(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態であるボイルコイルモータ40が適用されたカメラ1の概略図である。
なお、
図1には、説明と理解を容易にするために、XYZ直交座標系を設けた。この座標系では、撮影者が光軸OAを水平として横長の画像を撮影する場合のカメラの位置(以下、正位置という)において撮影者から見て左側に向かう方向をX軸プラス方向、正位置において上側に向かう方向をY軸プラス方向、正位置において被写体に向かう方向をZ軸プラス方向とする。
【0011】
カメラ1は、カメラ本体10と、当該カメラ本体10に着脱可能なレンズ鏡筒20と、によって構成された、いわゆるデジタル一眼レフカメラである。
カメラ本体10は、撮像素子11と、レンズ鏡筒20を含む当該カメラ1全体の動作を制御する図示しない制御部等を備えている。
撮像素子11は、撮影光学系(カメラ本体10に装着されたレンズ鏡筒20)によって結像された被写体像を電気信号に変換する、たとえば、CCD等によって構成されている。
【0012】
レンズ鏡筒20は、撮像光学系を構成する複数のレンズ群L(
図1では、ブレ補正レンズVRLのみを図示)と、ブレ補正ユニット30を備えている。
ブレ補正ユニット30は、レンズ鏡筒20に作用する2方向(Y軸回りのYaw、およびX軸回りのPitch)のブレを検出する一対のセンサ31(31P,31Y)と、レンズ群Lの1つであるブレ補正レンズ群VRLを2方向(X軸およびY軸方向)移動駆動する一対のボイスコイルモータ40(40X,40Y)とを備えている。このボイスコイルモータ40に、本発明の一実施形態が適用されている。
【0013】
そして、カメラ1は、図示しないシャッターボタンが押圧操作(レリーズ操作)されると、カメラ本体10における制御部に制御されて、レンズ鏡筒20の撮像光学系(レンズ群L)によって結像された被写体像を撮像素子11が電気信号に変換し、その画像データをカメラ本体10が備える図示しないメモリに記録(すなわち撮影)する。この撮影時において、レンズ鏡筒20のブレ補正ユニット30は、ブレ補正作用を行う。すなわち、センサ31が検出したブレ情報に基づいてボイスコイルモータ40を駆動し、撮像素子11の結像面における像ブレを低減させるようにブレ補正レンズ群VRLを光軸OA(=Z軸)と略直交する面内で変位させる。
【0014】
つぎに、
図2〜
図7を参照して、ボイスコイルモータ40について詳細に説明する。
図2は、ボイスコイルモータ40の外観斜視図である。
図3は、ボイスコイルモータ40の投影図であって、(a)は(b)のA−A断面図、(b)は背面図、(c)は底面図である。
図4は、ボイスコイルモータ40の断面図であって、(a)は
図3(a)のB−B断面図、(b)は
図3(a)のC−C断面図である。
図5は、ボイスコイルモータにおけるヨークの展開図であって、(a)は本実施形態に係るヨーク43の展開図、(b)は変形例の展開図である。
図6は、比較例1としてのボイスコイルモータ40′を示し、(a)は外観斜視図、(b)はそのD−D断面図である。
図7は、比較例2としてのボイスコイルモータ40″を示し、(a)は外観斜視図、(b)はその背面図である。
【0015】
ボイスコイルモータ40は、マグネット41と、コイル42と、ヨーク43と、により構成されている。このボイスコイルモータ40は、全体形状が略直方体状を呈しており、その長手方向(長軸方向:T)と直交する一方方向にマグネット41とコイル42とがヨーク43の間に積層状態で配設され(積層方向:S)、長軸方向:Tおよび積層方向:Sと直交する方向にコイル42が移動する(駆動方向:M)ものである。以下の説明では、
図2中に示すように、長軸方向:Tを左右、積層方向:Sを上下、駆動方向:Mを前後とする。
【0016】
マグネット41は、所定厚さの板状であって、平面形状は矩形に形成されている。マグネット41は、後述するヨーク43のマグネットヨーク43aに固定され、ヨーク43を介して図示しないブレ補正ユニット30(
図1参照)の固定フレームに固定される。
コイル42は、平面形状長円状に巻かれて所定厚さに形成されている。コイル42は、
図4(a)に示すように、マグネット41に対して所定間隔:y′を有して平行に位置し、図示しないが、ブレ補正ユニット30(
図1参照)の可動フレームに連結されている。
【0017】
ヨーク43は、マグネット41の背面側に位置するマグネットヨーク43aと、コイル42の外側に位置するコイル側ヨーク43bと、両者を連結する連結側板43cとを備え、鉄等の磁性体材料による所定厚さの板によって形成されている。すなわち、ヨーク43は、マグネットヨーク43aの一方側縁とコイル側ヨーク43bの一方側縁とが、連結側板43cで一体に連結されて、
図4に示すように断面形状コ字状(U字状)に形成されている。これにより、マグネットヨーク43aとコイル側ヨーク43bの対向面間隔:Hを高精度に一定化でき、両者の間に配設されるマグネット41およびコイル42の間隔を高い精度に規定することが可能となっている。
【0018】
マグネットヨーク43aとコイル側ヨーク43bは、短辺がマグネット41と略一致すると共に長辺がマグネット41より所定量長い長方形の平面形状であって、長辺を左右方向とし、その一方の長辺が連結側板43cによって連結され、所定間隔:Hを有して平行に位置している。
【0019】
マグネットヨーク43aの内面(コイル側ヨーク43bと対向する面)には、マグネット41が装着されている。マグネット41におけるヨーク43の開放側(連結側板43とは反対の側)の側面は、マグネットヨーク43aの側面と一致している。一方、マグネット41における連結側板43cと対応する側の側面(内側面41a)と、連結側板43cの内面とは、所定の間隔:dを有している。この間隔:dは、磁気回路の効率の点から高い精度で一定に設定する必要があり、このため、ヨーク43は、マグネット41を位置決めする位置決め部50を備えている。この位置決め部50については、後に詳述する。
【0020】
コイル42は、マグネットヨーク43aに装着されたマグネット41の上面と、コイル側ヨーク43bの下面との間に、その長軸方向を左右方向として、両者とそれぞれ所定の間隔:y,y′を有して非接触に配設されている。コイル42の長軸方向における円弧状の両端は、ヨーク43の左右両端縁よりそれぞれ外側に突出している。コイル42の短軸方向における側面と、対向する連結側板43cの内面との間には、コイル43の移動を許容するために所定の間隔:xが設定されている。また、コイル43の短軸方向における他方の側面は、コイル側ヨーク43bの外側端縁より所定量内側に位置している。
【0021】
上記のように構成されたボイスコイルモータ40は、コイル42に通電されると、その通電方向に応じて、フレミングの左手の法則に従ってコイル42がマグネット41(ヨーク43)に対して前後方向に相対移動する。これにより、コイル42が図示しないブレ補正ユニット30における可動フレームを移動駆動する。
【0022】
ここで、上記ボイスコイルモータ40におけるヨーク43は、前述したように、その連結側板43cの内面とマグネット41の内側面41aとの間隔:dを、高い精度に規定するための位置決め部50を備えている。
【0023】
つぎに、この位置決め部50について説明する。
位置決め部50は、ヨーク43の連結側板43cにおける左右方向略中央部に配設されている。位置決め部50は、連結側板43cとマグネットヨーク43aとの連続部(屈曲部位)に開口形成された縁取り開口部51の内側に、マグネットヨーク43aと面一(同一面で連続する)で所定幅の位置決め基部52と、この位置決め基部52の上面(マグネット41が装着される側の面)に所定高さに突設された位置決め突起53と、を備えている。
【0024】
このような位置決め部50を備えるヨーク43は、ヨーク43の展開図である
図5(a)に示すように、マグネットヨーク43aを形成するマグネットヨーク板部43a′と、コイル側ヨーク43bを形成するコイル側ヨーク板部43b′とが、連結側板43cを形成する側板部43c′を介して繋がった一枚の原板43′を、プレスによって屈折線:BLL,BLUで折り曲げ加工して形成される。なお、連結側板43cの幅が、マグネットヨーク板部43a′およびコイル側ヨーク板部43b′に比して僅かに狭いのは、曲げ部位の側方への膨出を考慮したものである。
【0025】
位置決め部50における位置決め基部52は、マグネットヨーク板部43a′と側板部43c′との連続部分(屈折線:BLL部分)の左右方向中央に、凹字状の縁取り開口部51に囲まれて所定幅で形成されている。つまり、位置決め基部52は、マグネットヨーク板部43a′と連続する部分以外の周囲が全幅:WCの縁取り開口部51に縁取られて形成されているものである。縁取り開口部52の左右両側には、それぞれ側板部43c′が所定幅:WL,WRで存在する。
【0026】
そして、
図5(a)に示す展開状態のヨーク43の原板43′は、図中2点差線で示す屈折線:BLL,BLUで、それぞれ対向する側に90°折り曲げられる。マグネットヨーク板部43a′と側板部43c′の境界(屈折線:BLL)では、縁取り開口部52の左右両側の部位のみが屈折される。これにより、
図2および
図3(b)に示すように、連結側板43cは、位置決め部50の左右両側においてはそれぞれ所定幅(WL,WR)で連続する。
【0027】
位置決め突起53は、位置決め基部52の中央に、下面側から上面側に向けて、プレスによる板厚の略半分〜8割程度の半抜き加工によって突設されている。つまり、位置決め突起53は、板厚の半分〜8割程度の高さに突設されている。この半抜きプレス加工は、ヨーク43の折り曲げ加工の前工程において行われる。位置決め突起53は、マグネット41の内側面41aに当接して位置決めする前側の部位が円弧状に形成されている。
【0028】
上記のように形成された位置決め部50は、マグネットヨーク43aと面一の位置決め基部52から、位置決め突起53が突出している。これにより、マグネット41の内側面41aを位置決め突起53に当接させることで、内側面41aと連結側板43cの内面との間を、高い精度で間隔:dに設定できる。位置決め突起53の前側の部位は円弧状に形成されており、内側面41aは点で当接し、高い位置決め精度が得られる。
【0029】
上記のような位置決め部50を備えるヨーク43では、マグネット41をその支持面(マグネットヨーク43a)に近い位置で位置決めできる。その結果、位置決め突起53がコイル42に干渉してその移動を規制することがなく、全体をコンパクトに構成できる。
【0030】
すなわち、
図6に示す比較例1のボイスコイルモータ40′のように、連結側板43cに半抜きによって位置決め突起44を形成した場合には、マグネット41の上面より上側に突出する位置決め突起44がコイル42と干渉してその移動を規制するため、コイル42の移動ストロークx′が短くなってしまうか(x>x′)、または、同一ストロークを得るためには大型化を余儀なくされる。また、マグネットヨーク43aとコイル側ヨーク43bの間隔が小さい(連結側板43cが低い)場合には、位置決め突起44の形成自体が困難となる。本構成では、このようなことがない。なお、
図6におけるボイスコイルモータ40′の各構成要素には、基本的に本実施形態におけるボイスコイルモータ40と同符号を付してある。
【0031】
また、本構成では、位置決め部50は、ヨーク43の左右方向中央に配設され、その両側に連結側板43cが存在し、広い幅:Wでマグネットヨーク43aとコイル側ヨーク43bとを連結している。このため、マグネットヨーク43aとコイル側ヨーク43bとを高い剛性で連結でき、磁気力の作用による精度低下を抑制できる。
【0032】
すなわち、
図7に示す比較例2におけるボイスコイルモータ40″のように、位置決め部50をヨーク43の左右両端に配置した場合には、両側の位置決め部50の間の狭い連結側板43c(幅:W′)でマグネットヨーク43aとコイル側ヨーク43bとが連結されることとなる。その結果、連結部(連結側板43c)の剛性が小さく磁気力が作用するとよじれや変形によって精度低下を来たし、性能の劣化を招来する。本構成では、このような不具合を防ぐことができる。なお、
図7におけるボイスコイルモータ40″の各構成要素には、基本的に本実施形態におけるボイスコイルモータ40と同符号を付してある。
【0033】
以上、本実施形態によると、以下の効果を有する。
(1)ボイスコイルモータ40におけるヨーク43は、マグネットヨーク43aと面一(同一面で連続する)で所定幅の位置決め基部52の上面に位置決め突起53が突設された位置決め部50を備えている。これにより、マグネット41をその支持面(マグネットヨーク43a)に近い位置で位置決めできる。その結果、位置決め突起53がコイル42に干渉してその移動を規制することがなく、全体をコンパクトに構成できる。
【0034】
(2)位置決め部50は、ヨーク43の左右方向中央に配設され、その両側に連結側板43cが存在し、広い全体幅:Wでマグネットヨーク43aとコイル側ヨーク43bとを連結している。このため、マグネットヨーク43aとコイル側ヨーク43bとを高い剛性で連結でき、磁気力の作用による精度低下を抑制できる。
【0035】
(変形形態)
以上、説明した実施形態に限定されることなく、以下に示すような種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の範囲内である。
(1)本実施形態は、本発明をコイルが移動駆動されるムービングコイル(MC)型の片側マグネットタイプのボイスコイルモータに適用したものである。しかし、本発明は、これに限らず、両側マグネットタイプのボイスコイルモータに適用しても良い。その場合、
図5(a)中二に点鎖線で示すように、位置決め部50は対称に一対配置される。
また、マグネットが移動駆動されるムービングマグネット型のボイスコイルモータに、本発明を適用しても良いものである。
【0036】
(2)本実施形態における位置決め部50は、位置決め突起53を1つ備えたものである。しかし、これに限らず、
図5(b)に展開図を示すように、位置決め突起53を2つとしても良い。
(3)上記実施形態は、本願発明をデジタルカメラにおけるレンズ鏡筒のブレ補正ユニットを駆動するボイスコイルモータに適用した例であるが、本願発明における光学機器は、これに限らず、フィルムを用いるいわゆる銀塩スチルカメラ、ビデオカメラ、撮影機能付きの携帯電話等であっても良い。
【0037】
なお、実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は以上説明した実施形態によって限定されることはない。