特許第5928086号(P5928086)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ DIC株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5928086-印刷用基材の製造方法 図000008
  • 特許5928086-印刷用基材の製造方法 図000009
  • 特許5928086-印刷用基材の製造方法 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5928086
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月1日
(54)【発明の名称】印刷用基材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 37/16 20060101AFI20160519BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20160519BHJP
   G09F 3/00 20060101ALI20160519BHJP
   G09F 3/02 20060101ALI20160519BHJP
   C09J 7/02 20060101ALI20160519BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20160519BHJP
   B31D 1/02 20060101ALI20160519BHJP
【FI】
   B32B37/16
   B32B27/00 Z
   G09F3/00 E
   G09F3/02 Z
   G09F3/00 Q
   C09J7/02 Z
   C09J201/00
   B31D1/02 A
【請求項の数】2
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-76536(P2012-76536)
(22)【出願日】2012年3月29日
(65)【公開番号】特開2013-203002(P2013-203002A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2015年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】澤村 伸也
(72)【発明者】
【氏名】桑下 明弘
【審査官】 大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−068214(JP,A)
【文献】 特開平10−282887(JP,A)
【文献】 特開2012−181418(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0098364(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 3/00− 3/02
B32B 1/00−43/00
C09J 7/00− 7/04
C09J 1/00− 5/10
C09J 9/00−201/10
B31B 1/00−49/04
B31C 1/00−99/00
B31D 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の表面が印刷層を設ける易接コート面からなる印刷面であり、他方の表面が粘着剤層を設ける粘着剤積層面である印刷用基材の製造方法であって、
一面が粘着剤積層面である樹脂フィルムの粘着剤積層面の他面に隠蔽層用インキを用いて隠蔽層を積層して、隠蔽層付き樹脂フィルム(1)を得る工程、
一面が印刷層を設ける易接コート面からなる印刷面である樹脂フィルム(2)の印刷面の他面と、前記樹脂フィルム(1)の隠蔽層とを積層する工程、を有することを特徴とする印刷用基材の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂フィルムが無延伸樹脂フィルムである請求項1に記載の印刷用基材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステッカー等に使用される印刷用基材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両等の車内広告に使用されるステッカーには、基材の遮光性が乏しいと、印刷の見栄えが悪くなるおそれがあることから、高い遮光性が求められている。特に、車両窓に貼付する場合には、ステッカーの両面が視認されるため、基材を光が透過すると反対面の印刷が透けて見える問題があるため高い遮光性が必要となる。
【0003】
高い遮光性を有するステッカーとしては、例えば、2枚のベース基材を隠蔽層を介して積層した印刷用基材を使用した粘着フィルムが開示されている(特許文献1参照)。当該粘着フィルムは、2枚のベース基材間に隠蔽層を有する基材を使用することにより、高い隠蔽性と遮光性を有するものである。そして、当該基材の製造に際しては、印刷面を有するベース基材の印刷面の他面に隠蔽層を設けた樹脂フィルムを製造し、当該樹脂フィルムを他の樹脂フィルムと積層することが開示されている。しかし、ステッカー等に使用される基材の製造においては、通常各工程毎にロール状に巻き取られることから、印刷面を有する基材の印刷面の他面に隠蔽層を設けた樹脂フィルムをロール状とした際に、印刷面と隠蔽層とが密着してブロッキング現象を引き起こし、印刷面に隠蔽層の一部が転移する不良が発生することがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−068214号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、高い隠蔽性を有し、印刷適性に優れた印刷用基材を印刷面の不良無く製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明においては、一方の表面が印刷層を設ける印刷面であり、他方の表面が粘着剤層を設ける粘着剤積層面である印刷用基材の製造方法として、一面が粘着剤積層面である樹脂フィルムの粘着剤積層面の他面に隠蔽層を積層して、隠蔽層付き樹脂フィルム(1)を得る工程、一面が印刷層を設ける印刷面である樹脂フィルム(2)の印刷面の他面と、前記樹脂フィルム(1)の隠蔽層とを積層する工程、を有する印刷用基材の製造方法により、上記課題を解決できる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の製造方法によれば、高い隠蔽性を有する印刷用基材を、印刷面の不良無く製造できることから、良好な印刷面のステッカーを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に使用する隠蔽層付き樹脂フィルムの一例を示す概略図である。
図2】本発明に使用する一面が印刷層を設ける印刷面である樹脂フィルムの一例を示す概略図である。
図3】本発明の印刷用基材の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の印刷用基材の製造方法は、一方の表面が印刷層を設ける印刷面であり、他方の表面が粘着剤層を設ける粘着剤積層面である印刷用基材の製造方法として、一面が粘着剤積層面である樹脂フィルムの粘着剤積層面の他面に隠蔽層を積層して、隠蔽層付き樹脂フィルム(1)を得る工程、一面が印刷層を設ける印刷面である樹脂フィルム(2)の印刷面の他面と、前記樹脂フィルム(1)の隠蔽層とを積層する工程、を有する印刷用基材の製造方法である。
【0010】
[隠蔽層付き樹脂フィルム(1)]
本発明に使用する隠蔽層付き樹脂フィルムは、一面が粘着剤積層面である樹脂フィルムの粘着剤積層面の他面に隠蔽層を積層した隠蔽層付き樹脂フィルムである。
【0011】
(樹脂フィルム)
本発明に使用する隠蔽層層付き樹脂フィルム(1)に用いられる樹脂フィルムは、特に限定されるものではなく、一般に市販されている樹脂フィルムの中から適宜選択することができるが、ベース基材として延伸のなされていない無延伸樹脂フィルムを使用することが好ましい。本発明においては、無延伸のフィルムを使用することで、接炎時樹脂が軟化した際に収縮が生じにくく大孔(直径が5mm以上)が発生しにくい。接炎時にステッカーに大孔が生じると当該孔の周囲から急速に燃焼が進行するが、本発明で使用する無延伸フィルムは、このような燃焼のきっかけが生じにくいため優れた耐燃焼性を実現できる。このような無延伸の樹脂フィルムは柔軟性が高く、ブロッキングを生じやすいため、無延伸樹脂フィルムを使用する場合には、本発明の製造方法が特に効果的である。
【0012】
無延伸樹脂フィルムを形成する樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリメタクリル酸メチル、66ナイロン、6ナイロン、ポリイミド、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂等が挙げられる。なかでも、柔軟な無延伸樹脂フィルムを、安価にかつ容易に入手しやすいことから、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリブチレンテレフタレートの少なくとも一種を主たる樹脂成分とする樹脂フィルムを好ましく使用でき、ポリプロピレンを主たる樹脂成分とする樹脂フィルムは汎用性が高いため特に好ましく使用できる。また、樹脂成分としてポリ塩化ビニルを含有しないものは、環境汚染対応(廃棄処分時等)の観点及び、接炎時に有害ガス(HCl,Cl)や有害物(ダイオキシン類等)の発生が抑制できるため人体への影響も小さく好ましく使用できる。また、これら無延伸樹脂フィルムは発泡処理のなされていないものが剥離時の基材破壊を生じにくいため好ましい。
【0013】
なかでも、樹脂成分がポリエチレン、ポリプロピレン、または、ポリブチレンテレフタレートからなる無延伸の樹脂フィルム、特に無延伸のポリプロピレンフィルムは、薄い厚さで白色着色剤を多く含有しても良好な柔軟性を有することからステッカーとして好適に使用でき、剥離時に層間割れを生じにくい車両ステッカーを実現できる。
【0014】
樹脂フィルムの厚さは25〜100μm、好ましくは50〜100μm、より好ましくは80〜100μmである。当該厚さとすることによりステッカー加工時、またはステッカーとして使用する際の貼付作業時や剥離作業時に必要な適度な強度や剛度となり、必要な遮光性を確保することができる。
【0015】
樹脂フィルムは、JIS K 7361−1に規定された測定方法による全光線透過率(τt)が20%以下であることが好ましく、より好ましくは15%以下、特に好ましくは10%以下である。さらに隠蔽層を設けることにより特に高い遮光性を実現できる。
【0016】
白色樹脂フィルムの引張弾性率(E1)の値が100MPa〜10GPaの範囲であることが好ましく、より好ましくは100〜800Mpa、特に好ましくは200〜600MPaである。引張弾性率が10GPaを超えるとフィルムが硬すぎて、粘着剤層が被着体に追従するのを阻害し時に自然に脱落する恐れがある。100MPa未満になるとフィルムが柔らかすぎて、ラベル・ステッカーを貼付する際ラベルの腰が弱すぎて粘着層同士が接着したし、フィルムが伸びたりするなど貼り作業性に劣るものとなる、また剥離する際にも剥離時に基材が破断するなどして再剥離性に劣るものとなってしまい好ましくない。
【0017】
本発明に使用する樹脂フィルムは、高い隠蔽性を付与するために着色されていてもよく、特に高い隠蔽性を付与しやすいことから白色とすることが好ましい。白色の樹脂フィルムとしては、二酸化チタンにより白色化された無延伸樹脂フィルムを使用することが好ましい。白色樹脂フィルム中の二酸化チタンの含有量は5〜30質量%、好ましくは7〜25質量%、より好ましくは10〜20質量%である。当該含有量とすることで、積層する隠蔽層と相まって高い隠蔽性と、低い透明性を実現でき、かつフィルムの柔軟性が損なわれることがない。また、大きな熱容量を確保できるため好適に耐燃焼性を実現できる。
【0018】
樹脂フィルムを白色とする場合には、表面層の白色度が75%以上であることが好ましく、80%以上であることが特に好ましい。当該白色度とすることで、得られる車両ステッカーの印刷面の視認性を好適に向上できる。
【0019】
隠蔽層付き樹脂フィルム(1)に使用する樹脂フィルムには、隠蔽層を積層する面に異接着処理層を設けてもよい。易接着処理層を設ける方法は特に限定されるものではないが、公知のコロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理、火炎処理等の表面処理方法を挙げることができる。前記表面処理後にさらに一般公知の塗工方法を用いてアンカーコート剤を塗工し積層することも好ましい。一例を挙げるならば、グラビア、リバースグラビアコート、マイクログラビア方式、コンマダイレクト、コンマリバースコート方式、Tダイ押出等の方法により、アンカーコート剤を塗工した後に加熱乾燥、紫外線、電子線等照射処理等により硬化し印刷面(積層塗膜)を形成させることができる。印刷面の厚みは0.5〜5μmであり、好ましくは0.5〜2μm、より好ましくは、0.5〜1μmである。
【0020】
アンカーコート剤としては、特に限定されるものではなく、一般公知の各種易接着処理剤を適宜選択して使用することができるが、易接着処理層1として形成せしめた積層塗膜の引張弾性率(E2)がE1≧E2で有って、かつ100〜300MPaであることが好ましい。300MPaを超えると硬くなりすぎて、白色樹脂フィルムが伸縮した時に追従が悪くなり密着強度が下がり剥離脱落し、100MPa未満ではロール状に巻き取った場合よりブロッキング現象を起こしてしまう。本発明に用いるこのようなアンカーコート剤として一例を挙げるならば、(a)ポリカーボネートポリウレタン樹脂を主成分とするポリウレタン樹脂を主体とする成分のメチルエチルケトン溶液、(b)芳香族系ポリエステルウレタン及びメラミン樹脂を含有する水系塗剤、(c)ポリウレタン樹脂とエポキシ化合物及びイソシアネート化合物を含有する水系塗剤、(d)不飽和結合を有するの重合体によって変性された水性ウレタン樹脂の変性物、(e)ポリエステルジオール、ポリアルキレンエーテルグリコール、脂肪族多価アルコール及びジイソシアネート化合物の重付加させてなる共重合成分を主体とするポリエステルウレタン樹脂、等を上げることができるが中でもポリカーボネートポリウレタン樹脂を主成分とするポリウレタン樹脂からなるものが好ましい。またポリカーボネートポリウレタン樹脂の割合は、60〜100質量部であることが好ましく、70〜100質量部であることがより好ましい。
【0021】
ポリカーボネートポリウレタン樹脂としては、ポリカーボネートジオールと脂肪族及び/または脂肪族及び/または脂環族ジイソシアネートとの重合物であって分子末端に水酸基を有する重量平均分子量が15,000〜150,000のポリカーボネートポリウレタンのものを主成分するものが好ましい。ポリカーボネートポリウレタンの重量平均分子量が15,000未満であるとロール状に巻きとった時のブロッキングを起こし易く、それを防止するために過剰の架橋剤が必要となりその結果、塗膜が硬くなりすぎて白色樹脂フィルムの柔軟性が損なわれ、UV硬化型インキの密着性及び曲面追従性が劣るフィルムとなってしまう。また重量平均分子量が150,000を超えると溶液粘度が高くなり、塗工適性(塗膜のレベリングや乾燥性)が悪化し好ましくない。またアンカーコート層引張惰性率が300MPa未満であることが好ましく、300MPa超えるとフィルムとの密着性を低下する要因となり好ましくない。
【0022】
また、隠蔽層付き樹脂フィルム(1)に使用する樹脂フィルムの粘着剤を積層する表面にも粘着剤層との密着性を高める目的で易接着処理層を設けても良い。易接着処理層は、特に限定されるものではなく、隠蔽層を積層する面と同様に一般公知のコロナ放電処理、プラズマ放電処理、紫外線や電子線照射等の方法を挙げることができる。さらに前記前処理後に、隠蔽層を積層する面と同様のアンカーコート剤層を設けたり、アンカーコート層中に帯電防止剤等の添加材を添加してもなんら差し支えない。
【0023】
(隠蔽層)
本発明に使用する隠蔽層付き樹脂フィルム(1)に用いられる隠蔽層としては、着色インキ層を使用できる。着色インキ層としては、隠蔽性を付与できるものであれば特に制限されないが、黒色や濃色のインキからなる着色インキ層を隠蔽層とすることで遮光性を付与しやすい。具体的には、例えば、カーボーンブラックを着色剤として含有する黒色インキを好ましく使用でき、その他、二酸化チタンや、色調を調整するために各種無機、有機系の顔料を使用することもできる。また、隠蔽層に使用するインキのバインダー樹脂としては、ウレタン樹脂系が適度な柔軟性と基材密着性を有し好適である。また隠蔽層を印刷した後にロール状に巻き取る場合、表面の可飾層とブロッキングを防止するために、シリカ等のブロッキング防止剤を適宜添加してもなんら差し支えない。隠蔽層用に使用されるインキは、印刷方式によって適宜選択して使用することになるが一例を挙げるならば、グラビア印刷方式を選択した場合、ポリウレタン樹脂系が好適でありポリウレタン樹脂系インキとしては例えば、大日精化工業(株)製グラビアインキである「ハイラミック」、DICグラフィクス(株)製「ユニビアNT」などが挙げられる。
【0024】
隠蔽層の全光線透過率は5%未満であることが好ましく、1%未満であることがより好ましい。隠蔽層として黒色インキを使用する場合には、インキ中のカーボーンブラックの含有質量%を0.1%〜10%の範囲で適宜調整することで、全光線透過率を好適に低減できる。
【0025】
また、隠蔽インキ層の厚さとしては、使われるインキの顔料濃度によって異なるが、1〜10μm好ましくは、2〜8μm、より好ましくは4〜6μmである。インキ層の厚みを1μm以上とすることで遮光性を確保しやすくなり、10μm以下とすることで、フィルムの柔軟性が損なうことなく好適な貼付作業性を得やすくなる。
【0026】
[一面が印刷層を設ける印刷面である樹脂フィルム(2)]
本発明に使用する樹脂フィルム(2)は、一面が印刷層を設ける印刷面であり、他面が前記隠蔽層付き樹脂フィルム(1)の隠蔽層と積層される表面の樹脂フィルムである。当該樹脂フィルム(2)としては、一般に市販されているフィルムの中から適宜選択することができるが、隠蔽層付き樹脂フィルム(1)とのラミネート後の寸法安定性(耐カール性)の観点から、隠蔽層付き樹脂フィルム(1)に使用する樹脂フィルムと同一のものを使用することがより好ましい。
【0027】
樹脂フィルム(2)の印刷面には、印刷層とのインキ密着性を高めるために、易接着処理層を設けることが好ましい。また、他面にも隠蔽層付き樹脂フィルム(1)との密着性を向上させるための易接着層を設けることも好ましい。また、これら易接着処理を施した後に、あるいは、前処理無しでアンカーコート剤を塗工してもよい。これら易接着処理やアンカーコート剤は、上記隠蔽層付き樹脂フィルム(1)に使用する樹脂フィルムと同様の易接着処理、アンカーコート剤を好ましく使用できる。
【0028】
[印刷用基材]
本発明の製造方法により得られる印刷用基材は、上記の隠蔽層付き樹脂フィルム(1)の隠蔽層と、一面が印刷層を設ける印刷面である樹脂フィルム(2)樹脂の印刷面の他面とが積層された印刷用基材である。当該印刷用基材は、一方の表面が印刷層を設ける印刷面であり、他方の表面が粘着剤層を設ける粘着剤積層面であり、各種印刷が設けられるステッカーやラベル用途に好適に適用できる。
【0029】
当該印刷用基材は、JIS K 7361−1に規定されている全光透過率(τt)が5%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましく、1%以下とすることが特に好ましい。当該光透過率とすることで、車両ステッカーが両面から視認される形態で使用された際にも、印刷面の視認性を向上させることができる。
【0030】
印刷用基材の厚さは25〜250μm、好ましくは70〜220μm、より好ましくは100〜170μmである。当該厚さとすることで、ステッカー加工品に加工する際、ステッカー加工品を使用する際に、適度な基材強度と剛度(腰)を確保でき加工が容易となり、使用時の貼り作業性、使用後の剥離作業を効率よく行うことができる。また、必要かつ十分な遮光性を確保することができる。
【0031】
[粘着剤層]
印刷用基材の粘着剤積層面に設けられる粘着剤層は、特に限定されるものではないが、車両ステッカー用途として好適な耐候性や接着強度、使用後の再剥離性、耐燃焼性などを得やすい点から、アクリル酸エステルやメタクリル酸エステル等の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合体を主成分とするアクリル系粘着剤組成物からなる粘着剤層が好ましい。
【0032】
当該アクリル系粘着剤組成物としては、(a)炭素数が1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(粘着性モノマー(ホモポリマーが低Tgを示すモノマー))、(b)極性基含有ビニルモノマー(凝集性モノマー)、(c)架橋剤と反応する官能基を有するビニルモノマーを必須成分とするアクリル共重合体を粘着剤主剤として、該粘着剤主剤に架橋剤を添加したものが好ましい。上記のようなアクリル共重合体は、再剥離性に適している。
【0033】
粘着性モノマー(a)としては、炭素数が1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中から選択される少なくとも一種類のモノマーをモノマーの総量に対して50質量%以上使用することが好ましい。
【0034】
極性基含有ビニルモノマー(b)としては、カルボキシル基含有ビニルモノマー、窒素含有ビニルモノマー等が挙げられる。カルボキシル基含有ビニルモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸等のα,β−不飽和カルボン酸が挙げられる。窒素含有ビニルモノマーとしては、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジメチルアミノアクリレート等が挙げられる。その他の凝集性ビニルモノマーとしては、無水マレイン酸、アクリロニトリル、等が挙げられる。
【0035】
架橋剤と反応する官能基を有するビニルモノマー(c)において、架橋剤と反応する官能基としては、水酸基やアミノ基、グリシジル基などが挙げられる。水酸基含有モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、アミノ基含有モノマーとしては、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドが挙げられる。さらに、グリシジル基含有モノマーとしては、例えば、グリシジルメタクリレートが挙げられる。特に好適なモノマーは、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートである。
【0036】
また、その他のモノマーとして、ホモポリマーが高Tgを示すモノマーも必要に応じて使用することができる。そのようなモノマーとしては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、スチレン、酢酸ビニル等がある。
【0037】
アクリル共重合体を100質量部とした場合、炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a)の配合量は50質量部以上、極性基含有ビニルモノマー(b)の配合量は0.1〜5質量部、架橋剤と反応する官能基を有するビニルモノマー(c)の配合量は、0.01〜5質量部とされる。炭素数1から14の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)の配合量が50質量部以上とすることで好適な初期接着性を得やすく、高極性ビニルモノマー(b)の配合量を0.1質量部以上とすることで凝集力を得やすく、被着体から粘着フィルムを剥離する際の糊残りが生じにくい。また、高極性ビニルモノマー(b)の配合量を5質量部以下とすることで、良好な低温接着性を得やすくなる。また、架橋剤と反応する官能基を有するビニルモノマー(c)の配合量を、0.01質量部以上とすることで、架橋反応性が好適となりやすく、アクリル共重合体を十分に架橋でき、5質量部を以下とすることで、粘着剤溶液のポットライフが特に好適となり、粘着剤溶液の取扱い性が良好となる。
【0038】
モノマーを共重合して生成する粘着剤主剤のガラス転移点温度が−70℃〜−20℃になるようにモノマーの配合量を適宜設定することが好ましい。粘着剤主剤の製造方法は種々の公知の方法を用いることができるが、例えば、有機溶剤中でモノマーをラジカル重合させることにより製造することができる。有機溶剤は、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類が挙げられる。使用する重合触媒は、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、ベンゾイルパーオキサイド等が挙げられる。
【0039】
また、接着力向上のためロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油樹脂、スチレン樹脂、およびキシレン系樹脂等の粘着付与剤(粘着付与樹脂)を配合することが一般的に行われているが、本発明では粘着フィルムを剥がした際に、粘着剤が被着体に残ったり、汚染物質付着の原因となる恐れがあるので、粘着付与樹脂を使用しないことが好ましい。
【0040】
上記粘着剤主剤には、凝集力向上や基材との投錨性向上のために、架橋剤を添加する。架橋剤には、例えば、イソシアネート系や金属キレート、エポキシ系、およびメラミン系が挙げられる。特に好ましくはイソシアネート系で、さらに好ましくは多官能イソシアネート、例えば、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物である。架橋剤の使用量は特に制限されないが、架橋剤の添加量が少ないと架橋が不十分で接着力上昇や再剥離の際の粘着剤残りの原因になる。また、添加量が多いと架橋が過度になり粘着フィルムの浮きの原因になる。したがって、架橋剤の添加量は粘着剤主剤100質量部に対して0.2〜5.0質量部であるのが好ましい。さらに好ましくは0.5〜2.0質量部である。
【0041】
上記粘着剤は、ゲル分率が50%以上、損失正接(tanδ)のピーク温度が−20℃以下、10〜40℃の温度範囲内における損失正接が0.2〜0.8の範囲内であり、被着体に対する粘着力が5〜20N/25mmであることが好ましく、更に、10〜15N/25mmであることがより好ましい。ゲル分率が50%以上であると、粘着剤に適度な凝集力が得られ高温(40℃)下でも糊残りし難い。tanδのピーク温度が−20℃以下の場合、低温においても良好な粘着性を保つことができる。10〜40℃の温度範囲内における損失正接が0.2〜0.8の範囲内であれば、使用温度(10〜40℃)における動的粘弾性特性が最適のものとなり、接着性と再剥離性を兼ね備えたものとなる。さらに、被着体に対する粘着力が5〜20N/25mm、好ましくは10〜15N/25mmの範囲内であれば、使用時にステッカーを支持するには十分な接着性を有し、かつ貼り替え作業時にも剥離作業性を損なわない再剥離性能を兼ね備えたものとなる。
【0042】
粘着剤層の塗工量は、10〜40g/mの範囲が好ましく、特に好ましくは、23〜33g/mである。10g/m以上であると好適な接着力が得られやすく、40g/m以下であると加飾層の印刷や型抜き加工時に粘着剤のはみ出しが発生し難く良好な加工性を得られやすい。
【0043】
[製造工程]
本発明の製造方法は、一方の表面が印刷層を設ける印刷面であり、他方の表面が粘着剤層を設ける粘着剤積層面である印刷用基材の製造方法であり、一面が粘着剤積層面である樹脂フィルムの粘着剤積層面の他面に隠蔽層を積層して、隠蔽層付き樹脂フィルム(1)を得る工程、及び、一面が印刷層を設ける印刷面である樹脂フィルム(2)の印刷面の他面と、前記樹脂フィルム(1)の隠蔽層とを積層する工程、を有する製造方法である。
【0044】
樹脂フィルムに隠蔽層を積層して隠蔽層付き樹脂フィルム(1)を得る方法としては、例えば、樹脂フィルムに着色インキからなる隠蔽層を、各種印刷方式による印刷にて設けることができる。印刷方式としては、使用するインキに応じて適宜選択すればよいが、グラビア印刷を好ましく使用できる。
【0045】
本発明の製造方法においては、当該隠蔽層付き樹脂フィルム(1)を得た後に、隠蔽層付き樹脂フィルム(1)の隠蔽層と、一面が印刷層を設ける印刷面である樹脂フィルム(2)の印刷面の他面とを積層する工程を有する。当該積層方法としては、ドライラミネート法により両者を貼り合わせる方法を用いることが好ましい。
【0046】
さらに上記印刷用基材をラベル・ステッカー用材料として使用する場合には、印刷層を設ける印刷面に所望の印刷を行い、また、粘着層積層面側に粘着剤層と離形処理フィルム積層することができる。
【0047】
最終的に同構成となる印刷用基材を製造する工程は他にも幾通りか存在するが、上記本発明の製造方法によれば、好適にブロッキングを防止でき、高い隠蔽性を有し、印刷適性に優れた印刷用基材を印刷面の不良無く製造することができる。例えば、一面が印刷層を設ける印刷面である樹脂フィルム(2)の他面に隠蔽層を設けて一旦ロール状に巻き取った後に、隠蔽層を設ける前の樹脂フィルム(1)と貼り合わせる方法がある。しかしながらこの方法を採用すると樹脂フィルム(2)の印刷層を設ける易接着コート面と、隠蔽層が重なりあいながら巻き取られることになり、本発明に使用する易接コート面層は柔らかくかつインキ接着性が良いのでブロッキング現象が発生し、裏面側に隠蔽層の一部が脱落して表の印刷層に転写して美麗さが損なわれたり、フィルム同士が密着して剥離が困難とり次工程での作業ができなくなったり、フィルムが伸びて弛んでしまい貼り合わせ時にシワが混入するなどの不具合の発生が頻発し好ましくない。
【0048】
本発明の印刷用基材及び当該印刷用基材を使用したステッカーの好ましい製造例の一例を図を用いて説明する。白色の無延伸樹脂フィルム2の隠蔽層を設ける表面に易接コート層3を設け、他面にコロナ処理を行いコロナ処理面4を形成する。当該白色の無延伸樹脂フィルム2の易接コート面に墨インキを印刷して、墨インキからなる隠蔽層5を有する隠蔽層付き樹脂フィルム1を得る(図1)。
【0049】
同様にして、白色の無延伸樹脂フィルム12の表面に易接コート層13を設け印刷面とし、他面にコロナ処理を行いコロナ処理面14を形成して、一面が印刷層を設ける印刷面である樹脂フィルム11を得る(図2)。
【0050】
得られた隠蔽層付き樹脂フィルム1と、一面が印刷層を設ける印刷面である樹脂フィルム11とを、樹脂フィルム1の隠蔽層5と、樹脂フィルム11の印刷面の他面とを接着剤層22を介してドライラミネート法により積層して、印刷面である易接コート層13及び粘着剤積層面であるコロナ処理面4を表面層として有する印刷用基材21を得ることができる(図3)。
【0051】
なお、上記の例は、隠蔽層付き樹脂フィルム1のコロナ処理面4を粘着剤積層面とする例であるが、隠蔽層付き樹脂フィルムを得る際に、コロナ処理面4の表面に隠蔽性の向上や、画像、文字等の表示のために、着色インキによる隠蔽層や印刷層を設ける場合には、当該隠蔽層や印刷層を設けた後に、さらに易接コート層を設けて、当該易接コート層表面を粘着剤積層面としてもよい。
【0052】
当該工程により得られた印刷用基材21の印刷面に、各種画像、文字等の印刷を施し、また、粘着剤層積層面に粘着剤層を積層することで、ステッカーを製造できる。
【実施例】
【0053】
以下に実施例及び比較例により本発明をより具体的に説明するが本発明はこれらになんらに限定されるものではない。尚実施例中の「部」「%」は特に断りのない限り質量基準を示す。
【0054】
<白色無延伸樹脂フィルム(a)の製造>
表1中の配合Aに従いポリプロピレン系樹脂に所定の各添加剤を配合した樹脂組成物を三菱重工(株)社製Tダイ法にて厚みが80μmになるように製膜しインラインにて濡れ指数が360μN以上になるように両面コロナ放電処理を施して白色無延伸樹脂フィルム(a)(CPP)を得た。
【0055】
<白色無延伸樹脂フィルム(b)の製造>
表1中の配合Bに従い低密度ポリエチレン系樹脂に所定の各添加剤を配合した樹脂組成物を三菱重工(株)社製Tダイ法にて厚みが80μmになるように製膜しインラインにて濡れ指数が360μN以上になるように両面コロナ放電処理を施して白色無延伸樹脂フィルム(b)(CPE)を得た
【0056】
【表1】
【0057】
使用原料と配合は下記の通り。
<ポリプロピレン樹脂(半硬質ランダム系)>
A:E−2910(プライムTPO;株式会社プライムポリマー社製)
メルトフローレート2.8g/10min.,引張弾性率430MPa,
<低密度ポリエチレン樹脂>
B:ノバテックLD LF280H(日本ポリエチレン株式会社製)
メルトフローレート0.7g/10min.,引張弾性率370MPa,
<マスターバッチ(プラスチック着色剤)>
ペオニーL−11245MPT(ペオニーHPシリーズ DIC株式会社製)
ペオニーL−11246MPT(ペオニーHPシリーズ DIC株式会社製)
メルトフローレート8g/10min.,酸化チタン含有率60%
<酸化防止剤>
2,6―ジ―t―ブチル―4−メチルフェノール
<ヒンダードアミン系光安定剤>
CHIMASSORB944LD(化学品名;ポリ[{6−(1,1,3,3,テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{2,2,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]BASF社製
<紫外線吸収剤>
TINUVIN 479 BASF社製
<滑剤>
エルカ酸アミド
<アンチブロッキング剤>
シリカ粉末 平均粒子径2μm
【0058】
<アンカーコート剤(1)の調製>
ポリヘキサメチレンジアミンポリカーボネートジオールとイソホロンジイソシアネートをモル比当量(1:1)で混合しウレタン化重合して得た重量平均分子量50,000のポリカーボネートウレタン樹脂とヘキサメチレンジイソシアネート3量体、シリカ粉末(平均粒子径2μm)、希釈溶剤(メチルエチルケトン)を表2の通りの配合で攪拌混合しアンカーコート剤(1)を調製した。
【0059】
【表2】
【0060】
<隠蔽層用インキ(1)(墨)の調製>
インキの調整は以下の配合のものを使用した。大日精化工業(株)製グラビアインキ「ハイラミック」795R墨を100部、NT−ハイミラック ブロッキング防止剤5部、NT−ハイミラック ハードナーを3部、ハイミラックNo.2溶剤10重量部を加え分散攪拌機にて内容物が均一に混合するまで十分に攪拌して、隠蔽層用インキ(1)を得た。
【0061】
<着色層用インキ(1)(ベージュ)の調製>
インキの調整は以下の配合のものを使用した。大日精化工業(株)製グラビアインキ「ハイラミック」701R白100部に、同795R墨を0.3部、同722R黄0.5部、同902R赤0.2部、NT−ハイミラック ブロッキング防止剤5部、NT−ハイミラック ハードナーを3部、ハイミラックNo.2溶剤5重量部を加え分散攪拌機にて内容物が均一に混合するまで十分に攪拌して、着色層用インキ(1)を得た。
【0062】
<ドライラミネート用接着剤の調製>
接着剤主剤(DICグラフィクス(株)製、ディックドライLX−901)90質量部と硬化剤(DICグラフィクス(株)製、商品名:KW75)10質量部を配合し、酢酸エチル10質量部にて希釈して、よく攪拌することにより、ドライラミネート用接着剤を調製した。
【0063】
(実施例1)
<樹脂フィルム(a1)の製造>
上記にて調製した易接着(両面コロナ)処理済の白色無延伸樹脂フィルム(a)の片面に、上記アンカーコート剤(1)をグラビアロールを用いて塗工し、70℃の乾燥炉内で約10秒滞留乾燥し巻取り張力120N(全幅)の張力で約2,000m巻き取り、一面がアンカーコート剤(1)塗工面からなる印刷面であり、他面がコロナ処理面である樹脂フィルム(a1)を得た。
【0064】
<樹脂フィルム(A1)の製造>
前記樹脂フィルム(a1)のアンカーコート剤(1)塗工面に、上記隠蔽層用インキ(1)をグラビア印刷機を用いて印刷しロール状に、巻取り張力120N(全幅)で約1,900m巻き取った後40℃で48時間養生し、一面が隠蔽層表面であり、他面がコロナ処理面からなる粘着剤積層面である樹脂フィルム(A1)を得た。
【0065】
<印刷用基材(1)の製造>
前記樹脂フィルム(A1)の隠蔽層面側に、グラビア印刷機を用いて乾燥後の塗工量が1g/mになるように上記ドライラミネート用接着剤を塗工し、乾燥炉に通して加熱乾燥した。当該乾燥後の接着剤塗工面と、上記樹脂フィルム(a1)の印刷面とは他面のコロナ処理面とをラミネートし、ロール状に、巻取り張力120N(全幅)で約1,800m巻き取り40℃48h.養生し、一面がアンカーコート剤(1)塗工面からなる印刷面であり、他面がコロナ処理面からなる粘着剤積層面である印刷用基材(1)を得た。
【0066】
当該印刷用基材(1)の製造において、樹脂フィルム(a1)のアンカーコート剤(1)塗工面の自背面側に対する耐ブロッキング性、及びロール巻取り適性(すべり性)はいずれも良好であった。また、樹脂フィルム(A1)の隠蔽層の自背面に対する耐ブロッキング性及び巻き取り適性(すべり性)もいずれも良好であった。このため、得られた印刷用基材の印刷面には、インキの転着や皺がなく、好適な印刷面を有するものであった。
【0067】
(実施例2)
<樹脂フィルム(A2)の製造>
上記樹脂フィルム(A1)の隠蔽層面とは他方の面に、グラビア多色印刷機を用いて着色層用インキ(1)と、アンカーコート剤(2)として塩素化ポリプロピレン塗工液(日本製紙ケミカル株式会社社スーパークロン814HSのトルエン溶解液(固形分60%),塩素含有率41%)とを、連続的に印刷及び乾燥炉にて加熱乾燥しロール状に、巻取り張力120N(全幅)で約1,800m巻き取り40℃で48時間養生し、一面が隠蔽層表面であり、他面がアンカーコート剤(2)塗工面からなる粘着剤積層面である樹脂フィルム(A2)を得た。
【0068】
<印刷用基材(2)の製造>
前記樹脂フィルム(A2)の隠蔽層面側に、グラビア印刷機を用いて乾燥後の塗工量が1g/mになるように上記ドライラミネート用接着剤を塗工し、乾燥炉に通して加熱乾燥した。当該乾燥後の接着剤塗工面と、上記樹脂フィルム(a1)の印刷面とは他面のコロナ処理面とをラミネートし、ロール状に、巻取り張力120N(全幅)で約1,700m巻き取り40℃48h.養生し、一面がアンカーコート剤(1)塗工面からなる印刷面であり、他面がアンカーコート剤(2)塗工面からなる粘着剤積層面である印刷用基材(2)を得た。
【0069】
当該印刷用基材(2)の製造において、樹脂フィルム(a1)の耐ブロッキング性及びロール巻取り適性は上記同様良好であり、また、樹脂フィルム(A2)の隠蔽層、着色層及びアンカーコート層の自背面に対する耐ブロッキング性及び巻き取り適性(すべり性)もいずれも良好であった。このため、得られた印刷用基材の印刷面には、インキの転着や皺がなく、好適な印刷面を有するものであった。
【0070】
(実施例3)
<樹脂フィルム(b1)の製造>
上記<樹脂フィルム(a1)の製造>において、白色無延伸樹脂フィルム(a)の代りに白色無延伸樹脂フィルム(b)を用いたこと以外は同様にして、一面がアンカーコート剤(1)塗工面からなる印刷面であり、他面がコロナ処理面である樹脂フィルム(b1)を得た。
【0071】
<樹脂フィルム(B1)の製造>
上記<樹脂フィルム(A1)の製造>において、樹脂フィルム(a1)の代りに樹脂フィルム(b1)を用いたこと以外は同様にして、一面が隠蔽層表面であり、他面がコロナ処理面からなる粘着剤積層面である樹脂フィルム(B1)を得た。
【0072】
<印刷用基材(3)の製造>
前記樹脂フィルム(B1)の隠蔽層面側に、グラビア印刷機を用いて乾燥後の塗工量が1g/mになるように上記ドライラミネート用接着剤を塗工し、乾燥炉に通して加熱乾燥した。当該乾燥後の接着剤塗工面と、上記樹脂フィルム(b1)の印刷面とは他面のコロナ処理面とをラミネートし、ロール状に、巻取り張力120N(全幅)で約1,800m巻き取り40℃48h.養生し、一面がアンカーコート剤(1)塗工面からなる印刷面であり、他面がコロナ処理面からなる粘着剤積層面である印刷用基材(3)を得た。
【0073】
当該印刷用基材(3)の製造において、樹脂フィルム(b1)のアンカーコート剤(1)塗工面の自背面側に対する耐ブロッキング性、及びロール巻取り適性(すべり性)はいずれも良好であった。また、樹脂フィルム(B1)の隠蔽層の自背面に対する耐ブロッキング性及び巻き取り適性(すべり性)もいずれも良好であった。このため、得られた印刷用基材の印刷面には、インキの転着や皺がなく、好適な印刷面を有するものであった。
【0074】
(実施例4)
<樹脂フィルム(B2)の製造>
上記樹脂フィルム(B1)の隠蔽層面とは他方の面に、グラビア多色印刷機を用いて着色層用インキ(1)と、アンカーコート剤(2)として塩素化ポリプロピレン塗工液(日本製紙ケミカル株式会社社スーパークロン814HSのトルエン溶解液(固形分60%),塩素含有率41%)とを、連続的に印刷及び乾燥炉にて加熱乾燥しロール状に、巻取り張力120N(全幅)で約1,800m巻き取り40℃で48時間養生し、一面がアンカーコート剤(1)塗工面からなる印刷面であり、他面がアンカーコート剤(2)塗工面からなる粘着剤積層面である樹脂フィルム(B2)を得た。
【0075】
<印刷用基材(4)の製造>
前記樹脂フィルム(B2)の隠蔽層面側に、グラビア印刷機を用いて乾燥後の塗工量が1g/mになるように上記ドライラミネート用接着剤を塗工し、乾燥炉に通して加熱乾燥した。当該乾燥後の接着剤塗工面と、上記樹脂フィルム(b1)の印刷面とは他面の表面とをラミネートし、ロール状に、巻取り張力120N(全幅)で約1,700m巻き取り40℃48h.養生し、一面がアンカーコート剤(1)塗工面からなる印刷面であり、他面がアンカーコート剤(2)塗工面からなる粘着剤積層面である印刷用基材(4)を得た。
【0076】
当該印刷用基材(4)の製造において、樹脂フィルム(b1)の耐ブロッキング性及びロール巻取り適性は上記同様良好であり、また、樹脂フィルム(B2)の隠蔽層、着色層及びアンカーコート層の自背面に対する耐ブロッキング性及び巻き取り適性(すべり性)もいずれも良好であった。このため、得られた印刷用基材の印刷面には、インキの転着や皺がなく、好適な印刷面を有するものであった。
【0077】
(比較例1)
<樹脂フィルム(a2)の製造>
上記実施例1における<樹脂フィルム(a1)の製造>において得られた樹脂フィルム(a1)のアンカーコート剤(1)塗工面からなる印刷面の反対面に、上記隠蔽層用インキ(1)をグラビア印刷機を用いて印刷し、ロール状に、巻取り張力120N(全幅)で約1,800m巻き取った後40℃で48時間養生し、一面がアンカーコート剤(1)塗工面からなる印刷面であり、他面が隠蔽層表面である樹脂フィルム(a2)を得た。
【0078】
<樹脂フィルム(A3)の製造>
上記実施例2における<樹脂フィルム(A2)の製造>において、隠蔽層を設ける工程を省いたこと以外は同様にして、一面がアンカーコート剤(1)塗工面であり、他面がアンカーコート剤(2)塗工面からなる粘着剤積層面である樹脂フィルム(A3)を得た。
【0079】
<印刷用基材(5)の製造>
前記樹脂フィルム(A3)のアンカーコート剤(1)塗工面側に、グラビア印刷機を用いて乾燥後の塗工量が1g/mになるように上記ドライラミネート用接着剤を塗工し、乾燥炉に通して加熱乾燥した。当該乾燥後の接着剤塗工面と、上記樹脂フィルム(a2)の隠蔽層表面とをラミネートし、ロール状に、巻取り張力120N(全幅)で約1,700m巻き取り40℃48h.養生し、一面がアンカーコート剤(1)塗工面からなる印刷面であり、他面がアンカーコート剤(2)塗工面からなる粘着剤積層面である印刷用基材(5)を得た。
【0080】
当該印刷用基材(5)の製造においては、樹脂フィルム(a2)の巻き取り時にフィルムの表裏の滑り性が悪く、巻き取りロールに皺が混入した。また養生後にロールから繰り出しても、その皺によるフィルム凹凸が残った。さらに隠蔽層用インキが自背面に凹凸部及びその周囲でを中心にブロッキング現象を引き起こし、アンカーコート剤(1)塗工面からなる印刷面に墨インキ層が転着した。このため、得られる印刷用基材(5)には、印刷面に外観不良が発生しており、実用に耐えうる外観を保持できなかった。
【0081】
(比較例2)
<樹脂フィルム(b2)の製造>
上記実施例3における<樹脂フィルム(b1)の製造>において得られた樹脂フィルム(b1)のアンカーコート剤(1)塗工面からなる印刷面の反対面に、上記隠蔽層用インキ(1)をグラビア印刷機を用いて印刷し、ロール状に、巻取り張力120N(全幅)で約1,800m巻き取った後40℃で48時間養生し、一面がアンカーコート剤(1)塗工面からなる印刷面であり、他面が隠蔽層表面である樹脂フィルム(b2)を得た。
【0082】
<樹脂フィルム(B3)の製造>
上記実施例4における<樹脂フィルム(B2)の製造>において、隠蔽層を設ける工程を省いたこと以外は同様にして、一面がアンカーコート剤(1)塗工面であり、他面がアンカーコート剤(2)塗工面からなる粘着剤積層面である樹脂フィルム(B3)を得た。
【0083】
<印刷用基材(6)の製造>
前記樹脂フィルム(B3)のアンカーコート剤(1)塗工面側に、グラビア印刷機を用いて乾燥後の塗工量が1g/mになるように上記ドライラミネート用接着剤を塗工し、乾燥炉に通して加熱乾燥した。当該乾燥後の接着剤塗工面と、上記樹脂フィルム(b2)の隠蔽層表面とをラミネートし、ロール状に巻取り張力120N(全幅)力で約1,700m巻き取り40℃48h.養生し、一面がアンカーコート剤(1)塗工面からなる印刷面であり、他面がアンカーコート剤(2)塗工面からなる粘着剤積層面である印刷用基材(6)を得た。
【0084】
当該印刷用基材(6)の製造においては、樹脂フィルム(b2)の巻き取り時にフィルムの表裏の滑り性が悪く、巻き取りロールに皺が混入した。また養生後にロールから繰り出しても、その皺によるフィルム凹凸が残った。さらに隠蔽層用インキが自背面に凹凸部及びその周囲でを中心にブロッキング現象を引き起こし、アンカーコート剤(1)塗工面からなる印刷面に墨インキ層が転着した。このため、得られる印刷用基材(6)には、印刷面に外観不良が発生しており、実用に耐えうる外観を保持できなかった。
【0085】
上記にて得られた隠蔽性基材のロール巻取り適性、ブロッキング試験評価方法は下記のとおりである。また、下記評価方法に従い、各層の引張弾性率を評価した。得られた結果を表3に示す。
【0086】
[評価方法]
<引張弾性率測定方法>
JIS K 7127に従って、白色無延伸フィルムの引張弾性率を測定した。
試験片サイズは10mm幅×100mmの短冊状のものを切り出した。標線間隔を50mm、引張速度は1mm/min.測定環境は23℃×50%、成形フィルムは、室温にて1カ月以上保管したものを使用した。フィルム伸率が0〜1%の時の引張強度の傾きから弾性率を算出した。
【0087】
<アンカーコート剤層、隠蔽層の引張弾性率測定方法>
アンカーコート剤、隠蔽性インキを乾燥後の塗工厚みが10μになるように離形処理された50μmのPETフィルム上に塗工し80℃×2分乾燥した。その後40℃×48h放置後、上記と同様の方法により引張弾性率を計算により求めた。
【0088】
<ロール巻き取り適性評価方法>
フィルムの一方の面に塗剤を所定量塗工(印刷)し加熱乾燥しながら約1000m長さまでロール状に巻き取る。
【0089】
<評価基準>
○:ロールに皺やスジが混入せず回転軸を中心に対象な円筒状に巻き取ることができる。
×:ロールの幅方向や流れ方向に不規則な皺が入ったり、連続的な筋状の凹凸やリング状の皺等がロールに入り回転軸を中心に対象な円筒状に巻き取ることができない。
【0090】
<ブロッキング試験評価方法>
フィルムの一方の面に塗剤を所定量塗工(印刷)し加熱乾燥しながら約1700〜2000m長さまでロール状に巻き取とる。次に40℃の環境下に48時間放置後、フィルムを巻き返して塗剤がフィルムの自背面に転移していないかを目視により観察した。
○:塗剤を塗った面と接触している背面側にインキの転着が観察されない。フィルムを繰り出した際に容易にフィルムを繰り出すことができる。
×:塗剤を塗った面と接触している背面側にインキの転着が観察される。フィルムを表面と裏面が密着し、フィルムを繰り出す際に抵抗があり容易にフィルムを繰り出すことができない。
【0091】
【表3】
【0092】
以上示したように実施例1〜4の印刷用基材を製造する工程においては、印刷面を有するフィルム及び粘着剤積層面を有するフィルムがロール状に巻き取られて養生保管されても、フィルムの自背面に隠蔽層用のインキが転着することがなく、皺の混入もなく巻き取ることが可能であった。このため、次工程のドライラミ工程もブロッキングによる印刷面へのインキの転着や、巻き取り時に皺が混入することもなく収率良く印刷基材を生産することが可能であった。
また、印刷面を有する樹脂フィルムに隠蔽層を設けた比較例1及び2においては、その製造工程において隠蔽層用の墨インキが印刷面にブロッキング現象を引き起こし、得られる印刷用基材の印刷面にインキ転写及び皺が生じ、実用に供する印刷用基材を収率よく生産することができなかった。
【0093】
(実施例5〜8)
<ステッカーの製造>
粘着剤主剤A(表4)の溶液100質量部に対して、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業社製、商品名:コロネートL−45)を0.7質量部配合して攪拌後、乾燥後の塗工量が28g/mになるように剥離処理をした剥離紙(王子製紙(株)社製セパレート110EPS(P)(3)ブルー)に塗工し、80℃で2分乾燥することにより、それぞれ、粘着剤A1からなる粘着剤層を形成した。得られた粘着剤層を、上記実施例1〜4にて得られた印刷用基材(1)〜(4)の粘着剤積層面に積層し、ステッカー(1)〜(4)を得た。
【0094】
【表4】
なお、表4で用いたモノマーの略号の意味は、以下のとおりである。
2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
BA:n−ブチルアクリレート
VAc:酢酸ビニル
AA:アクリル酸
HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート
【0095】
上記にて得られた印刷用基材(1)〜(4)、ステッカー(1)〜(4)につき、下記評価を行った。得られた結果を表6に示した。
【0096】
<全光線透過率(τt)測定法>
印刷用基材の全光線透過率は、JIS K 7361−1に従って測定した。測定機は(株)村上色彩技術研究所製、ヘーズ透過率測定機「HR−100」を用いて測定した。
【0097】
<重量平均分子量の測定>
粘着剤主剤Aの平均分子量は、GPC装置(東ソー社製、品番SC−8020)と、高分子量カラム(東ソー社製、品番TSKgelGMHR−H)を用い、テトラヒドロフランを移動相として、ポリスチレン換算で、アクリル共重合体の重量平均分子量を測定した。
【0098】
<燃焼試験方法>
燃焼試験は、鉄道車両燃焼試験方法に従い以下のとおり実施し、判定基準に従って評価した。
B5判の供試材(182mm×257mm)を45°傾斜に保持し、燃料容器の底の中心が、供試材の下面中心の垂直下方25.4mm(1インチ)のところにくるように、コルクのような熱伝導率の低い材質の台にのせ、純エチルアルコール0.5ccを入れて着火し、燃料が燃え尽きるまで放置する。
燃焼判定は、アルコールの燃焼中と燃焼後とに分けて、燃焼中は供試材への着火、着炎、発煙状態、炎の状態等を観察し、燃焼後は、残炎、残じん、炭化、変形状態を調査する。
試験室内の条件は温度15℃〜30℃、湿度60%〜75%の範囲の中で実施する。
判定基準を表5に示す。
【0099】
【表5】
【0100】
燃焼試験用試験片サンプルの調整
試験に用いた試験片サンプルは、上記ステッカー(1)〜(4)のそれぞれの表面にUVオフセット印刷により多色刷り意匠を施した後に、三井化学東セロ(株)社製2軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム「OPU−1」(20μm)を上記ラミネート用接着剤(乾燥後の塗工量1.0±0.5g/m)を用いて貼り合わせものを使用した。
試験に用いた被着体は、日立化成工業(株)製ALH−8725S(メラミン樹脂化粧板;t=1.4mm)を使用した。粘着フィルムを表面が清浄な上記規定サイズの被着体全面に可能な限り空気溜まりが残らないように貼付し室温にて24時間以上養生後試験した。
【0101】
【表6】
【0102】
上記表6に示したとおり、本発明の製造方法にて得られた印刷用基材を使用したステッカーは、車両用ステッカーとして好適な性能を実現できるものであった。
図1
図2
図3