特許第5928185号(P5928185)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5928185
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月1日
(54)【発明の名称】基板搬送設備
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20160519BHJP
【FI】
   H01L21/68 A
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-138005(P2012-138005)
(22)【出願日】2012年6月19日
(65)【公開番号】特開2014-3181(P2014-3181A)
(43)【公開日】2014年1月9日
【審査請求日】2014年10月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091513
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】馬場 則夫
(72)【発明者】
【氏名】小原 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】郷右近 清彦
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 亘
【審査官】 今井 聖和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−061878(JP,A)
【文献】 特開平09−298137(JP,A)
【文献】 特開平06−224145(JP,A)
【文献】 特開2003−243477(JP,A)
【文献】 特開2002−217264(JP,A)
【文献】 特開平11−054588(JP,A)
【文献】 特開平07−291441(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/67−21/687
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降基体と前記昇降基体を昇降させる昇降機構と基板を保持して搬送するための保持部とを備え、前記昇降基体は前記昇降機構から見て左右の一方側に伸び出し更に屈曲して前方側に伸び出し、先端部に前記保持部が設けられて構成された基板搬送機構と、
前記保持部によって基板が搬送される基板搬送領域と前記昇降機構との間であって、前記昇降機構から見て前方側に、昇降基体の昇降領域を挟んで当該昇降領域に沿って、当該昇降基体とは独立して設けられた排気ダクトと、を備え、
前記排気ダクトは、前記昇降機構から発生するパーティクルを吸い込むためのガス吸い込み口が当該昇降機構側を向くように且つ昇降領域に沿って形成されていることを特徴とする基板搬送設備。
【請求項2】
前記昇降機構から見て、前記昇降基体が伸び出す左右の一方側とは反対の他方側に、昇降基体の昇降領域と対向するように当該昇降基体とは独立して設けられた補助排気ダクトを備え、
前記補助排気ダクトは、昇降機構から発生するパーティクルを吸い込むためのガス吸い込み口が当該昇降機構側を向くように且つ昇降領域に沿って形成されていることを特徴とする請求項1記載の基板搬送設備。
【請求項3】
前記排気ダクトと前記補助排気ダクトとは、これら排気ダクト及び補助排気ダクトの内部領域が互いに連通するように共通化されていることを特徴とする請求項2に記載の基板搬送設備。
【請求項4】
前記昇降機構は、ボールネジ機構であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の基板搬送設備。
【請求項5】
前記排気ダクトから吸い込まれたガスが通過する循環路と、
この循環路を介して戻ってきたガスを基板搬送領域に供給して、前記基板搬送領域を介して前記排気ダクトに向かう層状の気流を形成するためのガス供給部と、を備えたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載の基板搬送設備。
【請求項6】
前記基板搬送領域には、基板を棚状に保持し、基板に熱処理を行う縦型の反応管内に搬入出するための基板保持具が配置され、
前記基板搬送機構は、前記基板保持具との間で基板を搬送するためのものであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一つに記載の基板搬送設備。
【請求項7】
前記排気ダクトは、前記昇降機構を介して前記保持部が昇降する時における当該保持部上の基板の位置と、前記昇降機構との間に設けられていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一つに記載の基板搬送設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を搬送する基板搬送設備に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハなどの基板(以下「ウエハ」と言う)に対して熱処理を行う装置として、基板保持具であるウエハボートに積載された多数枚のウエハに対して反応管内にて一括して処理を行う縦型熱処理装置が知られている。この装置では、ウエハの収納容器(基板収納部)であるFOUP(Front−Opening Unified Pod)からウエハトランスファーアーム(保持部)によってウエハを例えば5枚ずつ順番に取り出してウエハボートに移載し、次いで空になったFOUPを保管部に搬送すると共に、別のFOUPから同様にウエハを移載する。こうして例えば100枚程度のウエハをウエハボートに積層した後、ウエハボートを上昇させて反応管内に挿入して、既述の熱処理を行うように構成されている。従って、ウエハが搬送されるローディングエリア(基板搬送領域)には、ウエハボートにおける各々のウエハの積載位置に対応させてウエハトランスファーアームを昇降させるために、上下方向に伸びるボールネジが昇降機構として配置されている。
【0003】
前記基板搬送領域及びウエハボートの置かれる保持具待機領域は、アームの駆動によって発生するパーティクルの飛散を抑制するために、更には熱処理後の高温のウエハボートやウエハを冷却するために、横方向に向かう気流が上下方向に亘って且つ水平方向に亘って形成されるように構成されている。具体的には、例えば清浄気体を前記各領域に向かって吹き付けるフィルタユニットと、この清浄気体を排気するための排気ダクトと、が各々の領域を介して互いに対向するように左右に配置されている。そして、これら領域の床面よりも下方側には、排気ダクトに流入する気体を当該排気ダクトからフィルタユニットに対して冷却しながら循環させるために、熱交換器の設けられた循環通路と、前記気流を形成するためのファンが収納されている。このファンは、パーティクルが巻き上がることを抑制するために、清浄気体が極微風(例えば0.5m/s程度)の層流で通流するように風量が設定されている。
【0004】
ウエハトランスファーアームの昇降時には、ボールネジが鉛直軸周りに回転するが、ボールネジには有機物などの潤滑油(オイル)が塗布されているので、オイルに由来するパーティクルが遠心力によって飛散するおそれがある。一方、スループット向上のために、ウエハトランスファーアームによるウエハの受け渡しに要する時間短縮化が要求されている。そのため、ウエハトランスファーアームの昇降動作についても高速化を図りたいが、その場合にはパーティクルの発生や有機物による汚染のおそれが一層高くなってしまう懸念がある。
【0005】
このようなボールネジからのパーティクルの飛散を抑制するにあたって、既述のファンの風量を増やした場合には、搬送領域や保持具待機領域において乱流が発生して、パーティクルが舞い上がってしまう。また、パーティクルの飛散を防止するための物理的なカバーをボールネジの周囲に設けただけだと、パーティクルがこのカバーを回り込んで基板搬送領域に到達するおそれがある。一方、例えば特許文献1のように、局所的に排気する排気ユニットを設けた場合には、排気ユニットの分だけ装置が大型化してしまうし、また層流が形成しにくくなってスループットの低下(ウエハの降温速度の低下)に繋がってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−347667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、保持部によって基板を保持して搬送するにあたり、保持部を昇降させるための昇降機構において発生するパーティクルによる基板の汚染を抑制できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の基板搬送設備は、昇降基体と前記昇降基体を昇降させる昇降機構と基板を保持して搬送するための保持部とを備え、前記昇降基体は前記昇降機構から見て左右の一方側に伸び出し更に屈曲して前方側に伸び出し、先端部に前記保持部が設けられて構成された基板搬送機構と、
前記保持部によって基板が搬送される基板搬送領域と前記昇降機構との間であって、前記昇降機構から見て前方側に、昇降基体の昇降領域を挟んで当該昇降領域に沿って、当該昇降基体とは独立して設けられた排気ダクトと、を備え、
前記排気ダクトは、前記昇降機構から発生するパーティクルを吸い込むためのガス吸い込み口が当該昇降機構側を向くように且つ昇降領域に沿って形成されていることを特徴とする。





【0009】
前記昇降機構は、ボールネジ機構であっても良い。
前記排気ダクトから吸い込まれたガスが通過する循環路と、
この循環路を介して戻ってきたガスを基板搬送領域に供給して、前記基板搬送領域を介して前記排気ダクトに向かう層状の気流を形成するためのガス供給部と、を備えていても良い。
前記基板搬送領域には、基板を棚状に保持し、基板に熱処理を行う縦型の反応管内に搬入出するための基板保持具が配置され、
前記基板搬送機構は、前記基板保持具との間で基板を搬送するためのものであっても良い。
前記排気ダクトは、前記昇降機構を介して前記保持部が昇降する時における当該保持部上の基板の位置と、前記昇降機構との間に設けられていても良い。
【0010】
前記昇降機構から前記保持部側を見た時における左右両側の側面のうち少なくとも一方の側面には、当該昇降機構から発生するパーティクルを吸い込むためのガス吸い込み口がこの昇降機構側を向くように且つ当該昇降機構の長さ方向に沿って形成された補助排気ダクトが配置されていても良いし、この場合前記昇降機構から前記保持部側を見た時における左右両側面に前記ガス吸い込み口が形成されていても良い。
前記排気ダクトと前記補助ダクトとは、これら排気ダクト及び補助ダクトの内部領域が互いに連通するように共通化されていても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、基板を保持する保持部を昇降させるための昇降機構と基板搬送領域との間に、パーティクルを吸い込むためのガス吸い込み口がこの昇降機構側を向くように且つ当該昇降機構の長さ方向に沿って形成された排気ダクトを配置している。そのため、基板搬送領域側へのパーティクルの飛散を抑えることができるので、パーティクルによる基板の汚染を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の縦型熱処理装置の一例を概略的に示す縦断面図である。
図2】前記縦型熱処理装置を示す横断平面図である。
図3】前記縦型熱処理装置に用いられるアームを示す斜視図である。
図4】前記アームが昇降するためのボールネジを示す斜視図である。
図5】前記縦型熱処理装置において形成される気流を模式的に示す斜視図である。
図6】前記気流を示す縦断面図である。
図7】前記ボールネジが配置された領域を拡大して示す横断平面図である。
図8】前記ボールネジに向かう気流を示す斜視図である。
図9】前記縦型熱処理装置の作用を模式的に示す横断平面図である。
図10】前記縦型熱処理装置の作用を模式的に示す横断平面図である。
図11】前記縦型熱処理装置の他の例を示す斜視図である。
図12】前記他の例の縦型熱処理装置を示す横断平面図である。
図13】前記縦型熱処理装置の別の例を示す斜視図である。
図14】前記別の縦型熱処理装置を示す横断平面図である。
図15】前記縦型熱処理装置の更に他の例を示す斜視図である。
図16】前記更に他の例の縦型熱処理装置を示す横断平面図である。
図17】前記縦型熱処理装置の更に別の例を示す横断平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の基板搬送設備に係る実施の形態の一例について、図1図7を参照して説明する。始めにこの基板搬送設備を適用した縦型熱処理装置の概要について簡単に説明すると、この装置は、図1に示すように、多数枚のウエハWを棚状に積載するウエハボート1と、このウエハボート1を気密に収納して熱処理を行う縦型の反応管2とを備えている。また、このウエハボート1にウエハWを移載するためのウエハトランスファーアーム3が基板搬送機構として設けられており、このアーム3によってウエハWが搬送される基板搬送領域10a及び反応管2の下方側においてウエハボート1が待機する保持具待機領域10bに対して、清浄ガスによる気流を形成している。そして、アーム3が昇降動作を行っても、当該アーム3を昇降させるための昇降機構であるボールネジ4からパーティクルが飛散しないように、あるいは飛散が抑えられるように、前記気流を形成する部材(後述の局所排気ダクト50)の形状やレイアウトを調整している。尚、実際にはウエハボート1よりもアーム3が装置の正面側に配置されているが、以降の説明では、図示の都合上、ウエハボート1とアーム3との並びを「前後方向(ウエハボート1が手前側、アーム3が奥側)」、このウエハボート1からアーム3を見た時における前後方向に水平に直交する方向を「左右方向」と呼ぶこととする。
【0014】
先ず、この装置の全体の構成について簡単に説明すると、ウエハボート1に対してウエハWを移載するための保持具待機領域10bの上方側には、既述の反応管2が配置されており、この保持具待機領域10bの奥側(図1中X方向)には基板搬送領域10aが隣接している。この基板搬送領域10aの奥側には、FOUP11の搬送及び保管を行うための作業エリア12が設けられている。即ち、この作業エリア12には、装置の外部の図示しない搬送機構によってFOUP11が載置される載置部21と、この載置部21に載置されたFOUP11を当該作業エリア12における既述のアーム3に近接するトランスファーステージ22に移載するキャリア搬送機23とが設けられている。そして、ウエハWが取り出されて空になったFOUP11については、載置部21の上方側の保管部24にて保管され、処理が終わったウエハWについては元のFOUP11に戻されて装置から搬出されるように構成されている。この例では、トランスファーステージ22は、互いに上下に離間するように2カ所に設けられている。
【0015】
図1中25は装置の外壁部をなす筐体であり、26は筐体25に設けられたドアである。作業エリア12と基板搬送領域10aとの間における壁面部は、筐体25の一部をなしており、これら作業エリア12と基板搬送領域10aとの間を区画すると共に、当該壁面部に設けられたシャッター27によりウエハWの搬送を行う搬送口(開口部)28を開閉自在に構成されている。尚、保持具待機領域10bの上方には、反応管2内のウエハWを例えば600℃に加熱するためのヒータや、反応管2の下端開口部の炉口を開閉するための開閉機構、更には反応管2内に処理ガス(成膜ガス)を供給するためのガス供給系などが設けられているが、図1では簡略化して描画している。また、作業エリア12については、図1以外では描画を省略する。
【0016】
続いて、基板搬送領域10a及び保持具待機領域10bにおける各部のレイアウトについて詳述する。これら領域10a、10bには、既述のように奥側から手前側に向かって基板搬送機構であるアーム3及びウエハボート1がこの順番で並んでいる。平面で見た時にアーム3に対して一方側(図2中左側)に外れた領域には、図1及び図2に示すように、当該アーム3を昇降させるために、ウエハボート1の長さ方向に沿って上下方向に伸びる昇降機構であるボールネジ4が配置されている。このボールネジ4は、例えば装置の床面5の下方側に設けられた駆動部4aにより、例えば900rpm〜1300rpmの回転数で鉛直軸周りに回転自在に構成されると共に、アーム3に向かって水平に伸びる板状の昇降基体である支持部3aの一端側を貫通するように配置されている。尚、既述の図1は、ボールネジ4が見えるように、当該ボールネジ4を側方側(シャッター27側)にずらして描画している。また、ボールネジ4の上端部には、当該ボールネジ4を鉛直軸周りに回転自在に支持するために、例えば図示しない軸受け部などが設けられている。
【0017】
前記支持部3aの他端側は、当該支持部3aが後述の局所排気ダクト50に接触しないように、即ち当該局所排気ダクト50においてガスを取り込むためのガス吸い込み口53をボールネジ4の手前側及び右側に近接して配置できるように、平面で見た時にボールネジ4から奥側に伸び出すと共に、アーム3に向かって直角に屈曲している。この支持部3aにおいて前記直角に屈曲した部分の背面側(筐体25側)には、図7に示すように、アーム3がボールネジ4と共に鉛直軸周りに回転することを規制して昇降させるために、当該筐体25に上下方向に沿って形成されたレール3bに嵌合するガイド部3cが形成されている。
【0018】
アーム3は、図3に示すように、ウエハWを下方側から各々支持する5枚のフォーク(基板保持部、ピックとも言う)31と、これらフォーク31を進退自在に保持する進退部(搬送基体)32と、を備えており、この進退部32を支持するベース部33の下方側に設けられた回転機構33aによって鉛直軸周りに回転自在に構成されている。そして、この回転機構33aには、既述の支持部3aの他端側が接続されており、ボールネジ4が鉛直軸周りに回転すると、当該支持部3aと共にアーム3が例えば0.4m/s〜0.6m/sの昇降速度で昇降するように構成されている。アーム3の昇降ストロークは、例えば1.5mとなっている。尚、このアーム3には、当該アーム3にて発生するパーティクルを局所排気ダクト50側に排気するために、フィルタの組み合わされた排気ユニットが設けられているが、ここでは図示を省略している。
【0019】
ウエハボート1は、図1に示すように、多数枚例えば100枚のウエハWを棚状に収納できるように構成されており、反応管2内に挿入されて熱処理が行われる上方位置と、アーム3によってウエハWが移載される下位置との間において、図示しない昇降機構により昇降自在になっている。このウエハボート1におけるウエハWの載置される領域の高さ寸法は、例えば1mとなっている。後述するように、このウエハボート1に対してウエハWが搬送されることから、この保持具待機領域10bは、基板搬送領域10aの一部をなしていると言える。図2中1aは、ウエハボート1を昇降させるための昇降機構である。
【0020】
そして、基板搬送領域10a及び保持具待機領域10bでは、既述のボールネジ4が配置された一方側(左側)の領域に対して、当該領域に対向する他方側(右側)の領域から水平方向に向かう層流のガス流が前後方向に亘って、且つ当該ボールネジ4(ウエハボート1)の長さ方向に亘って形成されるように構成されている。具体的には、各領域10a、10bにおける右側には、図2に示すように、当該領域10a、10bに対して清浄気体例えば大気(空気)あるいはN(窒素)ガスを供給するために、フィルタ(濾材)35組み合わされた箱形のガス供給部34が前後方向に互いに離間するように例えば2カ所に設けられている。これらガス供給部34の下端部は、図6に概略的に示すように、後述のファン42によって気体が循環する循環流を各領域10a、10bに形成するために、ガスの流入口をなすように各々開口している。尚、清浄気体として窒素ガスを用いるにあたり、実際には筐体25内の雰囲気に当該清浄気体を供給するための供給管と、当該雰囲気を排気するための排気管とが装置に設けられているが、ここでは描画を省略している。
【0021】
これらガス供給部34における左側の側面には、当該ガス供給部34に通流する気体からパーティクルを除去するために、既述のフィルタ35がウエハボート1の長さ方向に亘って且つ前後方向に沿って各々形成されている。従って、ガス供給部34では、フィルタ35を介して清浄気体が各領域10a、10bに供給されるように構成されている。
【0022】
ここで、既述の2つのガス供給部34のうち図2中手前側(ウエハボート1側)のガス供給部34及び奥側(アーム3側)のガス供給部34に夫々「第1」及び「第2」を付して、これら2つのガス供給部34、34のレイアウトについて以下に説明する。第1のガス供給部34に対して対向するように、ウエハボート1の左側には2つのガス回収ダクト36、36が配置されており、また第2のガス供給部34に対向するように、アーム3の左側には同様に2つのガス回収ダクト36、36が配置されている。こうして筐体25の内部には、4つのガス回収ダクト36が配置されている。
【0023】
各々のガス回収ダクト36は、高さ方向における長さ寸法が例えば1.7m程度となるように形成されると共に、内部領域が中空の概略箱形形状となるように構成されている。そして、ガス回収ダクト36における右側の壁面部には、ガス供給部34から各領域10a、10bに供給される気体を取り込むためのガス吸い込み口37がウエハボート1の長さ方向に沿ってガス吸引口として形成されている。これら4つのガス回収ダクト36について、手前側から奥側に向かって夫々「36a」、「36b」、「36c」及び「36d」の符号を付すと、既述のウエハボート1を昇降させるための昇降機構1aは、ガス回収ダクト36a、36b間に配置されている。
【0024】
ガス吸い込み口37は、図2などでは簡略化しているが、図4に示すように、第1のガス供給部34側且つウエハボート1側を向くように形成されている。また、ガス吸い込み口37は、上下方向における気体の取り込み量を揃えるために、上方側から下方側に向かう程数量が少なくなっており、また左右に2列に形成されている。尚、これらガス回収ダクト36a〜36dにおける各領域10a、10b側には、気体を通流させるためのスリット状のガス通流口が縦横に多数形成された金属板からなる図示しないメカカバーが配置されているが、図示を省略している。
【0025】
そして、各々のガス回収ダクト36は、下端部が各々開口してガスの吹き出し口をなしており、これらガスの吹き出し口に連通するように、床面5の下方側には、ガス循環路41が配置されている。即ち、このガス循環路41は、床面5の下方側にて右側と左側との間で水平に伸びると共に、これら右側の端部及び左側の端部が各々開口する概略箱形形状をなしている。このガス循環路41は、手前側と奥側との2カ所に設けられており、始めに手前側のガス循環路41について説明すると、当該ガス循環路41の左側の開口部は、ガス回収ダクト36a、36bの下端側開口部と各々気密に接続されている。また、この手前側のガス循環路41の右側の開口部が第1のガス供給部34に向かって伸び出している。このガス循環路41の内部には、図6に模式的に示すように、例えば板状の金属板を互いに平行に離間させて配置させた熱交換器41aが収納されており、ガス回収ダクト36a、36bから流入した気体を冷却できるように構成されている。また、このガス循環路41には、当該ガス循環路41に流入する気体によって昇温した熱交換器41aを冷却するために、チラーなどの冷却装置から伸びる冷却管(いずれも図示せず)が接続されている。
【0026】
前記手前側のガス循環路41の右側の開口部と、第1のガス供給部34の下端側開口部との間には、気体を送風するための送気機構をなすファン(詳しくはシロッコファンが収納されたファンユニット)42が気密に設けられている。そして、このファン42によってガス供給部34の下端開口部に対して気体を供給すると、この気体は、図6に概略的に示すように、ガス供給部34に設けられたフィルタ35によってパーティクルが除去されて、保持具待機領域10bに向かって高さ方向に亘って吐出されて水平流となる。次いで、この水平流は、ガス回収ダクト36a、36bに流入して、ガス循環路41を介して冷却されながら当該ファン42に戻されていく。こうしてガス供給部34、保持具待機領域10b、ガス回収ダクト36a、36b、ガス循環路41及びファン42を介して循環流が形成される。従って、これら2つのガス回収ダクト36a、36bに対して、循環路41、ファン42及び第1のガス供給部34を共通化して設けていると言える。このファン42は、保持具待機領域10bにおけるガス流が層流となるように、即ちパーティクルを巻き上げないように、例えば0.2m/s〜0.5m/sもの極めて遅い流速となるように駆動条件(回転羽の回転数など)が調整されている。これらガス供給部34、ファン42、ガス循環路41及びガス回収ダクト36a、36bによって層流形成部が構成される。
【0027】
続いて、第2のガス供給部34及び奥側のガス循環路41について説明する。この第2のガス供給部34についても、既述の第1のガス供給部34と同様に、当該第2のガス供給部34に対向するように2つのガス回収ダクト36c、36dが配置されると共に、床面5の下方側には、これら第2のガス供給部34及び2つのガス回収ダクト36c、36dにて共用されるガス循環路41及びファン42が設けられている。第2のガス供給部34における2つのガス回収ダクト36c、36dは、ボールネジ4を介して互いに前後方向に離間するように配置されている。これら2つのガス回収ダクト36c、36dのうち手前側のガス回収ダクト36cは、第2のガス供給部34に対して、ウエハボート1における奥側の部位を介して対向するように配置されている。また、これらガス回収ダクト36c、36dのうち奥側のガス回収ダクト36dは、アーム3により筐体25内にウエハWが搬出される領域を介して第2のガス供給部34に対向するように配置されている。
【0028】
ここで、ボールネジ4と当該ボールネジ4よりも手前側(ウエハボート1側)のガス回収ダクト36cとの間には、図1図5などに示すように、当該ボールネジ4から発生する有機物やパーティクルを吸引するために、ボールネジ4の長さ方向に沿うように気体のガス吸い込み口53の形成された局所排気ダクト(掃気ダクト)50が配置されている。即ち、この局所排気ダクト50は、ガス回収ダクト36cに隣接すると共に、ボールネジ4の置かれた領域を囲むように、平面で見た時に当該領域が矩形に窪んで概略L字型をなしている。言い換えると、局所排気ダクト50は、平面で見た時に、一端側が筐体25に接触するように配置されており、他端側がガス供給部34に向かって右側に伸び出すと共に、ボールネジ4とガス供給部34との間の領域において奥側に向かって直角に屈曲して延伸している。従って、局所排気ダクト50は、図3に示すように、ウエハボート1からボールネジ4を見た時に、当該局所排気ダクト50によってボールネジ4が長さ方向に沿って覆われるように(見えないように)配置されている。言い換えると、局所排気ダクト50は、ボールネジ4と基板搬送領域10aとの間に配置されると共に、ボールネジ4からアーム3側を見た時における左右両側の側面のうち右側の側面にも配置されている。尚、図3は、局所排気ダクト50を一部切り欠いて描画している。
【0029】
局所排気ダクト50の下端部は、図5に示すように、ガス回収ダクト36a〜36dと同様に開口すると共に、第2のガス供給部34におけるガス循環路41の開口端に対して気密に接続されている。従って、第2のガス供給部34に対向する2つのガス回収ダクト36c、36dに加えて、局所排気ダクト50についても、当該第2のガス供給部34から供給される気体を排気(回収)する役割を持っていると言える。即ち、局所排気ダクト50は、第2のガス供給部34に対して、当該局所排気ダクト50の前後両側のガス回収ダクト36c、36dと共通化して設けられている。この局所排気ダクト50においてボールネジ4を臨む側壁のうち左右方向に伸びる面と、当該面に直角な面を夫々第1の壁面部51及び第2の壁面部52と呼ぶと、図7に示すように、これら壁面部51、52とボールネジ4との間の離間寸法d1、d2は、ボールネジ4から発生した有機物やパーティクルの飛散を抑えるために、例えば10mm〜50mmもの小さな寸法に設定されている。尚、図5では、アーム3などの各部材の大きさについて模式的に示しており、またウエハW及びフォーク31などを1枚だけ描画している。
【0030】
前記第1の壁面部51及び第2の壁面部52には、図4に示すように、上下方向に伸びるスリット状のガス吸い込み口53がボールネジ4の長さ方向に亘って且つ水平方向に沿って複数箇所例えば2カ所に配置されている。こうしてガス吸い込み口53は、ボールネジ4側を向くように各々形成されている。
ここで、第2のガス供給部34に対向するガス回収ダクト36c、36dのうち手前側のガス回収ダクト36cにおいてガスの層流を形成するための部材(当該第2のガス供給部34、ガス回収ダクト36c、ファン42及びガス循環路41)を第1の層流形成部と呼ぶこととする。また、局所排気ダクト50を介してガスの層流を形成するための部材(当該局所排気ダクト50、第2のガス供給部34、ファン42及びガス循環路41)を第2の層流形成部と呼ぶこととすると、この例では、これら第1の層流形成部及び第2の層流形成部において、ファン42及びガス循環路41が共通化されていると言える。以上説明したアーム3、ボールネジ4及び局所排気ダクト50により基板搬送設備が構成される。
【0031】
局所排気ダクト50の第2の壁面部52における奥側の部位には、ボールネジ4から発生する有機物やパーティクルがアーム3側に向かって飛散することを抑制するために、当該ボールネジ4の長さ方向に沿って伸びる概略板状の覆い部材54が設けられている。具体的には、この覆い部材54は、図7に示すように、平面で見た時に基端部が前記奥側の部位からアーム3側に向かって伸び出すと共に、左側に向かって直角に屈曲している。従って、ボールネジ4からアーム3側を見ると、局所排気ダクト50及び覆い部材54は、アーム3により搬送されるウエハWから当該ボールネジ4ができるだけ見えないように配置されている。
【0032】
この縦型熱処理装置には、装置全体の動作のコントロールを行うために制御信号を出力するコンピュータからなる制御部71が設けられている。この制御部71のメモリ内には、FOUP11からウエハWを取り出してウエハボート1に搬送し、反応管2内において熱処理を行うための図示しない熱処理プログラムなどが格納されている。このプログラムは、ハードディスク、コンパクトディスク、光磁気ディスク、メモリカード、フレキシブルディスクなどの記憶媒体である記憶部72から制御部71内にインストールされる。
【0033】
次に、この装置の作用について説明する。始めに、この装置において多数枚のウエハWに対して順次熱処理を連続して行っている中で、処理済みのウエハWが全て元のFOUP11に戻されて、ウエハボート1は反応管2の下方位置において空の状態(ウエハWが積載されていない状態)になっているものとする。この時、反応管2の下端開口部である炉口は、図示しない蓋体により気密に閉じられている。また、第1の供給部34及び第2のガス供給部34によって、各領域10a、10bに向かう極微速の層流が高さ方向に亘って且つ前後方向に亘って形成されている。
【0034】
具体的には、第1の供給部34から保持具待機領域10bに供給される気流は、当該第1の供給部34に対向するガス回収ダクト36a、36bによって回収されて、ガス循環路41及びファン42を介して循環流が形成されている。また、第2のガス供給部34から供給される気流は、当該第2のガス供給部34に対向するガス回収ダクト36c、36d及び局所排気ダクト50によって回収されて、同様にガス循環路41及びファン42を介して循環流が形成されている。従って、ボールネジ4が配置された領域では、図2図7及び図8に示すように、第2のガス供給部34から吐出する清浄ガスは、アーム3を支持する支持部3aの上方側の領域及び下方側の領域を通過して、局所排気ダクト50の奥側に設けられた覆い部材54を回り込むように局所排気ダクト50内に流れ込んでいる。尚、図8ではウエハW及びフォーク31などについて、1枚だけ描画している。
【0035】
次いで、キャリア搬送機23を介してトランスファーステージ22にFOUP11を載置すると共に、シャッター27を開放して、搬送口28を介してアーム3によって例えば5枚のウエハWを基板搬送領域10a側に取り出す。具体的には、各々のウエハWよりも僅かに下方位置においてフォーク31をFOUP11内に進入させて、次いで僅かにフォーク31を上昇させてウエハWを受け取り、続いてフォーク31を後退させる。そして、フォーク31の進行方向がウエハボート1側を向くように当該フォーク31を反転させ、このウエハボート1におけるウエハWの保持位置に対応する位置までアーム3を上昇または下降させる。その後、図9に示すように、FOUP11からのウエハWの取り出し順序とは逆の順序でフォーク31を動作させ、ウエハボート1にウエハWを移載する。
【0036】
このウエハWの搬入工程において、アーム3が昇降する時、既述のようにボールネジ4が鉛直軸周りに回転するので、図10に示すように、ボールネジ4の遠心力により、ボールネジ4に塗布された有機物などの潤滑油(オイル)が例えばパーティクルとして飛散しようとする。しかし、このボールネジ4とアーム3上のウエハWとの間には、局所排気ダクト50が配置されており、しかもこの局所排気ダクト50のガス吸い込み口53がボールネジ4を向くように且つ当該ボールネジ4の長さ方向に沿って形成されている。そのため、ボールネジ4から基板搬送領域10aに向かうパーティクルは、局所排気ダクト50に衝突して当該局所排気ダクト50に取り込まれる。また、局所排気ダクト50の側方側を回り込んで基板搬送領域10aに向かおうとするパーティクルについても、局所排気ダクト50によって形成される負圧により、当該局所排気ダクト50に取り込まれる。こうしてボールネジ4から発生するパーティクルは、アーム3の昇降速度が0.6m/sもの高速であっても、即ちボールネジ4の回転数が1300rpm程度であっても、周囲への飛散が抑えられて、第2のガス供給部34から通流する気体と共に局所排気ダクト50によって吸引されていく。
一方、基板搬送領域10a及び保持具待機領域10bでは、ガス供給部34、34によって層流が形成されていることから、例えばアーム3などにパーティクルが付着していたとしても、当該パーティクルの巻き上げが抑えられる。
【0037】
こうしてFOUP11から残りのウエハWを同様に5枚ずつウエハボートに対して移載すると共に、FOUP11が空になると別のFOUP11がトランスファーステージ22に載置されて、ウエハボート1に例えば100枚程度のウエハWが積載されるまで、ウエハWの移載作業が繰り返される。
【0038】
続いて、ウエハWの移載作業が終了すると、ウエハWに対して熱処理が行われる。即ち、ウエハボート1を反応管2内に挿入した後、反応管2の炉口を気密に塞ぐ。次いで、反応管2内を真空雰囲気に設定しながら、図示しないヒーターにより例えば600℃程度に加熱された各々のウエハWに対して処理ガスを供給する。しかる後、ウエハWに対する熱処理が終了すると、反応管2の炉口である下端開口部を気密に塞いでいた図示しない蓋体を側方側に退避させると共に、ウエハボート1を保持具待機領域10bに向かって下降させる。
【0039】
ウエハWに対して既述のように高温の熱処理が行われており、従って保持具待機領域10bに下降して来たウエハボート1やウエハWについても依然として高温となっている。しかし、ガス供給部34とガス回収ダクト36a〜36dとを左右に対向させて配置していることから、保持具待機領域10bでは、清浄気体が層流で水平方向に向かうラミナーフローが高さ方向に亘って且つ前後方向に亘って維持される。こうしてウエハボート1及びウエハWは熱交換器41aを介して通流する清浄気体により速やかに冷却されていく。
【0040】
一方、ウエハWに対して施された処理によっては、ウエハボート1やウエハWに付着した付着物が浮遊する場合もある。しかし、上で述べたラミナーフローによって、別のパーティクルが巻き上がることが抑制されながら、大気中に浮遊したパーティクルについては清浄気体の循環流によって排気され、ガス供給部34に設けられたフィルタによって除去される。
【0041】
次いで、アーム3がアクセスできる程度の温度にウエハボート1及びウエハWが降温すると、ウエハボート1への搬入動作とは逆の搬出動作により、処理済みのウエハWをアーム3を用いて順次FOUP11に搬入する。この搬出工程においても、ボールネジ4において発生するパーティクルは、局所排気ダクト50によって排気され、基板搬送領域10aへの飛散が抑制される。
【0042】
上述の実施の形態によれば、アーム3とボールネジ4との間に、パーティクルを吸い込むためのガス吸い込み口53がボールネジ4側を向くように且つ当該ボールネジ4の長さ方向に沿って形成された局所排気ダクト50を配置している。そのため、基板搬送領域10a側にボールネジ4から発生したパーティクルが飛散することを抑えることができるので、ウエハWの汚染を抑制できる。従って、ボールネジ4が置かれる雰囲気を局所的に排気するにあたり、排気ユニットを別途設けなくても、局所排気ダクト50を配置しただけで済む。そして、この局所排気ダクト50を配置した領域は、ボールネジ4が置かれている領域であり、いわばデッドスペースとなっている。そのため、装置の大型化を抑えながら、ボールネジ4からパーティクルが飛散することを抑制できる。また、既述のようにパーティクルの飛散を抑制しながらも高速でアーム3を昇降させることができ、またウエハWの冷却時には既述のラミナーフローを確保して(ウエハWの熱による上昇気流の発生を抑制して)、ウエハWを速やかに冷却できるので、スループットを向上させることができる。
【0043】
また、ボールネジ4に対して局所排気ダクト50の壁面部51、52を既述のように近接させているので、当該ボールネジ4からパーティクルが飛散してしまう前に吸引することができるし、更にボールネジ4が置かれる領域を局所的に負圧にしやすくなる。従って、パーティクルの飛散を良好に抑制できる。
【0044】
ここで、以上説明した例では、平面で見た時に局所排気ダクト50をL字型に構成したが、ボールネジ4をいわば囲むように形成しても良い。具体的には、図11及び図12に示すように、局所排気ダクト50について、平面で見た時に前後方向に伸びるように形成すると共に、当該局所排気ダクト50の手前側の端部及び奥側の端部を各々筐体25側(左側)に向かって伸張させて、ボールネジ4が置かれる領域をこれら両端部で挟むように配置する。即ち、ボールネジ4と基板搬送領域10aとの間に局所排気ダクト50を配置すると共に、ボールネジ4からアーム3側を見た時における左右両側の側面部にもこの局所排気ダクト50が配置されるように、いわばコ字型に形成する。そして、アーム3を支持する支持部3aについては、ボールネジ4の背面側(左側)から筐体25側に向かって伸張させると共に、局所排気ダクト50の端部を外側から回り込んでアーム3に向かうように屈曲させる。
【0045】
このように局所排気ダクト50を形成すると、ボールネジ4から基板搬送領域10a側を見ると、左右両側及び前方には局所排気ダクト50が配置されており、背面側には筐体25が位置している。そのため、ボールネジ4が置かれる領域が局所排気ダクト50及び筐体25によって概略囲まれることになり、当該領域に負圧を形成しやすくなるので、パーティクルの飛散をより一層抑制できる。
【0046】
また、ボールネジ4から基板搬送領域10a側を見た時における左右両側及び前方側に対向するように局所排気ダクト50を配置するにあたって、図13及び図14に示すように、アーム3の可動範囲に沿って上下方向に伸びる開口部50aを局所排気ダクト50の側面側に形成しても良い。この場合には、支持部3aは、この開口部50aを介してアーム3側に伸張するように配置される。尚、図14は、図13において開口部50aの形成された水平面における横断面を示している。
【0047】
以上のようにボールネジ4から基板搬送領域10a側を見た時における左側、右側及び前方側に局所排気ダクト50を各々配置するにあたって、これら左側の局所排気ダクト50、右側の局所排気ダクト50及び前方側の局所排気ダクト50を互いに独立して配置しても良い。即ち、互いに隣接するダクト50、50間に壁面部を形成して、これら互いに隣接するダクト50、50同士を区画しても良い。この場合には、これらダクト50の内部領域は、床面5の下方側のガス循環路41にて連通する。従って、既述の図11図14では、前記左側の局所排気ダクト50及び前記右側の局所排気ダクト50を各々補助排気ダクトと呼ぶと、前記前方側の局所排気ダクト50と2つの補助排気ダクトとが共通化されていると言える。
【0048】
更にまた、局所排気ダクト50としては、図15及び図16に示すように、ボールネジ4と基板搬送領域10aとの間に位置するように、概略箱形に形成しても良い。この場合であっても、ガス吸い込み口53は、ボールネジ4側を向くように且つ当該ボールネジ4の長さ方向に沿って形成される。
【0049】
ここで、平面で見た時に、FOUP11から未処理のウエハWが取り出されてウエハボート1に移載される時に当該ウエハWが通過する経路を「搬送経路」と呼ぶと共に、以上の各例を纏めて局所排気ダクト50の配置位置について説明する。ボールネジ4からパーティクルが飛散しようとするタイミングは、ボールネジ4が鉛直軸周りに回転する時、即ちウエハボート1やFOUP11に対してアーム3がアクセスする時となっている。そして、既述のように基板搬送領域10aにおいて極めて微速の層流を形成していると、ボールネジ4の回転数によっては、この層流におけるガス流速よりもパーティクルの飛散速度が速くなる場合がある。既に説明したように、パーティクルが巻き上がることを抑えるためには、層流のガス流速を大きくし難い。そこで、局所排気ダクト50は、前記搬送経路のうち、ボールネジ4を介してアーム3が昇降する時における当該アーム3上のウエハWの位置と、ボールネジ4との間に設けられていることが好ましい。そして、FOUP11に対してアーム3がアクセスする時、このアーム3が昇降する高さ方向の寸法(昇降ストローク)は、あるウエハWが載置されている高さ位置を上下に跨ぐ程度のごく僅かな寸法となっている。一方、ウエハボート1に対してアーム3がアクセスする時、ウエハボート1よりも僅かに奥側の位置にてウエハWを保持したアーム3は、ウエハボート1の高さ方向におけるウエハWの積載位置に応じて大きく昇降する。
【0050】
従って、ウエハボート1に対してアクセスする時は、FOUP11に対してアクセスする時と比べてパーティクルが発生しやすいと言える。そのため、局所排気ダクト50は、ウエハWが昇降するFOUP11側の位置及びウエハボート1側の位置のうちウエハボート1側の位置と、ボールネジ4との間に設けられていることが好ましい。更に、前記ウエハボート1側の位置におけるウエハWがボールネジ4から見えないように、既述の図2図11図14のように、少なくともボールネジ4の手前側と右側とに局所排気ダクト50を設けることが好ましい。尚、ボールネジ4の左側にも局所排気ダクト50を設けた場合に、パーティクルの飛散がより一層抑えられることは、図11図14において既に説明した通りである。
【0051】
また、局所排気ダクト50としては、図17に示すように、ウエハボート1にウエハWが移載される時に当該ウエハWが昇降する位置(ウエハボート1よりも僅かに奥側の位置)と、ボールネジ4とを水平に結ぶ直線から奥側にずれた位置に局所排気ダクト50を設けても良い。この場合であっても、ボールネジ4から飛散しようとするパーティクルは、基板搬送領域10a側に拡散しようとしている途中において、局所排気ダクト50の手前側及び左側に形成されたガス取り込み口53から吸引される。従って、局所排気ダクト50について、「ボールネジ4と基板搬送領域10aとの間に設けられている」とは、前記搬送経路のうち少なくとも一部とボールネジ4との間に設けられていることを言う。既述の図11及び図12では、局所排気ダクト50は、前記搬送経路の長さ方向に亘って基板搬送領域10aとボールネジ4との間に設けられていると言える。
【0052】
また、アーム3を昇降させる昇降機構としては、ボールネジ4に代えて、例えばベルトコンベアなどを用いても良い。更に、縦型熱処理装置として、ウエハボート1を昇降させる構成について説明したが、アーム3の側方側(例えば右側)に当該ウエハボート1を載置するための領域を設けておき、この領域においてウエハWの受け渡しを行う構成であっても良い。また、以上説明した昇降機構や局所排気ダクト50は、縦型熱処理装置以外にも、例えばウエハWに対して塗布液の塗布処理や現像処理を行う処理ユニットが複数設けられた塗布・現像装置において、これら処理ユニット間でウエハWの搬送を行うアームに適用しても良い。
【符号の説明】
【0053】
W ウエハ
1 ウエハボート
2 反応管
3 ウエハトランスファーアーム
4 ボールネジ
10 搬送領域
34 ガス供給部
35 ガス吐出口
36 ガス回収ダクト
37 ガス吸い込み口
50 局所排気ダクト
53 ガス吸い込み口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17