特許第5924835号(P5924835)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5924835
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】硬質表面用洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 3/24 20060101AFI20160516BHJP
   C11D 3/37 20060101ALI20160516BHJP
【FI】
   C11D3/24
   C11D3/37
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-88405(P2012-88405)
(22)【出願日】2012年4月9日
(65)【公開番号】特開2013-216778(P2013-216778A)
(43)【公開日】2013年10月24日
【審査請求日】2015年1月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(73)【特許権者】
【識別番号】593085808
【氏名又は名称】ADEKAクリーンエイド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(72)【発明者】
【氏名】小倉 千恵子
(72)【発明者】
【氏名】腰原 亜弥
【審査官】 古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−279990(JP,A)
【文献】 特開平05−208102(JP,A)
【文献】 特開昭57−119999(JP,A)
【文献】 特開昭51−083608(JP,A)
【文献】 特開2006−291012(JP,A)
【文献】 特開2000−194144(JP,A)
【文献】 特開2006−316201(JP,A)
【文献】 特開2011−038041(JP,A)
【文献】 特開平06−192689(JP,A)
【文献】 特開平10−310799(JP,A)
【文献】 特表2004−512114(JP,A)
【文献】 米国特許第5866532(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 3/24
C11D 3/37
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン基、両性イオン基およびシリル基から選択される基を1以上有するフッ素化合物(A)、フッ素原子を有しない界面活性剤(B)およびアミノ変性シリコーン化合物(C)を含有することを特徴とする硬質表面用洗浄剤組成物。
【請求項2】
フッ素化合物(A)が下記の一般式(1)で表される化合物である、請求項1記載の硬質表面用洗浄剤組成物:
−(X)−Y (1)
(式中、Rは、炭素数3〜20のパーフルオロアルキル基を表し、Xは、炭素数1〜10のアルキレン基、炭素数〜10のアリーレン基、炭素数1〜5のスルホアミドアルキレン基、カルボニル基、炭素数2〜8のアルキレンスルホアミドアルキレン基、炭素数2〜10のアルキレンオキシアルキレン基および炭素数2〜10のアルキレンチオアルキレン基から選択されるいずれかの基を表し、Yは、カチオン基、両性イオン基およびシリル基から選択されるいずれかの基を表し、nは、0または1の数を表す。)
【請求項3】
界面活性剤(B)がアニオン界面活性剤またはノニオン界面活性剤であることを特徴とする請求項1または2記載の硬質表面用洗浄剤組成物。
【請求項4】
アミノ変性シリコーン化合物(C)が下記の一般式(4)で表される化合物である、請求項記載の硬質表面用洗浄剤組成物:
【化1】
(式中、Aは−RNHまたは−RNHRNHのいずれかの基を表し、qは1〜100の数を表し、rは1〜100の数を表し、R〜Rはそれぞれ炭素数1〜6のアルキレン基を表す。)
【請求項5】
フッ素化合物(A)1質量部に対してフッ素原子を有しない界面活性剤(B)が0.1〜20000質量部、アミノ変性シリコーン(C)が0.001〜1000質量部である、請求項1ないし4のいずれか1項記載の硬質表面用洗浄剤組成物。
【請求項6】
水を含有する組成物全量に対して、フッ素化合物(A)が0.001〜1質量%、フッ素原子を有しない界面活性剤(B)が0.1〜20質量%、アミノ変性シリコーン(C)が0.001〜1質量%含有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項記載の硬質表面用洗浄剤組成物。
【請求項7】
更に、キレート剤、ビルダー、防腐剤、色素および香料からなる群から選択される1種または2種以上を含有する請求項1ないしのいずれか1項記載の硬質表面用洗浄剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄剤組成物に関し、更に詳細には、防汚性が良好な硬質表面用洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般家庭における台所の換気扇やガスレンジ、風呂釜、トイレ、食器類、あるいは車両、建築物等は、金属、プラスチック、ガラス、陶磁器、コンクリート等の硬質素材によってできている。これらの硬質表面には、風雨、食物類、排出物、油類、排気ガス等によって様々な汚れが付着し、こうした汚れを除去するために様々な洗浄剤が使用されている。洗浄剤の最大の目的は汚れを除去することであるが、近年では洗浄回数を削減するために、汚れの再付着を防止する効果(防汚効果)も重要な効果として注目されている。
【0003】
洗浄後に汚れの再付着を防止するため、洗浄剤にポリマーやフッ素化合物等を配合した洗浄剤が知られている。例えば、特許文献1には、(a)非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤、並びに(b)4級アンモニウム基または3級アミノ基を有するモノマー単位を含む重合体を、(a)/(b)=1/10〜50/1の重量比で含有する硬質表面用洗浄剤組成物が開示されている。また、特許文献2には、硬質表面に親水性を付与するために水溶性または水分散性共重合体を使用する方法において、重合単位の形態で、(a)4級アンモニウム基及びエチレン性不飽和基を2個有する単量体化合物、(b)(a)と共重合可能であり且つ適用媒体中においてイオン化することができる機能を有する少なくとも1種の親水性単量体、(c)エチレン性不飽和基を含有し、中性電荷を有し、1個またはそれ以上の親水性基を有し、且つ(a)および(b)と共重合可能な、随意成分としての少なくとも1種の親水性単量体化合物を含み、しかも(a)/(b)モル比が60/40〜5/95であることからなる水溶性または水分散性重合体を使用する方法が開示されている。更に、特許文献3には、気圧0.1MPaでの沸点が150℃以上であり、かつ気圧0.1MPaでの引火点が40℃以上である液状の石油系炭化水素7〜50質量%;微粒子状金属酸化物3〜30質量%;アニオン界面活性剤0.1〜3質量%;非イオン界面活性剤0.5〜10質量%;両性アクリル系ポリマー0.1〜4質量%及び水30〜70質量%を含有することを特徴とする樹脂表面用洗浄剤が開示されている。また、特許文献4には、使用時に、極細繊維を構成成分として含む布帛に含浸させて用いる、撥水処理組成物であって、下記(A)および(B)を含むことを特徴とするガラス用撥水処理組成物:(A)フッ素系アルコキシシラン:0.05〜10質量%、(B)触媒:0.01〜5質量%(酸触媒または塩基触媒の場合、一価換算)(請求項1);更に、(C)不溶性微粉末を含む前記ガラス用撥水処理組成物(請求項2)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−146395号公報
【特許文献2】特表2003−505535号公報
【特許文献3】特開2008−169361号公報
【特許文献4】特開2010−138210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のようなポリマーを配合した洗浄剤は、被洗浄面を親水性(撥油性)に改質するため油等の親油系の汚れの再付着を防止する効果に優れるものの、水垢等の親水系の汚れの再付着を防止する効果はそれほど高くなかった。同様に、被洗浄面を親油性(撥水性)に改質すると親水性の汚れの再付着を防止する効果は優れるものの、油等の親油系の汚れの再付着を防止する効果は高くなかった。また、特許文献4では、被洗浄面を撥水処理するので親水性の汚れの再付着を防止する効果は高くなく、また、不溶性微粉末を洗浄剤に使用すると、すすぎにより微粉末が流れ落ちるため継続的な防汚効果が得られなかった。
【0006】
以上のように、汚れには油等の親油系の汚れと水垢等の親水系の汚れがあり、被洗浄面が撥水性であれば親水系の汚れは付着しづらいが、親油系の汚れは付着しやすくなる。逆に被洗浄面が撥油性であれば親油系の汚れは付着しづらいが、親水系の汚れは付着しやすくなる。こうしたことから、被洗浄面を同時に撥水性及び撥油性できれば、汚れの再付着防止に大きな効果が得られることは容易に想像し得ることであるが、今までの洗浄剤組成物ではこの相反する性能を両立することは非常に困難であった。
【0007】
従って、本発明が解決しようとする課題は、洗浄剤組成物としての機能を保ちつつ、洗浄後の被洗浄面を同時に撥水性及び撥油性にし、汚れの再付着を効果的に防止する硬質表面用洗浄剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明者等は鋭意検討し、洗浄後の被洗浄面を撥水性及び撥油性にできる洗浄剤組成物を見出し、本発明に至った。
即ち、本発明は、カチオン基、両性イオン基およびシリル基から選択される1種以上の基を有するフッ素化合物(A)、フッ素原子を有しない界面活性剤(B)及びアミノ変性シリコーン化合物(C)を含有することを特徴とする硬質表面用洗浄剤組成物である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、洗浄後の被洗浄面を同時に撥水性及び撥油性にし、汚れの再付着を効果的に防止する硬質表面用の洗浄剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のフッ素化合物(A)は、カチオン基、両性イオン基およびシリル基から選択される1種以上の基を有する化合物であれば特に限定されるものではないが、下記の一般式(1)で表される化合物であることが好ましい:
−(X)−Y (1)
(式中、Rは、炭素数3〜20のパーフルオロアルキル基を表し、Xは、炭素数1〜10のアルキレン基、炭素数〜10のアリーレン基、炭素数1〜5のスルホアミドアルキレン基、カルボニル基、炭素数2〜8のアルキレンスルホアミドアルキレン基、炭素数2〜10のアルキレンオキシアルキレン基および炭素数2〜10のアルキレンチオアルキレン基からなる群から選択されるいずれかの基を表し、Yは、カチオン基、両性イオン基およびシリル基から選択されるいずれかの基を表し、nは、0または1の数を表す。)
【0011】
一般式(1)で表される化合物は、Rで表されるパーフルオロアルキル基と、Yで表されるカチオン基等とが、結合基であるXによって結合された化合物である。なお、Xはなくともよく(n=0の場合)、その場合はRとYが直接結合した化合物となる。
【0012】
は、炭素数3〜20のパーフルオロアルキル基を表し、脂肪族鎖は直鎖、分岐あるいは環状のいずれでもよいが、容易に入手できることから直鎖のパーフルオロアルキル基であることが好ましい。また、炭素数は3〜20であるが、再付着防止の効果が高いことから炭素数は4〜12であることが好ましい。炭素数が3未満あるいは20より高くなると、RとYとの構造的なバランスが崩れて十分な汚れの再付着防止効果が得られない場合があるために好ましくない。
【0013】
Yは、カチオン基、両性イオン基およびシリル基から選択されるいずれかの基を表す。カチオン基は、4級アンモニウム基であれば特に構造に指定はないが、汚れの再付着防止効果に優れることから下記の一般式(2)で表される構造のものが好ましい:
【化1】
【0014】
一般式(2)のR〜Rは、それぞれ炭素数1〜4のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ターシャリブチル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基及びエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0015】
また、Zは、ハロゲン原子を表し、例えば、クロル原子、ブロム原子、ヨウ素原子等が挙げられる。これらの中でもクロル原子及びブロム原子が好ましく、クロル原子がより好ましい。なおZは、4級アミンの対イオンである。
【0016】
両性イオン基としては、例えば、ベタイン基、スルホベタイン基、アミンオキサイド基が挙げられる。これらの中でも汚れの再付着防止効果に優れることから、ベタイン基とアミンオキサイド基が好ましい。なお、アミンオキサイドはノニオン(中性)に分類される場合もあるが、本発明内では両性イオン基として分類している。
【0017】
シリル基としては、例えば、トリアルキルシリル基、ジアルキルモノアルコキシシリル基、モノアルキルジアルコキシシリル基、トリアルコキシシリル基が挙げられる。これらの中でも、トリアルコキシシリル基が好ましく、下記の一般式(3)で表されるトリアルコキシシリル基がより好ましい:
【化2】
【0018】
一般式(3)のR〜Rはそれぞれ炭素数1〜4のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ターシャリブチル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基及びエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0019】
Xは、RとYとを結合するための基であり、アルキレン基、アリーレン基、スルホアミドアルキレン基、カルボニル基、アルキレンスルホアミドアルキレン基、アルキレンオキシアルキレン基およびアルキレンチオアルキレン基から選択される。前記の基はいずれも炭素数が1〜10であり、炭素数が10より大きいと、結合基の分子量が大きくなりすぎ、相対的にRとYとから得られる効果が小さくなるため、十分な汚れの再付着防止効果が得られない場合がある。またXは、結合基としての役割を持つ基であるため、RとYとが直接結合できるのであればなくてもかまわない。
【0020】
本発明の(B)成分はフッ素原子を有しない界面活性剤であり、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤及び両性界面活性剤が挙げられる。これらの中でも、洗浄性が良好なことからアニオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤が好ましく、特に洗浄性が良好であることからアニオン界面活性剤がより好ましい。
アニオン界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、硫化オレフィン塩、高級アルキルスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、硫酸化脂肪酸塩、スルホン化脂肪酸塩、リン酸エステル塩、脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、グリセライド硫酸エステル塩、脂肪酸エステルのスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸メチルエステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド、脂肪酸アルカノールアミド又はそのアルキレンオキサイド付加物の硫酸エステル塩、スルホコハク酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルベンゾイミダゾールスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンスルホコハク酸塩、N−アシル−N−メチルタウリンの塩、N−アシルグルタミン酸又はその塩、アシルオキシエタンスルホン酸塩、アルコキシエタンスルホン酸塩、N−アシル−β−アラニン又はその塩、N−アシル−N−カルボキシエチルタウリン又はその塩、N−アシル−N−カルボキシメチルグリシン又はその塩、アシル乳酸塩、N−アシルサルコシン塩、及びアルキル又はアルケニルアミノカルボキシメチル硫酸塩等の1種または2種以上の混合物を挙げることができる。
【0021】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの付加形態は、ランダム状、ブロック状の何れでもよい。)、ポリエチレングリコールプロピレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、グリセリン脂肪酸エステル又はそのエチレンオキサイド付加物、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、脂肪酸モノエタノールアミド又はそのエチレンオキサイド付加物、脂肪酸−N−メチルモノエタノールアミド又はそのエチレンオキサイド付加物、脂肪酸ジエタノールアミド又はそのエチレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキル(ポリ)グリセリンエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸メチルエステルエトキシレート、N−長鎖アルキルジメチルアミンオキサイド等が挙げることができる。
【0022】
カチオン界面活性剤としては、例えば、アルキル(アルケニル)トリメチルアンモニウム塩、ジアルキル(アルケニル)ジメチルアンモニウム塩、アルキル(アルケニル)四級アンモニウム塩、エーテル基或いはエステル基或いはアミド基を含有するモノ或いはジアルキル(アルケニル)四級アンモニウム塩、アルキル(アルケニル)ピリジニウム塩、アルキル(アルケニル)ジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキル(アルケニル)イソキノリニウム塩、ジアルキル(アルケニル)モルホニウム塩、ポリオキシエチレンアルキル(アルケニル)アミン、アルキル(アルケニル)アミン塩、ポリアミン脂肪酸誘導体、アミルアルコール脂肪酸誘導体、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等が挙げることができる。
【0023】
両性界面活性剤としては、例えば、カルボキシベタイン、スルホベタイン、ホスホベタイン、アミドアミノ酸、イミダゾリニウムベタイン系界面活性剤等が挙げることができる。
【0024】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は、上記の(A)及び(B)成分を含有すれば一定の効果が得られるが、更に(C)成分としてアミノ変性シリコーンを添加することが好ましい。(C)成分を添加することで、撥油性の効果を落とさずに更に撥水性を向上させることができ、汚れの再付着を防止する効果が向上する。
【0025】
アミノ変性シリコーンは、シリコーン分子内のメチル基をアミノ基あるいはアミノ基を含有する基で置換したものであればよいが、撥水効果が良好なことから下記の一般式(4)で表されるアミノ変性シリコーンが好ましい:
【化3】
(式中、Aは、−RNHまたは−RNHRNHのいずれかの基を表し、qは1〜100の数を表し、rは1〜100の数を表し、R〜Rはそれぞれ炭素数1〜6のアルキレン基を表す。)
【0026】
上記R〜Rは、いずれも炭素数1〜4のアルキレン基を表し、こうした基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、ペンチレン基、イソペンチレン基、ヘキシレン基、イソヘキシレン基等が挙げられる。これらの中でもメチレン基、エチレン基、プロピレン基が好ましい。
【0027】
q及びrは、それぞれ1〜100の数を表すが、qとrの合計量が2〜150であることが好ましく、2〜100がより好ましい。qとrの合計量が200を超えると、アミノ変性シリコーンの粘度が上昇して取り扱いが困難になる場合や洗浄剤組成物中で沈殿する場合がある。なお、一般式(4)の化合物は、表示上ブロック共重合体に見えるが、ブロック共重合、ランダム共重合体どちらでもかまわない。
【0028】
アミノ変性シリコーン中のAは、rの数によって決定する。Aの量は特に規定はないが、撥水性の向上に効果的なことから、Aが1モルあたりのアミノ変性シリコーンの質量(Aの当量)は、300〜50000g/molが好ましく、300〜10000g/molがより好ましく、300〜3000g/molが更に好ましい。Aの当量が300g/molより小さい場合や、50000g/molより大きい場合は、撥水性向上効果が得られない場合があるために好ましくない。
【0029】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物における上記(A)成分及び(B)成分の配合量は、特に限定されるものではないが、高い効果が望めることから、(A)成分1質量部に対して(B)成分が0.1〜20000質量部であることが好ましく、1〜5000質量部がより好ましく、10〜1000質量部が更に好ましく、30〜300質量部が最も好ましい。(B)成分が0.1質量部より少ない場合や20000質量部より多い場合は、洗浄性に劣る場合や、洗浄後に硬質表面上に形成される防汚膜の均一性に劣る場合、あるいは防汚膜の持続性に劣る場合がある。防汚膜の均一性に劣ると汚れが再付着しやすくなるため好ましくなく、持続性に劣ると再付着防止効果が持続しないため好ましくない。
【0030】
(C)成分を添加する場合もその配合量は、特に限定されるものではないが、高い効果が望めることから、(A)成分1質量部に対して(C)成分が0.001〜1000質量部であることが好ましく、0.01〜100質量部がより好ましく、0.1〜10質量部が更に好ましい。(C)成分が0.001質量部より少ない場合や1000質量部より多い場合は、更に撥水性を向上させる効果が十分に得られない場合がある。
【0031】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物を実際に使用する場合、その使用方法は特に限定されるものではないが、通常は原液又は原液を水で希釈したものを硬質表面上に直接噴霧する方法や、原液又は原液を水で希釈したものをスポンジ等にとって洗浄する方法が挙げられる。これらの使用において、本発明の硬質表面用洗浄剤組成物の粘度が高すぎると噴霧や容器からの取り出しが困難になることから、一定の粘度になるように水で希釈されていることが好ましい。また、水で希釈された本発明の硬質表面用洗浄剤組成物を、更に水で希釈してから使用することは手間がかかること、及び高すぎる濃度あるいは低すぎる濃度においては、防汚膜の均一性や持続性に劣る場合がある。よって、水を含む本発明の硬質表面用洗浄剤組成物全量に対して(A)成分は、0.001〜2質量%であることが好ましく、0.001〜1質量%がより好ましく、0.005〜0.5質量%が更に好ましく、0.01〜0.1質量%が最も好ましい。同様に(B)成分は0.1〜20質量%が好ましく、1〜15質量%がより好ましく、2〜10質量%が更に好ましい。また、(C)成分を添加する場合であれば、同様に0.001〜1質量%が好ましく、0.005〜0.5質量%がより好ましく、0.01〜0.1質量%が更に好ましい。これらの好ましい濃度の水溶液にすることで、更に水で希釈することなく、最も効果を発揮する濃度の洗浄剤で直接硬質表面を洗浄することが可能である。
【0032】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物には、洗浄効果を向上させるために更にアルカリ剤や、炭素数4以下の1価アルコールやグリコール系溶剤を添加することが好ましい。
アルカリ剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の強アルカリ;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アンモニア等の弱アルカリが挙げられる。これらの中でも洗浄効果が高いことから強アルカリが好ましい。アルカリ剤は、組成物全量に対して1〜20質量%添加することが好ましく、3〜15質量%添加することがより好ましい。アルカリ剤は洗浄性を更に向上させる効果がある。
【0033】
炭素数4以下の1価アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ターシャリブタノール等が挙げられる。また、グリコール系溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、(モノ、ジ、トリ)エチレングリコール(モノ、ジ、トリ)プロピレングリコールモノメチルエーテル、(モノ、ジ、トリ)エチレングリコール(モノ、ジ、トリ)プロピレングリコールモノエチルエーテル、(モノ、ジ、トリ)エチレングリコール(モノ、ジ、トリ)プロピレングリコールモノプロピルエーテル、(モノ、ジ、トリ)エチレングリコール(モノ、ジ、トリ)プロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。これら炭素数4以下の1価アルコールやグリコール系溶剤は、組成物全量に対して0.1〜15質量%添加することが好ましく、1〜10質量%添加することがより好ましい。上記の溶剤は防汚膜の均一性を更に向上させる効果がある。
【0034】
また、本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、キレート剤、ビルダー、防腐剤、色素、香料等の他の成分を配合することができる。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例により、更に具体的に説明する。
1.試験方法
<試験1:撥水性及び撥油性確認試験>
ステンレス板のテストピース(2×5cm)の片面を後述の本発明品及び比較品の液体洗浄剤組成物を十分に染み込ませたスポンジで5往復擦り洗いし、流水で30秒間すすいだ後に乾燥させた。その後接触角計[協和界面科学(株)社製:FACE Contact Angle Meter]を用いてイオン交換水及びヘキサデカンのテストピース上の接触角を10点測定し、平均値を撥水性、撥油性とした。イオン交換水の接触角が大きいほど撥水性が良好であり、ヘキサデカンの接触角が大きいほど撥油性が良好となる。得られた結果を表1(本発明品)および表2(比較品)に記載する。
【0036】
<試験2:洗浄性試験>
ステンレス板のテストピース(10×5cm)の片面に大豆油が0.1±0.01gになるように均一に塗布し、室温にて1日放置した。このステンレス板を後述の本発明品及び比較品の液体洗浄剤組成物10mlに浸漬し、10分間放置した。その後流水で30秒間すすいだ後に乾燥させ、洗浄前後の重量変化より下記の式にて洗浄率を算出した。
洗浄率(%)=[(大豆油を塗布して放置した後のステンレス板質量)−(洗浄後のステ ンレス板質量)/塗布した大豆油の実際の質量]×100
得られた結果を表1(本発明品)および表2(比較品)に記載する。
【0037】
<試験3:再付着防止性試験>
ステンレス板のテストピース(15×15cm)の片面を、後述の本発明品及び比較品の液体洗浄剤組成物を十分に染み込ませたスポンジで5往復擦り洗いし、流水で30秒間すすいだ後に乾燥させた。その後テストピースに大豆油2mlを均一に塗布し、200℃のオーブン内で30分焼き付けを行った後、スポンジで5往復擦り洗いを行った。終了後のテストピースの表面状態を下記の指標に従って目視で評価した。得られた結果を表1(本発明品)および表2(比較品)に記載する。
(評価方法)
◎:汚れの付着が見当たらない
○:汚れがテストピースの面積の1割未満だが汚れは目視で確認できる
×:汚れがテストピースの面積の1割より多く付着している
【0038】
<試験4:濯ぎ性試験>
ステンレス板のテストピース(15×15cm)の片面を、後述の本発明品及び比較品の液体洗浄剤組成物を十分に染み込ませたスポンジで5往復擦り洗いし、その後、水で湿らせたウエス(キムワイプS−200:日本製紙クレシア社製)にて1秒間に1往復水拭きを実施し、テストピースに残留物がなくなるまでに要した時間に従って評価した。得られた結果を表1(本発明品)および表2(比較品)に記載する。
(評価方法)
◎:15秒未満
○:15〜30秒未満
×:30秒以上
【0039】
<試験5:防汚膜の均一性確認試験>
ステンレス板のテストピース(15×15cm)の片面を、後述の本発明品及び比較品の液体洗浄剤組成物を十分に染み込ませたスポンジで5往復擦り洗いし、流水で30秒間すすいだ後に乾燥させた。その後のステンレス表面の美観を、下記の指標に従って目視で評価した。得られた結果を表1(本発明品)および表2(比較品)に記載する。
(評価方法)
◎:全くムラがなく、均一で綺麗な表面に仕上がっている
○:ほとんどムラがなく、ほぼ均一で綺麗な表面に仕上がっている
×:ムラがあり、くすんだ表面になっている
【0040】
<試験6:防汚膜の持続性試験>
ステンレス板のテストピース(15×15cm)の片面を、後述の本発明品及び比較品の液体洗浄剤組成物を十分に染み込ませたスポンジで5往復擦り洗いし、流水で30秒間すすいだ後に乾燥させた。その後、30秒間の流水すすぎ・乾燥工程を10回繰り返した。その後テストピースに大豆油2mlを均一に塗布し、200℃のオーブン内で30分焼き付けを行った後、スポンジで5往復擦り洗いを行った。終了後のテストピースの表面状態を下記の指標に従って目視で評価した。得られた結果を表1(本発明品)および表2(比較品)に記載する。
(評価方法)
◎:汚れの付着が見当たらない
○:汚れがテストピースの面積の1割未満だが汚れは目視で確認できる
×:汚れがテストピースの面積の1割より多く付着している
【0041】
以下の本発明品および比較品の調製に使用した使用化合物は、下記の通りである:
(A)成分
A−1:パーフルオロアルキルアルコキシシラン:
【化4】
【0042】
A−2:パーフルオロアルキルアミンオキサイド:
【化5】
【0043】
A−3:パーフルオロアルキルトリアルキルアンモニウム塩:
【化6】
【0044】
A−4:パーフルオロアルキルトリアルキルベタイン:
【化7】
【0045】
(B)成分
B−1:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム
B−2:ポリオキシエチレン(10)ラウリルエーテル
【0046】
(C)成分
C−1:アミノ変性シリコーン[一般式(4)において、
Aは、−CNHCNHであり、qは、40であり、rは、15で
ある。なお、A当量は354g/モルである)
【0047】
その他の成分
D−1:ポリテトラフルオロエチレン(粉末)
D−2:フッ素変性アクリル樹脂(粉末)
D−3:パーフルオロアルキルカルボン酸ナトリウム:C13−CH−COONa
D−4:シリコーンオイル(KF96、信越化学工業社製)
D−5:ポリエーテル変性シリコーン(KF353、信越化学工業社製)
E−1:水酸化ナトリウム
E−2:ジエチレングリコールモノブチルエーテル
【0048】
上記各成分を使用して表1および2に記載する配合割合にて、本発明品及び比較品の液体洗浄剤組成物を調製した。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】