【文献】
A.Hasanoglu,Ammonia removal from wastewater streams through membrane contactors:Experimental and theoretical analysis of operation parameters and configuration,Chemical Engineering Journal,2010年 6月 1日,Volume 160 Issue2,pp.530-537
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記脱気膜装置に送液させる前のアンモニア含有排水の圧力と、該脱気膜装置に送液させてアンモニアを除去した後の排水の圧力との圧力差を測定し、その圧力差が所定以上となったときに該脱気膜装置を上記酸溶液で洗浄することを特徴とする請求項3記載のアンモニア除去方法。
上記減圧ガスに代えて硫酸溶液を流体として用い、該硫酸溶液と上記アンモニア含有排水とを向流接触させることを特徴とする請求項1又は2記載のアンモニア除去方法。
上記脱気膜装置に送液させる前のアンモニア含有排水の圧力と、該脱気膜装置に送液させてアンモニアを除去した後の排水の圧力との圧力差を測定し、その圧力差が所定以上となったときに該脱気膜装置を上記酸溶液で洗浄することを特徴とする請求項6記載のアンモニア除去方法。
上記脱気膜装置に導入される前の硫酸溶液の圧力と、該脱気膜装置を通過させ除去したアンモニアを含む硫酸溶液との圧力差を測定し、その圧力差が所定以上となったときに該脱気膜装置を上記水又は有機酸溶液で洗浄することを特徴とする請求項8記載のアンモニア除去方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るアンモニアの除去方法の具体的な実施の形態(以下、本実施の形態という。)について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明に要旨を変更しない範囲で変更が可能である。
【0012】
<第1の実施形態>
本実施の形態に係るアンモニアの除去方法は、工場排水等のアンモニアを含有する排水(以下、「アンモニア含有排水」、又は単に「排水」ともいう。)からそのアンモニアを除去する方法であって、アンモニアを効率的に且つ効果的に除去することを可能にする。
【0013】
具体的に、このアンモニアの除去方法は、アンモニア含有排水のpHを10以上に調整した上で、そのpH調整したアンモニア含有排水を疎水性中空糸が組み込まれた脱気膜装置に送液し、流体としての減圧ガス(空気)と向流接触させることを特徴としている。
【0014】
図1は、本実施の形態に係るアンモニアの除去方法の流れの一例を示すシステムフロー図である。この
図1並びに後述の
図4のシステムフロー図においては、「脱気膜装置13,14」として、排水中のアンモニアを除去する脱気膜装置を2つ備える構成を示している。処理に際しては、基本的には、その双方の脱気膜装置を運転させてアンモニア除去処理を行い、脱気膜装置を構成する脱気膜が目詰まりした場合には、その目詰まりした一方を停止させて、例えば洗浄等の処理を行うことによってその脱気膜の目詰まりを除去することができる。
【0015】
なお、当該システムとしては、
図1のように脱気膜装置を2つ備える態様に限定されるものではなく、3つ以上備えるようにしてもよく、処理すべきアンモニア含有排水の量等に応じて脱気膜装置の数を変更することができる。
【0016】
図1に示すように、先ず、例えば工場排水等のアンモニア含有排水の原液は、排水供給槽11に一旦収容され、送液ポンプ12の駆動によって脱気膜装置13,14の液導入口13a,14aから導入される。一方、大気から回収した空気(ガス)は、真空ポンプ15により真空引きされ、減圧ガスとして脱気膜装置13,14の流体導入口13b,14bに導入される。
【0017】
脱気膜装置13,14には、疎水性中空糸からなる脱気膜が組み込まれている。脱気膜装置13,14では、アンモニア含有排水が液導入口13a,14aから導入されると、流体導入口13b,14bから導入された減圧ガスと向流接触するようになる。すると、ヘンリーの法則に基づいて、アンモニア含有排水中のアンモニア濃度が低下する。すなわち、非解離性の溶存アンモニアが脱気されて(空気中に移行して)除去される。
【0018】
脱気膜装置13,14に組み込まれた疎水性中空糸からなる脱気膜としては、特に限定されないが、例えばその中空糸の径が300μm程度で、空孔サイズが0.03μm程度、(平均)空孔率が40〜50%程度である。このように、脱気膜装置13,14では、構成部材である脱気膜の空孔サイズが小さいことから、例えば有機物等の分子径の大きな成分はその空孔から抜け出ずにアンモニア含有排水中に残存し、除去対象となるアンモニアのみが確実に除去される。
【0019】
本実施の形態に係るアンモニアの除去方法においては、このとき、アンモニア含有排水のpHを調整した上で、脱気膜装置13,14に導入することが重要となる。具体的には、アンモニア含有排水をpH10以上、好ましくは11以上、より好ましくはpH13以上に調整して導入する。このように、アンモニア含有排水のpHを予めpH10以上、好ましくは11以上、より好ましくはpH13以上に調整した上で脱気膜装置13,14に導入させることによって、アンモニアの除去効率を効果的に高めることができる。
【0020】
ここで
図2に、pHを8〜13の間で変化させたアンモニア含有排水(アンモニア性窒素濃度:7〜8g/L、液温25℃)の各サンプルについて、脱気膜装置を用いて減圧ガスと向流接触させた時間に対するアンモニア含有排水中に残留したアンモニア性窒素濃度の関係を示す。なお、この試験では、中空糸径約300μm、空孔サイズ約0.03μm、(平均)空孔率約40〜50%の脱気膜を組み込んだ脱気膜装置を用い、排水流量5L/分、減圧ガス圧力−0.05MPaGとして処理した。
【0021】
図2に示されるように、アンモニア含有排水のpHが8〜9の中性付近では、接触時間を長くしても殆どアンモニアが除去されないが、pHを10以上に調整した場合には、接触時間を長くするに従って、効果的に排水中のアンモニア性窒素濃度が減少し、アンモニアが除去されることが分かる。このことは、予めpHを10以上に調整することによって、排水中の非解離性のアンモニアが増大するためと考えられる。また特に、pHを13以上に調整した場合には、接触時間500秒程度の短時間で約70%以上のアンモニアが除去され、より効率的に除去できることが分かる。
【0022】
アンモニア含有排水のpH調整は、例えば
図1に示す排水供給槽11にて行うことができる。また、そのpH調整においては、例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリを添加して行うことができる。
【0023】
また、本実施の形態に係るアンモニアの除去方法においては、上述のようにアンモニア含有排水のpHを調整するとともに、その温度(液温)を調整することが好ましい。具体的には、アンモニア含有排水の温度を予め50℃以上に高めた上で脱気膜装置13,14に導入させることが好ましい。このように、アンモニア含有排水のpHを調整するとともに、その温度を50℃以上に調整した上で脱気膜装置13,14に導入させることによって、アンモニアの除去効率をより一層に高めることができ、アンモニア含有排水中のアンモニアをほぼ確実に除去することができる。
【0024】
ここで
図3に、液温を10℃〜50℃の間で変化させたアンモニア含有排水(アンモニア性窒素濃度:7〜8g/L、pH10)の各サンプルについて、脱気膜装置を用いて減圧ガスと向流接触させた時間に対するアンモニア含有排水中に残留したアンモニア性窒素濃度の関係を示す。なお、脱気膜装置を含めた脱気処理条件は上述のpH検討に際しての条件と同様である。
【0025】
図3に示されるように、アンモニア含有排水の温度を高くするにつれて、接触時間の経過の伴い効果的に排水中のアンモニア性窒素濃度が減少しており、アンモニアが除去されることが分かる。その中でも特に、排水の温度を50℃以上に調整した場合には、接触時間500秒程度の短時間で殆どのアンモニアが除去され、1000秒程度の短時間で完全に除去されたことが分かる。このことは、予め液温を50℃以上に調整することによって、ヘンリー定数が大きくなるためであると考えられる。
【0026】
このように、アンモニア含有排水中のアンモニアを脱気膜装置13,14により除去するにあたっては、上述のように予め排水のpHを10以上に調整するとともに、その温度を50℃以上に調整することによって、より効率的に且つ効果的に、アンモニアを除去することができる。
【0027】
アンモニア含有排水の温度調整は、例えば
図1に示す排水供給槽11を恒温槽として50℃以上の温度に制御することによって行うことができる。また、排水供給槽11の周囲にヒータ等を設けて、収容したアンモニア含有排水を加熱して50℃以上に調整するようにしてもよい。
【0028】
以上のようにして脱気膜装置13,14に導入され、アンモニアが除去された排水10は、
図1に示すように払出槽16に送液され、送液ポンプ17を介して排水処理に移行する。なお、この排水10を再び排水供給槽11に戻し入れるように循環させて、繰り返し脱気膜装置13,14に導入することもできる。
【0029】
一方で、真空ポンプ15で真空引きされた空気は、脱気膜装置13,14を通過後にアンモニア含有排水中に含まれていたアンモニアガスと共に回収硫安スクラバー18に回収される。なお、回収硫安スクラバー18には、供給された硫酸溶液が収容されており、アンモニアガスを回収して硫酸アンモニウムを生成させる。生成した硫酸アンモニウムは、送液ポンプ19を介して再利用される。
【0030】
ところで、上述のように、脱気膜装置13,14を構成する脱気膜の空孔サイズは小さく、そのため、有機物等の分子径の大きな液体成分は脱気膜を通過せずにアンモニア含有排水中に残存する。しかしながら、連続的に長期間に亘って排水処理に用いると、それら有機物や排水中の塩が原因となって膜の目詰まりが生じることがある。このような目詰まりが生じると、アンモニア除去効率は著しく低下する。
【0031】
そこで、このアンモニアの除去方法においては、アンモニア含有排水を送液させた後の脱気膜装置13,14を構成する脱気膜を、硫酸等の酸溶液で洗浄することが好ましい。具体的には、
図1に示すように、例えば硫酸溶液を膜再生用液貯留槽21に供給して収容し、送液ポンプ22により、液導入口13a,14aを介して脱気膜装置13,14に硫酸溶液を導入することによって、目詰まりが生じた脱気膜を洗浄する。なお、例えば、目詰まりが生じた脱気膜が脱気膜装置13に構成されている場合、その脱気膜装置13を停止させ、もう一方の脱気膜装置14の処理能力を増強させてアンモニア除去処理を補足するようにする。
【0032】
このようにして膜再生用酸貯留槽21から導入された硫酸溶液によって酸洗浄が行われると、その硫酸溶液が循環して膜再生用酸貯留槽21内に脱気膜の目詰まりの原因となっていた有機物等の化合物が移行されることになる。この硫酸溶液は、送液ポンプ22を介して払出槽16に送液され、アンモニアが除去された排水と共に排水処理に施される。
【0033】
この脱気膜の酸洗浄は、一定期間毎に定期的に行うようにしてもよいが、処理される排水10の種類によって脱気膜に及ぼす目詰まりの影響は異なることから、目詰まりによってアンモニア除去効率が低下する前に処理することが好ましい。具体的にその方法としては、例えば、脱気膜装置13,14に送液させる前のアンモニア含有排水の圧力と脱気膜装置13,14に送液させてアンモニアを除去した後の排水の圧力をそれぞれ測定し、それらの圧力の圧力差に応じて脱気膜の目詰まりを検知して酸洗浄を行うようにする。
【0034】
より具体的には、
図1に示すように、例えば、排水供給槽11と脱気膜装置13,14との間の配管内に圧力計23を設けて、排水供給槽11から送液され脱気膜装置13,14に導入される前のアンモニア含有排水の圧力を測定する。また、脱気膜装置13,14と払出槽16との間の配管内に圧力計24を設けて、脱気膜装置13,14に送液させてアンモニアを除去した後の排水の圧力を測定する。そして、それらの測定した圧力の圧力差を測定してモニタリングし、その圧力差が所定以上となったときに目詰まりが生じたと判断してその脱気膜を含む脱気膜装置13(又は14)を停止させ、脱気膜に対して酸洗浄を行うようにする。
【0035】
脱気膜に目詰まりが生じると、アンモニア含有排水と減圧ガスとの接触が減少し、アンモニア除去効率が低下してしまう。そのため、脱気膜装置13,14に対する送液前後の排水の圧力差に着目し、その圧力差が所定以上となったときは脱気膜に目詰まりが生じていると判断し、アンモニア除去効率を回復させるために脱気膜に対して酸洗浄処理を行って、脱気膜の目詰まりを取り除く。これにより、過度に脱気膜装置13,14のアンモニア除去効率を低下させることなく効率的な処理を行うことが可能となる。また、酸洗浄を効率的に行うことによって、その脱気膜も繰り返し使用することが可能となる。
【0036】
この酸洗浄処理は、例えば脱気膜装置13,14において、各圧力計23,24にて測定した圧力値を受信して圧力差を算出し、その圧力差が所定以上となったときに目詰まりが生じた脱気膜を含む脱気膜装置を自動的に停止させ、その脱気膜を酸洗浄するように制御する洗浄制御部を設けて、自動制御する構成としてもよい。
【0037】
ここで、このアンモニアの除去方法において、流体としての減圧ガスを送流して通過させた側の脱気膜装置13,14を構成する脱気膜は、ガスを通過させたことから脱気膜の目詰まりは生じ難い。しかしながら、仮に減圧ガスを通過させた脱気膜においても目詰まりが生じた場合には、アンモニア除去効率が低下することになる。したがって、この場合にも、脱気膜装置13,14を構成する脱気膜の目詰まりを的確に検知できるようにすることが好ましい。
【0038】
このように減圧ガスを通過させた脱気膜についても目詰まりを的確に検知することにより、その脱気膜を含む脱気膜装置を速やかに停止させることができ、アンモニア除去効率の低下による不十分な処理が生じてしまうことを防ぐことが可能となり、操業効率を高めることができる。また、このように目詰まりを的確に検知できることにより、運転を停止させた脱気膜装置に対して、その目詰まりの原因に応じた洗浄等の適切な処理を迅速に行うことができる。
【0039】
具体的にその目詰まりの検知方法としては、
図1に示すように、例えば、脱気膜装置13,14に導入される前の減圧ガスの圧力を圧力計25で測定するとともに、脱気膜装置13,14通過後の減圧ガス、すなわち除去したアンモニアを含む減圧ガスの圧力を圧力計26で測定することによって、それらの測定した圧力の圧力差に応じて検知するようにする。
【0040】
より具体的には、脱気膜の目詰まりが発生してアンモニア除去効率が低下している場合、脱気膜装置13,14に導入される前の減圧ガスの圧力と脱気膜装置13,14通過後の減圧ガスの圧力との差は大きくなる。したがって、上述した圧力計25,26で測定したそれぞれの圧力の圧力差が所定以上となったときに脱気膜装置13,14を構成する脱気膜に目詰まりが生じていると判断することができる。
【0041】
脱気膜に目詰まりが生じると、アンモニア含有排水と減圧ガスとの接触が減少し、アンモニア除去効率が低下してしまう。そのため、脱気膜装置13,14に対する送液前後の排水の圧力差に着目し、その圧力差が所定以上となったときは脱気膜に目詰まりが生じていると判断し、そして、目詰まりが検知された場合には、その脱気膜装置の運転を停止させるようにする。これにより、例えば脱気膜装置13の脱気膜に目詰まりが生じた場合には、迅速にもう一方の脱気膜装置14の処理能力を高めて補足することで、過度にアンモニア除去効率を過度に低下させることなく効率的な処理を行うことが可能となる。
【0042】
なお、この減圧ガス側の脱気膜の目詰まりの検知についても、例えば脱気膜装置13,14において、各圧力計25,26にて測定した圧力値を受信して圧力差を算出し、その圧力差が所定以上となったときに自動的に警告等を発して脱気膜装置の運転を停止させるように制御する制御部を設けて、自動制御する構成としてもよい。
【0043】
以上のように、本実施の形態に係るアンモニアの除去方法によれば、予めそのpHを10以上に調整し、さらに好ましくはその温度を50℃以上に調整したアンモニア含有排水を脱気膜装置に送液させることによって、高い除去率で排水からアンモニアを除去することができる。
【0044】
しかも、上述のように、少なくとも脱気膜装置、送液ポンプ、真空ポンプを用いた設備点数の少ないシンプルな設備によって行うことができ、従来のように設備構成や処理環境が複雑になることなく、効率的に且つ効果的に、アンモニアを除去することができる。
【0045】
<第2の実施形態>
上述の第1の実施形態では、脱気膜装置13,14内において、アンモニア含有排水を流体としての減圧ガスと向流接触させる例について説明したが、これに限られるものではなく、減圧ガスに代えて硫酸溶液を流体として用いて向流接触させるようにしてもよい。なお、下記の説明において、上述した第1の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0046】
図4は、第2の実施形態に係るアンモニアの除去方法の流れの一例を示すシステムフロー図である。
図4に示すように、先ず、例えば工場排水等のアンモニア含有排水の原液は、排水供給槽11に一旦収容され、送液ポンプ12の駆動によって脱気膜装置13,14の液導入口13a,14aから導入される。一方、流体として用いる硫酸溶液が、硫酸/硫安槽31に供給されて収容され、送液ポンプ32の駆動によって脱気膜装置13,14の流体導入口13b,14bに導入される。
【0047】
このとき、上述の第1の実施形態と同様に、脱気膜装置13,14にてアンモニアを除去するに先立ち、例えば排水供給槽11内において、アンモニア含有排水のpHを10以上に調整する。また、好ましくは、pHを10以上に調整するとともに、その液温を50℃以上となるように調整する。
【0048】
そして、脱気膜装置13,14では、導入されたアンモニア含有排水と流体としての硫酸溶液とが向流接触することによって、アンモニア含有排水中に含まれる非解離性の溶存アンモニアが脱気されることによって、アンモニア含有排水中のアンモニアが除去される。
【0049】
ここで
図5に、上述のようにアンモニア含有排水(pH10、液温50℃)を、流体としての硫酸溶液と向流接触させた場合における、その接触時間に対するアンモニア含有排水中に残留したアンモニア性窒素濃度の関係を示す。この
図5のグラフでは、流体として減圧ガスを用いて向流接触させた場合(第1の実施形態)におけるアンモニア性窒素濃度の推移も併せて示す。
【0050】
なお、処理対象としたアンモニア含有排水は、アンモニア性窒素濃度が2.6〜2.9g/Lの低濃度のものを用いた。また、この試験では、中空糸径約300μm、空孔サイズ約0.03μm、(平均)空孔率約40〜50%の脱気膜を組み込んだ脱気膜装置を用い、排水流量5L/分、硫酸流量2.5L/分として処理した。また、参照例としての減圧ガスによる処理では、減圧ガス圧力−0.05MPaGとした。
【0051】
図5に示されるように、流体として硫酸溶液を用いた場合では、低濃度のアンモニア含有排水においても、200秒未満の短時間の間でアンモニア性窒素濃度を1g/L以下にすることができ、効率的にアンモニアを除去できることが分かる。しかも、流体として減圧ガスを用いた場合よりも、その除去効率が向上していることが分かる。さらに、硫酸溶液を用いた場合では、減圧ガスを用いた場合よりもアンモニア性窒素濃度の低減率が高く、より効果的にアンモニアを除去できることが分かる。
【0052】
このように、流体として硫酸溶液を用いてアンモニア含有排水と向流接触させることによって、低濃度のアンモニア含有排水であっても、効率的に且つ効果的に、アンモニアを除去することができる。
【0053】
以上のようにして脱気膜装置13,14に導入され、アンモニアが除去された排水10は、
図1に示すように払出槽16に送液され、送液ポンプ17を介して排水処理に移行する。一方で、硫酸溶液は、脱気膜装置13,14を通過後にアンモニア含有排水中に含まれていたアンモニアと共に、再び硫酸/硫安槽31に回収される。
【0054】
なお、第2の実施形態に係るアンモニアの除去方法においても、排水供給槽11から送液され脱気膜装置13,14に導入される前のアンモニア含有排水の圧力を圧力計23で測定するとともに、脱気膜装置13,14に送液させてアンモニアを除去した後の排水の圧力を圧力計24で測定し、それらの測定した圧力の圧力差が所定以上となったときに目詰まりが生じていると判断し、目詰まりが生じている脱気膜を含む脱気膜装置13(又は14)を停止させ、その目詰まりが生じた脱気膜に対して硫酸溶液等の酸を用いた酸洗浄を行うようにすることができる。なお、このとき、停止させた脱気膜装置13(又は14)に対してもう一方の脱気膜装置14(又は13)の処理能力を増強させてアンモニア除去処理を補足するようにする。
【0055】
具体的には、
図4に示すように、例えば硫酸溶液が供給された硫酸/硫安槽31から、送液ポンプ32を介して、脱気膜装置13,14の液導入口13a,14aから硫酸溶液を導入することによって、アンモニア含有排水が導入される側の脱気膜を洗浄する。
【0056】
このようにして硫酸/硫安槽31から導入された硫酸溶液によって酸洗浄が行われると、その硫酸溶液が循環して硫酸/硫安槽31内に脱気膜の目詰まりの原因となっていた有機物等の化合物が移行されることになる。この硫酸溶液は、送液ポンプ32を介して払出槽16に送液され、アンモニアが除去された排水と共に排水処理に施される。
【0057】
また、第2の実施形態に係るアンモニアの除去方法においては、流体として硫酸溶液を用いている。そのため、流体としての硫酸溶液が導入される側の脱気膜においても、目詰まりが生じやすくなるため、適切に洗浄処理を施すことが好ましい。
【0058】
この流体としての硫酸溶液が導入される側の脱気膜の洗浄処理については、
図4に示すように、脱気膜装置13,14に導入される前の硫酸溶液の圧力を圧力計33で測定するとともに、脱気膜装置13,14通過後の除去したアンモニアを含む硫酸溶液の圧力を圧力計34で測定し、それらの測定した圧力の圧力差に応じて洗浄処理を行うようにする。
【0059】
脱気膜の目詰まりが発生してアンモニア除去効率が低下している場合、脱気膜装置13,14に導入される前の硫酸溶液の圧力と脱気膜装置13,14通過後の硫酸溶液の圧力との差は大きくなるため、その圧力差によって目詰まりを的確に検知することができる。
【0060】
具体的には、それらの圧力の圧力差が所定以上となったときに脱気膜装置13(又は14)を構成する脱気膜に目詰まりが生じていると判断し、その脱気膜装置13(又は14)を停止させて、脱気膜に対する洗浄処理を施す。これにより、アンモニア除去効率を過度に低下させることなく効率的な処理を行うことを可能にする。
【0061】
流体としての硫酸溶液を導入する側の脱気膜に対する洗浄は、水又は有機酸溶液を用いて行うことができる。具体的には、
図4に示すように、例えば水又は有機酸溶液を膜再生用液貯留槽21に供給して収容し、送液ポンプ22を介して、脱気膜装置13,14の液導入口13b,14bから水又は有機酸溶液を導入して脱気膜を洗浄する。
【0062】
このようにして膜再生用液貯留槽21から導入された水又は有機酸溶液によって酸洗浄が行われると、その水又は有機酸溶液が循環して、膜再生用液貯留槽21内に脱気膜の目詰まりの原因となっていた塩等を含む化合物が移行されることになる。この塩等を含む化合物が含有された溶液は、送液ポンプ22を介して払出槽16に送液され、アンモニアが除去された排水と共に排水処理に施される。
【0063】
この脱気膜の洗浄は、一定期間毎に定期的に行うようにしてもよいが、処理される排水10の種類によって脱気膜に及ぼす目詰まりの影響は異なることから、目詰まりによってアンモニア除去効率が低下する前に処理することが好ましい。したがって、上述のように、アンモニア含有排水を導入する側の脱気膜については、脱気膜装置13,14の通過前後におけるアンモニア含有排水の圧力差に応じて目詰まりを検知し、流体としての硫酸溶液を導入する側の脱気膜については、脱気膜装置13,14の通過前後における硫酸溶液の圧力差に応じて目詰まりを検知して、その脱気膜に対する洗浄を行う。このことによって、アンモニア除去効率を低下させることなく、効率的な処理を行うことが可能になる。
【0064】
以上、第2の実施形態として示したように、pHを10以上となるように調整し、好ましくはその温度を50℃以上に調整したアンモニア含有排水に対して、減圧ガスに代えて硫酸溶液を向流接触させれば、アンモニア濃度が低い排水であっても、より高い除去率で効率的にアンモニアを除去することができる。