(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(D)成分が、メルカプトベンゾオキサゾール、メルカプトベンゾイミダゾール及びメルカプトベンゾトリアゾールからなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
前記(A)成分が、(メタ)アクリル酸に基づく構造単位、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに基づく構造単位及びスチレン又はスチレン誘導体に基づく構造単位を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、本明細書における(メタ)アクリル酸とはアクリル酸及びメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリレートとはアクリレート及びそれに対応するメタクリレートを意味する。
【0029】
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)バインダーポリマー、(B)光重合性化合物、(C)光重合開始剤及び、(D)メルカプト基含有水素供与体を含み、上記(B)光重合性化合物が、エチレン性不飽和基及びイソシアヌル環構造を有する光重合性化合物を含有してなる。
【0030】
上記構成を有することによる効果の発現機構は必ずしも明らかではないが、本発明者は以下のように推察する。
即ち、露光時に(D)成分から水素が供与されることにより、感度及び基板との密着性などの特性を損なうことなく、露光時のイメージング性を向上することが可能となるためと推察する。より具体的には、従来、パターニング性を良好にするために、(C)光重合開始剤の水素供与体としてロイコクリスタルバイオレットが用いられていたが、ロイコクリスタルバイオレットは、露光後にクリスタルバイオレットとなり発色することで樹脂を着色する。これに対し、本発明で使用する(D)メルカプト基含有水素供与体は、発色せずに水素を供与することが可能であるため、透明性を損なうことなくパターニング性を良好にすることができる。
【0031】
以下、各成分について詳細に説明する。
【0032】
(A)成分:バインダーポリマー
本発明における(A)バインダーポリマーとしては、例えば、アクリル樹脂、スチレン樹脂、エポキシ樹脂、アミド樹脂、アミドエポキシ樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂が挙げられる。(A)バインダーポリマーとしては、アルカリ現像性の観点からは、アクリル樹脂が好ましい。これらは単独で、又は2種類以上のバインダーポリマーを組み合わせて用いることができる。
【0033】
(A)成分のバインダーポリマーは、(メタ)アクリル酸に基づく構造単位、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに基づく構造単位及びスチレン又はスチレン誘導体に基づく構造単位を有することが好ましい。
【0034】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル、及びこれらの構造異性体が挙げられる。これらは、単独で、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
(A)バインダーポリマーは、アルカリ現像性の見地から、カルボキシル基を含有していることが好ましく、例えば、カルボキシル基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体をラジカル重合させることにより製造することができる。上記カルボキシル基を有する重合性単量体としては、現像性及び安定性の観点から(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0036】
(A)成分は、耐光性と、解像度及び密着性を良好にする観点から、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ブチル誘導体、スチレン及びスチレン誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合性単量体に基づく構成単位を有することが好ましい。また、(メタ)アクリル酸ブチル及び(メタ)アクリル酸ブチル誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種と、スチレン及びスチレン誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種とを双方含むことがより好ましい。すなわち、(A)成分は、これらの重合性単量体をラジカル重合させることにより得られるものであることが好ましく、これらの重合性単量体に由来する構成単位を有するものであることが好ましい。
【0037】
(A)成分が、(メタ)アクリル酸ブチル及び(メタ)アクリル酸ブチル誘導体に基づく構成単位を有する場合、その含有量は、密着性及び剥離性に優れる点では、(A)成分を構成する重合性単量体の全質量を基準として1〜50質量%であることが好ましく、5〜40質量%であることがより好ましく、5〜35質量%であることが更に好ましく、10〜30質量%であることが特に好ましい。
【0038】
(A)成分が、スチレン又はその誘導体に基づく構成単位を有する場合、その含有量は、密着性及び剥離性に優れる点では、(A)成分を構成する重合性単量体の全質量を基準として10〜70質量%であることが好ましく、15〜60質量%であることがより好ましく、20〜50質量%であることが更に好ましく、25〜45質量%であることが特に好ましい。
【0039】
また、(A)成分は、アルカリ現像性及び剥離特性を向上させる観点から、(メタ)アクリル酸ブチル及び(メタ)アクリル酸ブチル誘導体以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステルに基づく構成単位を有することが好ましい。
【0040】
(A)成分が、(メタ)アクリル酸ブチル及び(メタ)アクリル酸ブチル誘導体以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステルに基づく構成単位を有する場合、その含有量は、剥離性、解像度及び密着性に優れる点では、(A)成分を構成する重合性単量体の全質量を基準として1〜50質量%であることが好ましく、5〜45質量%であることがより好ましく、10〜40質量%であることが更に好ましく、15〜40質量%であることが特に好ましい。
【0041】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルに基づく構成単位としては、(メタ)アクリル酸メチル又は(メタ)アクリル酸エチルを含有することが好ましい。
【0042】
(A)バインダーポリマーの酸価は、解像性の観点から30mgKOH/g以上であることが好ましく、80mgKOH/g以上であることがより好ましく、130mgKOH/g以上であることが更に好ましく、180mgKOH/以上であることが特に好ましい。また、(A)バインダーポリマーの酸価は、耐現像液性及び密着性の観点から250mgKOH/g以下であることが好ましく、240mgKOH/g以下であることがより好ましく、230mgKOH/g以下であることが更に好ましく、220mgKOH/g以下であることが特に好ましい。現像工程として溶剤による現像を行う場合は、カルボキシル基を有する重合性単量体の使用量を抑えて調製することが好ましい。
【0043】
(A)バインダーポリマーの重量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、標準ポリスチレンを用いた検量線により換算)は、耐現像液性の観点から20,000以上であることが好ましく、25,000以上であることがより好ましく、30,000以上であることが更に好ましく、40,000以上であることが特に好ましい。また、(A)バインダーポリマーの重量平均分子量は、現像時間を短くできる観点から300,000以下であることが好ましく、150,000以下であることがより好ましく、100,000以下であることが更に好ましく、90,000以下であることが特に好ましい。
【0044】
(B)成分:光重合性化合物
本実施形態に用いることのできる(B)成分としては、エチレン性不飽和基及びイソシアヌル環構造を有する光重合性化合物を含む。その他の光重合性化合物としては、光架橋が可能であれば特に制限はないが、例えば、(B1)成分:エチレン性不飽和基及びウレタン結合を有する化合物、(B2)成分:多価アルコール及び/又はグリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、(B3)成分:分子内にエチレン性不飽和結合を1つ有する化合物が挙げられる。
【0045】
エチレン性不飽和基及びイソシアヌル環構造を有する化合物
本実施形態において用いることのできるエチレン性不飽和基及びイソシアヌル環構造を有する光重合性化合物としては、イソシアヌル環構造を有する化合物を含有すれば特に制限は無いが、密着性に優れる点では、例えば、下記一般式(I)で表される化合物が挙げられる。
【0046】
【化1】
[一般式(I)中、R
1は、各々独立に、下記一般式(II)で表される基、下記一般式(III)で表される基、又は、下記一般式(IV)で表される基を示す。但し、R
1の少なくとも1つは、下記一般式(II)又は下記一般式(IV)で表される基である。]
【0047】
【化2】
[一般式(II)中、R
2は、水素原子又はメチル基を示し、mは1〜14の整数である。]
【0048】
【化3】
[一般式(III)中、mは1〜14の整数である。]
【0049】
【化4】
[一般式(IV)中、R
2は水素原子又はメチル基を示し、nは1〜9の整数であり、mは1〜14の整数である。]
【0050】
上記光重合性化合物は、分子内に少なくとも1つの水酸基を含むことが好ましい。即ち、R
1の少なくとも1つは一般式(III)であることが好ましい。
【0051】
一般式(II)又は一般式(III)中、mは、1〜14の整数であり、1〜6の整数であることが好ましい。mを14以下とすることにより、耐薬品性を向上させることができる。また、一般式(IV)中、mは、1〜14の整数であり、1〜6の整数であることが好ましく、nは、1〜9の整数であり、3〜6の整数であることが好ましい。mを14以下とすることにより、耐薬品性を向上させることができ、nを9以下とすることにより、機械強度を向上させることができる。
【0052】
エチレン性不飽和基及びイソシアヌル環構造を有する光重合性化合物として、一般式(V)で表される化合物が好ましい。
【0054】
分子内に少なくとも1つの水酸基、少なくとも1つのエチレン性不飽和基及びイソシアヌル環構造を有する光重合性化合物として、一般式(VI)で表される化合物が好ましい。
【0056】
上記一般式(I)で表される化合物で、市販のものとしては、例えば、NKオリゴUA−21(新中村化学工業株式会社製、商品名、一般式(I)中、R
1が全て一般式(IV)で表される基である化合物)、M−315(東亜合成株式会社製、商品名、一般式(I)中、R
1が全て一般式(II)で表される基である化合物)、M−215(東亜合成株式会社製、商品名、一般式(I)中、2つのR
1が一般式(II)で表される基であり、1つのR
1が一般式(III)で表される基である化合物)等が挙げられる。
【0057】
エチレン性不飽和基及びイソシアヌル環構造を有する光重合性化合物の含有量は、密着性及びフィルム形成性の観点から、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、1〜40質量部とすることが好ましく、3〜30質量部とすることがより好ましく、6〜25質量部とすることが更に好ましい。
【0058】
また、本発明の感光性樹脂組成物は、上記一般式(I)で表される化合物を複数含有する混合物を用いてもよい。その場合における混合物全体でのm、nの平均値は、一般式(I)におけるm、nと同一の範囲をとることが好ましいが、m、n自身は整数でなくてもよい。
【0059】
(B1)成分:エチレン性不飽和基及びウレタン結合を有する化合物
また、上記を除く(B1)成分としては、ポリカーボネート化合物及び/又はポリエステル化合物の末端のヒドロキシル基とジイソシアネート化合物のイソシアネート基との反応に由来するウレタン結合を有し、かつ複数の末端にイソシアネート基を有するウレタン化合物と、ヒドロキシル基及びエチレン性不飽和基を有する化合物とを縮合反応させることで得ることができる化合物を含むことが好ましい。
【0060】
これらの化合物は、常法によって合成したものを用いてもよく、市販のものを用いることもできる。市販のものとしては、例えば、UF−8003M、UF−TCB−50、UF−TC4−55(以上商品名、共栄社化学株式会社製)、HT9082−95(商品名、日立化成工業株式会社製)が挙げられる。
【0061】
更に、上記以外の(B1)成分としては、例えば、β位に水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーと、イソホロンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、及び1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物との付加反応物;EO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、EO,PO変性ウレタンジ(メタ)アクリレートが挙げられる。EO変性ウレタンジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、新中村化学工業株式会社製、製品名UA−11が挙げられる。また、EO,PO変性ウレタンジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、新中村化学工業株式会社製、製品名UA−13が挙げられる。ここで、EOは、オキシエチレン基を、POは、オキシプロピレン基を示す。
【0062】
感光性樹脂組成物における上記(B1)成分の含有量は、フィルム形成性に優れる点では、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、5〜25質量部であることが好ましく、10〜25質量部であることがより好ましい。
【0063】
(B2)成分:多価アルコール及び/又はグリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物
(B2)成分としては、例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(エチレン基の数が2〜14のもの)、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(プロピレン基の数が2〜14のもの)等のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロポキシトリ(メタ)アクリレート等のトリメチロールプロパン(メタ)アクリレート化合物;テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート等のテトラメチロールメタン(メタ)アクリレート化合物;ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート化合物;ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート化合物;トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリアクリレート及びビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリレートが挙げられる。
【0064】
中でも、密着性に優れる点では、(B2)成分として、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。
【0065】
ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート化合物としては、下記一般式(VII)で表される化合物が挙げられる。
【0067】
上記一般式(VII)中、R
3及びR
4はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を示す。XO及びYOはそれぞれ独立に、オキシエチレン基又はオキシプロピレン基を示し、これらは相異なる。(XO)m
1、(XO)m
2、(YO)n
1及び(YO)n
2はそれぞれ独立に、(ポリ)オキシエチレン鎖又は(ポリ)オキシプロピレン鎖を示す。m
1、m
2、n
1及びn
2はそれぞれ独立に、0〜40の整数を示す。XOがオキシエチレン基、YOがオキシプロピレン基である場合、m
1+m
2は1〜40の整数、n
1+n
2は0〜20の整数であり、XOがオキシプロピレン基、YOがオキシエチレン基の場合、m
1+m
2は0〜20の整数、n
1+n
2は1〜40の整数である。
【0068】
上記一般式(VII)で表される化合物のうち、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパンは、BPE−500(新中村化学工業株式会社製、商品名)又はFA−321M(日立化成工業株式会社製、商品名)として商業的に入手可能である。2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパンは、BPE−1300(新中村化学工業株式会社製、商品名)として商業的に入手可能である。これらは1種を単独で又は2種類以上を任意に組み合わせて使用される。
【0069】
また、本発明の感光性樹脂組成物は、上記一般式(VII)で表される化合物を複数含有する混合物を用いてもよい。その場合における混合物全体でのm
1、m
2、n
1及びn
2の平均値は、一般式(VII)におけるm
1、m
2、n
1及びn
2と同一の範囲をとることが好ましいが、整数でなくてもよい。
【0070】
感光性樹脂組成物における上記(B2)成分の含有量は、フィルム形成性に優れる点では、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、1〜20質量部であることが好ましく、5〜15質量部であることがより好ましい。
【0071】
(B3)成分:分エチレン性不飽和結合を1つ有する化合物
分子内にエチレン性不飽和結合を1つ有する化合物としては、例えば、ノニルフェノキシポリエチレンオキシアクリレート、フタル酸系化合物及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
【0072】
上記の中でも、解像度、密着性、レジスト形状及び硬化後の剥離特性をバランスよく向上させる観点から、ノニルフェノキシポリエチレンオキシアクリレート又はフタル酸系化合物を含むことが好ましい。
【0073】
(B3)成分としては、特に制限はないが、解像度に優れる点では、下記一般式(VIII)で表される化合物を含むことが好ましい。
【0074】
【化8】
[式(VIII)中、R
5は水素原子又はメチル基を示し、R
6は水素原子、メチル基又はハロゲン化メチル基のいずれかを示し、R
7は炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子、水酸基のいずれかを示し、pは0〜4の整数を示す。なお、pが2以上の場合、複数存在するR
7は同一でも異なっていてもよい。−(O−A)−はオキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基を示し、−(O−A)−の繰り返し総数aは1〜4の整数を示す。]
【0075】
上記一般式(VIII)で表される化合物としては、例えば、γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシエチル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、及びβ−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレートが挙げられ、なかでも、γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレートが好ましい。γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−メタクリロイルオキシエチル−o−フタレートは、FA−MECH(日立化成工業株式会社製、製品名)として商業的に入手可能である。
【0076】
上記(B3)成分は、単独で、又は二種類以上を組み合わせて用いることができるが、中でも、ノニルフェノキシポリエチレンオキシアクリレートと、フタル酸系化合物を併用することが好ましい。
【0077】
感光性樹脂組成物における上記(B3)成分の含有量は、フィルム形成性に優れる点では、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、1〜15質量部であることが好ましく、5〜15質量部であることがより好ましい。
【0078】
上記(B)成分は、単独で、又は二種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0079】
感光性樹脂組成物におけるエチレン性不飽和基及びイソシアヌル環構造を有する化合物、(B1)成分、(B2)成分、並びに(B3)成分の合計含有量は、解像度及び密着性と、フィルム形成性の観点から、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、25〜65質量部の範囲とすることが好ましく、30〜55質量部とすることがより好ましい。
【0080】
(C)成分:光重合開始剤
(C)成分は、透明性を確保しつつ、密着性が高いレジストパターンを形成する点で、2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体を含むことが好ましい。それらの中でも、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体又は炭素数が1〜5のアルコキシ基を一つ以上有する2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体を含むことがより好ましく、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体を含むことが更に好ましい。2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体はその構造が対称であっても非対称であってもよい。また、その他の光重合開始剤を併用して用いてもよい。
【0081】
上記(C)光重合開始剤の含有量は、感度、密着性及び光硬化物の底部の硬化性の観点から、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましく、0.2〜10質量部であることがより好ましい。(C)成分中の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体の含有量としては、密着性及び現像処理時の現像スラッジ抑制の観点から、(C)成分の総量を基準として10〜90質量%であることが好ましく、20〜80質量%であることがより好ましい。
【0082】
(D)成分:メルカプト基含有水素供与体
上記(D)成分のメルカプト基含有水素供与体としては、メルカプト基を含有する限り、本発明の効果を阻害しない範囲であれば特に制限無く使用することができる。露光後の樹脂透明性に優れる点では、芳香族環を含むメルカプト基含有水素供与体化合物を含むことが好ましい。これらの中でも、光重合開始剤と組み合わせて感度、解像度、密着性などの特性が良好であり、工業的に入手可能な観点から、メルカプトベンゾオキサゾール、メルカプトベンゾイミダゾール、メルカプトベンゾトリアゾールから選択される少なくとも一種を含むことがより好ましく、メルカプトベンゾイミダゾール、メルカプトベンゾトリアゾールから選択される少なくとも一種を含むことがさらに好ましい。
【0083】
(E)成分:増感剤
本実施形態の感光性樹脂組成物は、(E)成分として増感剤(増感色素)の少なくとも1種を含有することができる。(E)成分である増感剤としては、例えば、ジアルキルアミノベンゾフェノン化合物、ピラゾリン化合物、アントラセン化合物、クマリン化合物、キサントン化合物、チオキサントン化合物、オキサゾール化合物、ベンゾオキサゾール化合物、チアゾール化合物、ベンゾチアゾール化合物、トリアゾール化合物、スチルベン化合物、トリアジン化合物、チオフェン化合物、ナフタルイミド化合物、トリアリールアミン化合物、及びアミノアクリジン化合物が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0084】
特に、340〜430nmの活性光線を用いて感光性樹脂組成物層の露光を行う場合には、感度及び密着性の観点から、(E)成分は、ジアルキルアミノベンゾフェノン化合物、ピラゾリン化合物、アントラセン化合物、クマリン化合物、トリアリールアミン化合物、チオキサントン化合物及びアミノアクリジン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の増感剤を含むことが好ましく、中でもジアルキルアミノベンゾフェノン化合物、ピラゾリン化合物、アントラセン化合物、及びトリアリールアミン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことがより好ましく、ピラゾリン化合物の少なくとも1種を含むことが更に好ましい。
【0085】
上記感光性樹脂組成物における(E)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して0.01質量部〜10質量部とすることが好ましく、0.05質量部〜5質量部とすることがより好ましく、0.1質量部〜3質量部とすることが更に好ましい。この含有量が0.01質量部以上であると、より優れた感度及び解像度が得られ易くなる傾向があり、10質量部以下であると、十分に良好なレジスト形状が得られ易くなる傾向がある。
【0086】
上記ピラゾリン化合物としては、特に制限なく用いることができる。具体的には、1−フェニル−3−(4−イソプロピルスチリル)−5−(4−イソプロピルフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−tert−ブチル−スチリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−メトキシスチリル)−5−(4−メトキシフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(3,5−ジメトキシスチリル)−5−(3,5−ジメトキシフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(3,4−ジメトキシスチリル)−5−(3,4−ジメトキシフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(2,6−ジメトキシスチリル)−5−(2,6−ジメトキシフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(2,5−ジメトキシスチリル)−5−(2,5−ジメトキシフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(2,3−ジメトキシスチリル)−5−(2,3−ジメトキシフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(2,4−ジメトキシスチリル)−5−(2,4−ジメトキシフェニル)−ピラゾリンが挙げられる。
【0087】
また、1−フェニル−3,5−ビス(4−tert−ブチルフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3,5−ビス(4−メトキシフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−ビフェニル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−ビフェニル)−5−(4−tert−オクチルフェニル)−ピラゾリンが挙げられる。
【0088】
これらの中でも、1−フェニル−3−(4−イソプロピルスチリル)−5−(4−イソプロピルフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−tert−ブチル−スチリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−メトキシスチリル)−5−(4−メトキシフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3,5−ビス(4−tert−ブチルフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3,5−ビス(4−メトキシフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−ビフェニル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−ビフェニル)−5−(4−tert−オクチルフェニル)−ピラゾリンから選択される一種を用いることが好ましく、1−フェニル−3−(4−イソプロピルスチリル)−5−(4−イソプロピルフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−tert−ブチル−スチリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−メトキシスチリル)−5−(4−メトキシフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−ビフェニル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−ビフェニル)−5−(4−tert−オクチルフェニル)−ピラゾリンから選択される一種を用いることがより好ましく、1−フェニル−3−(4−イソプロピルスチリル)−5−(4−イソプロピルフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−tert−ブチル−スチリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−メトキシスチリル)−5−(4−メトキシフェニル)−ピラゾリンから選択される一種を用いることが更に好ましい。
【0089】
以上のような成分を含む感光性樹脂組成物は、さらに必要に応じて、熱発色防止剤、p−トルエンスルホンアミド等の可塑剤、顔料、充填剤、消泡剤、難燃剤、安定剤、密着性付与剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、イメージング剤、熱架橋剤などを、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して各々0.01〜20質量部程度含有することができるが、着色性を有する成分は含まないことが好ましい。
【0090】
特に、ロイコクリスタルバイオレットやマラカイトグリーン等の着色性を有する化合物(染料)の含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して0.1質量部以下であることが好ましく、0.05質量部以下であることがより好ましく、0.01質量部以下であることがさらに好ましい。
【0091】
以上のような成分を含む本発明の感光性樹脂組成物は、たとえば、含有成分をロールミル、ビーズミル等で均一に混練、混合することにより得ることができる。また、必要に応じて、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の溶剤又はこれらの混合溶剤に溶解して、固形分30〜60質量%程度の溶液として用いることができる。
【0092】
得られた感光性樹脂組成物を用いて画像表示装置用基板上に感光物組成物層を形成する方法としては、特に制限はないが、上記基板上に感光性樹脂組成物を液状レジストとして塗布して乾燥することができる。また、必要に応じて感光性樹脂組成物層上に保護フィルムを被覆することができる。さらに、後に詳しく述べるが感光性樹脂組成物層を感光性エレメントの形態で用いることが好ましい。
【0093】
塗布される感光性樹脂組成物層の厚みは、用途により異なるが、乾燥後の厚みで10〜100μmであることが好ましい。液状レジストとして塗布後、保護フィルムを被覆して用いる場合の保護フィルムとしては、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の重合体フィルムが挙げられる。
【0094】
本発明の感光性エレメントは、支持体と、その上に上記感光性樹脂組成物を用いて形成された感光性樹脂組成物層とを備える。
【0095】
図1は、本発明の感光性エレメントの好適な一実施形態を示す模式断面図である。
図1に示すように、本発明の感光性エレメント10は、支持体1と、その上に上記感光性樹脂組成物を用いて形成された感光性樹脂組成物層2(以下、「感光層2」ともいう)と、感光性樹脂組成物層2上に形成された保護フィルム3と、を備える。なお、保護フィルム3は、必要に応じて設けられる。
【0096】
支持体としては、たとえば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン等の重合体フィルムを好ましく用いることができる。重合体フィルムの厚みは、1〜100μm程度とすることが好ましく、5〜50μmであることがより好ましく、10〜30μmであることがさらに好ましい。
【0097】
支持体上への感光性樹脂組成物層の形成方法は、特に限定されないが、感光性樹脂組成物の溶液を塗布、乾燥することにより好ましく実施できる。塗布される感光性樹脂組成物層の厚みは、用途により異なるが、スペーサーの用途に使用する場合は、乾燥後の厚みで10〜100μmであることが好ましい。
【0098】
(スペーサーの形成方法)
次に、本発明のスペーサーの形成方法について、画像表示装置の製造方法を例にとり説明する。
【0099】
まず、
図2(a)に示すように、電極4と基板5とからなる電極基板30を用意し、
図2(b)に示すように、この電極基板30上に、上述した感光性エレメント10における感光層2及び支持体1を積層する(積層工程)。
【0100】
電極基板30を構成する基板5としては、屈曲性を有する基板であれば特に制限されず、例えば、ポリマーフィルム基板のような絶縁基板、及び、シリコン基板等の半導体基板が挙げられる。電極基板30としては、このような基板5上にITO、IZO、Agワイヤ・インクのような屈曲性を有する電極4が形成されたものが挙げられる。電極4の形成方法としては、蒸着、スパッタリング等の方法で積層した電極材料をフォトリソ手法を用いてパターン形成する方法や、感光性を有する電極材料をパターニングする方法などが挙げられる。この電極4の形成方法に関しては特に制限はない。
【0101】
電極基板30上への感光層2の積層方法としては、上述した感光性エレメント10を用いる方法のほか、感光性樹脂組成物の溶液を電極基板30上に塗布し乾燥する方法を用いることもできる。
【0102】
感光性エレメント10を用いる積層方法は、感光層2上に保護フィルム3が存在している場合には、保護フィルム3を除去しながら電極基板30上へ積層する。上記積層条件としては、例えば、感光層2を70〜130℃程度に加熱しながら、電極基板30上に0.1〜1MPa程度(1〜10kgf/cm
2程度)の圧力で圧着することにより積層する方法等が挙げられ、減圧下で積層することも可能である。電極基板30表面の形状は、通常は電極パターンが形成されているが、平坦であったり、必要に応じて凹凸が形成されていてもよい。
【0103】
感光層2の積層後、
図2(b)に示すように、感光層2に画像状に活性光線8を照射して、露光部を光硬化させる(露光工程)。画像状に活性光線8を照射させる方法としては、
図2(b)に示すように、感光層2上にマスクパターン7を設置して画像状に活性光線8を照射し、露光部の感光層2を光硬化させる方法がある。マスクパターン7は、ネガ型でもポジ型でもよく、一般に用いられているものを使用できる。活性光線8の光源としては、公知の光源、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、高圧水銀灯、キセノンランプ等の紫外線、可視光などを有効に放射するものが用いられる。また、露光方法としては、マスクパターン7を用いずにレーザーで直接パターンを描画する、直接描画露光法を用いることもできる。
【0104】
露光後、
図2(c)に示すように、未露光部の感光層2を現像により選択的に除去することにより、画像表示装置用の基板(電極基板30)上に光硬化物パターン20が形成される(現像工程)。
図3及び
図4に、光硬化物のパターンの一例を示す。
図3は、
図2(c)のスペーサー(光硬化物パターン20)が格子状に形成された例を示す模式平面図であり、
図4は、
図2(c)のスペーサー(光硬化物パターン20)が六角形状に形成された例を示す模式平面図である。
図3及び
図4においては、
図2(c)に示すように電極4及び光硬化物パターン20の下に基板5が配置されているが、電極4はITO電極でもよく、基板5はPET基板でもよい。なお、現像工程は、支持体1が存在する場合は、現像に先立ち、支持体1を除去する。
【0105】
現像は、アルカリ性水溶液、水系現像液、有機溶剤等の現像液によるウエット現像、ドライ現像等で未露光部を除去することにより行われる。本実施形態においては、アルカリ性水溶液を用いることが好ましい。アルカリ性水溶液としては、例えば、0.1〜5質量%炭酸ナトリウム溶液、0.1〜5質量%炭酸カリウム溶液、0.1〜5質量%水酸化カリウム溶液等が挙げられる。このアルカリ性水溶液のpHは9〜11の範囲とすることが好ましく、その温度は、感光層の現像性に合わせて調節される。また、アルカリ性水溶液中には、界面活性剤、消泡剤、有機溶剤等を混入させてもよい。上記現像の方式としては、例えば、ディップ方式、スプレー方式、ブラッシング、スラッピング等が挙げられるが、解像度を向上させるにはスプレー方式が好ましい。
【0106】
現像後の処理として、形成された上記光硬化物パターン20を、必要に応じて60〜250℃程度の加熱処理により更に硬化させることが好ましい。硬化温度は、80〜200℃程度であることが好ましく、100〜150℃程度であることがより好ましい。また、硬化時間は特に制限はないが、10分〜3時間であることが好ましく、30分〜2時間であることがより好ましい。
【0107】
また、上記工程で形成した光硬化物パターン20内に、粒子等の表示媒体を充填する工程、上記光硬化物パターン20に別の電極基板30を貼り付ける工程(
図2の(d)及び(e))等を経て、画像表示装置のスペーサーの形成、及び、画像表示装置100の製造を完了することができる。
【0108】
図2(d)に示すように、上記現像工程で形成した光硬化物パターン20内に、粒子等の表示媒体50を充填する。表示媒体としては特に限定されないが、電子粉粒体、顔料インク、白色微細粒子等が挙げられる。電子粉粒体や白色微細粒子等を用いる場合、それら以外の光硬化物パターン20内の空間には、空気、オレフィン系溶剤、シリコーンオイル等が充填される。また、用途によっては、表示媒体が必要でない場合がある。
【0109】
光硬化物パターン20に別の電極基板30を貼り付ける工程は、以下のようにして行うことができる。すなわち、上記工程は、
図2(d)に示すように、光硬化物パターン20上に接着剤40を積層し、
図2(e)に示すように、接着剤40によって電極基板30と光硬化物パターン20とを接着することにより行われる。なお、接着剤40を用いることなく、光硬化物パターン20に直接電極基板30を接着してもよい。
【0110】
画像表示装置100の少なくとも表示面側の電極基板には、透明な電極基板が用いられる。画像表示装置100の好ましい態様としては、基板5として透明なガラス基板を用い、電極4として透明なITO電極を用いた態様が挙げられる。
【0111】
上述した各工程を経て形成された画像表示装置は、屈曲性を有する電極基板30と、高度な伸びを有する光硬化物パターン20からなるスペーサーとを備えており、優れた屈曲性を達成することができる。特に、電極4の材料の選択によっては、曲率半径5〜15mm程度まで対応可能な高度な屈曲性を有する画像表示装置が得られる。また、本発明の感光性樹脂組成物を用いて形成されたスペーサーは、曲率半径5〜15mm程度で画像表示装置を屈曲した場合でも、破損の発生を十分に抑制することができる(
図5参照)。
【実施例】
【0112】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の技術思想を逸脱しない限り、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0113】
(
参考例1〜2、実施例
3〜4及び比較例1〜3)
表1に示す材料を撹拌混合し、感光性樹脂組成物の溶液を得た。なお、表1中の(A)成分である樹脂(1)及び樹脂(2)は、下記の合成例に従って合成した。また、表1中、各材料の配合量の単位はgであり、樹脂(1)及び樹脂(2)の配合量は、固形分の配合量を示す。
【0114】
(合成例)
[バインダーポリマー(樹脂(1))の合成]
撹拌機、還流冷却器、温度計、滴下ロート及び窒素ガス導入管を備えたフラスコに、質量比3:2であるメチルセロソルブ及びトルエンの配合物500gを加え、窒素ガスを吹き込みながら撹拌して、85℃まで加熱した。一方、重合性単量体としてメタクリル酸150g、メタクリル酸メチルエステル110g、アクリル酸エチルエステル65g、メタクリル酸ブチルエステル50g及びスチレン125gと、アゾビスイソブチロニトリル2.5gとを混合した溶液(以下、「溶液a」という)を用意し、85℃に加熱された質量比3:2であるメチルセロソルブ及びトルエンの上記配合物に溶液aを4時間かけて滴下した後、85℃で撹拌しながら2時間保温した。さらに、質量比3:2であるメチルセロソルブ及びトルエンの配合物150gにアゾビスイソブチロニトリル0.5gを溶解した溶液を、10分かけてフラスコ内に滴下した。滴下後の溶液を撹拌しながら85℃で5時間保温した後、冷却して不揮発分(固形分)は43質量%になるように、質量比3:2であるアセトン及びプロピレングリコールモノメチルエーテルの混合溶媒で希釈してバインダーポリマーを得た。得られたバインダーポリマーの重量平均分子量は50000、分散度は2.0、酸価は195mgKOH/gであった。
【0115】
[バインダーポリマー(樹脂(2))の合成]
MIS−115(メタクリル酸12gと、N−シクロヘキシルマレイミド11.1gと、ジシクロペンタニルメタクリレート27.2gと、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル31.1gとを反応させて得られた共重合体に、2−イソシアネートエチルメタクリレート18.6gを反応させて得られた化合物のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/乳酸メチル溶液)を用意し、これをバインダーポリマー溶液とした。このバインダーポリマーの重量平均分子量は約26,000、酸価は55mgKOH/gであった。
【0116】
なお、バインダーポリマーの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によって測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて換算することにより導出した。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定条件は、以下に示す。
【0117】
[GPC測定条件]
ポンプ:日立 L−6000型(株式会社日立製作所製)
カラム:Gelpack GL−R440 + GL−R450 + GL−R400M
カラム仕様:10.7mmφ × 300mm
溶離液:テトラヒドロフラン
測定温度:室温(20〜25℃)
流量:2.05mL/分
濃度:120mg/5mL
注入量:200μL
圧力:49Kgf/cm
2
検出器:日立 L−3300型RI(株式会社日立製作所製)
【0118】
【表1】
【0119】
M−215;ビス(アクリロキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート(東亜合成株式会社製、商品名)
HT−9082−95;アクリル樹脂溶液(末端にヒドロキシル基を有するポリカーボネート化合物、有機イソシアネート及び2−ヒドロキシエチルアクリレートを反応させて得られた光重合性化合物:重量平均分子量4000、日立化成工業株式会社製、商品名)
FA−MECH;γ−クロロ−2−ヒドロキシプロピル−β’−メタクリロイルオキシエチル−o−フタレート(大阪有機化学工業株式会社製、商品名)
FA−314A;ノニルフェニルEO変性モノアクリレート(1分子中にエチレンオキサイド(EO)基を4モル付加させたもの、日立化成工業株式会社製、商品名)
FA−321M;EO変性ビスフェノールAジメタクリレート(1分子中にエチレンオキサイド(EO)基を10モル付加させたもの、日立化成工業株式会社製、商品名)
TMPT−21;トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート(1分子中にエチレンオキサイド(EO)基を21モル付加させたもの、日立化成工業株式会社製、商品名)
B−CIM;2−(2−クロロフェニル)−1−[2−(2−クロロフェニル)−4,5−ジフェニル−1,3−ジアゾール−2−イル]−4,5−ジフェニルイミダゾール(保土ヶ谷化学工業株式会社製、商品名)
EAB;N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン(保土ヶ谷化学工業株式会社製、商品名)
PZ−501D:1−フェニル−3−(4−メトキシスチリル)−5−(4−メトキシフェニル)ピラゾリン
LCV;ロイコクリスタルバイオレット(山田化学株式会社製、商品名)
【0120】
表1で得られた感光性樹脂組成物の溶液を、16μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、商品名:HTR−02)上に均一に塗布し、90℃の熱風対流式乾燥機で10分間乾燥した後、ポリエチレン製保護フィルム(フィルム長手方向の引張強さ:16MPa、フィルム幅方向の引張強さ:12MPa、商品名:NF−15、タマポリ株式会社製)で保護して感光性エレメントを得た。感光性樹脂組成物層の乾燥後の膜厚は、23μmであった。
【0121】
一方、ガラス基板(SiO
2スパッタ;長さ370mm、幅480mm、厚さ0.7mm、三立化成株式会社製、商品名:SP−SiO
2)を80℃に加温し、そのガラス表面(SiO
2スパッタ面)上に、上記感光性エレメントを、感光性樹脂組成物層がガラス表面に接するように、ポリエチレン製保護フィルムを剥離しながら110℃に加熱したラミネートロールを通してラミネートした。できあがった積層物の構成は、下からガラス基板、感光性樹脂組成物層、ポリエチレンテレフタレートフィルムとなる。得られた積層物について、感度、密着性、解像度及び露光時の着色性の評価を行った。
【0122】
<感度の評価>
高圧水銀灯ランプを有する散乱光露光機(株式会社オーク製作所製)HMW−201GXを用いて、41段ステップタブレットを有するフォトツールを積層物のポリエチレンテレフタレートフィルム上に密着させ、露光を行った。露光後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、1質量%炭酸ナトリウム水溶液を30℃で30秒間スプレーすることにより、未露光部分を除去した。41段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が26.0となるエネルギー量を感度(mJ/cm
2)とした。このエネルギー量の数値が小さい程、感度が高いことを示す。表2に評価結果を示した。
【0123】
<密着性の評価>
高圧水銀灯ランプを有する散乱光露光機(株式会社オーク製作所製)HMW−201GXを用いて、密着性評価用ネガとして直径5〜100μm(直径5μm毎に増加、スペース幅一定)の丸ドットパターンを有するフォトツールと、41段ステップタブレットを有するフォトツールを積層物のポリエチレンテレフタレートフィルム上に密着させ、41段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が26.0となるエネルギー量で露光を行った。露光後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、1質量%炭酸ナトリウム水溶液を30℃で30秒間スプレーすることにより、未露光部分を除去して密着性を評価した。密着性は現像液により剥離されずに残ったドットパターンの直径(μm)で表され、この数値が小さい程、細いパターンでもガラス基板から剥離せずに密着していることから、密着性が高いことを示す。表2に評価結果を示した。
【0124】
<樹脂高さ>
また、密着性の評価の後、80℃の熱風対流式乾燥機で10分間加熱処理し、感光性樹脂組成物層の樹脂高さ(現像後に残った最小直径のドットパターンの高さ)を測定した。表2に評価結果を示した。
【0125】
<露光後の樹脂透明性評価>
上記積層物に、高圧水銀灯ランプを有する散乱光露光機(株式会社オーク製作所製)HMW−201GXを用いて、41段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が26.0となるエネルギー量で露光を行った。露光前後の樹脂について、濁度計(日本電色株式会社製)NDH5000型で全波長透過率を測定した。この値を元に露光前後の樹脂透明性の評価を行った。評価結果を表2に示した。露光後の全波長透過率が90%以上のものを「A」、90%以下のものを「B」として評価した。
【0126】
【表2】
【0127】
表2より、本発明の(A)〜(D)成分を有する感光性樹脂組成物である
参考例1〜2、実施例
3〜4は、樹脂膜厚10μm以上でアスペクト比(樹脂高さ/樹脂幅(密着性))1以上の良好な密着性を有し、かつ露光後に全波長透過率90%以上を確保していることが明らかである。これに対し、(D)成分を有さない比較例1〜3は、露光後の透明性に劣ったり、パターンを形成することができなかった。