特許第5922810号(P5922810)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5922810微粒子、微粒子分散溶液、及び微粒子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5922810
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月24日
(54)【発明の名称】微粒子、微粒子分散溶液、及び微粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 1/02 20060101AFI20160510BHJP
   B22F 9/00 20060101ALI20160510BHJP
   B22F 9/24 20060101ALI20160510BHJP
   B22F 1/00 20060101ALI20160510BHJP
【FI】
   B22F1/02 D
   B22F9/00 B
   B22F9/24 B
   B22F9/24 Z
   B22F9/24 C
   B22F1/00 L
   B22F1/00 M
   B22F1/00 R
【請求項の数】18
【全頁数】47
(21)【出願番号】特願2015-19629(P2015-19629)
(22)【出願日】2015年2月3日
【審査請求日】2015年10月5日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161322
【弁理士】
【氏名又は名称】白坂 一
(74)【代理人】
【識別番号】100120570
【弁理士】
【氏名又は名称】中 敦士
(72)【発明者】
【氏名】石井 智紘
(72)【発明者】
【氏名】山崎 悟志
(72)【発明者】
【氏名】藤原 英道
【審査官】 川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−029013(JP,A)
【文献】 特開2007−009275(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00− 1/02
B22F 9/00− 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次粒子の粒子径が1〜500nmの範囲である微粒子(P)であって、金属元素(M)からなるコア部と、金属元素(M)の酸化物からなるシェル部とから形成されるコア/シェル構造で、かつ該シェル部の金属元素(M)の酸化物の一部又は全部が金属元素(M)のアモルファス酸化物であり、
前記コア部が、銅、銅−亜鉛及び銅−スズ合金のいずれかである、微粒子。
【請求項2】
前記アモルファス酸化物が前記シェル部の金属元素(M)の酸化物中に10質量%以上含まれていることを特徴とする、請求項に記載の微粒子。
【請求項3】
前記微粒子(P)中に非金属元素(N)が含有されていることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の微粒子。
【請求項4】
前記非金属元素(N)がホウ素であって、微粒子(P)中に5〜1000(μg/g)含まれていることを特徴とする、請求項に記載の微粒子。
【請求項5】
前記非金属元素(N)がリンであって、微粒子(P)中に5〜1000(μg/g)含まれていることを特徴とする、請求項に記載の微粒子。
【請求項6】
前記微粒子(P)中にアルカリ土類金属元素(A2)が含有されていることを特徴とする、請求項1からのいずれかに記載の微粒子。
【請求項7】
前記アルカリ土類金属元素(A2)がカルシウムであって、微粒子(P)中に10〜20000(μg/g)含まれていることを特徴とする、請求項に記載の微粒子。
【請求項8】
前記微粒子(P)のシェル部にアルコール基、アミノ基、カルボキシル基、カルボニル基、及びアミド基の中から選択される1種又は2種以上の官能基をもつ有機分散剤(D)が付着していて、微粒子(P)中の有機分散剤(D)の割合([D/P]×100)が0.1〜20質量%であることを特徴とする、請求項1からのいずれかに記載の微粒子。
【請求項9】
前記請求項1からいずれかに記載の微粒子(P)が、常温で液体の有機溶媒(S)に分散していることを特徴とする、微粒子分散溶液。
【請求項10】
前記有機溶媒(S)に、少なくとも1つのヒドロキシル基を有する有機化合物(S1)を含み、有機化合物(S1)がメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、2,2−ジメチル−1−プロパノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−メチル−1−ブタノール、2,2ジメチル−1−プロパノール、3−メチル−2−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2−メチル−2−ヘキサノール、2−メチル−3−ヘキサノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、4−ヘプタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−オクタノール、2−オクタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2,3−ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、グリセロール、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタン、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3−ヘキサントリオール、及び1,2,4−ブタントリオールの中から選択される1種又は2種以上であることを特徴とする、請求項に記載の微粒子分散溶液。
【請求項11】
前記有機溶媒(S)が、1種又は2種以上の有機化合物から構成され、常圧における沸点が140℃以上350℃以下であることを特徴とする、請求項又は請求項10に記載の微粒子分散溶液。
【請求項12】
少なくとも、金属元素(M)の金属塩又は金属イオン、非金属元素(N)化合物、有機分散剤(D)、及びアルカリ金属元素(A1)化合物又はアルカリ土類金属元素(A2)化合物を含有している還元反応水溶液において、標準水素電極基準における酸化還元電位を−300mV以下に維持することにより、一次粒子の粒子径が1〜500nmの範囲で、金属元素(M)からなるコア部と、該金属元素(M)の酸化物からなるシェル部とから形成されるコア/シェル構造で、かつ該シェル部の金属元素(M)の酸化物の一部又は全部が金属元素(M)のアモルファス酸化物であり、前記コア部が銅、銅−亜鉛及び銅−スズ合金のいずれかである、微粒子(P)を還元析出させることを特徴とする、微粒子の製造方法。
【請求項13】
前記非金属元素(N)が、リン、及びホウ素の中から選択される1種又は2種であることを特徴とする、請求項12に記載の微粒子の製造方法。
【請求項14】
前記アルカリ金属元素(A1)がナトリウムであることを特徴とする、請求項12又は請求項13に記載の微粒子の製造方法。
【請求項15】
前記アルカリ土類金属元素(A2)がカルシウムであることを特徴とする、請求項12から14のいずれかに記載の微粒子の製造方法。
【請求項16】
前記有機分散剤(D)が水溶性化合物であって、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、2−ピロリドン、及びアルキル−2−ピロリドンから選択される1種又は2種以上であることを特徴とする、請求項12から15のいずれかに記載の微粒子の製造方法。
【請求項17】
前記微粒子(P)の還元析出が、還元反応水溶液中に還元剤を加えることにより金属元素(M)の微粒子を析出させる無電解還元反応であることを特徴とする、請求項12から16のいずれかに記載の微粒子の製造方法。
【請求項18】
前記微粒子(P)の還元析出が、還元反応水溶液中に設けられたアノードとカソード間に電位を加えることによりカソード表面付近に金属元素(M)の微粒子を析出させる電解還元反応であることを特徴とする、請求項12から16のいずれかに記載の微粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一次粒子の平均粒子径が1〜500nmで、コア部が金属元素で、シェル部が該金属元素の酸化物からなり、該酸化物中の少なくとも一部にアモルファス酸化物が含まれるコア/シェル構造の微粒子、微粒子分散溶液、及び該微粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、金属微粒子は、融点の低下、触媒活性、磁気特性、比熱特性、光学特性の変化等を発現することから、電子材料、触媒材料、蛍光体材料、発光体材料等の分野で広く用いられている。特に、電子材料用の導電性ペーストのような配線形成材料として、プリント配線、半導体の内部配線、プリント配線板と電子部品との接続等に利用されている。最近では、インクジェットプリンターを用いて金属微粒子を含有するインクにより配線パターンの印刷を行い、低温焼成して配線を形成する技術が着目され、研究開発が進められている。しかし、印刷手段にインクジェットプリンターを用いる場合、インクに含まれる金属微粒子は、インク中において分散性を向上し、かつ長期間分散性を保つことが要請されており、そのため金属微粒子のより微細化が必要となっている。
また、金属微粒子を焼成して得られる配線等の導電性の向上、及び金属微粒子の焼成体により電子部品の導電接続部材に使用する際の接合強度の向上も求められている。
【0003】
下記特許文献1には、表面を酸化膜で覆われ、且つ非晶質相の体積分率A(Vf)が50%以上の主金属粉末と、低硬度、且つ高延性の添加金属粉末とを機械的に撹拌混合して、該添加金属粉末より生じた塑性変形物による前記酸化膜の微小砕片の取込みとその主金属粉末表面の被覆とを行うことにより、複数の主金属粉末を前記塑性変形物を介して集合させた凝集粉を製造し、次いで前記凝集粉の集合体を成形する高強度構造部材の製造方法が開示されている。
下記特許文献2には、金属母相粒子(第1の物質)が高密度成形されてなり、前記第1の物質の表面が、主成分がアモルファス酸化物からなる薄膜層(第2の物質)の膜で覆われてなるナノコンポジット材料が開示されている。
下記特許文献3には、希望する組成を有し、かつ、使用特性に優れ、材料組成の選択により、各種機能を有する高効率の素子、デバイスを実現するのに好適なナノ球状粒子、粉末、工業的利用性を充分に満たす捕集率を実現しえるナノ球状粒子の製造方法が開示されている。
【0004】
特許文献4には、銅微粒子を得る方法として、核生成のためのパラジウムイオンを添加すると共に、分散剤としてポリエチレンイミンを添加してポリエチレングリコール又はエチレングリコール溶液中でパラジウムを含有する粒子径50nm以下の銅微粒子を形成し、ついでこの銅微粒子分散溶液を用いて、基板上にパターン印刷を行うために、4%H−N気流中において250℃で3時間の熱処理を行うことによって、微細な銅の導電膜を形成したことが開示されている。
特許文献5には、1次粒子径が100nm以下である金属酸化物微粒子を含むインクジェット用インクをインクジェット法により基板上に塗布した後、水素ガス雰囲気下、350℃で1時間の熱処理を施して、酸化第一銅の還元を行い、金属配線のパターンを得たことが開示されている。
特許文献6には、有機物保護材で表面が被覆された金属酸化物粒子と、カーボン材料との混合物を、酸素を含有した酸化性ガス中で第1焼成し、更に不活性ガス性雰囲気中で第2焼成する表面酸化被膜の還元焼成方法が開示されている。
【0005】
特許文献7には、コア部が銅であり、シェル部が酸化銅であるコア/シェル構造を有する粒子を還元性の分散媒に分散させてなる分散溶液を基板上に塗布し、塗膜を形成する工程と、前記塗膜を加熱し、該塗膜中の粒子の酸化銅を銅に還元するとともに、還元されて得られた銅粒子同士を焼結する工程と、を含む導電性基板の製造方法が開示されている。特許文献8には、表面酸化膜層を有する銅微粒子または酸化銅微粒子の分散溶液を利用して超ファインなパターン描画、あるいは薄膜塗布層形成後、還元処理、焼成して、低インピーダンスでかつ微細な焼結体銅系配線パターン、あるいは極薄い膜厚の銅薄膜層を形成する方法が開示されている。
【0006】
特許文献9には、塩化銅(II)を添加してなるデキストリン・銅水溶液に、還元剤として水素化ホウ素ナトリウムを加えて銅イオンを還元・析出する銅ナノ粒子製造方法が開示されている。
特許文献10と特許文献11には、銅イオン、アルカリ金属イオン、及び水溶性高分子有機化合物などの有機分散剤が溶解している還元反応水溶液において、銅イオンの電解還元反応により銅微粒子を析出させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4−52201号公報
【特許文献2】特開平4−202645号公報
【特許文献3】特許第5139386号公報
【特許文献4】特開2005−330552号公報
【特許文献5】特開2004−277627号公報
【特許文献6】特許第4593502号公報
【特許文献7】特開2009‐218497号公報
【特許文献8】特許第3939735号公報
【特許文献9】特開2003−213311号公報
【特許文献10】特開2009−185348号公報
【特許文献11】特開2012−82516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1、2、3のいずれにも金属元素からなるコア部と該金属元素の酸化物からなるシェル部とから形成される、粒子径がナノサイズのコア/シェル構造で、該シェル部に金属元素のアモルファス酸化物が含まれている、微粒子、及びその製造方法は開示されていない。
【0009】
特許文献4に開示の製造方法で得られる銅微粒子、及び特許文献5に開示の金属酸化物微粒子を焼成するにはそれぞれN気流中において250℃で3時間程度、水素ガス雰囲気下350℃で1時間程度の高温での熱処理が必要である。また、特許文献6には、金属酸化物粒子又は金属粒子の表面酸化被膜とカーボン材料との混合物を、酸化性雰囲気で第1焼成し、その後不活性雰囲気中で第2焼成する還元焼成方法が開示されている。
上記特許文献4〜6のいずれにも、金属微粒子又は表面に金属酸化物を含む金属微粒子を、比較的低温で、かつ簡素なプロセスとしての焼成方法は開示されていない。
特許文献7及び特許文献8に開示のコア部が銅であり、シェル部が酸化銅であるコア/シェル構造を有する粒子において、非晶質からなるシェル部の酸化銅は開示されていない。
【0010】
特許文献9、特許文献10、及び特許文献11に開示の金属ナノ粒子の製造方法において、該粒子の表面が金属酸化物、又は非晶質の金属酸化物からなる粒子の製造方法は開示されていない。
従って、前記特許文献1〜11のいずれにも、有機分散剤がシェル部に配位していることで、粒子の分散性が向上して、粒子の凝集構造に起因した疎な焼結組織の形成を防ぐことが可能な、シェル部にアモルファスの金属酸化物を含むコア/シェル構造の金属微粒子の製造方法、及びこのような製造方法で得られるコア/シェル構造の金属微粒子は開示されておらず、また、焼結初期の低温領域における金属組織の結晶成長が先行することを防ぎ、微粒子間のネッキングを充分に進行させ、その後に高温領域で金属組織の結晶成長が可能な金属微粒子は開示されていない。従って、金属微粒子を焼結して形成される焼結体の導電性とダイシェア強度の向上は期待できない。
【0011】
本発明は、上記課題を解決して、一次粒子の粒子径が小さく、焼結性を低下させずに分散安定性を向上させ、かつ還元反応により析出する微粒子がめっき膜状やデンドライト状に凝集するのを抑制した、コア/シェル構造の金属微粒子を、簡便な方法でかつ大量に生成することのできる製造方法等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、少なくとも、微粒子の基となる金属元素の金属塩又はイオン、非金属元素化合物、有機分散剤、及びアルカリ金属元素化合物又はアルカリ土類金属元素化合物を含有している還元反応水溶液において、標準水素電極基準における酸化還元電位を−300mV以下に維持する還元析出を行うことにより、生成する金属微粒子の微細化と分散性が向上すると共に、析出する金属微粒子がめっき膜状やデンドライト状に凝集するのが顕著に抑制された、金属元素からなるコア部と、該金属元素の酸化物からなるシェル部とから形成されるコア/シェル構造で、かつ該シェル部に金属元素のアモルファス酸化物が含有されている微粒子が得られ、該微粒子を焼成して得られる焼結体は導電性に優れ、導電接続部材として使用すると接合強度も向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下の(1)ないし(20)に記載する発明を要旨とする。
【0013】
(1)一次粒子の粒子径が1〜500nmの範囲である微粒子(P)であって、金属元素(M)からなるコア部と、金属元素(M)の酸化物からなるシェル部とから形成されるコア/シェル構造で、かつ該シェル部の金属元素(M)の酸化物の一部又は全部が金属元素(M)のアモルファス酸化物である微粒子(以下、第1の実施態様ということがある)。
(2)前記コア部が銅、銅−亜鉛及び銅−スズ合金のいずれかである、微粒子
(3)前記アモルファス酸化物が前記シェル部の金属元素(M)の酸化物中に10質量%以上含まれている微粒子
(4)前記微粒子(P)中に非金属元素(N)が含有されている微粒子
(5)前記非金属元素(N)がホウ素であって、微粒子(P)中に5〜1000(μg/g)含まれている微粒子
【0014】
(6)前記非金属元素がリンであって、微粒子(P)中に5〜1000(μg/g)含まれている微粒子
(7)前記微粒子(P)中にアルカリ土類金属元素(A2)が含有されている微粒子
(8)前記アルカリ土類金属元素(A2)がカルシウムであって、微粒子(P)中に10〜20000(μg/g)含まれている微粒子
(9)前記微粒子(P)のシェル部にアルコール基、アミノ基、カルボキシル基、カルボニル基、及びアミド基の中から選択される1種又は2種以上の官能基をもつ有機分散剤(D)が付着していて、微粒子(P)中の有機分散剤(D)の割合([D/P]×100)が0.1〜20質量%である微粒子
【0015】
(10)前記請求項1から9いずれかに記載の微粒子(P)が、常温で液体の有機溶媒(S)に分散している微粒子分散溶液(以下、第2の実施態様ということがある)。
(11)前記有機溶媒(S)に、少なくとも1つのヒドロキシル基を有する有機化合物(S1)を含み、有機化合物(S1)がメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、2,2−ジメチル−1−プロパノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−メチル−1−ブタノール、2,2ジメチル−1−プロパノール、3−メチル−2−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2−メチル−2−ヘキサノール、2−メチル−3−ヘキサノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、4−ヘプタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−オクタノール、2−オクタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2,3−ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、グリセロール、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタン、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3−ヘキサントリオール、及び1,2,4−ブタントリオールの中から選択される1種又は2種以上である微粒子分散溶液。
(12)前記有機溶媒(S)が、1種又は2種以上の有機化合物から構成され、常圧における沸点が140℃以上350℃以下である微粒子分散溶液。
【0016】
(13)少なくとも、金属元素(M)の金属塩又は金属イオン、非金属元素(N)化合物、有機分散剤(D)、及びアルカリ金属元素(A1)化合物又はアルカリ土類金属元素(A2)化合物を含有している還元反応水溶液において、標準水素電極基準における酸化還元電位を−300mV以下に維持することにより、一次粒子の粒子径が1〜500nmの範囲で、金属元素(M)からなるコア部と、該金属元素(M)の酸化物からなるシェル部とから形成されるコア/シェル構造で、かつ該シェル部の金属元素(M)の酸化物の一部又は全部が金属元素(M)のアモルファス酸化物である、微粒子(P)を還元析出させる微粒子の製造方法(以下、第3の実施態様ということがある)。
(14)コア部が銅、銅−亜鉛及び銅−スズ合金のいずれかである、微粒子(P)を還元析出させる微粒子の製造方法。
(15)前記非金属元素(N)が、リン、及びホウ素の中から選択される1種又は2種である微粒子の製造方法。
(16)前記アルカリ金属元素(A1)がナトリウムである微粒子の製造方法。
【0017】
(17)前記アルカリ土類金属元素(A2)がカルシウムであることを特徴とする、前記(13)から(16)のいずれかに記載の微粒子の製造方法。
(18)前記有機分散剤(D)が水溶性化合物であって、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、2−ピロリドン、及びアルキル−2−ピロリドンから選択される1種又は2種以上であることを特徴とする、前記(13)から(17)のいずれかに記載の微粒子の製造方法。
(19)前記微粒子(P)の還元析出が、還元反応水溶液中に還元剤を加えることにより金属元素(M)の微粒子を析出させる無電解還元反応であることを特徴とする、前記(13)から(18)のいずれかに記載の微粒子の製造方法。
(20)前記微粒子(P)の還元析出が、還元反応水溶液中に設けられたアノードとカソード間に電位を加えることによりカソード表面付近に金属元素(M)の微粒子を析出させる電解還元反応であることを特徴とする、前記(13)から(18)のいずれかに記載の微粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
金属元素(M)の金属塩又は金属イオンを還元反応水溶液中で還元して金属微粒子を生成させる際に、還元反応水溶液に非金属元素(N)化合物、有機分散剤(D)、及びアルカリ金属元素(A1)化合物又はアルカリ土類金属元素(A2)化合物が存在していると、アルカリ金属元素(A1)化合物又はアルカリ土類金属元素(A2)化合物による粒子径の微細化効果と、有機分散剤(D)による凝集抑制効果に加えて、非金属元素(N)化合物の存在により、金属元素(M)のイオンが金属酸化物を経由して0価の金属微粒子として還元していく過程で、微粒子前駆体である金属酸化物や0価の微粒子核の表面に非金属元素(N)が取り込まれ、金属酸化物の0価への完全な還元及び酸化物の結晶化を抑制し、微粒子表面であるシェル部にアモルファス酸化物が形成される。その結果、生成された微粒子(P)は、粒子のコア部が金属元素(M)、シェル部の一部又は全体が金属元素(M)のアモルファス酸化物から構成されるコア/シェル構造となる。さらに、アルカリ土類金属元素(A2)については、従来考えられてきた粒子径の微細化効果(特願2012−156307号公報参照)だけでなく、シェル部にアモルファス酸化物の形成を促進させる相乗効果も示した。また、還元反応水溶液中で金属元素(M)の金属塩又は金属イオンを還元して金属微粒子を生成させる際に、標準水素電極基準における酸化還元電位を−300mV以下に維持することにより、還元反応を効率よく進行させることが可能になった。
【0019】
還元反応水溶液中で生成された微粒子(P)について、該微粒子のシェル部にアモルファス酸化物層が存在することによって、アモルファス酸化物の種類に依存した触媒反応に起因する還元焼結反応を可能とする。このような触媒焼結特性に加えて、アモルファス酸化物の被覆層は、焼結初期の低温領域における金属組織の結晶成長が先行することを抑制して、微粒子間のネッキングを充分に進行させ、その後に高温領域で金属組織の結晶成長へと至ることで、より緻密な焼結膜を形成させる効果があることが判明した。この焼結時の低温領域における結晶成長が先行することを抑制する効果は、非金属元素(N)やアルカリ土類金属元素(A2)が微粒子中に併存しているとさらに向上する。また、有機分散剤(D)がシェル部に配位していることで、粒子の分散性が向上して、粒子の凝集構造に起因した疎な焼結組織の形成を防ぎ、本発明のコア/シェル構造の微粒子(P)の焼結効果を安定的に維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施例3において、生成した銅微粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した写真である。
図2】実施例3において、生成した銅微粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)で撮影した写真である。
図3】実施例5において、有機分散媒(D)が付着した銅微粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した写真である。
図4】比較例1で得られた、めっき膜状の凝集体を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した写真である。
図5参考例4、比較例9における、本発明のコア/シェル構造の金属微粒子と、従来技術による金属微粒子の昇温時における粒子径の変化をそれぞれX線小角散乱(SAXS)で測定した結果を示した。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に〔1〕微粒子(P)の製造方法(第3の態様)、〔2〕微粒子(P)(第1の態様)、及び〔3〕微粒子分散溶液(第2の態様)について説明し、更に該微粒子(P)を使用した〔4〕焼結導電体の製造方法、及び〔5〕導電接続部材の製造方法についても説明する。
〔1〕微粒子(P)の製造方法(第3の態様)
第3の態様の「微粒子(P)の製造方法」は、少なくとも、金属元素(M)の金属塩又は金属イオン、非金属元素(N)化合物、有機分散剤(D)、及びアルカリ金属元素(A1)化合物又はアルカリ土類金属元素(A2)化合物を含有している還元反応水溶液において、標準水素電極基準における酸化還元電位を−300mV以下に維持することにより、一次粒子の粒子径が1〜500nmの範囲で、金属元素(M)からなるコア部と、該金属元素(M)の酸化物からなるシェル部とから形成されるコア/シェル構造で、かつ該シェル部の金属元素(M)の酸化物の一部又は全部が金属元素(M)のアモルファス酸化物である、微粒子(P)を還元析出させることを特徴とする。
以下に微粒子(P)の製造方法について説明する。
【0022】
(1)還元反応水溶液の成分
上記還元反応水溶液の成分には、金属元素(M)の金属塩又は金属イオン、非金属元素(N)化合物、有機分散剤(D)、及びアルカリ金属元素(A1)化合物又はアルカリ土類金属元素(A2)化合物が含まれる。尚、該還元反応水溶液は、水溶液にメタノール、エタノール等の親水性化合物を添加した混合水溶液として使用することも可能であるが、水溶液が好ましい。
(イ)金属元素(M)の金属塩又は金属イオン
還元反応水溶液中に存在する金属元素(M)は、無電解還元又は電解還元により還元されて、後述する、金属微粒子を生成する。金属元素(M)は、銅、銅−亜鉛、及び銅−スズ合金のいずれかであることが好ましい。上記銅、銅−亜鉛、銅−スズ合金の金属塩又は金属イオンは、電解法で還元可能な金属元素であり、また本発明における微粒子の形成性にも優れている
【0023】
金属元素(M)の供給源は、水に溶解しやすいイオン性化合物と水に溶解しづらい非イオン性化合物を使用することができる。
使用可能な化合物として、水酸化物塩、酢酸塩、硝酸塩、ハロゲン化塩、シアン化塩、ピロリン酸塩、硫酸塩等が挙げられるが、無電解還元では水酸化物塩、電解還元では酢酸塩の使用が好ましい。還元反応水溶液中の金属元素濃度は、0.01〜4.0モル/リットルであることが好ましい。金属元素濃度は、金属微粒子の生成量が低減して反応相からの金属微粒子の収率が低下するのを抑制する点から0.01モル/リットル以上が好ましく、一方、生成される粒子間での粗大な凝集を抑制する点から4.0モル/リットル以下が好ましい。かかる観点から、より好ましい金属元素濃度は、0.05〜0.5モル/リットルである。
【0024】
(ロ)非金属元素(N)化合物
非金属元素(N)は、還元反応水溶液中で金属元素(M)の金属塩又は金属イオンを無電解還元又は電解還元により還元反応を行う際に、微粒子(P)の表面であるシェル部にアモルファス酸化物の形成を促進させる効果を発揮する。非金属元素(N)が析出する微粒子(P)のシェル部にアモルファス酸化物が形成されるメカニズムは完全に解明されてはいないが、金属元素(M)のイオンが金属酸化物を経由して0価の金属微粒子として還元していく過程で、微粒子前駆体である金属酸化物や0価の微粒子核の表面に非金属元素(N)が取り込まれ、金属酸化物の0価への完全な還元と酸化物の結晶化を阻害していることが予想される。微粒子(P)に取り込まれた非金属元素(N)は特有の焼結を促進する特性を示す効果も発揮する。このような効果を発揮する非金属元素(N)として、ホウ素、及びリンから選択される1種又は2種であることが望ましい。還元反応水溶液中の非金属元素(N)化合物の濃度は、前記微粒子(P)における非金属元素(N)の濃度が5〜1000(μg/g)となるように調整するのが望ましい。前記非金属元素(N)としての濃度が前記5(μg/g)以上で焼結時の低温領域における結晶成長が先行することを抑制する効果が発揮されるようになり、一方、1000(μg/g)以下であれば焼結過程において、高温領域における金属原子の結晶成長が容易になる。かかる観点から、より好ましい非金属元素(N)の濃度は、30〜800(μg/g)である。
【0025】
(ハ)有機分散剤(D)
有機分散剤(D)は、還元反応水溶液中で金属元素(M)を無電解還元又は電解還元により還元反応を行う際に、金属元素(M)が還元されて金属元素(M)の微粒子結晶核が顆粒状に生成するのを助長し、更に析出してくる金属元素(M)の微粒子(以下、金属微粒子ということがある)を被覆して分散性を向上させ、該顆粒状の結晶粒子がめっき膜状もしくはデンドライト状に成長するのを抑制する効果を発揮する。
この場合の有機分散剤(D)による「金属微粒子の被覆」とは、金属微粒子の全表面が有機分散剤(D)で覆われていなくとも、その一部が覆われている場合も含まれる。金属微粒子の一部が有機分散剤(D)で覆われている場合でも、上記分散性の効果と、該顆粒状の結晶粒子がめっき膜状もしくはデンドライト状に成長するのを抑制する効果は顕著に発揮される。金属微粒子の「被覆」は、当該技術分野において、「覆われた」、「囲まれた」、「保護された」、「付着した」等の記載表現が使用されることもある。
【0026】
有機分散剤(D)が析出する金属微粒子の分散性を向上させるメカニズムは完全に解明されているものではないが、例えば有機分散剤(D)に存在する官能基の非共有電子対を有する原子部分が金属微粒子の表面に吸着して、分子層を形成し、互いに金属微粒子同士の接近をさせない、斥力が発生していることが予想される。このような効果を発揮する、有機分散剤(D)としては、水溶性化合物であって、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、2−ピロリドン、及びアルキル−2−ピロリドンから選択される1種又は2種以上であることが好ましいが、有機分散剤(D)はこれらの効果を発揮するものであれば上記例示に限定されるものではない。
【0027】
(ニ)アルカリ金属元素(A1)化合物
上記還元反応水溶液に、アルカリ金属元素(A1)化合物を溶解させると、金属元素(M)が還元されて析出する際に金属微粒子結晶の分散性を向上させて、該顆粒状の結晶粒子がデンドライト状に成長するのを一層抑制する効果を発揮する。このような効果は、還元反応水溶液にアルカリ金属元素(A1)化合物が溶解していると、還元反応により金属微粒子の結晶が結晶核から成長する際に、金属イオン(陽イオン)が金属微粒子に接近するのをイオン化したアルカリ金属(陽イオン)が妨げ、金属微粒子がデンドライト状に凝集するのを抑制するために発現されると推定される。
前記アルカリ金属元素(A1)としては、リチウム、ナトリウム、及びカリウムから選択される1種又は2種以上であることが好ましく、ナトリウムがより好ましい。アルカリ金属元素(A1)化合物中のアルカリ金属元素(A1)の供給源として、水酸化物塩、フッ化物、塩化物、臭化物、沃化物、ホウ酸塩、テトラヒドリドホウ酸塩、酢酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、ピロリン酸塩、及びシアン化物から選択される1種又は2種以上を挙げることができる。
前記還元反応水溶液におけるアルカリ金属元素(A1)化合物の濃度は、0.001〜1.5(モル/リットル)が好ましい。アルカリ金属元素(A1)化合物の濃度が前記0.001(モル/リットル)以上でアルカリ金属元素(A1)化合物の添加効果が発揮されるようになり、一方、1.5(モル/リットル)以下で析出した微粒子(P)からアルカリ金属元素(A1)化合物の除去が容易になる。かかる観点から、アルカリ金属元素(A1)化合物の濃度は、0.005〜1(モル/リットル)がより好ましい。
【0028】
(ホ)アルカリ土類金属元素(A2)化合物
上記還元反応水溶液に、アルカリ土類金属元素(A2)化合物を溶解させると、金属元素(M)が還元されて析出する際に金属微粒子結晶の分散性を向上させて、該顆粒状の結晶粒子がデンドライト状に成長するのを一層抑制する効果を発揮する。このような効果は、還元反応水溶液にアルカリ土類金属元素(A2)化合物が溶解していると、還元反応により金属微粒子の結晶が結晶核から成長する際に、金属イオン(陽イオン)が金属微粒子に接近するのをイオン化したアルカリ土類金属(陽イオン)が妨げ、金属微粒子がデンドライト状に凝集するのを抑制するために発現すると推定される。また、アルカリ土類金属元素(A2)化合物は、アルカリ金属元素(A1)よりも有機分散剤(D)を含めた有機化合物と配位結合を介して錯体を形成し易いために、微粒子(P)を被覆する有機分散剤(D)の安定化に寄与すると考えられる。安定化した有機分散剤(D)により、めっき膜状もしくはデンドライト状に成長するのを抑制する効果が高まり、非金属元素(N)及びアルカリ土類金属元素(A2)が微粒子前駆体である金属酸化物や0価の微粒子核の表面に取り込まれやすくなる結果、微粒子表面のアモルファス酸化物の形成効率が高まると考えられる。このようにして金属微粒子に取り込まれたアルカリ土類金属元素(A2)は非金属元素(N)と同様に特有の焼結促進特性を示す効果も発揮する。
【0029】
前記アルカリ土類金属元素(A2)としては、カルシウム、ストロンチウム、及びバリウムから選択される1種又は2種以上であることが好ましく、カルシウムがより好ましい。アルカリ土類金属元素(A2)化合物中のアルカリ土類金属元素(A2)の供給源として、水酸化物塩、フッ化物、塩化物、臭化物、沃化物、ホウ酸塩、テトラヒドリドホウ酸塩、酢酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、ピロリン酸塩、及びシアン化物から選択される1種又は2種以上を挙げることができる。
前記還元反応水溶液におけるアルカリ土類金属元素(A2)化合物濃度は0.001〜1.5(モル/リットル)が好ましい。アルカリ土類金属元素(A2)化合物の濃度が前記0.001(モル/リットル)以上でアルカリ土類金属元素(A2)化合物の添加効果が発揮されるようになり、一方、1.5(モル/リットル)以下で析出した微粒子(P)からアルカリ土類金属元素(A2)化合物の除去が容易になる。かかる観点から、より好ましいアルカリ土類金属元素(A2)化合物の濃度は、0.005〜1(モル/リットル)である。
【0030】
(ヘ)その他の添加剤
還元反応水溶液のpH調整等は特に不要である。光沢剤(アミン誘導体とエピハロヒドリンとのモル比1:1の反応生成物等)や光沢補助剤(パラホルムアルデヒド等のアルデヒド誘導体)を添加すると析出物が膜状となり、粒子状物の析出を抑制するので、これらの添加剤の添加は避けることが望ましい。
【0031】
(2)微粒子(P)の製造方法
第3の態様の「微粒子(P)の製造方法」は、上記の通り、少なくとも、金属元素(M)の金属塩又は金属イオン、非金属元素(N)化合物、有機分散剤(D)、及びアルカリ金属元素(A1)化合物又はアルカリ土類金属元素(A2)化合物を含有している還元反応水溶液において、標準水素電極基準における酸化還元電位を−300mV以下に維持することにより、一次粒子の粒子径が1〜500nmの範囲で、金属元素(M)からなるコア部と、該金属元素(M)の酸化物からなるシェル部とから形成されるコア/シェル構造で、かつ該シェル部の金属元素(M)の酸化物の一部又は全部が金属元素(M)のアモルファス酸化物である、微粒子(P)を還元析出させることを特徴とする。製造方法の具体例として、無電解還元、電解還元等を挙げることができる。
該一次粒子の粒子(以下、「一次粒子径」ともいう)は、電子顕微鏡を用いて測定された値で、粒子のコア部だけでなくシェル部も含めたものである。微粒子(P)における、「粒子径が1〜500nmの範囲」とは、該還元反応により得られる微粒子数の90%(該「微粒子数の90%」とは、電子顕微鏡で観察可能である、最も小さい側の粒子径の微粒子数5%と、最も大きい側の粒子径の微粒子数5%を除いたものをいう)該粒子径の範囲に含まれていればよいことを意味する。
還元反応で析出する金属元素(M)の一次粒子の粒子径の制御は、特に金属元素(M)の金属塩種、非金属元素(N)と、有機分散剤(D)、及びアルカリ金属元素(A1)又はアルカリ土類金属元素(A2)の添加量、及び金属イオンを還元反応させる際の、かく拌速度、温度、時間、pH等の調整により行うことが可能である。
【0032】
(イ)還元反応水溶液の組成
還元反応水溶液中の金属元素(M)の金属塩又は金属イオン濃度は、前記の通り、0.01〜4.0モル/リットルであることが好ましく、0.05〜0.5モル/リットルがより好ましい。
還元反応水溶液中の非金属元素(N)化合物の非金属元素(N)としての濃度は、微粒子(P)中の非金属元素(N)の濃度が5〜1000(μg/g)がとなるように調整するのが好ましく、30〜800(μg/g)がより好ましい。
還元反応水溶液中のアルカリ金属元素(A1)化合物の含有量は、前記0.001〜1.5(モル/リットル)が好ましく、0.005〜1(モル/リット)がより好ましい。
また、還元反応水溶液中のアルカリ土類金属元素(A2)化合物の含有量は、上記の通り、0.001〜1.5(モル/リットル)が好ましく、0.005〜1(モル/リットル)がより好ましい。
【0033】
有機分散剤(D)の含有量は、還元反応で得られる微粒子(P)中の有機分散剤(D)の割合([D/P]×100)で0.1〜20質量%となるように調整することが好ましく、さらに有機分散剤(D)は還元反応で得られた微粒子に更に追加被覆可能であること等を考慮して決めることが好ましい。
前記有機分散剤(D)の含有量は、前記質量百分率表示として0.1質量%以上で有機添加剤(D)による金属微粒子への同時被覆効果が発揮されるようになり、一方、20質量%を超えても生成する微粒子(P)の凝集抑制、耐酸化性等の更なる向上は期待できない。また、還元反応水溶液中の有機分散剤(D)の含有量は、実用的には、1〜200(g/リットル)程度が好ましく、2〜80(g/リットル)程度がより好ましい。
【0034】
(ロ)無電解還元反応と電解還元反応
(ロ−1)無電解還元反応
前記無電解還元反応は、還元反応水溶液中に還元剤を加えることにより金属元素(M)の微粒子を析出させる還元反応である。
(i)還元剤
還元反応水溶液中で金属元素を無電解還元する際に使用される還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジン、ジメチルアミノボラン、トリメチルアミノボラン等が挙げられ、これらの2種以上を併用することもできる。
【0035】
(ii)酸化還元電位、温度、時間
還元反応水溶液中で金属元素を無電解還元する際の還元剤が添加された反応溶液における酸化還元電位は標準水素電極基準で−300mV以下に維持することが好ましく、−600mV以下に維持することがより好ましい。このように酸化還元電位が充分に卑な領域では析出物の結晶性を低下させるだけでなく、有機分散剤(D)の微粒子核への配位性も高まるので、非金属元素、及びアルカリ土類金属元素が微粒子核中へ取り込まれることが容易となり、アモルファス金属酸化物の被覆形成を安定化させる。尚、還元反応中における酸化還元電位を維持するために、還元剤を追加添加することで反応制御性がさらに向上する。還元剤が添加された反応溶液における酸化還元電位は、市販の酸化還元電位計(ORP計)を用いて測定できる。
還元温度は、10〜70℃が好ましく、10〜40℃がより好ましい。還元温度は、高温になるほど還元反応速度は速くなり、低温になるほど析出する粒子の粒子径は小さくなるとともに、酸化による粒子の腐食速度も小さくなる傾向がある。還元反応水溶液中の溶存酸素濃度は特に制限はないが、溶存酸素濃度が低いほど粒子の酸化による腐食速度は小さくなる傾向がある。還元時間は、5〜80分程度が好ましく、30〜60分程度がより好ましい。
【0036】
(ロ−2)電解還元反応
前記電解還元反応は、還元反応水溶液中に設けられたアノードとカソード間に電位を加えることにより金属イオンを還元して、カソード表面付近に金属微粒子を析出させる還元反応である。
(i)電極
還元反応水溶液中で金属元素を電解還元する際に使用されるカソード(陰極)材料としては、白金、カーボン、ステンレス鋼等の棒状、板状電極、ドット電極のようなナノ構造電極が例示でき、アノード(陽極)材料としては、銅、カーボン、白金、チタン、イリジウム等の棒状・板状・網状の形状電極が例示できる。
【0037】
(ii)酸化還元電位、温度、時間
還元反応水溶液中で金属元素を電解還元する際のカソードにおける酸化還元電位は標準水素電極基準で−300mV以下に維持することが好ましく、−1000mV以下に維持することがより好ましく、直流のほかパルス電流とすることもできる。このように酸化還元電位が充分に卑な領域では析出物の結晶性を低下させるだけでなく、有機分散剤(D)微粒子核への配位性も高まるので、非金属元素(N)、及びアルカリ土類金属元素(A2)が微粒子核中へ取り込まれることが容易となり、アモルファス金属酸化物の被覆形成を安定化させる。尚、還元反応中における酸化還元電位を維持するために、印加電圧を適宜調整することで反応制御性がさらに向上する。カソードにおける酸化還元電位は、市販の銀/塩化銀電極などを参照電極として、塩橋を介してカソード表面近傍に接続することで測定できる。
還元温度は、10〜70℃が好ましく、10〜40℃がより好ましい。還元温度は、高温になるほど還元反応速度は速くなり、低温になるほど析出する粒子の粒子径は小さくなるとともに、酸化による粒子の腐食速度も小さくなる傾向がある。還元反応水溶液中の溶存酸素濃度は特に制限はないが、溶存酸素濃度が低いほど粒子の酸化による腐食速度は小さくなる傾向がある。電解還元時間は、1〜60分程度が好ましく、3〜10分程度がより好ましい。
【0038】
(ハ)生成した金属微粒子の回収と洗浄
還元反応水溶液中で生成した金属微粒子は、還元反応水溶液中に長い時間保持されると、該水溶液中に溶解している酸素により過度に酸化を受けて、結晶性の金属酸化物を形成するおそれがある。一方、エタノール等のアルコール溶媒中では、金属微粒子は比較的酸化を受けづらく、安定して存在するので、還元槽中の金属微粒子スラリーはろ過、遠心分離等の操作により、微粒子(P)を回収して、炭素原子数1〜4の低級アルコール等を洗浄液として、還元反応水溶液から同伴されてきた不純物を除去するために、洗浄されることが望ましい。
【0039】
該洗浄操作の具体例としては、回収した微粒子(P)にエタノールを加えて撹拌洗浄して遠心分離機で微粒子(P)を回収するエタノール洗浄操作を1度又は2度以上行い、次にエタノール等のアルコールを添加して撹拌洗浄後、遠心分離機で微粒子(P)を回収する洗浄操作を1度又は2度以上行い、その後、得られた微粒子(P)を回収する方法が挙げられる。
尚、還元槽中の金属微粒子スラリーを回収する効率を高めるために、凝集促進剤を使用することもできる。金属微粒子の凝集促進のメカニズムは完全に解明されているものではないが、例えば水溶液中で有機分散剤(D)の分散作用を阻害する効果を有するものと考えられる。このような効果を発揮する、凝集促進剤としてはハロゲン系炭化水素が主に使用される。
【0040】
上記凝集促進剤の具体例として、塩化メチル(CHCl)、塩化メチレン(CHCl)、クロロホルム(CHCl)、四塩化炭素(CCl)等の炭素原子数1の塩素化合物、塩化エチル(CCl)、1,1−ジクロルエタン(CCl)、1,2−ジクロルエタン(CCl)、1,1−ジクロルエチレン(CCl)、1,2−ジクロルエチレン(CCl)、トリクロルエチレン(CHCl)、四塩化アセチレン(CCl)、エチレンクロロヒドリン(HO−CH−CHCl)等の炭素原子数2の塩素化合物、1,2−ジクロルプロパン(CHCHClCHCl)、塩化アリル(CH=CHCHOH)等の炭素原子数3の塩素系化合物、クロロプレン(CH=CClCH=CH)等の炭素原子数4の塩素系化合物、クロルベンゼン(CCl)、塩化ベンジル(CCHCl)、o−ジクロルベンゼン(CCl)、m−ジクロルベンゼン(CCl)、p−ジクロルベンゼン(CCl)、α−クロルナフタリン(C10Cl)、β−クロルナフタリン(C10Cl)等の芳香族系塩素系化合物、ブロモホルム(CHBr3)、ブロムベンゾール(CBr)等の臭素系化合物、が挙げられるが、これらの中から選択された1種又は2種以上を使用することができる。また、一般式R−C(=O)−Rで示されるアセトアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、及びメチルイソブチルケトンから選択される1種又は2種以上を使用することもできる。
【0041】
(ニ)有機分散剤(D)の追加被覆
前記還元反応により生成した微粒子(P)を、有機分散剤(D)が含まれる溶媒に添加して、有機分散剤(D)の追加被覆を行うことにより、有機分散剤(D)の被覆効果を向上することが可能である。
この場合、追加した有機分散剤(D)の被覆量が過剰であると、微粒子(P)中の有機分散剤(D)の割合([D/P]×100)が適切な範囲を超えてしまい、かえって焼結特性が低下してしまうおそれがある。かかる観点から、有機分散剤(D)の含有量は、微粒子(P)中の有機分散剤(D)の割合([D/P]×100)が0.1〜20質量%となるように調整することが好ましい。
上記有機分散剤(D)の追加被覆効果として、前記の通り、有機分散剤がと微粒子(P)のシェル部に配位していることで、粒子の分散性が向上して、粒子の凝集構造に起因した疎な焼結組織の形成を防ぐ等が挙げられる。有機分散剤(D)の追加被覆処理は、例えば、水もしくはアルコールを溶媒とした有機分散剤(D)溶液中へ添加して、撹拌することにより行うことができる。
【0042】
〔2〕微粒子(P)(第1の態様)
第1の態様の「微粒子(P)」は、一次粒子の粒子径が1〜500nmの範囲である微粒子(P)であって、金属元素(M)からなるコア部と、金属元素(M)の酸化物からなるシェル部とから形成されるコア/シェル構造で、かつ該シェル部の金属元素(M)の酸化物の一部又は全部が金属元素(M)のアモルファス酸化物であることを特徴とする。
(1)微粒子(P)
上記無電解還元反応又は電解還元反応で得られる微粒子(P)の不純物の除去は溶媒を用いた洗浄により容易に行いうるので、比較的容易な操作で高純度の金属微粒子を得ることができる。上記した還元反応により得られる微粒子(P)は、製造と実用的な面から粒子径が1〜500nmの範囲にあり、その形状はめっき膜状やデンドライト状に凝集していない顆粒状の微粒子である。ここで、一次粒子の粒子径とは、二次粒子を構成する個々の金属等の微粒子の一次粒子の直径の意味である。該一次粒子の粒子径は、電子顕微鏡を用いて測定された値で、粒子のコア部だけでなくシェル部も含めたものである。
第1の態様において、金属元素の還元反応により得られる微粒子(P)の「粒子径が1〜500nmの範囲」とは、該電解還元反応により得られる微粒子数の90%(該「微粒子数の90%」とは、電子顕微鏡で観察可能である、最も小さい側の粒子径の微粒子数5%と、最も大きい側の粒子径の微粒子数5%を除いたものをいう)該粒子径の範囲に含まれていればよいことを意味する。
【0043】
前記分散溶液中の微粒子(P)の二次粒子の平均粒子径は、動的光散乱型粒度分布測定装置を用いた測定値である。動的光散乱型粒度分布測定装置としては、例えば、シスメックス(株)製、型式:ゼータサイザーナノシリーズ Nano−ZSを用いることができる。
微粒子(P)を構成する金属元素(M)としては、銅、銅−亜鉛、及び銅−スズ合金を挙げることができる。また、これらの金属元素(M)は1種、又は2種以上を使用できることは第3の態様に記載したと同様である。
微粒子(P)はコア部が金属であり、シェル部の一部又は全体がアモルファスの金属酸化物であるコア/シェル構造であって、この微粒子(P)を用いると、触媒的な焼結を焼成初期から充分に発揮させて、焼結構造の緻密化をさらに促進させることができることは第3の態様に記載したと同様である。
【0044】
(2)非金属元素(N)
非金属元素(N)化合物は、前記第3の態様に記載したと同様に、前記微粒子(P)中における非金属元素の濃度は5〜1000(μg/g)が好ましい。非金属元素の濃度が前記5(μg/g)以上で焼結時の低温領域における結晶成長が先行することを抑制する効果が発揮されるようになり、一方、1000(μg/g)以下ならば焼結過程において、高温領域における金属原子の結晶成長が容易になる。より好ましい非金属元素の濃度は、30〜800(μg/g)である。
尚、1μg/gは、1gの微粒子(P)中に1μgの非金属元素(N)又はアルカリ土類金属元素(A2)が存在することに相当する。
【0045】
(3)アルカリ土類金属元素(A2)
アルカリ土類金属元素(A2)は、前記第1の態様に記載したと同様に、前記微粒子におけるアルカリ土類金属元素の濃度は10〜20000(μg/g)が好ましい。アルカリ土類金属元素の濃度が前記10(μg/g)以上で焼結時の低温領域における結晶成長が先行することを抑制する効果が発揮されるようになり、一方、20000(μg/g)以下ならば焼結過程において、高温領域における金属原子の結晶成長が容易になる。かかる観点から、より好ましい非金属元素の濃度は、100〜15000(μg/g)である。特に、非金属元素(N)が併存することでこれらの効果が良く発揮される。このような効果が発現されるメカニズムは明らかではないが、非金属元素とアルカリ土類金属元素がホウ化カルシウム(CaB)、リン化カルシウム(CaP、Ca)のような化合物の状態となって結晶性酸化物の形成を防止する効果が高まり、アモルファス金属酸化物の状態を安定化させるためと推定される。
(4)有機分散剤(D)
有機分散剤(D)は、前記第3の態様に記載したと同様である。
【0046】
〔3〕微粒子分散溶液(第2の態様)
第2の態様の「微粒子分散溶液」は、前記第1の態様に記載の微粒子(P)が、常温で液体の有機溶媒(S)に分散している
以下、(1)微粒子(P)、(2)非金属元素(N)、(3)アルカリ土類金属元素(A2)、(4)有機分散剤(D)、(5)有機溶媒(S)、及び(6)微粒子分散溶液について説明する。
【0047】
(1)微粒子(P)
微粒子(P)は、一次粒子の粒子径が1〜500nmで、粒子のコア部が金属元素(M)、シェル部の一部又は全体が金属元素(M)のアモルファス酸化物から構成されるコア/シェル構造である。微粒子(P)は、製造と実用的な面から粒子径が1〜500nmの範囲にあり、その形状はめっき膜状やデンドライト状に凝集していない顆粒状の微粒子であることは第1の態様に記載した通りである。
【0048】
ここで、一次粒子の粒子径とは、二次粒子を構成する個々の金属微粒子の一次粒子の直径の意味である。該一次粒子の粒子径は、電子顕微鏡を用いて測定された値で、粒子のコア部だけでなくシェル部も含めたものである。第3の態様において、金属イオンの電解還元反応により得られる微粒子(P)における、「一次粒子の粒子径が1〜500nmの範囲」とは、該電解還元反応により得られる金属微粒子数の90%(該「微粒子数の90%」とは、電子顕微鏡で観察可能である、最も小さい側の粒子径の微粒子数5%と、最も大きい側の粒子径の微粒子数5%を除いたものをいう)該粒子径の範囲に含まれていればよいことを意味する。微粒子(P)を構成する金属元素(M)としては、銅、銅−亜鉛、銅−スズ合金を挙げることができことは第1の態様に記載した通りである。
【0049】
(2)非金属元素(N)
非金属元素(N)は、前記第3の態様に記載したと同様である。
(3)アルカリ土類金属元素(A2)
アルカリ土類金属元素(A2)は、前記第3の態様に記載したと同様である。
(4)有機分散剤(D)
有機分散剤(D)は、前記第3の態様に記載したと同様である。
【0050】
(5)分散溶媒(S)
有機溶媒(S)は、1種又は2種以上の有機化合物から構成され、常圧における沸点が140℃以上であることが好ましく、一方、350℃以下であることが好ましい。前記の通り、微粒子(P)の触媒活性が著しく高いので、焼結の際に有機溶媒(S)の沸点よりも50〜40℃低い温度範囲で還元性ガス雰囲気を形成して焼結反応が開始することが好ましいが、100℃以上で金属微粒子の焼結が進行しやすいため、有機溶媒(S)の沸点は140℃以上とするのが好ましい。また、沸点が350℃を超える有機溶媒を用いると揮発しづらく焼結後も残留する可能性があるので有機溶媒(S)の沸点は350℃以下とすることが好ましい。かかる観点から、より好ましい有機溶媒(S)の沸点は、150〜300℃である。
有機溶媒(S)として以下に記載する有機化合物(S1)、有機化合物(S2)、有機化合物(S3)等が挙げられるがこれらの有機化合物に限定されるものではない。
【0051】
(i)有機化合物(S1)
有機溶媒(S)中に、少なくとも1つのヒドロキシル基を有する有機化合物(S1)を含有することで還元性ガス雰囲気を形成しやすくなる。前記少なくとも1つのヒドロキシル基を有する有機化合物(S1)は、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、2,2−ジメチル−1−プロパノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−メチル−1−ブタノール、2,2ジメチル−1−プロパノール、3−メチル−2−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2−メチル−2−ヘキサノール、2−メチル−3−ヘキサノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、4−ヘプタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、1−オクタノール、2−オクタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2,3−ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、グリセロール、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタン、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3−ヘキサントリオール、及び1,2,4−ブタントリオールの中から選択される1種又は2種以上であることが望ましい。
【0052】
また、有機化合物(S1)として、トレイトール、エリトリト−ル、ペンタエリスリト−ル、ペンチト−ル、キシリトール、リビトール、アラビトール、ヘキシト−ル、マンニトール、ソルビトール、ズルシトール、グリセルアルデヒド、ジオキシアセトン、トレオース、エリトルロース、エリトロース、アラビノース、リボース、リブロース、キシロース、キシルロース、リキソース、グルコ−ス、フルクト−ス、マンノース、イドース、ソルボース、グロース、タロース、タガトース、ガラクトース、アロース、アルトロース、ラクト−ス、キシロ−ス、アラビノ−ス、イソマルト−ス、グルコヘプト−ス、ヘプト−ス、マルトトリオース、ラクツロース、及びトレハロース、等の糖類も使用することが可能であるが、これらの中で融点が高いものについては他の有機溶媒と混合して使用することができる。
【0053】
有機化合物(S1)は、優れた分散性を有しており、一般に時間の経過により分散溶液中の微粒子同士は凝集する傾向にあるが、有機化合物(S1)を混合溶媒中に存在させるとこのような凝集をより効果的に抑制して、分散液の一層の長期安定化を図ることが可能になる。また有機化合物(S1)を有機溶媒(S)中に存在させると、その微粒子分散液を基板上に塗布して焼結した際、その焼結膜の均一性が向上し、導電性の高い焼成膜を得ることが出来る。有機化合物(S1)は、ヒドロキシル基の結合している炭素原子に1又は2の水素原子が結合している有機化合物であることが好ましい。炭素原子に水素原子が結合した第一級アルコール又は第二級アルコールでは酸化反応によって還元性の水素ガスを放出しやすいからである。
【0054】
(ii)有機化合物(S2)
有機溶媒(S)として、有機化合物(S1)以外に使用できる溶媒は特に限定されるものではないが、以下に記載する有機化合物(S2)、有機化合物(S3)等が挙げられる。
有機化合物(S2)は、アミド基(−CON=)を有する化合物であり、特に比誘電率が高いものが好ましい。アミド基を有する有機化合物(S2)として、N−メチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、N−メチルプロパンアミド、ホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、アセトアミド等が挙げられるが、これらを混合して使用することもできる。これらの中でも比誘電率が100以上である、N−メチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、ホルムアミド、アセトアミドなどが好適に使用できる。尚、N−メチルアセトアミド(融点:26〜28℃)のように常温で固体の場合には他の溶媒と混合して作業温度で液状として使用することができる。有機化合物(S2)は、混合溶媒中で微粒子の分散性と保存安定性を向上する作用を有し、また本発明の微粒子分散溶液を基板上に塗布後焼成して得られる焼成膜の導電性を向上する作用をも有する。
【0055】
(iii)有機化合物(S3)
有機化合物(S3)として、一般式R11−O−R12(R11、R12は、それぞれ独立にアルキル基で、炭素原子数は1〜4である。)で表されるエーテル系化合物(S31)、一般式R14−C(=O)−R15(R14、R15は、それぞれ独立にアルキル基で、炭素原子数は1〜2である。)で表されるケトン系化合物(S32)、及び一般式R16−(N−R17)−R18(R16、R17、R18は、それぞれ独立にアルキル基、又は水素原子で、炭素原子数は0〜2である。)で表されるアミン系化合物(S33)、の中から選択される1種又は2種以上が挙げられる。
前記エーテル系化合物(S31)としては、ジエチルエーテル、メチルプロピルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、t−アミルメチルエーテル、ジビニルエーテル、エチルビニルエーテル、アリルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート等が例示出来る。前記ケトン系化合物(S32)としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等が例示できる。また、前記アミン系化合物(S33)としては、トリエチルアミン、ジエチルアミン等が例示できる。
【0056】
有機化合物(S3)は、混合溶媒中で溶媒分子間の相互作用を低下させ、分散粒子の溶媒に対する親和性を向上する作用を有していると考えられる。このような効果は一般に沸点の低い溶媒において期待され、特に常温における沸点が100℃以下の有機化合物は、有効な溶媒分子間の相互作用を低減する効果が得られることから好ましい。有機化合物(S3)の中でも特にエーテル系化合物(S31)が、その溶媒分子間の相互作用を低減する効果が大きいことから好ましい。
【0057】
(6)微粒子分散溶液
微粒子分散溶液中の微粒子(P)の割合は5〜85質量%が好ましい。微粒子(P)の割合が前記範囲の下限未満であると焼結後の膜厚が薄くなってクラックが発生しやすくなり、一方、前記範囲の上限を超えると有機溶媒(S)の還元作用が低下して焼結が不十分になる。分散溶媒(S)中に微粒子(P)を添加して、分散性を向上させるために、撹拌手段を採用することが望ましい。分散溶液の撹拌方法としては、公知の撹拌方法を採用することができるが、超音波照射方法を採用するのが好ましい。
【0058】
上記超音波照射時間は、特に制限はなく任意に選択することが可能である。例えば、超音波照射時間を5〜60分間の間で任意に設定すると照射時間が長い方が平均二次凝集サイズは小さくなる傾向にある。更に超音波照射時間を長くすると分散性は一層向上する。
微粒子(P)の二次粒子の平均粒子径は500nm以下であり、二次粒子の平均粒子径の下限値は粒子同士がある程度接触していた方が焼結反応が進行し易くなることから、40nm程度が好ましい。
【0059】
前記分散溶液中の微粒子(P)の二次粒子の平均粒子径は、動的光散乱型粒度分布測定装置を用いた測定値である。動的光散乱型粒度分布測定装置としては、例えば、シスメックス(株)製、型式:ゼータサイザーナノシリーズNano-ZSを用いることができる。上記方法で製造された微粒子(P)は、分散溶媒に分散させて微粒子分散溶液として、電子材料用の導電性ペーストのような配線形成材料、プリント配線、半導体の内部配線、プリント配線板と電子部品との接続等に利用することができる。
【0060】
以下に、上記微粒子(P)と、微粒子分散溶液を用いた〔4〕焼結導電体の製造方法、及び〔5〕導電接続部材の製造方法の例を記載する。
〔4〕焼結導電体の製造方法
前記第1の態様に記載の微粒子(P)を基板に配置し、水素、ギ酸、及びホルムアルデヒドから選択される還元ガス雰囲気中で、「金属微粒子を被覆している有機分散剤(D)の分解点もしくは沸点より50℃高い温度」以下の温度で加熱・焼結することにより、基板上に金属元素(M)からなる焼結導電体を形成することができる。例えば200℃程度の比較的低温でかつ還元性溶媒を使用することなく、基板上に配置して焼成し、導電性を有する焼結導電体を形成することが可能である。
【0061】
また、前記第2の態様に記載の微粒子分散溶液を基板に塗布し、大気雰囲気中又は不活性ガス雰囲気中で、「有機溶媒(S)の沸点よりも40℃低い温度」以下の温度で加熱・焼結することにより、基板上に金属元素(M)からなる焼結導電体を形成することができる。具体的には、百数十℃から200℃程度の比較的低温でかつ水素ガス等の還元剤を使用することなくスピンコータやインクジェット等により基板上に微粒子分散溶液を配置して焼成し、導電性を有する焼結導電体を形成することが可能であり、150℃以下での焼結温度でも焼結導電体を形成することが可能となる。
上記基板としては特に制限はなく使用目的等により、ガラス、ポリイミド等が使用できる。
【0062】
〔5〕導電接続部材の製造方法
導電接続部材は、前記第2の態様に記載の微粒子分散溶液を電子部品における半導体素子又は回路基板の電極端子又は導電性基板の接合面に載せた後、該微粒子分散溶液上に更に接続する他方の電極端子又は導電性基板の接合面を配置し、「有機溶媒(S)の沸点よりも40℃低い温度」以下の温度で加熱・焼結して形成することができる。導電接続部材としては半導体素子間を接合するための導電性バンプ、半導体素子と導電性基板間を接合するための導電性ダイボンド部等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0063】
導電性バンプは、微粒子分散液を電子部品における半導体素子もしくは回路基板の電極端子の接合面に載せ(塗布、印刷等も含まれる)、該微粒子分散液上に更に接続する他方の電極端子の接合面を配置した後、加熱処理、又は加圧下に加熱処理により焼結して形成される。前記接続する他方の電極端子にはワイヤボンディングを行う場合の金ワイヤ等のワイヤも含まれる。尚、前記微粒子分散液上に更に接続する他方の電極端子の接合面を配置する際に位置合わせを行うことが望ましい。導電性ダイボンド部は、通常、微粒子分散液を電子部品における回路基板の接合面に載せ(塗布、印刷等も含まれる)、該微粒子分散液上に更に接続する他方の電極端子の接合面を配置した後、加熱処理、又は加圧下に加熱処理により焼結して形成される。
【0064】
前記加圧下の加熱処理は、両電極端子間、又は電極端子と基板間の加圧により導電接続部材前躯体と両電極端子接合面、又は電極端子と導電性基板間との接合を確実にするか、又は導電接続部材前躯体に適切な変形を生じさせて電極端子接合面との確実な接合を行うことができるとともに、導電接続部材前躯体と電極端子接合面との接合面積が大きくなり、接合信頼性を一層向上することができる。また、半導体素子と導電接続部材前躯体間を加圧型ヒートツ−ル等を用いて加圧下で焼成すると、接合部での焼結性が向上してより良好な接合部が得られる。前記両電極端子間、又は電極端子と基板間の加圧は、0.5〜15MPaが好ましい。
【実施例】
【0065】
次に、実施例等の各例により具体的に説明する以下に各例における評価方法を記載する。
(1)微粒子の一次粒子径の測定方法
以下の各例における、「一次粒子径の範囲」は、走査型電子顕微鏡(SEM(Scanning Electron Microscope))を使用した観察により、任意に80個の微粒子の一次粒子径を測定して、最も小さい側の粒子径の微粒子数の5%と、最も大きい側の粒子径の微粒子数の5%を除いた、残り90%の粒子の一次粒子径の測定値の範囲であり、「微粒子の平均一次粒子径」は該残り90%の粒子の一次粒子径の測定値の平均値である。観察用試料の調製は、エタノールに分散した微粒子をポーラスアルミナフィルター(Whatman社製、商品名:アノディスク)に通過させながら溶媒を乾燥除去した後、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を行った。
(2)微粒子の平均二次粒子径の測定方法
動的光散乱型粒度分布測定装置(シスメックス社(Sysmex Corporation)製、型式:ゼータサイザーナノシリーズ(Zetasizer Nano Series) Nano−ZSを用いて測定した値である。
【0066】
(3)微粒子の平均アスペクト比の測定方法
微粒子の一次粒子径の測定方法と同様に、各例においては走査型電子顕微鏡(SEM)を使用した観察により、任意に80個の微粒子の一次粒子径を測定して、最も小さい側の粒子径の微粒子数の5%と、最も大きい側の粒子径の微粒子数の5%を除いた、残り90%の粒子の一次粒子径のアスペクト比の平均値である。
(4)めっき膜状、及びデンドライト状の析出物の有無
走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して1000倍の倍率で観察した際に、観察像中にミクロンサイズのめっき膜状、及びデンドライト状析出物が1%以下(該百分率は、「[めっき膜状又はデンドライト状に凝縮した微粒子数/全微粒子数]×100(%)」から求められる割合である。)の場合にはめっき膜状、及びデンドライト状の凝集は「無し」とし、1%を超える場合にはめっき膜状、及びデンドライト状の凝集は「有り」とした。
【0067】
(5)微粒子の金属組成の同定方法
走査型電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型X線分光装置(SEM−EDX)を使用して、微粒子に対して金属組成の分析を実施した。また、X線回折測定装置((株)リガク製、型式:Geigerflex RAD-A)を用いた、X線源としてCuKαを用いたX線回折測定による微粒子の基本的な結晶構造分析も必要に応じて行った。
【0068】
(6)微粒子シェル部に存在する金属酸化物の結晶性と金属酸化物濃度の測定方法
透過型電子顕微鏡(TEM(Transmission Electron Microscope))を使用した観察により、一次粒子のシェル部における金属酸化物の結晶性を電子線回折によって解析した。さらに金属酸化物の組成を透過型電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型X線分光装置(TEM−EDX)を使用して、金属酸化物組成の分析を実施した。
【0069】
また、X線回折測定装置((株)リガク製、型式:Geigerflex RAD−A)を用い、X線源をCuKαとして行ったX線回折による分析結果から、微粒子(P)のシェル部に存在するアモルファス金属酸化物濃度([アモルファス金属酸化物の質量/微粒子(P)の質量]×100(質量%))を求めた。具体的には、微粒子(P)を示差熱熱重量同時測定装置(TG−DTA(Thermogravimetry/Differential Thermal Analysis))内に設置し、水素などの還元ガス雰囲気もしくはヘリウムなどの不活性雰囲気において、500℃以上まで加熱させて還元処理した際の重量変化から、微粒子中に含まれる金属酸化物の質量を測定した。次に、微粒子(P)のX線回折による分析を行い、金属元素(M)の最大強度であるメインピークの2θでのピーク高さ、及び金属元素(M)の酸化物の最大強度であるメインピークの2θでのピーク高さの強度比の変化から結晶性の金属、結晶性の金属酸化物、アモルファスの金属酸化物の比率を算出してアモルファスとして含まれる金属酸化物の質量を見積もった。比率を算出するための参照データとして、結晶性の金属粉、結晶性の金属酸化物粉、アモルファスの金属酸化物粉が既知の質量比で混合された粉体を標準試料として用いて、上記同様の操作から得られたピーク強度比から、質量比に対する検量線をあらかじめ作成した。ただし、試料の測定値が作成した検量線の検出限界を下回る場合には、原則的にアモルファスは未検出として算出した。
【0070】
以下の各例においては、上記金属元素(M)が、銅の場合は2θ=43度付近に存在するCu(111)面のピークと、2θ=36度付近に存在するCuO(111)面のピーク、亜鉛の場合は2θ=43度付近に存在するZn(101)面のピークと、2θ=34.5度付近に存在するZnO(002)面のピーク、スズの場合は2θ=32度付近に存在するSn(101)面のピークと、2θ=30度付近に存在するSnO(101)面のピーク、ニッケルの場合は2θ=44.5度付近に存在するNi(111)面のピークと、2θ=43.3度付近に存在するNiO(200)面のピークを解析対象としたが、金属元素(M)と酸素の比率が上記と異なる金属酸化物が形成されている場合も同様にメインピークの強度比によって定義できる。
【0071】
尚、微粒子(P)の加熱処理による金属酸化物の重量測定とX線回折によるアモルファス成分の質量比率の算出が困難な場合は、熱刺激電流(Thermally Stimulated Current)測定を用いることができる。具体的には、結晶性の金属粉、結晶性の金属酸化物粉、アモルファスの金属酸化物粉が既知の質量比で混合された粉体を標準試料として用いて熱刺激電流測定を行うことで、非晶質成分のガラス転移に伴う脱分極スペクトルの大きさに対して、アモルファス成分の質量比率と対応させた検量線を作成する。この検量線に基づいて、本発明の微粒子の熱刺激電流スペクトルから微粒子シェル部のアモルファス金属酸化物の質量%が算出可能となる。ただし、試料の測定値が使用機器の検出限界を下回る場合には、原則的にアモルファスは未検出として算出した。
【0072】
(7)微粒子の被覆分子構造の同定方法
顕微ラマン分光装置((株)東京インスツルメンツ製、型式:Nanofinder@30)とフーリエ変換赤外分光光度計(日本分光(株)製、型式:FT/IR−4100)を用いて、微粒子を被覆した化合物種を同定した。なお、顕微ラマン分光装置では必要に応じて、局在表面プラズモン共鳴によってラマン散乱強度を高めることが可能なナノサイズの凹凸構造体(Ag又はCu)に試料を塗布して解析した。
(8)微粒子における有機分散剤被覆量の測定方法
炭素・硫黄分析計((株)堀場製作所製、型式:EMIA−920V2)を用いて、有機分散剤で被覆された微粒子(P)中における有機分散剤(D)の割合([有機分散剤(D)/微粒子(P)]×100(質量%))を求めた。
【0073】
(9)微粒子に含まれる非金属元素、及びアルカリ土類金属元素の濃度の測定方法
ICP発光分光分析装置(バリアンテクノロジーズジャパンリミテッド、型式:Vista−Pro)を用いて、微粒子(P)に含まれる非金属元素(N)の割合([(N)/(P)](μg/g))、及びアルカリ土類金属元素(A2)の割合([(A2)/(P)](μg/g)をそれぞれ求めた。尚、1μg/gは、1gの微粒子(P)中に1μgの非金属元素(N)又はアルカリ土類金属元素(A2)が存在することに相当する。
【0074】
[実施例1]
無電解還元反応により銅微粒子を生成させ、得られた銅微粒子の評価を行った。尚、還元反応水溶液は非金属元素としてホウ素、アルカリ金属元素としてナトリウム、アルカリ土類金属元素としてカルシウム、有機分散剤としてポリビニルピロリドン、が含まれるように調製した。
(1)銅微粒子の調製
金属元素である銅の供給源として水酸化銅14.6g、アルカリ土類金属元素の供給源として水酸化カルシウム0.74g、有機分散剤としてポリビニルピロリドン50gを蒸留水960gへ添加して撹拌した後、この水溶液を窒素ガス雰囲気中に移した。次に、非金属元素であるホウ素と、アルカリ金属元素であるナトリウムの供給源でもある水素化ホウ素ナトリウム溶液を還元剤として上記水溶液へ添加することで還元反応水溶液1L(リットル)を調製した([非金属元素(N)/金属元素(M)]モル濃度比:0.47)。調製した還元反応水溶液の酸化還元電位は標準水素電極基準で−300mV以下、pHは約12であった。この還元反応水溶液を撹拌しながら浴温20℃で60分の間、酸化還元電位を−300mV以下となるように適宜、還元剤を滴下するなどして無電解還元反応させ続けた結果、溶液中に銅微粒子が析出した。得られた銅微粒子分散水溶液を遠心分離機に入れ、粒子成分を沈殿回収した。回収した銅微粒子にエタノールを加えて撹拌洗浄して遠心分離機で銅微粒子を回収するエタノール洗浄操作を2度行い、水洗して溶媒を乾燥除去した後、5gの銅微粒子を得た。
【0075】
(2)生成した銅微粒子の評価
(イ)銅微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した銅微粒子の一次粒子径は、20〜500nmの範囲で、平均一次粒子径は55nmであった。また、該銅微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、銅100質量%であった。
(ロ)銅微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いて銅微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該銅微粒子の平均二次粒子径は、350nmであった。これらの銅微粒子の平均アスペクト比は1.2で、形状は顆粒状であり、めっき膜状、及びデンドライト状の凝集は観察されなかった。
【0076】
(ハ)微粒子シェル部に存在する金属酸化物の結晶性と金属酸化物量の同定
透過型電子顕微鏡(TEM)による観察の結果、銅微粒子の一次粒子のコア部に結晶性の金属元素、シェル部にアモルファス化合物が確認された。さらに透過型電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型X線分光装置(TEM−EDX)を使用して、微粒子シェル部に存在するアモルファス化合物の組成分析を実施したところ、亜酸化銅(CuO)であった。また、微粒子の加熱処理による金属酸化物の重量測定とX線回折によるアモルファス成分の質量比率から、微粒子(P)のシェル部に存在するアモルファス金属酸化物量([アモルファス金属酸化物の質量/微粒子(P)の質量]×100(質量%))を求めたところ、10質量%であった。
【0077】
(ニ)被覆有機分散剤の分子構造の同定
得られた銅微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、ポリビニルピロリドンに由来するピロリドン基(CNO)に帰属するピークが検出された。
(ホ)有機分散剤の被覆量
炭素・硫黄分析計を用いた銅微粒子の分析では、有機分散剤であるポリビニルピロリドンで被覆された微粒子(P)中の有機分散剤の割合([有機分散剤(D)/微粒子(P)]×100(質量%))は、1質量%であった。
(ヘ)銅微粒子に含まれる非金属元素、及びアルカリ土類金属元素の測定
ICP発光分光・分析計を用いた銅微粒子の分析では、微粒子(P)に含まれるホウ素が15μg/g、カルシウムが10μg/g検出された。
【0078】
[実施例2]
無電解還元反応により銅微粒子を生成させ、得られた銅微粒子の評価を行った。尚、還元反応水溶液は非金属元素としてホウ素、アルカリ金属元素としてナトリウム、アルカリ土類金属元素としてカルシウム、有機分散剤としてポリビニルピロリドン、が含まれるように調製した。
(1)銅微粒子の調製
金属元素である銅の供給源として水酸化銅14.6g、アルカリ土類金属元素の供給源として水酸化カルシウム11g、有機分散剤としてポリビニルピロリドン5gを蒸留水960gへ添加して撹拌した後、この水溶液を窒素ガス雰囲気中に移した。次に、非金属元素であるホウ素と、アルカリ金属元素であるナトリウムの供給源でもある水素化ホウ素ナトリウム溶液を還元剤として上記水溶液へ添加することで還元反応水溶液1L(リットル)を調製した([非金属元素(N)/金属元素(M)]モル濃度比:1)。調製した還元反応水溶液の酸化還元電位は標準水素電極基準で−500mV以下、pHは約13であった。
【0079】
この還元反応水溶液を撹拌しながら浴温20℃で60分の間、酸化還元電位を−500mV以下となるように適宜、還元剤を滴下するなどして無電解還元反応させ続けた結果、溶液中に銅微粒子が析出した。得られた銅微粒子分散水溶液を遠心分離機に入れ、銅微粒子成分を沈殿回収した。回収した銅微粒子にエタノールを加えて撹拌洗浄して遠心分離機で銅微粒子を回収するエタノール洗浄操作を2度行い、水洗して溶媒を乾燥除去した後、5gの銅微粒子を得た。
【0080】
(2)生成した銅微粒子の評価
(イ)銅微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した銅微粒子の一次粒子径は、10〜150nmの範囲で、平均一次粒子径は20nmであった。また、該銅微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、銅100質量%であった。
(ロ)銅微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いて銅微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該銅微粒子の平均二次粒子径は、200nmであった。これらの銅微粒子の平均アスペクト比は1.1で、形状は顆粒状であり、めっき膜状、及びデンドライト状の凝集は観察されなかった。
【0081】
(ハ)微粒子シェル部に存在する金属酸化物の結晶性と金属酸化物量の同定
透過型電子顕微鏡(TEM)による観察の結果、銅微粒子の一次粒子のコア部に結晶性の金属元素、シェル部にアモルファス化合物が確認された。さらに透過型電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型X線分光装置(TEM−EDX)を使用して、微粒子(P)のシェル部に存在するアモルファス化合物の組成分析を実施したところ、亜酸化銅(CuO)であった。また、微粒子の加熱処理による金属酸化物の重量測定とX線回折によるアモルファス成分の質量比率から、微粒子(P)のシェル部に存在するアモルファス金属酸化物量([アモルファス金属酸化物の質量/微粒子(P)の質量]×100(質量%))を求めたところ、27質量%であった。
【0082】
(ニ)被覆有機分散剤の分子構造の同定
得られた銅微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、ポリビニルピロリドンに由来するピロリドン基(CNO)に帰属するピークが検出された。
(ホ)有機分散剤の被覆量
炭素・硫黄分析計を用いた銅微粒子の分析では、有機分散剤であるポリビニルピロリドンで被覆された微粒子(P)中の有機分散剤の割合([有機分散剤(D)/微粒子(P)]×100(質量%))は、0.4質量%であった。
(ヘ)銅微粒子に含まれる非金属元素、及びアルカリ土類金属元素の測定
ICP発光分光・分析計を用いた銅微粒子の分析では微粒子(P)中にホウ素が35μg/g、カルシウムが100μg/g検出された。
【0083】
[実施例3]
無電解還元反応により銅微粒子を生成させ、得られた銅微粒子の評価を行った。尚、還元反応水溶液は非金属元素としてホウ素、アルカリ金属元素としてナトリウム、アルカリ土類金属元素としてカルシウム、有機分散剤としてポリビニルピロリドン、が含まれるように調製した。
(1)銅微粒子の調製
アルカリ土類金属元素の供給源として酢酸カルシウム1水和物53gとした以外は実施例2と同様にして、5gの銅微粒子を得た。
生成した銅微粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)で撮影した写真を図1、2にそれぞれ示す。
(2)生成した銅微粒子の評価
(イ)銅微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した銅微粒子の一次粒子径は、5〜60nmの範囲で、平均一次粒子径は15nmであった。また、該銅微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、銅100質量%であった。
(ロ)銅微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いて銅微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該銅微粒子の平均二次粒子径は、100nmであった。これらの銅微粒子の平均アスペクト比は1.1で、形状は顆粒状であり、めっき膜状、及びデンドライト状の凝集は観察されなかった。
【0084】
(ハ)微粒子シェル部に存在する金属酸化物の結晶性と金属酸化物量の同定
透過型電子顕微鏡(TEM)による観察の結果、銅微粒子の一次粒子のコア部に結晶性の金属元素、シェル部にアモルファス化合物が確認された。さらに透過型電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型X線分光装置(TEM−EDX)を使用して、微粒子シェル部に存在するアモルファス化合物の組成分析を実施したところ、亜酸化銅(CuO)であった。また、微粒子の加熱処理による金属酸化物の重量測定とX線回折によるアモルファス成分の質量比率から、微粒子(P)のシェル部に存在するアモルファス金属酸化物量([アモルファス金属酸化物の質量/微粒子(P)の質量]×100(質量%))を求めたところ、50質量%であった。
【0085】
(ニ)被覆有機分散剤の分子構造の同定
得られた銅微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、ポリビニルピロリドンに由来するピロリドン基(CNO)に帰属するピークが検出された。
(ホ)有機分散剤の被覆量
炭素・硫黄分析計を用いた銅微粒子の分析では、有機分散剤であるポリビニルピロリドンで被覆された微粒子(P)の有機分散剤の割合([有機分散剤(D)/微粒子(P)]×100(質量%))は、0.5質量%であった。
(ヘ)銅微粒子に含まれる非金属元素、及びアルカリ土類金属元素の測定
ICP発光分光・分析計を用いた銅微粒子の分析では、微粒子(P)に含まれるホウ素が70μg/g、カルシウムが13000μg/g検出された。
【0086】
[実施例4]
無電解還元反応により銅微粒子を生成させ、得られた銅微粒子の評価を行った。尚、還元反応水溶液は非金属元素としてホウ素とリン、アルカリ金属元素としてナトリウム、アルカリ土類金属元素としてカルシウム、有機分散剤としてポリビニルピロリドン、が含まれるように調製した。
(1)銅微粒子の調製
アルカリ土類金属元素の供給源として酢酸カルシウム1水和物88g、非金属元素であるリンの供給源としてホスフィン酸19.8gを添加した以外は実施例2と同様にして、5gの銅微粒子を得た。
【0087】
(2)生成した銅微粒子の評価
(イ)銅微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した銅微粒子の一次粒子径は、1〜40nmの範囲で、平均一次粒子径は8nmであった。また、該銅微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、銅100質量%であった。
(ロ)銅微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いて銅微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該銅微粒子の平均二次粒子径は、120nmであった。これらの銅微粒子の平均アスペクト比は1.1で、形状は顆粒状であり、めっき膜状、及びデンドライト状の凝集は観察されなかった。
【0088】
(ハ)微粒子シェル部に存在する金属酸化物の結晶性と金属酸化物量の同定
透過型電子顕微鏡(TEM)による観察の結果、銅微粒子の一次粒子のコア部に結晶性の金属元素、シェル部にアモルファス化合物が確認された。さらに透過型電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型X線分光装置(TEM−EDX)を使用して、微粒子シェル部に存在するアモルファス化合物の組成分析を実施したところ、亜酸化銅(CuO)であった。また、微粒子の加熱処理による金属酸化物の重量測定とX線回折によるアモルファス成分の質量比率から、微粒子(P)のシェル部に存在するアモルファス金属酸化物量([アモルファス金属酸化物の質量/微粒子(P)の質量]×100(質量%))を求めたところ、80質量%であった。
【0089】
(ニ)被覆有機分散剤の分子構造の同定
得られた銅微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、ポリビニルピロリドンに由来するピロリドン基(CNO)に帰属するピークが検出された。
(ホ)有機分散剤の被覆量
炭素・硫黄分析計を用いた銅微粒子の分析では、有機分散剤であるポリビニルピロリドンで被覆された微粒子(P)における、有機分散剤の割合([有機分散剤(D)/微粒子(P)]×100(質量%))は、0.5質量%であった。
(ヘ)銅微粒子に含まれる非金属元素、及びアルカリ土類金属元素の測定
ICP発光分光・分析計を用いた銅微粒子の分析では、微粒子(P)に含まれるホウ素が250μg/g、リンが1000μg/g、カルシウムが20000μg/g検出された。
【0090】
[実施例5]
無電解還元反応により銅微粒子を生成させ、得られた銅微粒子の評価を行った。尚、還元反応水溶液は非金属元素としてホウ素とリン、アルカリ金属元素としてナトリウム、有機分散剤としてポリビニルピロリドン、が含まれるように調製した。また、ポリビニルピロリドンの追加被覆処理も行った。
(1)銅微粒子の調製
酢酸カルシウム1水和物を添加せずに、非金属元素であるリンの供給源としてホスフィン酸1.98g、有機分散剤としてポリビニルピロリドン100gを添加した以外は実施例4と同様にして、5gの銅微粒子を得た。
(2)ポリビニルピロリドンの追加被覆
得られた銅微粒子をポリビニルピロリドン(10g/リットル)メタノール溶液へ添加して、浴温10℃で10分間、撹拌状態を保持した。その後、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に銅微粒子を採取し、水洗とアルコール洗浄によって溶媒を乾燥除去することで、ポリビニルピロリドンが追加被覆された銅微粒子を得た。該被覆された銅微粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した写真を図3に示す。
【0091】
(3)生成した銅微粒子の評価
(イ)銅微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した銅微粒子の一次粒子径は、10〜80nmの範囲で、平均一次粒子径は25nmであった。また、該銅微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、銅100質量%であった。
(ロ)銅微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いて銅微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該銅微粒子の平均二次粒子径は、150nmであった。これらの銅微粒子の平均アスペクト比は1.2で、形状は顆粒状であり、めっき膜状、及びデンドライト状の凝集は観察されなかった。
【0092】
(ハ)微粒子シェル部に存在する金属酸化物の結晶性と金属酸化物量の同定
透過型電子顕微鏡(TEM)による観察の結果、銅微粒子の一次粒子のコア部に結晶性の金属元素、シェル部にアモルファス化合物が確認された。さらに透過型電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型X線分光装置(TEM−EDX)を使用して、微粒子シェル部に存在するアモルファス化合物の組成分析を実施したところ、亜酸化銅(CuO)であった。また、微粒子の加熱処理による金属酸化物の重量測定とX線回折によるアモルファス成分の質量比率から、微粒子(P)のシェル部に存在するアモルファス金属酸化物量([アモルファス金属酸化物の質量/微粒子(P)の質量]×100(質量%))を求めたところ、45質量%であった。
【0093】
(ニ)被覆有機分散剤の分子構造の同定
得られた銅微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、ポリビニルピロリドンに由来するピロリドン基(CNO)に帰属するピークが検出された。
(ホ)有機分散剤の被覆量
炭素・硫黄分析計を用いた銅微粒子の分析では、有機分散剤であるポリビニルピロリドンで被覆された銅微粒子(P)中の有機分散剤の割合([有機分散剤(D)/微粒子(P)]×100(質量%))は、20質量%であった。
(ヘ)銅微粒子に含まれる非金属元素の測定
ICP発光分光・分析計を用いた銅微粒子の分析では、微粒子(P)に含まれるホウ素が30μg/g、リンが70μg/g検出された。
【0094】
[実施例6]
無電解還元反応により銅微粒子を生成させ、得られた銅微粒子の評価を行った。尚、還元反応水溶液は非金属元素としてホウ素、アルカリ金属元素としてナトリウム、有機分散剤としてポリビニルピロリドン、が含まれるように調製した。
(1)銅微粒子の調製
金属元素である銅の供給源として水酸化銅14.6g、有機分散剤としてポリビニルピロリドン50g、非金属元素であるホウ素の供給源としてホウ酸27.8g、を蒸留水960gへ添加して撹拌した後、この水溶液を窒素ガス雰囲気中に移した。次に、非金属元素であるホウ素と、アルカリ金属元素であるナトリウムの供給源でもある水素化ホウ素ナトリウム溶液を還元剤として上記水溶液へ添加することで還元反応水溶液1L(リットル)を調製した([非金属元素(N)/金属元素(M)]モル濃度比:5)。調製した還元反応水溶液の酸化還元電位は標準水素電極基準で−800mV以下、pHは約13であった。この還元反応水溶液を撹拌しながら浴温20℃で60分の間、酸化還元電位を−800mV以下となるように適宜、還元剤を滴下するなどして無電解還元反応させ続けた結果、溶液中に銅微粒子が析出した。得られた銅微粒子分散水溶液を遠心分離機に入れ、粒子成分を沈殿回収した。回収した微粒子にエタノールを加えて撹拌洗浄して遠心分離機で微粒子を回収するエタノール洗浄操作を2度行い、水洗して溶媒を乾燥除去した後、5gの銅微粒子を得た。
【0095】
(2)生成した銅微粒子の評価
(イ)銅微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した銅微粒子の一次粒子径は、10〜70nmの範囲で、平均一次粒子径は20nmであった。また、該銅微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、銅100質量%であった。
(ロ)銅微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いて銅微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該銅微粒子の平均二次粒子径は、140nmであった。これらの銅微粒子の平均アスペクト比は1.1で、形状は顆粒状であり、めっき膜状、及びデンドライト状の凝集は観察されなかった。
【0096】
(ハ)微粒子シェル部に存在する金属酸化物の結晶性と金属酸化物量の同定
透過型電子顕微鏡(TEM)による観察の結果、一次粒子のコア部に結晶性の金属元素、シェル部にアモルファス化合物が確認された。さらに透過型電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型X線分光装置(TEM−EDX)を使用して、シェル部に存在するアモルファス化合物の組成分析を実施したところ、亜酸化銅(CuO)であった。また、銅微粒子の加熱処理による金属酸化物の重量測定とX線回折によるアモルファス成分の質量比率から、微粒子(P)のシェル部に存在するアモルファス金属酸化物量([アモルファス金属酸化物の質量/微粒子(P)の質量]×100(質量%))を求めたところ、70質量%であった。
【0097】
(ニ)被覆有機分散剤の分子構造の同定
得られた銅微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、ポリビニルピロリドンに由来するピロリドン基(CNO)に帰属するピークが検出された。
(ホ)有機分散剤の被覆量
炭素・硫黄分析計を用いた銅微粒子の分析では、有機分散剤であるポリビニルピロリドンで被覆された銅微粒子(P)中の有機分散剤の割合([有機分散剤(D)/微粒子(P)]×100(質量%))は、1.8質量%であった。
(ヘ)銅微粒子に含まれる非金属元素の測定
ICP発光分光・分析計を用いた銅微粒子の分析では、微粒子(P)に含まれるホウ素が1000μg/g検出された。
【0098】
[実施例7]
無電解還元反応により銅微粒子を生成させ、得られた銅微粒子の評価を行った。尚、還元反応水溶液は非金属元素としてホウ素とリン、アルカリ金属元素としてナトリウム、アルカリ土類金属元素としてカルシウム、有機分散剤としてポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール(分子量:500)が含まれるように調製した。
(1)銅微粒子の調製
有機分散剤としてポリビニルピロリドン1g、ポリビニルアルコール(分子量:500)10gを添加した以外は実施例4と同様にして、5gの銅微粒子を得た。
【0099】
(2)生成した銅微粒子の評価
(イ)銅微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した銅微粒子の一次粒子径は、15〜100nmの範囲で、平均一次粒子径は40nmであった。また、該銅微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、銅100質量%であった。
(ロ)銅微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いて銅微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該銅微粒子の平均二次粒子径は、250nmであった。これらの銅微粒子の平均アスペクト比は1.3で、形状は顆粒状であり、めっき膜状、及びデンドライト状の凝集は観察されなかった。
【0100】
(ハ)微粒子シェル部に存在する金属酸化物の結晶性と金属酸化物量の同定
透過型電子顕微鏡(TEM)による観察の結果、銅微粒子の一次粒子のコア部に結晶性の金属元素、シェル部にアモルファス化合物が確認された。さらに透過型電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型X線分光装置(TEM−EDX)を使用して、微粒子シェル部に存在するアモルファス化合物の組成分析を実施したところ、亜酸化銅(CuO)であった。また、微粒子の加熱処理による金属酸化物の重量測定とX線回折によるアモルファス成分の質量比率から、微粒子(P)のシェル部に存在するアモルファス金属酸化物量([アモルファス金属酸化物の質量/微粒子(P)の質量]×100(質量%))を求めたところ、25質量%であった。
【0101】
(ニ)被覆有機分散剤の分子構造の同定
得られた銅微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、ポリビニルピロリドンに由来するピロリドン基(CNO)と、ポリビニルアルコールに帰属するピークが検出された。
(ホ)有機分散剤の被覆量
炭素・硫黄分析計を用いた銅微粒子の分析では、有機分散剤であるポリビニルピロリドンとポリビニルアルコールで被覆された微粒子(P)における、有機分散剤の割合([有機分散剤(D)/微粒子(P)]×100(質量%))は、0.1質量%であった。
(ヘ)銅微粒子に含まれる非金属元素、及びアルカリ土類金属元素の測定
ICP発光分光・分析計を用いた銅微粒子の分析では、微粒子(P)に含まれるホウ素が5μg/g、リンが30μg/g、カルシウムが100μg/g検出された。
【0102】
[実施例8]
無電解還元反応により銅微粒子を生成させ、得られた銅微粒子の評価を行った。尚、還元反応水溶液は非金属元素としてホウ素とリン、アルカリ金属元素としてナトリウム、有機分散剤としてポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミドが含まれるように調製した。また、ポリビニルアルコールの追加被覆処理も行った。
(1)銅微粒子の調製
有機分散剤としてポリビニルピロリドン1g、ポリアクリルアミド10gを添加した以外は実施例5と同様にして、5gの銅微粒子を得た。
【0103】
(2)ポリビニルアルコールの追加被覆
銅微粒子をポリビニルアルコール(分子量:500)(10g/リットル)メタノール溶液へ添加して、浴温10℃で10分間、撹拌状態を保持した。その後、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に微粒子を採取し、水洗とアルコール洗浄によって溶媒を乾燥除去することで、ポリビニルアルコールが追加被覆された銅微粒子を得た。
【0104】
(3)生成した銅微粒子の評価
(イ)銅微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した銅微粒子の一次粒子径は、40〜200nmの範囲で、平均一次粒子径は75nmであった。また、該微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、銅100質量%であった。
(ロ)銅微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いて銅微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該銅微粒子の平均二次粒子径は、300nmであった。これらの銅微粒子の平均アスペクト比は1.3で、形状は顆粒状であり、めっき膜状、及びデンドライト状の凝集は観察されなかった。
【0105】
(ハ)微粒子シェル部に存在する金属酸化物の結晶性と金属酸化物量の同定
透過型電子顕微鏡(TEM)による観察の結果、銅微粒子の一次粒子のコア部に結晶性の金属元素、シェル部にアモルファス化合物が確認された。さらに透過型電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型X線分光装置(TEM−EDX)を使用して、微粒子シェル部に存在するアモルファス化合物の組成分析を実施したところ、亜酸化銅(CuO)であった。また、微粒子の加熱処理による金属酸化物の重量測定とX線回折によるアモルファス成分の質量比率から、微粒子(P)のシェル部に存在するアモルファス金属酸化物量([アモルファス金属酸化物の質量/微粒子(P)の質量]×100(質量%))を求めたところ、10質量%であった。
【0106】
(ニ)被覆有機分散剤の分子構造の同定
得られた銅微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、ポリビニルピロリドンに由来するピロリドン基(CNO)と、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミドに帰属するピークが検出された。
(ホ)有機分散剤の被覆量
炭素・硫黄分析計を用いた銅微粒子の分析では、有機分散剤であるポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミドで被覆された微粒子(P)における、有機分散剤の割合([有機分散剤(D)/微粒子(P)]×100(質量%))は、3質量%であった。
(ヘ)銅微粒子に含まれる非金属元素の測定
ICP発光分光・分析計を用いた銅微粒子の分析では、微粒子(P)に含まれるホウ素が5μg/g、リンが5μg/g検出された。
【0107】
[実施例9]
電解還元反応により銅微粒子を生成させ、得られた銅微粒子の評価を行った。尚、還元反応水溶液は非金属元素としてホウ素とリン、アルカリ金属元素としてナトリウム、アルカリ土類金属元素としてカルシウム、有機分散剤としてN−ビニル−2−ピロリドン、が含まれるように調製した。
(1)銅微粒子の調製
金属元素である銅の供給源として酢酸銅(II)の1水和物20g、有機分散剤としてN−ビニル−2−ピロリドン(炭素原子数:6)30g、非金属元素であるホウ素の供給源としてホウ酸3.1g、非金属元素であるリン、及びアルカリ金属元素の供給源としてホスフィン酸ナトリウムの1水和物5.3g、アルカリ土類金属元素の供給源として酢酸カルシウム1水和物1.76gを使用して、還元反応水溶液1L(リットル)を調製した([非金属元素(N)/金属元素(M)]モル濃度比:1)。還元反応水溶液のpHは約6.0であった。次に、この溶液中でSUS304製棒陰極(カソード電極)と白金板陽極(アノード電極)との間を浴温10℃で、カソードの酸化還元電位が標準水素電極基準で−1500mV以下となるように電圧を印加して、15分間、電解還元反応させ続けた結果、カソード外表面付近に銅微粒子が析出した。還元反応終了後の反応水溶液を、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に採取し、エタノール洗浄と水洗浄して溶媒を乾燥除去した後、1gの銅微粒子を得た。
【0108】
(2)生成した銅微粒子の評価
(イ)銅微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した銅微粒子の一次粒子径は、3〜75nmの範囲で、平均一次粒子径は15nmであった。また、該銅微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、銅100質量%であった。
(ロ)銅微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いて銅微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該銅微粒子の平均二次粒子径は、90nmであった。これらの銅微粒子の平均アスペクト比は1.1で、形状は顆粒状であり、めっき膜状、及びデンドライト状の凝集は観察されなかった。
【0109】
(ハ)微粒子シェル部に存在する金属酸化物の結晶性と金属酸化物量の同定
透過型電子顕微鏡(TEM)による観察の結果、銅微粒子の一次粒子のコア部に結晶性の金属元素、シェル部にアモルファス化合物が確認された。さらに透過型電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型X線分光装置(TEM−EDX)を使用して、シェル部に存在するアモルファス化合物の組成分析を実施したところ、亜酸化銅(CuO)であった。また、微粒子の加熱処理による金属酸化物の重量測定とX線回折によるアモルファス成分の質量比率から、微粒子(P)のシェル部に存在するアモルファス金属酸化物量([アモルファス金属酸化物の質量/微粒子(P)の質量]×100(質量%))を求めたところ、40質量%であった。
【0110】
(ニ)被覆有機分散剤の分子構造の同定
得られた銅微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、N−ビニル−2−ピロリドンに由来するピロリドン基(CNO)に帰属するピークが検出された。
(ホ)有機分散剤の被覆量
炭素・硫黄分析計を用いた銅微粒子の分析では、有機分散剤であるN−ビニル−2−ピロリドンで被覆された微粒子(P)中の有機分散剤の割合([有機分散剤(D)/微粒子(P)]×100(質量%))は、2.1質量%であった。
(ヘ)銅微粒子に含まれる非金属元素、及びアルカリ土類金属元素の測定
ICP発光分光・分析計を用いた銅微粒子の分析では、微粒子(P)に含まれるホウ素が80μg/g、リンが100μg/g、カルシウムが300μg/g検出された。
【0111】
参考例1
電解還元反応により亜鉛微粒子を生成させ、得られた亜鉛微粒子の評価を行った。尚、還元反応水溶液は非金属元素としてホウ素とリン、アルカリ金属元素としてナトリウム、アルカリ土類金属元素としてカルシウム、有機添加剤としてN−メチル−2−ピロリドン、が含まれるように調製した。また、N−メチル−2−ピロリドンの追加被覆処理も行った。
(1)亜鉛微粒子の調製
金属元素である亜鉛の供給源として酢酸亜鉛(II)の2水和物22g、アルカリ土類金属元素の供給源として酢酸カルシウム1水和物3.52g、有機分散剤としてN−メチル−2−ピロリドン(炭素原子数:5)80gを添加した以外は実施例9と同様にして、1gの亜鉛微粒子を得た。
(2)N−メチル−2−ピロリドンの追加被覆
亜鉛微粒子をN−メチル−2−ピロリドン(10g/リットル)メタノール溶液へ添加して、浴温10℃で10分間、撹拌状態を保持した。その後、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に微粒子を採取し、水洗とアルコール洗浄によって溶媒を乾燥除去することで、N−メチル−2−ピロリドンが追加被覆された亜鉛微粒子を得た。
【0112】
(3)生成した亜鉛微粒子の評価
(イ)亜鉛微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した亜鉛微粒子の一次粒子径は、20〜350nmの範囲で、平均一次粒子径は65nmであった。また、該亜鉛微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、亜鉛100質量%であった。
(ロ)亜鉛微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いて亜鉛微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該亜鉛微粒子の平均二次粒子径は、300nmであった。これらの亜鉛微粒子の平均アスペクト比は1.2で、形状は顆粒状であり、めっき膜状、及びデンドライト状の凝集は観察されなかった。
【0113】
(ハ)微粒子シェル部に存在する金属酸化物の結晶性と金属酸化物量の同定
透過型電子顕微鏡(TEM)による観察の結果、亜鉛微粒子の一次粒子のコア部に結晶性の金属元素、シェル部にアモルファス化合物が確認された。さらに透過型電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型X線分光装置(TEM−EDX)を使用して、シェル部に存在するアモルファス化合物の組成分析を実施したところ、酸化亜鉛(ZnO)であった。また、微粒子の加熱処理による金属酸化物の重量測定とX線回折によるアモルファス成分の質量比率から、微粒子(P)のシェル部に存在するアモルファス金属酸化物量([アモルファス金属酸化物の質量/微粒子(P)の質量]×100(質量%))を求めたところ、45質量%であった。
【0114】
(ニ)被覆有機分散剤の分子構造の同定
得られた亜鉛微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、N−メチル−2−ピロリドンに由来するピロリドン基(CNO)に帰属するピークが検出された。
(ホ)有機分散剤の被覆量
炭素・硫黄分析計を用いた亜鉛微粒子の分析では、有機分散剤であるN−メチル−2−ピロリドンで被覆された微粒子(P)における、有機分散剤の割合([有機分散剤(D)/微粒子(P)]×100(質量%))は、8.5質量%であった。
(ヘ)亜鉛微粒子に含まれる非金属元素、及びアルカリ土類金属元素の測定
ICP発光分光・分析計を用いた亜鉛微粒子の分析では、微粒子(P)に含まれるホウ素が350μg/g、リンが300μg/g、カルシウムが900μg/g検出された。
【0115】
参考例2
電解還元反応によりスズ微粒子を生成させ、得られたスズ微粒子の評価を行った。尚、還元反応水溶液は非金属元素としてホウ素とリン、アルカリ金属元素としてナトリウム、アルカリ土類金属元素としてカルシウム、有機添加剤としてN−メチル−2−ピロリドン、が含まれるように調製した。また、N−メチル−2−ピロリドンの追加被覆処理も行った。
(1)スズ微粒子の調製
金属元素であるスズの供給源として酢酸スズ(II)25gを添加した以外は参考例1と同様にして、1gのスズ微粒子を得た。
【0116】
(2)N−メチル−2−ピロリドンの追加被覆
参考例1と同様にして、N−メチル−2−ピロリドンが追加被覆されたスズ微粒子を得た。
(3)生成したスズ微粒子の評価
(イ)スズ微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成したスズ微粒子の一次粒子径は、45〜500nmの範囲で、平均一次粒子径は65nmであった。また、該スズ微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、スズ100質量%であった。
(ロ)スズ微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いてスズ微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該スズ微粒子の平均二次粒子径は、400nmであった。これらのスズ微粒子の平均アスペクト比は1.2で、形状は顆粒状であり、めっき膜状、及びデンドライト状の凝集は観察されなかった。
【0117】
(ハ)微粒子シェル部に存在する金属酸化物の結晶性と金属酸化物量の同定
透過型電子顕微鏡(TEM)による観察の結果、スズ微粒子の一次粒子のコア部に結晶性の金属元素、シェル部にアモルファス化合物が確認された。さらに透過型電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型X線分光装置(TEM−EDX)を使用して、シェル部に存在するアモルファス化合物の組成分析を実施したところ、酸化スズ(SnO)であった。また、微粒子の加熱処理による金属酸化物の重量測定とX線回折によるアモルファス成分の質量比率から、微粒子(P)のシェル部に存在するアモルファス金属酸化物量([アモルファス金属酸化物の質量/微粒子(P)の質量]×100(質量%))を求めたところ、70質量%であった。
【0118】
(ニ)被覆有機分散剤の分子構造の同定
得られたスズ微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、N−メチル−2−ピロリドンに由来するピロリドン基(CNO)に帰属するピークが検出された。
(ホ)有機分散剤の被覆量
炭素・硫黄分析計を用いたスズ微粒子の分析では、有機分散剤であるN−メチル−2−ピロリドンで被覆された微粒子(P)中の有機分散剤の割合([有機分散剤(D)/微粒子(P)]×100(質量%))は、9質量%であった。
(ヘ)スズ微粒子に含まれる非金属元素、及びアルカリ土類金属元素の測定
ICP発光分光・分析計を用いたスズ微粒子の分析では、微粒子(P)に含まれるホウ素が800μg/g、リンが800μg/g、カルシウムが2500μg/g検出された。
【0119】
参考例3
電解還元反応によりニッケル微粒子を生成させ、得られたニッケル微粒子の評価を行った。尚、還元反応水溶液は非金属元素としてホウ素とリン、アルカリ金属元素としてナトリウム、アルカリ土類金属元素としてカルシウム、有機分散剤としてN−メチル−2−ピロリドン、が含まれるように調製した。また、N−メチル−2−ピロリドンの追加被覆処理も行った。
(1)ニッケル微粒子の調製
金属元素であるニッケルの供給源として酢酸ニッケル(II)の4水和物26gを添加した以外は参考例1と同様にして、1gのニッケル微粒子を得た。
(2)N−メチル−2−ピロリドンの追加被覆
参考例1と同様にして、N−メチル−2−ピロリドンが追加被覆されたニッケル微粒子を得た。
【0120】
(3)生成したニッケル微粒子の評価
(イ)ニッケル微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成したニッケル微粒子の一次粒子径は、30〜400nmの範囲で、平均一次粒子径は70nmであった。また、該微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、ニッケル100質量%であった。
(ロ)ニッケル微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いてニッケル微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該ニッケル微粒子の平均二次粒子径は、350nmであった。これらのニッケル微粒子の平均アスペクト比は1.2で、形状は顆粒状であり、めっき膜状、及びデンドライト状の凝集は観察されなかった。
【0121】
(ハ)微粒子シェル部に存在する金属酸化物の結晶性と金属酸化物量の同定
透過型電子顕微鏡(TEM)による観察の結果、ニッケル微粒子の一次粒子のコア部に結晶性の金属元素、シェル部にアモルファス化合物が確認された。さらに透過型電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型X線分光装置(TEM−EDX)を使用して、シェル部に存在するアモルファス化合物の組成分析を実施したところ、酸化ニッケル(NiO)であった。また、微粒子の加熱処理による金属酸化物の重量測定とX線回折によるアモルファス成分の質量比率から、微粒子(P)のシェル部に存在するアモルファス金属酸化物量([アモルファス金属酸化物の質量/微粒子(P)の質量]×100(質量%))を求めたところ、60質量%であった。
(ニ)被覆有機分散剤の分子構造の同定
得られたニッケル微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、N−メチル−2−ピロリドンに由来するピロリドン基(CNO)に帰属するピークが検出された。
(ホ)有機分散剤の被覆量
炭素・硫黄分析計を用いたスズ微粒子の分析では、有機分散剤であるN−メチル−2−ピロリドンで被覆された微粒子(P)における、有機分散剤の割合([有機分散剤(D)/微粒子(P)]×100(質量%))は、10質量%であった。
(ヘ)スズ微粒子に含まれる非金属元素、及びアルカリ土類金属元素の測定
ICP発光分光・分析計を用いたニッケル微粒子の分析では、微粒子(P)に含まれるホウ素が450μg/g、リンが420μg/g、カルシウムが1500μg/g検出された。
【0122】
[実施例10
電解還元反応により銅−亜鉛合金微粒子を生成させ、得られた銅−亜鉛合金微粒子の評価を行った。尚、還元反応水溶液は非金属元素としてホウ素とリン、アルカリ金属元素としてナトリウム、アルカリ土類金属元素としてカルシウム、有機添加剤としてN−ビニル−2−ピロリドン、が含まれるように調製した。
(1)銅−亜鉛合金微粒子の調製
金属元素である銅の供給源として酢酸銅(II)の1水和物20g、亜鉛の供給源として酢酸亜鉛(II)の2水和物3.3g、有機分散剤としてN−ビニル−2−ピロリドン(炭素原子数:6)60g、を添加した以外は実施例9と同様にして、1gの銅−亜鉛合金微粒子を得た。
(2)生成した銅−亜鉛合金微粒子の評価
(イ)銅−亜鉛合金微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した銅−亜鉛合金微粒子の一次粒子径は、10〜95nmの範囲で、平均一次粒子径は25nmであった。また、該微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、銅90質量%、亜鉛10質量%(以下、銅−10%亜鉛合金のように表示することがある。)であった。
(ロ)銅−亜鉛合金微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いて銅−亜鉛合金微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該銅−亜鉛合金微粒子の平均二次粒子径は、120nmであった。これらの銅−亜鉛合金微粒子の平均アスペクト比は1.2で、形状は顆粒状であり、めっき膜状、及びデンドライト状の凝集は観察されなかった。
【0123】
(ハ)微粒子シェル部に存在する金属酸化物の結晶性と金属酸化物量の同定
透過型電子顕微鏡(TEM)による観察の結果、銅−亜鉛合金微粒子の一次粒子のコア部に結晶性の金属元素、シェル部にアモルファス化合物が確認された。さらに透過型電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型X線分光装置(TEM−EDX)を使用して、シェル部に存在するアモルファス化合物の組成分析を実施したところ、亜酸化銅(CuO)と酸化亜鉛(ZnO)が混在していた。また、微粒子の加熱処理による金属酸化物の重量測定とX線回折によるアモルファス成分の質量比率、及び熱刺激電流測定の脱分極スペクトルの比率から、微粒子(P)のシェル部に存在するアモルファス金属酸化物量([アモルファス金属酸化物の質量/微粒子(P)の質量]×100(質量%))を求めたところ、50質量%であった。
【0124】
(ニ)被覆有機分散剤の分子構造の同定
得られた銅−亜鉛合金微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、N−ビニル−2−ピロリドンに由来するピロリドン基(CNO)に帰属するピークが検出された。
(ホ)有機分散剤の被覆量
炭素・硫黄分析計を用いた銅−亜鉛合金微粒子の分析では、有機分散剤であるN−ビニル−2−ピロリドンで被覆された微粒子(P)中の有機分散剤の割合([有機分散剤(D)/微粒子(P)]×100(質量%))は、5質量%であった。
(ヘ)銅−亜鉛合金微粒子に含まれる非金属元素、及びアルカリ土類金属元素の測定
ICP発光分光・分析計を用いた銅−亜鉛合金微粒子の分析では、銅−亜鉛合金微粒子に含まれるホウ素が330μg/g、リンが300μg/g、カルシウムが1200μg/g検出された。
【0125】
[実施例11
電解還元反応により銅−スズ合金微粒子を生成させ、得られた銅−スズ合金微粒子の評価を行った。尚、還元反応水溶液は非金属元素としてホウ素とリン、アルカリ金属元素としてナトリウム、アルカリ土類金属元素としてカルシウム、有機添加剤としてN−ビニル−2−ピロリドン、が含まれるように調製した。
(1)銅−スズ合金微粒子の調製
金属元素である銅の供給源として酢酸銅(II)の1水和物20g、スズの供給源として酢酸スズ(II)1.23g、アルカリ土類金属元素の供給源として酢酸カルシウム1水和物5.28g、有機分散剤としてN−ビニル−2−ピロリドン(炭素原子数:6)60g、を添加した以外は実施例9と同様にして、1gの銅−スズ合金微粒子を得た。
【0126】
(2)生成した銅−スズ合金微粒子の評価
(イ)銅−スズ合金微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した銅−スズ合金微粒子の一次粒子径は、25〜250nmの範囲で、平均一次粒子径は45nmであった。また、該銅−スズ合金微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、銅91質量%、スズ9質量%(以下、銅−9%スズ合金のように表示することがある。)であった。
(ロ)銅−スズ合金微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いて銅−スズ合金微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該銅−スズ合金微粒子の平均二次粒子径は、240nmであった。これらの銅−スズ合金微粒子の平均アスペクト比は1.2で、形状は顆粒状であり、めっき膜状、及びデンドライト状の凝集は観察されなかった。
【0127】
(ハ)微粒子シェル部に存在する金属酸化物の結晶性と金属酸化物量の同定
透過型電子顕微鏡(TEM)による観察の結果、銅−スズ合金微粒子の一次粒子のコア部に結晶性の金属元素、シェル部にアモルファス化合物が確認された。さらに透過型電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型X線分光装置(TEM−EDX)を使用して、シェル部に存在するアモルファス化合物の組成分析を実施したところ、亜酸化銅(CuO)と酸化スズ(SnO)が混在していた。また、微粒子の加熱処理による金属酸化物の重量測定とX線回折によるアモルファス成分の質量比率、及び熱刺激電流測定の脱分極スペクトルの比率から、微粒子(P)のシェル部に存在するアモルファス金属酸化物量([アモルファス金属酸化物の質量/微粒子(P)の質量]×100(質量%))を求めたところ、80質量%であった。
【0128】
(ニ)被覆有機分散剤の分子構造の同定
得られた銅−スズ合金微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、N−ビニル−2−ピロリドンに由来するピロリドン基(CNO)に帰属するピークが検出された。
(ホ)有機分散剤の被覆量
炭素・硫黄分析計を用いた銅−スズ合金微粒子の分析では、有機分散剤であるN−ビニル−2−ピロリドンで被覆された微粒子(P)中の有機分散剤の割合([有機分散剤(D)/微粒子(P)]×100(質量%))は、5.1質量%であった。
(ヘ)微粒子に含まれる非金属元素、及びアルカリ土類金属元素の測定
ICP発光分光・分析計を用いた銅−スズ合金微粒子の分析では、微粒子(P)に含まれるホウ素が1000μg/g、リンが1000μg/g、カルシウムが3000μg/g検出された。
【0129】
参考例4
電解還元反応により銅−ニッケル合金微粒子を生成させ、得られた銅−ニッケル合金微粒子の評価を行った。尚、還元反応水溶液は非金属元素としてホウ素とリン、アルカリ金属元素としてナトリウム、アルカリ土類金属元素としてカルシウム、有機添加剤としてN−ビニル−2−ピロリドン、が含まれるように調製した。
(1)銅−ニッケル合金微粒子の調製
金属元素である銅の供給源として酢酸銅(II)の1水和物20g、ニッケルの供給源として酢酸ニッケル(II)の4水和物2.6g、有機分散剤としてN−ビニル−2−ピロリドン(炭素原子数:6)60g、を添加した以外は実施例9と同様にして、1gの銅−ニッケル合金微粒子を得た。
【0130】
(2)生成した銅−ニッケル合金微粒子の評価
(イ)銅−ニッケル合金微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した銅−ニッケル合金微粒子の一次粒子径は、20〜150nmの範囲で、平均一次粒子径は30nmであった。また、該銅−ニッケル合金微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、銅90質量%、ニッケル10質量%(以下、銅−10%ニッケル合金のように表示することがある。)であった。
(ロ)銅−ニッケル合金微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いて銅−ニッケル合金微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該銅−ニッケル合金微粒子の平均二次粒子径は、200nmであった。これらの銅−ニッケル合金微粒子の平均アスペクト比は1.2で、形状は顆粒状であり、めっき膜状、及びデンドライト状の凝集は観察されなかった。
【0131】
(ハ)微粒子シェル部に存在する金属酸化物の結晶性と金属酸化物量の同定
透過型電子顕微鏡(TEM)による観察の結果、銅−ニッケル合金微粒子の一次粒子のコア部に結晶性の金属元素、シェル部にアモルファス化合物が確認された。さらに透過型電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型X線分光装置(TEM−EDX)を使用して、微粒子シェル部に存在するアモルファス化合物の組成分析を実施したところ、亜酸化銅(CuO)と酸化ニッケル(NiO)が混在していた。また、微粒子の加熱処理による金属酸化物の重量測定とX線回折によるアモルファス成分の質量比率、及び熱刺激電流測定の脱分極スペクトルの比率から、微粒子(P)のシェル部に存在するアモルファス金属酸化物量([アモルファス金属酸化物の質量/微粒子(P)の質量]×100(質量%))を求めたところ、65質量%であった。
【0132】
(ニ)被覆有機分散剤の分子構造の同定
得られた銅−ニッケル合金微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、N−ビニル−2−ピロリドンに由来するピロリドン基(CNO)に帰属するピークが検出された。
(ホ)有機分散剤の被覆量
炭素・硫黄分析計を用いた銅−ニッケル合金微粒子の分析では、有機分散剤であるN−ビニル−2−ピロリドンで被覆された微粒子(P)における、有機分散剤の割合([有機分散剤(D)/微粒子(P)]×100(質量%))は、5.3質量%であった。
(ヘ)銅−ニッケル合金微粒子に含まれる非金属元素、及びアルカリ土類金属元素の測定
ICP発光分光・分析計を用いた銅−ニッケル合金微粒子の分析では、微粒子(P)に含まれるホウ素が430μg/g、リンが400μg/g、カルシウムが1600μg/g検出された。
【0133】
[比較例1]
(1)銅微粒子の調製
水素化ホウ素ナトリウム溶液を還元剤として、調製した還元反応水溶液の酸化還元電位を標準水素電極基準で−150mV以下で、かつ−300mVに達しないように適宜、還元剤を滴下するなどして無電解還元反応させ続けた以外は実施例1と同様にして、5gの銅微粒子を得た。
(2)生成した銅微粒子の評価
(イ)銅微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した銅微粒子の一次粒子径は、80〜700nmの範囲で、平均一次粒子径は150nmであった。また、該銅微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、銅100質量%であった。
(ロ)銅微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いて銅微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該銅微粒子の平均二次粒子径は、1200nmであった。これらの銅微粒子の平均アスペクト比は1.6であった。また、形状がめっき膜状の凝集径が50μm以上の凝集体が混入していることが確認された。該めっき膜状の凝集体を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した写真を図4に示す。
【0134】
(ハ)微粒子シェル部に存在する金属酸化物の結晶性と金属酸化物量の同定
透過型電子顕微鏡(TEM)による観察の結果、銅微粒子の一次粒子のコア部に結晶性の金属元素、シェル部に結晶性の金属酸化物が確認された。さらに透過型電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型X線分光装置(TEM−EDX)を使用して、シェル部の組成分析を実施したところ、結晶性の亜酸化銅(CuO)であった。
(ニ)被覆有機分散剤の分子構造の同定
得られた銅微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、ポリビニルピロリドンに由来するピロリドン基(CNO)に帰属するピークが検出された。
【0135】
(ホ)有機分散剤の被覆量
炭素・硫黄分析計を用いた銅微粒子の分析では、有機分散剤であるポリビニルピロリドンで被覆された微粒子(P)中の有機分散剤の割合([有機分散剤(D)/微粒子(P)]×100(質量%))は、0.08質量%であった。
(ヘ)銅微粒子に含まれる非金属元素、及びアルカリ土類金属元素の測定
ICP発光分光・分析計を用いた銅微粒子の分析では、微粒子(P)に含まれるホウ素が検出下限を下回る5μg/g未満、カルシウムが検出下限を下回る5μg/g未満であった。
【0136】
[比較例2]
(1)銅微粒子の調製
アルカリ土類金属元素の供給源である水酸化カルシウムと、有機分散剤であるポリビニルピロリドンを添加しなかった以外は実施例2と同様にして、5gの銅微粒子を得た。
(2)生成した銅微粒子の評価
(イ)銅微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した銅微粒子の一次粒子径は、30〜350nmの範囲で、平均一次粒子径は45nmであった。また、該微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、銅100質量%であった。
【0137】
(ロ)銅微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いて銅微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該銅微粒子の平均二次粒子径は、500nmであった。これらの銅微粒子の平均アスペクト比は1.2であった。また、形状がめっき膜状の凝集径が50μm以上の凝集体が混入していることが確認された。
(ハ)微粒子シェル部に存在する金属酸化物の結晶性と金属酸化物量の同定
透過型電子顕微鏡(TEM)による観察の結果、銅微粒子の一次粒子のコア部に結晶性の金属元素、シェル部に結晶性の金属酸化物が確認された。さらに透過型電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型X線分光装置(TEM−EDX)を使用して、シェル部の組成分析を実施したところ、結晶性の亜酸化銅(CuO)であった。
(ニ)微粒子に含まれる非金属元素の測定
ICP発光分光・分析計を用いた銅微粒子の分析では、銅微粒子に含まれるホウ素が10μg/g検出された。
【0138】
[比較例3]
(1)銅微粒子の調製
カソードの酸化還元電位が標準水素電極基準で−250mV以下で、かつ−300mVに達しないように電圧を印加して、電解還元反応させ続けた以外は実施例9と同様にして、1gの銅微粒子を得た。
(2)生成した銅微粒子の評価
(イ)銅微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した銅微粒子の一次粒子径は、45〜650nmの範囲で、平均一次粒子径は90nmであった。また、該銅微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、銅100質量%であった。
(ロ)銅微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いて銅微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該銅微粒子の平均二次粒子径は、700nmであった。これらの銅微粒子の平均アスペクト比は1.4であった。また、形状がデンドライト状の凝集径が5μm以上の凝集体が混入していることが確認された。
【0139】
(ハ)微粒子シェル部に存在する金属酸化物の結晶性と金属酸化物量の同定
透過型電子顕微鏡(TEM)による観察の結果、銅微粒子の一次粒子のコア部に結晶性の金属元素、シェル部に結晶性の金属酸化物が確認された。さらに透過型電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型X線分光装置(TEM−EDX)を使用して、シェル部の組成分析を実施したところ、結晶性の亜酸化銅(CuO)であった。
(ニ)被覆有機分散剤の分子構造の同定
得られた銅微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、N−ビニル−2−ピロリドンに由来するピロリドン基(CNO)に帰属するピークが検出された。
(ホ)有機分散剤の被覆量
炭素・硫黄分析計を用いた銅微粒子の分析では、有機分散剤であるN−ビニル−2−ピロリドンで被覆された微粒子(P)中の有機分散剤の割合([有機分散剤(D)/微粒子(P)]×100(質量%))は、0.2質量%であった。
(ヘ)銅微粒子に含まれる非金属元素、及びアルカリ土類金属元素の測定
ICP発光分光・分析計を用いた銅微粒子の分析では、銅微粒子に含まれるホウ素が検出下限を下回る5μg/g未満、リンが5μg/g未満、カルシウムが10μg/g未満であった。
【0140】
[比較例4]
(1)銅−亜鉛合金微粒子の調製
還元反応水溶液に非金属元素としてホウ素とリン、アルカリ金属元素としてナトリウム、アルカリ土類金属元素としてカルシウム、を添加しないで電解還元反応させ続けた以外は実施例10と同様にして、1gの銅−亜鉛合金微粒子を得た。
(2)生成した銅−亜鉛合金微粒子の評価
(イ)銅−亜鉛合金微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した銅−亜鉛合金微粒子の一次粒子径は、80〜750nmの範囲で、平均一次粒子径は140nmであった。また、該微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、銅90質量%、亜鉛10質量%であった。
(ロ)銅−亜鉛合金微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いて銅−亜鉛合金微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該銅−亜鉛合金微粒子の平均二次粒子径は、800nmであった。これらの銅−亜鉛合金微粒子の平均アスペクト比は1.4で、形状は顆粒状であり、めっき膜状、及びデンドライト状の凝集は観察されなかった。
【0141】
(ハ)微粒子シェル部に存在する金属酸化物の結晶性と金属酸化物量の同定
透過型電子顕微鏡(TEM)による観察の結果、銅−亜鉛合金微粒子の一次粒子のコア部に結晶性の金属元素、シェル部に結晶性の金属酸化物が確認された。さらに透過型電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型X線分光装置(TEM−EDX)を使用して、シェル部の組成分析を実施したところ、結晶性の亜酸化銅(CuO)と酸化亜鉛(ZnO)が混在していた。
(ニ)被覆有機分散剤の分子構造の同定
得られた銅−亜鉛合金微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、N−ビニル−2−ピロリドンに由来するピロリドン基(CNO)に帰属するピークが検出された。
【0142】
(ホ)有機分散剤の被覆量
炭素・硫黄分析計を用いた銅−亜鉛合金微粒子の分析では、有機分散剤であるN−ビニル−2−ピロリドンで被覆された微粒子(P)における、有機分散剤の割合([有機分散剤(D)/微粒子(P)]×100(質量%))は、0.08質量%であった。
(ヘ)銅−亜鉛合金微粒子に含まれる非金属元素の測定方法
ICP発光分光・分析計を用いた銅−亜鉛合金微粒子の分析では、銅−亜鉛合金微粒子に含まれるホウ素が検出下限を下回る5μg/g未満、リンが5μg/g未満であった。
【0143】
[比較例5]
(1)銅−スズ合金微粒子の調製
還元反応水溶液に非金属元素としてホウ素とリン、アルカリ金属元素としてナトリウム、アルカリ土類金属元素としてカルシウム、を添加しないで電解還元反応させ続けた以外は実施例11と同様にして、1gの銅−スズ合金微粒子を得た。
(2)生成した銅−スズ合金微粒子の評価
(イ)銅−スズ合金微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した銅−スズ合金微粒子の一次粒子径は、95〜800nmの範囲で、平均一次粒子径は170nmであった。また、該銅−スズ合金微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、銅91質量%、スズ9質量%であった。
(ロ)銅−スズ合金微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いて銅−スズ合金微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該銅−スズ合金微粒子の平均二次粒子径は、850nmであった。これらの銅−スズ合金微粒子の平均アスペクト比は1.4で、形状は顆粒状であり、めっき膜状、及びデンドライト状の凝集は観察されなかった。
【0144】
(ハ)微粒子シェル部に存在する金属酸化物の結晶性と金属酸化物量の同定
透過型電子顕微鏡(TEM)による観察の結果、銅−スズ合金微粒子の一次粒子のコア部に結晶性の金属元素、シェル部に結晶性の金属酸化物が確認された。さらに透過型電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型X線分光装置(TEM−EDX)を使用して、シェル部の組成分析を実施したところ、結晶性の亜酸化銅(CuO)と酸化スズ(SnO)が混在していた。
(ニ)被覆有機分散剤の分子構造の同定
得られた銅−スズ合金微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、N−ビニル−2−ピロリドンに由来するピロリドン基(CNO)に帰属するピークが検出された。
【0145】
(ホ)有機分散剤の被覆量
炭素・硫黄分析計を用いた銅−スズ合金微粒子の分析では、有機分散剤であるN−ビニル−2−ピロリドンで被覆された微粒子(P)における、有機分散剤の割合([有機分散剤(D)/微粒子(P)]×100(質量%))は、0.06質量%であった。
(ヘ)銅−スズ合金微粒子に含まれる非金属元素の測定
ICP発光分光・分析計を用いた銅−スズ合金微粒子の分析では、銅−スズ合金微粒子に含まれるホウ素が検出下限を下回る5μg/g未満、リンが5μg/g未満であった。
【0146】
[比較例6]
(1)銅−ニッケル合金微粒子の調製
還元反応水溶液に非金属元素としてホウ素とリン、アルカリ金属元素としてナトリウム、アルカリ土類金属元素としてカルシウム、を添加しないで電解還元反応させ続けた以外は参考例4と同様にして、1gの銅−ニッケル合金微粒子を得た。
(2)生成した銅−ニッケル合金微粒子の評価
(イ)銅−ニッケル合金微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した銅−ニッケル合金微粒子の一次粒子径は、90〜750nmの範囲で、平均一次粒子径は160nmであった。また、該銅−ニッケル合金微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、銅90質量%、ニッケル10質量%であった。
【0147】
(ロ)銅−ニッケル合金微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いて銅−ニッケル合金微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該銅−ニッケル合金微粒子の平均二次粒子径は、800nmであった。これらの銅−ニッケル合金微粒子の平均アスペクト比は1.4で、形状は顆粒状であり、めっき膜状、及びデンドライト状の凝集は観察されなかった。
(ハ)微粒子シェル部に存在する金属酸化物の結晶性と金属酸化物量の同定
透過型電子顕微鏡(TEM)による観察の結果、銅−ニッケル合金微粒子の一次粒子のコア部に結晶性の金属元素、シェル部に結晶性の金属酸化物が確認された。さらに透過型電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型X線分光装置(TEM−EDX)を使用して、微粒子シェル部の組成分析を実施したところ、結晶性の亜酸化銅(CuO)と酸化ニッケル(NiO)が混在していた。
【0148】
(ニ)被覆有機分散剤の分子構造の同定
得られた銅−ニッケル合金微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、N−ビニル−2−ピロリドンに由来するピロリドン基(C4H6NO)に帰属するピークが検出された。
(ホ)有機分散剤の被覆量
炭素・硫黄分析計を用いた銅−ニッケル合金微粒子の分析では、有機分散剤であるN−ビニル−2−ピロリドンで被覆された微粒子(P)における、有機分散剤の割合([有機分散剤(D)/微粒子(P)]×100(質量%))は、0.06質量%であった。
(ヘ)銅−ニッケル合金微粒子に含まれる非金属元素の測定方法
ICP発光分光・分析計を用いた銅−ニッケル合金微粒子の分析では、微粒子(P)に含まれるホウ素が検出下限を下回る5μg/g未満、リンが5μg/g未満であった。
上記実施例1〜11及び比較例1〜4における、実験条件と評価結果を表1−1と表1−2に、比較例1〜6における、実験条件と評価結果を表2にそれぞれまとめて示す。
【0149】
【表1-1】
【0150】
【表1-2】
【0151】
【表2】
【0152】
[実施例12
上記実施例で作製した微粒子を焼結して得られた焼結導電体の抵抗率と空隙率の評価を行った。
上記実施例1〜7、9〜11で得られた微粒子を、濃度が50質量%となるようにエタノールを添加した後、超音波ホモジナイザーを用いてよく撹拌して微粒子分散溶液とした。乾燥後の塗布膜の厚みが3μm程度となるように微粒子分散溶液をスピンコータでガラス基板(サイズ:2cm×2cm)に塗布して、試料を雰囲気制御型の熱処理炉内に設置し、窒素ガス雰囲気中、50〜70℃の温度範囲で加熱して塗膜からエタノールを除去させて乾燥粉末膜とした。その後、熱処理炉内で3%水素混合窒素ガス雰囲気中、200〜250℃の温度範囲で10分間加熱・焼成した後、熱処理炉中でゆっくりと室温まで炉冷し、焼結導電体を得た。直流四端子法(使用測定機:三菱化学(株)製、型式:ロレスターGP(四端子電気抵抗測定モード))を使用して、該焼結導電体の抵抗率を測定した。また、焼結導電体の断面SEM像を撮影し、撮影した画像の空隙部分のピクセルを黒、それ以外を白の2階調化した後に、画像数値化ソフトを利用して空隙率を数値データ化した。測定結果を表3に示す。
【0153】
【表3】
【0154】
[比較例7]
実施例12で使用した微粒子をそれぞれ比較例1〜3で得られた生成物とした以外は実施例12と同様の方法で、実験試料を調製した後、熱処理炉内における乾燥粉末膜の加熱処理による焼成を実施して、形成された焼結導電体の抵抗率を測定した。これらの評価結果を表5に示す。
【0155】
[実施例13
(1)実験試料の調製
上記実施例1〜7、9〜11で得られた微粒子に、濃度が20〜70質量%の範囲となるように有機化合物(S1)を含有している有機溶媒(S)を添加した後、超音波ホモジナイザーを用いてよく撹拌し、評価用の微粒子分散溶液を得た。
(2)焼結導電体の抵抗率、空隙率
得られた微粒子分散溶液をスピンコータでガラス基板(サイズ:2cm×2cm)上の全面に、焼結後の焼結導電体の厚みが10μmとなるようにそれぞれ塗布した。その後、試料を雰囲気制御型の熱処理炉内に設置し、窒素ガス雰囲気中150〜300℃の温度範囲で20〜40分間加熱・焼成した後、熱処理炉中でゆっくりと室温まで炉冷し、焼結導電体を得た。直流四端子法(使用測定機:三菱化学(株)製、型式:ロレスターGP(四端子電気抵抗測定モード))を使用して、該焼結導電体の抵抗率を測定した。また、焼結導電体の断面SEM像を撮影し、撮影した画像の空隙部分のピクセルを黒、それ以外を白の2階調化した後に、画像数値化ソフトを利用して空隙率を数値データ化した。測定結果を表4−1と表4−2に示す。
【0156】
(3)導電接続部材のダイシェア強度
得られた微粒子分散溶液を銅基板(サイズ:2cm×2cm)に焼結後の導電接続部材の厚みが40μmとなるように乾燥塗布した。その後、半導体シリコンチップ(サイズ:4mm×4mm)を4MPaの加圧力で塗布膜上に押し付けた試料を雰囲気制御型の熱処理炉内に設置し、窒素ガス雰囲気中150〜300℃の温度範囲で20〜40分間加熱・焼成した後、熱処理炉中でゆっくりと室温まで炉冷し、焼結体を介して半導体素子と導体基板とを接合した。基板表面に接合されたシリコンチップを米国MIL‐STD‐883に準拠したダイシェア強度評価装置を用いて、25℃において、ダイシェア強度を評価した。測定結果を表4−1と表4−2に示す。
【0157】
【表4-1】
【0158】
【表4-2】
【0159】
[比較例8]
実施例13の微粒子を比較例1〜3で得られた生成物とした以外は実施例13と同様の方法で、実験試料を調製した後、熱処理炉内における加熱処理による焼成を実施して、形成された焼結導電体の抵抗率、及び導電接続部材のダイシェア強度を測定した。これらの評価結果を表5に示す。
【0160】
【表5】
【0161】
[実施例14、比較例9]
上記例で作製した微粒子の粒成長挙動の評価を行った。
(1)実験試料の調製
上記実施例3、比較例2で得られた微粒子に、濃度が50質量%となるように有機化合物(S1)であるグリセロールを添加した後、超音波ホモジナイザーを用いてよく撹拌し、評価用の微粒子分散溶液を得た。
(2)微粒子の粒成長挙動の測定
得られた微粒子分散溶液を、2枚の厚さ10μmの純アルミ箔に挟み込み、金属の円柱にて薄くする。微粒子分散溶液とアルミ箔部分を直径15mm程度の円形にトリミングを行う。微粒子分散溶液の厚さは80〜60μmとなるように調整した。
(極)小角X線散乱((U)SAXS)は、SPring−8のビームラインBL19B2に設置されたSAXS装置を利用した。X線のエネルギーとしては18keVを選択し、検出器は2次元位置敏感型検出器(PILATUS−2M)を用いた。カメラ長はベヘン酸銀の回折ピーク(58.53Å)で較正し、SAXSで3m、USAXSで43mとした。加熱処理には、Instec社製の加熱ステージ(HCS402 Dual Heater Microscope Hot And Cold Stage)を用いた。
測定条件は、昇温レート:10〜5℃/min、最高到達温度:300℃とし、300℃で20分保持した。加熱による酸化を防ぐため、加熱ステージ内はアルゴンガスで置換した後、一定量のアルゴンガスを加熱ステージ内に供給した。
得られたX線小角散乱の測定データは、球体モデルによってフィッティングした後、粒子径分布へと変換処理した。昇温時の温度に対する粒径をプロットした結果を図5に示す。
【0162】
[焼結膜の導電性についての考察]
比較例1〜3で得た銅微粒子又は銅微粒子分散液から調製した焼成膜についての抵抗率は220〜620μΩ・cm、空隙率は40〜50体積%とであったのに対し、実施例1〜7、9で得た銅微粒子又は銅微粒子分散液から調製した焼成膜についての抵抗率は18〜90μΩ・cm、空隙率は8〜27体積%と、より小さい抵抗率と空隙率を示した。このように、シェル部の一部又は全体が金属元素のアモルファス酸化物から構成されるコア/シェル構造である微粒子を用いることで、銅微粒子の焼結性を向上させることが可能であることが確認された。
【0163】
[接合体の接合強度についての評価]
実施例1〜7、9で得た銅微粒子の分散液を用いて基板表面に接合されたシリコンチップのダイシェア強度は18〜50N/mm、比較例1〜3で得られた銅微粒子の分散液を用いて基板表面に接合されたシリコンチップのダイシェア強度は3〜7N/mmであった。このように、本発明の粒子のシェル部の一部又は全体が金属元素のアモルファス酸化物から構成されるコア/シェル構造である微粒子の分散溶液を用いることで、半導体素子と導体基板の接合強度を向上させることが可能であることが確認された。
【要約】
【課題】一次粒子の粒子径が小さく、焼結性を低下させずに分散安定性を向上させ、かつ還元反応により析出する微粒子がめっき膜状やデンドライト状に凝集するのを抑制した、コア/シェル構造の金属微粒子を提供する。
【解決手段】一次粒子の粒子径が1〜500nmの範囲である微粒子(P)であって、金属元素(M)からなるコア部と、金属元素(M)の酸化物からなるシェル部とから形成されるコア/シェル構造で、かつ該シェル部の金属元素(M)の酸化物の一部又は全部が金属元素(M)のアモルファス酸化物であることを特徴とする、微粒子。
【選択図】なし
図1
図2
図3
図4
図5