(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
R.C. Dobbie, J. Chem. Soc. (A), 1971, 2894-2897には、密閉容器において、室温で、4当量のNOを用いたP
2(CF
3)
4(テトラキストリフルオロメチルジホスフィン)の酸化による、ビス(トリフルオロメチル)ホスフィン酸無水物の合成が報告されている。
Anton B. Burg, Inorganic Chemistry, 1978, 17, 2322-2324には、ビス(トリフルオロメチル)亜ホスフィン酸無水物[(CF
3)
2POP(CF
3)
2]とビス(トリフルオロメチル)ホスフィニルクロリドとの反応による、ビス(トリフルオロメチル)ホスフィン酸無水物の合成が報告されている。
【0003】
T. Mahmood and J.M. Shreeve, Inorg. Chem. 1986, 25, 3128-3131には、クロロビス(ペンタフルオロエチルホスフィン)[(C
2F
5)
2PCl]と過剰のNO
2との25℃での反応によるビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸無水物の合成であって、該反応中、反応容器内に不揮発性生成物として該無水物が残存する前記合成が報告されている。しかしながら、参考文献中に示されたNMRスペクトルは、本発明の方法によって得られる、ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸無水物(蒸留可能な液体)のスペクトルと一致しない。
T. Mahmood and J.M. Shreeve, Inorg. Chem. 1986, 25, 3128-3131に記載されている、
19Fおよび
31P NMRスペクトルにおけるシグナルの位置およびそれらの詳細構造は、ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸に対応するスペクトルと、より類似している。ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸のスペクトルは、例えば、例3に記載されている。ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸[(C
2F
5)
2P(O)OH]
2のCF
2基は、重水素化アセトニトリル中、
19F NMRスペクトルにおいて、−127.0ppmに、
2J
P,F=77Hzの結合定数で、単純な二重線を生成する。このシグナルの位置は、T. MahmoodおよびJ.M. Shreeveによって記載されたシグナルと極めて類似しており、すなわち重水素化ジメチルスルホキシド中、δCF
2=126.3および
2J
P,F=73Hzである。
【0004】
例1において十分に示されているように、ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸無水物の
19F NMRスペクトルは全く異なる。ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸無水物[(C
2F
5)
2P(O)OP(O)(C
2F
5)
2]におけるCF
2基中のフッ素原子は分光学的に同一ではなく、代わりにCF
AF
B系を形成し、これは−122.0および−127.0ppmにダブルダブレット(いわゆるABXスピン系)を、結合定数J
P,F(A)=90Hzおよび
2J
P,F(B)=107Hzでもたらす。例1のビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸無水物の
31P NMRのスペクトルは、同様に、T. Mahmood and J.M. Shreeveに記載されているような無水物と比較しても異なる:例1は複雑な多重線を記載し、一方参考文献は単純な五重線を示す。したがって、この参考文献の反応から、この化合物の入手可能性は得られておらず、この化合物は、それゆえ依然として新規である。
【0005】
Mahmood et alに報告されているとおりのビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸無水物のスペクトル:
19F:−81.4s(CF3),−126.3d(J
CF2−P)73.24Hz
31P:−0.3.五重線
【0006】
Rajendra P. Singh and J. M. Shreeve, Inorg. Chem. 2000, 39, 1787-1789には、式(R
F)
2P(O)OP(O)(R
F)
2、式中、R
F=C
6F
13、C
7F
15およびC
8F
17、で表される無水物が、NO
2を用いた(RF)
2PIの酸化による、対応するビス(パーフルオロアルキル)ホスフィン酸の調製において、中間体として記載されている。しかしながら、中間体として示された該無水物は、物理化学的方法を用いる単離も、分析も、特徴づけもなされていない。したがって、同様に、この参考文献の反応から、これらの化合物の入手可能性は得られておらず、これらの化合物は、それゆえ依然として新規とみなされるべきである。
【0007】
カルボン酸およびアルキルスルホン酸の無水物は、有機合成のための興味深い試薬である。ビス(パーフルオロアルキル)ホスフィン酸およびそれらの誘導体は、プロトン伝導性膜の興味深い成分であるか、または例えば有機化学における触媒として好適である。これらは、さらにフッ素含有界面活性の合成、または対応するクロリドへのさらなる変換に好適であり、これらは次に新規な材料の合成、例えばイオン液体の合成に好適である。
【発明の概要】
【0008】
上記のとおり、今日までに公表されたビス(パーフルオロアルキル)ホスフィン酸無水物の調製方法は、所望の生成物をもたらさないか、工業的規模で使用することができない。したがって、この興味深いビス(パーフルオロアルキル)ホスフィン酸無水物類およびこれらの用途を調査することができるように、経済的かつ工業的規模で実行することができる、これらの化合物の利用可能な合成を有することが望ましい。
【0009】
したがって、本発明の目的は、工業的規模の経済的な合成の要件を満たす、ビス(パーフルオロアルキル)ホスフィン酸無水物の改善された調製方法を開発することである。
【0010】
驚くべきことに、ビス(パーフルオロアルキル)ホスフィン酸と五酸化リンとを反応させ、そこから所望の無水物を単離できることが見出された。
【0011】
K. Moedritzer, J. of the American Chemical Society, 1961, 83, 4381-4384には、ホスフィン酸無水物が、対応するホスフィン酸の脱水素化によって調製できないことが記載されている。
G.M. Kosolapoff, R.M. Watson, J. of the American Chemical Society, 1951, 73, 5466-5467には、ジアルキルホスフィニルクロリド[(Alk)
2P(O)Cl]と、対応するジアルキルホスフィン酸またはそれらのエステル[(Alk)
2P(O)OHまたは(Alk)
2P(O)OR]との反応に基づいた、非フッ素化ジアルキルホスフィン酸無水物の典型的な調製方法が記載されている。
【0012】
M. Fimke and H.-J. Kleiner, Liebigs Ann. Chem., 1974, 741-750には、非フッ素化ジアルキルホスフィン酸無水物の調製のための、非フッ素化ジアルキルホスフィン酸またはそれらの塩もしくはそれらのエステルと、脱水素剤としてのホスゲン(COCl
2)との脱水素化が記載されている。
【0013】
したがって、本発明は、ビス(パーフルオロアルキル)ホスフィン酸と五酸化リンとの反応による、ビス(パーフルオロアルキル)ホスフィン酸無水物の調製方法に関する。
五酸化リンは、化学化合物P
2O
5または同義にP
4O
10を意味するものと解釈される。
本発明によって得られる化合物は揮発性であり、反応混合物から分離し、任意に、蒸留によって精製することができる。
【0014】
好ましくは、式I
【化1】
式中、
xは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12を示す、
で表されるビス(パーフルオロアルキル)ホスフィン酸無水物が調製される。
これらは、対称酸無水物である。
【0015】
出発化合物、すなわちビス(パーフルオロアルキル)ホスフィン酸、特に式II
【化2】
式中、
xは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12を示す、
で表されるビス(パーフルオロアルキル)ホスフィン酸(単数/複数)は、市販されているか、または、例えば公開されている明細書WO 03/087110またはWO 2010/012359に記載されたような方法によって、標準的な合成方法により調製することができる。
【0016】
特に好ましいのは、式中、xが2、3、4または5を表す、極めて特に好ましいのはxが2または4を表す、式Iで表される化合物の調製である。
【0017】
上記のとおりの本方法は、20℃〜250℃の温度で、好ましくは60℃〜210℃の温度で行われる。ここでは、対応するビス(パーフルオロアルキル)ホスフィン酸の反応性を考慮すべきである。実験の部で具体的に説明しているとおり、ビス(ノナフルオロブチル)ホスフィン酸無水物の調製は不活性溶媒(1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン)中、60℃で行われ、一方ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸無水物は、210℃で溶媒を使用せずに調製される。正確な反応温度は、有機合成の分野に従事する当業者の裁量に委ねられる。
【0018】
本方法は、溶媒無しで、または溶媒の存在下で行うことができる。好適な溶媒は、例えば、フルオロアルカン、クロロアルカンまたはフルオロクロロアルカン、特に1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタンまたは1,1,2−トリ−クロロトリフルオロエタンである。反応は、好ましくは溶媒なしで行われるか、または溶媒1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン中で行われる。
【0019】
ビス(パーフルオロアルキル)ホスフィン酸と五酸化リンとの反応は、保護ガス雰囲気無しで行うことができる。しかしながら、反応は、好ましくは乾燥した空気下または不活性ガス雰囲気中で行う。
【0020】
本発明は、さらに式I
【化3】
式中、
x
は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12を示す、
で表されるビス(パーフルオロアルキル)ホスフィン酸無水物に関する。
xは、好ましくは3、4、5、6、7、8、9、10、11または12、特に好ましくは2、3、4、5、6、7または8、極めて特に好ましくは2、3、4または5あるいは極めて特に好ましくは3、4、6または12を表す。特に、xは好ましくは2および4、極めて特に好ましくは4を表す。
【0021】
本発明の方法によって調製することができるか、または調製されたビス(パーフルオロアルキル)ホスフィン酸無水物、好ましくは、上記のとおりの式I、式中、xは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12を示す、で表される化合物は、脱水剤として、または乾燥剤として特に好適である。
【0022】
さらに、本発明の方法によって調製することができるか、または調製されたビス(パーフルオロアルキル)ホスフィン酸無水物、好ましくは、上記のとおりの式I、式中、xは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12を示す、で表される化合物は、親のビス(パーフルオロアルキル)ホスフィン酸の他の誘導体の調製、または、対応するビス(パーフルオロアルキル)ホスフィネートアニオンを有する塩の調製のための理想的な出発化合物である。
【0023】
好ましいビス(パーフルオロアルキル)ホスフィン酸誘導体は、例えば、以下のものである、
− ビス(パーフルオロアルキル)ホスフィニルクロリド、特に式III
【化4】
式中、xは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12を示す、で表されるもの、
− ビス(パーフルオロアルキル)ホスフィニルブロミド、特に式IV
【化5】
式中、xは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12を示す、で表されるもの、
【0024】
− ビス(パーフルオロアルキル)ホスフィン酸トリアルキルシリルエーテル、特に式V
【化6】
式中、xは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12を示し、および、
アルキルは1〜4個のC原子を有する直鎖または分枝アルキル基を示す、で表されるもの、
− N,N−ジアルキルビス(パーフルオロアルキル)ホスフィニルアミンまたは−アミド、特に式VI
【化7】
式中、xは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12を示し、および、
Rは、各場合において、互いに独立して、Hあるいは1〜12個のC原子を有する直鎖または分枝アルキル基を示す、で表されるもの、
【0025】
− ビス(パーフルオロアルキル)ホスフィニルシアニド、特に式VII
【化8】
式中、xは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12を示す、で表されるもの、
− ビス(パーフルオロアルキル)ホスフィニルイソチオシアナート、特に式VIII
【化9】
式中、xは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12を示す、で表されるもの。
【0026】
これらの更なる誘導体化における反応条件は、当業者に適切に知られている。実施例は、例に記載されている。
1〜4個のC原子を有する直鎖(もしくは同義的に直線状)または分枝アルキル基は、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル基、n−ブチル、sec−ブチルまたはtert−ブチルである。1〜12個のC原子を有する直線状または分枝アルキル基としては、1〜4個のC原子を有する直線状または分枝アルキル基の態様、例えばn−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、エチルヘキシル、n−ノニル基、n−デシル、n−ウンデシルまたはn−ドデシルが挙げられる。
【0027】
上記誘導体以外のさらなる生成物、特に、式III〜VIIIで表される化合物として、一般に、誘導体化により、対応するビス(パーフルオロアルキル)ホスフィナートが同様に得られ、ここでカチオンは、無機または有機のいずれであってもよい。
【0028】
特に、誘導体化により式IX
【化10】
式中、xは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12を示し、および
Ktは無機または有機カチオンである、で表される化合物が得られる。
Ktである有機カチオンは、例えば、アンモニウムカチオン、スルホニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、ウロニウムカチオン、チオウロニウムカチオン、グアニジニウムカチオンまたは複素環カチオンから選択される。
【0029】
Ktである無機カチオンは、例えば、周期表の1〜12の族からの金属カチオンから選択され、アルカリ金属カチオン、Ag
+、Mg
2+、Cu
+、Cu
2+、Zn
2+,Ca
2+、Y
+3、Yb
+3、La
+3、Sc
+3、Ce
+3、Nd
+3、Tb
+3、Sm
+3あるいは、希土類金属、遷移金属または貴金属、例えばロジウム、ルテニウム、イリジウム、パラジウム、白金、オスミウム、コバルト、ニッケル、鉄、クロム、モリブデン、タングステン、バナジウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、トリウム、ウラン、金などを含有する錯体(リガンド含有)メタルカチオンから選択される。
【0030】
以下の実施例は、本発明を限定することなく説明することを意図している。本発明は、対応する請求の範囲にわたって実施することができる。例から出発し、可能な変形も導き出すことができる。特に、例に記載の反応の特徴および条件はまた、詳細には記載されていない他の反応にも適用することができるが、特許請求の範囲の保護の範囲内に入る。
【0031】
例:
得られた物質は、ラマン分光法、元素分析およびNMR分光法により特徴付けられる。NMRスペクトルは、重水素ロック付きBrukaer Avance III分光計で、重水素化アセトン−D6中の溶液を測定する。種々の核の測定周波数は、以下のとおりである:
1H:400.17MHz、
19F:376.54MHz、
11B:128.39MHz、
31P:161.99MHzおよび
13C:100.61MHz。参照は、以下の外部参照で行う:
1Hおよび
13CスペクトルではTMS;
19FではCCl
3F、ならびに
1BスペクトルではBF
3・Et
2Oである。
【0032】
例1:ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸無水物
8.8g(29.1mmol)のビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸、(C
2F
5)
2P(O)OHを、16.8g(118mmol)の五酸化リン、P
2O
5に添加し、該混合物を還流下、210℃(油浴温度)で6時間加熱する。続いて、無色透明の液体を減圧真空(P=100mbar)で留去する。沸点:78℃(100mbar)。ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸無水物、(C
2F
5)
2(O)POP(O)(C
2F
5)
2の収率は、用いたビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸に基づいて、7.2g(84%)である。
【0033】
NMRデータ:外部ロック:アセトン−D
6;参照物質:
1Hおよび
13CスペクトルではTMS、
19FスペクトルではCCl
3F、ならびに
31PスペクトルではD
2O中85%H
3PO
4である):
【化11】
【化12】
【化13】
【0034】
例2:ビス(ノナフルオロブチル)ホスフィン酸無水物
7.0g(14.0mmol)のビス(パーフルオロブチル)ホスフィン酸(C
4F
9)
2P(O)OHを、25mlの1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタンに溶解し、7.9g(55.7mmol)の五酸化リンP
2O
5、を添加し、該混合物を還流下、60℃で4日間加熱する。分別蒸留後、3.3gのビス(パーフルオロブチル)ホスフィン酸無水物が透明な無色の液体として得られる。これは、用いたビス(ノナフルオロブチル)ホスフィン酸に基づいて、48%の収率に相当する。
沸点:77℃(0.6mbar)。
【0035】
NMRデータ:外部ロック:D
2O;参照物質:
1Hおよび
13CスペクトルではTMS、
19FスペクトルではCCl
3F、ならびに
31PスペクトルではD
2O中85%H
3PO
4である):
【化14】
【0036】
例3:ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸無水物の加水分解
【化15】
0.19g(10.5mmol)の水を、5.90g(10.0mmol)のビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸無水物(C
2F
5)
2(O)POP(O)(C
2F
5)
2に0℃で激しく撹拌しながら添加する。6.09gの透明な無色の液体が得られる。ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸の収率は定量的である。
【0037】
NMRデータ(溶媒/ロック:CD
3CN;参照物質:
19F CCl
3F、
31P 85% H
3PO
4):
【化16】
【0038】
例4:ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィニルクロリドの調製
A:
【化17】
6.1g(10.4mmol)のビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸無水物(C
2F
5)
2(O)POP(O)(C
2F
5)
2を2.5g(12.3mmol)の1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロリドEMIM Clに添加し、混合物を室温で15分間撹拌する。続く蒸留後(沸点:86℃)、2.9gのビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィニルクロリド、(C
2F
5)
2P(O)Clが得られ、これは88%の収率に相当する。
ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィニルクロリド:
【化18】
【0039】
B:
【化19】
11.1g(18.9mmol)のビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸無水物(C
2F
5)
2(O)POP(O)(C
2F
5)
2を、1.98g(18.1mmol)のテトラメチルアンモニウムクロリドに添加する。反応混合物を、還流下、190℃(油浴温度)で2時間撹拌する。形成された5.73gのビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィニルクロリド(C
2F
5)
2P(O)Clを、その後凝縮し、これは99%の収率に相当する。
【0040】
例5:ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィニルブロミドの調製
【化20】
10.2g(17.4mmol)のビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸無水物(C
2F
5)
2(O)POP(O)(C
2F
5)
2を、3.2g(16.7mmol)の1−エチル−3−メチルイミダゾリウムブロミドに添加し、混合物を室温で10分間撹拌する。続いて、混合物を、反応を完了させるために還流下で5分間加熱する。続く蒸留(沸点97℃)後、5.3gのビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィニルブロミド(C
2F
5)
2P(O)Brが得られ、これは87%の収率に相当する。
【0041】
ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィニルブロミドのNMRデータ(外部ロック:D
2O;参照物質:
19F NMRスペクトルに対して−CCl
3F、
31P NMRスペクトルに対して−85% H
3PO
4):
【化21】
【0042】
例6:ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸トリメチルシリルエーテルの調製
A:
【化22】
4.91g(45mmol)のトリメチルクロロシランを、4.72g(8mmol)のビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸無水物、(C
2F
5)
2(O)POP(O)(C
2F
5)
2に室温で添加し、混合物を10分間撹拌し、続いて分別蒸留にかけた。2.13gのビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィニルクロリドおよび2.81gのビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸トリメチルシリルエーテルが得られた。これはそれぞれ83および93%の収率に相当する。
ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸トリメチルシリルエーテル:
【化23】
【0043】
B:
【化24】
7.7g(47.4mmol)のヘキサメチルジシロキサン(CH
3)
3SiOSi(CH
3)
3を、14.4g(24.6mmol)のビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸無水物(C
2F
5)
2(O)POP(O)(C
2F
5)
2に添加し、混合物を室温で20分間撹拌する。真空(P=8mbar)で分別蒸留後、15.0gのビス−(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸トリメチルシリルエーテルが得られ、これは81%の収率に相当する。沸点:58℃(8mbar)。
【0044】
例7:N,N−ジブチルビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィニルアミドの調製
0.58g(4.5mmol)のジブチルアミン(C
4H
9)
2NHを、1.21g(2.1mmol)のビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸無水物(C
2F
5)
2(O)POP(O)(C
2F
5)
2に0℃でゆっくり添加し、混合物を15分間攪拌する。続く真空蒸留後、0.65gのN、N−ジブチルビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィニルアミド(C
2F
5)
2P(O)N(C
4H
9)
2が得られ、これは76%の収率に相当する。
【0046】
例8:ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィニルシアニドの調製
A:
【化26】
0.78g(12.0mmol)の細かく粉砕したシアン化カリウムは、最初に24.4gのスルホランに導入し、90℃で、1時間、真空中で攪拌し、揮発性成分を取り除く。反応混合物を40℃に冷却後、6.68g(11.4mmol)のビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸無水物(C
2F
5)
2(O)POP(O)(C
2F
5)
2を加え、混合物を55℃に加温し、さらに3.5時間撹拌する。ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸無水物とビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィニルシアニド(C
2F
5)
2P(O)CNとのモル比1:9からなる3.15gの混合物を、続いて凝縮する。この混合物の分別蒸留後、沸点72℃を有する2.1gのビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィニルシアニドが得られる。これは59%の収率(無水物に基づいて)に相当する。
【0047】
ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィニルシアニドのNMRデータ(外部ロック:D
2O;参照物質:
19F NMRスペクトルではCCl
3F、
31P NMRスペクトルでは85%H
3PO
4である):
【化27】
【0048】
B:
0.97g(14.9mmol)の細かく粉砕したシアン化カリウムは、最初に19.4gのスルホランに導入し、60℃で、終夜、真空中で攪拌し、揮発性成分を取り除く。反応混合物を30℃に冷却後、12.43g(21.2mmol)のビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸無水物(C
2F
5)
2(O)POP(O)(C
2F
5)
2を添加し、混合物をこの温度で24時間撹拌する。続いて、揮発性成分を、−196℃に冷却したフラスコに、真空中で凝縮する。ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸無水物とビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィニルシアニドとのモル比2:3からなる7.7gの凝縮された混合物を−40℃まで加温し、3.4gのビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィニルシアニド(C
2F
5)
2P(O)CNを、真空中、−196℃まで冷却した受容器で凝縮する。これは、73%の収率(用いたシアン化カリウムに基づいて)に相当する。
【0049】
例9:ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィニルイソチオシアナートの調製
【化28】
1.02g(10.5mmol)の細かく粉砕したチオシアン酸カリウムKSCNは、最初に19.6gのスルホランに導入し、40℃で、終夜、真空中で攪拌し、揮発性成分を取り除く。反応混合物を40℃まで冷却後、6.38g(11.4mmol)のビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸無水物(C
2F
5)
2(O)POP(O)(C
2F
5)
2を添加し、混合物を70℃で1時間撹拌する。揮発性成分を−196℃まで冷却したフラスコに凝縮し、続く分別蒸留後、120℃の沸点を有する、3.39gの透明な無色の液体−ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィニルイソチオシアナートが得られる。これは、94%の収率(用いた無水物に基づいて)に相当する。
【0050】
ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィニルイソチオシアナートのNMRデータ(外部ロック:D
2O;参照物質:
19F NMRスペクトルではCCl
3F、
31P NMRスペクトルでは85%H
3PO
4である):
【化29】