特許第5926316号(P5926316)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5926316電流サージ能力を有する接合型バリアショットキーダイオード
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5926316
(24)【登録日】2016年4月28日
(45)【発行日】2016年5月25日
(54)【発明の名称】電流サージ能力を有する接合型バリアショットキーダイオード
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/861 20060101AFI20160516BHJP
   H01L 29/868 20060101ALI20160516BHJP
   H01L 29/47 20060101ALI20160516BHJP
   H01L 29/872 20060101ALI20160516BHJP
   H01L 21/329 20060101ALI20160516BHJP
【FI】
   H01L29/91 K
   H01L29/48 D
   H01L29/48 F
   H01L29/48 P
   H01L29/91 F
   H01L29/91 A
   H01L29/91 C
   H01L29/86 301F
   H01L29/86 301P
   H01L29/86 301D
【請求項の数】24
【外国語出願】
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-91318(P2014-91318)
(22)【出願日】2014年4月25日
(62)【分割の表示】特願2011-510504(P2011-510504)の分割
【原出願日】2009年5月19日
(65)【公開番号】特開2014-150286(P2014-150286A)
(43)【公開日】2014年8月21日
【審査請求日】2014年5月26日
(31)【優先権主張番号】12/124,341
(32)【優先日】2008年5月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】592054856
【氏名又は名称】クリー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CREE INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャン、チンチュン
(72)【発明者】
【氏名】リュウ、セ − ヒョン
【審査官】 井上 弘亘
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/139487(WO,A1)
【文献】 特開2002−026341(JP,A)
【文献】 特開2000−216409(JP,A)
【文献】 特表2009−539247(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/861
H01L 21/329
H01L 29/47
H01L 29/868
H01L 29/872
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の導電型を有するドリフト領域と、
前記ドリフト領域の上のショットキーコンタクトと、
前記ショットキーコンタクトに隣接する前記ドリフト領域の表面の複数の接合型バリアショットキー(JBS)領域であって、前記第1の導電型と反対の第2の導電型を有する複数のJBS領域と、
前記ショットキーコンタクトに隣接する前記ドリフト領域の前記表面のサージ保護領域であって、前記第2の導電型を有する複数のサージ保護サブ領域を備えるサージ保護領域と、
を含むショットキーダイオードであって
前記サージ保護サブ領域は、前記ドリフト領域の表面から前記サージ保護サブ領域のうちの1つと前記ドリフト領域との間の接合部の中心までの電圧低下により当該ショットキーダイオードの電流よりも大きい順方向電流で当該接合部が順方向バイアスになりこの順方向電流での順方向バイアスによって当該ショットキーダイオードに電流サージ取り扱い能力を与えるように構成されている、ショットキーダイオード。
【請求項2】
前記JBS領域が第1の隙間を有し、前記サージ保護領域が前記第1の隙間より大きい幅を有する、請求項1に記載のショットキーダイオード。
【請求項3】
前記第1の隙間は、μm〜μmであり、前記サージ保護サブ領域がμm〜μmの第2の隙間を有する、請求項2に記載のショットキーダイオード。
【請求項4】
前記JBS領域が、μm〜μmの第1の幅を有し、前記サージ保護領域が、前記第1の幅より大きい第2の幅を有する、請求項1に記載のショットキーダイオード。
【請求項5】
前記サージ保護サブ領域は、前記ドリフト領域の前記表面から前記ドリフト領域内に0.3μm〜0.5μmの深さまで延びる、請求項1に記載のショットキーダイオード。
【請求項6】
前記ショットキーコンタクトと前記サージ保護サブ領域との間の境界部は、オーミックコンタクトである、請求項1に記載のショットキーダイオード。
【請求項7】
前記ドリフト領域は、4H−SiCを含み、前記ドリフト領域は、5×1015cm−3〜1×1016cm−3のドーピングレベルを有し、前記サージ保護サブ領域は、5×1018cm−3より大きいドーピングレベルを有する、請求項1に記載のショットキーダイオード。
【請求項8】
前記サージ保護領域の下方の前記ドリフト領域の一部、前記ショットキーコンタクトに印加される順方向電圧に応答し、前記JBS領域の下方の前記ドリフト領域の一部よりも高い電位を有するように構成された、請求項1に記載のショットキーダイオード。
【請求項9】
前記ショットキーコンタクトに隣接する前記ドリフト領域内の追加のサージ保護領域を更に備える、請求項1に記載のショットキーダイオード。
【請求項10】
前記サージ保護サブ領域は、前記ドリフト領域内の複数のトレンチと、前記複数のトレンチのそれぞれの下方に延びる前記ドリフト領域内の複数のドープされた領域と、を含む、請求項1に記載のショットキーダイオード。
【請求項11】
前記ドリフト領域が、シリコンカーバイドからなる、請求項1に記載のショットキーダイオード。
【請求項12】
第1の導電型を有するシリコンカーバイドドリフト領域と、
前記ドリフト領域の上のショットキーコンタクトと、
前記ショットキーコンタクトに隣接する前記ドリフト領域の表面の複数の接合型バリアショットキー(JBS)領域であって、そのそれぞれが、前記第1の導電型と反対の第2の導電型を有すると共に、第1の幅を有する複数のJBS領域と、
前記ショットキーコンタクトに隣接する前記ドリフト領域の前記表面のサージ保護領域であって、前記第1の幅より大きい第2の幅を有し、前記第2の導電型を有する複数のサージ保護サブ領域を備え、当該ショットキーダイオードのターンオン電圧よりも高い順方向電圧で導通するように構成されているサージ保護領域と、
を備えるショットキーダイオード。
【請求項13】
前記JBS領域のうちの隣接するものが第1の隙間で離隔し、前記サージ保護サブ領域のうちの隣接するものが前記JBS領域のうちの隣接するものの間の前記第1の隙間よりも狭い第2の隙間で離隔している、請求項12に記載のショットキーダイオード。
【請求項14】
前記JBS領域が第1の隙間を有し、前記サージ保護領域が、前記第1の隙間より大きい幅を有する、請求項12に記載のショットキーダイオード。
【請求項15】
前記ショットキーコンタクトと前記サージ保護サブ領域との間の境界部は、オーミックコンタクトである、請求項12に記載のショットキーダイオード。
【請求項16】
前記サージ保護領域の下方の前記ドリフト領域の一部、前記ショットキーコンタクトに印加される順方向電圧に応答し、前記JBS領域の下方の前記ドリフト領域の一部よりも高い電位を有するように構成された請求項12に記載のショットキーダイオード。
【請求項17】
前記ショットキーコンタクトに隣接する前記ドリフト領域内の複数のサージ保護領域を更に備える、請求項12に記載のショットキーダイオード。
【請求項18】
前記サージ保護サブ領域は、前記ドリフト領域内の複数のトレンチと、前記複数のトレンチのそれぞれの下方に延びる前記ドリフト領域内の複数のドープされた領域と、を含む、請求項12に記載のショットキーダイオード。
【請求項19】
前記サージ保護サブ領域は、前記サージ保護サブ領域のそれぞれの間の前記ドリフト領域内に垂直の電流路を構成し、前記サージ保護領域の深さは、前記トレンチの深さと前記ドープされた領域の深さとによって定められる、請求項18に記載のショットキーダイオード。
【請求項20】
第1の導電型を有するシリコンカーバイドドリフト領域と、
前記ドリフト領域の上のショットキーコンタクトと、
前記ショットキーコンタクトに隣接する前記ドリフト領域の表面の複数の接合型バリアショットキー(JBS)領域であって、前記第1の導電型と反対の第2の導電型を有する複数のJBS領域と、
前記ショットキーコンタクトに隣接する前記ドリフト領域の前記表面のサージ保護領域であって、前記第2の導電型を有する複数のサージ保護サブ領域を備え、
当該サージ保護サブ領域は、前記ドリフト領域内の複数のトレンチと、前記複数のトレンチのそれぞれの下方に延びる前記ドリフト層内の複数のドープされた領域とを含んでおり、
当該ショットキーコンタクトが前記複数のトレンチ内に延び、前記トレンチ内の前記サージ保護サブ領域に接している、
サージ保護領域と、
を備えるショットキーダイオード。
【請求項21】
前記サージ保護サブ領域は、前記サージ保護サブ領域のそれぞれの間で前記ドリフト領域内に垂直の電流路を構成し、前記サージ保護領域の深さは、前記トレンチの深さと前記ドープされた領域の深さとによって定められる、請求項20に記載のショットキーダイオード。
【請求項22】
前記サージ保護サブ領域は、前記ドリフト領域の表面から前記サージ保護サブ領域のうちの1つと前記ドリフト領域との間の接合部の中心までの電圧低下により前記ショットキーダイオードの電流よりも大きい順方向電流で当該接合部が順方向バイアスになりこの順方向電流での順方向バイアスによって前記ショットキーダイオードに電流サージ取り扱い能力を与えるように構成されている、請求項20に記載のショットキーダイオード。
【請求項23】
前記ショットキーコンタクトが、前記サージ保護サブ領域と、オーミックコンタクトを形成する、請求項20に記載のショットキーダイオード。
【請求項24】
前記サージ保護サブ領域が、前記ドリフト領域と複数のp−n接合を形成し、前記接合部の中心が、前記複数のp−n接合のうちの1つのp−n接合の中心である、請求項1に記載のショットキーダイオード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、半導体デバイスおよび半導体デバイスの製造に関し、より詳細には、接合型バリアショットキー(JBS)ダイオードおよびかかるダイオードの製造に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
例えば約600V〜約2.5kVの間の電圧ブロッキング定格を有することができる高電圧シリコンカーバイド(SiC)ショットキーダイオードは、同様な電圧定格を有するシリコンPINダイオードと肩を並べることが予想されている。かかるダイオードは、そのアクティブエリアの設計によっては、約100アンペア以上もの大きさの順方向電流を扱うことができる。高電圧ショットキーダイオードは、特に電力コンディショニング、配電および制御の分野において重要な用途を多数有する。
【0003】
かかる用途におけるSiCショットキーダイオードの重要な特性は、そのスイッチング速度にある。シリコンをベースとするPINデバイスは、一般に比較的低いスイッチング速度を呈する。シリコンPINダイオードは、その電圧定格によっては約20kHzの最大スイッチング速度を有することができる。これと対照的に、シリコンカーバイドをベースとするショットキーデバイスは、理論的には例えばシリコンデバイスよりも約100倍を越えるくらい高いスイッチング速度を有することができる。更にシリコンカーバイドデバイスは、シリコンデバイスより大きい電流密度を扱うことができる。
【0004】
従来のSiCショットキーダイオード構造は、n型のSiC基板を有し、この基板の上にドリフト領域として機能するn−のエピタキシャル層が形成されている。このデバイスは一般にn−の層に直接形成されたショットキーコンタクトを含む。ショットキー接合アクティブ領域を囲むように、接合ターミネーション領域、例えばガードリングおよび/またはp型のJTE(接合ターミネーション延長)領域が形成されている。この接合ターミネーション領域の目的は、ショットキー接合部のエッジでクラウド状態となる電界を低減または防止し、かつ空乏領域がデバイスの表面と相互作用することを低減または防止することにある。表面効果によって空乏領域が不均一に広がることがあり、このことはデバイスのブレークダウン電圧に悪影響を与え得る。その他のターミネーション技術として、電界プレートおよびフローティング電界リングがあるが、これらは表面効果によってより強く影響を受ける。空乏領域がデバイスのエッジから延びることを防止するために、n型のドーパントを注入することによってチャンネルストップ領域を形成することもできる。
【0005】
使用されるターミネーションの種類にかかわらず、接合部に十分大きい逆電圧が印加された場合、一般にショットキーダイオードは故障する。かかる故障は、一般に壊滅的であり、デバイスを損傷または破壊し得る。更に、接合部が故障する前でも、ショットキーダイオードは大きな逆リーク電流を生じ得る。かかるリーク電流を低減するために、接合型バリアショットキー(JBS)ダイオードが開発された。このようなJBSダイオードは、マージ型PIN−ショットキー(MPS)ダイオードと時々称される。図1には従来のJBSダイオード10が図示されている。この図に示されるように、従来のJBSダイオードは、n型の基板12を含み、この基板上にn−のドリフト層14が形成される。n−のドリフト層14の表面内には、一般にイオン注入により複数のp+の領域16が形成される。n−のドリフト層14の表面には、n−のドリフト層14およびp+の領域16と接触した状態で、金属アノードコンタクト18が形成される。このアノードコンタクト18は、ドリフト層14の露出した部分とショットキー接合部を形成し、p+の領域16と共にオーミックコンタクトを形成できる。基板12上には、カソードコンタクト20が形成される。例えば米国特許第6,104,043号および第6,524,900号には、シリコンカーバイドをベースとするJBSダイオードが記載されている。
【0006】
順方向動作では、アノードコンタクト18とドリフト層14との間の接合部J1は、p+領域16とドリフト層14との間の接合部J2よりも前にターンオンする。従って、低い順方向電圧ではデバイスは、ショットキーダイオードの動作をする。すなわちデバイス内の電流輸送は、低い順方向電圧でショットキー接合部J1を越えて注入された多数キャリア(電子)によって支配される。通常の作動電圧では、デバイス内には少数キャリア注入がない(従って少数電荷蓄積もない)ので、JBSダイオードはショットキーダイオードの高速スイッチング速度特性を有する。
【0007】
しかしながら、逆バイアス状態では、p+の領域16とドリフト層14との間のPN接合部J2によって形成される空乏領域は、デバイス10を通過する逆電流をブロックするように拡大し、ショットキー接合部J1を保護し、デバイス10内の逆リーク電流を制限する。従って、逆バイアスでは、JBSダイオード10はPINダイオードのようにふるまう。デバイス10の電圧ブロッキング能力は典型的には、ドリフト層14の厚さおよびドーピング、およびエッジターミネーションの設計によって決定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
シリコンカーバイドJBSダイオードに共通して生じる問題は、電流サージを扱う能力にある。シリコンカーバイドJBSショットキーダイオードは、一般に電力スイッチング用途、例えば高電圧配電システムにおける力率制御(PFC)で使用するように設計されている。かかる用途では、ターンオンの間、および/またはラインサイクルのブロックアウト後に、サージ電流を受けることがある。電流サージが生じると、ダイオード内では多大な電力が散逸し、このことは熱暴走に起因するデバイスの壊滅的な故障を生じさせ得る。
【0009】
JBSショットキーダイオードは、p+領域16とドリフト層14との間の接合部J2が大電流状態でターンオンし、この結果、少数キャリア(ホール)が接合部J2を越えてドリフト層14に注入されるように設計できる。このような少数キャリアの注入はドリフト層14の導電率を変調し、電流に対する抵抗を減少し、よって電流サージの結果デバイスが故障する潜在性を低減する。しかしながら、高電流にて接合部J2がターンオンするようにp+領域16を設定すると、このことにより、好ましくないことに、より低い電流でデバイスのオン状態での抵抗が増加し得る。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一部の実施形態に係わる電子デバイスは、第1の導電型を有するシリコンカーバイドのドリフト領域と、前記ドリフト領域の上に設けられたショットキーコンタクトと、前記ショットキーコンタクトに隣接するドリフト領域の表面に設けられた複数の接合型バリアショットキー(JBS)領域とを備える。前記JBS領域は、第1の導電型と反対の第2の導電型を有すると共に、第1の幅および前記JBS領域のうちの隣接する領域の間に第1の隙間を有する。このデバイスは、更に前記ショットキーコンタクトに隣接するドリフト領域の表面に設けられたサージ保護領域を備える。このサージ保護領域は、前記第1の幅よりも広い第2の幅を有し、前記第2の導電型を有する複数のサージ保護サブ領域を含み、これらサージ保護サブ領域の各々は、前記第1の幅よりも狭い第3の幅を有し、前記JBS領域のうちの隣接する領域の間の前記第1の隙間よりも狭い、第2の隙間を前記サージ保護サブ領域のうちの隣接するサブ領域の間に有する。
【0011】
前記第1の隙間は約4μm〜約6μmとし、前記第2の隙間は約1μm〜約3μmとすることができる。前記第1の幅は約1μm〜約3μmとし、前記第3の幅は約1μm〜約3μmとすることができる。
【0012】
前記サージ保護サブ領域は、前記ドリフト層の表面から前記ドリフト層内に約0.3μm〜約0.5μmの深さまで延びることができる。前記ドリフト領域のドーピングレベルを、約5×1014cm−3〜約1×1016cm−3とすることができる。
【0013】
前記第1の隙間と、前記第2の隙間と、第3の幅とは、前記ドリフト層の表面から前記サージ保護サブ領域のうちの1つと前記ドリフト領域との間の接合部の中心までの電圧低下が前記ショットキーダイオードの電流よりも大きい順方向電流で当該接合部が順方向バイアスになりこの順方向電流での順方向バイアスによって前記ショットキーダイオードに電流サージ取り扱い能力を与えるように構成できる。
【0014】
前記ショットキーコンタクトと前記サージ保護サブ領域との間の境界部を、オーミックコンタクトとすることができる。
【0015】
前記ドリフト層は、4H−SiCを含むことができる。前記ドリフト層は、約5×1015cm−3〜1×1016cm−3のドーピングレベルを有し、前記電流サージ制御サブ領域は、5×1018cm−3より大きいドーピングレベルを有することができる。
【0016】
前記サージ保護領域の下方の前記ドリフト領域の一部は、前記ショットキーコンタクトに印加される順方向電圧に応答し、前記JBS領域の下方の前記ドリフト領域の一部よりも高い電位を有することができる。
【0017】
本デバイスは、前記ショットキーコンタクトに隣接して前記ドリフト層内に複数の電流サージ制御領域を更に含むことができる。
【0018】
前記第1の導電型はn型を含むことができ、前記第2の導電型はp型を含むことができる。
【0019】
前記サージ制御サブ領域は、前記ドリフト領域内の複数のトレンチと、前記複数のトレンチのそれぞれのトレンチの下方に延びるドリフト層内の複数のドープされた領域とを含むことができる。
【0020】
前記サージ保護サブ領域は、前記サージ保護サブ領域のそれぞれの間でドリフト領域内に垂直の電流路を構成し、前記サージ保護領域の深さは、前記トレンチの深さと前記ドープされた領域の深さとによって定めることができる。
【0021】
本発明の一部の実施形態に係わるショットキーダイオードを形成する方法は、第1導電型を有するシリコンカーバイドドリフト領域の表面に複数の接合型バリアショットキー(JBS)領域を形成するステップであって、この複数のJBS領域は、前記第1の導電型と反対の第2の導電型を有すると共に、前記JBS領域のうちの隣接する領域の間に第1の隙間を有するステップを含む。更に前記ショットキーコンタクトに隣接する前記ドリフト領域の表面にサージ保護領域を形成するステップであって、このサージ保護領域は、前記第2の導電型を有する複数のサージ保護サブ領域を含み、これらサージ保護サブ領域の各々は、前記JBS領域のうちの隣接する領域の間の前記第1の隙間よりも狭い第2の隙間を、前記サージ保護サブ領域のうちの隣接するサブ領域の間に有するステップを含む。ショットキーコンタクトはドリフト領域上に形成される。
【0022】
前記第1の隙間は約4μm〜約6μmとし、前記第2の隙間は約1μm〜約3μmとすることができる。
【0023】
前記複数のJBS領域の形成と前記サージ保護領域の形成は、前記第2の導電型のドーパントイオンを前記ドリフト層内の選択的な注入と、前記注入されたイオンの1700℃よりも高い温度での熱処理を含むことができる。
【0024】
本方法は、前記注入されたイオンを含む前記ドリフト層の上にグラファイトコーティングを形成するステップであって、前記注入されたイオンを熱処理する前記ステップは、前記グラファイトコーティングを熱処理するステップを含むことができる。
【0025】
本方法は、前記イオンを注入する前に前記ドリフト層内に複数のトレンチをエッチングするステップをさらに備え、前記イオンを注入するステップは、前記複数のトレンチ内に前記イオンを注入するステップを含むことができる。
【0026】
前記ドリフト領域に前記ショットキーコンタクトを形成するステップは、単一金属を使用し、前記ドリフト領域に対する前記ショットキーコンタクトと前記サージ保護サブ領域に対するオーミックコンタクトを形成するステップを含むことができる。
【0027】
別の実施形態に係わるデバイスは、第1の導電型を有するシリコンカーバイドドリフト領域と、前記ドリフト領域に設けられたショットキーコンタクトと、前記ショットキーコンタクトに隣接する前記ドリフト領域の表面に設けられた複数の接合型バリアショットキー(JBS)領域とを備える。これらの複数のJBS領域は、前記第1の導電型と反対の第2の導電型を有すると共に、前記JBS領域のうちの隣接する領域の間に第1の隙間を有する。このデバイスは、更に、前記第2の導電型を有する複数のサージ保護サブ領域を備える。これらサージ保護サブ領域の各々は、前記第1の隙間よりも狭い第2の隙間を前記サージ保護サブ領域のうちの隣接するサブ領域の間に有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明を更に理解するために記載されており、本願の一部をなす添付図面は、本発明の所定の実施形態を示すものである。
【0029】
図1】従来のJBSダイオードの断面図である。
【0030】
図2】サージ保護領域を含むJBSダイオードの平面図である。
【0031】
図3】サージ保護領域を含むJBSダイオードの断面図である。
【0032】
図4】一部の実施形態に係わるJBSダイオードの断面図である。
【0033】
図5図4のJBSダイオードの別の特徴を示す詳細図である。
【0034】
図6】一部の実施形態に係わるJBSダイオードの製造中に形成される中間構造体の断面図である。
【0035】
図7A】別の実施形態に係わるJBSダイオードを製造中に形成される中間構造体の断面図である。
【0036】
図7B】別の実施形態に係わるJBSダイオードの断面図である。
【0037】
図8】(A)は一部の実施形態に係わるデバイスにおけるシミュレートされたデバイス構造体とシミュレーションの結果を示す。
【0038】
(B)は比較デバイスにおけるシミュレートされたデバイス構造体とシミュレーションの結果を示す。
【0039】
図9】一部の実施形態に係わるデバイスにおけるシミュレートされた電流と電圧との間の特性を示す。
【0040】
図10】一部の実施形態に係わるデバイスにおけるシミュレートされたホール濃度の特性を示す。
【0041】
図11】一部の実施形態に係わるデバイスにおけるシミュレートされた電位特性を示す。
【0042】
図12】一部の実施形態に従って使用できるイオン注入マスクパターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
(発明の実施形態の詳細な説明)
本発明の実施形態を示す添付図面を参照し、以下、本発明の実施形態についてより詳細に説明する。しかしながら、本発明は別の多くの形態でも実施でき、本明細書に記載の実施形態だけに限定されると見なすべきでない。これら実施形態は、本開示をより完全にし、本開示が当業者に本発明の範囲を完全に伝えるように記載したものである。同様な番号は、図面全体にわたり同様な要素を示す。
【0044】
種々の要素を記述するのに、ここでは第1、第2などの用語を使用するが、これら要素をこれら用語によって限定すべきでないことが理解できよう。これら用語はある要素を別の要素から区別するのに使用したものにすぎない。例えば本発明の範囲から逸脱することなく、第1要素を第2要素と称すこともできるし、同様に第2要素を第1要素と称すこともできる。ここで使用するように、「および/または」なる用語は、関連する列挙した項目のうちの1つ以上の任意の組み合わせおよびすべての組み合わせを含む。
【0045】
ここで使用する用語は、特定の実施形態を記述するためのものにすぎず、発明を限定するものではない。ここで使用するように、単数形態である「ある」および「この」なる用語は、文脈が明らかに単数であることを示さない限り、複数の形態も含むものである。ここで使用する「含む」、「備える」および/または「有する」なる用語は、記載する特徴、完全体、ステップ、動作、要素および/またはコンポーネントの存在を特定するものであるが、他の1つ以上の特徴、完全体、ステップ、動作、要素、コンポーネントおよび/またはそれらの集合が存在すること、またはこれらを加えることを否定するものでないことも更に理解できよう。
【0046】
特に定義しない限り、ここで使用する(科学技術用語を含む)すべての用語は、発明が属する技術分野の当業者に共通して理解されるものと同じ意味を有する。ここで使用される用語は、本明細書の文脈および対応する技術分野における意味と一致する意味を有するものと解釈すべきであり、ここに特に明記しない限り、理想的な意味または極端に形式的な意味で解釈すべきではないことも理解できよう。
【0047】
層、領域または基板のような要素が別の要素の「上」にあるか、または「その上まで」延長すると述べたときには、この要素はその別の要素の上に直接存在しもしくはその別の要素の上まで直接延びてもよく、または両者の間に介在する要素が存在していてもよいと理解できよう。これと対照的に、ある要素が別の要素の「上に直接」存在するか、または別の要素の「上まで直接」延びると記載されているときには、介在する要素は存在しない。ある要素が別の要素に「接続されている」か、または「結合されている」と称されているときには、この要素はその別の要素に直接接続されもしくは直接結合されていてもよく、または介在する要素が存在し得る。これと対照的に、ある要素が別の要素に「直接接続されている」か、または「直接結合されている」と称されているときには、介在する要素は存在しない。
【0048】
ここでは、「下方」または「上方」または「上部」または「下部」または「水平」または「横方向」または「垂直」のような相対的な用語を、ある要素、層または領域の、別の要素、層または領域に対する図面中で示される関係を記述するために、使用することができる。これら用語は、図面に記載したデバイスの方向の他に、デバイスの別の方向を含む意味であることが理解できよう。
【0049】
本発明の理想化された実施形態(および中間構造体)の概略図である断面図を参照し、本発明の実施形態についてここで説明する。図中の層および領域の厚みは、発明を明瞭にするために誇張されている場合がある。更に、例えば製造技術および/または公差の結果として図の形状からずれることを予想すべきである。従って、本発明の実施形態は、ここに示した領域の特定の形状だけに限定されると見なしてはならず、例えば製造の結果生じる形状の差異も含むと理解すべきである。例えば四角形として図示されている注入領域は、一般に丸い形状もしくはカーブした形状をしており、および/または注入領域から非注入領域に不連続に変化するのではなく、エッジにおいて、注入濃度に勾配を有する。同様に、注入によってある埋没した領域形成する結果、この埋没した領域と表面(この表面を介して注入が行われる)との間の領域に、注入が生じる。従って、図に示された領域は、実際には概略図であり、それらの形状は、デバイスの領域の実際の形状を示すものでもなければ、発明の範囲を限定するものでもない。
【0050】
n型またはp型のような導電型を有することを特徴とする半導体層および/または領域の言及により本発明の一部の実施形態は説明され、これらは層および/または領域内の多数キャリアの濃度を示す。従って、n型の材料は、負に帯電した電子の多数キャリア平衡濃度を有し、他方、p型の材料は、正に帯電したホールの多数キャリアの平衡濃度を有する。「+」または「−」を用いて(n+、n−、p+、p−、n++、n−−、p++、p−−などのように)、ある材料を表示することがあり、別の層または領域と比較して、相対的に高い(「+」)または低い(「−」)濃度の多数キャリアを示す。しかしながら、かかる表記は、層または領域内での特定の濃度の多数キャリアまたは少数キャリアが存在することを意味するものではない。
【0051】
図2は、ショットキーダイオード構造体100の平面図であり、このダイオード構造体では、p+領域が高電流密度でターンオンし、ドリフト層14内に少数キャリアを注入するようp+領域のサイズを定め、ドーピングすることによって、電流サージを扱うようになっている。本発明の被譲渡人に譲渡されている「ブレークダウンが制御されたショットキーダイオードを含む半導体デバイスおよびその製造方法」を発明の名称とする米国公開特許出願第2008/0029838号には、同様なダイオードが開示されており、ここではこの米国公開特許出願を参考例として援用する。
【0052】
図2を参照すると、ダイオード100は、上部表面を有するドリフト層114を含み、この表面に、ドリフト層114と反対の導電型の複数のJBS領域130がストライプ形状の領域としてドリフト層114内では形成されている。これらJBS領域130は、例えばホウ素および/またはアルミニウムのようなp型のドーパントを、約1×1017〜約1×1018cm−3の濃度にドリフト層114にイオン注入することによって形成でき、ドリフト層114の表面より下方の約0.3〜約0.5μmの深さまで達することができる。
【0053】
ドリフト層114内には1つ以上のサージ保護領域116も設けられている。このサージ保護領域116は、例えばホウ素および/またはアルミニウムのようなp型のドーパントを、約1×1018〜約1×1019cm−3の濃度にドリフト層114にイオン注入することにより形成でき、このサージ保護領域116はドリフト層114の表面の下方の約0.3〜約0.5μmの深さまで達することができる。
【0054】
JBS領域130は、ドリフト層114の表面の部分114Aを露出させ、(ドリフト層の露出した部分114Aおよび高濃度にドープされた領域116を除き)ドリフト層114のアクティブ領域110を横断するように延びている。ドリフト層114を金属ショットキーコンタクト118(図3)が覆い、このコンタクト118は、ドリフト層114の露出した部分114Aだけでなく、JBS領域130およびサージ保護領域116とも接触している。ここで使用するような「アクティブ領域」なる用語は、ショットキー金属コンタクトがドリフト層に接触するデバイスの二次元エリアを示し、ドリフト層114の露出した部分114Aと、JBS領域130と、サージ保護領域116とを含む。従って、アクティブ領域は、ショットキー接合エリアを含むが、例えばエッジターミネーション領域は含まない。
【0055】
図3は、図2のA−A’ラインに沿ったダイオード100の断面図である。図3に示されるように、ダイオード100は、上部にドリフト層114が形成されている基板112を含む。サージ保護領域116は、ドリフト層114内の注入領域として形成できる。同様に、JBS領域130もドリフト層114内の注入領域として形成できる。サージ保護領域116およびJBS領域130は、ドリフト層114と反対の導電型となっているので、JBS領域130はドリフト層114とp−n接合部J3を形成し、他方、高濃度にドープされた領域116は、ドリフト層114と共にp−n接合部J5を形成する。
【0056】
ドリフト層114の表面上のアノードコンタクト118は、隣接する低濃度にドープされた領域130の間、および/またはJBS領域130とサージ保護領域116との間でドリフト層114の露出した部分114Aと共にショットキー接合部J4を形成する。アノードコンタクト118は、ドリフト層114と共にショットキーコンタクトを形成しながら、サージ保護領域116とのオーミックコンタクトを形成できるような、金属、例えばアルミ、チタンおよび/またはニッケルを含むことができる。図3に示されるように、アノードコンタクト118は、サージ保護領域116上にオーミックコンタクトを形成する第1部分118Aと、ドリフト層114とショットキーコンタクトを形成する第2部分118Bとを含むことができる。特に、アノードコンタクト118の第1部分118Aを覆うように、第2部分118Bを形成できる。第1部分118Aは、例えばアルミ、チタンおよび/またはニッケルを含むことができるが、第2部分118Bは、例えばアルミ、チタンおよび/またはニッケルを含むことができる。
【0057】
基板112のドリフト層114と反対の面には、カソードコンタクト120が形成されている。このカソードコンタクト120は、n型のシリコンカーバイドに対しオーミックコンタクトを形成できる金属、例えばニッケルを含むことができる。
【0058】
順方向動作では、アノードコンタクト118とドリフト層114の露出した部分114Aとの間の接合部J4は、サージ保護領域116とドリフト層114との間の接合部J5よりも前にターンオンする。従って、順方向の低電圧では、デバイスはショットキーダイオードのふるまいを示す。すなわち順方向の低電圧ではダイオード100の動作は、ショットキー接合部J4を横断する多数キャリアの注入によって支配される。正常な作動条件下では、少数キャリアの注入が存在しないことにより、ダイオード100は、一般にショットキーダイオードの特徴である極めて高速のスイッチング能力を有することができる。
【0059】
サージ保護領域116は、ショットキー接合部J4のターンオン電圧よりも高い順方向電圧で導通し始めるように設計できる。従って、ダイオード100の順方向電圧を増加させる電流サージが生じた場合、p−n接合部J5は、導通し始める。p−n接合部J5が一旦導通し始めると、ダイオード100の動作はp−n接合部J5を越えた少数キャリアの注入および再結合によって支配される。この場合、ダイオードのオン状態の抵抗は減少し、これによって所定のレベルの電流において、ダイオード100が散逸する電力量を減少できる。従って、ダイオード100の順方向電圧が増加したときのp−n接合部J5のターンオンは、ダイオード100内の順方向の電流暴走を低減または防止し得る。
【0060】
順方向動作では、順方向電流Ifは、JBS領域130およびサージ保護領域116の近傍を垂直下方に流れる。サージ保護領域116の表面を水平方向に横断するようにも電流が流れる。ドリフト領域の表面114Aからサージ保護領域116の中央までの電圧低下ΔVがp−n接合部J5のビルトイン電圧を超えると、p−n接合部J5のターンオンが生じる。従って、ドリフト領域114内の所定のドーピングレベルに対し、サージ保護領域116は所望するターンオンレベルの順方向電流Ifでp−n接合部j5をターンオンさせるための少なくとも最小の横方向幅(すなわち最小の大きさ)を有するように設計できる。
【0061】
デバイス100のオン状態の抵抗を、好ましくないことに増加し得る、サージ保護領域116の横方向の幅を単に広くする方法以外の方法によって、所望する電圧低下を得ることができるようにする実現例から、本発明の一部の実施形態が得られる。
【0062】
例えば図4は、サージ電流保護だけでなく逆バイアス保護を行うために所定の深さ、幅、隙間およびドーピング濃度を有する複数のサブ領域226を使用して、サージ保護領域216を形成する実施形態を示す。
【0063】
特に図4は、本発明の一部の実施形態に係わるダイオード200の断面図である。ダイオード200は、ドリフト層214と反対の導電型の複数のJBS領域230が形成されている上部表面を有するドリフト層214を含む。
【0064】
ドリフト層214は、ダイオード200に対する電圧ブロッキングおよびオン状態の抵抗値のための設計条件に応じ、約5×1014〜約1×1016cm−3のドーパント濃度を有する、2H、4H、6H、3Cおよび/または15Rのポリタイプのn型シリコンカーバイドから形成できる。その他のタイプの半導体材料、例えばGaN、GaAs、シリコンまたはゲルマニウムも使用できる。特定の実施形態では、ドリフト層214は、約5×1015cm−3の濃度で、n型ドーパントによりドープされた4H−SiCを含む。例えばドリフト層214にホウ素および/またはアルミのようなp型のドーパントを約1×1018cm−3〜1×1019cm−3の濃度にイオン注入することにより、JBS領域230を形成でき、これら領域はドリフト層214の表面より下方の約0.3〜約0.5μmの深さまで延びることができる。特定の実施形態では、約5×1018cm−3の濃度にJBS領域230をp型のドーパントでドープできる。
【0065】
サージ保護領域216は、ドリフト層214内に複数のサブ領域226を含む。これらサブ領域226は、例えばドリフト層214内にホウ素および/またはアルミのようなp型のドーパントを約1×1018〜約1×1019cm−3の濃度に、イオン注入することによって形成でき、これらサブ領域はドリフト層114の表面の下方の約0.3〜約0.5μmの深さまで延びることができる。特定の実施形態では、サブ領域116は、約5×1018cm−3のドーパント濃度でドープでき、これらサブ領域はドリフト層214の表面の下方の、約0.5μmの深さまで延びることができる。サブ領域226の各々は、ドリフト領域214と共にp−n接合部J6を形成する。一部の実施形態では、JBS領域230と同時にサブ領域226にイオン注入できる。従って、サブ領域226は、JBS領域230と同じ深さおよびドーピングプロフィルを有することができる。しかしながら、別の実施形態では、サブ領域226はJBS領域230と異なるプロセスでも形成でき、JBS領域230と異なる深さおよび/またはドーピングプロフィルを有することもできる。
【0066】
JBS領域230およびサブ領域226における注入されたドーパントの活性化は、十分高い温度で、基板212と、ドリフト層214と、注入領域とを含む構造体を熱処理することによって実行できる。一部の実施形態では、注入活性化の前にドリフト領域214の表面にグラファイトコーティングを形成してもよい。このグラファイトコーティングは、注入されたイオンを熱処理した後に除いてもよい。また、このグラファイトコーティングは、注入されたイオンを熱処理する前に結晶化してもよい。
【0067】
注入されたイオンは、1700℃より高い温度、一部の実施形態では1800℃より高い温度で熱処理できる。
【0068】
例えば図6を参照すると、JBS領域230とサブ領域226内との注入されたドーパントを、約1600℃またはそれ以上の温度で、シリコンオーバープレッシャーで、および/またはグラファイト膜のような封入層により覆われた状態で、構造体を熱処理することにより活性化する。一部の実施形態では、グラファイトコーティングを使用し、約1700℃よりも高い温度で熱処理することにより、注入物を活性化できる。
【0069】
(例えば1700℃またはそれより高い)高温の活性化熱処理は、チャンネル領域40内の欠陥の熱処理だけでなく、スレッショルド調整イオンの活性化も促進することができる。しかしながらかかる高温熱処理は、シリコンカーバイドドリフト層16の表面に損傷を与え得る。
【0070】
高温熱処理の結果生じ得る損傷を低減するために、構造体の表面に金属コンタクトを形成する前にその構造体の表面にグラファイトコーティング250を形成してもよい。すなわち注入されたイオンを活性化するために構造体を熱処理する前に、ドリフト層214の頂部面/正面にグラファイトコーティング250を形成し、熱処理中の構造体の表面を保護してもよい。グラファイトコーティング250は従来のレジストコーティング方法によって形成でき、このコーティング250は高温熱処理中の下方のSiC層を保護するのに十分な厚さを有することができる。グラファイトコーティング250は、約1μmの厚さを有することができる。熱処理に先立ち、ドリフト層214の上に結晶質コーティングを形成するため、グラファイトコーティング250を加熱してもよい。注入されたイオンは、例えば約1700℃以上の温度で不活性ガス内で実行できる加熱処理により活性化できる。特に加熱処理は、アルゴン中で5分間、約1850℃の温度で実行できる。グラファイトコーティング250は、高温熱処理中にドリフト層214の表面を保護するのに役立つ。
【0071】
次に、グラファイトコーティング250は、例えばアッシングおよび熱酸化により除去できる。
【0072】
注入されたイオンを活性化することに加え、グラファイトコーティングと共に高温熱処理することは、サブ領域216へのオーミックコンタクトの形成を促進できる。すなわち特定の動作理論に限定されることは望まないが、現在では、サージ保護サブ領域226内のAlイオンのようなp型のドーパントは、高温熱処理中にサブ領域226の表面に累積すると信じられている。チタンのような金属がアノードコンタクト218としてドリフト層214上に堆積されると、この金属は好ましいことに、下方のサブ領域226とオーミックコンタクトを形成する。アノード金属218とサブ領域226との間のオーミックコンタクトの形成は、所望するレベルの順方向電流でp−n接合部J6がターンオンするのをより容易にすることにより、サージ保護領域216によって提供される過電流保護を強化できる。更に一部の実施形態では、サブ領域226に対するオーミックコンタクトと同様にドリフト領域214に対するショットキーコンタクトを形成する単一の金属だけをアノードコンタクトに使用することが可能であり、これによって製造にかかる時間および/または出費を低減できる。
【0073】
図4の実施形態に示されたJBS領域230は、隔置されたストライプ状の領域として設けることができ、これらストライプ状領域は、ドリフト層214の表面の部分214Aを露出すると共に、(ドリフト層の露出した部分214Aおよびサブ領域226を除き)ドリフト層214のアクティブ領域を横断するように延びている。ドリフト層214を金属ショットキーコンタクト218が覆っており、このショットキーコンタクトは、JBS領域230とサブ領域226とだけでなく、ドリフト層214の露出した部分214Aとも接触状態にある。
【0074】
ダイオード200は、ダイオード100のアクティブ領域110を囲むエッジターミネーション領域(図示せず)を含むことができる。このエッジターミネーション領域は、接合部ターミネーション延長(JTE)領域、電界リング、電界プレート、ガードリングおよび/または上記またはそれ以外のターミネーションの組み合わせを含むことができる。
【0075】
基板212の、ドリフト層214と反対の面には、カソードコンタクト220が形成されている。このカソードコンタクト220は、n型のシリコンカーバイドに対するオーミックコンタクトを形成できる、ニッケルのような金属を含むことができる。
【0076】
順方向動作では、順方向電流IfがJBS領域230およびサブ領域226の近傍を垂直下方に流れる。サージ保護領域226の面を水平方向に横断するようにも電流が流れる。ドリフト領域の表面214Aからサブ領域226の中央までの電圧低下ΔVがp−n接合部J6のビルトイン電圧を超えると、サブ領域226とドリフト層214との間のp−n接合部J6のターンオンが生じる。しかしながら、隣接するサブ領域226の間の垂直電流路226A内で電圧低下ΔVの一部が生じ得る。垂直電流路226Aの抵抗は、垂直電流路226Aの長さおよび幅、並びにドリフト領域214の表面ドーピングに応じて決まる。従って、一部の実施形態は、所望するレベルの順方向電流でサブ領域226とドリフト領域214との間で接合部J6を越えてバイポーラ導通が生じるように、ドリフト領域214の表面ドーピングだけでなく、垂直電流路226Aの長さおよび幅も制御している。
【0077】
ダイオード200の一部の詳細な断面図である図5には、ダイオード200の別の一部の特徴が示されている。特に図5に示されるように、サブ領域226は、幅W、隙間Sおよび深さLを有することができる。JBS領域230は、幅WJBSおよび隙間SJBSを有することができる。JBS領域230はサージ保護領域216からJBSの隙間SJBSだけ離間し得る。隣接するサブ領域226の間の垂直電流路226Aの抵抗は、次のように表記できる。
【数1】

すなわち垂直電流路の抵抗は、サブ領域226の深さLに比例し、隣接するサブ領域226の間の隙間Sに反比例する。従って、サブ領域226をより深くし、および/または離間隙間をより密にすることにより、所望する電圧低下ΔVを得ることができる。サブ領域226をより深くすると、イオン注入技術の限界に起因する課題が生じ得る。特にイオン注入技術のみを使用すると、0.5μmよりも深い深さLを有するようにサブ領域226を形成することが、困難となる。この限界は、以下、より詳細に説明する別の実施形態によって解決される。
【0078】
しかしながら、所望するレベルの順方向電流Ifでp−n接合部J6の導通が開始できる程度まで垂直電流路226Aの抵抗を増加できるように、フォトリソグラフィにより隣接するサブ領域226の間の隙間Sを縮小できる。
【0079】
一部の実施形態では、サブ領域226の深さLを0.3〜0.5μmとすることができる。サブ領域226の幅Wを約1μm〜3μmとすることができる。隣接するサブ領域226の間の隙間Sを約1μm〜約3μmとすることができる。JBS領域230の幅WJBSを約1μm〜約3μmとすることができる。隣接するJBS領域230の間、および/またはJBS領域230と電流サージ領域216との間の隙間SJBSを約4μm〜約6μm、または隣接するサブ領域226の間の隙間Sの約2〜4倍とすることができる。サージ保護領域216の幅を約10μmまたはそれ以上とすることができる。
【0080】
図7Aおよび7Bは、別の実施例に係わる構造体/方法を示す。これら図に示されるように、ドリフト層214内にトレンチ320をエッチングすることにより、サージ保護領域316のサブ領域326を形成できる。これらサブ領域326は、プラズマエッチング、誘導結合プラズマ(ICP)、電子サイクロトロン共振(ECR)などのドライエッチング技術を使い、フッ素をベースとする化学薬品、例えばSF、CHFを使用して、エッチングできる。
【0081】
トレンチ320は、約0.3μm〜約1μmまでの深さdまでエッチングできる。トレンチを形成した後に、サブ領域326を形成するように注入マスク315を介し、トレンチ320内にイオン310、例えばアルミおよび/またはホウ素のようなp型のイオンを注入できる。これらイオンは、例えば1×1015cm−2のドーズ量および300keVまでのエネルギーで注入できる。これらイオンはトレンチ320の側壁に注入できるよう、30°の傾斜角で注入できる。更に25℃の温度で注入を実行できる。後に理解できるように、隣接するサブ領域326の間の垂直チャンネル326Aの深さLは、トレンチ320の深さdと注入物の接合深さとの合計となる。したがって、より高い抵抗を有するより長い垂直チャンネル326Aを得ることができる。
【0082】
更により広い表面積、従ってより小さい抵抗を有するように、サブ領域326に対するオーミックコンタクトを形成するように、アノードコンタクト218はトレンチ320内に進入できる。図7Bには、この結果得られる、基板212上にアノードコンタクト220を含むデバイス300が示されている。
【0083】
図8(A)および図8(B)は、図4および図3に示されたダイオードにおけるシミュレーション結果をそれぞれ示す。特に図8(A)および図8(B)は、順方向電圧降下が5.2Vでのサージ電流条件下のデバイス内のホール濃度を図示する。例えば図8(A)は、ドリフト領域214を含む構造体200Aを示す。ドリフト領域214の表面にはJBS領域230および複数のサージ保護サブ領域226が形成されている。サージ保護サブ領域226の隣接するサブ領域の間には、垂直電流路226Aが構成されている。図8(A)には、構造体200A内の空乏領域の境界の位置を示すライン410も描かれている。図8(B)は、ドリフト領域114を含む構造体100Aを示す。ドリフト領域114の表面にはJBS領域130および単一のサージ保護領域116が形成されている。図8(B)におけるライン420は、構造体100A内の空乏領域の境界の位置を示す。
【0084】
図8(A)および図8(B)に示されるように、図8(A)のデバイス200A内のサブ領域226から、および図8(B)のデバイス100A内のサージ保護領域116からホールを注入できる。しかしながら、図8(B)内のデバイス100A内のサージ保護領域116からよりも、図8(A)内のデバイス200A内の中心サブ領域226’からのほうが、より高いホール濃度で注入できる。
【0085】
図9は、それぞれ図8(A)および図8(B)に示された構造体200Aおよび100Aに対するシミュレートされた電流と電圧との関係を示す。特に、図9は双方のデバイスでは、約4.8Vの電圧で電流が流れ始めることを示している。しかしながら、4.8Vを超える電圧では、I−V曲線の、より大きい傾きによって示されるように、サージ電流条件中ではデバイス200Aのほうがデバイス100Aよりも低い抵抗値を有するように見える。このシミュレーションでは、電圧はカソードからアノードまでを基準にしたことが理解できよう。従って、順方向バイアスおよび順方向電流には負の極性が割り当てられている。
【0086】
図10は、図8(A)および図8(B)にそれぞれ示されるデバイス200Aおよび100A内のシミュレートされたホール濃度と横方向位置の関係を示すグラフである。特に、曲線442は、図8(B)のデバイス構造体100Aにおけるシミュレートされたホール濃度と位置との関係を示し、曲線444は図8(A)のデバイス構造体200Aにおけるシミュレートされたホール濃度と位置との関係を示す。このシミュレーションによれば、図8(A)のデバイス構造200Aでは、ホール濃度がより高くなることが予想される。
【0087】
図11は、図8(A)および図8(B)にそれぞれ示されているデバイス200Aおよび100Aにおけるシミュレートされた電位と横方向位置との関係を示すグラフである。特に、曲線452は、図8(B)のデバイス構造体100Aにおけるシミュレートされた電位と位置との関係を示し、曲線454は、図8(A)のデバイス構造体200Aにおけるシミュレートされた電位と位置との関係を示す。シミュレーションによれば、図8(A)のデバイス構造体200Aでは、隣接するサブ領域226の間の垂直電流路226Aにわたり、ポテンシャルが局所的に上昇することが予想される。更に、デバイス構造体200Aでは、サージ保護サブ領域226の下方のドリフト領域の部分は、ショットキーコンタクトに印加される順方向電圧に応答し、JBS領域230の下方のドリフト領域の部分よりも電位がより高くなる。
【0088】
図12は、図4に示されたデバイス200のためにJBS領域230およびサブ領域226を構成するp型の注入物のためのマスクレイアウト例を示す。
【0089】
以上で、当業者が理解できるように特定の動作シーケンスを参照して本発明の実施形態について説明したが、本発明の教示から利点が得られる限り、シーケンス内の所定の動作の順序を並び替えてもよい。従って、本発明はここに記載したとおりの動作シーケンスだけに限定されると見なすべきでない。
【0090】
図面および明細書には、本発明の代表的な実施形態が開示されている。特定の用語を使用したが、これら用語は一般的かつ記述のためにのみ使用したものであり、発明を限定するために使用したものではなく、本発明の範囲は特許請求の範囲に記載されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図9
図10
図11
図12
図8