特許第5924984号(P5924984)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5924984トリフルオロメチルピリジノン化合物およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5924984
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】トリフルオロメチルピリジノン化合物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 213/64 20060101AFI20160516BHJP
   C07D 215/227 20060101ALI20160516BHJP
   C07D 221/04 20060101ALI20160516BHJP
   C07D 221/10 20060101ALI20160516BHJP
【FI】
   C07D213/64CSP
   C07D215/227
   C07D221/04
   C07D221/10
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-48888(P2012-48888)
(22)【出願日】2012年3月6日
(65)【公開番号】特開2013-184893(P2013-184893A)
(43)【公開日】2013年9月19日
【審査請求日】2015年3月5日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
(73)【特許権者】
【識別番号】591180358
【氏名又は名称】東ソ−・エフテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(72)【発明者】
【氏名】山崎 孝
(72)【発明者】
【氏名】高須賀 智子
(72)【発明者】
【氏名】渡部 昭雄
【審査官】 小川 由美
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/135976(WO,A1)
【文献】 特開2010−222304(JP,A)
【文献】 特開2008−137993(JP,A)
【文献】 特表2010−524942(JP,A)
【文献】 特開2009−143899(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/033702(WO,A1)
【文献】 特表2005−531501(JP,A)
【文献】 REGISTRY(STN)[online],2011.07.07[検索日 2015.0916]CAS登録番号 1311829-52-3
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリフルオロメチル基を有するピリジノン化合物であって、下記式(3)〜(7)で表わされるトリフルオロメチルピリジノン化合物。
【化1】
【請求項2】
下記式(1)〜(7)で表わされるトリフルオロメチルピリジノン化合物の製造方法であって、
【化2】

下記式(8)〜(13)で表されるヨウ化ピリジノン化合物、ハロゲン化銅、(トリフルオロメチル)トリメチルシラン、およびフッ化カリウム、フッ化セシウムおよびtert−ブトキシカリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の塩類を反応させることを特徴とする前記式(1)〜(7)で表わされるトリフルオロメチルピリジノン化合物の製造方法。
【化3】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリフルオロメチル基を有する新規なピリジノン化合物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医農薬や機能性材料にトリフルオロメチル基を導入することが、生理活性の向上あるいは材料物性の改良に資することは良く知られている。
【0003】
従来種々のトリフルオロメチル化法が報告されているが、その殆どはπ電子の過剰なヘテロ環あるいは芳香環化合物にのみ適用可能であった。しかしながら、医農薬や機能性材料にはπ電子不足型ヘテロ芳香環化合物が重要な役割をしていることは周知の事実であり、当該化合物への簡便かつ効率的なトリフルオロメチル基導入法を開発することは重要な課題であった。
【0004】
特許文献1では、トリフルオロメチル基を有するピリジノン環が代謝調節型受容体サブタイプの正のアロステリック因子として働き、不安神経症や統合失調症などの中枢神経系障害の予防に役立つことが報告されている。しかしながら、4位が水素原子以外であり、かつ3位にトリフルオロメチル基を有するピリジノン化合物に限られており、ヨウ化ピリジノンに銅塩とメチル 2,2−ジフルオロ−2−フルオロスルホニルアセテートと反応させることにより、トリフルオロメチル基の導入を行っている。
【0005】
例えば、非特許文献1では、2−アミノ−3−(トリフルオロメチル)ピリジンのアミノ基を硫酸水溶液中で亜硝酸ナトリウムを供することにより、ヒドロキシ基に変換して3−(トリフルオロメチル)ピリジン−2(1H)−オンを収率69%で得られたと開示されている。また、特許文献2では、2−クロロ−3−(トリフルオロメチル)ピリジンのクロロ基を酢酸中7日間還流することにより、ヒドロキシ基に変換して3−(トリフルオロメチル)ピリジン−2(1H)−オンを収率93%で得られたと開示されている(当該20頁、0057段落)。しかしながら、この方法では、反応時間が7日間も要することが問題である。さらに、トリフルオロメチル化された原料を入手する必要があった。
【0006】
特許文献3はFenton試薬を用いてピリジン−2(1H)−オンに直接的にトリフルオロメチル基を導入しており、基質が無保護のNH基を有していても反応する点で優れているが、収率が50%と中程度である(当該Ex.11)。また、この方法では3位のみにトリフルオロメチル基の導入が可能となっている。
【0007】
特許文献4は2−クロロ−5−(トリフルオロメチル)ピリジンのクロロ基を酢酸銀存在下酢酸中45時間還流することにより、ヒドロキシ基に変換して5−(トリフルオロメチル)ピリジン−2(1H)−オンを収率51%で得られたと開示されている(当該Ex.111のStepC)。140℃の高温下での反応を要し、かつ反応時間が45時間と長時間を要する点が課題であった。さらに、トリフルオロメチル化された原料を入手する必要があった。
【0008】
特許文献5は5−(カルボキシ)ピリジン−2(1H)−オンに、四フッ化イオウを作用させることにより5−(トリフルオロメチル)ピリジン−2(1H)−オンが得られることを開示しているが、四フッ化イオウは有毒であり汎用性がない。
【0009】
非特許文献2では5−(トリフルオロメチル)ピラン−(2H)−オンにヘキサメチルジシラザンとDBUを供し3日間撹拌することにより、収率16%で5−(トリフルオロメチル)ピリジン−2(1H)−オンが得られることを開示しているが、低収率である。
【0010】
非特許文献3にはピリジン環へのトリフルオロメチル基導入法が開示されているが、ピリジノン化合物に適用した例はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開2009−0033702号
【特許文献2】国際公開2007−126765号
【特許文献3】特開2008−137993号公報
【特許文献4】米国特許第4038396号明細書
【特許文献5】米国特許第4230864号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】J. Fluorine Chem. 1999, 93, 153
【非特許文献2】Synthesis 1991, 883
【非特許文献3】Eur. J. Org. Chem. 2003, 1559
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
医農薬や機能性材料にはπ電子不足型ヘテロ芳香環化合物が重要な役割を果たすことが知られており、当該化合物へ簡便かつ効率的にトリフルオロメチル基を導入する方法を開発することは重要な課題であった。本発明は、優れた医農薬中間体のピリジノン化合物であってトリフルオロメチル基を有する新規ピリジノン化合物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは鋭意検討を行った結果、新規のトリフルオロメチル基を有するピリジノン化合物を見出し、さらにヨウ化ピリジノン化合物、ハロゲン化銅、(トリフルオロメチル)トリメチルシランおよび塩類を用いることによって簡便かつ効率的に合成できることを見出した。
【0015】
すなわち、本発明は下記の式(1)〜(7)で表されるトリフルオロメチルピリジノン化合物に関するものである。
(1)トリフルオロメチル基を有するピリジノン化合物であって、下記式(1)〜(7)で表わされるトリフルオロメチルピリジノン化合物。
【0016】
【化1】
【0017】
(2) 下記式(8)〜(13)で表されるヨウ化ピリジノン化合物、ハロゲン化銅、(トリフルオロメチル)トリメチルシランおよび塩フッ化カリウム、フッ化セシウムおよびtert−ブトキシカリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の塩類を反応させることを特徴とする(1)に記載の式(1)〜(7)で表わされるトリフルオロメチルピリジノン化合物の製造方法。
【0018】
【化2】
【発明の効果】
【0019】
発明者らはトリフルオロメチル基を有する新規のピリジノン化合物を見出し、当該ピリジノン化合物はヨウ化ピリジノン化合物、ハロゲン化銅、(トリフルオロメチル)トリメチルシランおよび塩類を用いた反応によって合成できることを見出した。
【0020】
本発明のトリフルオロメチル基を有するピリジノン化合物は、優れた医農薬中間体および機能性材料原料であり、工業的にも有用である。本発明は、前記式(1)〜(7)で表わされるトリフルオロメチル基を有する新規ピリジノン化合物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、式(1)〜式(7)で表されるトリフルオロメチル基を有する新規のピリジノン化合物、および当該ピリジノン化合物を式(8)〜式(13)で表されるヨウ化ピリジノン化合物中のヨウ素原子をトリフルオロメチル基で置換する反応、すなわちヨウ化ピリジノン化合物、ハロゲン化銅、(トリフルオロメチル)トリメチルシランおよび塩類を用いた反応によって合成するものである。
【0022】
ヨウ化ピリジノン化合物は、1位がメチル基またはパラメトキシベンジル基で置換された1−置換ピリジン−2-オン骨格を含むものであって当該ピリジン−2−オン骨格をなす炭素のうち少なくとも1つがヨウ素原子と結合していればよいが、5−ヨード−1−(p−メトキシベンジル)ピリジン−2−オン、3−ヨード−1−メチルピリジン−2−オン、3,5−ジヨード−1−メチルピリジン−2−オン、3−ヨード−1−メチル−5,6,7,8−テトラハイドロキノリン−2−オン、3−ヨード−1−メチル−1,5,6,7−テトラハイドロシクロペンタ[b]ピリジン−2−オン、5,6−ジヒドロ−3−ヨード−1−(p−メトキシベンジル)−ベンゾ[h]キノリン−2−オンが好ましい。
【0023】
前記式(1)および式(2)で表わされるトリフルオロメチルピリジノン化合物は、ヨウ化ピリジノン化合物であってそれぞれ前記式(8)で表される5−ヨード−1−(p−メトキシベンジル)ピリジン−2−オン、前記式(9)で表される3−ヨード−1−メチルピリジン−2−オンから、さらに前記式(3)および式(4)で表わされるトリフルオロメチルピリジノン化合物は、ヨウ化ピリジノン化合物であって前記式(10)で表される3,5−ジヨード−1−メチルピリジン−2−オンから、並びに前記式(5)〜(7)で表わされるトリフルオロメチルピリジノン化合物は、ヨウ化ピリジノン化合物であってそれぞれ前記式(11)で表される3−ヨード−1−メチル−5,6,7,8−テトラハイドロキノリン−2−オン、前記式(12)で表される3−ヨード−1−メチル−1,5,6,7−テトラハイドロシクロペンタ[b]ピリジン−2−オン、前記式(13)で表される5,6−ジヒドロ−3−ヨード−1−(p−メトキシベンジル)−ベンゾ[h]キノリン−2−オンから、ヨウ素原子をトリフルオロメチル基で置換する本発明の反応により生成する。
【0024】
本発明で用いることのできるハロゲン化銅としては、塩化銅(I)、臭化銅(I)、ヨウ化銅(I)が好ましく、高収率で目的物が得られることからヨウ化銅(I)がさらに好ましい。
【0025】
本発明で用いる塩類とは、フッ化カリウム、フッ化セシウムおよびtert−ブトキシカリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である。フッ化カリウム、フッ化セシウム、tert−ブトキシカリウムは通常に市販されているフッ化カリウム、フッ化セシウム、tert−ブトキシカリウムを直接用いることができ、溶媒に均一に溶解した状態、あるいは一部が溶解した状態でも使用可能である。当該フッ化カリウムには、反応有機溶媒への溶解、分散性の面から微粉体で比表面積が大きいスプレードライ製法によるフッ化カリウムが含まれる。
【0026】
本発明で用いる溶媒は、非プロトン性の極性溶媒が好ましい。非プロトン性の極性溶媒の中でも、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルプロピレンウレア、N,N−ジメチルエチレンウレア、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、N,N−ジメチルアセトアミドが好ましく、これらは単独で使用し得るのみならず、2種類以上を混合して用いることも可能である。中でも入手が容易で、高収率で目的物が得られることからN,N−ジメチルホルムアミドが特に好ましい。
【0027】
本発明の反応において、反応温度は0℃から溶媒の沸点までが好ましく、20℃から90℃の間がさらに好ましい。
【0028】
本発明で用いる試薬量は、ヨウ化ピリジノン化合物1モルに対して(トリフルオロメチル)トリメチルシランは1〜100モルが好ましく、1〜10モルがさらに好ましい。ハロゲン化銅はヨウ化ピリジノン化合物1モルに対して1〜100モルが好ましく、1〜10モルがさらに好ましい。フッ化カリウムもしくはtert−ブトキシカリウムはヨウ化ピリジノン化合物1モルに対して1〜100モルが好ましく、1〜10モルがさらに好ましい。溶媒量は特に制限するわけではないが、ヨウ化ピリジノン化合物1gに対して溶媒1〜100mLが好ましく、1〜20mLがさらに好ましい。
【0029】
本発明で用いる試薬はあらゆる慣用の方法に従って導入することができ、溶媒、ハロゲン化銅、塩類および基質を先に混合し、最後に(トリフルオロメチル)トリメチルシランを供することが好ましい。
【0030】
本発明のヨウ化ピリジノン化合物中のヨウ素原子をトリフルオロメチル基で置換する反応において、反応器は大気開放型の反応器、またはオートクレーブ等の密閉型の反応器のいずれも可能である。反応圧力は大気圧下、または加圧下のいずれも可能である。
【0031】
ヨウ化ピリジノン化合物のトリフルオロメチル化反応により得られたトリフルオロメチルピリジノン化合物は、一般的な手法によって反応液から単離および精製することができ、例えば反応液を水洗、溶剤抽出、乾燥、濃縮した後、蒸留精製またはシリカゲル、アルミナ等の吸着剤を用いたカラムクロマトグラフ法での精製、塩析、晶析、再結晶等が挙げられ、本発明の目的化合物であるトリフルオロメチルピリジノン化合物を得ることができる。
【0032】
カラムクロマトグラフ法による精製において、展開溶媒は、例えばヘキサン/酢酸エチル(0/100〜100/0(v/v))等を使用することができる。ヘキサンと酢酸エチルの混合溶媒を使用する際の混合比は任意の体積比(v/v)での混合溶媒を用いることができるが、目的物の単離が容易で高収率で目的物が得られることから、50/1〜1/1(v/v)が好ましい。
【0033】
このようにして得られる本発明のトリフルオロメチルピリジノン化合物は、H NMR、13C NMR、19F NMR、赤外吸収スペクトル法(IR)、元素分析法、ガスクロマトグラフ法(GC)等によって、その構造を特定することができる。
【実施例】
【0034】
次に本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0035】
なお、分析用の機器として、NMR測定は日本電子株式会社製JNM−AL300、IR測定は日本分光株式会社(JASCO)製FT/IR−4100、融点測定はヤマト科学株式会社製融点測定器MP−21、元素分析はPerkin−Elmer社製CHNS/O Analyzer 2400を使用して分析した。
【0036】
製造例1 (原料合成)
5−ヨードピリジン−2−オン(0.44g, 2.0mmol)、炭酸カリウム (0.30g, 2.2mmol)、p−メトキシベンジルクロリド(0.31g, 2.0mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド10mL中、25度で一晩撹拌した。反応混合物に水20mLを加えた後、酢酸エチル(20mL×3回)で抽出した。酢酸エチル層を水(20mL×3回)で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。脱水剤をろ過後溶媒留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(充填剤 関東化学社製シリカゲル60球状(particle size63−210mm)、展開溶媒 ヘキサン:酢酸エチル=2:1〜1:1(v:v))で精製した。5−ヨード−1−(p−メトキシベンジル)ピリジン−2−オンを黄色油状物として0.56g(収率82%)得た。
【0037】
実施例1 式(1)化合物の合成
フッ化カリウム(0.15g, 2.6mmol)とヨウ化銅(0.50g, 2.6mmol) および5−ヨード−1−(p−メトキシベンジル)ピリジン−2−オン(0.34g, 1.0mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド5mlで均一にし、続いて(トリフルオロメチル)トリメチルシラン (0.38 mL, 2.6 mmol)を加えた。反応溶液を80℃で6時間撹拌した。塩化アンモニウム水溶液10mLで希釈した後、酢酸エチル(20mL×3回)で抽出した。酢酸エチル層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を留去し、シリカゲルクロマトグラフィー(充填剤 関東化学社製シリカゲル60球状63−210mm、展開溶媒 ヘキサン:酢酸エチル=4:1〜1:1(v:v))で精製した。式(1)の5−トリフルオロメチル−1−(p−メトキシベンジル)ピリジン−2−オンを白色固体として0.19g得た(収率68%)。
Mp: 48 - 49 ℃ (Mpは融点を表わす。以下同じ)
1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ3.81 (s, 3H), 5.01 (s, 2H), 6.65 (d, J=9.6 Hz, 1H), 6.90 (m, 2H), 7.27 (m, 2H), 7.42 (dd, J=9.6, 2.7 Hz, 1H), 7.63 (m, 1H).
13C NMR (75 Hz, CDCl3): δ52.0, 55.1, 109.6 (q, J=34.8 Hz), 114.3, 121.4, 123.2 (q, J=266.6 Hz), 127.1, 129.8, 134.8 (q, J=1.8 Hz), 136.5 (q, J=5.0 Hz), 159.7, 161.8.
19F NMR (282 Hz, CDCl3): δ-63.68 (s).
IR (neat, cm-1): ν3008, 2959, 2840, 1677, 1623, 1514, 1331, 1251, 1167, 1150, 1127.
Anal. Calcd for C14H12F3NO2: C, 59.37; H, 4.27; N, 4.95. Found: C, 58.93; H, 4.36; N, 4.90.
【0038】
実施例2
ヨウ化銅(I)を臭化銅(I)に換えた以外は実施例1と同じ条件に付したところ、式(1)の5−トリフルオロメチル−1−(p−メトキシベンジル)ピリジン−2−オンを収率30%で得た。
【0039】
実施例3
ヨウ化銅(I)を塩化銅(I)に換えた以外は実施例1と同じ条件に付したところ、式(1)の5−トリフルオロメチル−1−(p−メトキシベンジル)ピリジン−2−オンを収率29%で得た。
【0040】
実施例4
フッ化カリウムをtert−ブトキシカリウムに換えた以外は実施例1と同じ条件に付したところ、式(1)の5−トリフルオロメチル−1−(p−メトキシベンジル)ピリジン−2−オンを収率70%で得た。
【0041】
実施例5
フッ化カリウムをフッ化セシウムに換えた以外は実施例1と同じ条件に付したところ、式(1)の5−トリフルオロメチル−1−(p−メトキシベンジル)ピリジン−2−オンを収率82%で得た。
【0042】
実施例6 式(2)化合物の合成
基質を3−ヨード−1−メチルピリジン−2−オンを用いた以外は実施例1と同じ条件に付したところ、式(2)の3−(トリフルオロメチル)−1−メチルピリジン−2−オンを白色固体(収率87%)として得た。
Mp: 93 - 94 ℃.
1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ3.62 (s, 3H), 6.25 (t, J=7.2 Hz, 1H), 7.55 (d, J=6.9 Hz, 1H), 7.76 (d, J=6.9 Hz, 1H).
13C NMR (75 Hz, CDCl3): δ37.6, 103.8, 119.9 (q, J=31.0 Hz), 122.7 (q, J=271.0 Hz), 138.8 (q, J=5.0 Hz), 142.4, 158.7.
19F NMR (282 Hz, CDCl3): δ67.35 (s).
IR (KBr, cm-1): ν3087, 3053, 3013, 1650, 1569, 1467, 1316, 1126, 1079, 880, 771. Anal. Calcd for C7H6F3NO: C, 47.47; H, 3.41; N, 7.91. Found: C, 47.52; H, 3.18; N, 7.88.
【0043】
実施例7 式(3)化合物および式(4)化合物の合成
アルゴン置換した反応容器内で、フッ化カリウム(0.15g, 2.6mmol)とヨウ化銅(0.50g, 2.6mmol) および3,5−ジヨード−1−メチルピリジン−2−オン(0.18g, 0.5mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド5mlで均一にし、続いて(トリフルオロメチル)トリメチルシラン (0.38 mL, 2.6 mmol)を加えた。反応溶液を室温で48時間撹拌した。塩化アンモニウム水溶液10mLで希釈した後、酢酸エチル(10mL×3回)で抽出した。酢酸エチル層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を留去し、シリカゲルクロマトグラフィー(充填剤 関東化学社製シリカゲル60球状63−210mm、展開溶媒 ヘキサン:酢酸エチル=8:1〜2:1(v:v))で精製した。式(3)の1−メチル−3,5−ビス(トリフルオロメチル)ピリジン−2−オンを白色固体(収率35%)および式(4)の5−ヨード−1−メチル−3−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−オンを白色固体(収率57%)としてそれぞれ得た。
【0044】
[式(3)化合物データ]
Mp: 76 - 77 ℃.
1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ3.66 (s, 3H), 7.89 (s, 1H), 7.92 (s, 1H).
13C NMR (75 Hz, CDCl3): δ38.4, 107.9 (q, J=32.0 Hz), 120.7 (q, J=31.0 Hz), 121.9 (q, J=271.0 Hz), 122.6 (q, J=269.8 Hz), 134.9 (m), 141.6 (q, J=5.0 Hz), 158.0.
19F NMR (282 Hz, CDCl3): δ62.84 (s), 67.27 (s).
IR (KBr, cm-1): ν3054, 1636, 1580, 1505, 1417, 1303, 1207, 1117, 892, 752, 686.
Anal. Calcd for C8H5F6NO: C, 39.20; H, 2.06; N, 5.71. Found: C, 38.72; H, 1.99; N, 5.64.
【0045】
[式(4)化合物データ]
Mp: 135 - 136 ℃.
1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ3.59 (s, 3H), 7.77 (s, 1H), 7.84 (s, 1H).
13C NMR (75 Hz, CDCl3): δ37.7, 60.7, 121.6 (q, J=272.3 Hz), 121.7 (q, J=31.0 Hz), 146.1 (q, J=5.0 Hz), 147.2, 157.3.
19F NMR (282 Hz, CDCl3): δ67.41 (s).
IR (KBr, cm-1): ν 3046, 1660, 1593, 1556, 1422, 1303, 1175, 1129, 919, 679.
Anal. Calcd for C7H5F3INO: C, 27.75; H, 1.66; N, 4.62. Found: C, 27.66; H, 1.74; N, 4.48.
【0046】
実施例8 式(5)化合物の合成
基質を3−ヨード−1−メチル−5,6,7,8−テトラハイドロキノリン−2−オンを用いた以外は実施例1と同じ条件に付したところ、式(5)の1−メチル−3−トリフルオロメチル−5,6,7,8−テトラハイドロキノリン−2−オンを白色固体(収率98%)として得た。
Mp: 111 - 112 ℃.
1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ1.75 (m, 2H), 1.89 (m, 2H), 2.56 (t, J=6.0 Hz, 2H), 2.68 (t, J=5.7 Hz, 2H), 3.53 (s, 3H), 7.48 (s, 1H).
13C NMR (75 Hz, CDCl3): δ21.2, 21.8, 27.0, 27.6, 30.0, 116.1 (q, J=30.4 Hz), 123.0 (q, J=270.4 Hz), 139.6 (q, J=5.0 Hz), 148.6, 158.7.
19F NMR (282 Hz, CDCl3): δ66.92 (s).
IR (KBr, cm-1): ν 3037, 2948, 2874, 1666, 1606, 1557, 1427, 1323, 1174, 1133, 1100, 1071, 983, 944.
Anal. Calcd for C11H12F3NO: C, 57.14; H, 5.23; N, 6.06. Found: C, 57.20; H, 4.99; N, 6.07.
【0047】
実施例9 式(6)化合物の合成
基質を3−ヨード−1−メチル−1,5,6,7−テトラハイドロシクロペンタ[b]ピリジン−2−オンを用いた以外は実施例1と同じ条件に付したところ、式(6)の1−メチル−3−(トリフルオロメチル)−1,5,6,7−テトラハイドロシクロペンタ[b] ピリジン−2−オンを白色固体として得た(収率99%)。
Mp: 143 - 144 ℃.
1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ2.20 (quint., J=7.5 Hz, 2H), 2.83 (t, J=7.5 Hz, 2H), 2.97 (m, 2H), 3.54 (s, 3H), 7.65 (s, 1H).
13C NMR (75 Hz, CDCl3): δ22.2, 29.8, 32.5, 115.8 (q, J=29.2 Hz), 116.9, 123.2 (q, J=271.0 Hz), 135.4 (q, J=5.0 Hz), 155.4, 159.2.
19F NMR (282 Hz, CDCl3): δ66.97 (s).
IR (KBr, cm-1): ν3021, 2918, 2864, 1642, 1577, 1530, 1433, 1231, 791, 753.
Anal. Calcd for C10H10F3NO: C, 55.30; H, 4.64; N, 6.45. Found: C,55.00; H,4.43; N,5.96.
【0048】
実施例10 式(7)化合物の合成
基質を5,6−ジヒドロ−3−ヨード−1−(p−メトキシベンジル)−ベンゾ[h]キノリン−2−オンを用いた以外は実施例1と同じ条件に付したところ、式(7)の5,6−ジヒドロ−1−(p−メトキシベンジル)−3−(トリフルオロメチル)ベンゾ[h]キノリン−2−オンを高粘性黄色油状物として得た(収率98%)。
1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ2.92 (m, 4H), 3.80 (s, 3H), 5.57 (s, 2H), 6.90 (d, J=8.7 Hz, 2H), 7.25 (m, 1H), 7.36 (m, 2H), 7.45 (d, J=8.7 Hz, 2H), 7.68 (s, 1H), 8.27 (m, 1H).
13C NMR (75 Hz, CDCl3): δ26.5, 27.9, 55.1, 67.4, 111.1 (q, J=32.2 Hz), 113.7, 123.3 (q, J=271.0 Hz), 123.5, 125.4, 127.0, 127.9, 129.1, 129.2, 129.3, 133.4, 136.3 (q, J=4.4 Hz), 138.5, 152.8, 158.8(q, J=1.9 Hz).
19F NMR (282 Hz, CDCl3): δ64.21 (s).
IR (KBr, cm-1): ν3008, 2940, 2839, 1614, 1515, 1439, 1304, 1274, 1248, 1135, 1078.
Anal. Calcd for C22H18F3NO2: C, 68.57; H, 4.71; N, 3.63. Found: C, 68.39; H, 4.78; N, 3.54.
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、新規のトリフルオロメチル基を有するピリジノン化合物を見出したものであり、さらにヨウ化ピリジノン化合物、ハロゲン化銅、塩類、および(トリフルオロメチル)トリメチルシランを用いることによって合成できることを見出した。トリフルオロメチル基を有するピリジノン化合物は優れた医農薬中間体および機能性材料原料であり、本発明は簡便かつ効率的に合成できる新規トリフルオロメチルピリジノン化合物を提供するものであり、工業的にも有用である。