特許第5923463号(P5923463)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5923463多結晶シリコンの結晶粒径分布の評価方法、多結晶シリコン棒の選択方法、多結晶シリコン棒、多結晶シリコン塊、および、単結晶シリコンの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5923463
(24)【登録日】2016年4月22日
(45)【発行日】2016年5月24日
(54)【発明の名称】多結晶シリコンの結晶粒径分布の評価方法、多結晶シリコン棒の選択方法、多結晶シリコン棒、多結晶シリコン塊、および、単結晶シリコンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/02 20060101AFI20160510BHJP
   C01B 33/035 20060101ALI20160510BHJP
   C30B 29/06 20060101ALI20160510BHJP
   G01N 23/207 20060101ALI20160510BHJP
【FI】
   C01B33/02 E
   C01B33/035
   C30B29/06 B
   C30B29/06 504Z
   G01N23/207
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-134123(P2013-134123)
(22)【出願日】2013年6月26日
(65)【公開番号】特開2015-9996(P2015-9996A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2015年7月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100106840
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100117444
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 健一
(72)【発明者】
【氏名】宮尾 秀一
(72)【発明者】
【氏名】祢津 茂義
【審査官】 西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/164803(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/02
G01N 23/207
C30B 29/06
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多結晶シリコンの結晶粒径分布をX線回折法により評価する方法であって、
前記多結晶シリコンを板状試料とし、該板状試料をミラー指数面<hkl>からのブラッグ反射が検出される位置に配置し、スリットにより定められるX線照射領域が前記板状試料の主面上をφスキャンするように該板状試料の中心を回転中心として回転角度φで面内回転させ、前記ミラー指数面からのブラッグ反射強度の前記板状試料の回転角度(φ)依存性を示すφスキャン・チャートを求め、さらに、該φスキャン・チャートのベースラインの回折強度の単位回転角度当たりの変化量を1次微分値で求め、該変化量の絶対値を正規分布化した際の歪度(skewness)を下式により算出し、該歪度(b値)を結晶粒径分布の評価指標として用いる、ことを特徴とする多結晶シリコンの結晶粒径分布の評価方法。
【数1】
ここで、nはデータ数、sは標準偏差、xiはi番目のデータ、xバーは平均値である。
【請求項2】
前記ミラー指数面<hkl>は、<111>および<220>の何れかの面である、請求項1に記載の多結晶シリコンの結晶粒径分布の評価方法。
【請求項3】
単結晶シリコン製造用原料として用いる多結晶シリコン棒をX線回折法を用いて選択するための方法であって、
前記多結晶シリコン棒は化学気相法による析出により育成されたものであり、該多結晶シリコン棒の径方向に垂直な断面を主面とする板状試料を採取し、該板状試料をミラー指数面<hkl>からのブラッグ反射が検出される位置に配置し、スリットにより定められるX線照射領域が前記板状試料の主面上をφスキャンするように該板状試料の中心を回転中心として回転角度φで面内回転させ、前記ミラー指数面からのブラッグ反射強度の前記板状試料の回転角度(φ)依存性を示すφスキャン・チャートを求め、さらに、該φスキャン・チャートのベースラインの回折強度の単位回転角度当たりの変化量を1次微分値で求め、該変化量の絶対値を正規分布化した際の歪度(skewness)を下式により算出し、該歪度(b値)を結晶粒径分布の評価指標として用い、単結晶シリコン製造用原料としての適否を判断する、ことを特徴とする多結晶シリコン棒の選択方法。
【数2】
ここで、nはデータ数、sは標準偏差、xiはi番目のデータ、xバーは平均値である。
【請求項4】
前記ミラー指数面<hkl>は、<111>および<220>の何れかの面である、請求項3に記載の多結晶シリコン棒の選択方法。
【請求項5】
前記ミラー指数<hkl>は<111>面であり、前記b値が1.12以下である場合に、単結晶シリコン製造用原料として選択する、請求項4に記載の多結晶シリコン棒の選択方法。
【請求項6】
前記ミラー指数<hkl>は<220>面であり、前記b値が1.12以下である場合に、単結晶シリコン製造用原料として選択する、請求項4に記載の多結晶シリコン棒の選択方法。
【請求項7】
前記多結晶シリコン棒はシーメンス法で育成されたものである、請求項3乃至6の何れか1項に記載の多結晶シリコン棒の選択方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多結晶シリコンの結晶粒径分布をX線回折法により評価する方法、および、これを利用して単結晶シリコンを安定的に製造するための原料として好適な多結晶シリコン棒乃至多結晶シリコン塊を選択する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス等の製造に不可欠な単結晶シリコンは、CZ法やFZ法により結晶育成され、その際の原料として多結晶シリコン棒や多結晶シリコン塊が用いられる。このような多結晶シリコン材料は、多くの場合、シーメンス法により製造される(特許文献1等参照)。シーメンス法とは、トリクロロシランやモノシラン等のシラン原料ガスを加熱されたシリコン芯線に接触させることにより、該シリコン芯線の表面に多結晶シリコンをCVD(Chemical Vapor Deposition)法により気相成長(析出)させる方法である。
【0003】
例えば、CZ法で単結晶シリコンを結晶育成する際には、石英ルツボ内に多結晶シリコン塊をチャージし、これを加熱溶融させたシリコン融液に種結晶を浸漬して転位線を消滅(無転位化)させた後に、所定の直径となるまで徐々に径拡大させて結晶の引上げが行われる。このとき、シリコン融液中に未溶融の多結晶シリコンが残存していると、この未溶融多結晶片が対流により固液界面近傍を漂い、転位発生を誘発して結晶線を消失させてしまう原因となる。
【0004】
また、特許文献2には、多結晶シリコンロッド(多結晶シリコン棒)をシーメンス法で製造する工程中に該ロッド中で針状結晶が析出することがあり、かかる多結晶シリコン棒を用いてFZ法による単結晶シリコン育成を行うと、個々の晶子の溶融がその大きさに依存するために均一には溶融せず、不溶融の晶子が固体粒子として溶融帯域をとおって単結晶ロッドへと通り抜けて未溶融粒子として単結晶の凝固面に組み込まれ、これにより欠陥形成が引き起こされるという問題が指摘されている。
【0005】
この問題に対し、特許文献2では、多結晶シリコン棒の長軸方向に対して垂直に切り出された試料面を研磨乃至ポリシングし、エッチング後に組織の微結晶を光学顕微鏡下でも視認できる程度にコントラストを高めて針状結晶のサイズとその面積割合を測定し、その測定結果に基づいてFZ単結晶シリコン育成用原料としての良否を判断する手法を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭37−18861号公報
【特許文献2】特開2008−285403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献2に開示の手法のような、光学顕微鏡下での視認による良否判断は、観察試料面のエッチングの程度や評価担当者の観察技量等に依存して結果に差が生じ易いことに加え、定量性や再現性にも乏しい。このため、単結晶シリコンの製造歩留まりを高める観点からは、原料となる多結晶シリコンの良否判断の基準を高めに設定しておく必要があり、結果として、多結晶シリコン棒の不良品率は高くなってしまう。
【0008】
また、本発明者らが検討したところによれば、特許文献2に開示の手法では、良品と判定された多結晶シリコン棒を用いた場合でも、FZ法による単結晶シリコンロッドの育成工程で転位が発生し結晶線が消失することがある一方で、不良品と判定されたものを使用した場合でも、良好にFZ単結晶が得られる場合もあることが確認されている。
【0009】
更に、特許文献2に開示の方法は、針状結晶の存否や分布を評価するものであり、それ以外の結晶状態(結晶性そのものや結晶粒径分布等)についての評価を可能とするものではない。
【0010】
上述のように、特許文献2に開示の手法により、良品と判定された多結晶シリコン棒を用いた場合でも、FZ法による単結晶シリコンロッドの育成工程で転位が発生し結晶線が消失することがあるとの事実に鑑みれば、単結晶シリコン製造用原料として好適な多結晶シリコンを選択するためには、針状結晶のようなマクロなものにとどまらず、ミクロなものも含めた、総合的な結晶状態の評価を行うことが求められる。
【0011】
このように、単結晶シリコンを高い歩留まりで安定的に製造するためには、単結晶シリコン製造用原料として好適な多結晶シリコンを、高い定量性と再現性で選別する高度な技術が求められる。
【0012】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、単結晶シリコン製造用原料として好適な多結晶シリコンを高い定量性と再現性で選別し、単結晶シリコンの安定的製造に寄与する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明に係る多結晶シリコンの結晶粒径分布の評価方法は、多結晶シリコンの結晶粒径分布をX線回折法により評価する方法であって、前記多結晶シリコンを板状試料とし、該板状試料をミラー指数面<hkl>からのブラッグ反射が検出される位置に配置し、スリットにより定められるX線照射領域が前記板状試料の主面上をφスキャンするように該板状試料の中心を回転中心として回転角度φで面内回転させ、前記ミラー指数面からのブラッグ反射強度の前記板状試料の回転角度(φ)依存性を示すφスキャン・チャートを求め、さらに、該φスキャン・チャートのベースラインの回折強度の単位回転角度当たりの変化量を1次微分値で求め、該変化量の絶対値を正規分布化した際の歪度(skewness)を下式により算出し、該歪度(b値)を結晶粒径分布の評価指標として用いることを特徴とする。
【0014】
【数1】
ここで、nはデータ数、sは標準偏差、xiはi番目のデータ、xバーは平均値である。
【0015】
好ましくは、前記ミラー指数面<hkl>は、<111>および<220>の何れかの面である。
【0016】
また、本発明に係る多結晶シリコン棒の選択方法は、単結晶シリコン製造用原料として用いる多結晶シリコン棒をX線回折法を用いて選択するための方法であって、前記多結晶シリコン棒は化学気相法による析出により育成されたものであり、該多結晶シリコン棒の径方向に垂直な断面を主面とする板状試料を採取し、該板状試料をミラー指数面<hkl>からのブラッグ反射が検出される位置に配置し、スリットにより定められるX線照射領域が前記板状試料の主面上をφスキャンするように該板状試料の中心を回転中心として回転角度φで面内回転させ、前記ミラー指数面からのブラッグ反射強度の前記板状試料の回転角度(φ)依存性を示すφスキャン・チャートを求め、さらに、該φスキャン・チャートのベースラインの回折強度の単位回転角度当たりの変化量を1次微分値で求め、該変化量の絶対値を正規分布化した際の歪度(skewness)を下式により算出し、該歪度(b値)を結晶粒径分布の評価指標として用い、単結晶シリコン製造用原料としての適否を判断することを特徴とする。
【0017】
【数2】
ここでも、nはデータ数、sは標準偏差、xiはi番目のデータ、xバーは平均値である。
【0018】
好ましくは、前記ミラー指数面<hkl>は、<111>および<220>の何れかの面である。
【0019】
好ましい態様では、前記ミラー指数<hkl>は<111>面であり、前記b値が1.12以下である場合に、単結晶シリコン製造用原料として選択する。
【0020】
他の好ましい態様では、前記ミラー指数<hkl>は<220>面であり、前記b値が1.12以下である場合に、単結晶シリコン製造用原料として選択する。
【0021】
例えば、前記多結晶シリコン棒はシーメンス法で育成されたものである。
【0022】
本発明に係る単結晶シリコンの製造方法では、上述の方法で選択された多結晶シリコン棒乃至当該多結晶シリコン棒を破砕して得られた多結晶シリコン塊を原料として用いる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の方法で選択された多結晶シリコン棒は、局所的な未溶融状態が生じ難いという意味において結晶粒径の均一性が比較的高い。このため、係る多結晶シリコン棒を用いてFZ法で単結晶育成したり、このような多結晶シリコン棒を破砕して得られた多結晶シリコン塊を用いてCZ法で単結晶育成する場合の、局所的未溶融状態の発生が抑制され、単結晶シリコンの安定的製造が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1A】φスキャン・チャートのベースラインの回折強度の単位回転角度当たりの変化量を1次微分値で求めた該微分値をヒストグラム化した例を示す図である。
図1B図1Aに示したデータの絶対値をヒストグラム化した図である。
図2A】ミラー指数面<111>について行って得られたφスキャン・チャート(φ=0〜360°)の一例である。
図2B図2Aに示したφスキャン・チャートのφ=100〜102°の範囲を拡大した図である。
図3A】ミラー指数面<111>からのX線回折で得られたφスキャン・チャートから求めた回折強度変化(ΔCPS)と、EBSD測定結果から算出された結晶粒径の値の相関を示す図である。
図3B】ミラー指数面<220>からのX線回折で得られたφスキャン・チャートから求めた回折強度変化(ΔCPS)と、EBSD測定結果から算出された結晶粒径の値の相関を示す図である。
図4A】化学気相法で析出させて育成された多結晶シリコン棒からの、X線回折測定用の板状試料の採取例について説明するための図である。
図4B】化学気相法で析出させて育成された多結晶シリコン棒からの、X線回折測定用の板状試料の採取例について説明するための図である。
図5】板状試料からのX線回折プロファイルを、θ-2θ法で求める際の測定系例の概略を説明するための図である。
図6】θ-2θのX線回折チャートの一例である。
図7】板状試料からのX線回折プロファイルを、φスキャン法で求める際の測定系例の概略を説明するための図である。
図8図7に示したφスキャン測定をミラー指数面<111>、<220>、<311>、<400>について行って得られたチャートの一例である。
図9】板状試料からのX線回折プロファイルを、φスキャン法で求める際の他の測定系例の概略を説明するための図である。
図10図9に示したφスキャン測定をミラー指数面<111>、<220>、<311>、<400>について行って得られたチャートの一例である。
図11】板状試料からのX線回折プロファイルを、φスキャン法で求める際の他の測定系例の概略を説明するための図である。
図12】板状試料のミラー指数面<111>および<220>についてのφスキャン・チャートの例である。
図13A】ミラー指数面<111>のφスキャン・チャートから算出した歪度が1.15の多結晶シリコン棒C(FZ結晶線消失あり)から採取した板状試料の、φスキャン・チャートのベースラインの回折強度の単位回転角度当たりの変化量(1次微分値)の絶対値をヒストグラム化した図である。
図13B】ミラー指数面<111>のφスキャン・チャートから算出した歪度が1.12の多結晶シリコン棒D(FZ結晶線消失なし)から採取した板状試料の、φスキャン・チャートのベースラインの回折強度の単位回転角度当たりの変化量(1次微分値)の絶対値をヒストグラム化した図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明者らは、単結晶シリコンの製造を安定的に行うための多結晶シリコンの品質向上につき検討を進める中で、多結晶シリコン析出時の諸条件の違いにより、多結晶シリコン棒中の結晶粒径分布の程度に差異が生じるという知見を得るに至った。
【0026】
ここで言う「結晶粒径分布」は、X線回折測定で得られるφスキャン・チャートのベースラインの回折強度の単位回転角度当たりの変化量を1次微分値の絶対値を求め、これら絶対値をヒストグラム化して得られる正規分布の歪度(skewness)により評価される。
【0027】
具体的には、多結晶シリコンを板状試料とし、この板状試料をミラー指数面<hkl>からのブラッグ反射が検出される位置に配置し、スリットにより定められるX線照射領域が板状試料の主面上をφスキャンするように板状試料の中心を回転中心として回転角度φで面内回転させ、ミラー指数面からのブラッグ反射強度の板状試料の回転角度(φ)依存性を示すφスキャン・チャートを求め、さらに、該φスキャン・チャートのベースラインの回折強度の単位回転角度当たりの変化量を1次微分値で求め、該変化量の絶対値を正規分布化した際の歪度(skewness)を下式により算出し、該歪度(b値)を結晶粒径分布(分布の幅の程度)の評価指標として用いる。
【0028】
【数3】
ここで、nはデータ数、sは標準偏差、xiはi番目のデータ、xバーは平均値である。
【0029】
データ数nは、スキャンを行う角度と、測定を行う際の単位回転角度により決まるが、スキャンを行う角度は90°以上360°以下が好ましく、用いる単位回転角度としては0.09°以上3°以下であることが好ましく、より好ましくは0.18°以上1.5°以下である。
【0030】
図1Aは、上述のφスキャン・チャートのベースラインの回折強度の単位回転角度当たりの変化量を1次微分値で求めた該微分値をヒストグラム化した例を示す図で、横軸は1次微分値(cps/0.36°)であり、縦軸は頻度である。統計学的には、下式で定義されるb1値が歪度とされ、当該b1値は分布の対称性を示す指標であり、b1=0であれば左右対称であり、b1>0であれば右に裾が伸びており、b1<0であれば左に裾が伸びていることになる。
【0031】
【数4】
ここで、nはデータ数、sは標準偏差、xiはi番目のデータ、xバーは平均値である。
【0032】
しかし、本発明では、上記1次微分値をそのまま用いずに、変化量の絶対値を正規分布化した際の歪度(skewness)を算出している。
【0033】
図1Bは、図1Aに示したデータの絶対値を、ヒストグラム化した図である。
【0034】
本発明者らの検討によれば、結晶粒径分布の幅が大きいものほど上記の歪度(b値)が大きくなり、結晶粒径分布の幅が小さいものほどb値は小さくなる。この点に関し、本発明者らは以下のように理解している。
【0035】
上述のφスキャン法は、特定のミラー指数<hkl>からの回折が得られる角度に評価対象である板状結晶をセットした状態で当該結晶を回転させながらスキャン・チャートを得るものであるから、結晶粒径の分布がない(すなわち、結晶粒径が揃っている)場合には、φスキャン・チャートのベースラインの回折強度は一定である。しかし、局所的に結晶粒径が他領域とは異なる領域があると、当該領域からの回折は他領域とは異なるものとなり、ベースラインの回折強度は変化する。つまり、φスキャン・チャートのベースラインの回折強度の変化量は、結晶粒径の分布を反映していると考えることができる。
【0036】
本発明では、φスキャン・チャートのベースラインの回折強度の単位回転角度当たりの変化量を1次微分値で求める。そして、この変化量の絶対値を正規分布化した際の歪度(b値)を算出して、これを結晶粒径分布(分布の幅の程度)の評価指標として用いる。
【0037】
図2Aは、ミラー指数面<111>について行って得られたφスキャン・チャート(φ=0〜360°)の一例で、図2Bは、当該φスキャン・チャートのφ=100〜102°の範囲を拡大した図である。なお、このφスキャン・チャートは、0.36度ずつ試料回転(ステップ送り)させる測定により得られたものである。
【0038】
図2Bに示した領域のうち、φ=100.45°と101.80°の間でのベースラインの回折強度の変化は比較的大きく、φ=101.16°と101.52°の間でのベースラインの回折強度の変化(ΔCPS)は比較的小さい。回折強度変化(ΔCPS)が大きいことは、当該領域の結晶粒径分布が比較的大きいことを示唆している。
【0039】
なお、本発明者らは、ΔCPSが、電子後方散乱回折測定(EBSD測定)により算出された結晶粒径の値とよい相関を示すことを確認している。
【0040】
図3Aおよび図3Bはそれぞれ、ミラー指数面<111>および<220>からのX線回折で得られたφスキャン・チャートから求めた回折強度変化量(ΔCPS)と、EBSD測定結果から算出された結晶粒径の値の相関・回帰を示す図である。
【0041】
図3Aに示したミラー指数面<111>のものでは、1次回帰式による相関係数rが0.99であり、図3Bに示したミラー指数面<220>のものでは、上記相関係数rは0.95が得られている。この結果は、上記の1回微分値の絶対値は、結晶粒径の換算に利用できることを意味している。
【0042】
つまり、上述の手法でφスキャン・チャートのベースラインの回折強度の単位回転角度当たりの変化量を1次微分値で求め、この変化量の絶対値を正規分布化した際の歪度を算出すれば、当該歪度により結晶粒径分布の程度を評価できることがわかる。
【0043】
以下に、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0044】
図4A及び図4Bは、シーメンス法などの化学気相法で析出させて育成された多結晶シリコン棒10からの、X線回折プロファイル測定用の板状試料20の採取例について説明するための図である。図中、符号1で示したものは、表面に多結晶シリコンを析出させてシリコン棒とするためのシリコン芯線である。
【0045】
なお、この例では、多結晶シリコン棒10の結晶粒径の径方向依存性の有無を確認すべく3つの部位(CTR:シリコン芯線1に近い部位、EDG:多結晶シリコン棒10の側面に近い部位、R/2:CTRとEGDの中間の部位)から板状試料20を採取しているが、このような部位からの採取に限定されるものではない。
【0046】
図4Aで例示した多結晶シリコン棒10の直径は概ね120mmであり、この多結晶シリコン棒10の側面側から、直径が概ね20mmで長さが概ね60mmのロッド11を、シリコン芯線1の長手方向と垂直にくり抜く。
【0047】
そして、図4Bに図示したように、このロッド11のシリコン芯線1に近い部位(CTR)、多結晶シリコン棒10の側面に近い部位(EDG)、CTRとEGDの中間の部位(R/2)からそれぞれ、多結晶シリコン棒10の径方向に垂直な断面を主面とする厚みが概ね2mmの円板状試料(20CTR、20EDG、20R/2)を採取する。
【0048】
なお、ロッド11を採取する部位、長さ、および本数は、シリコン棒10の直径やくり抜くロッド11の直径に応じて適宜定めればよく、円板状試料20も、くり抜いたロッド11のどの部位から採取してもよいが、シリコン棒10全体の性状を合理的に推定可能な位置であることが好ましい。
【0049】
例えば、2枚の円板状試料を取得する場合には、シリコン棒の周の半径に対し、中心から半径の2分の1である点よりも中心側にある位置と、外側にある位置の2箇所から円板状試料を取得することが好ましい。
【0050】
結晶粒径分布の比較精度を高めるとの観点からは、上記2枚の円板状試料を、シリコン棒の周の半径に対し、中心から半径の3分の1である点よりも中心側にある位置と、中心から半径の3分の2である点よりも外側にある位置の2箇所から取得することが好ましい。
【0051】
なお、円板状試料の採取数を増やせば、それだけ評価精度が向上することは言うまでもないから、3枚以上の円板状試料を採取して評価するようにしてもよい。
【0052】
また、円板状試料20の直径を概ね20mmとしたのも例示に過ぎず、直径はX線回折測定時に支障がない範囲で適当に定めればよい。
【0053】
図5は、円板状試料20からのX線回折プロファイルを、いわゆるθ-2θ法で求める際の測定系例の概略を説明するための図である。スリット30から射出されてコリメートされたX線ビーム40(Cu−Kα線:波長1.54Å)は円板状試料20に入射し、円板状試料20をXY平面内で回転させながら、試料回転角度(θ)毎の回折X線ビームの強度を検知器(不図示)で検出して、θ-2θのX線回折チャートを得る。
【0054】
図6は、上記で得られたθ-2θのX線回折チャートの例で、ミラー指数面<111>、<220>、<311>、<400>からの強いブラッグ反射がそれぞれ、2θ=28.40°、47.24°、55.98°、68.98°の位置にピークとなって現れる。
【0055】
図7は、円板状試料20からのX線回折プロファイルを、いわゆるφスキャン法で求める際の測定系の概略を説明するための図である。例えば、円板状試料20の上記θを、ミラー指数面<111>からのブラッグ反射が検出される角度とし、この状態で、円板状試料20の中心から周端に渡る領域にスリットにより定められる細い矩形の領域にX線を照射させ、このX線照射領域が円板状試料20の全面をスキャンするように円板状試料20の中心を回転中心としてYZ面内で回転(φ=0°〜360°)させる。
【0056】
図8は、上記φスキャン測定を、ミラー指数面<111>、<220>、<311>、<400>について行って得られたチャートの一例である。この例では、上記何れのミラー指数面に着目してもブラッグ反射強度は略一定であり、ブラッグ反射強度は回転角φにあまり依存せず、粉末試料と同様のチャートとなっている。
【0057】
図9は、円板状試料20からのX線回折プロファイルをφスキャン法で求める際の他の測定系例の概略を説明するための図で、この図に示した例では、円板状試料20の両周端に渡る領域にスリットにより定められる細い矩形の領域にX線を照射させ、このX線照射領域が円板状試料20の全面をスキャンするように円板状試料20の中心を回転中心としてYZ面内で回転(φ=0°〜180°)させる。尚、データサンプリング時の回転角度は、0.36度ずつ移動(ステップ送り)して測定している。
【0058】
図10は、上記φスキャン測定を、ミラー指数面<111>について行って得られたチャートの一例で、実質的に、図8に示したものと同じφスキャン・チャートが得られている。
【0059】
図11は、円板状試料20からのX線回折プロファイルをφスキャン法で求める際のもうひとつの測定系例の概略を説明するための図で、この図に示した例では、円板状試料20の主面の全体ではなく、内周領域のみにX線を照射させ、このX線照射領域が円板状試料20の全面をスキャンするように円板状試料20の中心を回転中心としてYZ面内で回転(φ=0°〜180°)させる。
【0060】
このようなX線照射領域から得られるφスキャン・チャートと、上述の円板状試料20の主面全体から得られるφスキャン・チャートとの差分を求める等の処理を行うと、円板状試料20の面内での結晶粒径分布を得ることが可能となる。そして、このような結晶粒径分布を異なる場所間で比較すれば、円板状試料20の面内での結晶粒径分布の差(場所依存性)を評価することが可能となる。
【0061】
尤も、図4A〜4Bに示したような態様で採取された円板状試料20については面内での結晶粒径分布は生じないと考えられるが、本発明に係る結晶粒径の評価は、シーメンス法等により育成された多結晶シリコン棒の選択方法としてのみならず、多結晶シリコンの結晶粒径をX線回折法により評価する方法としても有意であることは言うまでもない。
【0062】
従って、例えば、化学気相法による析出で育成された多結晶シリコン棒の径方向と平行に切り出された円板状試料につき面内での結晶粒径の分布を求めることにより、多結晶シリコン棒内での結晶粒径分布(の有無)乃至多結晶シリコン棒の口径拡大に伴う結晶粒径分布の変化等を知ることも可能となり、これにより単結晶シリコン製造用原料として好適な多結晶シリコン棒を選択することが可能となる。
【0063】
上述の特許文献2には、多結晶シリコンロッド中に存在する針状結晶の割合が多いとFZ法による単結晶引き上げ時に結晶線が消滅する旨が開示されている。特に多結晶シリコンロッドの内側領域に存在する針状結晶はFZ引き上げ時の浮遊帯域(熱溶解帯域)である「絞り」部分を通過しても未溶解な状態となり易く結晶線を消滅させてしまうとされている。
【0064】
確かに、特許文献2に記載されているような針状結晶が多結晶シリコンロッド中に存在すれば、当該針状結晶は局所的に未溶解な状態となり易く、その結果、FZ法による単結晶引き上げ時に結晶線を消滅させる要因となり得るであろう。
【0065】
しかし、本発明者らの検討によれば、このような針状結晶の存在が全く認められない多結晶シリコン棒を原料としてFZ法で単結晶シリコンを育成した場合にも、当該多結晶シリコン棒の製造条件(温度、ガス流量、TSC濃度等)により、結晶線消滅の有無に及ぼす明らかな影響が認められた。つまり、単結晶シリコン製造用原料として好適な多結晶シリコン棒は、針状結晶のようなマクロな難溶解部の存否や密度ないし存在場所といった観点からの評価では十分ではない。
【0066】
そこで、本発明者らは、単結晶シリコン製造用原料として好適な多結晶シリコン棒を選択するために、X線回折法により多結晶シリコンの結晶粒径分布を評価することを試みたのである。
【0067】
本発明者らの検討によれば、多数の多結晶シリコンロッド(シリコン棒)より板状試料を採取して上述方法で評価を重ねたところ、結晶粒径分布の程度と単結晶化工程における結晶線の消失との間に相関があることが判明した。
【0068】
つまり、結晶粒径分布の程度が大きな多結晶シリコンを単結晶化の原料として使用すると、部分的な溶融残りが局部的に生じ、これが転位発生を誘発して結晶線消失の原因ともなり得ることが明らかとなった。
【0069】
そこで、本発明では、多結晶シリコンの結晶粒径分布をX線回折法により評価するに際し、前記多結晶シリコンを板状試料とし、該板状試料をミラー指数面<hkl>からのブラッグ反射が検出される位置に配置し、スリットにより定められるX線照射領域が前記板状試料の主面上をφスキャンするように該板状試料の中心を回転中心として回転角度φで面内回転させ、前記ミラー指数面からのブラッグ反射強度の前記板状試料の回転角度(φ)依存性を示すφスキャン・チャートを求め、さらに、該φスキャン・チャートのベースラインの回折強度の単位回転角度当たりの変化量を1次微分値で求め、該変化量の絶対値を正規分布化した際の歪度(skewness)を上述の式により算出し、該歪度(b値)を結晶粒径分布の評価指標として用いる。
【0070】
ここで、前記ミラー指数面<hkl>は、<111>および<220>の何れかの面であることが好ましい。
【0071】
また、本発明では、単結晶シリコン製造用原料として用いる、化学気相法による析出により育成された多結晶シリコン棒をX線回折法を用いて選択するに際し、上述の歪度(b値)を結晶粒径分布の評価指標として用い、単結晶シリコン製造用原料としての適否を判断する。
【0072】
例えば、前記ミラー指数<hkl>が<111>面であり、前記b値が1.12以下である場合に、単結晶シリコン製造用原料として選択する。
【0073】
また、例えば、前記ミラー指数<hkl>が<220>面であり、前記b値が1.12以下である場合に、単結晶シリコン製造用原料として選択する。
【0074】
ここで、前記多結晶シリコン棒は、例えば、シーメンス法で育成されたものである。
【0075】
本発明の方法で選択された多結晶シリコン棒は、局所的な未溶融状態が生じ難いという意味において結晶粒径の均一性が比較的高い。このため、係る多結晶シリコン棒を用いてFZ法で単結晶育成したり、このような多結晶シリコン棒を破砕して得られた多結晶シリコン塊を用いてCZ法で単結晶育成する場合の、局所的未溶融状態の発生が抑制され、単結晶シリコンの安定的製造が可能となる。
【0076】
なお、板状試料のミラー指数面<hkl>についてのφスキャン・チャートが、図6図8に示したように、回折強度が概ね一定であれば当該φスキャン・チャートそのものを「ベースライン」として取り扱うことができるが、場合によっては、φスキャン・チャートに「うねり」がみられることがある。
【0077】
図12は、板状試料のミラー指数面<111>および<220>についての、「うねり」がみられるφスキャン・チャートの例である。なお、これらの試料は同じ多結晶シリコン棒から採取したものであり、これらのφスキャン・チャートは、図7に示した態様の測定で得られたものである。
【0078】
ミラー指数面<111>についてのφスキャン・チャートをみると、ベースラインに「うねり」がみられるが、回折強度の単位回転角度当たりの変化量を1次微分値で求め、該変化量の絶対値を正規分布化した際の歪度(skewness)を算出する方法においては、何ら支障はない。
【0079】
同様に、ミラー指数面<220>についてのφスキャン・チャートをみると、このベースラインにも「うねり」がみられるが、<111>と同様、歪度を算出する。
【0080】
なお、φスキャン・チャートは、図6図8に示したような、回折強度が概ね一定であるものばかりではなく、場合によっては、ピーク状の回折強度分布が現れるものもある。
【0081】
例えば、測定に供した板状試料が針状結晶を含むものである場合、この針状結晶はミラー指数面<220>の回折条件下で強いピークを示すから、φスキャン・チャートのベースラインを求めるためには、φスキャン・チャートからこのピークを取り除く必要がある。
【0082】
そのためには、φスキャン・チャート中にピーク状の回折強度分布が現れている場合には、S/N比が3以上であるものを「ピーク」と判定し、当該ピーク部分については、ピーク強度の積分を行う際にベースラインを求める手法に従って、ベースラインを定めるようにする方法などが有効である。
【実施例】
【0083】
異なる析出条件下で育成された多結晶シリコン棒を7本準備した。これらの多結晶シリコン棒(シリコン棒A〜G)のそれぞれにつき、径方向に10mm間隔又は20mm間隔で、2mmの厚さの板状試料を複数枚採取し、図7に示した測定系により、ミラー指数面<111>および<220>のφスキャン・チャートを得た。なお、円板状試料20の直径は約20mmである。
【0084】
なお、データサンプリング時の回転角度を0.36度ずつ移動(ステップ送り)して360°回転させているため、試料当たりのデータ数(n)は999となる。
【0085】
また、上記7本の多結晶シリコン棒(A〜G)を用いて、FZ法による単結晶シリコンロッドの育成を行った。
【0086】
表1は、上述のφスキャン・チャートから得た、ミラー指数<111>および<220>の歪度、多結晶シリコン棒から採取した試料数(N)、針状結晶の有無、そして、これらの多結晶シリコン棒を用いてFZ法による単結晶シリコンロッドの育成を行った際の結晶線消失の有無を纏めたものである。なお、針状結晶の有無は特許文献2に記載の手法で確認を行った。
【0087】
【表1】
【0088】
図13Aおよび図13Bはそれぞれ、ミラー指数面<111>のφスキャン・チャートから算出した歪度が1.15の多結晶シリコン棒Cおよびミラー指数面<111>のφスキャン・チャートから算出した歪度が1.12の多結晶シリコン棒Dから採取した板状試料の、φスキャン・チャートのベースラインの回折強度の単位回転角度当たりの変化量(1次微分値)の絶対値をヒストグラム化した図で、横軸は1次微分値(cps/0.36°)であり、縦軸は頻度である。
【0089】
シリコン棒A、B、およびCにおいてFZ結晶線の消失が認められた一方、シリコン棒D、E、F、およびGにおいてはFZ結晶線の消失は認められなかった。
【0090】
これらのシリコン棒のミラー指数面<111>および<220>の歪度(b値)を確認すると、FZ結晶線の消失が認められなかったシリコン棒は、何れも、ミラー指数<hkl>が<111>面である場合のb値が1.12以下である。
【0091】
また、FZ結晶線の消失が認められなかったシリコン棒は、何れも、ミラー指数<hkl>が<220>面である場合のb値も1.12以下である。
【0092】
一方、FZ結晶線の消失が認められたシリコン棒は、何れも、ミラー指数<hkl>が<111>面である場合のb値が1.12を超えており、ミラー指数<hkl>が<220>面である場合のb値も1.12を超えている。
【0093】
さらに、シリコン棒DやEのように、上記b値が1.12以下のものでは、針状結晶を含有していてもFZ単結晶化の工程で結晶線の消失は生じていない一方、シリコン棒AやCのように、上記b値が1.12を超えるものでは、針状結晶の含有が認められないものでもFZ単結晶化の工程で結晶線の消失が生じている。
【0094】
これらの結果は、特許文献2に開示されているような、目視観察で認められるようなマクロな針状結晶が確認されない多結晶シリコンロッドであっても、これを原料として単結晶シリコンを製造すると、転位発生の誘発に起因する結晶線消失を生じる場合があること、また、これとは逆に、仮にマクロな針状結晶が多結晶シリコンロッドに確認されるものであっても、単結晶シリコンの製造原料として好適であること、を意味している。
【0095】
この理由につき、本発明者らは、上記b値が1.12以下のものは、局所的な未溶融状態が生じ難いという意味において結晶粒径の均一性が比較的高いため、係る多結晶シリコン棒を用いてFZ法で単結晶育成したり、このような多結晶シリコン棒を破砕して得られた多結晶シリコン塊を用いてCZ法で単結晶育成する場合の、局所的未溶融状態の発生が抑制される故であると理解している。
【0096】
つまり、単結晶化工程において、シリコン多結晶を均一に熱熔解させるためには、多結晶シリコンの粒径分布の程度が小さいこと、特に、未熔解領域を生じる原因となり易い粒径の大きな部位が含有されていないことが求められるところ、
上記b値が1.12以下のものは、このような領域を含まず熱伝導や熱拡散が阻害されることがないため、単結晶シリコンの製造を安定的に行うことが可能になるものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、単結晶シリコン製造用原料として好適な多結晶シリコンを高い定量性と再現性で選別し、単結晶シリコンの安定的製造に寄与する技術を提供する。
【符号の説明】
【0098】
1 シリコン芯線
10 多結晶シリコン棒
11 ロッド
20 板状試料
30 スリット
40 X線ビーム
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B