(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内核および外層を有する有核錠であって、内核がアセチルサリチル酸を含有する腸溶性被覆錠であり、外層がプロトンポンプ阻害薬を含有する腸溶性細粒を含有する有核錠。
外層において、プロトンポンプ阻害薬を含有する腸溶性細粒以外の部分にクロスポビドンおよびメタケイ酸アルミン酸マグネシウムから選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1記載の有核錠。
アセチルサリチル酸を含有する腸溶性被覆錠が、全体の80重量%以上が粒径約125〜約1000μmであるアセチルサリチル酸を原料として用いて、製造される請求項12記載の製造法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の有核錠は、「アセチルサリチル酸を含有する腸溶性被覆錠」である内核を含有し、その外層中に「プロトンポンプ阻害薬を含有する腸溶性細粒」を含有することを特徴とする。
【0009】
(1)「アセチルサリチル酸を含有する腸溶性被覆錠」(以下、「内核錠」と称する場合がある)
本発明の有核錠における「アセチルサリチル酸を含有する腸溶性被覆錠」は、1)アセチルサリチル酸、2)任意に添加してもよい添加剤および3)腸溶性被覆成分を含有し、有核錠の内核を構成するものである。
「アセチルサリチル酸を含有する腸溶性被覆錠」は、1)アセチルサリチル酸および2)任意に添加してもよい添加剤を混合し、打錠することによって「アセチルサリチル酸を含有する素錠」を得、これに3)腸溶性被覆成分を被覆することによって製造できる。
ここで、「被覆」とは、被覆される対象(アセチルサリチル酸を含有する素錠)の表面全体を被覆する場合に限らず、部分的に被覆する場合、あるいは吸着または吸収されていている場合も含む意味に用いる。
本発明の有核錠におけるアセチルサリチル酸の含有量は、有核錠1錠あたり通常約70〜約400mgである。非ステロイド性抗炎症薬として、主に疼痛、発熱、炎症の治療を目的とする場合、本発明の有核錠におけるアセチルサリチル酸の含有量は、有核錠1錠あたり通常約250〜約400mgである。
一方、脳血管、循環器領域の疾患における血栓および/または塞栓形成の抑制(抗血小板療法)などを目的とする場合、本発明の有核錠におけるアセチルサリチル酸の含有量は、有核錠1錠あたり通常約70mg〜約120mg(好ましくは約100mg)である。
アセチルサリチル酸の含有量は、有核錠中、通常約10〜約50重量%である。
前記「任意に添加してもよい添加剤」としては、賦形剤、崩壊剤、流動化剤、結合剤、界面活性剤、滑沢剤などが用いられる
【0010】
前記「賦形剤」としては、例えば乳糖、白糖、D−マンニトール、デンプン、コーンスターチ、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸などが挙げられる。これら賦形剤は、単独使用のほかに、二種以上併用することもできる。該「賦形剤」の含有量は、「アセチルサリチル酸を含有する腸溶性被覆錠」中、通常約5〜約30重量%、好ましくは約10〜約20重量%である。
前記「崩壊剤」としては、例えばカルメロース、クロスカルメロースナトリウム、結晶セルロース、アルファー化デンプン、ゼラチン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなどが挙げられる。これらは、単独使用のほかに、二種以上併用することもできる。特に、アセチルサリチル酸の崩壊性と安定性向上の観点から、カルメロースを用いることが好ましい。該「崩壊剤」の含有量は、「アセチルサリチル酸を含有する腸溶性被覆錠」中、通常約1〜約20重量%、好ましくは約1〜約10重量%である。
前記「流動化剤」としては、例えば軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、タルク、ステアリン酸などが挙げられる。これらは、単独使用のほかに、二種以上併用することもできる。該「流動化剤」の含有量は、「アセチルサリチル酸を含有する腸溶性被覆錠」中、通常0〜約10重量%である。
前記「結合剤」としては、例えばヒドロキシプロピルセルロース、コーンスターチ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、結晶セルロース、アルファー化デンプン、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム末、ゼラチン、プルラン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなどが挙げられる。これらは、単独使用のほかに、二種以上併用することもできる。該「結合剤」の含有量は、「アセチルサリチル酸を含有する腸溶性被覆錠」中、通常0〜約10重量%である。
前記「界面活性剤」としては、例えばラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・グリコール、ポリソルベート80などが挙げられる。これらは、単独使用のほかに、二種以上併用することもできる。
前記「滑沢剤」としては、例えば硬化油、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸、ポリソルベート80などが挙げられる。ここで、ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤はアセチルサリチル酸との配合性が悪いため、本発明の有核錠の内核素錠にはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤を含有しないことが好ましい。
前記添加剤としては賦形剤、崩壊剤、結合剤などが好ましく用いられる。
【0011】
アセチルサリチル酸と添加剤の混合物としては、アセチルサリチル酸の粉末、あるいはアセチルサリチル酸と賦形剤とのプレミックス品(例、アセチルサリチル酸:コーンスターチ=90:10 乾式造粒品)を用いて他の添加剤とともに均質に混合してもよいが、打錠障害や流動性不良を回避する目的から、粒度の粗いアセチルサリチル酸造粒品を用いて、添加剤とともに均質に混合し、打錠することによってアセチルサリチル酸を含有する素錠を製造することが望ましい。前記アセチルサリチル酸造粒品としては、全体の80重量%以上が粒径約125〜約1000μmであるアセチルサリチル酸が好ましい。上記粒径あるいは粒径分布は、例えば目開き125μmと1000μmの篩を使用しアセチルサリチル酸をふるうことで測定できる。
アセチルサリチル酸と添加剤の「混合」は、一般に用いられる混合方法、例えば混合、練合、造粒などにより行われる。該「混合」は、例えばバーチカルグラニュレーターVG10(パウレック社製)、万能練合機(畑鉄工所製)、流動層造粒機LAB−1、FD−3S、FD−WSG−60(パウレック社製)、V型混合機、タンブラー混合機などの装置を用いて行われる。
【0012】
「打錠」は、単発錠剤機、ロータリー式打錠機(菊水製作所製)などを用い、1〜80kN/cm
2、10〜70kN/cm
2、好ましくは15〜60kN/cm
2の圧力で打錠することにより行われる。また、ロータリー式打錠機の場合、通常の回転数、例えば、3〜80min
−1、好ましくは3〜60min
−1、より好ましくは5〜40min
−1で打錠すればよい。
「アセチルサリチル酸を含有する素錠」の好ましい直径は5.0〜8.0mmである。
「アセチルサリチル酸を含有する素錠」の形状は、内核の所望の形状に対応する。内核の形状については後述する。
【0013】
該「アセチルサリチル酸を含有する素錠」を被覆する「腸溶性被覆成分」としては、例えば、セルロースアセテートフタレート(CAP(商品名;Aquateric FMC社製))、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HP−55(商品名;信越化学工業社製))、ヒドロキシメチルセルロースアセテートサクシネート、メタクリル酸共重合体(例えば、メタクリル酸コポリマーLD(オイドラギット(Eudragit)L30D−55(商品名;エボニック社製))、コリコートMAE30DP(商品名;BASF社製)、ポリキッドPA30(商品名;三洋化成社製)など)、カルボキシメチルエチルセルロース、セラックなどの水系腸溶性高分子基剤;メタクリレート共重合体(例えば、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー(オイドラギットNE30D(商品名;エボニック社製))、
アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー分散液タイプA(オイドラギットRL30D(商品名;エボニック社製))、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS(オイドラギットRS30D(商品名;エボニック社製))など)などの徐放性基剤;エタノール可溶性水溶性高分子(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(以下、HPCと記載することがある)などのセルロース誘導体、ポリビニルピロリドンなど)、エタノール不溶性水溶性高分子(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(以下、HPMCと記載することがある)、メチルセルロース、カルメロースナトリウムなどのセルロース誘導体、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、グアーガムなど)などの水溶性高分子;クエン酸トリエチル、ポリエチレングリコール、アセチル化モノグリセリド、トリアセチン、ヒマシ油などの可塑剤等が用いられる。これらは一種または二種以上混合して使用してもよい。
前記「水系腸溶性高分子基剤」としては、メタクリル酸コポリマーLDなどのメタクリル酸共重合体(methacrylic acid copolymer)が好ましい。該「水系腸溶性高分子基剤」の含有量は、「アセチルサリチル酸を含有する腸溶性被覆錠」中、通常約3〜約20重量%である。
前記「徐放性基剤」としては、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマーなどのメタクリレート共重合体(methacrylate copolymer)が好ましい。該「徐放性基剤」の含有量は、「アセチルサリチル酸を含有する腸溶性被覆錠」中、通常約0.3〜約1.0重量%である。該「徐放性基剤」の含有量は、水系腸溶性高分子基剤100重量部に対して、通常約5〜約30重量部、好ましくは約5〜約15重量部である。
前記「可塑剤」としては、クエン酸トリエチルなどが好ましい。該「可塑剤」の含有量は、「アセチルサリチル酸を含有する腸溶性被覆錠」中、通常約0.5〜約3.0重量%である。該「可塑剤」の含有量は、水系腸溶性高分子基剤100重量部に対して、好ましくは約10〜約30重量部である。
「アセチルサリチル酸を含有する腸溶性被覆錠」における腸溶性被覆層を構成するポリマーとしては、有核打錠工程において内核の腸溶性被覆層が割れることを避けるために、水系腸溶性高分子基剤および徐放性基剤を含有するコーティング剤を用いることが好ましく、特にメタクリル酸コポリマーLDなどのメタクリル酸共重合体、およびアクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマーなどのメタクリレート共重合体を所定の割合で混合したコーティング液を用いることが望ましい。
例えば、メタクリル酸コポリマーLDなどのメタクリル酸共重合体、およびアクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマーなどのメタクリレート共重合体の好ましい含有比率(メタクリル酸共重合体(特にメタクリル酸コポリマーLD):メタクリレート共重合体(特にアクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー))は約85:15〜約95:5であり、特に約9:1が好ましい。
前記「腸溶性被覆成分」には、前述の水系腸溶性高分子基剤、徐放性基剤、水溶性高分子、可塑剤に加えて、界面活性剤、滑沢剤、pH調整剤などの各種添加物を含んでいてもよい。
前記「界面活性剤」としては、例えば、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート80)、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合物、ラウリル硫酸ナトリウムなどが挙げられ、中でもポリソルベート、ラウリル硫酸ナトリウムが好ましい。該「界面活性剤」の含有量は、腸溶性被覆成分中、通常約1〜約5重量%である。
前記「滑沢剤」としては、例えば、タルク、モノステアリン酸グリセリンなどが挙げられ、中でもモノステアリン酸グリセリンが好ましい。該「滑沢剤」の含有量は、腸溶性被覆成分中、通常約1〜約30重量%である。
前記「pH調整剤」としては、例えば、無水クエン酸が挙げられる。該「pH調整剤」の含有量は、腸溶性被覆成分中、通常0〜約2重量%である。
【0014】
前記「アセチルサリチル酸を含有する腸溶性被覆錠」は、「アセチルサリチル酸を含有する素錠」に対して、公知のコーティング法を用いて、「腸溶性被覆成分」を被覆することにより製造することができる。
被覆方法は、特に限定されないが、例えば、素錠に、フィルムコーティング機などのコーティング機を用いて腸溶性被覆成分をコーティングすることにより得ることができる。
【0015】
該「アセチルサリチル酸を含有する素錠」に対する被覆層の割合は、アセチルサリチル酸の耐酸性および溶出性を制御できる範囲で選択でき、例えば、素錠100重量部に対して、通常、約3〜約30重量部、好ましくは約5〜約20重量部程度である。
「被覆層」は複数の層で形成されていてもよく、下掛け用の被覆層、腸溶性被覆層など種々の被覆層の組み合わせは必要に応じて適宜選択されうる。
腸溶性被覆のためのコーティング液は、例えば、前記したような水系腸溶性高分子基剤、徐放性基剤、水溶性高分子、可塑剤、界面活性剤、滑沢剤、pH調整剤などの腸溶性被覆成分を混合液として使用する。該混合液は、溶液でも分散液であってもよく、水またはエタノールなどの有機溶媒、またはこれらの混液を用いて調製できる。該混合液中の水系腸溶性高分子基剤、徐放性基剤および水溶性高分子などのポリマーの濃度は、通常、約0.1〜約50重量%、好ましくは約5〜約30重量%程度である。
必要に応じて腸溶性被覆層のさらに外側に、賦形剤あるいは結合剤、もしくはその両方が被覆されてもよく、その場合、錠剤強度が向上する。腸溶性被覆層のさらに外側に被覆できる結合剤として、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルファー化デンプン、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム末、ゼラチン、プルランなどが挙げられる。腸溶性被覆層のさらに外側に被覆できる賦形剤として、例えば乳糖、白糖、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、デンプン、コーンスターチ、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸などが挙げられる。賦形剤は結合剤とともに溶液または懸濁液を調製してコーティングすることができる。
【0016】
以下に、本発明の有核錠における内核(すなわち、内核錠)の好ましい形状について説明する。
内核の外面には、外層に含有される粉末状の固形成分の中で平均粒径が最も小さい成分の当該平均粒径より開口の大きい凹部が形成されていることが好ましい。
外層に含有される粉末状の固形成分の中で平均粒径が最も小さい成分の当該平均粒径よりも、内核に形成された凹部の開口が大きいことにより、内核の外面に外層を設ける際に、少なくとも一種類の粉末状の固形成分が凹部に入り込むため、有核錠の強度を高めることができる。
凹部の深さは、外層に含有される粉末状の固形成分の中で平均粒径が最も小さい成分の当該平均粒径より大きいことが好ましく、この場合、有核錠の強度をより高めることができる。
凹部は、溝状に形成されていてもよいし、内核の外面に点在する穴状に形成されていてもよい。凹部は、溝状に形成された文字、数字、記号等であってもよい。
内核が、互いに対向配置された二面を有する場合、凹部は、二面の少なくとも一方に形成されていてもよい。この場合、二面の対向方向に沿って外層を圧縮し、二面の少なくとも一方に形成された凹部に外層の内面をより確実に入り込ませることができる。
内核が、互いに対向配置された二面と、二面の周縁同士の間に配置された周面とを有する場合、凹部は、周面に形成されていてもよい。
【0017】
図1に、本発明の有核錠の一実施形態を示す模式図を示す。
図1に示されるように、外層3は、内核2を包むように形成され、内核2の形状に対応した形状を呈している。溝8、9は、外層3に含有される成分により充填されている。すなわち、外層3の内面3aは、溝8、9に入り込んでいる。外層3の表面には溝8、9に対応する溝は形成されておらず、外層3の表面は滑らかになっている。
【0018】
内核の形状について、より詳細に説明する。
図2〜8に本発明の有核錠における内核またはその素錠の一実施形態を示す。
図2〜5に示されるように、内核2の素錠4は、平面視で円形をなす扁平形状を呈している。具体的に、素錠4は、互いに対向する円形面4a、4bと、円形面4a、4bの周縁同士の間に配置された周面4cとを有し、円形面4a、4bの対向方向における素錠4の両端部間の距離は、平面視における素錠4の直径よりも小さくなっている。各円形面4a、4bは、球面状に膨出している。このように、素錠4は、所謂円形R面の錠剤形状を呈している。平面視における素錠4の直径は、例えば約5〜約8mmである。円形面4a、4bがなしている球面の曲率半径は、平面視における素錠4の半径よりも大きく、例えば約10mmである。
円形面4a、4bには、円形面4a、4bの径方向に沿う溝(凹部)6、7がそれぞれ形成されている。溝6、7は、平面視で互いに直交している。溝6、7は、必ずしも平面視で互いに直交している必要はないが、平面視で互いに直交していることが好ましい。溝6、7のそれぞれの断面形状はV字状となっており、溝6、7の幅は底部から遠ざかるにつれて広くなっている。溝6、7の底部6a、7aは、それぞれ円形面4a、4bがなす球面に倣って湾曲している。溝6の両端部には、円形面4aの周縁を含む平面に一致する端面6b、6bが形成されており、溝7の両端部には、円形面4bの周縁を含む平面に一致する端面7b、7bが形成されている。溝6、7は、素錠4の打錠時に、打錠用の杵(型)によって形成される。なお、溝6、7等の凹部を形成すると、その周囲は相対的に凸部となる。すなわち、凹部を設けることと、凸部を設けることとは同義である。
内核2は、素錠4の外表面を被覆層5により被覆して構成されている。被覆層5の形成後において、内核2は、素錠4と同様に平面視で円形をなす扁平形状を呈している。
図4及び
図5に示されるように、素錠4の円形面4a、4bに被覆層5が被覆され、内核2の円形面2a、2bが形成されている。素錠4の周面4cに被覆層5が被覆され、内核2の周面2cが形成されている。素錠4の溝6、7に被覆層5が入り込み、内核2の円形面2a、2bに断面V字状の溝8、9が形成されている。内核2の溝8、9の開口幅W1は、少なくとも、外層3に含有される粉末状の固形成分の中で平均粒径が最も小さい成分の当該平均粒径より大きくなっている。開口幅W1は、外層3に含有される粉末状の固形成分の中で平均粒径が最も大きい成分の当該平均粒径より大きくなっていることが好ましい。
内核2の溝8、9の深さD1も、外層3に含有される粉末状の固形成分の中で平均粒径が最も小さい成分の当該平均粒径より大きくなっていることが好ましく、外層3に含有される粉末状の固形成分の中で平均粒径が最も大きい成分の当該平均粒径より大きくなっていることが好ましい。
外層3に含有される粉末状の各固形成分の「平均粒径」とは、体積基準メジアン径(メジアン径:累積分布50%相当粒子径)を意味する。その測定方法としては、例えばレーザー回折式粒度分布測定法が挙げられ、具体例として、レーザー回折式粒度分布測定装置HEROS RODOS(Sympatec社(ドイツ)製)を用いる方法が挙げられる。
【0019】
図6に示される内核2Aは、内形面2aに、面の中心で交差する十字状の線に沿う溝10A、10Bを設け、内形面2bにも同様の溝11A、11Bを設けたものである。溝10A、10Bと溝11A、11Bとは、平面視で互いに傾いていてもよい。
図7に示される内核2Bは、円形面2aに、互いに平行な線に沿う複数の溝12A、12Aと、各溝12Aに直交する線に沿う複数の溝12B、12Bとを格子状に設け、円形面2bにも同様の溝13A、13Aと溝13B、13Bとを格子状に設けたものである。
図8に示される内核2Cは、円形面2a、2bのそれぞれに、終縁に倣う円形の線に沿って溝14、15を設けたものである。この場合、内核2Cの各径方向と溝14、15とが等しい角度で交差する。従って、内核2と外層3とのずれを防止する作用が内核2の各径方向でより均等に得られる。
【0020】
(2)「PPIを含有する腸溶性細粒」
(2)−1:PPIについて
本発明において、PPIとしては、以下の式(I)で表される化合物〔以下、単に化合物(I)と称することがある〕またはその光学活性体あるいはその塩が好ましい。
【0023】
〔式中、環Aは置換基を有していてもよいベンゼン環、R
1は水素原子、置換基を有していてもよいアラルキル基、アシル基またはアシルオキシ基、R
2、R
3およびR
4は、それぞれ同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基または置換基を有していてもよいアミノ基、およびYは窒素原子またはCHを示す〕で表される化合物またはその光学活性体あるいはその塩。
【0024】
上記化合物(I)中、環Aで示される「置換基を有していてもよいベンゼン環」の「置換基」としては、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、置換基を有していてもよいアルキル基、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、カルボキシ基、アシル基、アシルオキシ基、5ないし10員複素環基などが挙げられ、これらの置換基はベンゼン環に1ないし3個程度置換していてもよい。置換基の数が2個以上の場合、各置換基は同一または異なっていてもよい。これらの置換基のうち、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基などが好ましい。
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素原子などが挙げられる。なかでもフッ素原子が好ましい。
「置換基を有していてもよいアルキル基」の「アルキル基」としては、例えば、C
1−7アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル基など)が挙げられる。「置換基を有していてもよいアルキル基」の「置換基」としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、C
1−6アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシなど)、C
1−6アルコキシ−カルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニルなど)、カルバモイル基などで例示でき、これらの置換基の数は1ないし3個程度であってもよい。置換基の数が2個以上の場合、各置換基は同一または異なっていてもよい。
「置換基を有していてもよいアルコキシ基」の「アルコキシ基」としては、例えば、C
1−6アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、ペントキシなど)などが挙げられる。「置換基を有していてもよいアルコキシ基」の「置換基」としては、上記「置換基を有していてもよいアルキル基」の「置換基」と同様のものが例示でき、置換基の置換数も同様である。
「アリール基」としては、例えば、C
6−14アリール基(例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、ビフェニル、2−アンスリルなど)などが挙げられる。
「アリールオキシ基」としては、例えば、C
6−14アリールオキシ基(例えば、フェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシなど)などが挙げられる。
「アシル基」としては、例えば、ホルミル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、カルバモイル、アルキルカルバモイル、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニルなどが挙げられる。
「アルキルカルボニル基」としては、C
1−6アルキル−カルボニル基(例えば、アセチル、プロピオニルなど)などが挙げられる。
「アルコキシカルボニル基」としては、例えば、C
1−6アルコキシ−カルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニルなど)などが挙げられる。
「アルキルカルバモイル基」としては、N−C
1−6アルキル−カルバモイル基(例えば、メチルカルバモイル、エチルカルバモイル基など)、N,N−ジ−C
1−6アルキル−カルバモイル基(例えば、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジエチルカルバモイルなど)などが挙げられる。
「アルキルスルフィニル基」としては、例えば、C
1−7アルキルスルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、プロピルスルフィニル、イソプロピルスルフィニルなど)が挙げられる。
「アルキルスルホニル基」としては、例えば、C
1−7アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、イソプロピルスルホニルなど)が挙げられる。
「アシルオキシ基」としては、例えば、アルキルカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、カルバモイルオキシ、アルキルカルバモイルオキシ、アルキルスルフィニルオキシ、アルキルスルホニルオキシなどが挙げられる。
「アルキルカルボニルオキシ基」としては、C
1−6アルキル−カルボニルオキシ基(例えば、アセチルオキシ、プロピオニルオキシなど)などが挙げられる。
「アルコキシカルボニルオキシ基」としては、例えばC
1−6アルコキシ−カルボニルオキシ基(例えば、メトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、プロポキシカルボニルオキシ、ブトキシカルボニルオキシなど)などが挙げられる。
「アルキルカルバモイルオキシ基」としては、C
1−6アルキル−カルバモイルオキシ基(例えば、メチルカルバモイルオキシ、エチルカルバモイルオキシなど)などが挙げられる。
「アルキルスルフィニルオキシ基」としては、例えばC
1−7アルキルスルフィニルオキシ基(例えば、メチルスルフィニルオキシ、エチルスルフィニルオキシ、プロピルスルフィニルオキシ、イソプロピルスルフィニルオキシなど)が挙げられる。
「アルキルスルホニルオキシ基」としては、例えばC
1−7アルキルスルホニルオキシ基(例えば、メチルスルホニルオキシ、エチルスルホニルオキシ、プロピルスルホニルオキシ、イソプロピルスルホニルオキシなど)が挙げられる。
「5ないし10員複素環基」としては、例えば、炭素原子以外に窒素原子、硫黄原子および酸素原子から選ばれるヘテロ原子を1個以上(例えば、1〜3個)を含む5ないし10員(好ましくは5または6員)複素環基が挙げられ、具体例としては、2−または3−チエニル基、2−、3−または4−ピリジル基、2−または3−フリル基、1−、2−または3−ピロリル基、2−、3−、4−、5−または8−キノリル基、1−、3−、4−または5−イソキノリル基、1−、2−または3−インドリル基などが挙げられる。このうち好ましくは1−、2−または3−ピロリル基などの5または6員複素環基である。
好ましくは、環Aは、ハロゲン原子、ハロゲン化されていてもよいC
1−4アルキル基、ハロゲン化されていてもよいC
1−4アルコキシ基および5または6員複素環基から選ばれる置換基を1または2個有していてもよいベンゼン環である。
【0025】
R
1で示される「置換基を有していてもよいアラルキル基」の「アラルキル基」としては、例えば、C
7−16アラルキル基(例えば、ベンジル、フェネチルなどのC
6−10アリールC
1−6アルキル基など)などが挙げられる。「置換基を有していてもよいアラルキル基」の「置換基」としては、上記「置換基を有していてもよいアルキル基」の「置換基」と同様の置換基が例示でき、置換基の数は1ないし4個程度である。置換基の数が2個以上の場合、各置換基は同一または異なっていてもよい。
R
1で示される「アシル基」としては、例えば、上記環Aの置換基として記載した「アシル基」が挙げられる。
R
1で示される「アシルオキシ基」としては、例えば、上記環Aの置換基として記載した「アシルオキシ基」が挙げられる。
好ましいR
1は、水素原子である。
【0026】
R
2、R
3またはR
4で示される「置換基を有していてもよいアルキル基」としては、上記環Aの置換基として記載した「置換基を有していてもよいアルキル基」が挙げられる。
R
2、R
3またはR
4で示される「置換基を有していてもよいアルコキシ基」としては、上記環Aの置換基として記載した「置換基を有していてもよいアルコキシ基」が挙げられる。
R
2、R
3またはR
4で示される「置換基を有してもよいアミノ基」としては、例えば、アミノ基、モノ−C
1−6アルキルアミノ基(例えば、メチルアミノ、エチルアミノなど)、モノ−C
6−14アリールアミノ基(例えば、フェニルアミノ、1−ナフチルアミノ、2−ナフチルアミノなど)、ジ−C
1−6アルキルアミノ基(例えば、ジメチルアミノ、ジエチルアミノなど)、ジ−C
6−14アリールアミノ基(例えば、ジフェニルアミノなど)などが挙げられる。
好ましいR
2は、C
1−6アルキル基、C
1−6アルコキシ基、C
1−6アルコキシ−C
1−6アルコキシ基、ジ−C
1−6アルキルアミノ基である。さらに好ましいR
2はC
1−3アルキル基またはC
1−3アルコキシ基である。
好ましいR
3は、水素原子、C
1−6アルコキシ−C
1−6アルコキシ基またはハロゲン化されていてもよいC
1−6アルコキシ基である。さらに好ましいR
3はハロゲン化されているかまたはC
1−3アルコキシ基で置換されていてもよいC
1−3アルコキシ基である。
好ましいR
4は、水素原子またはC
1−6アルキル基である。さらに好ましいR
4は水素原子またはC
1−3アルキル基(特に水素原子)である。
好ましいYは、窒素原子である。
【0027】
好ましい式(I)の化合物は、環Aが、ハロゲン原子、ハロゲン化されていてもよいC
1−4アルキル基、ハロゲン化されていてもよいC
1−4アルコキシ基および5または6員複素環基から選ばれた置換基を有していてもよいベンゼン環であり、R
1が水素原子であり、R
2がC
1−6アルキル基、C
1−6アルコキシ基、C
1−6アルコキシ−C
1−6アルコキシ基またはジ−C
1−6アルキルアミノ基であり、R
3が水素原子、C
1−6アルコキシ−C
1−6アルコキシ基またはハロゲン化されていてもよいC
1−6アルコキシ基であり、R
4が水素原子またはC
1−6アルキル基であり、Yが窒素原子である化合物である。
【0028】
化合物(I)のなかでも、式(Ia):
【0030】
〔式中、R
1は水素原子、R
2はC
1−3アルキル基またはC
1−3アルコキシ基、R
3はハロゲン化されているかまたはC
1−3アルコキシ基で置換されていてもよいC
1−3アルコキシ基、R
4は水素原子またはC
1−3アルキル基、R
5は水素原子、ハロゲン化されていてもよいC
1−3アルコキシ基またはピロリル基(例えば、1−、2−または3−ピロリル基)を示す〕で表される化合物である。
式(Ia)において、R
1が水素原子、R
2がC
1−3アルキル基、R
3がハロゲン化されていてもよいC
1−3アルコキシ基、R
4が水素原子、R
5が水素原子またはハロゲン化されていてもよいC
1−3アルコキシ基である化合物が特に好ましい。
【0031】
化合物(I)の具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
2−[[[3−メチル−4−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−2−ピリジニル]メチル]スルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール、2−[[(3,5−ジメチル−4−メトキシ−2−ピリジニル)メチル]スルフィニル]−5−メトキシ−1H−ベンズイミダゾール、2−[[[4−(3−メトキシプロポキシ)−3−メチル−2−ピリジニル]メチル]スルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール・ナトリウム塩、5−ジフルオロメトキシ−2−[[(3,4−ジメトキシ−2−ピリジニル)メチル]スルフィニル]−1H−ベンズイミダゾールなど。
これらの化合物のうち、2−[[[3−メチル−4−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−2−ピリジニル]メチル]スルフィニル]−1H−ベンズイミダゾール(ランソプラゾール)が好ましい。
【0032】
化合物(I)はラセミ体であってもよいし、R−体、S−体などの光学活性体であってもよい。例えば、化合物(I)は、(R)−2−[[[3−メチル−4−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−2−ピリジニル]メチル]スルフィニル]−1H−ベンズイミダゾールなどの光学活性体であってもよく、また当該光学活性体は好ましい。
【0033】
化合物(I)またはその光学活性体の塩としては、薬学的に許容される塩が好ましく、例えば、化合物(I)またはその光学活性体の無機塩基との塩、有機塩基との塩、塩基性アミノ酸との塩などが挙げられる。
無機塩基との塩の好適な例としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩などが挙げられる。
有機塩基との塩の好適な例としては、例えば、アルキルアミン(トリメチルアミン、トリエチルアミンなど)、複素環式アミン(ピリジン、ピコリンなど)、アルカノールアミン(エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなど)、ジシクロヘキシルアミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミンなどとの塩が挙げられる。
塩基性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えば、アルギニン、リジン、オルニチンなどとの塩が挙げられる。
これらの塩のうち好ましくは、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩である。とりわけナトリウム塩が好ましい。
化合物(I)は、自体公知の方法により製造でき、例えば、特開昭61−50978号公報、米国特許4,628,098号明細書、特開平10−195068号公報、国際公開第98/21201号パンフレットなどに記載の方法またはこれらに準じた方法により製造される。
化合物(I)の光学活性体は、光学分割法(分別再結晶法、キラルカラム法、ジアステレオマー法、微生物または酵素を用いる方法など)、不斉酸化などの方法で得ることができる。例えばランソプラゾール R体の場合は、国際公開第00/78745号パンフレット、国際公開第01/83473号パンフレット、国際公開第01/87874号パンフレットおよび国際公開第02/44167号パンフレット記載の方法に従って製造することもできる。
【0034】
本発明で用いるPPIとしては、ランソプラゾール、オメプラゾール、ラベプラゾール、パントプラゾールのような抗潰瘍作用を有するベンズイミダゾール系化合物およびそれらの光学活性体ならびにそれらの薬学的に許容される塩から選ばれるものが好ましい。
【0035】
(2)−2:「PPIを含有する腸溶性細粒」について
本発明において、「PPIを含有する腸溶性細粒」とは、「PPIを含有する組成物」が腸溶性被覆層で被覆された細粒を意味する。
「被覆」とは、被覆される対象(例、核)の表面全体を被覆する場合に限らず、部分的に被覆する場合、あるいは吸着または吸収されていている場合も含む意味に用いる。「平均粒径」とは、特に断りのない限り、体積基準メジアン径(メジアン径:累積分布50%相当粒子径)を示す。その測定方法としては、例えばレーザー回折式粒度分布測定法が挙げられ、具体例として、レーザー回折式粒度分布測定装置HEROS RODOS(Sympatec社(ドイツ)製)を用いる方法が挙げられる。
【0036】
「PPIを含有する腸溶性細粒」の平均粒径は、通常400μm以下であり、好ましくは、300〜400μmである。
該「細粒」の平均粒径ではなく、最大の粒子の大きさを規定する場合には、粒径が通常実質的に425μm以下、好ましくは実質的に400μm以下である。粒径の範囲は好ましくは実質的に300〜425μm、さらに好ましくは実質的に300〜400μmである。
「粒径が実質的に425μm以下である」および「粒径が実質的に400μm以下である」などの「実質的に」の意味は、不可避的に混入する粒子である限り、それぞれ前記範囲を外れる粒子径の粒子を少量(約5重量%以下)含んでいても良いことを意味する。
前記「PPIを含有する組成物」(腸溶性被覆層で被覆する前の組成物)中のPPIの含有量は、例えば、好ましくは約5重量%以上、より好ましくは約10〜約50重量%、さらに好ましくは約15〜約50重量%、特に好ましくは約20〜約50重量%である。
有核錠中のPPIの含有量は、例えば、好ましくは約1重量%以上、より好ましくは約1.5重量%以上、約10.0重量%以下、さらに好ましくは約2.0重量%以上、約8.0重量%以下である。
【0037】
該「PPIを含有する組成物」中、PPIを製剤中で安定化するために塩基性無機塩を含有させることが好ましい。
該「塩基性無機塩」としては、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよび/またはカルシウムの塩基性無機塩が挙げられる。好ましくはマグネシウムおよび/またはカルシウムの塩基性無機塩である。さらに好ましくはマグネシウムの塩基性無機塩である。
該ナトリウムの塩基性無機塩としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどが挙げられる。
該カリウムの塩基性無機塩としては、例えば、炭酸カリウム、炭酸水素カリウムなどが挙げられる。
該マグネシウムの塩基性無機塩としては、例えば、重質炭酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、メタ珪酸アルミン酸マグネシウム、珪酸マグネシウム、アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト〔Mg
6Al
2(OH)
16・CO
3・4H
2O〕および水酸化アルミナ・マグネシウム〔2.5MgO・Al
2O
3・xH
2O〕、好ましくは、重質炭酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウムなどが挙げられる。
該カルシウムの塩基性無機塩としては、例えば、沈降炭酸カルシウム、水酸化カルシウムなどが挙げられる。
該「塩基性無機塩」としてより好ましくは、重質炭酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウムなどが挙げられる。
これらのマグネシウムおよびカルシウム等の塩基性無機塩は、その1%水溶液または懸濁液のpHが塩基性(pH7以上)を示すものであればよい。
該塩基性無機塩(好ましくは、マグネシウム、カルシウムの塩基性無機塩)は、1種または2種以上を組み合わせて含有させてもよく、その含有量は塩基性無機塩の種類により適宜選択すればよい。含有量として例えば、PPI100重量部に対し、約0.3〜約200重量部、好ましくは約1〜約100重量部、さらに好ましくは約10〜約50重量部、最も好ましくは約20〜約40重量部含有させるとよい。
【0038】
該「PPIを含有する組成物」は、水溶性高分子、並びに一般製剤の製造に用いられる、結合剤(例、ヒドロキシプロピルセルロース)、崩壊剤(例、低置換ヒドロキシプロピルセルロース)、滑沢剤(例、タルク)、賦形剤(例、マンニトール)、着色剤(例、酸化チタン)などの添加剤を含有していてもよい。該添加剤としては、例えば、後述の「外層」の成分として例示したものが挙げられる。添加量は一般製剤の製造に用いられる量である。該「結合剤」の含有量は、「PPIを含有する組成物」中、通常約1〜約20重量%である。該「滑沢剤」の含有量は、「PPIを含有する組成物」中、通常約1〜約10重量%である。該「賦形剤」の含有量は、「PPIを含有する組成物」中、通常0〜約10重量%である。該「着色剤」の含有量は、「PPIを含有する組成物」中、通常0〜約5重量%である。
前記「水溶性高分子」としては、エタノール可溶性水溶性高分子(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)などのセルロース誘導体、ポリビニルピロリドンなど)、エタノール不溶性水溶性高分子(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース、カルメロースナトリウムなどのセルロース誘導体、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、グアーガムなど)などが挙げられる。
水溶性高分子を使用する場合、エタノール可溶性の水溶性高分子とエタノール不溶性の水溶性高分子とを併用したり、粘度の異なる水溶性高分子を組み合わせて使用することにより、PPIの溶出性をコントロールできる。
【0039】
本発明において、好ましい水溶性高分子としては、HPC、HPMC、メチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリビニルアルコール、より好ましくは、HPC、HPMCなどのセルロース誘導体が挙げられる。
該HPCは、ヒドロキシプロポキシル基を、例えば、約53.4〜約77.5重量%、好ましくは約60〜約70重量%程度含有する。HPCの20℃における2重量%水溶液の粘度は、通常、約1〜約150000cps(センチポアズ)程度である。このようなHPCとしては、日局ヒドロキシプロピルセルロースなどが使用される(以下、HPCの粘度はいずれも20℃における2重量%水溶液の値である)。
該HPMCは、メトキシ基とヒドロキシプロポキシ基が結合した混合エーテルである。HPMCのメトキシ基の含有量は、例えば、約19〜約30重量%、ヒドロキシプロポキシ基の含有量は、例えば、約4〜約12重量%程度である。HPMCの20℃における2重量%水溶液の粘度は、通常、約1〜約40000センチストークス程度である。このようなHPMCとしては、日局ヒドロキシプロピルメチルセルロース2208、日局ヒドロキシプロピルメチルセルロース2906および日局ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910などが使用される。ヒドロキシプロピルメチルセルロースは一種又は二種以上混合して使用できる。
HPCおよび/またはHPMCなどの水溶性高分子の含有量は、PPIを含有する組成物中のそのPPIの溶出性をコントロールでき、また高い含有量のPPIを保持させるため、「PPIを含有する組成物」(腸溶性被覆層で被覆する前の組成物)中、通常、約0.1〜約50重量%、好ましくは約1〜約30重量%である。
【0040】
該「PPIを含有する組成物」を被覆する「腸溶性被覆層」としては、例えば、セルロースアセテートフタレート(CAP(商品名;Aquateric FMC社製))、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HP−55(商品名;信越化学工業社製))、ヒドロキシメチルセルロースアセテートサクシネート、メタクリル酸共重合体(例えば、メタクリル酸コポリマーLD(オイドラギット(Eudragit)L30D−55(商品名;エボニック社製))、コリコートMAE30DP(商品名;BASF社製)、ポリキッドPA30(商品名;三洋化成社製)など)、カルボキシメチルエチルセルロース、セラックなどの水系腸溶性高分子基剤;メタクリレート共重合体(例えば、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー(オイドラギットNE30D(商品名;エボニック社製))、
アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー分散液タイプA(オイドラギットRL30D(商品名;エボニック社製))、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS(オイドラギットRS30D(商品名;エボニック社製))など)などの徐放性基剤;エタノール可溶性水溶性高分子(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)などのセルロース誘導体、ポリビニルピロリドンなど)、エタノール不溶性水溶性高分子(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース、カルメロースナトリウムなどのセルロース誘導体、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、グアーガムなど)などの水溶性高分子;クエン酸トリエチル、ポリエチレングリコール(例、ポリエチレングリコール6000)、アセチル化モノグリセリド、トリアセチン、ヒマシ油などの可塑剤、無水クエン酸などの矯味剤、モノステアリン酸グリセリン、ポリソルベート80などの滑沢剤、黄色二三酸化鉄、ベンガラ、酸化チタンなどの着色剤等が用いられる。これらは一種または二種以上混合して使用してもよい。
前記「水系腸溶性高分子基剤」としては、メタクリル酸コポリマーLDなどのメタクリル酸共重合体が好ましい。該「水系腸溶性高分子基剤」の含有量は、「腸溶性被覆層」中、通常約40〜約90重量%である。
前記「徐放性基剤」としては、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマーなどのメタクリレート共重合体が好ましい。該「徐放性基剤」の含有量は、「腸溶性被覆層」中、通常約1〜約20重量%である。該「徐放性基剤」の含有量は、水系腸溶性高分子基剤100重量部に対して通常約5〜約30重量部、好ましくは約5〜約15重量部である。
前記「可塑剤」の含有量は、「腸溶性被覆層」中、通常約2〜約30重量%である。該「可塑剤」の含有量は、水系腸溶性高分子基剤100重量部に対して好ましくは約5〜約30重量部である。
前記「矯味剤」の含有量は、「腸溶性被覆層」中、通常0〜約5重量%である。
前記「滑沢剤」の含有量は、「腸溶性被覆層」中、通常約1〜約10重量%である。
前記「着色剤」の含有量は、「腸溶性被覆層」中、通常0〜約5重量%である。
該「腸溶性被覆層」としては、水系腸溶性高分子基剤および徐放性基剤を含有することが好ましく、例えば、メタクリル酸コポリマーLDなどのメタクリル酸共重合体、およびアクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマーなどのメタクリレート共重合体の好ましい含有比率(メタクリル酸共重合体(特に、メタクリル酸コポリマーLD):メタクリレート共重合体(特に、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー))は85:15〜95:5であり、特に9:1が好ましい。
【0041】
該「PPIを含有する組成物」は、公知の造粒法により製造することができる。
「造粒法」としては、転動造粒法(例、遠心転動造粒法)、流動造粒法(例、転動流動層造粒、流動造粒等)、撹拌造粒法などが挙げられる。このうち、流動造粒法が好ましい。特に好ましくは転動流動層造粒法である。
該転動造粒法の具体例としては、例えばフロイント社製の「CF装置」などを用いる方法が挙げられる。該転動流動層造粒法の具体例としては、例えば「スパイラフロー」、パウレック社製の「マルチプレックス」、不二パウダル社製の「ニューマルメ」などを用いる方法が挙げられる。後述するような混合液の噴霧方法は造粒装置の種類に応じて適当に選択でき、例えば、トップスプレー方式、ボトムスプレー方式、タンジェンシャルスプレー方式などのいずれであってもよい。このうち、タンジェンシャルスプレー方式が好ましい。
【0042】
該「PPIを含有する組成物」は、例えば、結晶セルロースおよび乳糖を含有する核に、PPIを被覆して製造される。
例えば特開平5−092918号公報に記載の製造法(コーティング方法)などに記載の、結晶セルロースおよび乳糖を含有する核に、PPIと、必要に応じ、塩基性無機塩、結合剤、滑沢剤、賦形剤、水溶性高分子など(以下、被覆層と略記することもある)とを被覆する方法が挙げられる。例えば、核に、PPIおよび塩基性無機塩を被覆し、結合剤、滑沢剤、賦形剤、水溶性高分子などを被覆する方法が挙げられる。
【0043】
該「核」の平均粒径は、約250μm以下であればよく、約50〜約250μm、好ましくは約100〜約250μm、より好ましくは約100〜約200μmである。このような平均粒径を有する核としては、50号(300μm)の篩を全通し、60号(250μm)の篩に残留する粒子が全体の約5w/w%以下であり、かつ282号(53μm)の篩を通過する粒子が全体の約10w/w%以下であるような粒子が含まれる。「核」の比容は約5ml/g以下、好ましくは約3ml/g以下である。
該「核」としては、例えば、(1)結晶セルロースおよび乳糖の球形造粒品、(2)結晶セルロースの約150〜約250μmの球形造粒品(旭化成(株)製、アビセルSP)、(3)乳糖(9部)とアルファー化デンプン(1部)による約50〜約250μmの撹拌造粒品、(4)特開昭61−213201号公報に記載の微結晶セルロース球形顆粒を分級した約250μm以下の微粒、(5)スプレーチリングや溶融造粒により球状に形成されたワックス類などの加工品、(6)オイル成分のゼラチンビーズ品などの加工品、(7)ケイ酸カルシウム、(8)デンプン、(9)キチン、セルロースおよびキトサンなどの多孔性粒子、(10)グラニュー糖、結晶乳糖、結晶セルロースまたは塩化ナトリウムなどのバルク品およびそれらの製剤加工品などが挙げられる。さらに、これらの核を、自体公知の粉砕方法あるいは造粒方法により製造し、篩過して所望の粒子径の粒子を調製してもよい。
【0044】
該「結晶セルロースおよび乳糖の球形造粒品」としては、例えば、(i)結晶セルロース(3部)と乳糖(7部)とによる約100〜約200μmの球形造粒品(例、ノンパレル105(70−140)(粒子径100〜200μm)、フロイント社製)、(ii)結晶セルロース(3部)と乳糖(7部)とによる約150〜約250μmの球形造粒品(例、ノンパレルNP−7:3、フロイント社製)、(iii)結晶セルロース(4.5部)と乳糖(5.5部)とによる約100〜約200μmの球形造粒品(例、ノンパレル105T(70−140)(粒子径100〜200μm)、フロイント社製)、(iv)結晶セルロース(5部)と乳糖(5部)とによる約150〜約250μmの球形造粒品(例、ノンパレルNP−5:5、フロイント社製)などが挙げられる。
適度の強度を保ちつつ溶解性にも優れた製剤を製造するためには、該「核」として、好ましくは結晶セルロースと乳糖による球形造粒品、より好ましくは結晶セルロースと乳糖による球形造粒品で乳糖を50重量%以上含有するものが挙げられる。結晶セルロースを40〜50重量%および乳糖を50〜60重量%含有するものが好ましい。
本発明に用いられる核としては、結晶セルロースおよび乳糖の球形造粒品が好ましく、さらに好ましくは、結晶セルロース(4.5部)と乳糖(5.5部)とによる約100〜約200μmの球形造粒品である。
該「核」は、PPIを含んでいてもよいが、核がPPIを含んでいない場合でも該PPIを含む被覆層により、PPIの放出性をコントロールできる。
該「核」は、細粒状であってもよく、被覆のバラツキを小さくするためには、できる限り均一な球状であることが好ましい。
【0045】
該「核」に対する「被覆層」の割合は、PPIの溶出性および組成物の粒度を制御できる範囲で選択でき、例えば、核100重量部に対して、通常、約50〜約400重量部程度である。
「被覆層」は複数の層で形成されていてもよく、複数の被覆層の少なくとも1つの層がPPIを含有していればよい。複数の被覆層を構成する、活性成分を有しない被覆層や下掛け用の被覆層、腸溶性被覆層など種々の被覆層の組み合わせは適宜選択されうる。
核を被覆する場合、例えば、PPIおよび水溶性高分子を混合液として使用する。該混合液は、溶液でも分散液であってもよく、水またはエタノールなどの有機溶媒、またはこれらの混液を用いて調製できる。
混合液中の水溶性高分子の濃度は、核に対するPPIの結合力を保持させるとともに、作業性を低下させない程度に混合液の粘度を維持させるため、PPIおよび添加剤の割合により異なるが、通常、約0.1〜約50重量%、好ましくは約0.5〜約10重量%程度である。
【0046】
被覆層が複数の層で形成される場合、水溶性高分子の配合割合や粘度のグレードを選定したり、PPIや他の添加剤の割合が変化した混合液を用いて順次被覆し、各層のPPI濃度を連続的にまたは段階的に変動させてもよい。その場合、被覆層全体が水溶性高分子を約0.1〜約50重量%含む限り、約0.1〜約50重量%の配合割合を外れた混合液で被覆してもよい。さらには、公知の方法により不活性な被膜を形成し、PPIを含む各層の間を遮断するよう複数からなる被覆層としてもよい。
上記被覆物を乾燥した後、篩により粒度の揃った組成物が得られる。組成物の形状は、通常、核に対応しているので、略球形の組成物を得ることもできる。篩としては、例えば50号(300μm)の丸篩が使用でき、この50号の丸篩を通過するものを選別することにより、組成物が得られる。
【0047】
「PPIを含有する腸溶性細粒」は、上記と同様の造粒法に従い、PPIの保護あるいは腸溶性の付与を目的として、PPIを含有する組成物を腸溶性被覆層で被覆して製造される。必要に応じてさらに、水溶性糖アルコール(好ましくはマンニトール)で被覆されてもよい。水溶性糖アルコールで被覆した場合、細粒を含有する有核錠の強度が向上する。
腸溶性被覆層としては、PPIを含有する組成物の表面全体を、好ましくは約20〜約70μm、さらに好ましくは約30〜約50μmの厚みで覆う層である。従って、該組成物の粒径が小さければ小さいほど、腸溶性被覆層が細粒全体に占める重量%が大きくなる。「PPIを含有する腸溶性細粒」における腸溶性被覆層は細粒全体の通常約30〜約70重量%、好ましくは約50〜約70重量%である。
腸溶性被覆層は、複数の層(例、2〜3層)で形成されていてもよい。例えば、組成物に、ポリエチレングリコールなどを含有する腸溶性被覆層を被覆し、さらに、クエン酸トリエチルを含有する腸溶性被覆層を被覆する方法等が挙げられる。例えば、組成物に、ポリエチレングリコールを含有する腸溶性被覆層を被覆し、クエン酸トリエチルを含有する腸溶性被覆層を被覆し、さらに、ポリエチレングリコールを含有する腸溶性被覆層を被覆する方法等が挙げられる。
【0048】
(2)−3:「外層」について
本発明の有核錠における「外層」は、内核の外側を構成する部分であり、1)「PPIを含有する腸溶性細粒」および2)添加剤を含有する。該添加剤は、「PPIを含有する腸溶性細粒」以外の部分に含有する外層の成分である。
本発明の有核錠は、「PPIを含有する腸溶性細粒」、「アセチルサリチル酸を含有する腸溶性被覆錠」および添加剤を自体公知の方法により混合し打錠することによっても得られるが、十分な錠剤強度確保、耐酸性の改善を目的として、「PPIを含有する腸溶性細粒」と賦形剤とを混合した後に造粒する(所望により結合剤を噴霧して造粒する)ことによって、外層造粒末を得、次いで、他の賦形剤等の外層混合成分とともに混合して外層混合末を得る。この外層混合末を「アセチルサリチル酸を含有する腸溶性被覆錠」とともに打錠して本発明の有核錠を得ることが好ましい。
【0049】
「PPIを含有する腸溶性細粒」の含有量は、「外層」中、通常約30〜約70重量%、好ましくは、約30〜約60重量%である。
前記「添加剤」としては、例えば水溶性糖アルコール、結晶セルロース、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等の賦形剤と崩壊剤などから1種以上(好ましくは1〜5種)が用いられ、さらに結合剤、矯味剤、人工甘味料、香料、滑沢剤、着色剤、安定化剤なども用いられる。
前記「賦形剤」としては、上記例示の他に例えば乳糖、白糖、デンプン、コーンスターチ、軽質無水ケイ酸などが挙げられる。
【0050】
前記「水溶性糖アルコール」は、糖アルコール1gを水に加え、20℃において5分ごとに強く30秒間振り混ぜて約30分以内に溶かす際に、必要な水の量が30ml未満である糖アルコールを意味する。
該「水溶性糖アルコール」としては、例えばソルビトール、マンニトール、マルチトール、還元澱粉糖化物、キシリトール、還元パラチノース、エリスリトールなどが挙げられ、これらは、その2種以上(好ましくは2〜3種)を適宜の割合で混合して用いてもよい。
該「水溶性糖アルコール」は、好ましくはマンニトール、キシリトール、エリスリトール、さらに好ましくはマンニトール、エリスリトール、特に好ましくはマンニトール(特にD−マンニトール)が挙げられる。エリスリトールとしては、通常ぶどう糖を原料として酵母等による発酵により生産され、粒度が50メッシュ以下のものが用いられる。該エリスリトールは、市販品(日研化学(株)等)として入手することができる。
【0051】
前記「結晶セルロース」としては、α−セルロースを部分的に解重合して精製したものであればよい。また、微結晶セルロースと呼ばれているものも含まれる。該結晶セルロースとして具体的には例えば、セオラスKG802、セオラスKG1000、アビセルPH101、アビセルPH102、アビセルPH301、アビセルPH302、アビセルRC−591(結晶セルロース・カルメロースナトリウム)(いずれも旭化成(株)製)等が挙げられる。好ましくはセオラスKG1000が挙げられる。これら結晶セルロースは単独に使用してもよいが、2種以上(好ましくは2〜3種)併用することもできる。
【0052】
前記「メタケイ酸アルミン酸マグネシウム」として具体的には例えば、ノイシリンFH1、ノイシリンFL1、ノイシリンNFL2N、ノイシリンUFL2(いずれも富士化学工業(株)製)等が挙げられる。好ましくはノイシリンUFL2が挙げられる。これらメタケイ酸アルミン酸マグネシウムは単独に使用してもよいが、2種以上(好ましくは2〜3種)併用することもできる。
【0053】
本発明において、有核錠の強度を向上させるために「外層」に結晶セルロースおよびメタケイ酸アルミン酸マグネシウムから選ばれる少なくとも1種を含有するのが好ましい。
「外層」中、前記「水溶性糖アルコール」の含有量は、通常約10〜約60重量%である。
「外層」中、前記「結晶セルロース」の含有量は、通常約5〜約40重量%である。
「外層」中、前記「メタケイ酸アルミン酸マグネシウム」の含有量は、通常約1〜約10重量%である。
「外層」中、前記「賦形剤」の含有量は、通常約15〜約80重量%である。
【0054】
前記「崩壊剤」としては、製剤分野で慣用される崩壊剤を用いることができ、例えば、(1)クロスポビドン(例、コリドンCL−F(BASF社製))、(2)クロスカルメロースナトリウム(FMC−旭化成)、カルメロースカルシウム(五徳薬品)などスーパー崩壊剤と称される崩壊剤、(3)カルボキシメチルスターチナトリウム(例、松谷化学(株)製)、(4)低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(例、信越化学(株)製)、(5)コーンスターチ等が挙げられる。
該「クロスポピドン」としては、ポリビニルポリピロリドン(PVPP)、1−ビニル−2−ピロリジノンホモポリマーと称されているものも含め、1−エテニル−2−ピロリジノンホモポリマーという化学名を有し架橋されている重合物のいずれであってもよく、具体例としては、コリドンCL(BASF社製)、コリドンCL−F(BASF社製)、ポリプラスドンXL(ISP社製)、ポリプラスドンXL−10(ISP社製)、ポリプラスドンINF−10(ISP社製)などである。「外層」中、前記「崩壊剤」の含有量は、通常約1〜約15重量%である。
【0055】
前記「結合剤」としては、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、結晶セルロース、アルファー化デンプン、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム末、ゼラチン、プルラン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなどが挙げられる。「外層」中、前記「結合剤」の含有量は、通常約1〜約15重量%である。
前記「矯味剤」としては、例えばクエン酸(無水クエン酸)、酒石酸、リンゴ酸などが挙げられる。
前記「人工甘味料」としては、例えばサッカリンナトリウム、グリチルリチン二カリウム、アスパルテーム、ステビア、ソーマチンなどが挙げられる。
前記「香料」としては、合成物および天然物のいずれでもよく、例えばレモン、ライム、オレンジ、メントール、ストロベリーなどが挙げられる。
前記「滑沢剤」としては、例えばステアリン酸マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、タルク、ステアリン酸、硬化油などが挙げられる。「外層」中、前記「滑沢剤」の含有量は、通常約0.1〜約3重量%である。
前記「着色剤」としては、例えば食用黄色5号、食用赤色2号、食用青色2号などの食用色素;食用レーキ色素、黄色三二酸化鉄、ベンガラなどが挙げられる。
前記「安定化剤」としては、前述の塩基性無機塩などが挙げられる。
【0056】
本発明における「外層」の好ましい態様としては、1)「PPIを含有する腸溶性細粒」と賦形剤(例えば、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、還元澱粉糖化物、キシリトール、還元パラチノース、エリスリトールなどの水溶性糖アルコール;結晶セルロースなど、特にD−マンニトールおよび結晶セルロース)とを混合した後に所望により結合剤(例、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、結晶セルロース、アルファー化デンプン、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム末、ゼラチン、プルラン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等、特にヒドロキシプロピルセルロース)などを用いて造粒することによって得られる造粒物(以下、「外層造粒末」と称する場合がある)、および2)賦形剤(例、結晶セルロースおよびメタケイ酸アルミン酸マグネシウムから選ばれる少なくとも1種)、崩壊剤(例、クロスポビドン)、滑沢剤などの任意に添加してもよい各種添加物(以下、「外層混合成分」と称する場合がある)を含有する層である。
上記外層混合成分には、必要により、さらに前述の水溶性糖アルコール、結合剤、矯味剤、人工甘味料、香料、滑沢剤、着色剤、安定化剤などの添加物を適宜使用してもよい。
【0057】
前記「外層造粒末」における水溶性糖アルコールの含有量は、外層中の「PPIを含有する腸溶性細粒」以外の成分100重量部に対して、通常約10〜約95重量部、好ましくは約50〜約95重量部である。
前記「外層造粒末」における結晶セルロースの含有量は、外層中の「PPIを含有する腸溶性細粒」以外の成分100重量部に対して、通常約1〜約50重量部、好ましくは約5〜約25重量部である。
前記「外層造粒末」の造粒において必要により用いられる結合剤は、外層中の「PPIを含有する腸溶性細粒」以外の成分100重量部に対して、通常約0.1〜約20重量部、好ましくは約1〜約15重量部である。
「PPIを含有する腸溶性細粒を含有する外層」は、好ましくは、前記外層造粒末と外層混合成分とを混合し、内核とともに打錠することによって内核を取り巻くように形成される。
外層混合成分において、例えば結晶セルロース、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムなどの賦形剤の含有量は、外層混合成分100重量部に対して、通常約30〜約80重量部、好ましくは約50〜約75重量部である。
外層混合成分において、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムの含有量は、外層混合成分100重量部に対して、通常約5〜約40重量部、好ましくは約10〜約30重量部である。
外層混合成分において、例えばクロスポビドンなどの崩壊剤の含有量は、外層混合成分100重量部に対して、通常約1〜約35重量部、好ましくは約5〜約35重量部である。
外層混合成分において、例えばステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤の含有量は、外層混合成分100重量部に対して通常約0.01〜約20重量部、好ましくは約1〜約10重量部である。
「PPIを含有する腸溶性細粒を含有する外層」の製造工程における「混合」は、一般に用いられる混合方法により行われる。該「混合」は、例えばバーチカルグラニュレーターVG10(パウレック社製)、流動層造粒機LAB−1、FD−3S、FD−WSG−60(いずれもパウレック社製)、FLO−5M(フロイント社製)、V型混合機、タンブラー混合機などの装置を用いて行われる。
外層造粒末の製造では、転動造粒法(例、遠心転動造粒法)、流動造粒法、撹拌造粒法などの造粒法が使われる。特に好ましくは流動層造粒法である。
【0058】
(3)有核錠
本発明の有核錠の錠剤重量は、通常約350mg〜約550mgである。「アセチルサリチル酸を含有する腸溶性被覆錠」(内核)と「PPIを含有する腸溶性細粒を含有する外層」との重量比は錠剤の物理的強度を保つために約1:2〜約1:6であり、好ましくは、約1:2〜約1:4であることが望ましい。
【0059】
本発明の「有核錠」は、製剤分野における慣用の方法により製造される。
前述したとおり、本発明の有核錠は、「PPIを含有する腸溶性細粒」および「任意に添加してもよい添加剤」を自体公知の方法により混合し、「アセチルサリチル酸を含有する腸溶性被覆錠」とともに打錠することによって得られる。特に、「PPIを含有する腸溶性細粒」と賦形剤とを混合した後に造粒することによって、外層造粒末を得、次いで、他の賦形剤等の外層混合成分とともに混合して外層混合末を得る。この外層混合末を「アセチルサリチル酸を含有する腸溶性被覆錠」とともに打錠することが好ましい。
有核錠の「打錠」は、オートグラフ(島津製作所製)による単発打錠、もしくは、ロータリー式有核打錠機(菊水製作所、もしくは畑鉄工所製)などを用い、1〜40kN/cm
2、5〜30kN/cm
2、好ましくは10〜30kN/cm
2の圧力で打錠することにより行われる。また、ロータリー式打錠機の場合、通常の回転数、例えば、3〜40min
−1、好ましくは3〜30min
−1、より好ましくは8〜25min
−1で打錠すればよい。
本製剤の錠剤サイズは内核錠(素錠)が直径5.0〜8.0mm、有核錠が直径8.0〜11.0mmであることが望ましい。内核錠(素錠)と有核錠の直径の差は、有核錠の錠剤強度を確保するため2.0mm以上であることが望ましい。ここで、「錠剤サイズ」とは円形錠の場合は直径を、楕円形の錠剤の場合、短い方の径を意味する。内核錠(素錠)の直径は「腸溶性被覆成分」を被覆していない素錠の直径、すなわち「腸溶性被覆成分」を被覆する前の直径を意味する。
本発明の有核錠は内核錠(素錠)と外層のサイズの差が一定以上あることが物理的強度を保つ上で重要である。
【0060】
打錠後、必要により「乾燥」に付してもよい。乾燥は、例えば真空乾燥、流動層乾燥など製剤一般の乾燥に用いられる何れの方法によってもよい。
本発明の有核錠の打錠工程は、室温下で行ってもよいが、室温を超える温度で打錠してもよい。
「室温」とは、通常の錠剤の製造において打錠を行う室内の温度をいい、その温度は通常約20℃〜約23℃をいう。すなわち、「室温を超える温度」とは、この温度を超える温度をいい、好ましくは下限が約25℃であればよい。該温度は使用する原料粉体や粒体等によって異なるが、通常、好ましくは約25℃〜約50℃である。該温度は、所望する錠剤の品質に応じて変更することができる。
本発明の有核錠は素錠であってもフィルムコート剤であってもよいが、素錠であることが望ましい。本明細書において「素錠」とは、打錠工程で得られた有核錠の表面に、フィルムコーティングなどのコーティング処理を施していない錠剤を意味する。
【0061】
また、本発明の有核錠は、製剤工程、流通過程において損傷することのない程度の適度な硬度を有しており、錠剤強度(錠剤硬度計による測定値)は、通常約40〜約200N、さらに好ましくは約60〜約150Nである。
本発明の有核錠は、摩損度が、通常1%以下、好ましくは0.5%以下である。
本発明の有核錠においては、アセチルサリチル酸とプロトンポンプ阻害薬の耐酸率がともに10%以下、好ましくは8%以下、より好ましくは5%以下とすることが可能である。
【0062】
本発明の有核錠はPPIを含んでいるので、優れた抗潰瘍作用、胃酸分泌抑制作用、粘膜保護作用、抗ヘリコバクター・ピロリ作用などを有している。
一方、本発明の有核錠は、アセチルサリチル酸を含んでいるので、脳血管、循環器領域の疾患、例えば、狭心症(慢性安定狭心症,不安定狭心症)、心筋梗塞における血栓および/または塞栓形成の抑制;虚血性脳血管障害(一過性脳虚血発作(TIA),脳梗塞)の予防および/または治療;冠動脈バイパス術(CABG)あるいは経皮経管冠動脈形成術(PTCA)施行後における血栓および/または塞栓形成の抑制;川崎病(川崎病による心血管後遺症を含む)の予防および/または治療剤として有用である。したがって、アセチルサリチル酸投薬を継続しつつ、胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の治療または発症の抑制を目的として、本発明の有核錠を投薬することができる。かかる疾患の予防および/または治療を目的とする場合、PPIとしては1日あたり約10mg〜約40mg投薬され、アセチルサリチル酸としては1日あたり約70mg〜約120mg(の低用量で)投薬される。
また、アセチルサリチル酸は、非ステロイド性抗炎症薬の一種として、主に疼痛、発熱、炎症の治療にも用いることができる。非ステロイド性抗炎症薬により、胃潰瘍あるいは十二指腸潰瘍が引き起こされることがあり、特に関節リウマチや変形性関節症などの治療においては著しくQOL が低下するため、非ステロイド性抗炎症薬の投与を中止することが困難な場合がある。このような場合、非ステロイド性抗炎症薬投与を継続しつつ、胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の治療または発症の抑制を目的として、本発明の有核錠を投薬することができる。
このような治療を目的とする場合、PPIとしては1日あたり約10mg〜約40mg投薬され、アセチルサリチル酸としては1日あたり約240mg〜約400mg投薬される。
従って、このような本発明の有核錠は、低毒性で安全な、PPIとアセチルサリチル酸の併用医薬として有用である。
本発明の有核錠は、哺乳動物(例えば、ヒト、サル、ヒツジ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウスなど)において、脳血管、循環器領域の疾患における血栓および/または塞栓形成の抑制、非ステロイド系抗炎症剤に起因する潰瘍の治療および予防;などを目的として経口投与できる。
また、上記目的に加え、ヘリコバクター・ピロリ除菌あるいは除菌の補助のために、本発明の有核錠と、ペニシリン系抗生物質(例えば、アモキシシリンなど)およびエリスロマイシン系抗生物質(例えば、クラリスロマイシンなど)とを併用して用いてもよい。
本発明の有核錠の1日の投与量は、症状の程度、投与対象の年齢、性別、体重、投与の時期、間隔、活性成分の種類などによって異なり、特に限定されない。また、本発明の有核錠は、1日1回または2〜3回に分けて投与してもよい。
【0063】
また、本発明は、PPIを含有する腸溶性細粒を賦形剤と混合した後に造粒し、得られた造粒物を、アセチルサリチル酸を含有する腸溶性被覆錠および任意に添加してもよい添加剤とともに打錠することを含む、有核錠の製造法にも関する。
「PPIを含有する腸溶性細粒」、「賦形剤」、「アセチルサリチル酸を含有する腸溶性被覆錠」、「任意に添加してもよい添加剤」、混合、造粒、打錠方法などは上記本発明の有核錠について説明したと同様である。
本発明の製造法により製造される有核錠は、錠剤強度、活性成分(アセチルサリチル酸およびPPI)の溶出性、保存安定性および耐酸性に優れる。
有核錠は内核と外層の二重構造であるため一般に内核と外層間の結合力が弱い課題があった。また、外層に平均粒径が大きい機能性細粒である「PPIを含有する腸溶性細粒」を含む有核錠においては、さらに内核と外層間の結合力が弱くなる課題があった。本発明の製造法により製造される有核錠はこれらの課題を解決し、優れた錠剤強度を有している。
有核錠は一般に、外層混合末と内核錠とを圧縮成型することで得ることができる。圧縮成型は大きな圧力が加わるため、内核錠における腸溶性被覆層、および外層混合末に含まれる「PPIを含有する腸溶性細粒」における腸溶性被覆層は破損し易く、十分な錠剤強度を有しながら十分な耐酸率を確保することが困難であるという課題があった。本発明の製造法により製造される有核錠はこの課題を解決し、十分な錠剤強度と優れた耐酸性を併せて有している。
本発明の製造法により製造される有核錠は、製剤工程、流通過程において損傷することのない程度の適度な硬度を有しており、錠剤強度(錠剤硬度計による測定値)は、通常約40〜約200N、さらに好ましくは約60〜約150Nである。
本発明の製造法により製造される有核錠は、摩損度が、通常1%以下、好ましくは0.5%以下である。
本発明の製造法により製造される有核錠は、アセチルサリチル酸とプロトンポンプ阻害薬の耐酸率がともに10%以下、好ましくは8%以下、より好ましくは5%以下である。
【実施例】
【0064】
以下、参考例、実施例、比較例および評価(試験例)に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本明細書において耐酸率とは日局溶出試験法第2法により0.1N HCl 500mL(75rpm)で、1時間溶出試験し、溶出液を採取し、0.45μmのメンブランフィルターでろ過した後、吸光度を測定し、0.1N HClへの薬物の溶出率を算出したものを意味する。
硬度は錠剤硬度計により測定するものを意味する。
摩損度は日本薬局方の「錠剤の摩損度試験法」により測定するものを意味する。
後述の実施例1、2、6〜14で示した有核錠の組成を表1に示す。後述の実施例3〜5で示した有核錠の組成を表2に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
参考例1
ランソプラゾール腸溶性細粒の製造
ランソプラゾール含有細粒
ノンパレル105(商品名)41.6 kgを転動流動層型コーティング造粒機(パウレック社製、MP-400)に入れ、予め調製した下記組成のランソプラゾール含有コーティング液を噴霧しコーティングした。さらに予め調製した下記組成の中間層コーティング液を噴霧しコーティングした。コーティング終了後、乾燥を行い、ランソプラゾール含有細粒を132 kg得た。
[ランソプラゾール含有コーティング液]
ランソプラゾール 39.60 kg
炭酸マグネシウム 13.20 kg
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 6.60 kg
ヒドロキシプロピルセルロース 13.20 kg
(精製水) (185 L)
【0068】
[中間層コーティング液]
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 9.24 kg
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース 6.60 kg
滅菌タルク 3.96 kg
酸化チタン 3.96 kg
マンニトール 9.24 kg
(精製水) (99.0 L)
【0069】
ランソプラゾール腸溶性細粒
ランソプラゾール含有細粒44.0 kgを転動流動層型コーティング造粒機(パウレック社製、MP-400)に入れ、予め調製した下記組成の腸溶性コーティング液1、腸溶性コーティング液2、オーバーコーティング液を噴霧しコーティングした。コーティング終了後、乾燥を行い、ランソプラゾール腸溶性細粒を約110 kg得た。
【0070】
[モノステアリン酸グリセリン液]
モノステアリン酸グリセリン 3.150 kg
ポリソルベート80 0.945 kg
黄色三二酸化鉄 0.0315 kg
ベンガラ 0.0315 kg
(精製水) (63 L)
[腸溶性コーティング液1]
オイドラギットL30D-55 9.615 kg 固形物量
(32.05 kg)(液量)
オイドラギットNE30D 1.071 kg 固形物量
(3.570 kg)(液量)
ポリエチレングリコール6000 1.071 kg
無水クエン酸 0.0126 kg
(精製水) (31.8 L)
モノステアリン酸グリセリン液 13.4 kg(液量)
【0071】
[腸溶性コーティング液2]
オイドラギットL30D-55 35.28 kg 固形物量
(117.6 kg)(液量)
オイドラギットNE30D 3.918 kg 固形物量
(13.06 kg)(液量)
クエン酸トリエチル 7.854 kg
無水クエン酸 0.021 kg
(精製水) (9.33 L)
モノステアリン酸グリセリン液 (53.7 kg)(液量)
【0072】
[オーバーコーティング液]
マンニトール 4.200 kg
(精製水) (25.2 L)
【0073】
実施例1
アセチルサリチル酸(造粒品:Rhodia社製 Rhodine3118)を57000 g、コーンスターチ6270 g、結晶セルロース(セオラスKG-1000(商品名;旭化成社製))3705 g、カルメロース3705 gをはかりとりタンブラー混合機で混合した。これをロータリー打錠機(菊水製作所製)でφ7.0 mmR面杵を使用して打錠し内核の素錠(錠剤重量124 mg)を得た。20%ポリソルベート80水溶液960 gを21940 gの水に溶解し70℃に加温、モノステアリン酸グリセリン488 gを分散機で分散してモノステアリン酸グリセリン分散液を得た。これにメタクリル酸コポリマーLD(オイドラギット(Eudragit)L30D-55(商品名;エボニック社製))24290 g(固形物量7287 g)、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー(オイドラギットNE30D(商品名;エボニック社製))2696 g(固形物量808.8 g)、無水クエン酸8 g、クエン酸トリエチル1616 gを加えて混合、腸溶性コーティング液を得た。ドリアコーター(パウレック社製)を使用して、前記の素錠60760 gをこの腸溶性コーティング液で錠剤1錠あたり腸溶性コーティングの固形成分が13 mgになるまでコーティングを行い、内核錠(錠剤重量137 mg)を得た。
ランソプラゾール腸溶性細粒37800 g、D-マンニトール24080 g、結晶セルロース2660 gをはかりとり、流動層造粒機(パウレック社、FD-WSG-60)で6%ヒドロキシプロピルセルロース溶液43400 gを噴霧し、造粒を行ない造粒末を得た。クロスポビドン3750 g、結晶セルロース(セオラスKG-1000(商品名;旭化成社製))7850 g、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(ノイシリンUFL2(商品名;富士化学社製))2250 g、ステアリン酸マグネシウム1200 gと前記の造粒末59950 gをタンブラー混合機で混合、外層混合末を得た。
内核錠32880 g、外層混合末72000 gを、直径10 mm R面の杵を使用して、ロータリー有核打錠機(畑鉄工所製)で有核打錠(回転数15 rpm、打錠圧21 kN)を行った。1錠あたりの錠剤重量437 mg(重量構成;内核錠137 mg、外層300 mg)の有核錠を得た。
【0074】
実施例2
アセチルサリチル酸(造粒品:Rhodia社製 Rhodine3118)を57000 g、コーンスターチ6270 g、結晶セルロース(セオラスPH-101(商品名;旭化成社製))3705 g、カルメロース3705gをはかりとりタンブラー混合機で混合した。これをロータリー打錠機(菊水製作所製)でφ7.0 mm R面杵を使用して打錠し内核の素錠(錠剤重量124 mg)を得た。20%ポリソルベート80水溶液960 gを21940 gの水に溶解し70℃に加温、モノステアリン酸グリセリン488 gを分散機で分散してモノステアリン酸グリセリン分散液を得た。これにメタクリル酸コポリマーLD(オイドラギット(Eudragit)L30D-55(商品名;エボニック社製))24290 g(固形物量7287 g)、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー(オイドラギットNE30D(商品名;エボニック社製))2696 g(固形物量808.8 g)、無水クエン酸8 g、クエン酸トリエチル1616 gを加えて混合、腸溶性コーティング液を得た。ドリアコーター(パウレック社製)を使用して、前記の素錠60760 gをこの腸溶性コーティング液で錠剤1錠あたり腸溶性コーティングの固形成分が13 mgになるまでコーティングを行い、内核錠(錠剤重量137 mg)を得た。
ランソプラゾール腸溶性細粒37800 g、D-マンニトール24080 g、結晶セルロース2660 gをはかりとり、流動層造粒機(パウレック社、FD-WSG-60)で6% ヒドロキシプロピルセルロース溶液43400 gを噴霧し、造粒を行ない造粒末を得た。クロスポビドン3750 g、結晶セルロース(セオラスKG-1000(商品名;旭化成社製))7850 g、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(ノイシリンUFL2(商品名;富士化学社製))2250 g、ステアリン酸マグネシウム1200 gと前記の造粒末59950 gをタンブラー混合機で混合、外層混合末を得た。
内核錠32880 g、外層混合末72000 gを、直径10 mm R面の杵を使用して、ロータリー有核打錠機(畑鉄工所製)で有核打錠(回転数15 rpm、打錠圧21 kN)を行った。1錠あたりの錠剤重量437 mg(重量構成;内核錠137 mg、外層300 mg)の有核錠を得た。
【0075】
実施例3
アセチルサリチル酸(造粒品:Rhodia社製 Rhodine3118)を57000 g、コーンスターチ6270 g、結晶セルロース(セオラスPH-101(商品名;旭化成社製))3705 g、カルメロース3705 gをはかりとりタンブラー混合機で混合した。これをロータリー打錠機(菊水製作所製)でφ7.0 mm R面杵を使用して打錠し内核の素錠(錠剤重量124 mg)を得た。ポリソルベート80 4.8 gを、567.6 gの水に溶解し70℃に加温、モノステアリン酸グリセリン12.2 gを分散機で分散してモノステアリン酸グリセリン分散液を得た。これにメタクリル酸コポリマーLD(オイドラギット(Eudragit)L30D-55(商品名;エボニック社製)) 607.4 g(固形物量182.2 g)、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー(オイドラギットNE30D(商品名;エボニック社製))67.4 g(固形物量20.2 g)、無水クエン酸0.2 g、クエン酸トリエチル40.4 gを加えて混合、腸溶性コーティング液を得た。ドリアコーター(パウレック社製)を使用して、前記の素錠248 gをこの腸溶性コーティング液で錠剤1錠あたり腸溶性コーティングの固形成分が26 mgになるまでコーティングを行い、内核錠(錠剤重量150 mg)を得た。
上記で得た内核錠と実施例2で得た外層混合末を、直径10 mm R面の杵を使用して、ロータリー有核打錠機(菊水製作所製)で有核打錠(回転数10 rpm、打錠圧15 kN)を行った。1錠あたりの錠剤重量450 mg(重量構成;内核錠150 mg、外層300 mg)の有核錠を得た。
【0076】
実施例4
実施例3と同様の方法で得た
アセチルサリチル酸を含む内核の素錠248 gに、ドリアコーター(パウレック社製)を使用して、同じく実施例3と同様の方法で得た腸溶性コーティング液で、錠剤1錠あたり腸溶性コーティングの固形成分が10 mgになるまでコーティングを行い、内核錠(錠剤重量134 mg)を得た。
上記で得た内核錠と実施例2で得た外層混合末を、直径10 mm R面の杵を使用して、ロータリー有核打錠機(菊水製作所製)で有核打錠(回転数10 rpm、打錠圧15 kN)を行った。1錠あたりの錠剤重量434 mg(重量構成;内核錠134 mg、外層300 mg)の有核錠を得た。
【0077】
実施例5
ポリソルベート80 4.8 gを、567.6 gの水に溶解し70℃に加温、モノステアリン酸グリセリン12.2 gを分散機で分散してモノステアリン酸グリセリン分散液を得た。これにメタクリル酸コポリマーLD(オイドラギット(Eudragit)L30D-55(商品名;エボニック社製))540 g(固形物量162 g)、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー(オイドラギットNE30D(商品名;エボニック社製))134.6 g(固形物量40.4 g)、無水クエン酸0.4g、クエン酸トリエチル40.4 gを加えて混合、腸溶性コーティング液を得た。ドリアコーター(パウレック社製)を使用して、実施例3と同様の方法で得た
アセチルサリチル酸を含む内核の素錠248 gに、腸溶性コーティング液で錠剤1錠あたり腸溶性コーティングの固形成分が13 mgになるまでコーティングを行い、内核錠(錠剤重量137 mg)を得た。
上記で得た内核錠と実施例2で得た外層混合末を、直径10 mm R面の杵を使用して、ロータリー有核打錠機(菊水製作所製)で有核打錠(回転数10 rpm、打錠圧15 kN)を行った。1錠あたりの錠剤重量437 mg(重量構成;内核錠137 mg、外層300 mg)の有核錠を得た。
【0078】
実施例6
クロスポビドン150 g、結晶セルロース(セオラスKG-1000(商品名;旭化成社製))314 g、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(ノイシリンUFL2(商品名;富士化学社製))90 g、ステアリン酸マグネシウム48 gと実施例2で得た造粒末2398 gをタンブラー混合機で混合、外層混合末を得た。
実施例2で得た内核錠と上記で得た外層混合末を、直径10 mm R面の杵を使用して、ロータリー有核打錠機(畑鉄工所製)で有核打錠(回転数10 rpm、打錠圧15 kN)を行った。1錠あたりの錠剤重量437 mg(重量構成;内核錠137 mg、外層300 mg)の有核錠を得た。
【0079】
評価
実施例1、2および6で得られた有核錠の耐酸率、錠剤強度、摩損度の評価結果を表3に示す。
【0080】
【表3】
【0081】
実施例7
実施例2で得た
アセチルサリチル酸混合末を、ロータリー打錠機(菊水製作所製)で打錠し、上述した溝6、7を有する素錠4を得た。このとき、溝6、7に対応する凸部を有する杵(型)を用いて打錠することで、溝6、7を形成した。素錠4の直径を7mmとし、重量を124mgとした。溝6、7の開口幅を約1mmとし、深さを約0.3mmとした。ポリソルベート80 4.8 gを、567.6 gの水に溶解し70℃に加温し、モノステアリン酸グリセリン12.2 gを分散機で分散させ、モノステアリン酸グリセリン分散液を得た。これにメタクリル酸コポリマーLD(オイドラギット(Eudragit)L30D-55(商品名;エボニック社製)) 607.4 g(固形物量182.2 g)、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー(オイドラギットNE30D(商品名;エボニック社製))67.4 g(固形物量20.2 g)、無水クエン酸0.2 g、クエン酸トリエチル40.4 gを加えて混合し、腸溶性コーティング液を得た。
ドリアコーター(パウレック社製)を使用して、この腸溶性コーティング液を合計620 gの複数の素錠4に同時にコーティングした。腸溶性コーティング液中の固形成分が各素錠4に13 mg付着するまでコーティングを行い一錠137 mgの内核2を得た。内核2の溝8、9の開口幅及び深さは、コーティング前の溝6、7の開口幅及び深さと略同等であり、それぞれ約1 mm、約0.3 mmであった。
実施例2で得た外層混合末によって内核2を包み、有核打錠を行って外層3を形成した。外層3の外径を10 mmとし、重量を437 mgとした(内核2:137 mg、外層3:300 mg)。有核打錠には、ロータリー有核打錠機(菊水製作所製)を用い、打錠圧を15 kNとし、回転数を10 rpmとした。以上により、有核錠の実施例7を得た。なお、外層3に含有される粉末状の固形成分の中で平均粒径が最も小さい成分の平均粒径は約13 μmであった。
【0082】
実施例8
実施例7において素錠4を打錠する杵の形状を変えることで、上述した十字状の溝10A、10B、11A、11Bを有する内核2Aを得た。各溝の断面形状をV字状にし、開口幅を約1 mmにし、深さを約0.3 mmにした。腸溶性コーティング、外層3の混合末、その他の条件を実施例7と同じにし、有核錠の実施例8を得た。
【0083】
実施例9
実施例7において素錠4を打錠する杵の形状を変えることで、上述した格子状の溝12A、12B、13A、13Bを有する内核2Bを得た。溝12A、12B、13A、13Bの本数をそれぞれ3本にした。各溝の断面形状をV字状にし、開口幅を約0.5 mmにし、深さを約0.25 mmにした。腸溶性コーティング、外層3の混合末、その他の条件を実施例7と同じにし、有核錠の実施例9を得た。
【0084】
実施例10
実施例7において素錠4を打錠する杵の形状を変えることで、上述した円状の溝14、15を有する内核2Cを得た。各溝の中心線がなす円の直径を約4 mmにした。また、各溝の他の断面形状をV字状にし、開口幅を約1 mmにし、深さを約0.3 mmにした。腸溶性コーティング、外層3の混合末、その他の条件を実施例7と同じにし、有核錠の実施例10を得た。
【0085】
実施例11〜14
実施例7〜10のそれぞれにおける有核打錠の打錠圧を15 kNから19 kNに変え、その他の条件をそれぞれ実施例7〜10と同じにして、有核錠の実施例11〜14を得た。
【0086】
本出願は、日本で出願された特願2011−262679を基礎としており、その内容は本明細書にすべて包含されるものである。