【実施例】
【0053】
以下に実施例及び比較例により本発明をより具体的に説明するが本発明はこれらになんらに限定されるものではない。尚実施例中の「部」「%」は特に断りのない限り質量基準を示す。
【0054】
<白色無延伸樹脂フィルム(a)の製造>
表1中の配合Aに従いポリプロピレン系樹脂に所定の各添加剤を配合した樹脂組成物を三菱重工(株)社製Tダイ法にて厚みが80μmになるように製膜しインラインにて濡れ指数が360μN以上になるように両面コロナ放電処理を施して白色無延伸樹脂フィルム(a)(CPP)を得た。
【0055】
<白色無延伸樹脂フィルム(b)の製造>
表1中の配合Bに従い低密度ポリエチレン系樹脂に所定の各添加剤を配合した樹脂組成物を三菱重工(株)社製Tダイ法にて厚みが80μmになるように製膜しインラインにて濡れ指数が360μN以上になるように両面コロナ放電処理を施して白色無延伸樹脂フィルム(b)(CPE)を得た
【0056】
【表1】
【0057】
使用原料と配合は下記の通り。
<ポリプロピレン樹脂(半硬質ランダム系)>
A:E−2910(プライムTPO;株式会社プライムポリマー社製)
メルトフローレート2.8g/10min.,引張弾性率430MPa,
<低密度ポリエチレン樹脂>
B:ノバテックLD LF280H(日本ポリエチレン株式会社製)
メルトフローレート0.7g/10min.,引張弾性率370MPa,
<マスターバッチ(プラスチック着色剤)>
ペオニーL−11245MPT(ペオニーHPシリーズ DIC株式会社製)
ペオニーL−11246MPT(ペオニーHPシリーズ DIC株式会社製)
メルトフローレート8g/10min.,酸化チタン含有率60%
<酸化防止剤>
2,6―ジ―t―ブチル―4−メチルフェノール
<ヒンダードアミン系光安定剤>
CHIMASSORB944LD(化学品名;ポリ[{6−(1,1,3,3,テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{2,2,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]BASF社製
<紫外線吸収剤>
TINUVIN 479 BASF社製
<滑剤>
エルカ酸アミド
<アンチブロッキング剤>
シリカ粉末 平均粒子径2μm
【0058】
<アンカーコート剤(1)の調製>
ポリヘキサメチレンジアミンポリカーボネートジオールとイソホロンジイソシアネートをモル比当量(1:1)で混合しウレタン化重合して得た重量平均分子量50,000のポリカーボネートウレタン樹脂とヘキサメチレンジイソシアネート3量体、シリカ粉末(平均粒子径2μm)、希釈溶剤(メチルエチルケトン)を表2の通りの配合で攪拌混合しアンカーコート剤(1)を調製した。
【0059】
【表2】
【0060】
<隠蔽層用インキ(1)(墨)の調製>
インキの調整は以下の配合のものを使用した。大日精化工業(株)製グラビアインキ「ハイラミック」795R墨を100部、NT−ハイミラック ブロッキング防止剤5部、NT−ハイミラック ハードナーを3部、ハイミラックNo.2溶剤10重量部を加え分散攪拌機にて内容物が均一に混合するまで十分に攪拌して、隠蔽層用インキ(1)を得た。
【0061】
<着色層用インキ(1)(ベージュ)の調製>
インキの調整は以下の配合のものを使用した。大日精化工業(株)製グラビアインキ「ハイラミック」701R白100部に、同795R墨を0.3部、同722R黄0.5部、同902R赤0.2部、NT−ハイミラック ブロッキング防止剤5部、NT−ハイミラック ハードナーを3部、ハイミラックNo.2溶剤5重量部を加え分散攪拌機にて内容物が均一に混合するまで十分に攪拌して、着色層用インキ(1)を得た。
【0062】
<ドライラミネート用接着剤の調製>
接着剤主剤(DICグラフィクス(株)製、ディックドライLX−901)90質量部と硬化剤(DICグラフィクス(株)製、商品名:KW75)10質量部を配合し、酢酸エチル10質量部にて希釈して、よく攪拌することにより、ドライラミネート用接着剤を調製した。
【0063】
(実施例1)
<樹脂フィルム(a1)の製造>
上記にて調製した易接着(両面コロナ)処理済の白色無延伸樹脂フィルム(a)の片面に、上記アンカーコート剤(1)をグラビアロールを用いて塗工し、70℃の乾燥炉内で約10秒滞留乾燥し巻取り張力120N(全幅)の張力で約2,000m巻き取り、一面がアンカーコート剤(1)塗工面からなる印刷面であり、他面がコロナ処理面である樹脂フィルム(a1)を得た。
【0064】
<樹脂フィルム(A1)の製造>
前記樹脂フィルム(a1)のアンカーコート剤(1)塗工面に、上記隠蔽層用インキ(1)をグラビア印刷機を用いて印刷しロール状に、巻取り張力120N(全幅)で約1,900m巻き取った後40℃で48時間養生し、一面が隠蔽層表面であり、他面がコロナ処理面からなる粘着剤積層面である樹脂フィルム(A1)を得た。
【0065】
<印刷用基材(1)の製造>
前記樹脂フィルム(A1)の隠蔽層面側に、グラビア印刷機を用いて乾燥後の塗工量が1g/m
2になるように上記ドライラミネート用接着剤を塗工し、乾燥炉に通して加熱乾燥した。当該乾燥後の接着剤塗工面と、上記樹脂フィルム(a1)の印刷面とは他面のコロナ処理面とをラミネートし、ロール状に、巻取り張力120N(全幅)で約1,800m巻き取り40℃48h.養生し、一面がアンカーコート剤(1)塗工面からなる印刷面であり、他面がコロナ処理面からなる粘着剤積層面である印刷用基材(1)を得た。
【0066】
当該印刷用基材(1)の製造において、樹脂フィルム(a1)のアンカーコート剤(1)塗工面の自背面側に対する耐ブロッキング性、及びロール巻取り適性(すべり性)はいずれも良好であった。また、樹脂フィルム(A1)の隠蔽層の自背面に対する耐ブロッキング性及び巻き取り適性(すべり性)もいずれも良好であった。このため、得られた印刷用基材の印刷面には、インキの転着や皺がなく、好適な印刷面を有するものであった。
【0067】
(実施例2)
<樹脂フィルム(A2)の製造>
上記樹脂フィルム(A1)の隠蔽層面とは他方の面に、グラビア多色印刷機を用いて着色層用インキ(1)と、アンカーコート剤(2)として塩素化ポリプロピレン塗工液(日本製紙ケミカル株式会社社スーパークロン814HSのトルエン溶解液(固形分60%),塩素含有率41%)とを、連続的に印刷及び乾燥炉にて加熱乾燥しロール状に、巻取り張力120N(全幅)で約1,800m巻き取り40℃で48時間養生し、一面が隠蔽層表面であり、他面がアンカーコート剤(2)塗工面からなる粘着剤積層面である樹脂フィルム(A2)を得た。
【0068】
<印刷用基材(2)の製造>
前記樹脂フィルム(A2)の隠蔽層面側に、グラビア印刷機を用いて乾燥後の塗工量が1g/m
2になるように上記ドライラミネート用接着剤を塗工し、乾燥炉に通して加熱乾燥した。当該乾燥後の接着剤塗工面と、上記樹脂フィルム(a1)の印刷面とは他面のコロナ処理面とをラミネートし、ロール状に、巻取り張力120N(全幅)で約1,700m巻き取り40℃48h.養生し、一面がアンカーコート剤(1)塗工面からなる印刷面であり、他面がアンカーコート剤(2)塗工面からなる粘着剤積層面である印刷用基材(2)を得た。
【0069】
当該印刷用基材(2)の製造において、樹脂フィルム(a1)の耐ブロッキング性及びロール巻取り適性は上記同様良好であり、また、樹脂フィルム(A2)の隠蔽層、着色層及びアンカーコート層の自背面に対する耐ブロッキング性及び巻き取り適性(すべり性)もいずれも良好であった。このため、得られた印刷用基材の印刷面には、インキの転着や皺がなく、好適な印刷面を有するものであった。
【0070】
(実施例3)
<樹脂フィルム(b1)の製造>
上記<樹脂フィルム(a1)の製造>において、白色無延伸樹脂フィルム(a)の代りに白色無延伸樹脂フィルム(b)を用いたこと以外は同様にして、一面がアンカーコート剤(1)塗工面からなる印刷面であり、他面がコロナ処理面である樹脂フィルム(b1)を得た。
【0071】
<樹脂フィルム(B1)の製造>
上記<樹脂フィルム(A1)の製造>において、樹脂フィルム(a1)の代りに樹脂フィルム(b1)を用いたこと以外は同様にして、一面が隠蔽層表面であり、他面がコロナ処理面からなる粘着剤積層面である樹脂フィルム(B1)を得た。
【0072】
<印刷用基材(3)の製造>
前記樹脂フィルム(B1)の隠蔽層面側に、グラビア印刷機を用いて乾燥後の塗工量が1g/m
2になるように上記ドライラミネート用接着剤を塗工し、乾燥炉に通して加熱乾燥した。当該乾燥後の接着剤塗工面と、上記樹脂フィルム(b1)の印刷面とは他面のコロナ処理面とをラミネートし、ロール状に、巻取り張力120N(全幅)で約1,800m巻き取り40℃48h.養生し、一面がアンカーコート剤(1)塗工面からなる印刷面であり、他面がコロナ処理面からなる粘着剤積層面である印刷用基材(3)を得た。
【0073】
当該印刷用基材(3)の製造において、樹脂フィルム(b1)のアンカーコート剤(1)塗工面の自背面側に対する耐ブロッキング性、及びロール巻取り適性(すべり性)はいずれも良好であった。また、樹脂フィルム(B1)の隠蔽層の自背面に対する耐ブロッキング性及び巻き取り適性(すべり性)もいずれも良好であった。このため、得られた印刷用基材の印刷面には、インキの転着や皺がなく、好適な印刷面を有するものであった。
【0074】
(実施例4)
<樹脂フィルム(B2)の製造>
上記樹脂フィルム(B1)の隠蔽層面とは他方の面に、グラビア多色印刷機を用いて着色層用インキ(1)と、アンカーコート剤(2)として塩素化ポリプロピレン塗工液(日本製紙ケミカル株式会社社スーパークロン814HSのトルエン溶解液(固形分60%),塩素含有率41%)とを、連続的に印刷及び乾燥炉にて加熱乾燥しロール状に、巻取り張力120N(全幅)で約1,800m巻き取り40℃で48時間養生し、一面がアンカーコート剤(1)塗工面からなる印刷面であり、他面がアンカーコート剤(2)塗工面からなる粘着剤積層面である樹脂フィルム(B2)を得た。
【0075】
<印刷用基材(4)の製造>
前記樹脂フィルム(B2)の隠蔽層面側に、グラビア印刷機を用いて乾燥後の塗工量が1g/m
2になるように上記ドライラミネート用接着剤を塗工し、乾燥炉に通して加熱乾燥した。当該乾燥後の接着剤塗工面と、上記樹脂フィルム(b1)の印刷面とは他面の表面とをラミネートし、ロール状に、巻取り張力120N(全幅)で約1,700m巻き取り40℃48h.養生し、一面がアンカーコート剤(1)塗工面からなる印刷面であり、他面がアンカーコート剤(2)塗工面からなる粘着剤積層面である印刷用基材(4)を得た。
【0076】
当該印刷用基材(4)の製造において、樹脂フィルム(b1)の耐ブロッキング性及びロール巻取り適性は上記同様良好であり、また、樹脂フィルム(B2)の隠蔽層、着色層及びアンカーコート層の自背面に対する耐ブロッキング性及び巻き取り適性(すべり性)もいずれも良好であった。このため、得られた印刷用基材の印刷面には、インキの転着や皺がなく、好適な印刷面を有するものであった。
【0077】
(比較例1)
<樹脂フィルム(a2)の製造>
上記実施例1における<樹脂フィルム(a1)の製造>において得られた樹脂フィルム(a1)のアンカーコート剤(1)塗工面からなる印刷面の反対面に、上記隠蔽層用インキ(1)をグラビア印刷機を用いて印刷し、ロール状に、巻取り張力120N(全幅)で約1,800m巻き取った後40℃で48時間養生し、一面がアンカーコート剤(1)塗工面からなる印刷面であり、他面が隠蔽層表面である樹脂フィルム(a2)を得た。
【0078】
<樹脂フィルム(A3)の製造>
上記実施例2における<樹脂フィルム(A2)の製造>において、隠蔽層を設ける工程を省いたこと以外は同様にして、一面がアンカーコート剤(1)塗工面であり、他面がアンカーコート剤(2)塗工面からなる粘着剤積層面である樹脂フィルム(A3)を得た。
【0079】
<印刷用基材(5)の製造>
前記樹脂フィルム(A3)のアンカーコート剤(1)塗工面側に、グラビア印刷機を用いて乾燥後の塗工量が1g/m
2になるように上記ドライラミネート用接着剤を塗工し、乾燥炉に通して加熱乾燥した。当該乾燥後の接着剤塗工面と、上記樹脂フィルム(a2)の隠蔽層表面とをラミネートし、ロール状に、巻取り張力120N(全幅)で約1,700m巻き取り40℃48h.養生し、一面がアンカーコート剤(1)塗工面からなる印刷面であり、他面がアンカーコート剤(2)塗工面からなる粘着剤積層面である印刷用基材(5)を得た。
【0080】
当該印刷用基材(5)の製造においては、樹脂フィルム(a2)の巻き取り時にフィルムの表裏の滑り性が悪く、巻き取りロールに皺が混入した。また養生後にロールから繰り出しても、その皺によるフィルム凹凸が残った。さらに隠蔽層用インキが自背面に凹凸部及びその周囲でを中心にブロッキング現象を引き起こし、アンカーコート剤(1)塗工面からなる印刷面に墨インキ層が転着した。このため、得られる印刷用基材(5)には、印刷面に外観不良が発生しており、実用に耐えうる外観を保持できなかった。
【0081】
(比較例2)
<樹脂フィルム(b2)の製造>
上記実施例3における<樹脂フィルム(b1)の製造>において得られた樹脂フィルム(b1)のアンカーコート剤(1)塗工面からなる印刷面の反対面に、上記隠蔽層用インキ(1)をグラビア印刷機を用いて印刷し、ロール状に、巻取り張力120N(全幅)で約1,800m巻き取った後40℃で48時間養生し、一面がアンカーコート剤(1)塗工面からなる印刷面であり、他面が隠蔽層表面である樹脂フィルム(b2)を得た。
【0082】
<樹脂フィルム(B3)の製造>
上記実施例4における<樹脂フィルム(B2)の製造>において、隠蔽層を設ける工程を省いたこと以外は同様にして、一面がアンカーコート剤(1)塗工面であり、他面がアンカーコート剤(2)塗工面からなる粘着剤積層面である樹脂フィルム(B3)を得た。
【0083】
<印刷用基材(6)の製造>
前記樹脂フィルム(B3)のアンカーコート剤(1)塗工面側に、グラビア印刷機を用いて乾燥後の塗工量が1g/m
2になるように上記ドライラミネート用接着剤を塗工し、乾燥炉に通して加熱乾燥した。当該乾燥後の接着剤塗工面と、上記樹脂フィルム(b2)の隠蔽層表面とをラミネートし、ロール状に巻取り張力120N(全幅)力で約1,700m巻き取り40℃48h.養生し、一面がアンカーコート剤(1)塗工面からなる印刷面であり、他面がアンカーコート剤(2)塗工面からなる粘着剤積層面である印刷用基材(6)を得た。
【0084】
当該印刷用基材(6)の製造においては、樹脂フィルム(b2)の巻き取り時にフィルムの表裏の滑り性が悪く、巻き取りロールに皺が混入した。また養生後にロールから繰り出しても、その皺によるフィルム凹凸が残った。さらに隠蔽層用インキが自背面に凹凸部及びその周囲でを中心にブロッキング現象を引き起こし、アンカーコート剤(1)塗工面からなる印刷面に墨インキ層が転着した。このため、得られる印刷用基材(6)には、印刷面に外観不良が発生しており、実用に耐えうる外観を保持できなかった。
【0085】
上記にて得られた隠蔽性基材のロール巻取り適性、ブロッキング試験評価方法は下記のとおりである。また、下記評価方法に従い、各層の引張弾性率を評価した。得られた結果を表3に示す。
【0086】
[評価方法]
<引張弾性率測定方法>
JIS K 7127に従って、白色無延伸フィルムの引張弾性率を測定した。
試験片サイズは10mm幅×100mmの短冊状のものを切り出した。標線間隔を50mm、引張速度は1mm/min.測定環境は23℃×50%、成形フィルムは、室温にて1カ月以上保管したものを使用した。フィルム伸率が0〜1%の時の引張強度の傾きから弾性率を算出した。
【0087】
<アンカーコート剤層、隠蔽層の引張弾性率測定方法>
アンカーコート剤、隠蔽性インキを乾燥後の塗工厚みが10μになるように離形処理された50μmのPETフィルム上に塗工し80℃×2分乾燥した。その後40℃×48h放置後、上記と同様の方法により引張弾性率を計算により求めた。
【0088】
<ロール巻き取り適性評価方法>
フィルムの一方の面に塗剤を所定量塗工(印刷)し加熱乾燥しながら約1000m長さまでロール状に巻き取る。
【0089】
<評価基準>
○:ロールに皺やスジが混入せず回転軸を中心に対象な円筒状に巻き取ることができる。
×:ロールの幅方向や流れ方向に不規則な皺が入ったり、連続的な筋状の凹凸やリング状の皺等がロールに入り回転軸を中心に対象な円筒状に巻き取ることができない。
【0090】
<ブロッキング試験評価方法>
フィルムの一方の面に塗剤を所定量塗工(印刷)し加熱乾燥しながら約1700〜2000m長さまでロール状に巻き取とる。次に40℃の環境下に48時間放置後、フィルムを巻き返して塗剤がフィルムの自背面に転移していないかを目視により観察した。
○:塗剤を塗った面と接触している背面側にインキの転着が観察されない。フィルムを繰り出した際に容易にフィルムを繰り出すことができる。
×:塗剤を塗った面と接触している背面側にインキの転着が観察される。フィルムを表面と裏面が密着し、フィルムを繰り出す際に抵抗があり容易にフィルムを繰り出すことができない。
【0091】
【表3】
【0092】
以上示したように実施例1〜4の印刷用基材を製造する工程においては、印刷面を有するフィルム及び粘着剤積層面を有するフィルムがロール状に巻き取られて養生保管されても、フィルムの自背面に隠蔽層用のインキが転着することがなく、皺の混入もなく巻き取ることが可能であった。このため、次工程のドライラミ工程もブロッキングによる印刷面へのインキの転着や、巻き取り時に皺が混入することもなく収率良く印刷基材を生産することが可能であった。
また、印刷面を有する樹脂フィルムに隠蔽層を設けた比較例1及び2においては、その製造工程において隠蔽層用の墨インキが印刷面にブロッキング現象を引き起こし、得られる印刷用基材の印刷面にインキ転写及び皺が生じ、実用に供する印刷用基材を収率よく生産することができなかった。
【0093】
(実施例5〜8)
<ステッカーの製造>
粘着剤主剤A(表4)の溶液100質量部に対して、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業社製、商品名:コロネートL−45)を0.7質量部配合して攪拌後、乾燥後の塗工量が28g/m
2になるように剥離処理をした剥離紙(王子製紙(株)社製セパレート110EPS(P)(3)ブルー)に塗工し、80℃で2分乾燥することにより、それぞれ、粘着剤A1からなる粘着剤層を形成した。得られた粘着剤層を、上記実施例1〜4にて得られた印刷用基材(1)〜(4)の粘着剤積層面に積層し、ステッカー(1)〜(4)を得た。
【0094】
【表4】
なお、表4で用いたモノマーの略号の意味は、以下のとおりである。
2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
BA:n−ブチルアクリレート
VAc:酢酸ビニル
AA:アクリル酸
HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート
【0095】
上記にて得られた印刷用基材(1)〜(4)、ステッカー(1)〜(4)につき、下記評価を行った。得られた結果を表6に示した。
【0096】
<全光線透過率(τt)測定法>
印刷用基材の全光線透過率は、JIS K 7361−1に従って測定した。測定機は(株)村上色彩技術研究所製、ヘーズ透過率測定機「HR−100」を用いて測定した。
【0097】
<重量平均分子量の測定>
粘着剤主剤Aの平均分子量は、GPC装置(東ソー社製、品番SC−8020)と、高分子量カラム(東ソー社製、品番TSKgelGMHR−H)を用い、テトラヒドロフランを移動相として、ポリスチレン換算で、アクリル共重合体の重量平均分子量を測定した。
【0098】
<燃焼試験方法>
燃焼試験は、鉄道車両燃焼試験方法に従い以下のとおり実施し、判定基準に従って評価した。
B5判の供試材(182mm×257mm)を45°傾斜に保持し、燃料容器の底の中心が、供試材の下面中心の垂直下方25.4mm(1インチ)のところにくるように、コルクのような熱伝導率の低い材質の台にのせ、純エチルアルコール0.5ccを入れて着火し、燃料が燃え尽きるまで放置する。
燃焼判定は、アルコールの燃焼中と燃焼後とに分けて、燃焼中は供試材への着火、着炎、発煙状態、炎の状態等を観察し、燃焼後は、残炎、残じん、炭化、変形状態を調査する。
試験室内の条件は温度15℃〜30℃、湿度60%〜75%の範囲の中で実施する。
判定基準を表5に示す。
【0099】
【表5】
【0100】
燃焼試験用試験片サンプルの調整
試験に用いた試験片サンプルは、上記ステッカー(1)〜(4)のそれぞれの表面にUVオフセット印刷により多色刷り意匠を施した後に、三井化学東セロ(株)社製2軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム「OPU−1」(20μm)を上記ラミネート用接着剤(乾燥後の塗工量1.0±0.5g/m
2)を用いて貼り合わせものを使用した。
試験に用いた被着体は、日立化成工業(株)製ALH−8725S(メラミン樹脂化粧板;t=1.4mm)を使用した。粘着フィルムを表面が清浄な上記規定サイズの被着体全面に可能な限り空気溜まりが残らないように貼付し室温にて24時間以上養生後試験した。
【0101】
【表6】
【0102】
上記表6に示したとおり、本発明の製造方法にて得られた印刷用基材を使用したステッカーは、車両用ステッカーとして好適な性能を実現できるものであった。