【課題を解決するための手段】
【0015】
炭素をドープしたp型の高抵抗CZウェーハに、デバイス製造工程としてCMOSを製造しその特性を調査したところ、目的とする特性が十分得られないもの、あるいは隣り合ったn−wellの分離が十分できないため、デバイス特性が悪化するものが生じる場合があり、問題を生じた高抵抗ウェーハについて種々調査した結果、次のようなことがあきらかになった。
【0016】
まず、表面にデバイスを形成させる前のウェーハでは、表面層のDZ層あるいは内部のBMD(Bulk Micro Defect )とも呼ばれる酸素析出物については、何ら問題はなく正常に分布しているが、CMOSのデバイスが形成された後のウェーハを調べると、表面近くはp型半導体であるが、内部はn型半導体に反転しているものがあり、とくにこのp/n型反転領域が表面に近い位置に存在した場合、CMOSの特性が目標値に達していなかったり、n−wellの分離が不十分なものが生じていた。
【0017】
ウェーハ内部で生じるp/n型反転は、
図1に示すように、デバイス形成の製造工程の熱処理によって生じるサーマルドナーが原因であると推定される。しかし、サーマルドナーが発生しないように、ウェーハ深さ方向全域にわたって固溶酸素を低減することは、熱処理を十分長くおこなう必要があり製造時間が長時間化して生産性が低下する上、ウェーハの強度低下を招くおそれがあるという問題がある。
さらに、このp/n型反転現象は、より抵抗率の高いウェーハに屡々見られるが、p/n型反転が発生していたとしても、このp/n型反転領域が十分深い位置にあれば、CMOSの特性やn−well分離にほとんど影響しないので、より深い位置にこのp/n型反転領域が形成されて、それより浅い部分はp型を維持するよう位置制御をおこなえばデバイス特性に影響しない。つまり、サーマルドナーの発生する位置が表面に形成されるCMOSの作動に影響を及ぼさない深さであればウェーハ特性としては充分である。
【0018】
つまり、p型のウェーハ上にn−wellを形成させたとき、wellとウェーハ基板との間に空乏層が生じるが、その空乏層からp/n型反転領域が十分離れているようにp/n型反転発生を制御できればよい。ウェーハの抵抗率が高いとき、空乏層の領域は通常の抵抗率の低い場合よりも大きくなるので、高周波数帯に対応するデバイスに適用する高抵抗ウェーハの場合には、発生したp/n型反転領域の表面からの深さは、炭素ドープによって製造されたウェーハでは対応できないほど十分大きくする必要がある。
【0019】
図2は、上述したp型ウェーハ上に形成されたCMOSの構成とp/n型反転領域との関係を説明する図である。図示するCMOSはtwin−well構造とし、p、n−wellが補完し合う構造になっている。p型ウェーハ3表面から基板深さ方向に、p−well並びにn−wellおよび欠乏層1が形成されており、p/n型反転領域2の発生により、n型ウェーハ4に反転している。
図2(a)ではp/n型反転領域2が欠乏層領域に接しているため、n−wellの分離が十分でなく、所定の特性が得られない。一方、同(b)に示すように、p/n型反転領域2を十分深い位置に発生させることによって、CMOSの特性やn−well分離に影響を及ぼすことがほとんどなくなることが分かる。
【0020】
n型への反転が生じるか生じないかは、サーマルドナーの発生量とウェーハのドーパント量により大きく影響される。サーマルドナーの発生量は、酸素量、ウェーハの熱処理条件、およびデバイス形成時の熱履歴により推測は可能であり、ドーパント量はウェーハの抵抗率によりほぼ決定され、抵抗率が高いウェーハほど少ない。
【0021】
したがって、n型への反転が生じるかどうかについては、上記の諸条件がわかれば予測は可能で、デバイス形成時の熱履歴を知ることができれば、ウェーハの熱処理条件を選定することにより、n型への反転の発生を抑止することは可能と思われる。しかしながら、n型への反転が生じたとしても、デバイスの形成領域はp型を維持し、n型に反転した部分が十分深い位置であればデバイスの性能には影響しないので、n型への反転の発生を制御するよりも、p/n型反転領域の発生位置、すなわち表面からの深さを制御できればよい。
【0022】
ウェーハは、表面の活性領域の欠陥を低減する目的などのため、高温加熱処理が施される。ウェーハが高温加熱されると、多くの場合、酸素の外方拡散が生じて表面層の酸素濃度が低下する。したがって、デバイスの製造過程でサーマルドナーが発生する条件の処理を受けたとき、ウェーハ内部はn型へ反転したとしても、表面近くは酸素濃度が低いためサーマルドナーが少なくp型を維持できる。
【0023】
このようにして、ウェーハ表面の酸素濃度の低下がp/n型反転領域の位置を決定していると推測されるので、高温加熱処理により生じる酸素の外方拡散を制御すれば、ウェーハにp/n型反転が生じたとしても、反転領域は表面のデバイスの作動に影響のない深さ位置に移行させることができる。
【0024】
そこで、高抵抗のウェーハを用い、デバイス製造時のシンタリングプロセスなど最もサーマルドナーの生じやすい条件として、450℃、1時間の熱処理をおこなった後、深さ方向の抵抗分布を広がり抵抗の測定法にて調査して、デバイス特性に影響を及ぼさないのに必要なp/n型反転領域の深さ位置を求めることとし、ウェーハに対し酸素外方拡散処理など種々の熱処理を施して、その条件の影響を調査した。
【0025】
ここでp/n型反転領域の境界深度位置は、深さ方向の抵抗値分布が実際の測定値としてピークを呈する深さ位置として定義する。これは、p/n型反転領域は、サーマルドナーからの電子供給がデバイス領域であるp型部分に影響を及ぼさない、つまり、p/n型反転領域のウェーハ表面側境界はp型領域のアクセプターによる正孔でもたらされていた導電性が、ドナーによる電子の供給により消滅して、理論的には、抵抗率無限大にまで増大する部分が、n型の半導体の状態であるとの認識による。
【0026】
このようなp/n型反転領域の境界位置が、前述のように表面のデバイスが形成される領域、さらにはn−wellに接して形成される空乏層に接しない深さにあればよい。この位置について調べてみると、表面から10μm以上あることが好ましく、実際には20μm〜50μmとすることが好ましい。ところが、炭素を高濃度にドープしたウェーハでは、多結晶化(DF切れ)を起こすので、炭素濃度を5×10
17atoms/cm
3 以上にすることができない。このような炭素濃度では、p/n型反転領域の境界深度位置を10μm程度より深くすることはできず、さらに、どんなに初期酸素濃度Oi、熱処理条件等を調整しても、20μmを超えて形成することはできない。
【0027】
ところが、本発明者らは、従来、New Donorといわれるドナーが発生するため、n型反転が起こりやすいとされてきた、窒素をウェーハにドープすることで、これらの問題を解決できることを見出した。
つまり、炭素ドープでは実現できなかった深深度にp/n型反転領域の境界深度を設定可能とするとともに、さらに、ドープする窒素濃度を制御するだけで、このp/n型反転境界の形成される深さ位置(境界深度)を制御可能とすることを可能としたものである。これにより、境界深度よりも表面側にはp/n型反転領域を形成しないことができる。
しかも、特定の熱処理条件とした処理を施すことで、炭素ドープCZウェーハでは改善できなかった抵抗値が深さ位置で低下してしまうことを防止する、つまり、ウェーハ深さ方向に抵抗値が一定の状態となるか、表面抵抗値よりも深さ方向に抵抗値が低下する部分がない高抵抗ウェーハを提供可能とすることができる。
【0028】
本発明の高抵抗シリコンウェーハの製造方法は、p/n型反転領域が発生する表面からの深度範囲を調節するシリコンウェーハの製造方法であって、
ウェーハ表面抵抗値が714〜1905Ωcmとなるp型ドーパント濃度、窒素濃度;3.98×1013〜8.92×1013atoms/cm3 (ASTM F123-1981)、酸素濃度Oiが14.57×1017〜16.63×1017atoms/cm3 (ASTM F123-1979)としてCZ法により単結晶を引き上げる引き上げ工程と、この単結晶からスライスしてウェーハに加工する加工工程と、非酸化性雰囲気による酸素外方拡散熱処理工程と、を有し、
前記酸素外方拡散熱処理が、アルゴンガス、水素ガス、あるいはそれらの混合ガス雰囲気中にて処理温度1100〜1250℃、処理時間1〜5時間とされる熱処理条件であり、
前記酸素外方拡散熱処理を施すことにより、デバイス製造の工程における熱処理が行われる際に、サーマルドナー発生に起因するp/n型反転領域を、デバイス活性領域およびそれに接して形成される空乏層領域には接しない深さに発生させ、
ウェーハ表面側のp型領域と厚さ方向内側のp/n型領域との境界となる抵抗値のピーク位置が、前記窒素濃度によってウェーハ表面からの境界深度30〜45μmの範囲に設定されるよう調節するとともに、
デバイスの製造される領域で、前記酸素外方拡散熱処理後さらに800℃3hr+1000℃16hrの熱処理した場合に発生する酸素析出物密度が、ウェーハ表面抵抗値が714〜1905Ωcmとなるp型ドーパント濃度、酸素濃度Oiが14.57×1017〜16.63×1017atoms/cm3 (ASTM F123-1979)、多結晶化(DF切れ)を起こさない最大限界濃度とされる32×1016atoms/cm3 (ASTM F123-1981)の炭素をドープしてCZ法により得られたウェーハに前記酸素外方拡散熱処理後さらに800℃3hr+1000℃16hrの熱処理した場合に発生する酸素析出物密度に比べて、2〜4×1010個/cm3 多くすることを特徴とする。
本発明の高抵抗シリコンウェーハの製造方法は、p/n型反転領域が発生する表面からの深度範囲を調節するシリコンウェーハの製造方法であって、
ウェーハ表面抵抗値が0.1〜10kΩcmとなるp型ドーパント濃度、窒素濃度;1.0×10
13〜10×10
13atoms/cm
3 (ASTM F123-1981)、酸素濃度Oiが5.0×10
17〜20×10
17atoms/cm
3 (ASTM F123-1979)としてCZ法により単結晶を引き上げる引き上げ工程と、この単結晶からスライスしてウェーハに加工する加工工程と、非酸化性雰囲気による酸素外方拡散熱処理工程と、を有し、
ウェーハ表面側のp型領域と厚さ方向内側のp/n型領域との境界となる抵抗値のピーク位置が、前記窒素濃度によってウェーハ表面からの境界深度10〜70μmの範囲に設定されるよう調節することにより上記課題を解決した。
本発明は、前記酸素外方拡散熱処理工程後に、酸素析出核形成熱処理工程および/または酸素析出物形成熱処理工程と、を有することができる。
本発明の高抵抗シリコンウェーハの製造方法は、p/n型反転領域が発生せず、ウェーハ厚さ全域において抵抗分布が、0.1〜10kΩcmの範囲に設定される基準値に対し、そのバラツキが、0〜30%以内に設定されるp型領域を有するシリコンウェーハの製造方法であって、
ウェーハ表面抵抗値が0.1〜10kΩcmとなるp型ドーパント濃度、窒素濃度;1.0×10
13〜10×10
13atoms/cm
3 (ASTM F123-1981)、酸素濃度Oiが5×10
17〜20×10
17atoms/cm
3 (ASTM F123-1979)としてCZ法により単結晶を引き上げる引き上げ工程と、この単結晶からスライスしてウェーハに加工する加工工程と、非酸化性雰囲気による酸素外方拡散熱処理工程と、酸素析出核形成熱処理工程および/または酸素析出物形成熱処理工程と、を有することにより上記課題を解決した。
さらに、前記酸素外方拡散熱処理が、アルゴンガス、水素ガス、あるいはそれらの混合ガス雰囲気中にて処理温度1100〜1250℃、処理時間1〜5時間とされる熱処理条件であることが可能である。
また、酸素外方拡散熱処理を施すことにより、デバイス製造の工程における熱処理が行われる際に、サーマルドナー発生に起因するp/n型反転領域を、デバイス活性領域およびそれに接して形成される空乏層領域には接しない深さに発生させることができる また、前記酸素析出核形成熱処理が、処理温度600〜800℃、処理時間1〜20時間とされる熱処理条件とされ、前記酸素析出物形成熱処理が、処理温度1000〜1100℃℃、処理時間1〜20時間とされる熱処理条件であることがある。
本発明においては、前記酸素外方拡散熱処理を施した後、さらに酸素析出核形成熱処理および/または酸素析出物形成熱処理を施すことが望ましい。
本発明の高抵抗シリコンウェーハは、抵抗率が100Ωcm以上で、シリコンウェーハ表面に無欠陥層が形成されたp型のシリコンウェーハであって、
窒素がドープされ、デバイス製造の工程における熱処理が行われた際にサーマルドナー発生に起因するp/n型反転領域がデバイスの活性領域およびそれに接して形成される空乏領域には接しない深さにあることにより上記課題を解決した。
本発明において、前記p/n型反転領域がウェーハ表面から10μm〜70μmの範囲とされる深さにあることがより好ましい。
本発明には、前記p/n型反転領域が酸素析出物を含有することが可能である。
また、また、本発明において、ウェーハ内の窒素濃度が、1.0×10
13〜10×10
13atoms/cm
3 (ASTM F123-1981)とされる手段を採用することもできる。
本発明においては、p型ウェーハで、窒素がドープされ、アルゴンガス、水素ガス、あるいはそれらの混合ガス雰囲気中にて処理温度1100〜1250℃、処理時間1〜5時間とされる熱処理により、表面から深さ方向への抵抗分布が、0.1〜10kΩcm程度のp型表面領域と、深さ方向に抵抗値が上昇下降してピークを有するピーク領域と、酸素ドナーによるp/n型反転深度領域とを有し、前記ピーク領域におけるピーク位置がウェーハ表面からの深度10〜70μmの範囲とされることが好ましい。
本発明においては、p型ウェーハで、窒素がドープされ、アルゴンガス、水素ガス、あるいはそれらの混合ガス雰囲気中にて処理温度1100〜1250℃、処理時間1〜5時間とされる熱処理に加えて、処理温度1000〜1100℃℃、処理時間1〜20時間とされる熱処理により、表面から
深さ方向への抵抗分布が、厚さ全域において、0.1〜10kΩcmの範囲に設定される基準値に対し、そのバラツキが、0〜30%以内に設定されることができる。
本発明においては、800℃3hr+1000℃16hrの熱処理した場合に発生する酸素析出物密度が、多結晶化(DF切れ)を起こさない最大限界濃度とされる32×10
16atoms/cm
3 (ASTM F123-1981)の炭素をドープしたウェーハに同一条件で熱処理した場合に発生する酸素析出物密度に比べて、2〜4×10
10個/cm
3多いことができる。
【0029】
本発明の本発明の高抵抗シリコンウェーハの製造方法は、p/n型反転領域が発生する表面からの深度範囲を調節するシリコンウェーハの製造方法であって、
ウェーハ表面抵抗値が0.1〜10kΩcmとなるp型ドーパント濃度、窒素濃度;1.0×10
13〜10×10
13atoms/cm
3 (ASTM F123-1981)、酸素濃度Oiが5.0×10
17〜20×10
17atoms/cm
3 (ASTM F123-1979)としてCZ法により単結晶を引き上げる引き上げ工程と、この単結晶からスライスしてウェーハに加工する加工工程と、非酸化性雰囲気による酸素外方拡散熱処理工程と、を有し、
ウェーハ表面側のp型領域と厚さ方向内側のp/n型領域との境界となる抵抗値のピーク位置が、前記窒素濃度によってウェーハ表面からの境界深度10〜70μmの範囲に設定されるよう調節することにより、上記の範囲にピーク位置で表現されるp/n型反転領域境界の深さ位置を制御して、炭素ドープのウェーハでは実現できない深さ位置とし、同時にこの状態をウェーハ面内においてほぼ均一状態に全面で形成するとともに、同程度の熱処理時間により炭素ドープのウェーハに比べて高いゲッタリング能を有し、かつ、より高いウェーハ変形防止およびスリップ・割れ発生防止を実現でき、さらに、同じ表面抵抗値に設定しても、より高周波のデバイスに対応可能なウェーハを提供することができる。
【0030】
本発明本発明は、前記酸素外方拡散熱処理工程後に、酸素析出核形成熱処理工程および/または酸素析出物形成熱処理工程と、を有することで、炭素ドープのウェーハに比べて深い位置にp/n型反転領域境界を形成することができる。
【0031】
本発明本発明の高抵抗シリコンウェーハの製造方法は、p/n型反転領域が発生せず、ウェーハ厚さ全域において抵抗分布が、0.1〜10kΩcmの範囲に設定される基準値に対し、そのバラツキが、0〜30%以内に設定されるp型領域を有するシリコンウェーハの製造方法であって、
ウェーハ表面抵抗値が0.1〜10kΩcmとなるp型ドーパント濃度、窒素濃度;1.0×10
13〜10×10
13atoms/cm
3 (ASTM F123-1981)、酸素濃度Oiが5×10
17〜20×10
17atoms/cm
3 (ASTM F123-1979)としてCZ法により単結晶を引き上げる引き上げ工程と、この単結晶からスライスしてウェーハに加工する加工工程と、非酸化性雰囲気による酸素外方拡散熱処理工程と、酸素析出核形成熱処理工程および/または酸素析出物形成熱処理工程と、を有することにより、炭素ドープウェーハでは実現できなかった、p/n型反転領域が発生しない高抵抗ウェーハを実現することが可能となる。
【0032】
さらにさらに、前記酸素外方拡散熱処理が、アルゴンガス、水素ガス、あるいはそれらの混合ガス雰囲気中にて処理温度1100〜1250℃、処理時間1〜5時間とされる熱処理条件であることが可能である。
【0033】
また、また、酸素外方拡散熱処理を施すことにより、デバイス製造の工程における熱処理が行われる際に、サーマルドナー発生に起因するp/n型反転領域を、デバイス活性領域およびそれに接して形成される空乏層領域には接しない深さに発生させることができる。
【0034】
また、また、前記酸素析出核形成熱処理が、処理温度600〜800℃、処理時間1〜20時間とされる熱処理条件とされ、前記酸素析出物形成熱処理が、処理温度1000〜1100℃℃、処理時間1〜20時間とされる熱処理条件であることがある。
【0035】
本発明本発明においては、前記酸素外方拡散熱処理を施した後、さらに酸素析出核形成熱処理および/または酸素析出物形成熱処理を施すことで、雇用している酸素を固定することで、酸素濃度を低減して、ドナーの影響を低減することができる。
【0036】
本発明の本発明の高抵抗シリコンウェーハは、抵抗率が100Ωcm以上で、シリコンウェーハ表面に無欠陥層が形成されたp型のシリコンウェーハであって、
上記のいずれか記載の製造方法によって製造され、
窒素がドープされ、デバイス製造の工程における熱処理が行われた際にサーマルドナー発生に起因するp/n型反転領域がデバイスの活性領域およびそれに接して形成される空乏領域には接しない深さにあることにより、サーマルドナーの影響をなくし、優れた特性
を発揮するCMOSなどのデバイスを製造できるウェーハを提供することが可能となる。
【0037】
本発明本発明において、前記p/n型反転領域がウェーハ表面から境界深度とされる10μm〜70μmまでの範囲とされる深さにあることで、サーマルドナーの影響をより一層低減できる。なお、境界深度は好ましくは15〜60μm、20〜50μm、30〜45μm、35〜55μm、25〜40μm、40〜65μm、45〜70μmとすることができる。
【0038】
本発明本発明には、前記p/n型反転領域が酸素析出物を含有することにより、ゲッタリング能を有し、かつ、変形・割れの防止を図ることができる。
【0039】
また、また、本発明において、ウェーハ内の窒素濃度が、1.0×10
13〜10×10
13atoms/cm
3 (ASTM F123-1981)とされるとともに、この範囲内において、濃度を調節することにより、高濃度の場合はp/n型反転領域境界を深い深度位置に設定し、低濃度の場合には、p/n型反転領域境界を浅い深度位置に設定することができる。
【0040】
本発明本発明においては、p型ウェーハで、窒素がドープされ、アルゴンガス、水素ガス、あるいはそれらの混合ガス雰囲気中にて処理温度1100〜1250℃、処理時間1〜5時間とされる熱処理により、表面から深さ方向への抵抗分布が、0.1〜10kΩcm程度のp型表面領域と、深さ方向に抵抗値が上昇下降してピークを有するピーク領域と、酸素ドナーによるp/n型反転深度領域とを有し、前記ピーク領域におけるピーク位置がウェーハ表面からの深度10〜70μmの範囲とされることが好ましい。
【0041】
本発明本発明においては、p型ウェーハで、窒素がドープされ、アルゴンガス、水素ガス、あるいはそれらの混合ガス雰囲気中にて処理温度1100〜1250℃、処理時間1〜5時間とされる熱処理に加えて、処理温度1000〜1100℃℃、処理時間1〜20時間とされる熱処理により、表面から付加さ方向への抵抗分布が、厚さ全域において、0.1〜10kΩcmの範囲に設定される基準値に対し、そのバラツキが、0〜30%以内に設定されることができる。
【0042】
本発明本発明においては、800℃3hr+1000℃16hrの熱処理した場合に発生する酸素析出物密度が、多結晶化(DF切れ)を起こさない最大限界濃度とされる32×10
16atoms/cm
3 (ASTM F123-1981)の炭素をドープしたウェーハに同一条件で熱処理した場合に発生する酸素析出物密度に比べて、2〜4×10
10個/cm
3 多いことができる。
【0043】
上記の熱処理条件として、アルゴン、水素、またはこれらの混合ガス、または窒素に少量の酸素を含有した混合ガスを用いた調整雰囲気中にて、高温で1時間以上の酸素外方拡散処理をおこなうのが、限られた時間ではp/n型反転領域の位置をより深くできることがわかった。高温加熱により、酸素または酸素を含む雰囲気でも酸素外方拡散は可能であるが、非酸化性または弱酸化性雰囲気とする方が、表面近傍の酸素分圧を低くでき、酸素の離脱速度が大きくなると思われる。この非酸化性雰囲気中での高温加熱処理は、いわゆるDZ処理と同様COP(Crystal Originated Particle )欠陥などの表面近傍の欠陥を消滅させる効果もある。
【0044】
また、デバイス形成領域として使用される領域は、ウェーハ表面部から数μm程度の深さ領域に限定されている。このため、近年、デバイス形成領域として使用されないその他のウェーハの下層領域は、研磨処理などにより除去されることがある。このため、無理にウェーハ全域に亘り酸素濃度を低下させなくても、酸素外方拡散熱処理を行うことで、デバイス形成領域として使用されるウェーハ表層部が十分に低酸素化され、p型で高抵抗率を有するデバイス形成領域を確保することができる。
【0045】
上述の表面部の酸素を外方拡散により低減させた後、低温で加熱しさらに高温で加熱する熱処理、すなわち、酸素析出熱処理を施すのが望ましい。酸素析出熱処理により酸素析出が促進され、ウェーハ内部での残存酸素が低下し高抵抗化が図れる。さらに、p/n型反転領域をより深い位置で発生させることができる。
【0046】
酸素析出熱処理では、酸素外方拡散のための高温加熱により消失あるいは収縮した、酸素析出のための核を再形成あるいは成長させるための低温加熱による酸素析出核形成熱処理と、この核をさらに成長させ酸素析出物とするための高温加熱による酸素析出物成長熱処理とによる。
【0047】
デバイスの種類によっては、ウェーハ内部の抵抗率が低すぎると、デバイス使用領域よりも深い位置を通る電流量が増加し、エネルギー損出や電流ノイズを発生させることから、デバイス特性を著しく悪化させる。このため、デバイス使用領域より深い位置での高抵抗化が要求される場合がある。
【0048】
この場合に、ウェーハに酸素外方拡散熱処理を施すだけでは、ウェーハ内部、すなわち、ウェーハ全域を低酸素化することは困難であり、ウェーハ内部の残存酸素濃度が高くならざるを得ない。これに対応するため、ウェーハ表面の酸素を外方拡散させた後、酸素析出熱処理を施すのが望ましい。
【0049】
すなわち、ウェーハ内部の抵抗率が低いことによる、エネルギー損出や電流ノズル発生などの問題は、デバイス使用領域よりも深い位置での高抵抗化が達成されていればよく、その極性がn型であっても問題ないと考えられることから、酸素析出熱処理を施して、n型に反転したウェーハ内部の高抵抗化を図ることが有効である。
【0050】
以上、本発明においては、表面のDZ、p/n型反転領域の発生位置、内部のBMD形成について、より望ましい状態を得るための条件、つまり炭素ドープウェーハに比べて、酸素濃度が低い状態を実現し、炭素ドープウェーハに比べて高いBMD密度を実現するとともに、p/n型反転領域形成位置をより深くするか、p/n型反転領域が形成されず、抵抗値が付加さ方向で低減しない条件を求めたものである。
【0051】
本発明は、高周波用ダイオード等のデバイス製造に供して最適な高抵抗なものであり、ゲッタリングに必要な酸素析出起因欠陥密度が確保され、デバイス熱処理工程での酸素ドナーの発生を効果的に抑制でき、十分な機械的強度を有する高抵抗シリコンウェーハを提供する。
また、熱処理時間が短く、熱処理炉内でのシリコンウェーハの重金属汚染が生じにくく、上述したシリコンウェーハを高品質で低コストで製造できる高抵抗率のシリコンウェーハの製造方法を提供する。
さらに、上述したシリコンウェーハを用いた安価で、高比抵抗層の抵抗率が十分に高くノイズの少ない高周波用ダイオードに用いて好適なシリコンウェーハを提供する。
また、高抵抗CZ結晶を育成した後、加工されたウェーハへ施す熱処理工程を短縮することにより経済性に優れ、しかもデバイス熱処理工程での酸素ドナーの発生を効果的に抑制でき、更にはバルクに形成される酸素析出起因欠陥(酸素析出核あるいは酸素析出物)が再結合中心となって再結合中心を形成する必要がなく、また、ゲッタリング能力、ウェーハの機械的強度が高く、ライフタイム制御可能で収率が高く低コストな高周波用デバイスを製造可能な高抵抗率のシリコンウェーハおよびその製造方法を提供する。