(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
本偏光膜は上述のとおり、互いに異なる極大吸収波長を有する二色性色素を2種以上含有する組成物から形成されたものであり、
一方向の配向方向を有し、
下記の式(I)〜(V)
0.3≦A450/A550<0.8 (I)
0.3≦A450/A650<1.0 (II)
0.5≦A450≦2 (III)
1≦A550≦3 (IV)
1≦A650≦3 (V)
(式中、
A450は、波長450nmにおける前記配向方向と平行な偏光の吸光度、
A550は、波長550nmにおける前記配向方向と平行な偏光の吸光度、
A650は、波長650nmにおける前記配向方向と平行な偏光の吸光度をそれぞれ表す。)
の関係をすべて満たす吸収スペクトルを有することを特徴とするものである。
本偏光膜は、後述する本偏光膜を含む本円偏光板とすることにより、高寿命の本有機EL表示装置を実現できる。
【0009】
前記式(I)におけるA450/A550は、0.5≦A450/A550<0.8の関係を満たすとさらに好ましい。
前記式(II)におけるA450/A650は、0.5≦A450/A650<0.8の関係を満たすとさらに好ましい。
【0010】
前記式(III)におけるA450は、0.5≦A450≦1.6の関係を満たすとさらに好ましく、前記式(IV)におけるA550は、1.0≦A550≦2.0の関係を満たすとさらに好ましく、前記式(V)におけるA650は、1.0≦A650≦2.0の関係を満たすとさらに好ましい。
【0011】
本発明者らは、従来から広く用いられる前記ヨウ素−PVA偏光板は、およそ波長470nmと波長600nmに極大吸収を有する2つのヨウ素錯体が生じるため、かかるヨウ素錯体により可視光全域の吸収が生じることから、波長470nmの光の吸収を選択的に低減させることは困難であると考え、偏光膜に含まれる色素について検討した結果、互いに異なる極大吸収波長を有する二色性色素を少なくとも2種含有する組成物(以下、場合により「偏光膜形成用組成物」という。)から形成される偏光膜が、波長470nmの光の吸収を選択的に低減させることを見出し、本発明に至った。
以下、必要に応じて図面を参照しながら、本発明の好ましい形態である、二色性色素材料と、重合性スメクチック液晶化合物とを含有する組成物(以下、場合により「偏光膜形成用組成物」という)から形成される偏光膜及びその製造方法、並びに、本円偏光板及びその製造方法を説明する。なお、本明細書に添付された図面は、見易さのために寸法は任意になっている。
【0012】
<二色性色素>
前記偏光膜形成用組成物は、上述のとおり、2種以上の二色性色素を含有する。ここでいう二色性色素とは、分子の長軸方向における吸光度と、短軸方向における吸光度とが異なる性質を有する色素をいう。このような性質を有するものであれば、二色性色素は特に制限されず、染料であっても顔料であってもよい。この染料は複数種用いてもよく、顔料も複数種用いてもよく、染料と顔料とを組み合わせてもよい。
【0013】
前記二色性色素は、300〜700nmの範囲に極大吸収波長(λMAX)を有するものが好ましい。このような二色性色素としては、例えば、アクリジン色素、オキサジン色素、シアニン色素、ナフタレン色素、アゾ色素及びアントラキノン色素などが挙げられる。中でも、該二色性色素は、アゾ色素が好ましい。アゾ色素としては、モノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素、テトラキスアゾ色素及びスチルベンアゾ色素などが挙げられ、好ましくはビスアゾ色素及びトリスアゾ色素である。
【0014】
アゾ色素は前記式(1)で表されるもの(以下、場合により「アゾ色素(1)」という。)が特に好ましい。該アゾ色素(1)は波長400〜800nmの範囲内に吸収を示すものがさらに好ましい。繰り返しになるが、式(1)を以下に示す。
[式(1)中、
nは1又は2である。
Ar
1及びAr
3は、それぞれ独立に下記に示す基から選ばれる。
Ar
2は下記に示す基から選ばれる。
A
1及びA
2は、それぞれ独立に下記に示す基から選ばれる。
(mは0〜10の整数であり、同一の基中にmが2つある場合、この2つのmは互いに同一又は相異なる。)]
【0015】
前記アゾ色素(1)のアゾベンゼン部位の位置異性は、トランスであることが好ましい。
【0016】
前記アゾ色素(1)としては例えば、式(1−1)〜式(1−28)でそれぞれ表される化合物などが挙げられる。
【0022】
以上のアゾ色素(1)の具体例の中でも、本偏光膜製造用の偏光膜形成用組成物には、式(1−2)、式(1−5)、式(1−6)、式(1−8)、式(1−10)、式(1−12)、式(1−13)、式(1−15)、式(1−16)、式(1−19)、式(1−20)、式(1−21)、式(1−22)、式(1−23)、式(1−24)及び式(1−26)でそれぞれ表されるものより好ましく、式(1−2)、式(1−5)、式(1−8)、式(1−10)、式(1−15)、式(1−21)、式(1−22)及び式(1−26)でそれぞれ表されるものが特に好ましい。
【0023】
前記アントラキノン色素としては、式(1−28)で表される化合物が好ましい。
[式(1−28)中、
R
1〜R
8は、互いに独立に、水素原子、−R
x、−NH
2、−NHR
x、−NR
x2、−SR
x又はハロゲン原子を表す。
R
xは、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基を表す。]
【0024】
前記アクリジン色素としては、式(1−29)で表される化合物が好ましい。
[式(1−29)中、
R
9〜R
15は、互いに独立に、水素原子、−R
x、−NH
2、−NHR
x、−NR
x2、−SR
x又はハロゲン原子を表す。
R
xは、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基を表す。]
【0025】
前記オキサゾン色素としては、式(1−30)で表される化合物が好ましい。
[式(1−30)中、
R
16〜R
23は、互いに独立に、水素原子、−R
x、−NH
2、−NHR
x、−NR
x2、−SR
x又はハロゲン原子を表す。
R
xは、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基を表す。]
【0026】
以上の式(1−28)、式(1−29)及び式(1−30)において、R
xの炭素数1〜6のアルキル基とは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基及びヘキシル基などであり、炭素数6〜12のアリール基としては、フェニル基、トルイル基、キシリル基及びナフチル基などである。
【0027】
前記シアニン色素としては、式(1−31)で表される化合物及び式(1−32)で表される化合物が好ましい。
[式(1−31)中、
D
1及びD
2は、互いに独立に、式(1−31a)〜式(1−31d)のいずれかで表される基を表す。
n5は1〜3の整数を表す。]
【0028】
[式(1−32)中、
D
3及びD
4は、互いに独立に、式(1−32a)〜式(1−32h)のいずれかで表される基を表す。
n6は1〜3の整数を表す。]
【0029】
以上、前記偏光膜形成用組成物が含有する二色性色素について、その好ましい例を説明したが、中でも、該偏光膜形成用組成物が含有する二色性色素はアゾ色素(1)であると好ましく、互いに異なる極大吸収波長を有するアゾ色素(1)を少なくとも2種含有するとさらに好ましい。
【0030】
前記偏光膜形成用組成物に含有される二色性色素は2種以上であるが、2種乃至3種の二色性色素を含有するとさらに好ましく、2種乃至3種のアゾ色素(1)を含有すると一層好ましい。この2種乃至3種のアゾ色素(1)の組み合わせ[「第1色素」、「第2色素」及び「第3色素」という名称で表す。]のうち、好適な組み合わせを、前記した式(1−1)〜式(1−27)でそれぞれ表されるアゾ色素(1)の組み合わせで示すと、表1及び表2示す二色性色素(1)の組み合わせが挙げられる。
【0032】
【表2】
この表1に示したアゾ色素(1)の組み合わせを含有する偏光膜形成用組成物によれば、後述する本偏光膜の製造方法により、前記式(I)〜式(V)で示される関係をすべて満たす吸収スペクトルを有する本偏光膜が得られやすくなる。
なお、表1における表記は、上述のアゾ色素(1)の具体例の符号に対応しており、例えば、「1−5」とは、式(1−5)で表されるアゾ色素(1)を意味する。
【0033】
前記偏光膜形成用組成物における二色性色素の含有量は、当該二色性色素の種類などに応じて適宜調節できるが、例えば、後述する重合性液晶化合物の合計100質量部に対して、0.1質量部以上50質量部以下が好ましく、0.1質量部以上20質量部以下がより好ましく、0.1質量部以上10質量部以下がさらに好ましい。二色性色素の含有量が、この範囲内であれば、該重合性液晶化合物の配向を乱すことなく、当該重合性液晶化合物を重合させることができる。二色性色素の含有量が多すぎると、重合性液晶化合物の配向を阻害するおそれがある。そのため、重合性液晶化合物が、液晶状態を保持できる範囲で、二色性色素の含有量を定めることもできる。なお、ここでいう二色性色素の含有量は、2種以上の二色性色素の合計から求められるものである。
【0034】
<重合性液晶化合物>
前記偏光膜形成用組成物は、実用的な強度の偏光膜が得られる点で、重合性液晶化合物を含有すると好ましい。該重合性液晶化合物とは、重合性基を有し、かつ液晶状態を示す化合物である。重合性基とは、該重合性液晶化合物の重合反応に関与する基を意味する。偏光性能から重合性液晶化合物の中では、重合性ネマチック液晶化合物よりも重合性スメクチック液晶化合物がより好ましい。
【0035】
前記重合性スメクチック液晶化合物が示す液晶状態は、高次のスメクチック相であることがより好ましい。ここでいう高次のスメクチック相とは、スメクチックB相、スメクチックD相、スメクチックE相、スメクチックF相、スメクチックG相、スメクチックH相、スメクチックI相、スメクチックJ相、スメクチックK相及びスメクチックL相であり、中でも、スメクチックB相、スメクチックF相及びスメクチックI相がより好ましい。重合性スメクチック液晶化合物が示す液晶状態により、配向秩序度の高い本偏光膜を得ることができる。また、このように配向秩序度の高い本偏光膜はX線反射測定においてブラッグピークが得られるものである。
【0036】
好ましい重合性スメクチック液晶化合物としては、例えば、式(2)で表される化合物(以下、場合により「化合物(2)」という。)が挙げられる。
U
1−V
1−W
1−X
1−Y
1−X
2−Y
2−X
3−W
2−V
2−U
2 (2)
[式(2)中、
X
1、X
2及びX
3は、互いに独立に、置換基を有していてもよいp−フェニレン基又は置換基を有していてもよいシクロヘキサン−1,4−ジイル基を表す。ただし、X
1、X
2及びX
3のうち少なくとも1つは、置換基を有していてもよいp−フェニレン基である。
Y
1及びY
2は、互いに独立に、−CH
2CH
2−、−CH
2O−、−COO−、−OCOO−、単結合、−N=N−、−CR
a=CR
b−、−C≡C−又は−CR
a=N−を表す。R
a及びR
bは、互いに独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
U
1は、水素原子又は重合性基を表す。
U
2は、重合性基を表す。
W
1及びW
2は、互いに独立に、単結合、−O−、−S−、−COO−又は−OCOO−を表す。
V
1及びV
2は、互いに独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルカンジイル基を表し、該アルカンジイル基を構成する−CH
2−は、−O−、−S−又は−NH−に置き換わっていてもよい。]
【0037】
化合物(2)において、上述のように、X
1、X
2及びX
3のうち少なくとも1つは、置換基を有していてもよい1,4−フェニレン基であるが、これらのうち、少なくも2つが、置換基を有していてもよいp−フェニレン基であることが好ましい。
前記p−フェニレン基は、無置換であることが好ましい。前記シクロへキサン−1,4−ジイル基は、トランス−シクロへキサン−1,4−ジイル基であることが好ましく、このトランス−シクロへキサン−1,4−ジイル基も無置換であることがより好ましい。
【0038】
前記p−フェニレン基又は前記シクロへキサン−1,4−ジイル基が任意に有する置換基としては、メチル基、エチル基及びブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基;シアノ基;ハロゲン原子などが挙げられる。なお、シクロへキサン−1,4−ジイル基を構成する−CH
2−は、−O−、−S−又は−NR−に置き換わっていてもよい。Rは、炭素数1〜6のアルキル基又はフェニル基である。
【0039】
化合物(2)のY
1は、−CH
2CH
2−、−COO−又は単結合であると好ましく、Y
2は、−CH
2CH
2−又は−CH
2O−であると好ましい。
【0040】
U
2は、重合性基である。U
1は、水素原子又は重合性基であり、好ましくは重合性基である。すなわち、U
1及びU
2は、ともに重合性基であると好ましく、ともに光重合性基であることが好ましい。ここで、光重合性基とは、後述する光重合開始剤から発生した活性ラジカルや酸などによって重合反応に関与し得る基のことをいう。光重合性基を有する重合性スメクチック液晶化合物を用いると、より低温条件下で該重合性スメクチック液晶化合物を重合させることができる点でも有利である。
【0041】
化合物(2)において、U
1及びU
2の光重合性基は互いに異なっていてもよいが、同じ種類の基であることが好ましい。該光重合性基としては、ビニル基、ビニルオキシ基、1−クロロビニル基、イソプロペニル基、4−ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基等が挙げられる。中でも、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、オキシラニル基及びオキセタニル基が好ましく、アクリロイルオキシ基がより好ましい。U
1及びU
2が同じ種類の光重合性基であるとは例えば、U
1及びU
2がともにアクリロイルオキシ基である場合などをいう。
【0042】
V
1及びV
2のアルカンジイル基としては、メチレン基、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基、ヘプタン−1,7−ジイル基、オクタン−1,8−ジイル基、デカン−1,10−ジイル基、テトラデカン−1,14−ジイル基及びイコサン−1,20−ジイル基などが挙げられる。V
1及びV
2は、好ましくは炭素数2〜12のアルカンジイル基であり、より好ましくは炭素数6〜12のアルカンジイル基である。
該アルカンジイル基が任意に有する置換基としては、シアノ基及びハロゲン原子などを挙げることができるが、該アルカンジイル基は、無置換であることが好ましく、無置換且つ直鎖状のアルカンジイル基であることがより好ましい。
【0043】
W
1及びW
2は、互いに独立に、好ましくは単結合又は−O−である。
【0044】
化合物(2)としては、式(2−1)〜式(2−23)でそれぞれ表される化合物などが挙げられる。かかる化合物(2)の具体例が、シクロヘキサン−1,4−ジイル基を有する場合、そのシクロヘキサン−1,4−ジイル基は、トランス体であることが好ましい。
【0049】
例示した化合物(2)は、単独又は2種以上を混合して、偏光膜形成用組成物に用いることができる。また、2種以上の重合性スメクチック液晶化合物を用い、この2種以上の重合性スメクチック液晶化合物のうち、少なくとも1種が化合物(2)であるという形式でもよい。以下の説明では、単独種の重合性スメクチック液晶化合物を用いる場合と、2種以上の重合性スメクチック液晶化合物を用いる場合とを総じて、「重合性スメクチック液晶化合物」と称することがある。
化合物(2)を偏光膜形成用組成物に用いる場合、予め化合物(2)の相転移温度を求め、その相転移温度を下回る温度条件下で、該化合物(2)が重合するように、偏光膜形成用組成物の化合物(2)[重合性スメクチック液晶化合物]以外の成分を調整する。このような重合温度をコントロールし得る成分としては、後述する光重合開始剤、光増感剤及び重合禁止剤などが挙げられる。これらの種類及び量を適宜調節することで化合物(2)の重合温度をコントロールできる。なお、偏光膜形成用組成物に、2種以上の化合物(2)[重合性スメクチック液晶組成物]の混合物を用いる場合にも、当該2種以上の化合物(2)の混合物の相転移温度を求めた後、重合性スメクチック液晶化合物の場合と同様にして、重合温度をコントロールする。
【0050】
例示した化合物(2)の中でも、式(2−2)、式(2−3)、式(2−4)、式(2−6)、式(2−7)、式(2−8)、式(2−13)、式(2−14)及び式(2−15)でそれぞれ表されるものからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。これらの化合物(2)は、2種以上を混合することで、あるいは、ともに用いられる光重合開始剤との相互作用により、容易に相転移温度を下回る温度条件下で、すなわち高次のスメクチック相の液晶状態を十分に保持したままで、該化合物(2)を重合させることができる。より具体的には、光重合開始剤との相互作用により、これらの化合物(2)は、70℃以下、好ましくは60℃以下の温度条件下で、高次のスメクチック相の液晶状態を十分に保持したまま重合することができる。
【0051】
前記偏光層形成用組成物中に含有される化合物(2)は上述のとおり、単独種であっても、複数種(2種以上)であってもよいが、複数種であることが好ましい。
【0052】
化合物(2)を含有する偏光膜形成用組成物を用いる場合、該化合物(2)の含有割合は、当該偏光膜形成用組成物の固形分に対して、70〜99.9質量%が好ましく、90〜99.9質量%がより好ましい。化合物(2)の含有割合が上記範囲内であれば、化合物(2)の配向性が高くなる傾向がある。ここで、固形分とは、該偏光膜形成用組成物から溶剤などの揮発性成分を除いた成分の合計量のことをいう。なお、複数種の化合物(2)が該偏光膜形成用組成物に含有される場合、その合計含有割合が前記の範囲であればよい。なお、すでに述べたとおり、本発明に用いる偏光膜形成用組成物は化合物(2)以外の重合性液晶化合物を含有していてもよいが、該偏光膜形成用組成物に含有される重合性液晶化合物は実質的に化合物(2)のみであると好ましい。
【0053】
<溶剤>
偏光膜形成用組成物は、溶剤を含んでいてもよい。一般に重合性スメクチック液晶化合物の粘度が高いため、溶剤に溶解させた偏光膜形成用組成物とすることで塗布が容易になり、結果として偏光膜の形成がし易くなる場合が多い。溶剤としては、重合性スメクチック液晶化合物ならびに二色性色素を溶解し得る溶剤が好ましい。また、偏光膜形成用組成物の重合反応に不活性な溶剤であることが好ましい。
溶剤としては、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル及びプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン又はプロピレングリコールメチルエーテルアセテート及び乳酸エチルなどのエステル溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン及びメチルイソブチルケトンなどのケトン溶剤;ペンタン、ヘキサン及びヘプタンなどの脂肪族炭化水素溶剤;トルエン及びキシレン(該キシレンは、o−体、m−体及びp−体のいずれでもよく、これらから選ばれる2種以上の混合物でもよい。)などの芳香族炭化水素溶剤、アセトニトリルなどのニトリル溶剤;テトラヒドロフラン及びジメトキシエタンなどのエーテル溶剤;クロロホルム及びクロロベンゼンなどの塩素含有溶剤;などが挙げられる。これら溶剤は、単独種で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
溶剤の含有量は、前記偏光膜形成用組成物の総量に対して50〜98質量%が好ましい。換言すると、偏光膜形成用組成物における固形分は、2〜50質量%が好ましい。固形分が2質量%以上であると、薄型の本偏光膜が得られやすい傾向がある。一方、該固形分が50質量%以下であると、偏光膜形成用組成物の粘度が低くなることから、偏光膜の厚みが略均一になることで、当該偏光膜にムラが生じにくくなる傾向がある。また、かかる固形分は、後述する偏光膜の所望の厚みを形成できるようにして定めることができる。
【0055】
<重合反応助剤>
前記偏光層形成用組成物は、重合開始剤を含有すると好ましい。当該重合開始剤は、重合性スメクチック液晶化合物の重合反応を開始し得る化合物であり、より低温条件下で、当該重合反応を開始できる点で、光重合開始剤が好ましい。具体的には、光の作用により活性ラジカル又は酸を発生できる化合物が光重合開始剤として用いられる。当該光重合開始剤の中でも、光の作用によりラジカルを発生するものがより好ましい。
【0056】
前記光重合開始剤としては、例えばベンゾイン化合物、ベンゾフェノン化合物、アルキルフェノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、トリアジン化合物、ヨードニウム塩及びスルホニウム塩などが挙げられる。
【0057】
以下、この光重合開始剤の具体例を挙げる。
ベンゾイン化合物としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル及びベンゾインイソブチルエーテルなどが挙げられる。
【0058】
ベンゾフェノン化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン及び2,4,6−トリメチルベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0059】
アルキルフェノン化合物としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−メチル−2−モルホリノ−1−(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1,2−ジフェニル−2,2−ジメトキシエタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕プロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン及び2−ヒドロキシ−2−メチル−1−〔4−(1−メチルビニル)フェニル〕プロパン−1−オンのオリゴマーなどが挙げられる。
【0060】
アシルホスフィンオキサイド化合物としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド及びビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。
【0061】
トリアジン化合物としては、例えば、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4−メトキシナフチル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4−メトキシスチリル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−〔2−(5−メチルフラン−2−イル)エテニル〕−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−〔2−(フラン−2−イル)エテニル〕−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−〔2−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)エテニル〕−1,3,5−トリアジン及び2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−〔2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル〕−1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。
【0062】
光重合開始剤は、市場から容易に入手できるものを用いることもできる。市販の光重合開始剤としては、”イルガキュア(Irgacure)907”、”イルガキュア184”、”イルガキュア651”、”イルガキュア819”、”イルガキュア250”、”イルガキュア369”(チバ・ジャパン(株));”セイクオールBZ”、”セイクオールZ”、”セイクオールBEE”(精工化学(株));”カヤキュアー(kayacure)BP100”(日本化薬(株));”カヤキュアーUVI−6992”(ダウ社製);”アデカオプトマーSP−152”、”アデカオプトマーSP−170”((株)ADEKA);”TAZ−A”、”TAZ−PP”(日本シイベルヘグナー社);及び”TAZ−104”(三和ケミカル社)などが挙げられる。
【0063】
前記偏光膜形成用組成物が重合開始剤を含有する場合、その含有量は、当該偏光膜形成用組成物に含有される重合性液晶化合物(重合性スメクチック液晶化合物)の種類及びその量に応じて適宜調節できるが、例えば、重合性液晶化合物(重合性スメクチック液晶化合物)の合計100質量部に対する重合開始剤の含有量は、0.1〜30質量部が好ましく、0.5〜20質量部がより好ましく、0.5〜10質量部がさらに好ましい。重合性開始剤の含有量が、この範囲内であれば、重合性スメクチック液晶化合物の配向を乱すことなく重合させることができるため、該重合性スメクチック液晶化合物が高次のスメクチック相の液晶状態を保持したまま重合することができる。
【0064】
前記偏光膜形成用組成物が光重合開始剤を含有する場合、該偏光膜形成用組成物には光増感剤を含有していてもよい。該光増感剤としては、例えば、キサントン及びチオキサントンなどのキサントン化合物(例えば、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントンなど);アントラセン及びアルコキシ基含有アントラセン(例えば、ジブトキシアントラセンなど)などのアントラセン化合物;フェノチアジン及びルブレンなどが挙げられる。
【0065】
前記偏光膜形成用組成物が光重合開始剤及び光増感剤を含有するものである場合、当該偏光膜形成用組成物に含有される重合性液晶化合物(重合性スメクチック液晶化合物)の重合反応をより促進することができる。かかる光増感剤の使用量は、併用する光重合開始剤及び重合性スメクチック液晶化合物の種類及びその量に応じて適宜調節できるが、例えば、重合性スメクチック液晶化合物の合計100質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましく、0.5〜10質量部がより好ましく、0.5〜8質量部がさらに好ましい。
【0066】
前記偏光膜形成用組成物に光増感剤を含有させることにより、重合性液晶化合物(重合性スメクチック液晶化合物)の重合反応を促進できることを説明したが、該重合反応を安定的に進行させるために、該偏光膜形成用組成物には重合禁止剤を適度に含有させることもできる。重合禁止剤を含有することにより、重合性液晶化合物(重合性スメクチック液晶化合物)の重合反応の進行度合いをコントロールすることができる。
【0067】
前記重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン、アルコキシ基含有ハイドロキノン、アルコキシ基含有カテコール(例えば、ブチルカテコールなど)、ピロガロール、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシラジカルなどのラジカル補足剤;チオフェノール類;β−ナフチルアミン類及びβ−ナフトール類などが挙げられる。
【0068】
前記偏光膜形成用組成物に重合禁止剤を含有させる場合、その含有量は、用いる重合性スメクチック液晶化合物の種類及びその量、並びに光増感剤の使用量などに応じて適宜調節できるが、例えば、重合性液晶化合物(重合性スメクチック液晶化合物)100質量部に対する重合禁止剤の含有量が、0.1〜30質量部が好ましく、0.5〜10質量部がより好ましく、0.5〜8質量部がさらに好ましい。重合禁止剤の含有量が、この範囲内であれば、該偏光膜形成用組成物に含有される重合性液晶化合物(重合性スメクチック液晶化合物)の配向を乱すことなく重合させることができるため、該重合性液晶化合物(重合性スメクチック液晶化合物)がより一層、高次のスメクチック相の液晶状態を良好に保持したまま重合することができる。
【0069】
<レベリング剤>
前記偏光膜形成用組成物は、レベリング剤を含有すると好ましい。該レベリング剤とは、偏光膜形成用組成物の流動性を調整し、偏光膜形成用組成物を塗布して得られる塗布膜をより平坦にする機能を有するものであり、界面活性剤などを挙げることができる。該レベリング剤は、ポリアクリレート化合物を主成分とするレベリング剤及びフッ素原子含有化合物を主成分とするレベリング剤からなる群から選ばれる少なくとも1種がさらに好ましい。
【0070】
ポリアクリレート化合物を主成分とするレベリング剤としては、”BYK−350”、”BYK−352”、”BYK−353”、”BYK−354”、”BYK−355”、”BYK−358N”、”BYK−361N”、”BYK−380”、”BYK−381”及び”BYK−392”[BYK Chemie社]などが挙げられる。
【0071】
フッ素原子含有化合物を主成分とするレベリング剤としては、”メガファックR−08”、同”R−30”、同”R−90”、同”F−410”、同”F−411”、同”F−443”、同”F−445”、同”F−470”、同”F−471”、同”F−477”、同”F−479”、同”F−482”及び同”F−483”[DIC(株)];”サーフロンS−381”、同”S−382”、同”S−383”、同”S−393”、同”SC−101”、同”SC−105”、”KH−40”及び”SA−100”[AGCセイミケミカル(株)];”E1830”、”E5844”[(株)ダイキンファインケミカル研究所];”エフトップEF301”、同”EF303”、同”EF351”及び同”EF352”[三菱マテリアル電子化成(株)]などが挙げられる。
【0072】
前記偏光膜形成用組成物にレベリング剤を含有させる場合、その含有量は、重合性液晶化合物(重合性スメクチック液晶化合物)100質量部に対して、0.3質量部以上5質量部以下が好ましく、0.5質量部以上3質量部以下がさらに好ましい。レベリング剤の含有量が前記の範囲内であると、重合性液晶化合物(重合性スメクチック液晶化合物)を水平配向させることが容易であり、かつ得られる偏光膜がより平滑となる傾向がある。重合性スメクチック液晶化合物に対するレベリング剤の含有量が前記の範囲を超えると、得られる本偏光膜にムラが生じやすい傾向がある。なお、該偏光膜形成用組成物は、レベリング剤を2種類以上含有していてもよい。
【0073】
<本偏光膜の形成方法>
次に、前記偏光膜形成用組成物から本偏光膜を形成させる方法について説明する。かかる方法では、該偏光膜形成用組成物を基材上に、好ましくは透明基材上に塗布することにより本偏光膜を形成することが好ましい。
【0074】
<透明基材>
前記透明基材とは光、特に可視光を透過し得る程度の透明性を有する基材である。該透明性とは、波長380〜780nmに渡る光線に対しての透過率が80%以上となる特性をいう。具体的に、かかる透明基材を例示すると、ガラス基材や、プラスチック製の透光性シート及び透光性フィルムを挙げることができる。なお、この透光性シートや透光性フィルムを構成するプラスチックとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマーなどのポリオレフィン;環状オレフィン系樹脂;ポリビニルアルコール;ポリエチレンテレフタレート;ポリメタクリル酸エステル;ポリアクリル酸エステル;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース及びセルロースアセテートプロピオネートなどのセルロースエステル;ポリエチレンナフタレート;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリフェニレンスルフィド及びポリフェニレンオキシドなどのプラスチックが挙げられる。以上の透明基材の具体例の中で、好ましいプラスチック製の透光性シート及び透光性フィルムについてみれば、プラスチック製の透光性フィルム、すなわち、高分子フィルムが好ましいものである。該高分子フィルムの中では、市場から容易に入手できたり、透明性に優れていたりする点から、とりわけ好ましくは、セルロースエステル、環状オレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート又はポリメタクリル酸エステルからなる高分子フィルムが好ましい。かかる透明基材を用いて、本偏光膜を製造するに当たり、該透明基材を運搬したり、保管したりする際に破れなどの破損を起こすことなく容易に取り扱える点で、該透明基材に支持基材などを貼り付けておいてもよい。また、後述するが、本偏光膜から円偏光板を製造する際に、該透明基材に位相差性を付与することがある。この場合には、透明基材として高分子フィルムを準備し、該高分子フィルムを延伸処理などにより、当該高分子フィルムに位相差性を付与して、位相差性フィルムとした後、この位相差性フィルムを透明基材として用いればよい。なお、透明基材(高分子フィルム)に位相差性を付与する方法は追って説明する。
【0075】
前記高分子フィルムの中では、位相差性を付与する場合に、その位相差値をコントロールし易い点で、セルロースエステル、ポリカーボネート又は環状オレフィン系樹脂からなるフィルム(セルロースエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、環状オレフィン系樹脂フィルム)が好ましい。以下、この3種の高分子フィルムについて詳述する。
セルロースエステルフィルムを構成するセルロースエステルは、セルロースに含まれる水酸基の少なくとも一部が、酢酸エステル化されたものである。このようなセルロースエステルからなるセルロースエステルフィルムは市場から容易に入手することができる。市販のトリアセチルセルロースフィルムとしては、例えば、“フジタックフィルム”(富士写真フイルム(株));“KC8UX2M”、“KC8UY”及び“KC4UY”(コニカミノルタオプト(株))などがある。このような市販トリアセチルセルロースフィルムは、そのまま又は必要に応じて位相差性を付与してから透明基材として用いることができる。また、準備した透明基材の表面に、防眩処理、ハードコート処理、帯電防止処理又は反射防止処理などの表面処理を施してから、透明基材として使用することができる。
【0076】
高分子フィルムに位相差性を付与するには、上述のとおり、当該高分子フィルムを延伸するなどの方法による。プラスチック、すなわち熱可塑性樹脂からなる高分子フィルムは、いずれも延伸処理が可能であるが、位相差性を制御し易いという点で、環状オレフィン系樹脂フィルムは好ましいものである。環状オレフィン系樹脂フィルムを構成する環状オレフィン系樹脂とは例えば、ノルボルネンや多環ノルボルネン系モノマーなどの環状オレフィンの重合体又は共重合体(環状オレフィン系樹脂)から構成されるものであり、当該環状オレフィン系樹脂は部分的に、開環部を含んでいてもよい。また、開環部を含む環状オレフィン系樹脂を水素添加したものでもよい。さらに、当該環状オレフィン系樹脂は、透明性を著しく損なわない点や、著しく吸湿性を増大させない点で例えば、環状オレフィンと、鎖状オレフィンやビニル化芳香族化合物(スチレンなど)との共重合体であってもよい。また、該環状オレフィン系樹脂は、その分子内に極性基が導入されていてもよい。
【0077】
環状オレフィン系樹脂が、環状オレフィンと、鎖状オレフィンやビニル基を有する芳香族化合物との共重合体である場合、当該鎖状オレフィンとしては、エチレンやプロピレンなどであり、また、ビニル化芳香族化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン及びアルキル置換スチレンなどである。このような共重合体において、環状オレフィンに由来する構造単位の含有割合は、環状オレフィン系樹脂の全構造単位に対して、50モル%以下、例えば、15〜50モル%程度の範囲である。環状オレフィン系樹脂が、環状オレフィンと、鎖状オレフィンと、ビニル化芳香族化合物とから得られる三元共重合体である場合、例えば、鎖状オレフィン由来の構造単位の含有割合は、該環状オレフィン系樹脂の全構造単位に対して5〜80モル%程度であり、ビニル化芳香族化合物由来の構造単位の含有割合は5〜80モル%程度である。このような三元共重合体の環状オレフィン系樹脂は、該環状オレフィン系樹脂を製造する際に、高価な環状オレフィンの使用量を比較的少なくすることができるという利点がある。
【0078】
環状オレフィン系樹脂フィルムを製造し得る環状オレフィン系樹脂は、市場から容易に入手できる。市販の環状オレフィン系樹脂としては、“Topas”[Ticona社(独)];“アートン”[JSR(株)];“ゼオノア(ZEONOR)”及び“ゼオネックス(ZEONEX)”[日本ゼオン(株)];“アペル”[三井化学(株)製]などが挙げられる。このような環状オレフィン系樹脂を例えば、溶剤キャスト法や溶融押出法などの公知の製膜手段により製膜して、フィルム(環状オレフィン系樹脂フィルム)とすることができる。また、すでにフィルムの形態で市販されている環状オレフィン系樹脂フィルムも用いることができる。このような市販の環状オレフィン系樹脂フィルムとしては例えば、“エスシーナ”及び“SCA40”[積水化学工業(株)];“ゼオノアフィルム”[オプテス(株)];“アートンフィルム”[JSR(株)]などが挙げられる。
【0079】
また、ポリカーボネートフィルムにおいても、位相差性を付与されているフィルムを市場から容易に入手できる。かかるポリカーボネートフィルムとしては、一軸延伸フィルムWRF−S[(変性ポリカーボネート系樹脂)帝人化成(株)製]などがある。
【0080】
続いて、高分子フィルムに位相差性を付与する方法について簡単に説明する。高分子フィルムは、公知の延伸方法により位相差性を付与することができる。例えば、高分子フィルムがロールに巻き取られているロール(巻き取り体)を準備し、かかる巻き取り体から、フィルムを連続的に巻き出し、巻き出されたフィルムを加熱炉へと搬送する。加熱炉の設定温度は、高分子フィルムのガラス転移温度近傍(℃)〜[ガラス転移温度+100](℃)の範囲、好ましくは、ガラス転移温度近傍(℃)〜[ガラス転移温度+50](℃)の範囲とする。当該加熱炉においては、フィルムの進行方向へ、又は進行方向と直交する方向へ延伸する際に、搬送方向や張力を調整し任意の角度に傾斜をつけて一軸又は二軸の熱延伸処理を行う。延伸の倍率は、通常1.1〜6倍程度の範囲であり、好ましくは1.1〜3.5倍程度の範囲である。また、斜め方向に延伸する方法としては、連続的に配向軸を所望の角度に傾斜させることができるものであれば、特に限定されず、公知の延伸方法が採用できる。このような延伸方法は例えば、特開昭50−83482号公報や特開平2−113920号公報に記載された方法を挙げることができる。
【0081】
透明基材として用いるうえで、高分子フィルムの厚みは、実用的な取扱いができる程度の重量である点、及び、十分な透明性が確保できる点では、薄い方が好ましいが、薄すぎると強度が低下し、加工性に劣る傾向がある。そこで、これらのフィルムの適当な厚みは、例えば、5〜300μm程度であり、好ましくは20〜200μmである。本偏光膜を、後述する円偏光板として使用する場合は、当該円偏光板を用いる表示装置がモバイル用途であることが想定されるため、フィルムの厚みは20〜100μm程度が特に好ましい。なお、延伸することでフィルムに位相差性を付与する場合、延伸後の厚みは、延伸前のフィルムの厚みや延伸倍率によって決定される。
【0082】
<配向膜>
本偏光膜の製造に用いる基材には、配向膜が形成されていることが好ましい。その場合、偏光膜形成用組成物は配向膜上に塗布することとなる。このため該配向膜は、偏光膜形成用組成物の塗布などにより溶解しない程度の溶剤耐性を有することが好ましい。また、溶剤の除去や液晶の配向のための加熱処理における耐熱性を有することが好ましい。かかる配向膜としては、配向性ポリマーを用いることができる。
【0083】
上記配向性ポリマーとしては、例えば分子内にアミド結合を有するポリアミドやゼラチン類、分子内にイミド結合を有するポリイミド及びその加水分解物であるポリアミック酸、ポリビニルアルコール、アルキル変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリオキサゾール、ポリエチレンイミン、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸又はポリアクリル酸エステル類等のポリマーを挙げることができる。これらの中でも、ポリビニルアルコールが好ましい。配向膜を形成するこれらの配向性ポリマーは、単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0084】
配向性ポリマーは、溶剤に溶解した配向性ポリマー組成物(配向性ポリマーを含む溶液)として、基材上に塗布することにより、該基材上に配向膜を形成することができる。該配向性ポリマー組成物に用いる溶剤は、特に制限はないが、具体的には、水;メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ及びプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート及び乳酸エチルなどのエステル溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン及びメチルイソブチルケトン等のケトン溶剤;ペンタン、ヘキサン及びヘプタン等の脂肪族炭化水素溶剤;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素溶剤、アセトニトリル等のニトリル溶媒;テトラヒドロフラン及びはジメトキシエタン等のエーテル溶媒;クロロホルム及びクロロベンゼン等の塩素置換炭化水素溶媒;等が挙げられる。これら有機溶剤は、単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0085】
また配向膜を形成するための配向性ポリマー組成物として、市販の配向膜材料をそのまま使用してもよい。市販の配向膜材料としては、サンエバー(登録商標、日産化学工業(株)製)又はオプトマー(登録商標、JSR(株)製)などが挙げられる。
【0086】
上記基材上に配向膜を形成する方法としては、例えば上記基材上に、上記配向性ポリマー組成物や市販の配向膜材料を塗布し、その後、アニールすることにより、上記基材上に配向膜を形成することができる。このようにして得られる配向膜の厚さは、例えば10nm〜10000nmの範囲であり、好ましくは10nm〜1000nmの範囲である。
【0087】
上記配向膜に対して配向規制力を付与するために、必要に応じてラビングを行うこと(ラビング法)が好ましい。配向規制力を付与することにより重合性スメクチック液晶化合物を所望の一方向(配向方向)に配向させることができる。
【0088】
ラビング法により配向規制力を付与する方法としては、例えばラビング布が巻きつけられ、回転しているラビングロールを準備し、基材上に配向膜形成用の塗布膜が形成された積層体をステージに載せて、回転しているラビングロールに向けて搬送することで、該配向膜形成用塗布膜と、回転しているラビングロールとを接触させる方法が挙げられる。
【0089】
また、いわゆる光配向膜も利用することができる。光配向膜は光配向誘起層を形成して、偏光(好ましくは、偏光UV)を照射することによって配向規制力を付与することもある。光配向誘起層形成に当たっては、まず、光反応性基を有するポリマー又はモノマーと、溶剤とを含む組成物(以下、場合により「光配向層形成用組成物」という)を準備する。光反応性基とは、光を照射すること(光照射)により液晶配向能を生じる基をいう。具体的には、光を照射することで生じる分子の配向誘起又は異性化反応、二量化反応、光架橋反応、あるいは光分解反応のような、液晶配向能の起源となる光反応を生じるものである。当該光反応性基の中でも、二量化反応又は光架橋反応を利用したものが、配向性に優れ、偏光層形成時のスメクチック液晶状態を保持する点で好ましい。以上のような反応を生じうる光反応性基としては、不飽和結合、特に二重結合を有するものが好ましく、炭素−炭素二重結合(C=C結合)、炭素−窒素二重結合(C=N結合)、窒素−窒素二重結合(N=N結合)、及び炭素−酸素二重結合(C=O結合)からなる群より選ばれる少なくとも一つを有する基が特に好ましい。
【0090】
C=C結合を有する光反応性基としては例えば、ビニル基、ポリエン基、スチルベン基、スチルバゾ−ル基、スチルバゾリウム基、カルコン基及びシンナモイル基などが挙げられる。C=N結合を有する光反応性基としては、芳香族シッフ塩基及び芳香族ヒドラゾンなどの構造を有する基が挙げられる。N=N結合を有する光反応性基としては、アゾベンゼン基、アゾナフタレン基、芳香族複素環アゾ基、ビスアゾ基及びホルマザン基などや、アゾキシベンゼンを基本構造とするものが挙げられる。C=O結合を有する光反応性基としては、ベンゾフェノン基、クマリン基、アントラキノン基及びマレイミド基などが挙げられる。これらの基は、アルキル基、アルコキシ基、アリ−ル基、アリルオキシ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基及びハロゲン化アルキル基などの置換基を有していてもよい。
中でも、光二量化反応を生じうる光反応性基が好ましく、シンナモイル基及びカルコン基が、光配向に必要な偏光照射量が比較的少なく、かつ、熱安定性や経時安定性に優れる光配向層が得られやすいため好ましい。さらにいえば、光反応性基を有するポリマーとしては、当該ポリマー側鎖の末端部が桂皮酸構造となるようなシンナモイル基を有するものが特に好ましい。
【0091】
光反応性基を有するポリマー又はモノマーは溶剤に溶解した光配向層形成用組成物として、透明基材上に塗布することにより、該透明基材上に光配向誘起層を形成することができる。該組成物に用いる溶剤については、特に限定はされず、光反応性基を有するポリマーあるいはモノマーの溶解性に応じて、上述の配向性ポリマー組成物に用いたような溶剤が適用できる。
【0092】
光配向層形成用組成物に対する、光反応性基を有するポリマー又はモノマーの濃度は、当該光反応性基を有するポリマー又はモノマーの種類や製造しようとする光配向層の厚みによって適宜調節できるが、固形分濃度で表して、少なくとも0.2質量%とすることが好ましく、0.3〜10質量%の範囲が特に好ましい。また、光配向層の特性が著しく損なわれない範囲で、該配向層形成用組成物は、ポリビニルアルコ−ルやポリイミドなどの高分子材料や光増感剤が含まれていてもよい。
【0093】
前記配向性ポリマーあるいは光反応性基を有するポリマー又はモノマーを透明基材上に塗布する方法としては、スピンコ−ティング法、エクストルージョン法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、バーコーティング法及びアプリケータ法などの塗布法や、フレキソ法などの印刷法などの公知の方法が採用される。なお、本偏光膜製造を、後述するRoll to Roll形式の連続的製造方法により実施する場合、当該塗布方法は通常、グラビアコーティング法、ダイコーティング法又はフレキソ法などの印刷法が採用される。
【0094】
<本偏光膜の製造方法>
前記(透明)基材上に形成された配向膜上に、前記偏光膜形成用組成物を塗布して塗布膜を得る。該配向膜上に偏光膜形成用組成物を塗布する方法(塗布方法)としては例えば、配向性ポリマーあるいは光反応性基を有するポリマー(モノマー)を透明基材上に塗布する方法として例示したものと同じ方法が挙げられる。なお、かかる方法において、該偏光膜形成用組成物としては、重合性液晶化合物として重合性スメクチック液晶化合物を含有する場合を中心に説明する。
【0095】
次に、該塗布膜中に含まれる前記重合性スメクチック液晶化合物が重合しない条件で溶剤を乾燥除去することにより、乾燥被膜が形成される。乾燥方法としては、例えば自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥及び減圧乾燥法等が挙げられる。この際、一旦、当該乾燥被膜に含まれる重合性スメクチック液晶組成物の液晶状態をネマチック相(ネマチック液晶状態)にした後、当該ネマチック相をスメクチック相に転移させると好ましい。このようにネマチック相を経由してスメクチック相を形成するためには、例えば、乾燥被膜に含まれる重合性スメクチック液晶化合物がネマチック相の液晶状態に相転移する温度以上に加熱し、次いで該重合性スメクチック液晶化合物がスメクチック相の液晶状態を示す温度まで冷却するといった方法が採用される。
【0096】
前記乾燥被膜中の重合性スメクチック液晶化合物をスメクチック液晶状態としたり、該重合性スメクチック液晶化合物を、ネマチック液晶状態を経由してスメクチック液晶状態としたりする場合、用いる重合性スメクチック液晶化合物の相転移温度を測定することで、液晶状態を制御する条件(加熱条件)を容易に求めることができる。この相転移温度測定の測定条件は本願の実施例で説明する。
【0097】
前記重合性スメクチック液晶化合物を重合させる際、スメクチック相の液晶状態を良好に保持するためにも、当該重合性スメクチック液晶化合物として、2種以上の重合性スメクチック液晶化合物を含む偏光膜形成用組成物を用いることが好ましい。当該2種以上の重合性スメクチック液晶化合物の含有量比を調整した偏光膜形成用組成物を用いると、ネマチック相を経由してスメクチック相の液晶状態を形成した後に、一時的に過冷却状態を形成することが可能であり、高次のスメクチック相の液晶状態を容易に保持し易いという利点がある。
【0098】
次に、重合性スメクチック液晶化合物の重合工程について説明する。ここでは、前記偏光層形成用組成物に光重合開始剤を含有させ、乾燥被膜中の重合性スメクチック液晶化合物の液晶状態をスメクチック相にした後、このスメクチック相の液晶状態を保持したまま、該重合性スメクチック液晶化合物を光重合させる方法について詳述する。光重合において、乾燥被膜に照射する光としては、当該乾燥被膜に含まれる光重合開始剤の種類、又は重合性スメクチック液晶化合物の種類(特に、該重合性スメクチック液晶化合物が有する光重合基の種類)及びその量に応じて適宜、可視光、紫外光及びレーザー光からなる群より選択される光や活性電子線によって行うことができる。これらのうち、重合反応の進行をコントロールし易い点や、光重合に係る装置として当分野で広範に用いられているものが使用できるという点で、紫外光が好ましい。よって、紫外光によって、光重合できるように、前記偏光層形成用組成物に含有される重合性スメクチック液晶化合物や光重合開始剤の種類を選択しておくと好ましい。また、重合させる際には、紫外光照射とともに適当な冷却手段により、乾燥被膜を冷却することで重合温度をコントロールすることもできる。このような冷却手段の採用により、より低温で重合性スメクチック液晶化合物の重合を実施できれば、上述の透明基材が比較的耐熱性が低いものを用いたとしても、適切に本偏光膜を形成できるという利点もある。
【0099】
以上のような光重合を行うことにより、前記重合性スメクチック液晶化合物は、スメクチック相、好ましくは、すでに例示したような高次のスメクチック相の液晶状態を保持したまま重合し、本偏光膜が形成される。重合性スメクチック液晶化合物がスメクチック相の液晶状態を保持したまま重合して得られる本偏光膜は、前記アゾ系色素(1)の作用にも伴い、従来のホストゲスト型偏光膜、すなわち、ネマチック相の液晶状態を保持したままで重合性液晶化合物などを重合させて得られる偏光膜と比較してはるかに偏光性能が高いという利点がある。
【0100】
本偏光膜の厚みは、0.5μm以上10μm以下の範囲が好ましく、1μm以上5μm以下がさらに好ましい。したがって、本偏光膜形成用の塗布膜の厚みは、得られる本偏光膜の厚みを考慮して定められる。なお、本偏光膜の厚みは、干渉膜厚計やレーザー顕微鏡あるいは触針式膜厚計の測定で求められるものである。
【0101】
かくして形成された本偏光膜は、互いに異なる極大吸収波長を有する二色性色素を少なくとも2種、好ましくは、アゾ色素(1)を少なくとも2種、特に好ましくは前記表1に示すアゾ色素(1)の組み合わせを含有する偏光膜形成用組成物を用いたことにより、前記の式(I)〜式(V)の関係を満たす吸収スペクトルを有するものとなる。特に、該偏光膜形成用組成物として、前記表1に示すアゾ色素(1)の組み合わせを含有するものを用いれば、一層容易に前記の式(I)〜式(V)の関係を満たす吸収スペクトルを有する本偏光膜を得ることができる。
【0102】
また、かくして形成された本偏光膜は、X線反射測定においてブラッグピークが得られるものであると特に好ましい。このようなブラッグピークが得られる本偏光膜としては、例えば、ヘキサチック相又はクリスタル相に由来する回折ピークを示す本偏光膜を挙げることができる。
【0103】
さらに本偏光膜は、視感度補正単体透過率Tyが43%以上であり、視感度補正単体偏光度Pyが90%以上であると好ましい。ここでいう視感度補正単体透過率Ty及び視感度補正単体偏光度Pyとは、波長300〜800nmの範囲で、本偏光膜の透過軸方向の透過率(T
1)及び吸収軸方向の透過率(T
2)を測定し、下記式(VI)ならびに式(VII)を用いて単体透過率ならびに偏光度を算出し、JIS Z8701の2度視野(C光源)により視感度補正を行った値である。
Ty(%)=(T
1+T
2)/2 式(VI)
Py(%)={(T
1−T
2)/(T
1+T
2)} ×100 式(VII)
【0104】
<本偏光膜(本円偏光板)の連続的製造方法>
以上、本偏光膜の製造方法の概要を説明したが、商業的に本偏光膜を製造する際には、連続的に本偏光膜を製造できる方法が求められる。このような連続的製造方法はRoll to Roll形式によるものであり、場合により、「本製造方法」という。なお、本製造方法では基材として、位相差性を付与された透明基材を用いる場合を中心に説明する。
【0105】
本製造方法は例えば、
透明基材が第1の巻芯に巻き取られている第1ロールを準備する工程と、
該第1ロールから、該透明基材を連続的に送り出す工程と、
前記光反応性基を有するポリマーと溶剤とを含有する組成物を塗布して、該透明基材上に第1塗布膜を連続的に形成する工程と、
該第1塗布膜から該溶剤を乾燥除去して、該透明基材上に第1乾燥被膜を形成して、第1積層体を連続的に得る工程と、
該第1乾燥被膜に偏光UVを照射することにより、光配向層を形成して、第2積層体を連続的に得る工程と、
該光配向層上に、重合性スメクチック液晶化合物、二色性色素及び溶剤を含有する組成物を塗布して、該光配向層上に第2塗布膜を連続的に形成する工程と
該第2塗布膜を、該第2塗布膜中に含まれる該重合性スメクチック液晶化合物が重合しない条件で乾燥することにより、該光配向層上に第2乾燥被膜を形成して第3積層体を連続的に得る工程と、
該第2乾燥被膜中に含まれる該重合性スメクチック液晶化合物をスメクチック液晶状態とした後、該スメクチック液晶状態を保持したまま、該重合性スメクチック液晶化合物を重合させることにより、偏光膜を連続的に得る工程と、
連続的に得られた偏光膜を第2の巻芯に巻き取り、第2ロールを得る工程と
を有する。ここで
図1を参照して、本製造方法の要部を説明する。
【0106】
透明基材が第1の巻芯210Aに巻き取られている第1ロール210は例えば、市場から容易に入手できる。このようなロールの形態で市場から入手できる透明基材としては、すでに例示した透明基材の中でも、セルロースエステル、環状オレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート又はポリメタクリル酸エステルからなるフィルムなどが挙げられる。また、本偏光膜を円偏光板の形態で得る場合に用いることができる、位相差性が付与された透明基材も、市場から容易に入手でき、例えば、セルロースエステル、ポリカーボネート又は環状オレフィン系樹脂からなる位相差フィルムなどが挙げられる。
【0107】
続いて、前記第1ロール210から透明基材を巻き出す。透明基材を巻き出す方法は該第1ロール210の巻芯210Aに適当な回転手段を設置し、当該回転手段により第1ロール210を回転させることにより行われる。また、第1ロール210から透明基材を搬送する方向に、適当な補助ロール300を設置し、当該補助ロール300の回転手段で透明基材を巻き出す形式でもよい。さらに、第1の巻芯210A及び補助ロール300ともに回転手段を設置することで、透明基材に適度な張力を付与しながら、透明基材を巻き出す形式でもよい。
【0108】
前記第1ロール210から巻き出された透明基材は、塗布装置211Aを通過する際に、その表面上に当該塗布装置211Aにより前記配向膜形成用組成物が塗布される。このように連続的に配向膜形成用組成物を塗布するために上述のとおり、当該塗布装置211Aは、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、フレキソ法などの印刷法である。
【0109】
塗布装置211Aを経たフィルムは、透明基材上と第1塗布膜との積層体に該当するものである。かくして第1塗布膜が形成(積層)された透明基材は、乾燥炉212Aへと搬送され、この乾燥炉212Aにより加熱されて、透明基材と第1乾燥被膜とからなる第1積層体へと転化する。乾燥炉212Aとしては例えば、熱風式乾燥炉などが用いられる。乾燥炉212Aの設定温度は、塗布装置211Aにより塗布された前記配向膜形成用組成物に含まれる溶剤の種類などに応じて定められる。また乾燥炉212Aは、適当なゾーンに区分し、区分された複数のゾーンごとに設定温度が異なる形式であってもよく、複数個の乾燥炉を直列に配置し、互いに異なる設定温度で各乾燥炉を運転しながら、この複数個の乾燥炉をフィルムが順次搬送するという形式でもよい。
【0110】
加熱炉212Aを通過することにより連続的に形成された第1積層体は、続いて、偏光UV照射装置213Aにより、該積層体の第1乾燥被膜側の表面又は透明基材側の表面に偏光UVが照射され、該第1乾燥被膜は光偏光層に転化する。その際、フィルムの搬送方向D1と、形成される光配向層の配向方向D2とがなす角度が略45°となるようにする。
図2は、偏光UV照射後に形成された光配向層の配向方向D2と、フィルムの搬送方向D1との関係を模式的に表す図である。すなわち、
図1は偏光UV照射装置213A通過後の第1積層体の表面を、フィルムの搬送方向D1と、光配向層の配向方向D2とを見たとき、それらのなす角度が略45°を示すことを表している。
【0111】
かくして連続的に形成された第1積層体は、続いて塗布装置211Bを通過することにより、該第1積層体の光配向層上に偏光膜形成用組成物が塗布された後、乾燥炉212Bを通過することにより、第2積層体又は該第2積層体の第2乾燥被膜中に含まれる重合性スメクチック液晶化合物が、スメクチックの液晶状態を形成した積層体となる。乾燥炉212Bは、光配向層上に塗布された前記偏光膜形成用組成物から溶剤を乾燥除去する役割とともに、前記第2乾燥被膜中に含まれる重合性スメクチック液晶化合物がスメクチック相の液晶状態となるように熱エネルギーを、該第2乾燥被膜に与える役割とを担う。また、すでに説明したように、重合性スメクチック液晶化合物をスメクチック相の液晶状態とするために、一旦、該重合性スメクチック液晶化合物をネマチック相の液晶状態とするためには、前記第1積層体には異なる加熱条件により、多段階の加熱処理を前記第1積層体に対して行う必要がある。そのため、乾燥炉212Bは、乾燥炉212Aで説明したとおり、互いに異なる設定温度の複数のゾーンからなるものか、互いに異なる設定温度の乾燥炉を複数個準備し、該複数個の乾燥炉を直列に設置するという形式であると好ましい。
【0112】
前記乾燥炉212Bを経たフィルムは、偏光層形成用組成物に含まれていた溶剤が十分除去され、第2乾燥被膜中の重合性スメクチック液晶化合物がスメクチック相の液晶状態を保持したまま、光照射装置213Bへと搬送される。該光照射装置213Bによる光照射により、該重合性スメクチック液晶化合物は前記液晶状態を保持したまま、光重合して、本偏光膜が配向膜上に連続的に形成される。
【0113】
かくして連続的に形成された本偏光膜は、透明基材及び配向膜を含んだ積層体の形態で第2の巻芯220Aに巻き取られ、第2ロール220の形態が得られる。形成された本偏光膜を巻き取って第2ロールを得る際、適当なスペーサを用いた供巻きを行ってもよい。
【0114】
このように、透明基材が、第1ロール/塗布装置211A/乾燥炉212A/偏光UV照射装置213A/塗布装置211B/乾燥炉212A/光照射装置213Aの順で通過することで、透明基材上の光配向層上に本偏光膜が連続的に製造される。
【0115】
また、
図1に示す本製造方法では、透明基材から本偏光膜までを連続的に製造する方法を示したが、例えば、透明基材が、第1ロール/塗布装置211A/乾燥炉212A/偏光UV照射装置213Aの順で通過させることで、連続的に形成された第1積層体を巻芯に巻き取って、第1積層体をロールの形態で製造し、該ロールから第1積層体を巻き出し、巻き出された第1積層体を、塗布装置211B/乾燥炉212A/光照射装置213Aの順で通過させ、本偏光膜を製造してもよい。
【0116】
以上、透明基材/光配向層/本偏光膜の積層体の形態である場合を中心に、本偏光膜の構成及び製造方法を説明してきたが、上述のとおり、本偏光膜は、かかる積層体から光配向層や透明基材を剥離してもよいし、該積層体に、透明基材/光配向層/本偏光膜本以外の層又は膜を積層した形態にしてもよい。これらの層及び膜としては、すでに述べたように、本偏光膜は位相差フィルムをさらに備えていてもよいし、反射防止層又は輝度向上フィルムをさらに備えていてもよい。
【0117】
また、透明基材自体を位相差フィルムとすることで、位相差フィルム/光配向層/本偏光膜の形態の円偏光板あるいは楕円偏光板とすることもできる。例えば、位相差フィルムとして1軸延伸した1/4波長板を用いた場合、偏光UVの照射方向を透明基材の搬送方向に対して略45°となるように設定することで、Roll−to−Rollで円偏光板を作製することが可能である。このように円偏光板を製造する際に用いられる1/4波長板は、可視光に対する面内位相差値が、波長が短くなるに従って小さくなる特性を有するものが好ましい。
【0118】
また、位相差フィルムとして1/2波長板を用いて、その遅相軸と偏光膜の吸収軸の角度をずらして設定したような直線偏光板ロールを作製し、該偏光膜を形成した面と反対側に1/4波長板をさらに形成することで広帯域の円偏光板とすることも可能である。
【0119】
以上、説明した本製造方法において、透明基材を、位相差性を有しない基材に置き換えてもよい。この場合、本円偏光板を製造するには、まず、本製造方法実施後に得られた、基材(位相差性を有しない)/光配向層/本偏光膜の積層体から、本偏光膜を剥離して巻き取り体225にする。一方、位相差フィルムが巻き取られている巻き取り体230を準備する。そして、巻き取り体225から本偏光膜を、巻き取り体230から位相差フィルムを連続的に巻き出して、これらを適当な方法で貼合すれば、本円偏光板を製造することができる。この方法の要部を
図3に示す。この場合も、位相差フィルムと本偏光膜の配向方向に対して、略45°となるように貼合すればよい。なお、本偏光膜と、位相差フィルムとを貼合する際には、適当な粘着剤を用い、該粘着剤から形成される粘着層を介して、本偏光膜と、位相差フィルムとを貼合してもよい。
【0120】
また、本製造方法により製造した本偏光膜が前記式(I)〜式(V)の関係を満たす吸収スペクトルを有することを求める場合、透明基材等を剥がすことにより本偏光膜を単膜の状態を得、この単膜の本偏光膜を定法により吸収スペクトルを測定すればよいが、例えば、予め、透明基材などの吸収スペクトルを測定しておき、この透明基材等の吸収スペクトルをベースラインとして、透明基材などの上に形成されたままの本偏光膜の吸収スペクトルを測定しておく方法や、予め、透明基材等の吸収スペクトルを測定しておき、続いて、透明基材などの上に形成されたままの本偏光膜の吸収スペクトルを測定し、該透明基材等上に形成されたままの本偏光膜の吸収スペクトルと、透明基材等の吸収スペクトルとの差分を求めるという方法でもよい。これら予め、透明基材等の吸収スペクトルを測定する手段を用いることにより、透明基材などを剥がすことなく簡便に本偏光膜の吸収スペクトルを求めることができる。
【0121】
<本偏光膜の用途>
本偏光膜は、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置に極めて有用な本円偏光板の製造を可能とする。なお、この表示装置は無機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置であってもよい。
【0122】
図4及び
図6は、本偏光膜を用いたEL表示装置(以下、場合により「本有機EL表示装置」という。)の断面構成を模式的に表す概略図である。
【0123】
本偏光膜を用いた、本有機EL表示装置30について、
図4を参照して説明する。本有機EL表示装置に、本偏光膜を用いる場合、本偏光膜を円偏光板(以下、場合により「本円偏光板」という。)にしてから用いることが好ましい。本円偏光板には2つの実施形態がある。そこで、本有機EL表示装置30の構成などを説明する前に、本円偏光板の2つの実施形態について、
図5を参照して説明する。
【0124】
図5の(A)は本円偏光板110の第1実施形態を模式的に表す断面図である。この第1実施形態は、本偏光膜3上にさらに位相差層(位相差フィルム)4を設けた本円偏光板110である。
図6の(B)は本円偏光板110の第2実施形態を模式的に表す断面図である。この第2実施形態は、偏光子を製造する際に用いた透明基材1として、予め位相差性が付与されている透明基材(位相差フィルム)を用いることで、透明基材1自体が位相差層4としての機能を兼ね備えたものとした本円偏光板110である。
【0125】
本有機EL表示装置30は、画素電極35が形成された基板33上に、発光源である有機機能層36、及びカソード電極37が積層されたものである。基板33を挟んで有機機能層36と反対側に、円偏光板31が配置され、かかる円偏光板31として本円偏光板110が用いられる。画素電極35にプラスの電圧、カソード電極37にマイナスの電圧を加え、画素電極35及びカソード電極37間に直流電流を印加することにより、有機機能層36が発光する。発光源である有機機能層36は、電子輸送層、発光層及び正孔輸送層などからなる。有機機能層36から出射した光は、画素電極35、層間絶縁膜34、基板33、円偏光板31(本円偏光板110)を通過する。有機機能層36を有する有機EL表示装置について説明するが、無機機能層を有する無機EL表示装置にも適用してもよい。
【0126】
本有機EL表示装置30を製造するには、まず、基板33上に薄膜トランジスタ40を所望の形状に形成する。そして層間絶縁膜34を成膜し、次いで画素電極35をスパッタ法で成膜し、パターニングする。その後、有機機能層36を積層する。
【0127】
次いで、基板33の薄膜トランジスタ40が設けられている面の反対の面に、円偏光板31(本円偏光板110)を設ける。
【0128】
本円偏光板110を円偏光板31として用いる場合、その積層順を
図8の点線で囲まれたCの部分の拡大図を参照して説明する。本円偏光板110を円偏光板31として用いる場合、該本円偏光板110にある位相差層4が、基板33側に配置される。
図9の(C1)は、本円偏光板110の第1実施形態を円偏光板31として用いた拡大図であり、
図9の(C2)は、本円偏光板110の第2実施形態を円偏光板31として用いた拡大図である。
【0129】
次に、本有機EL表示装置30の本偏光膜31(円偏光板110)以外の部材について簡単に説明する。
【0130】
基板33としては、サファイアガラス基板、石英ガラス基板、ソーダガラス基板及びアルミナなどのセラミック基板;銅などの金属基板;プラスチック基板などが挙げられる。図示はしないが、基板33上に熱伝導性膜を形成してもよい。熱伝導性膜としては、ダイヤモンド薄膜(DLCなど)などが挙げられる。画素電極35を反射型とする場合は、基板33とは反対方向へ光が出射する。したがって、透明材料だけでなく、ステンレスなどの非透過材料を用いることができる。基板は単一で形成されていてもよく、複数の基板を接着剤で貼り合わせて積層基板として形成されていていてもよい。また、これらの基板は、板状のものに限定するものではなく、フィルムであってもよい。
【0131】
薄膜トランジスタ40としては例えば、多結晶シリコントランジスタなどを用いればよい。薄膜トランジスタ40は、画素電極35の端部に設けられ、その大きさは10〜30μm程度である。なお、画素電極35の大きさは20μm×20μm〜300μm×300μm程度である。
【0132】
基板33上には、薄膜トランジスタ40の配線電極が設けられている。配線電極は抵抗が低く、画素電極35と電気的に接続して抵抗値を低く抑える機能があり、一般的にはその配線電極は、Al、Al及び遷移金属(ただしTiを除く)、Ti又は窒化チタン(TiN)のいずれか1種又は2種以上を含有するものが使われる。
【0133】
薄膜トランジスタ40と画素電極35との間には層間絶縁膜34が設けられる。層間絶縁膜34は、SiO
2などの酸化ケイ素、窒化ケイ素などの無機系材料をスパッタや真空蒸着で成膜したもの、SOG(スピン・オン・グラス)で形成した酸化ケイ素層、フォトレジスト、ポリイミド及びアクリル樹脂などの樹脂系材料の塗膜など、絶縁性を有するものであればいずれであってもよい。
【0134】
層間絶縁膜34上に、リブ41を形成する。リブ41は、画素電極35の周辺部(隣接画素間)に配置されている。リブ41の材料としては、アクリル樹脂及びポリイミド樹脂などが挙げられる。リブ41の厚みは、好ましくは1.0μm以上3.5μmであり、より好ましくは1.5μm以上2.5μm以下である。
【0135】
次に、透明電極である画素電極35と、発光源である有機機能層36と、カソード電極37とからなるEL素子について説明する。有機機能層36は、それぞれ少なくとも1層のホール輸送層及び発光層を有し、例えば、電子注入輸送層、発光層、正孔輸送層及び正孔注入層を順次有する。
【0136】
画素電極35としては、例えば、ITO(錫ドープ酸化インジウム)、IZO(亜鉛ドープ酸化インジウム)、IGZO、ZnO、SnO
2及びIn
2O
3などが挙げられるが、特にITOやIZOが好ましい。画素電極35の厚さは、ホール注入を十分行える一定以上の厚さを有すればよく、10〜500nm程度とすることが好ましい。
画素電極35は、蒸着法(好ましくはスパッタ法)により形成することができる。スパッタガスとしては、特に制限するものではなく、Ar、He、Ne、Kr及びXeなどの不活性ガス、あるいはこれらの混合ガスを用いればよい。
【0137】
カソード電極37の構成材料としては例えば、K、Li、Na、Mg、La、Ce、Ca、Sr、Ba、Al、Ag、In、Sn、Zn及びZrなどの金属元素が用いられればよいが、電極の作動安定性を向上させるためには、例示した金属元素から選ばれる2成分又は3成分の合金系を用いることが好ましい。合金系としては、例えばAg・Mg(Ag:1〜20at%)、Al・Li(Li:0.3〜14at%)、In・Mg(Mg:50〜80at%)及びAl・Ca(Ca:5〜20at%)などが好ましい。
カソード電極37は、蒸着法及びスパッタ法などにより形成される。カソード電極37の厚さは、0.1nm以上、好ましくは1〜500nm以上であることが好ましい。
【0138】
正孔注入層は、画素電極35からの正孔の注入を容易にする機能を有し、正孔輸送層は、正孔を輸送する機能及び電子を妨げる機能を有し、電荷注入層や電荷輸送層とも称される。
発光層の厚さ、正孔注入層と正孔輸送層とを併せた厚さ、及び電子注入輸送層の厚さは特に限定されず、形成方法によっても異なるが、5〜100nm程度とすることが好ましい。正孔注入層や正孔輸送層には、各種有機化合物を用いることができる。正孔注入輸送層、発光層及び電子注入輸送層の形成には、均質な薄膜が形成できる点で真空蒸着法を用いることができる。
【0139】
発光源である有機機能層36としては、1重項励起子からの発光(蛍光)を利用するもの、3重項励起子からの発光(燐光)を利用するもの、1重項励起子からの発光(蛍光)を利用するものと3重項励起子からの発光(燐光)を利用するものとを含むもの、有機物によって形成されたもの、有機物によって形成されたものと無機物によって形成されたものとを含むもの、高分子の材料、低分子の材料、高分子の材料と低分子の材料とを含むものなどを用いることができる。ただし、これに限定されず、EL素子用として公知の様々なものを用いた有機機能層36を、本有機EL表示装置30に用いることができる。
【0140】
カソード電極37と封止フタ39との空間には乾燥剤38を配置する。これは、有機機能層36は湿度に弱いためである。乾燥剤38により水分を吸収し有機機能層36の劣化を防止する。
【0141】
図6は、本有機EL表示装置30の別態様の断面構成を表す概略図である。この本有機EL表示装置30は、薄膜封止膜41を用いた封止構造を有し、アレイ基板の反対面からも出射光を得ることができる。
薄膜封止膜41としては電解コンデンサのフィルムにDLC(ダイヤモンドライクカーボン)を蒸着したDLC膜を用いることが好ましい。DLC膜は水分浸透性が極めて悪いという特性があり、防湿性能が高い。また、DLC膜などをカソード電極37の表面に直接蒸着して形成してもよい。また、樹脂薄膜と金属薄膜とを多層に積層して、薄膜封止膜41を形成してもよい。
【0142】
以上のようにして、本発明に係る新規な偏光膜(本偏光膜)、及び本偏光膜を含む本円偏光板を備えた新規な本有機EL表示装置が提供される。
【0143】
本有機EL表示装置は、本偏光膜を含む本円偏光板を備えることにより、波長450nmの光の強度をI450、波長550nmの光の強度をI550、波長650nmの光の強度をI650としたとき、
1≦I450/I550<2 (X)
1≦A450/A650<2 (XI)
で示される関係をすべて満たす発光スペクトルを有するものとなる。本有機EL表示装置は、本偏光膜が有機EL発光素子からの光、特に寿命の短い青色光(波長450nm付近の発光素子)をほとんど吸収することがないため、有機EL発光素子の発光強度を上げる必要がなく、有機EL画像表示装置の高寿命化を達成することができる。そのため、本偏光膜及び本円偏光板は産業上の価値が極めて高いものである。
【実施例】
【0144】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。例中の「%」及び「部」は、特記ない限り、質量%及び質量部である。
【0145】
本実施例においては、下記の重合性液晶化合物を用いた。
化合物(2−6)(下記式(2−6)で表される化合物)
化合物(2−6)は、Lub et al. Recl.Trav.Chim.Pays−Bas,115, 321−328(1996)記載の方法で合成した。
【0146】
〔相転移温度の測定〕
化合物(2−6)の相転移温度は、化合物(2−6)からなる膜の相転移温度を求めることで確認した。その操作は以下のとおりである。
配向膜を形成したガラス基板上に、化合物(2−6)からなる膜を形成し、加熱しながら、偏光顕微鏡(BX−51、オリンパス社製)によるテクスチャー観察によって相転移温度を確認した。化合物(2−6)からなる膜は、120℃まで昇温後、降温時において、112℃でネマチック相に相転移し、110℃でスメクチックA相に相転移し、94℃でスメクチックB相へ相転移したことを確認した。
【0147】
化合物(2−8)(下記式(2−8)で表される化合物)
化合物(2−8)は、上述の化合物(2−6)の合成を参考として合成した。
【0148】
〔相転移温度の測定〕
化合物(2−6)の相転移温度測定と同様にして、化合物(2−8)の相転移温度を確認した。化合物(2−8)は、140℃まで昇温後、降温時において、131℃でネマチック相に相転移し80℃でスメクチックA相に相転移し、68℃でスメクチックB相へ相転移したことを確認した。
【0149】
実施例1
〔偏光層形成用組成物の調製〕
表3に示す成分を混合し、80℃で1時間攪拌することで、偏光層形成用組成物を得た。なお、各成分の構造及び配合組成(二色性色素の組成は、表3参照)は以下のとおりである。
重合性液晶化合物;化合物(2−6) 90部
化合物(2−8) 10部
二色性色素;
化合物(1−5) 2.5部
化合物(1−21) 2.5部
重合開始剤;
2−ジメチルアミノ−2−ベンジル−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン(イルガキュア369;チバ スペシャルティケミカルズ社製) 6部
レベリング剤;
ポリアクリレート化合物(BYK−361N;BYK−Chemie社製)
1.2部
溶剤;キシレン 250部
【0150】
〔相転移温度の測定〕
化合物(2−6)及び化合物(2−8)の場合と同様に、上記のようにして調製した偏光層形成用組成物に含まれる重合性液晶組成物の相転移温度を求めた。この重合性液晶組成物は、140℃まで昇温後、降温時において、116℃でネマチック相に相転移し107℃でスメクチックA相に相転移し、76℃でスメクチックB相へ相転移したことを確認した。
【0151】
〔本偏光膜の製造及び評価〕
1.配向層の形成
透明基材としてガラス基板を用いた。
該ガラス基板上に、ポリビニルアルコール(ポリビニルアルコール1000完全ケン化型、和光純薬工業株式会社製)の2質量%水溶液(配向層形成用組成物)をスピンコート法により塗布し、乾燥後、厚さ100nmの膜を形成した。続いて、得られた膜の表面にラビング処理を施すことにより配向層を形成した。ラビング処理は、半自動ラビング装置(商品名:LQ−008型、常陽工学株式会社製)を用いて、布(商品名:YA−20−RW、吉川化工株式会社製)によって、押し込み量0.15mm、回転数500rpm、16.7mm/sの条件で行った。かかるラビング処理により、ガラス基板上に配向層が形成された積層体1を得た。
【0152】
2.偏光膜の形成
積層体1の配向層上に、前記偏光層形成用組成物をスピンコート法により塗布し、120℃のホットプレート上で1分間加熱乾燥した後、速やかに室温まで冷却して、前記配向層上に乾燥被膜を形成した。かかる乾燥被膜において、含まれる重合性液晶組成物(重合性液晶化合物)の液晶状態は、スメクチックB相であった。次いで、窒素雰囲気下にてUV照射装置(SPOT CURE SP−7;ウシオ電機株式会社製)を用い、紫外線を、露光量2000mJ/cm
2(365nm基準)で乾燥被膜に照射することにより、該乾燥被膜に含まれる重合性液晶化合物を、前記重合性液晶組成物の液晶状態を保持したまま重合させ、該乾燥被膜から偏光膜を形成した。この際の偏光膜の厚みをレーザー顕微鏡(オリンパス株式会社社製 OLS3000)により測定したところ、1.8μmであった。
【0153】
4.吸光度ならびに透過率測定
本偏光子の有用性を確認するため、以下のようにして吸光度を測定した。透過軸方向の吸光度(A
1)及び吸収軸方向の吸光度(A
2)を、分光光度計(島津製作所株式会社製 UV−3150)に偏光子付フォルダーをセットした装置を用いてダブルビーム法で波長300から800nmの範囲でスペクトル測定した。該フォルダーは、リファレンス側は光量を50%カットするメッシュを設置した。波長450nm、550nm、650nmでの吸収軸方向の吸光度A450、A550、A650、吸光度比A450/A550及びA450/A650の値を求めた。なお、このスペクトル測定においては、本偏光膜を形成するための積層体1の吸収スペクトルを予め測定しておき、該吸収スペクトルをベースラインとすることで補正して求めた。
また、同スペクトル結果から計算した視感度補正偏光度(Py)、視感度補正透過率(Ty)を求めた。これらの測定結果を表2に示す。なお、視感度補正偏光度(Py)、視感度補正透過率(Ty)は、波長300〜800nmの範囲で透過軸方向の透過率(T
1)及び吸収軸方向の透過率(T
2)を測定し、下記式(VI)ならびに式(VII)を用いて単体透過率ならびに偏光度を算出し、JIS Z8701の2度視野(C光源)により視感度補正を行った値である。
Ty(%)=(T
1+T
2)/2 式(VI)
Py(%)={(T
1−T
2)/(T
1+T
2)} ×100 式(VII)
【0154】
実施例2〜8も二色性色素の種類を変えた以外は実施例1と同様にして偏光膜を作製した。二色性色素の添加量と作製した偏光膜の膜厚の結果を表1に示す。また、同様に吸光スペクトルを測定した。波長450nm、550nm、650nmでの吸収軸方向の吸光度A450、A550、A650、吸光度比A450/A550、A450/A650の値を測定した。また、同様に視感度補正偏光度(Py)、視感度補正透過率(Ty)の測定結果を表4に示す。
【0155】
参考例1
〔ヨウ素PVA偏光板の作製〕
平均重合度約2400、ケン化度99.9モル%以上で厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルムを、乾式で約5.5倍に一軸延伸し、さらに緊張状態を保ったまま、60℃の純水に60秒間浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.05/5/100の水溶液に28℃で20秒間浸漬した。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が8.5/8.5/100の水溶液に72℃で300秒間浸漬した。引き続き26℃の純水で20秒間洗浄した後、65℃で乾燥して、ポリビニルアルコール樹脂にヨウ素が吸着配向された偏光膜を得た。
このようにして得られた偏光子の両面に、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール〔クラレ株式会社製 クラレポバールKL318〕3部と、水溶性ポリアミドエポキシ樹脂〔住化ケムテックス株式会社製 スミレーズレジン650(固形分濃度30%の水溶液)〕1.5部から作製したポリビニルアルコール系接着剤を介して、ケン化処理を施したトリアセチルセルロースフィルム〔コニカミノルタオプト株式会社製 KC8UX2MW〕で両面を保護して偏光フィルムを作製した。
【0156】
参考例2
ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.05/5/100の水溶液に28℃で35秒間浸漬した以外は比較例1と同様にして、偏光フィルムを作製した。
このように作製した偏光フィルムに対して、実施例1と同様にスペクトル測定を実施した。波長450nm、550nm、650nmでの吸収軸方向の吸光度A450、A550、A650、吸光度比A450/A550、A450/A650の値ならびに視感度補正偏光度(Py)、視感度補正透過率(Ty)の測定結果を表4に示す。
【0157】
【表3】
【0158】
【表4】
【0159】
実施例9
〔位相差フィルム上への光配向層の作製〕
透明基材として位相差フィルム(一軸延伸フィルムWRF−S(変性ポリカーボネート系樹脂)、位相差値137.5nm、厚み50μm、帝人化成(株)製)を用い、下記式(3)の光配向ポリマーをキシレンに5%溶解させた液をバーコート法により塗布して、120℃で乾燥して乾燥被膜を得た。この乾燥被膜上に該位相差フィルムの遅相軸に対して45°の方向に偏光UVを照射して光配向膜を得た。偏光UV処理は、UV照射装置(SPOT CURE SP−7;ウシオ電機株式会社製)を用いて、波長365nmで測定した強度が100mJの条件で行った。
【0160】
〔円偏光板の作製〕
該光配向膜上に、実施例1で調製した偏光層形成用組成物を、バーコート法により塗布し、120℃の乾燥オーブンにて1分間加熱乾燥した後、室温まで冷却した。かかる乾燥被膜において、含まれる重合性液晶化合物の液晶状態は、スメクチックB相であった。次いで、UV照射装置(SPOT CURE SP−7;ウシオ電機株式会社製)を用いて、露光量2000mJ/cm
2(365nm基準)の紫外線を、偏光層形成用組成物から形成された層に照射することにより、該乾燥被膜に含まれる重合性液晶化合物を、前記重合性液晶化合物の液晶状態を保持したまま重合させ、該乾燥被膜から偏光膜を形成した。この際の偏光膜の膜厚をレーザー顕微鏡(オリンパス株式会社社製 OLS3000)により測定したところ、1.8μmであった。
【0161】
実施例10
実施例1で調製した偏光層形成用組成物の代わりに、実施例2で調液した偏光層形成用組成物を用いたこと以外は実施例9と同じ実験を行い、円偏光板を作製した。
【0162】
実施例11
実施例1で調製した偏光層形成用組成物の代わりに、実施例8で調液した偏光層形成用組成物を用いたこと以外は実施例9と同じ実験を行い、円偏光板を作製した。
【0163】
参考例3
参考例1で作成した偏光フィルムの吸収軸と、位相差フィルム(一軸延伸フィルムWRF−S(変性ポリカーボネート系樹脂)、位相差値137.5nm、厚み50μm、帝人化成(株)製)の遅相軸との為す角度が45°になるように粘着剤を介して貼合し、円偏光板を作製した。
【0164】
参考例4
参考例1で作成した偏光フィルムの代わりに、参考例2で作成した偏光フィルムを用いた以外は参考例3と同じ実験を行い、円偏光板を作製した。
【0165】
<光学特性の測定>
実施例9〜10及び参考例3〜4でそれぞれ得られた円偏光板の位相差フィルムと、アルミ金属板とを粘着剤を介して貼合し、先の透過率測定と同様の方法で波長450nm、550nm、650nmでの反射率を測定した。また、JIS Z8701の2度視野(C光源)により視感度補正を行い視感度補正反射率を算出した。結果を表4に示す。
本偏光膜から作製した円偏光板は、人間の視感度に対して良好な反射防止特性を有することがわかる。
【0166】
【表5】