤であるN−ビニル−2−ピロリドンで被覆された微粒子(P)中の有機分散剤の割合([有機分散剤(D)/微粒子(P)]×100(質量%))は、5質量%であった。
(ヘ)銅−亜鉛合金微粒子に含まれる非金属元素、及びアルカリ土類金属元素の測定
ICP発光分光・分析計を用いた銅−亜鉛合金微粒子の分析では、銅−亜鉛合金微粒子に含まれるホウ素が330μg/g、リンが300μg/g、カルシウムが1200μg/g検出された。
【0125】
[実施例
11]
電解還元反応により銅−スズ合金微粒子を生成させ、得られた銅−スズ合金微粒子の評価を行った。尚、還元反応水溶液は非金属元素としてホウ素とリン、アルカリ金属元素としてナトリウム、アルカリ土類金属元素としてカルシウム、有機添加剤としてN−ビニル−2−ピロリドン、が含まれるように調製した。
(1)銅−スズ合金微粒子の調製
金属元素である銅の供給源として酢酸銅(II)の1水和物20g、スズの供給源として酢酸スズ(II)1.23g、アルカリ土類金属元素の供給源として酢酸カルシウム1水和物5.28g、有機分散剤としてN−ビニル−2−ピロリドン(炭素原子数:6)60g、を添加した以外は実施例9と同様にして、1gの銅−スズ合金微粒子を得た。
【0126】
(2)生成した銅−スズ合金微粒子の評価
(イ)銅−スズ合金微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した銅−スズ合金微粒子の一次粒子径は、25〜250nmの範囲で、平均一次粒子径は45nmであった。また、該銅−スズ合金微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、銅91質量%、スズ9質量%(以下、銅−9%スズ合金のように表示することがある。)であった。
(ロ)銅−スズ合金微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いて銅−スズ合金微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該銅−スズ合金微粒子の平均二次粒子径は、240nmであった。これらの銅−スズ合金微粒子の平均アスペクト比は1.2で、形状は顆粒状であり、めっき膜状、及びデンドライト状の凝集は観察されなかった。
【0127】
(ハ)微粒子シェル部に存在する金属酸化物の結晶性と金属酸化物量の同定
透過型電子顕微鏡(TEM)による観察の結果、銅−スズ合金微粒子の一次粒子のコア部に結晶性の金属元素、シェル部にアモルファス化合物が確認された。さらに透過型電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型X線分光装置(TEM−EDX)を使用して、シェル部に存在するアモルファス化合物の組成分析を実施したところ、亜酸化銅(Cu
2O)と酸化スズ(SnO)が混在していた。また、微粒子の加熱処理による金属酸化物の重量測定とX線回折によるアモルファス成分の質量比率、及び熱刺激電流測定の脱分極スペクトルの比率から、微粒子(P)のシェル部に存在するアモルファス金属酸化物量([アモルファス金属酸化物の質量/微粒子(P)の質量]×100(質量%))を求めたところ、80質量%であった。
【0128】
(ニ)被覆有機分散剤の分子構造の同定
得られた銅−スズ合金微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、N−ビニル−2−ピロリドンに由来するピロリドン基(C
4H
6NO)に帰属するピークが検出された。
(ホ)有機分散剤の被覆量
炭素・硫黄分析計を用いた銅−スズ合金微粒子の分析では、有機分散剤であるN−ビニル−2−ピロリドンで被覆された微粒子(P)中の有機分散剤の割合([有機分散剤(D)/微粒子(P)]×100(質量%))は、5.1質量%であった。
(ヘ)微粒子に含まれる非金属元素、及びアルカリ土類金属元素の測定
ICP発光分光・分析計を用いた銅−スズ合金微粒子の分析では、微粒子(P)に含まれるホウ素が1000μg/g、リンが1000μg/g、カルシウムが3000μg/g検出された。
【0129】
[
参考例4]
電解還元反応により銅−ニッケル合金微粒子を生成させ、得られた銅−ニッケル合金微粒子の評価を行った。尚、還元反応水溶液は非金属元素としてホウ素とリン、アルカリ金属元素としてナトリウム、アルカリ土類金属元素としてカルシウム、有機添加剤としてN−ビニル−2−ピロリドン、が含まれるように調製した。
(1)銅−ニッケル合金微粒子の調製
金属元素である銅の供給源として酢酸銅(II)の1水和物20g、ニッケルの供給源として酢酸ニッケル(II)の4水和物2.6g、有機分散剤としてN−ビニル−2−ピロリドン(炭素原子数:6)60g、を添加した以外は実施例9と同様にして、1gの銅−ニッケル合金微粒子を得た。
【0130】
(2)生成した銅−ニッケル合金微粒子の評価
(イ)銅−ニッケル合金微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した銅−ニッケル合金微粒子の一次粒子径は、20〜150nmの範囲で、平均一次粒子径は30nmであった。また、該銅−ニッケル合金微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、銅90質量%、ニッケル10質量%(以下、銅−10%ニッケル合金のように表示することがある。)であった。
(ロ)銅−ニッケル合金微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いて銅−ニッケル合金微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該銅−ニッケル合金微粒子の平均二次粒子径は、200nmであった。これらの銅−ニッケル合金微粒子の平均アスペクト比は1.2で、形状は顆粒状であり、めっき膜状、及びデンドライト状の凝集は観察されなかった。
【0131】
(ハ)微粒子シェル部に存在する金属酸化物の結晶性と金属酸化物量の同定
透過型電子顕微鏡(TEM)による観察の結果、銅−ニッケル合金微粒子の一次粒子のコア部に結晶性の金属元素、シェル部にアモルファス化合物が確認された。さらに透過型電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型X線分光装置(TEM−EDX)を使用して、微粒子シェル部に存在するアモルファス化合物の組成分析を実施したところ、亜酸化銅(Cu
2O)と酸化ニッケル(NiO)が混在していた。また、微粒子の加熱処理による金属酸化物の重量測定とX線回折によるアモルファス成分の質量比率、及び熱刺激電流測定の脱分極スペクトルの比率から、微粒子(P)のシェル部に存在するアモルファス金属酸化物量([アモルファス金属酸化物の質量/微粒子(P)の質量]×100(質量%))を求めたところ、65質量%であった。
【0132】
(ニ)被覆有機分散剤の分子構造の同定
得られた銅−ニッケル合金微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、N−ビニル−2−ピロリドンに由来するピロリドン基(C
4H
6NO)に帰属するピークが検出された。
(ホ)有機分散剤の被覆量
炭素・硫黄分析計を用いた銅−ニッケル合金微粒子の分析では、有機分散剤であるN−ビニル−2−ピロリドンで被覆された微粒子(P)における、有機分散剤の割合([有機分散剤(D)/微粒子(P)]×100(質量%))は、5.3質量%であった。
(ヘ)銅−ニッケル合金微粒子に含まれる非金属元素、及びアルカリ土類金属元素の測定
ICP発光分光・分析計を用いた銅−ニッケル合金微粒子の分析では、微粒子(P)に含まれるホウ素が430μg/g、リンが400μg/g、カルシウムが1600μg/g検出された。
【0133】
[比較例1]
(1)銅微粒子の調製
水素化ホウ素ナトリウム溶液を還元剤として、調製した還元反応水溶液の酸化還元電位を標準水素電極基準で−150mV以下で、かつ−300mVに達しないように適宜、還元剤を滴下するなどして無電解還元反応させ続けた以外は実施例1と同様にして、5gの銅微粒子を得た。
(2)生成した銅微粒子の評価
(イ)銅微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した銅微粒子の一次粒子径は、80〜700nmの範囲で、平均一次粒子径は150nmであった。また、該銅微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、銅100質量%であった。
(ロ)銅微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いて銅微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該銅微粒子の平均二次粒子径は、1200nmであった。これらの銅微粒子の平均アスペクト比は1.6であった。また、形状がめっき膜状の凝集径が50μm以上の凝集体が混入していることが確認された。該めっき膜状の凝集体を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した写真を
図4に示す。
【0134】
(ハ)微粒子シェル部に存在する金属酸化物の結晶性と金属酸化物量の同定
透過型電子顕微鏡(TEM)による観察の結果、銅微粒子の一次粒子のコア部に結晶性の金属元素、シェル部に結晶性の金属酸化物が確認された。さらに透過型電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型X線分光装置(TEM−EDX)を使用して、シェル部の組成分析を実施したところ、結晶性の亜酸化銅(Cu
2O)であった。
(ニ)被覆有機分散剤の分子構造の同定
得られた銅微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、ポリビニルピロリドンに由来するピロリドン基(C
4H
6NO)に帰属するピークが検出された。
【0135】
(ホ)有機分散剤の被覆量
炭素・硫黄分析計を用いた銅微粒子の分析では、有機分散剤であるポリビニルピロリドンで被覆された微粒子(P)中の有機分散剤の割合([有機分散剤(D)/微粒子(P)]×100(質量%))は、0.08質量%であった。
(ヘ)銅微粒子に含まれる非金属元素、及びアルカリ土類金属元素の測定
ICP発光分光・分析計を用いた銅微粒子の分析では、微粒子(P)に含まれるホウ素が検出下限を下回る5μg/g未満、カルシウムが検出下限を下回る5μg/g未満であった。
【0136】
[比較例2]
(1)銅微粒子の調製
アルカリ土類金属元素の供給源である水酸化カルシウムと、有機分散剤であるポリビニルピロリドンを添加しなかった以外は実施例2と同様にして、5gの銅微粒子を得た。
(2)生成した銅微粒子の評価
(イ)銅微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した銅微粒子の一次粒子径は、30〜350nmの範囲で、平均一次粒子径は45nmであった。また、該微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、銅100質量%であった。
【0137】
(ロ)銅微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いて銅微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該銅微粒子の平均二次粒子径は、500nmであった。これらの銅微粒子の平均アスペクト比は1.2であった。また、形状がめっき膜状の凝集径が50μm以上の凝集体が混入していることが確認された。
(ハ)微粒子シェル部に存在する金属酸化物の結晶性と金属酸化物量の同定
透過型電子顕微鏡(TEM)による観察の結果、銅微粒子の一次粒子のコア部に結晶性の金属元素、シェル部に結晶性の金属酸化物が確認された。さらに透過型電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型X線分光装置(TEM−EDX)を使用して、シェル部の組成分析を実施したところ、結晶性の亜酸化銅(Cu
2O)であった。
(ニ)微粒子に含まれる非金属元素の測定
ICP発光分光・分析計を用いた銅微粒子の分析では、銅微粒子に含まれるホウ素が10μg/g検出された。
【0138】
[比較例3]
(1)銅微粒子の調製
カソードの酸化還元電位が標準水素電極基準で−250mV以下で、かつ−300mVに達しないように電圧を印加して、電解還元反応させ続けた以外は実施例9と同様にして、1gの銅微粒子を得た。
(2)生成した銅微粒子の評価
(イ)銅微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した銅微粒子の一次粒子径は、45〜650nmの範囲で、平均一次粒子径は90nmであった。また、該銅微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、銅100質量%であった。
(ロ)銅微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いて銅微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該銅微粒子の平均二次粒子径は、700nmであった。これらの銅微粒子の平均アスペクト比は1.4であった。また、形状がデンドライト状の凝集径が5μm以上の凝集体が混入していることが確認された。
【0139】
(ハ)微粒子シェル部に存在する金属酸化物の結晶性と金属酸化物量の同定
透過型電子顕微鏡(TEM)による観察の結果、銅微粒子の一次粒子のコア部に結晶性の金属元素、シェル部に結晶性の金属酸化物が確認された。さらに透過型電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型X線分光装置(TEM−EDX)を使用して、シェル部の組成分析を実施したところ、結晶性の亜酸化銅(Cu
2O)であった。
(ニ)被覆有機分散剤の分子構造の同定
得られた銅微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、N−ビニル−2−ピロリドンに由来するピロリドン基(C
4H
6NO)に帰属するピークが検出された。
(ホ)有機分散剤の被覆量
炭素・硫黄分析計を用いた銅微粒子の分析では、有機分散剤であるN−ビニル−2−ピロリドンで被覆された微粒子(P)中の有機分散剤の割合([有機分散剤(D)/微粒子(P)]×100(質量%))は、0.2質量%であった。
(ヘ)銅微粒子に含まれる非金属元素、及びアルカリ土類金属元素の測定
ICP発光分光・分析計を用いた銅微粒子の分析では、銅微粒子に含まれるホウ素が検出下限を下回る5μg/g未満、リンが5μg/g未満、カルシウムが10μg/g未満であった。
【0140】
[比較例4]
(1)銅−亜鉛合金微粒子の調製
還元反応水溶液に非金属元素としてホウ素とリン、アルカリ金属元素としてナトリウム、アルカリ土類金属元素としてカルシウム、を添加しないで電解還元反応させ続けた以外は実施例
10と同様にして、1gの銅−亜鉛合金微粒子を得た。
(2)生成した銅−亜鉛合金微粒子の評価
(イ)銅−亜鉛合金微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した銅−亜鉛合金微粒子の一次粒子径は、80〜750nmの範囲で、平均一次粒子径は140nmであった。また、該微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、銅90質量%、亜鉛10質量%であった。
(ロ)銅−亜鉛合金微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いて銅−亜鉛合金微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該銅−亜鉛合金微粒子の平均二次粒子径は、800nmであった。これらの銅−亜鉛合金微粒子の平均アスペクト比は1.4で、形状は顆粒状であり、めっき膜状、及びデンドライト状の凝集は観察されなかった。
【0141】
(ハ)微粒子シェル部に存在する金属酸化物の結晶性と金属酸化物量の同定
透過型電子顕微鏡(TEM)による観察の結果、銅−亜鉛合金微粒子の一次粒子のコア部に結晶性の金属元素、シェル部に結晶性の金属酸化物が確認された。さらに透過型電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型X線分光装置(TEM−EDX)を使用して、シェル部の組成分析を実施したところ、結晶性の亜酸化銅(Cu
2O)と酸化亜鉛(ZnO)が混在していた。
(ニ)被覆有機分散剤の分子構造の同定
得られた銅−亜鉛合金微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、N−ビニル−2−ピロリドンに由来するピロリドン基(C
4H
6NO)に帰属するピークが検出された。
【0142】
(ホ)有機分散剤の被覆量
炭素・硫黄分析計を用いた銅−亜鉛合金微粒子の分析では、有機分散剤であるN−ビニル−2−ピロリドンで被覆された微粒子(P)における、有機分散剤の割合([有機分散剤(D)/微粒子(P)]×100(質量%))は、0.08質量%であった。
(ヘ)銅−亜鉛合金微粒子に含まれる非金属元素の測定方法
ICP発光分光・分析計を用いた銅−亜鉛合金微粒子の分析では、銅−亜鉛合金微粒子に含まれるホウ素が検出下限を下回る5μg/g未満、リンが5μg/g未満であった。
【0143】
[比較例5]
(1)銅−スズ合金微粒子の調製
還元反応水溶液に非金属元素としてホウ素とリン、アルカリ金属元素としてナトリウム、アルカリ土類金属元素としてカルシウム、を添加しないで電解還元反応させ続けた以外は実施例
11と同様にして、1gの銅−スズ合金微粒子を得た。
(2)生成した銅−スズ合金微粒子の評価
(イ)銅−スズ合金微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した銅−スズ合金微粒子の一次粒子径は、95〜800nmの範囲で、平均一次粒子径は170nmであった。また、該銅−スズ合金微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、銅91質量%、スズ9質量%であった。
(ロ)銅−スズ合金微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いて銅−スズ合金微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該銅−スズ合金微粒子の平均二次粒子径は、850nmであった。これらの銅−スズ合金微粒子の平均アスペクト比は1.4で、形状は顆粒状であり、めっき膜状、及びデンドライト状の凝集は観察されなかった。
【0144】
(ハ)微粒子シェル部に存在する金属酸化物の結晶性と金属酸化物量の同定
透過型電子顕微鏡(TEM)による観察の結果、銅−スズ合金微粒子の一次粒子のコア部に結晶性の金属元素、シェル部に結晶性の金属酸化物が確認された。さらに透過型電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型X線分光装置(TEM−EDX)を使用して、シェル部の組成分析を実施したところ、結晶性の亜酸化銅(Cu
2O)と酸化スズ(SnO)が混在していた。
(ニ)被覆有機分散剤の分子構造の同定
得られた銅−スズ合金微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、N−ビニル−2−ピロリドンに由来するピロリドン基(C
4H
6NO)に帰属するピークが検出された。
【0145】
(ホ)有機分散剤の被覆量
炭素・硫黄分析計を用いた銅−スズ合金微粒子の分析では、有機分散剤であるN−ビニル−2−ピロリドンで被覆された微粒子(P)における、有機分散剤の割合([有機分散剤(D)/微粒子(P)]×100(質量%))は、0.06質量%であった。
(ヘ)銅−スズ合金微粒子に含まれる非金属元素の測定
ICP発光分光・分析計を用いた銅−スズ合金微粒子の分析では、銅−スズ合金微粒子に含まれるホウ素が検出下限を下回る5μg/g未満、リンが5μg/g未満であった。
【0146】
[比較例6]
(1)銅−ニッケル合金微粒子の調製
還元反応水溶液に非金属元素としてホウ素とリン、アルカリ金属元素としてナトリウム、アルカリ土類金属元素としてカルシウム、を添加しないで電解還元反応させ続けた以外は
参考例4と同様にして、1gの銅−ニッケル合金微粒子を得た。
(2)生成した銅−ニッケル合金微粒子の評価
(イ)銅−ニッケル合金微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した銅−ニッケル合金微粒子の一次粒子径は、90〜750nmの範囲で、平均一次粒子径は160nmであった。また、該銅−ニッケル合金微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、銅90質量%、ニッケル10質量%であった。
【0147】
(ロ)銅−ニッケル合金微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いて銅−ニッケル合金微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該銅−ニッケル合金微粒子の平均二次粒子径は、800nmであった。これらの銅−ニッケル合金微粒子の平均アスペクト比は1.4で、形状は顆粒状であり、めっき膜状、及びデンドライト状の凝集は観察されなかった。
(ハ)微粒子シェル部に存在する金属酸化物の結晶性と金属酸化物量の同定
透過型電子顕微鏡(TEM)による観察の結果、銅−ニッケル合金微粒子の一次粒子のコア部に結晶性の金属元素、シェル部に結晶性の金属酸化物が確認された。さらに透過型電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型X線分光装置(TEM−EDX)を使用して、微粒子シェル部の組成分析を実施したところ、結晶性の亜酸化銅(Cu
2O)と酸化ニッケル(NiO)が混在していた。
【0148】
(ニ)被覆有機分散剤の分子構造の同定
得られた銅−ニッケル合金微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、N−ビニル−2−ピロリドンに由来するピロリドン基(C4H6NO)に帰属するピークが検出された。
(ホ)有機分散剤の被覆量
炭素・硫黄分析計を用いた銅−ニッケル合金微粒子の分析では、有機分散剤であるN−ビニル−2−ピロリドンで被覆された微粒子(P)における、有機分散剤の割合([有機分散剤(D)/微粒子(P)]×100(質量%))は、0.06質量%であった。
(ヘ)銅−ニッケル合金微粒子に含まれる非金属元素の測定方法
ICP発光分光・分析計を用いた銅−ニッケル合金微粒子の分析では、微粒子(P)に含まれるホウ素が検出下限を下回る5μg/g未満、リンが5μg/g未満であった。
上記実施例1〜
11及び比較例1〜4における、実験条件と評価結果を表1−1と表1−2に、比較例1〜6における、実験条件と評価結果を表2にそれぞれまとめて示す。
【0149】
【表1-1】
【0150】
【表1-2】
【0151】
【表2】
【0152】
[実施例
12]
上記実施例
等で作製した微粒子を焼結して得られた焼結導電体の抵抗率と空隙率の評価を行った。
上記実施例1〜7、9
〜11で得られた微粒子を、濃度が50質量%となるようにエタノールを添加した後、超音波ホモジナイザーを用いてよく撹拌して微粒子分散溶液とした。乾燥後の塗布膜の厚みが3μm程度となるように微粒子分散溶液をスピンコータでガラス基板(サイズ:2cm×2cm)に塗布して、試料を雰囲気制御型の熱処理炉内に設置し、窒素ガス雰囲気中、50〜70℃の温度範囲で加熱して塗膜からエタノールを除去させて乾燥粉末膜とした。その後、熱処理炉内で3%水素混合窒素ガス雰囲気中、200〜250℃の温度範囲で10分間加熱・焼成した後、熱処理炉中でゆっくりと室温まで炉冷し、焼結導電体を得た。直流四端子法(使用測定機:三菱化学(株)製、型式:ロレスターGP(四端子電気抵抗測定モード))を使用して、該焼結導電体の抵抗率を測定した。また、焼結導電体の断面SEM像を撮影し、撮影した画像の空隙部分のピクセルを黒、それ以外を白の2階調化した後に、画像数値化ソフトを利用して空隙率を数値データ化した。測定結果を表3に示す。
【0153】
【表3】
【0154】
[比較例7]
実施例
12で使用した微粒子をそれぞれ比較例1〜3で得られた生成物とした以外は実施例
12と同様の方法で、実験試料を調製した後、熱処理炉内における乾燥粉末膜の加熱処理による焼成を実施して、形成された焼結導電体の抵抗率を測定した。これらの評価結果を表5に示す。
【0155】
[実施例
13]
(1)実験試料の調製
上記実施例1〜7、9
〜11で得られた微粒子に、濃度が20〜70質量%の範囲となるように有機化合物(S1)を含有している有機溶媒(S)を添加した後、超音波ホモジナイザーを用いてよく撹拌し、評価用の微粒子分散溶液を得た。
(2)焼結導電体の抵抗率、空隙率
得られた微粒子分散溶液をスピンコータでガラス基板(サイズ:2cm×2cm)上の全面に、焼結後の焼結導電体の厚みが10μmとなるようにそれぞれ塗布した。その後、試料を雰囲気制御型の熱処理炉内に設置し、窒素ガス雰囲気中150〜300℃の温度範囲で20〜40分間加熱・焼成した後、熱処理炉中でゆっくりと室温まで炉冷し、焼結導電体を得た。直流四端子法(使用測定機:三菱化学(株)製、型式:ロレスターGP(四端子電気抵抗測定モード))を使用して、該焼結導電体の抵抗率を測定した。また、焼結導電体の断面SEM像を撮影し、撮影した画像の空隙部分のピクセルを黒、それ以外を白の2階調化した後に、画像数値化ソフトを利用して空隙率を数値データ化した。測定結果を表4−1と表4−2に示す。
【0156】
(3)導電接続部材のダイシェア強度
得られた微粒子分散溶液を銅基板(サイズ:2cm×2cm)に焼結後の導電接続部材の厚みが40μmとなるように乾燥塗布した。その後、半導体シリコンチップ(サイズ:4mm×4mm)を4MPaの加圧力で塗布膜上に押し付けた試料を雰囲気制御型の熱処理炉内に設置し、窒素ガス雰囲気中150〜300℃の温度範囲で20〜40分間加熱・焼成した後、熱処理炉中でゆっくりと室温まで炉冷し、焼結体を介して半導体素子と導体基板とを接合した。基板表面に接合されたシリコンチップを米国MIL‐STD‐883に準拠したダイシェア強度評価装置を用いて、25℃において、ダイシェア強度を評価した。測定結果を表4−1と表4−2に示す。
【0157】
【表4-1】
【0158】
【表4-2】
【0159】
[比較例8]
実施例
13の微粒子を比較例1〜3で得られた生成物とした以外は実施例
13と同様の方法で、実験試料を調製した後、熱処理炉内における加熱処理による焼成を実施して、形成された焼結導電体の抵抗率、及び導電接続部材のダイシェア強度を測定した。これらの評価結果を表5に示す。
【0160】
【表5】
【0161】
[実施例
14、比較例9]
上記
各例で作製した微粒子の粒成長挙動の評価を行った。
(1)実験試料の調製
上記実施例3、比較例2で得られた微粒子に、濃度が50質量%となるように有機化合物(S1)であるグリセロールを添加した後、超音波ホモジナイザーを用いてよく撹拌し、評価用の微粒子分散溶液を得た。
(2)微粒子の粒成長挙動の測定
得られた微粒子分散溶液を、2枚の厚さ10μmの純アルミ箔に挟み込み、金属の円柱にて薄くする。微粒子分散溶液とアルミ箔部分を直径15mm程度の円形にトリミングを行う。微粒子分散溶液の厚さは80〜60μmとなるように調整した。
(極)小角X線散乱((U)SAXS)は、SPring−8のビームラインBL19B2に設置されたSAXS装置を利用した。X線のエネルギーとしては18keVを選択し、検出器は2次元位置敏感型検出器(PILATUS−2M)を用いた。カメラ長はベヘン酸銀の回折ピーク(58.53Å)で較正し、SAXSで3m、USAXSで43mとした。加熱処理には、Instec社製の加熱ステージ(HCS402 Dual Heater Microscope Hot And Cold Stage)を用いた。
測定条件は、昇温レート:10〜5℃/min、最高到達温度:300℃とし、300℃で20分保持した。加熱による酸化を防ぐため、加熱ステージ内はアルゴンガスで置換した後、一定量のアルゴンガスを加熱ステージ内に供給した。
得られたX線小角散乱の測定データは、球体モデルによってフィッティングした後、粒子径分布へと変換処理した。昇温時の温度に対する粒径をプロットした結果を
図5に示す。
【0162】
[焼結膜の導電性についての考察]
比較例1〜3で得た銅微粒子又は銅微粒子分散液から調製した焼成膜についての抵抗率は220〜620μΩ・cm、空隙率は40〜50体積%とであったのに対し、実施例1〜7、9で得た銅微粒子又は銅微粒子分散液から調製した焼成膜についての抵抗率は18〜90μΩ・cm、空隙率は8〜27体積%と、より小さい抵抗率と空隙率を示した。このように、
シェル部の一部又は全体が金属元素のアモルファス酸化物から構成されるコア/シェル構造である微粒子を用いることで、銅
の微粒子の焼結性を向上させることが可能であることが確認された。
【0163】
[接合体の接合強度についての評価]
実施例1〜7、9で得た銅微粒子の分散液を用いて基板表面に接合されたシリコンチップのダイシェア強度は18〜50N/mm
2、比較例1〜3で得られた銅微粒子の分散液を用いて基板表面に接合されたシリコンチップのダイシェア強度は3〜7N/mm
2であった。このように、本発明の粒子のシェル部の一部又は全体が金属元素のアモルファス酸化物から構成されるコア/シェル構造である微粒子の分散溶液を用いることで、半導体素子と導体基板の接合強度を向上させることが可能であることが確認された。