特許第5924102号(P5924102)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5924102粘着付与剤、水性粘着剤用組成物、水性粘着剤及び粘着シート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5924102
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】粘着付与剤、水性粘着剤用組成物、水性粘着剤及び粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/04 20060101AFI20160516BHJP
   C09J 139/00 20060101ALI20160516BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20160516BHJP
   C09J 171/02 20060101ALI20160516BHJP
   C08F 20/54 20060101ALI20160516BHJP
   C08F 26/06 20060101ALI20160516BHJP
   C09J 7/02 20060101ALI20160516BHJP
【FI】
   C09J133/04
   C09J139/00
   C09J11/06
   C09J171/02
   C08F20/54
   C08F26/06
   C09J7/02 Z
【請求項の数】8
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-99829(P2012-99829)
(22)【出願日】2012年4月25日
(65)【公開番号】特開2013-227408(P2013-227408A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2015年2月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩司
(72)【発明者】
【氏名】森野 彰規
【審査官】 富永 久子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭54−003136(JP,A)
【文献】 特表2007−523250(JP,A)
【文献】 特開2005−200440(JP,A)
【文献】 特開2008−174658(JP,A)
【文献】 特開平08−027450(JP,A)
【文献】 特開平06−128543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
C08C19/00−19/44;C08F6/00−246/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオキシエチレン構造及び硫酸エステル構造を有する重合性界面活性剤(a1)、窒素原子を有するビニル単量体(a2)、及び脂環構造を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a3)を含む単量体(a)の重合物である重量平均分子量500〜30,000の範囲のビニル重合体(A)を含有することを特徴とする粘着付与剤。
【請求項2】
前記重合性界面活性剤(a1)が、前記単量体(a)全量に対して、0.1質量%〜5質量%の範囲含まれる請求項1記載の粘着付与剤。
【請求項3】
前記脂環構造を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a3)が、前記単量体(a)全量に対して、50質量%〜99質量%の範囲含まれる請求項1に記載の粘着付与剤。
【請求項4】
前記窒素原子を有するビニル単量体(a2)が、アミド基及び/又はラクタム環を有するものである請求項1に記載の粘着付与剤。
【請求項5】
更に水性媒体(B)を含有するものである請求項1に記載の粘着付与剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の粘着付与剤と、水性媒体と、ガラス転移温度−10℃以下で、且つ重量平均分子量10万以上であるアクリル樹脂(C)とを含有することを特徴とする水性粘着剤用組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の水性粘着剤用組成物を用いて得られる水性粘着剤。
【請求項8】
基材表面に、請求項7記載の水性粘着剤を用いて形成された粘着層を有することを特徴とする粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性粘着剤と組み合わせ使用可能な粘着付与剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粘着剤は、自動車、電子電気製品、建築材料をはじめとする様々な分野において、部材を固定する材料として使用されている。
【0003】
例えば自動車の製造場面では、自動車内装部材を自動車内部に固定する際等に粘着剤が使用されている。また、携帯電話や液晶ディスプレイ等の電子機器等の製造場面では、電子製品を衝撃から保護することを目的として電子製品内部に設置されるクッション材等の固定、電子製品の外装部材の固定、液晶表示装置や有機EL表示装置やPDP等の画像表示装置を構成する部材の固定等に粘着剤が使用されている。
【0004】
前記粘着剤としては、環境負荷低減の観点から、溶剤系粘着剤から水系粘着剤への転換が進められており、近年は、水性媒体中にアクリル樹脂等が分散した水性アクリル粘着剤が好適に使用されている。
【0005】
前記水性粘着剤には、一般に、接着力や定荷重保持力等の接着性をより一層向上する観点から、粘着付与剤を組み合わせ使用する場合が多い。
【0006】
粘着付与剤を含む水性粘着剤としては、例えば、高分子乳化剤(a)及びノニオン性乳化剤(b)からなる乳化剤の存在下に粘着付与剤樹脂を乳化して得られる粘着付与剤樹脂エマルジョンを含む水性粘着剤が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
しかし、前記したようなロジンからなる粘着付与剤は、一般に製造が難しく生産性の面で改良の余地がある。また、ロジン系の粘着付与剤は、それを水性媒体中に安定して存在させるために、通常、多量の乳化剤を必要とするため、湿気(水)の影響によって接着力の著しい低下を引き起こす場合がある等、耐湿熱性の著しい低下を引き起こす場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−126546号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、優れた接着力や定荷重保持力等の接着性を水性粘着剤に付与可能で、かつ、湿気(水)の影響や、湿熱の影響による接着力の低下を引き起こすことのない、耐湿熱性に優れた接着を付与可能な粘着付与剤、ならびに、それを含む水性粘着剤用組成物及び水性粘着剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、前記課題を解決すべく検討を進めた結果、重合性界面活性剤及び窒素原子を有するビニル単量体に由来する構造を有する特定分子量のビニル重合体を含む粘着付与剤であれば、前記課題を解決できることを見出した。
【0011】
すなわち、本発明は、重合性界面活性剤(a1)及び窒素原子を有するビニル単量体(a2)を必須成分とする単量体(a)を重合して得られる重量平均分子量500〜30,000の範囲のビニル重合体(A)を含有することを特徴とする粘着付与剤、それを含む水性粘着剤用組成物及び水性粘着剤に関するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の粘着付与剤であれば、優れた接着性(特に、難接着基材への定荷重保持力)を水性粘着剤に付与可能で、かつ、従来の水性粘着剤では達成することができなかったレベルの、湿気(水)の影響や、湿熱の影響による接着力の低下を引き起こすことのない、優れた耐湿熱性を付与できることから、例えば、自動車内装材の固着、具体的には自動車天井材やドアトリムの固着をはじめ、クッション剤、シール剤、携帯電話や液晶ディスプレイ等の電子機器等を衝撃から保護することを目的として電子製品内部に設置されるクッション材等の固定や、電子製品の外装部材の固定、更には家具等を製造する際の粘着シート等に使用することができる。
【0013】
特に、本発明の粘着付与剤は、水性粘着剤を比較的親水性である基材表面に塗布等する場合であっても、湿気等の影響によらず経時的な剥離等を引き起こさないレベルの接着力を付与することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
前記重合性界面活性剤(a1)は、耐湿熱性を付与するうえで必須の成分であり、本発明の粘着付与剤の骨格中に組み込まれるために重合性基、好ましくは、ビニル基を有するものを用いることが好ましい。前記重合性界面活性剤(a1)としては、例えば、アルキルアリルスルホコハク酸アンモニウム塩、アルキルアリルスルホコハク酸ナトリウム塩、ポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩、ポリオキシエチレン−1−(アリルオキシメチル)アルキル硫酸エステルアンモニウム塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩、α−スルホ−ω−(1−(ノニルフェノキシ)メチル−2−(2−プロペニルオキシ)エトキシ)−ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)アンモニウム塩、α−スルホ−ω−(1−(アルコキシ)メチル−2−(2−プロペニルオキシ)エトキシ)−ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)アンモニウム塩、ジ(メタクリル酸アルキル)フォスフェート、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩、ビス(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル)メタクリレート硫酸エステル塩、アルコキシポリエチレングリコールマレイン酸エステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、2−ソディウムスルホアルキルメタクリレート等を用いることができる。
【0015】
また、前記重合性界面活性剤(a1)としては、具体的には、ポリオキシエチレン構造と硫酸エステル構造と有する化合物を含む「ラテムルS−180」「S−180A」「PD−104」〔花王株式会社製〕、「RS−3000」〔三洋化成工業株式会社製〕、「アクアロンHS−5」「HS−10」「BC−5」「BC−20」「KH−05」「KH−10」「KH−1025」〔第一工業製薬株式会社製〕、「アデカリアソープSE−10」「SE−20」「SR−10」「SR−1025」「SR−20」「SR−30」「SR−3025」〔旭電化工業株式会社製〕、「アントックス MS−60」〔日本乳化剤株式会社製〕等;硫酸エステル構造とを有する「エレミノールJS−20」〔三洋化成工業株式会社製〕、「アントックスMS−2N」〔日本乳化剤株式会社製〕;リン酸基を有する「ニューフロンティアA−229E」〔第一工業製薬株式会社製〕等;ポリオキシエチレン構造とカルボン酸基を有する化合物を含む「アントックスEMH−20」「LMH−20」「SMH−20」〔日本乳化剤株式会社製〕等を用いることができ、非イオン性親水基を有する化合物を含む「アクアロンRN−10」「RN−20」「RN−30」「RN−50」〔第一工業製薬株式会社製〕、「ラテムルPD−420」「PD−430」「PD−450」〔花王株式会社製〕、「アデカリアソープER−10」「ER−20」「ER−30」「ER−40」〔旭電化工業株式会社製〕等を用いることができる。これらの重合性界面活性剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0016】
また、前記重合性界面活性剤(a1)としては、例えば下記化学式(1)に示すようなカチオン系重合性界面活性剤を用いることができる。前記カチオン系重合性界面活性剤を用いる場合には、後述するアクリル樹脂(C)としてノニオン性基含有アクリル樹脂やカチオン性基含有アクリル樹脂を用いることができる。
【0017】
【化1】
【0018】
前記重合性界面活性剤(a1)としては、前記したなかでも、優れた耐湿熱性を付与する観点から、親水性部としてポリオキシエチレン構造または硫酸エステル構造を有するものを用いることが好ましい。また、前記重合性界面活性剤(a1)としては、150〜5,000の範囲の重量平均分子量を有するものを用いることが、ビニル重合体(A)の水性媒体(B)中における分散安定性の向上と、粘着剤の耐湿熱性のより一層の向上を図るうえで好ましい。
【0019】
前記重合性界面活性剤(a1)の使用量としては、耐熱性をより向上できる観点から、前記単量体(a)全量に対して、0.1質量%〜5質量%の範囲で用いることが好ましく、0.1質量%〜3質量%の範囲がより好ましい。
【0020】
前記窒素原子を有するビニル単量体(a2)は、特に優れた難接着基材への定荷重保持力を付与するうえで必須の成分であり、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基を有する単量体や、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン等のラクタム環を有する単量体、マレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド基を有する単量体、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基を有する単量体、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート塩化メチル4級塩、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート塩化メチル4級塩等のカチオン化されたアミノ基を有する単量体、アクリロニトリル等のチアノ基を有する単量体等を用いることができる。これらのビニル単量体は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0021】
これらの中でも、難接着基材への定荷重保持力等の接着性をより向上できる観点から、アミド基、ラクタム環を有する単量体を用いることが好ましく、更に、製造安定性を向上できる観点から、アミド基を有する単量体を用いることが好ましく、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドを用いることが更に好ましい。
【0022】
前記窒素原子を有するビニル単量体(a2)の使用量としては、難接着基材への定荷重保持力等の接着性をより向上できる観点から、前記単量体(a)全量に対して、0.1質量%〜5質量%の範囲で用いることが好ましく、0.1質量%〜3質量%の範囲がより好ましい。
【0023】
前記ビニル重合体(A)を形成する前記単量体(a)としては、前記重合性界面活性剤(a1)及び窒素原子を有するビニル単量体(a2)を必須成分として含むが、それ以外にその他のビニル単量体(a3)を含むことが耐湿熱性をより向上するうえで好ましい。
【0024】
前記その他のビニル単量体(a3)としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基を有するビニル単量体、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等の水酸基を有するビニル単量体、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N−モノアルキルアミノアルキル、(メタ)アクリル酸N,N−ジアルキルアミノアルキル、(メタ)アクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、アクロレイン、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、アミルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル類;(メタ)アクリロニトリル等のビニル系ニトリル類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルアニソール、α−ハロスチレン、ビニルナフタリン等の芳香環を有するビニル系単量体;イソプレン、ブタジエン、エチレン等の官能基を有しないビニル系単量体;ビニルピロリドン等の複素環式ビニル系単量体、(メタ)アクリル酸グリシジル、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の架橋性官能基を有するビニル単量体等を用いることができる。これらのビニル単量体は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、本発明でいう「(メタ)アクリル酸」の記載は、アクリル酸及びメタクリル酸のいずれか一方または両方を示す。
【0025】
前記その他のビニル単量体(a3)としては、これらのなかでも、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いることが好ましく、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルや、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等の脂環構造を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いることが、より一層優れた耐湿熱性を水性粘着剤に付与するうえで更に好ましい。
【0026】
前記その他のビニル単量体(a3)、好ましくは(メタ)アクリル酸アルキルエステル、更に好ましくは脂環構造を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、前記単量体(a)全量に対して、50質量%〜99質量%の範囲で用いることが好ましく、70質量%〜99質量%の範囲でより好ましい。
【0027】
前記ビニル重合体(A)は、例えば、前記重合性界面活性剤(a1)と前記窒素原子を有するビニル単量体(a2)と、好ましくは前記その他のビニル単量体(a3)とを、重合開始剤と水性媒体(B)と必要に応じて外部界面活性剤の存在下で乳化重合することによって製造することができる。
【0028】
前記乳化重合法は、水性媒体(B)中において前記重合性界面活性剤(a1)と前記窒素原子を有するビニル単量体(a2)と、好ましくは前記その他のビニル単量体(a3)とを、概ね0℃〜200℃程度の温度範囲で、約1時間〜10時間程度反応させ、前記重合性界面活性剤(a1)と前記窒素原子を有するビニル単量体(a2)と、好ましくは前記その他のビニル単量体(a3)をラジカル重合する方法である。
【0029】
前記ビニル重合体(A)の重量平均分子量としては、500〜30,000の範囲であることが必須である。前記ビニル重合体(A)の代わりに、前記重量平均分子量が35,000のビニル重合体を用いた場合には、アクリル樹脂(C)等との相溶性が低下し、その結果、水性粘着剤に優れた定荷重保持力等の接着性を付与できない場合がある。
【0030】
前記ビニル重合体(A)の重量平均分子量としては、より一層優れた接着性を付与する観点から、500〜10,000の範囲が好ましく、3,000〜9,000の範囲がより好ましい。なお、前記重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定した。
【0031】
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC−8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0032】
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−380」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−450」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−850」
【0033】
ビニル重合体(A)の重量平均分子量を500〜30,000の範囲に調整する方法としては、例えば連鎖移動剤を用いる方法、重合開始剤を多量に用いる方法や、その重合温度を概ね100℃以上で行う方法が挙げられる。重合温度を概ね100℃以上に調整し重合することによって、所定の重量平均分子量を有するビニル重合体(A)を製造する方法を採用することが、前記連鎖移動剤や重合開始剤に起因する臭気やVOCの低減を図るうえで好ましい。
【0034】
前記重合開始剤としては、例えばアゾ開始剤、過硫酸塩系開始剤、過酸化物系開始剤、過硫酸塩−還元剤、過酸化物−還元剤、鉄−過酸化物等のレドックス系開始剤等を用いることができる。
【0035】
前記アゾ開始剤としては、例えば、2,2‘−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2‘−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二硫酸塩、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2‘−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2‘−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)等、過硫酸塩系開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等、過酸化物系開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素等、還元剤としては、例えば、アスコルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム等、鉄としては、例えば、塩酸第二鉄等、が例示できる。これらは単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。なかでも、重合開始剤としては、優れた耐湿熱性を維持する観点から、過酸化水素を用いることが好ましい。
【0036】
前記開始剤の使用量は、反応温度や種類によって相違するが、一般的には、前記単量体(a)全量に対して、0.01質量%〜5質量%、好ましくは0.005質量%〜1質量%、更に好ましくは0.02質量%〜0.5質量%である。
【0037】
また、前記ビニル重合体(A)を製造する際には、必要に応じて連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、例えば、ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、α−ピネン、β−ピネン、D−リモネン、ターピノーレン、α―メチルスチレンダイマー等を単独または2種以上を併用して用いることができる。
【0038】
前記連鎖移動剤の使用量は、前記単量体(a)全量に対して、一般的には、0.001質量%〜5質量%であることが好ましく、0質量%であることがより好ましい。
【0039】
また、前記ビニル重合体(A)を製造する際には、必要に応じて外部界面活性剤を用いることができる。
【0040】
前記外部界面活性剤は、本発明の粘着付与剤に含まれるビニル重合体(A)中の重合性界面活性剤由来の質量割合を概ね0.5質量%以下とする場合や、前記ビニル重合体(A)の製造を概ね90℃以上の高温条件下で行う場合や、ビニル重合体(A)の平均粒子径を概ね500nm以上とする場合に、前記ビニル重合体(A)の凝集等を防止する目的で用いることが好ましい。
【0041】
前記外部界面活性剤としては、例えば、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤等を用いることができる。なかでも、陰イオン性界面活性剤を用いることが、粘着剤の機械的安定性を向上する上で好ましい。
【0042】
前記陰イオン性界面活性剤としては、例えば、高級アルコールの硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルスルホン酸塩等を単独または2種以上を併用して用いることができる。
【0043】
前記外部界面活性剤の使用量は、界面活性剤の種類等によって相違するが、ビニル重合体(A)の質量に対して0.01質量%〜2質量%の範囲で用いることが好ましく、0.01質量%〜1質量%の範囲で用いることが好ましい。
【0044】
前記ビニル重合体(A)としては、30℃〜300℃のガラス転移温度を有するものを用いることが好ましく、50℃〜200℃のものを用いることが、優れた耐湿熱性を水性粘着剤に付与できるため好ましい。なお、前記ガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定された中間点ガラス転移温度を指す。重量平均分子量が概ね30,000以上であるビニル重合体のガラス転移温度は、通常、FOXの式によって導かれた計算ガラス転移温度とほぼ一致する。しかし、前記ビニル重合体(A)のように重量平均分子量が比較的小さいビニル重合体のガラス転移温度は、重量平均分子量が低下するにつれて、FOXの式によって算出された計算ガラス転移温度と乖離する傾向にある。したがって、前記計算ガラス転移温度ではビニル重合体の本来のガラス転移温度を適切に示すことができない場合があるためである。
【0045】
前記ビニル重合体(A)としては、50℃〜300℃の軟化点を有するものを用いることが好ましく、70℃〜300℃のものを使用することが、優れた耐湿熱性を水性粘着剤に付与できるため好ましい。なお、軟化点は、環球法(JIS K5902)により測定した値である。
【0046】
前記ビニル重合体(A)としては、優れた耐湿熱性を付与する観点から、50nm〜500nmの平均粒子径を有するものを用いることが好ましく、100nm〜300nmの範囲がより好ましい。ここで、前記平均粒子径は、動的光散乱法によって測定した値を指す。
【0047】
前記方法で得られた前記ビニル重合体(A)は、水等の溶媒を含まないものであってもよいが、水性粘着剤との混合のしやすさ等の観点から水性媒体等の溶媒と混合していることが好ましい。前記ビニル重合体(A)は、前記粘着付与剤の全量に対して0.1質量%〜75質量%、好ましくは1質量%〜65質量%の範囲で含まれることが好ましい。
【0048】
次に、本発明で用いる水性媒体(B)について説明する。
【0049】
前記水性媒体(B)としては、水、水と混和する親水性有機溶剤、及び、これらの混合物を使用することができる。前記親水性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−及びイソプロパノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;ポリアルキレングリコールのアルキルエーテル類;N-メチル-2-ピロリドン等のラクタム類等の、一般に高沸点溶剤として知られるものを用いることができる。本発明では、水のみを用いても良く、また水及び水と混和する有機溶剤との混合物を用いても良く、水と混和する有機溶剤のみを用いても良い。安全性や環境に対する負荷の点から、水のみ、又は、水及び水と混和する有機溶剤との混合物が好ましく、水のみが特に好ましい。
【0050】
前記水性媒体(B)は、本発明の粘着付与剤の全量に対して25質量%〜99.9質量%含まれることが好ましく、35質量%〜99質量%含まれることがより好ましい。
【0051】
本発明の粘着付与剤は、水性粘着剤のベース樹脂である、例えばアクリル樹脂の水分散液等とを組み合わせることによって水性粘着剤用組成物として用いることができる。
【0052】
前記水性粘着剤のベース樹脂であるアクリル樹脂の水分散液としては、アクリル樹脂が水性媒体(B)に分散したものを用いることができ、なかでも、ガラス転移温度−10℃以下及び重量平均分子量10万以上であるアクリル樹脂(C)が水性媒体(B)に分散等したものを用いることが、粘着剤としての性能(粘着3物性)をより一層向上するうえで好ましい。
【0053】
前記アクリル樹脂(C)としては、例えば従来から粘着剤成分として使用されている、各種アクリル樹脂(C)を用いることができる。
【0054】
前記アクリル樹脂(C)としては、例えば好ましくは10万以上、より好ましくは30万〜200万の範囲の重量平均分子量を有するものを用いることができ、50万〜100万のものを用いることが、被着体に対して優れた接着力、保持力を付与するうえで特に好ましい。なお、前記アクリル樹脂の重量平均分子量は、前記ビニル重合体(A)と同様にして得られた値を指す。
【0055】
前記アクリル樹脂(C)としては、好ましくは−10℃以上、より好ましくは−10℃〜−70℃のガラス転移温度を有するものを用いることができ、−30℃〜−70℃のものを用いることが、被着体に対して優れた接着力を付与するうえで特に好ましい。なお、前記ガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定された中間点ガラス転移温度を指す。
【0056】
前記アクリル樹脂(C)としては、被着体に対して優れた接着力、とりわけ優れた投錨性を付与する観点から、50nm〜500nmの平均粒子径を有するものを用いることが好ましく、100nm〜300nmの範囲がより好ましい。ここで、前記平均粒子径は、動的光散乱法によって測定した値を指す。
【0057】
また、前記アクリル樹脂(C)としては、水性媒体中において安定して分散等する観点から、アニオン性基等の親水性基を有するアクリル樹脂を用いることができる。
【0058】
前記アニオン性基は、例えばカルボキシル基や、スルホニル基、それらが塩基性化合物によって中和されたカルボキシレート基やスルホネート基等を用いることができる。
【0059】
前記塩基性化合物としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属化合物、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属化合物、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン、ジメチルプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等の水溶性有機アミン類、アンモニア等が挙げられ、これらの1種または2種以上の混合物を用いることができる。これらの中で、得られる被膜の特に向上させたい場合は、常温或いは加熱により飛散するアンモニアを用いることが好ましい。
【0060】
前記アクリル樹脂(C)としては、被着体に対して優れた接着力を付与する観点から、できるだけ分岐構造を有さない直鎖のアクリル樹脂を用いることが好ましい。
【0061】
前記アクリル樹脂(C)としては、具体的には、後述するビニル単量体をラジカル重合することによって得られたものを用いることができる。
【0062】
前記ビニル単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸アルキルエステル、カルボキシル基を有するビニル単量体、水酸基を有するビニル単量体等を用いることができる。
【0063】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等を用いることができる。なかでも、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル及びアクリル酸ノニルからなる群より選ばれる1種以上を用いることが、得られるビニル樹脂(A)のガラス転移温度を低くでき、その結果、多孔体や表面極性の低い被着体に対しする優れた接着力や、耐水接着力を付与できるため好ましい。一方、前記(メタ)アクリル酸アクリルエステルとして(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等を用いることによって、水性粘着剤に優れた耐熱接着力や接着保持力等の粘着性能を付与することも可能である。
【0064】
また、前記アクリル樹脂(C)の製造に使用可能な前記カルボキシル基を有するビニル単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸β−カルボキシエチル、2−(メタ)アクリロイルプロピオン酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸ハーフエステル、マレイン酸ハーフエステル、無水マレイン酸、無水イタコン酸、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンサクシネート、β−(メタ)ヒドロキシエチルハイドロゲンフタレート、及びこれらの塩等を、単独または2種以上を併用して用いることができる。なかでも、前記カルボキシル基を有するビニル単量体としては、(メタ)アクリル酸を用いることが好ましい。
【0065】
前記カルボキシル基を有するビニル単量体を用いることによって、アクリル樹脂(C)中にカルボキシル基やカルボキシレート基を導入することができる。かかるカルボキシル基等は、例えば、エポキシ架橋剤、オキサゾリン架橋剤、カルボジイミド架橋剤、シラン架橋剤等を組み合わせ使用する場合に、該架橋剤が有する官能基と反応する。これにより、耐熱接着力や接着保持力等の粘着性能に優れた粘着層を形成することができる。また、前記カルボキシル基等が導入されることによって、前記アクリル樹脂(C)に良好な水分散安定性を付与することができる。
【0066】
また、前記アクリル樹脂(C)の製造に用いることができる前記水酸基を有するビニル単量体としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等を用いることができる。
【0067】
前記水酸基を有するビニル単量体を用いることによって、アクリル樹脂(C)中に水酸基を導入することができる。かかる水酸基は、例えばポリイソシアネート架橋剤等を組み合わせ使用する場合に、該架橋剤が有するイソシアネート基と反応する。これにより、耐熱接着力や接着保持力保持力等の粘着性能に優れた粘着層を形成することができる。
【0068】
前記アクリル樹脂(C)の製造に用いるビニル単量体としては、前記したものの他に、必要に応じてその他のビニル単量体を用いることもできる。
【0069】
その他のビニル単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N−モノアルキルアミノアルキル、(メタ)アクリル酸N,N−ジアルキルアミノアルキル、(メタ)アクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、アクロレイン、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、アミルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル類;(メタ)アクリロニトリル等のビニル系ニトリル類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルアニソール、α−ハロスチレン、ビニルナフタリン等の芳香族環を有するビニル系単量体;イソプレン、ブタジエン、エチレン等の官能基を有しないビニル系単量体;ビニルピロリドン等の複素環式ビニル系単量体等を用いることもできる。
【0070】
本発明で用いるアクリル樹脂(C)としては、前記ビニル単量体からなる混合物の全量に対して、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルを45質量%〜99質量%、及び、カルボキシル基含有ビニル単量体を0.5質量%〜5質量%含むビニル単量体混合物を重合して得られたものを用いることが好ましく、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルを70質量%〜99質量%、及び、カルボキシル基含有ビニル単量体を0.5質量%〜5質量%含むビニル単量体混合物を重合して得られたものを用いることが、被着体に対する優れた接着性や耐水接着力を備えた水性粘着剤を得るうえでより好ましい。
【0071】
前記アクリル樹脂(C)は、例えば、前記ビニル単量体を、重合開始剤と水性媒体(B)と必要に応じて界面活性剤の存在下で乳化重合することによって製造することができる。
【0072】
前記乳化重合は、概ね0℃〜80℃程度の温度範囲で約3時間〜10時間程度反応させ、前記ビニル単量体のラジカル重合を乳化重合法により行うことが好ましい。
【0073】
また、前記アクリル樹脂(C)の製造に使用可能な界面活性剤としては、例えば陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤等を用いることができる。なかでも、陰イオン性界面活性剤を用いることが、粘着剤の機械的安定性を向上するうえで好ましい。前記界面活性剤としては、前記ビニル重合体(A)を製造する際に使用可能なものとして例示したものと同様のものを用いることができる。
【0074】
本発明の水性粘着剤用組成物は、前記した成分のほかに、必要に応じてそのほかの添加剤を含んでいてもよい。
【0075】
前記添加剤としては、例えば架橋剤や架橋触媒、着色剤、顔料などの粉体、界面活性剤、可塑剤、粘着性付与剤、低分子量ポリマー、表面平滑剤、レベリング剤、酸化防止剤、腐食防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、シランカップリング剤、無機または有機の充填剤、金属粉、粒子状、箔状物などを使用する用途に応じて適宜添加することができる。
【0076】
前記架橋剤は、水性粘着剤用組成物に適度な粘着力を粘着剤に付与することができる。
架橋剤を使用する場合には、前記アクリル樹脂(C)等として、架橋剤と反応しうる官能基、具体的には、前記した水酸基やカルボキシル基等を有するものを用いることが好ましい。
【0077】
前記架橋剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネート、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物等のイソシアネート架橋剤、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル等のエポキシ架橋剤、メチル化トリメチロールメラミン、ブチル化ヘキサメチロールメラミン等の多官能性メラミン化合物、オキサゾリン架橋剤、カルボジイミド架橋剤、シラン架橋剤、アジリジン架橋剤、有機金属架橋剤等の外部添加架橋剤等を用いることができる。なかでも、エポキシ架橋剤、オキサゾリン架橋剤、シラン架橋剤、イソシアネート架橋剤を用いることが好ましい。イソシアネート架橋剤としては、耐黄変性を向上させる観点から脂肪族系イソシアネートト架橋剤を用いることが好ましい。
【0078】
前記架橋剤の使用量は、特に制限されないが、例えば、アクリル樹脂(C)の全量に対して、通常、0.01質量%〜5質量%が好ましく、0.01質量%〜3質量%の範囲であることがより好ましい。
【0079】
本発明の水性接着剤用組成物は、例えば前記方法で予め製造した粘着付与剤と、前記方法で製造したアクリル樹脂(C)の水分散液等とを混合することによって製造することができる。
【0080】
前記方法等で得られた本発明の水性接着剤用組成物は、もっぱら水性粘着剤に使用することができる。
【0081】
前記水性粘着剤は、例えば支持体の片面または両面に粘着層を有する粘着シートの製造に使用することができる。また、支持体を有しない粘着層のみからなる粘着シートの製造に使用することもできる。
【0082】
前記粘着シートは、例えば支持体の片面または両面に、前記水性粘着剤を塗工し、水性媒体(B)を乾燥し除去することによって製造することができる。
【0083】
前記水性粘着剤の塗工は、例えばロールコーター、グラビアコーター、リバースコーター、リップコーター、スプレーコーター、エアーナイフコーター、ダイコーター等を用いて行うことができる。
【0084】
また、前記粘着シートに離型フィルムを貼付する場合には、前記方法で得られた粘着シートの表面に離型フィルムを貼付する方法や、離型フィルム上に前記水性粘着剤を塗工し、水性媒体(B)を除去等した後、その粘着剤層表面に支持体を貼付する方法が挙げられる。
【0085】
前記粘着シートが有する粘着剤層は、使用する水性粘着剤に含まれる官能基の種類や量、重合条件、架橋剤の種類や量を適宜選択することによって、10質量%〜90質量%となるように調整することが好ましい。特に、粗面や低極性被着体等の難接着面への接着性、貼付する部材の反発力や寸法変化に耐えうる接着性や、高温下での凝集力等を両立させるために、ゲル分率は30質量%〜50質量%であることがより好ましい。
【0086】
なお、本明細書において、ゲル分率とは、ゲル分の含有量のことを意味し、例えば、粘着層をテトラヒドロフラン、酢酸エチル、トルエン等の良溶媒に浸漬した後、乾燥させたものの質量と、浸漬前の粘着層の質量との比を測定することにより求めることができる。
ゲル分率は、アクリル樹脂(C)の重合中に開始剤による水素引き抜きによる分岐や架橋剤を使用することで調整することができる。架橋剤は、アクリル樹脂(C)の重合中に使用することもでき、またアクリル樹脂(C)と粘着付与剤との混合後に使用してもよい。
また架橋方法も熱架橋や光架橋といった従来公知のものを使用することができる。架橋剤により粘着剤としての凝集力を一層大きくすることが可能となる。
【0087】
前記支持体としては、発泡体、フィルム、不織布、紙等を用いることができる。
【0088】
前記発泡体の材質としては、ウレタン、EPDM、ポリエチレン等を使用することができる。前記フィルムの材質としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ABS,ポリカーボネート、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリビニルアルコール、セロファン等を用いることができる。前記不織布の材質としては、綿、麻、パルプ、レーヨン、アセテート繊維、ポリエステル繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリアミド繊維等、及びこれらの混合物等を用いることができる。さらに、必要に応じて、ビスコース含浸や熱可塑性樹脂をバインダーとした含浸処理を施しても良い。
【0089】
本発明の粘着付与剤を含む水性粘着剤であれば、前記支持体として、比較的親水性である表面に塗布等した場合であっても、湿気等の影響によらず優れた密着性を維持することが可能である。
【0090】
前記支持体の表面は、前記粘着層との密着性を向上する観点から、予めコロナ処理等による易接着表面処理が施されていても良い。
【0091】
前記支持体表面に水性粘着剤を塗工する方法としては、例えばロールコーター、グラビアコーター、リバースコーター、リップコーター、スプレーコーター、エアーナイフコーター、ダイコーター等を用いる方法が挙げられる。
【0092】
前記支持体表面に形成される粘着層の厚みは、特に制限はないが、1μm〜200μmの範囲であることが好ましく、15μm〜70μmの範囲であることがより好ましい。
【実施例】
【0093】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【0094】
《合成例1》(アクリル樹脂(C−1)の合成例)
攪拌装置を備えた容器に、重合性界面活性剤としてラテムルPD−104(花王株式会社製、オキシエチレンの付加モル数が15モルであり、オキシブチレンの付加モル数が6モルであるポリオキシチレン−ポリオキシブチレン構造と、硫酸エステル構造とを有するポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩である重合性界面活性剤、不揮発分20質量%)を5質量部及びアクアロンKH−1025(第一工業製薬株式会社製、オキシエチレンの付加モル数が10モルであるポリオキシエチレン構造と、硫酸エステル構造とを有するポリオキシエチレン−1−(アリルオキシメチル)アルキル硫酸エステルアンモニウム塩である重合性界面活性剤、不揮発分20質量%)を5.6質量部、アクリル酸2−エチルヘキシルを45.5質量部、アクリル酸ブチルを45.5質量部、メタクリル酸メチルを5質量部、N−ビニルピロリドン1.5質量部ならびにアクリル酸を2.5質量部を仕込み、攪拌することによって、乳化液を調製した。
【0095】
温度計、滴下装置、還流冷却管及び攪拌装置を備えた重合容器内を窒素ガスで置換し、イオン交換水55.5質量部を仕込み、攪拌しながら内温を60℃に昇温した。
【0096】
前記重合容器内に、前記乳化液の全量に対して1質量%の量の乳化液を仕込んだ後、ピロ亜硫酸ナトリウム水溶液(不揮発分3質量%)を1質量部、過硫酸アンモニウム水溶液(不揮発分3質量%)を1質量部添加し、重合を開始した。
【0097】
30分ホールドした後、残りの乳化液(99質量%)と、過硫酸アンモニウム水溶液(不揮発分1質量%)10質量部とを、前記重合容器内に6時間かけて滴下し、重合を行った。
【0098】
滴下終了後、重合容器を内温60℃にて1時間保持し、次いで、重合容器を約25℃に冷却した後、内容物を200メッシュ濾布(ポリエステル)で濾過することによって、不揮発分51.5質量%、粒子径320nm、重量平均分子量80万のアクリル樹脂(C−1)の水分散液を得た。
【0099】
前アクリル樹脂(C−1)の示差走査熱量計(DSC、TAインスツルメント株式会社製)で測定したガラス転移温度(中間点ガラス転移温度)は−43℃であった。以下、本発明では同様の方法で測定した。
【0100】
前記重量平均分子量は、HLC−8220(東ソー株式会社製のGPC)を用い、カラムとして「TSKgel GMHXL」(東ソー株式会社製)を直列に4本使用し、移動相溶媒としてテトラヒドロフランを使用し、その流速を1ml/分に調整し、試料としてアクリル樹脂のテトラヒドロフラン溶液(不揮発分0.4質量%)を用いて測定した。
【0101】
《実施例1》粘着付与剤(1)
攪拌装置を備えた容器に、重合性界面活性剤としてラテムルPD−104(花王株式会社製、オキシエチレンの付加モル数が15モルであり、オキシブチレンの付加モル数が6モルであるポリオキシチレン−ポリオキシブチレン構造と、硫酸エステル構造とを有するポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩である重合性界面活性剤、不揮発分20質量%)を2.5質量部、非重合性界面活性剤としてネオゲンSC−F(第一工業製薬株式会社製、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、不揮発分63質量%)を1.1質量部と、メタクリル酸シクロヘキシルを98質量部、メタクリルアミドを2質量部と、連鎖移動剤としてラウリルメルカプタンを2.2質量部と、イオン交換水を25質量部とを仕込み、攪拌することによって、乳化液を調整した。
【0102】
温度計、滴下装置、還流冷却管及び攪拌装置を備えた重合容器内を窒素ガスで置換し、重合性界面活性剤として前記ラテムルPD−104を12.5質量部、非重合性界面活性剤として前記ネオゲンSC−Fを0.8質量部とイオン交換水167.5質量部を仕込み、攪拌しながら容器内を130℃に昇温した。
【0103】
前記重合容器に、過酸化水素水溶液(不揮発分12.4質量%)10.2質量部を仕込み、15分ホールドした後、前記乳化液と、過酸化水素水溶液(不揮発分12.4質量%)30.5質量部とを、前記重合容器内に3時間かけて滴下した。
【0104】
滴下終了後、重合容器を内温130℃にて1時間保持し、次いで、重合容器を約25℃に冷却した後、内容物を200メッシュ濾布(ポリエステル)で濾過することによって、不揮発分30質量%、粒子径101nm、重量平均分子量5000のビニル重合体(1)を含む粘着付与剤(1)を得た。
【0105】
《実施例2》粘着付与剤(2)
攪拌装置を備えた容器に、重合性界面活性剤としてラテムルPD−104(花王株式会社製、オキシエチレンの付加モル数が15モルであり、オキシブチレンの付加モル数が6モルであるポリオキシチレン−ポリオキシブチレン構造と、硫酸エステル構造とを有するポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩である重合性界面活性剤、不揮発分20質量%)を2.5質量部、非重合性界面活性剤としてネオゲンSC−F(第一工業製薬株式会社製、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、不揮発分63質量%)を1.1質量部と、メタクリル酸シクロヘキシルを95質量部、メタクリルアミドを5質量部と、連鎖移動剤としてラウリルメルカプタンを4.0質量部と、イオン交換水を25質量部とを仕込み、攪拌することによって、乳化液を調整した。
【0106】
温度計、滴下装置、還流冷却管及び攪拌装置を備えた重合容器内を窒素ガスで置換し、重合性界面活性剤として前記ラテムルPD−104を12.5質量部、非重合性界面活性剤として前記ネオゲンSC−Fを0.8質量部とイオン交換水169.7質量部を仕込み、攪拌しながら容器内を130℃に昇温した。
【0107】
前記重合容器に、過酸化水素水溶液(不揮発分12.4質量%)10.2質量部を仕込み、15分ホールドした後、前記乳化液と、過酸化水素水溶液(不揮発分12.4質量%)30.5質量部とを、前記重合容器内に3時間かけて滴下した。
【0108】
滴下終了後、重合容器を内温130℃にて1時間保持し、次いで、重合容器を約25℃に冷却した後、内容物を200メッシュ濾布(ポリエステル)で濾過することによって、不揮発分30.2質量%、粒子径134nm、重量平均分子量5100のビニル重合体(2)を含む粘着付与剤(2)を得た。
【0109】
《実施例3》粘着付与剤(3)
攪拌装置を備えた容器に、重合性界面活性剤としてラテムルPD−104(花王株式会社製、オキシエチレンの付加モル数が15モルであり、オキシブチレンの付加モル数が6モルであるポリオキシチレン−ポリオキシブチレン構造と、硫酸エステル構造とを有するポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩である重合性界面活性剤、不揮発分20質量%)を2.5質量部、非重合性界面活性剤としてネオゲンSC−F(第一工業製薬株式会社製、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、不揮発分63質量%)を1.1質量部と、メタクリル酸シクロヘキシルを98質量部、ジメチルアクリルアミドを2質量部と、連鎖移動剤としてラウリルメルカプタンを2.2質量部と、イオン交換水を25質量部とを仕込み、攪拌することによって、乳化液を調整した。
【0110】
温度計、滴下装置、還流冷却管及び攪拌装置を備えた重合容器内を窒素ガスで置換し、重合性界面活性剤として前記ラテムルPD−104を12.5質量部、非重合性界面活性剤として前記ネオゲンSC−Fを0.8質量部とイオン交換水167.5質量部を仕込み、攪拌しながら容器内を130℃に昇温した。
【0111】
前記重合容器に、過酸化水素水溶液(不揮発分12.4質量%)10.2質量部を仕込み、15分ホールドした後、前記乳化液と、過酸化水素水溶液(不揮発分12.4質量%)30.5質量部とを、前記重合容器内に3時間かけて滴下した。
【0112】
滴下終了後、重合容器を内温130℃にて1時間保持し、次いで、重合容器を約25℃に冷却した後、内容物を200メッシュ濾布(ポリエステル)で濾過することによって、不揮発分30.4質量%、粒子径98nm、重量平均分子量4500のビニル重合体(3)を含む粘着付与剤(3)得た。
【0113】
《比較例1》比較用粘着付与剤(1’)
攪拌装置を備えた容器に、非重合性界面活性剤としてネオゲンSC−Fを1.8質量部と、メタクリル酸シクロヘキシルを100質量部と、イオン交換水を22質量部とを仕込み、攪拌することによって、乳化液を調製した。
【0114】
温度計、滴下装置、還流冷却管及び攪拌装置を備えた加圧密閉重合容器内を窒素ガスで置換し、非重合性界面活性剤としてネオゲンSC−Fを3.5質量部とイオン交換水182.2質量部を仕込み、攪拌しながら容器内を130℃に昇温した。
【0115】
前記重合容器内に、過酸化水素水溶液(不揮発分12.4質量%)10.2質量部を仕込み、15分ホールドした後、前記乳化液と、過酸化水素水溶液(不揮発分12.4質量%)30.5質量部とを、前記重合容器内に3時間かけて滴下した。
【0116】
滴下終了後、重合容器を内温130℃にて1時間保持し、次いで、重合容器を約25℃に冷却した後、内容物を200メッシュ濾布(ポリエステル)で濾過することによって、固形分29.4質量%、粒子径114nm、重量平均分子量5500のビニル重合体(1’)を含む粘着付与剤(1’)得た。
【0117】
《比較例2》比較用粘着付与剤(2’)
攪拌装置を備えた容器に、重合性界面活性剤としてラテムルPD−104を2.5質量部、非重合性界面活性剤としてネオゲンSC−Fを1.1質量部と、メタクリル酸シクロヘキシルを100質量部と、イオン交換水を25質量部とを仕込み、攪拌することによって、乳化液を調製した。
【0118】
温度計、滴下装置、還流冷却管及び攪拌装置を備えた加圧密閉重合容器内を窒素ガスで置換し、重合性界面活性剤としてラテムルPD−104を12.5質量部、非重合性界面活性剤としてネオゲンSC−Fを0.8質量部とイオン交換水169.7質量部を仕込み、攪拌しながら容器内を130℃に昇温した。
【0119】
前記重合容器内に、過酸化水素水溶液(不揮発分12.4質量%)10.2質量部を仕込み、15分ホールドした後、前記乳化液と、過酸化水素水溶液(不揮発分12.4質量%)30.5質量部とを、前記重合容器内に3時間かけて滴下した。
【0120】
滴下終了後、重合容器を内温130℃にて1時間保持し、次いで、重合容器を約25℃に冷却した後、内容物を200メッシュ濾布(ポリエステル)で濾過することによって、固形分29.6質量%、粒子径78nm、重量平均分子量5300のビニル重合体(2’)を含む粘着付与剤(2’)得た。
【0121】
《実施例4》
前記アクリル樹脂(C−1)の水分散液194.2質量部と、前記粘着付与剤(1)83.3質量部とを混合した後、12.5質量%のアンモニア水とボンコート3750−E(DIC株式会社製の増粘剤、不揮発分23質量%)とを混合することによって、pH8、BM粘度10000mPa・sに調整された混合物を得た。
次いで、架橋剤としてTETRAD−C(三菱ガス化学株式会社製、油溶性エポキシ化合物)のエタノール溶液(不揮発分10質量%)を0.29質量部を混合し、200メッシュ濾布(ポリエステル)で濾過することによって、水性粘着剤(1)を得た。
【0122】
《実施例5》
前記アクリル樹脂(C−1)の水分散液194.2質量部と、前記粘着付与剤(2)82.8質量部とを混合した後、12.5質量%のアンモニア水とボンコート3750−E(DIC株式会社製の増粘剤、不揮発分23質量%)とを混合することによって、pH8、BM粘度10000mPa・sに調整された混合物を得た。
次いで、架橋剤としてTETRAD−C(三菱ガス化学株式会社製、油溶性エポキシ化合物)のエタノール溶液(不揮発分10質量%)を0.29質量部を混合し、200メッシュ濾布(ポリエステル)で濾過することによって、水性粘着剤(2)を得た。
【0123】
《実施例6》
前記アクリル樹脂(C−1)の水分散液194.2質量部と、前記粘着付与剤(3)82.2質量部とを混合した後、12.5質量%のアンモニア水とボンコート3750−E(DIC株式会社製の増粘剤、不揮発分23質量%)とを混合することによって、pH8、BM粘度10000mPa・sに調整された混合物を得た。
次いで、架橋剤としてTETRAD−C(三菱ガス化学株式会社製、油溶性エポキシ化合物)のエタノール溶液(不揮発分10質量%)を0.28質量部を混合し、200メッシュ濾布(ポリエステル)で濾過することによって、水性粘着剤(3)を得た。
【0124】
《比較例3》
前記アクリル樹脂(C−1)の水分散液194.2質量部と、スーパーエステルE−865NT(荒川化学株式会社製、重合ロジンエマルジョンを含む粘着付与剤、不揮発分50%)を50質量部とを混合した後、12.5質量%のアンモニア水とボンコート3750−E(DIC株式会社製の増粘剤、不揮発分23質量%)とを混合することによって、pH8、BM粘度10000mPa・sに調整された混合物を得た。
次いで、架橋剤としてTETRAD−C(三菱ガス化学株式会社製、油溶性エポキシ化合物)のエタノール溶液(不揮発分10質量%)を0.27質量部を混合し、200メッシュ濾布(ポリエステル)で濾過することによって、水性粘着剤(3’)を得た。
【0125】
《比較例4》
前記アクリル樹脂(C−1)の水分散液194.2質量部と、前記粘着付与剤(1’)85質量部を50質量部とを混合した後、12.5質量%のアンモニア水とボンコート3750−E(DIC株式会社製の増粘剤、不揮発分23質量%)とを混合することによって、pH8、BM粘度10000mPa・sに調整された混合物を得た。
次いで、架橋剤としてTETRAD−C(三菱ガス化学株式会社製、油溶性エポキシ化合物)のエタノール溶液(不揮発分10質量%)を0.27質量部を混合し、200メッシュ濾布(ポリエステル)で濾過することによって、水性粘着剤(3’)を得た。
【0126】
《比較例5》
前記アクリル樹脂(C−1)の水分散液194.2質量部と、前記粘着付与剤(2’)84.5質量部とを混合した後、12.5質量%のアンモニア水とボンコート3750−E(DIC株式会社製の増粘剤、不揮発分23質量%)とを混合することによって、pH8、BM粘度10000mPa・sに調整された混合物を得た。
次いで、架橋剤としてTETRAD−C(三菱ガス化学株式会社製、油溶性エポキシ化合物)のエタノール溶液(不揮発分10質量%)を0.23質量部を混合し、200メッシュ濾布(ポリエステル)で濾過することによって、水性粘着剤(4’)を得た。
【0127】
[粘着シートの作製]
前記水性粘着剤を、アプリケーターを用いて厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートからなるフィルムの表面に、乾燥し形成される粘着剤層の厚みが60μmとなるように塗布した。
【0128】
次いで、前記塗布膜を100℃の乾燥オーブン中で3分間乾燥し、前記塗布膜の表面に、離型処理の施された厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートからなる離型フィルムを載置し、5kgのローラーを用いて1往復荷重することによって、それらを圧着し積層体を得た。
【0129】
得られた積層体を40℃の雰囲気下に48時間静置し、エージングすることによって、粘着シートとした。
【0130】
[ゲル分率の評価方法]
前記方法で作製した粘着シートを縦20mm及び横100mmの大きさに切り取ったものを試験片とした。前記試験片から25μm離型フィルムを除去した粘着剤層と支持体との合計質量を、精密天秤を用いて測定した(W1)。
【0131】
次に、前記粘着剤層を50ccのトルエン中に24時間浸漬した後、100℃の乾燥オーブン中で2時間乾燥した。乾燥後の粘着剤層の質量(W2)を、精密天秤を用いて測定した。
【0132】
ゲル分率は、(質量(W2)−支持体の質量)/(質量(W1)−支持体)×100に基づいて算出した。
【0133】
[接着性の評価方法]
接着性は、下記の接着力(粘着シート製造直後)と、定荷重保持力とによって評価した。
[接着力(粘着シート製造直後)の評価方法]
前記方法で得られた粘着シートを幅20mm×長さ100mmの大きさに切り取ったものを試験片とした。23℃、湿度50%の雰囲気下で、前記試験片から離型フィルムを除去し、その粘着剤層表面にSUS(BA)基材(株式会社エンジニアリングテストサービス製)を載置し、その上部から5kgロール1往復の荷重をかけることにより、それらを貼り合わせ、1時間静置した。
【0134】
次いで、23℃、湿度50%の雰囲気下で、前記粘着シートからなる粘着層と、前記SUS基材との間の接着強度を、JIS Z 0237に準拠し、180度方向300mm/minの速度で剥離した際の剥離強度を測定した。
【0135】
[湿熱試験後の接着力の評価方法]
前記方法で得られた粘着シートを幅20mm×長さ100mmの大きさに切り取ったものを試験片とした。23℃、湿度50%の雰囲気下で、前記試験片から離型フィルムを除去し、その粘着剤層表面にSUS基材を載置し、その上部から5kgロール1往復の荷重をかけることにより、それらを貼り合わせた。
【0136】
次いで、前記粘着シートと前記ポリプロピレン基材とからなる積層体を、70℃、湿度95%の雰囲気下に500時間静置した後、23℃、湿度50%の雰囲気下に取り出し、1時間静置した後、前記粘着シートからなる粘着層と、前記SUS基材との間の接着強度を、23℃、湿度50%の雰囲気下で、JIS Z 0237に準拠し、180度方向300mm/minの速度で剥離した際の剥離強度を測定した。
【0137】
[耐湿熱性の評価方法]
耐湿熱性は、粘着シートの製造直後の接着力に対する、湿熱試験後の接着力の割合(保持率)に基づいて評価した。具体的には、〔(湿熱試験後の接着力)/(製造直後の接着力)〕×100(%)の式に基づいて算出した保持率に基づいて評価した。
【0138】
前記保持率が、80%以上である場合に「◎」と評価し、60%以上80%未満である場合に「○」と評価し、40%以上60%未満である場合に「△」と評価し、0%以上40%未満である場合に「×」と評価した。
【0139】
[定荷重保持力の評価方法]
前記方法で得られた粘着シートを縦20mm及び横80mmの大きさに切り取ったものを試験片とした。23℃、湿度50%の雰囲気下で、試験片から離型フィルムを除去し、その粘着剤層表面にポリプロピレン基材を載置し、その上部から5kgロール1往復の荷重をかけることにより、それらを貼り合わせた。23℃、湿度50%の雰囲気下に24時間静置した後、90°の角度になるように100gの荷重をかけ、40℃の雰囲気下にセットし、測定を開始した。30分後にずれた距離で評価し、30分未満で落下したものは、その時間を記録した。
なお、ずれた距離が5mm未満である場合に「○」と評価し、5mm以上10mm未満である場合に「△」と評価し、10mm以上である場合に「×」と評価した。
【0140】
【表1】
【0141】
【表2】
【0142】
本発明の粘着付与剤を用いた水性粘着剤である実施例4〜6は、接着性(特に難接着基材への定荷重保持力)や耐湿熱性に優れることが分かった。
【0143】
一方、比較例3は、重合ロジン系の粘着付与剤を用いた態様であるが、耐湿熱性が不良であり、難接着基材であるポリプロピレンへの定荷重保持力も不十分であった。
【0144】
比較例4は、重合性乳化剤を重合していない粘着付与剤を用いた態様であるが、耐湿熱性、ポリプロピレンへの定荷重保持力ともに不良であった。
【0145】
比較例5は、窒素原子を有するビニル単量体を重合していない粘着付与剤を用いた態様であるが、ポリプロピレンへの定荷重保持力が不十分であった。