特許第5928389号(P5928389)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5928389
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月1日
(54)【発明の名称】ロータリーキルンの端部構造
(51)【国際特許分類】
   F27B 7/18 20060101AFI20160519BHJP
   F27D 25/00 20100101ALI20160519BHJP
【FI】
   F27B7/18
   F27D25/00
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-63044(P2013-63044)
(22)【出願日】2013年3月25日
(65)【公開番号】特開2014-185840(P2014-185840A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2015年4月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 智洋
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 弘志
(72)【発明者】
【氏名】藤山 哉
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 宣幸
(72)【発明者】
【氏名】井原 義昭
【審査官】 佐藤 陽一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−241077(JP,A)
【文献】 特開2009−216341(JP,A)
【文献】 特開平10−047630(JP,A)
【文献】 特開平05−212202(JP,A)
【文献】 特開平08−313156(JP,A)
【文献】 特開平06−050668(JP,A)
【文献】 米国特許第05259756(US,A)
【文献】 特開2005−283063(JP,A)
【文献】 特開2004−239557(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 5/00−7/42
F27D 17/00−99/00
C22B 1/00−61/00
F26B 1/00−25/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータリーキルンの端部構造であって、
中空円筒形状の回転体であるキルン本体と、
前記キルン本体の炉尻側から炉内に挿入配置される原料投入装置と、
前記キルン本体の内壁付着物を掻き取るスクレーパーと、を備え、
前記スクレーパーは、前記原料投入装置上に固定設置されているロータリーキルンの端部構造。
【請求項2】
前記スクレーパーは、外枠と、該外枠の内部或いは複数の該外枠間を連接する筋交い部によって構成される中空構造で前記原料投入装置上に支持されている請求項1に記載のロータリーキルンの端部構造。
【請求項3】
前記スクレーパーは、前記キルン本体の炉尻側の炉端部から0.5m〜2.0m以内の範囲であり、且つ、炉内ガス温度が1000℃以下となる位置に配置されている請求項1又は2に記載のロータリーキルンの端部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリーキルンの端部構造に関する。より詳しくは、本発明は、キルン本体内壁における内壁付着物の成長を未然に抑制可能なスクレーパーを備えるロータリーキルンの端部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製鋼電気炉ダスト等に含まれる粗酸化亜鉛ダストから亜鉛を回収する一連の工程において、粗酸化亜鉛の焼成を行う工程等において、中空円筒形状の回転炉である本体と、本体の排出口側に配置された加熱用バーナー部を備えるロータリーキルンが広く用いられている。
【0003】
このロータリーキルンにおいては、金属性の外殻(シェル)の内部空間を、1000℃以上1300℃以下に達する高温の焼鉱や高温のガス等が通過する。そして、上記の高温の焼鉱は、ロータリーキルンの本体内の特に高温度域において、キルン本体の内壁に付着してリング状の内壁付着物に成長するという問題があるが、これについては従来様々な対策が提案され、又、実施されている。
【0004】
しかし、上記とは異なる問題として、キルン本体内において、比較的低温度域である原料の投入口側である炉尻付近において、装入物の堆積や比較的軟らかい付着物については、この対策に特化した有効な対策を未だ模索中であるというのが現状であった。
【0005】
ロータリーキルンの炉尻付近においては、排ガスからの伝熱により、堆積物や付着物表面が熱せられることによって比較的軟らかい付着物の堆積が生じる。これを放置すれば、気道の狭小化により、やがては原料ガスの本来の円滑な移動の妨げとなる。このような自体を避けるためには、ロータリーキルンの操業を一時停止して、上記の内壁付着物を物理的に除去する作業を行わざるをえないという問題があった。
【0006】
加熱炉の内壁付着物を除去する一般的な方法として、特許文献1には、硫化鉄を含む溶剤を炉内に添加することにより、炉内で起きる加熱に伴う反応を適切に制御して、固形塊の生成を抑制する方法が提案されている。
【0007】
又、特許文献2には、ロータリーキルンに専ら内壁付着物の除去を目的とした専用のバーナーを焼成用のバーナーと別途に配置し、この専用のバーナーによって内壁付着物を加熱することにより、成長した内壁付着物を内壁面から剥離する方法が提案されている。
【0008】
一方、特許文献3及び4には、特有の形状及び構造を有するスクレーパーをキルン本体内に適宜装入することにより、スクレーパー自体の回転や、ロータリーキルン自体の回転によるスクレーパーの転動によって、成長した内壁付着物を物理的に除去する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−204826号公報
【特許文献2】特開2009−85586号公報
【特許文献3】特開平8−313156号公報
【特許文献4】特開2002−81866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1、2に記載の方法のように、炉内環境そのものを変動させることによる除去方法は、キルン本体内に本来求められる最適な温度条件を保つことが極めて困難になってしまう。ロータリーキルン内の反応系は複雑であり、又、焼成物の種類、組成や量によっても炉内の反応条件は様々であるからである。
【0011】
又、特許文献3、4に記載の機械的手段による除去方法は、いずれも成長した内壁付着物をその成長後に機械的負荷により除去するものであるため、除去時における内壁付着物の落下等による、キルン内壁劣化や損傷、或いは、内壁付着物の除去に係る負荷がキルン本体の劣化や損傷につながるリスクがあった。
【0012】
又、上記の機械的手段による除去方法は、いずれも、キルン本体内において最終的に内壁付着物が集積し易い排出口及びその近傍を主たる内壁付着物除去作業の対象範囲とする手段であり、除去手段とするスクレーパー等は、強度の負荷に耐えて強い切削力を発揮できるものであることが前提となっていた。
【0013】
しかし、上述した炉尻側における内壁付着物の除去については、上記同様の強度や切削力についての条件は必ずしも必須ではないことが、次第に明確に認識されるに至った。そして、そのような炉尻側における内壁付着物の除去に特化した、より簡易で効率のよい内壁付着物の除去手段が求められるようになっていた。
【0014】
上記状況に鑑み、本発明は、特にロータリーキルンの炉尻側における内壁付着物を簡易な手段で効率よく除去することのできる内壁付着物の除去手段を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、ロータリーキルンの炉尻側の内壁付着物の除去を、簡易且つ確実に抑制する手段として、ロータリーキルンの端部構造を、キルン本体の炉尻側から炉内に挿入配置される原料投入装置と、当該原料投入装置に固定された態様でキルン本体の内壁付着物を掻き取るスクレーパーとを含む構成とすることにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より、具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0016】
(1) ロータリーキルンの端部構造であって、中空円筒形状の回転体であるキルン本体と、前記キルン本体の炉尻側から炉内に挿入配置される原料投入装置と、前記キルン本体の内壁付着物を掻き取るスクレーパーと、を備え、前記スクレーパーは、前記原料投入装置上に固定設置されているロータリーキルンの端部構造。
【0017】
(2) 前記スクレーパーは、外枠と、該外枠の内部或いは複数の該外枠間を連接する筋交い部によって構成される中空構造で前記原料投入装置上に支持されている(1)に記載のロータリーキルンの端部構造。
【0018】
(3) 前記スクレーパーは、前記キルン本体の炉尻側の炉端部から0.5m〜2.0m以内の範囲であり、且つ、炉内ガス温度が1000℃以下となる位置に配置されている(1)又は(2)に記載のロータリーキルンの端部構造。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、特にロータリーキルンの炉尻側における内壁付着物を簡易な手段で効率よく除去することのできる内壁付着物の除去手段を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明のロータリーキルンの端部構造を備えるロータリーキルンの構成を模式的に示す断面図である。
図2】本発明のロータリーキルンの端部構造を模式的に示す断面図である。
図3】本発明のロータリーキルンの端部構造の主要部分の構成を模式的に示す斜視図である。
図4】本発明のロータリーキルンの端部構造を備えるロータリーキルンの投入口側の正面模式図である。
図5】本発明のロータリーキルンの端部構造による内壁付着物の除去作用の説明に供する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではない。以下、本発明のロータリーキルンの端部構造を、亜鉛焼鉱の焼成等に用いられる大型の乾燥焼成用ロータリーキルンへ適用した場合の実施形態について説明するが、本発明の温度計測ユニットは、円筒形状の回転式加熱炉であれば、その他の加熱炉への適用が可能なものである。
【0022】
<ロータリーキルン>
まず、図1図4を参照しながら、本発明のロータリーキルンの端部構造を好ましく適用可能なロータリーキルンの一例であるロータリーキルン1の全体構成及び使用態様につき説明する。ロータリーキルン1は、本発明のロータリーキルンの端部構造2を備えることにより、ロータリーキルンの炉尻側における内壁付着物を効率よく除去することができる。
【0023】
ロータリーキルン1の備える端部構造2は、キルン本体10の炉尻側から炉内に挿入配置される原料投入装置20に、キルン本体10の被焼成物3からなる内壁付着物を掻き取るスクレーパー30が固定されてなる構造体である。そして、ロータリーキルン1は、その他、バーナー部40、駆動ギヤ50、固定フード60、及び、キルン本体10を支持するキルン支持部(図示せず)、を備える回転式の加熱炉である。キルン本体10は、被焼成物3の投入口である投入口11から被焼成物3を排出する排出口12に向けて被焼成物3の移動する方向に向けて、水平面に対し通常1〜4%の傾斜をもつように設置される。そして、駆動ギヤ50によりR方向へ回転させられながら被焼成物3の焼成が行われる。
【0024】
キルン本体10は、耐火性を備える円筒形の釜であれば特段限定されるものではないが、炭素鋼等からなる金属シェルの内面にモルタル等の不定形耐火物や耐火煉瓦等の耐火物が貼設されているものであることが好ましい。
【0025】
原料投入装置20は、ロータリーキルン1による焼成に先立つ前工程から搬出される被焼成物3をキルン本体10内に投入する装置である。その天面側の外部にスクレーパー30を安定的に固定可能な形状及び構造を有するものであれば、ベルトコンベアやスクリューコンベア等の公知の機器を適宜用いることができる。これらの機器からなる原料投入装置20は、キルン本体10の外に設けられる支持手段(図示せず)によって適切な位置に安定的に設置される。
【0026】
スクレーパー30は、キルン本体10の回転軸方向からの平面視形状については、図3及び4に示す通り、内壁付着物を掻き取り可能な平面視鋭角形状の掻き取り頂部31を、その頂点部分に有する略三角形形状であるか、或いは、同様の形状の掻き取り頂部31を有するその他の形状であればよい。スクレーパー30のキルン本体10の回転軸方向の長さは特に限定されないが、0.5m〜1.5m程度であることが好ましい。この厚さは、即ち、スクレーパー30の頂辺に形成される掻き取り頂部31のキルン本体10の回転軸方向の長さでもある。
【0027】
又、スクレーパー30の材料については、900℃程度、好ましくは、900〜1200℃程度の高温環境での使用に耐える耐熱性を持つ材料であればよい。ステンレス鋼等を好ましい材料の具体例として挙げることができる。又、スクレーパー30の機械的強度、剛性については、従来のキルン本体内の排出口12側よりで用いられてきたスクレーパーと同等の強度までは必ずしも必要ではない。本発明に係るスクレーパー30は、従来の一般的除去部剤と異なり、成長、硬化した内壁付着物を除去対象とはしておらず、成長が進む前段階にある投入直後の比較的軟らかい状態の内壁付着物を除去対象としているからである。
【0028】
スクレーパー30の構成については、図3及び図4に示すように、上記材料からなる外枠32と、外枠32の内部或いは複数の外枠32の間を連接する筋交い部33とからなる中空構造であることがより好ましい。このような構造でも十分に必要な強度を得ることは可能であり、一方、このような中空構造とすることによって、十分な気道が確保されてキルン本体10内部における円滑なガス流を保持できるというメリットがある。
【0029】
又、本発明に係るスクレーパー30は、上記の材料、構造からなるものであるため、比較的、軽量化が容易であり、又、比較的、軟らかい内壁付着物を除去対象としているものであるためその支持体となる原料投入装置20に過度の負荷をかけることなく設置可能である。
【0030】
スクレーパー30は、キルン本体10の炉尻側、即ち、投入口11の近傍の炉内空間において、原料投入装置20の外部上面に固定されている。スクレーパー30の固定位置は、キルン本体10の内壁に対する掻き取り頂部31の相対的な位置を最適化するように規定される。この場合における最適な位置範囲とは、キルン本体10内の炉端部からの距離と当該位置範囲におけるキルン本体10内のガス温度とにより規定される。
【0031】
即ち、スクレーパー30の配置位置は、掻き取り頂部31が、キルン本体10の回転軸方向に対して、キルン本体10の投入口11の側の端部から、好ましくは0.5m〜2.0m、より好ましくは0.5m〜1.5m以内の範囲に配置されることとなるような位置とすることが好ましく、又、同時に、キルン本体内のガス温度が1000℃以下となる範囲に配置されることが好ましい。このような条件を満たす範囲にスクレーパー30を配置することによって、原料投入装置20によってキルン本体10内に投入された直後の被焼成物3が固形塊として成長する前の段階で、最小限の負荷によって掻き取ることができる。
【0032】
尚、スクレーパー30の垂直方向の配置については、被焼成物の粒径や粘度等の諸物性に応じて、適宜調整すればよい。一般的には、掻き取り頂部31とキルン本体10の内壁との間の距離が100mm〜150mm程度となる位置であることが好ましい。垂直方向の配置については、原料投入装置20の位置が既にキルン本体10に対して固定的に確定されている場合には、スクレーパー30の形状を調整することによって最適化することができる。特に、スクレーパー30が上記の中空構造からなる場合には、外枠32や筋交い部33の連接位置を変更すること等により容易にこのような位置調整が可能である。
【0033】
バーナー部40は、キルン本体10の排出口12側近傍に設けられる重油バーナー等の加熱装置であり、ロータリーキルン1の熱源となり、キルン本体10の内部を1100℃〜1300℃に加熱可能なものであればよい。又、駆動ギヤ50は、キルン本体10に図中のR方向への回転力を伝えられるものであり、固定フード60は、キルン本体10から排出される排ガスの拡散を防止可能なものであればよい。
【0034】
以上の構成を有するロータリーキルン1においては、バーナー部40によりキルン本体10の内部を900℃以上1300℃以下程度の高温に加熱し、駆動ギヤ50によりキルン本体10をR方向に回転させながら、原料投入装置20によって、被焼成物を投入口11より図1に示すa方向へと投入する。被焼成物はキルン本体10の傾斜に沿って攪拌、焼成されながらキルン本体10内を排出口12の方向に向かって移動してゆき、排出口12からは、高温の被焼成物がb方向に排出される。
【0035】
<ロータリーキルンの端部構造>
次に、図2図5を参照しながら、本発明のロータリーキルンの端部構造の構成と作用について更に詳しく説明する。本発明の端部構造2は、原料投入装置20に、スクレーパー30が上記において説明した通り、キルン本体の炉尻側から炉内に挿入配置される原料投入装置20上に、キルン本体10の内壁付着物を掻き取るスクレーパー30が固定設置されている構造体を含む端部構造であり、ロータリーキルン1の一部分を構成するものである。
【0036】
端部構造2においては、図2に示す通り、被焼成物3は、原料投入装置20によってa方向に運搬された後、原料投入装置20の端部付近においてa方向に向けてキルン本体10の内壁へと落下する。被焼成物3は、まず、この落下地点周囲で内壁付着物として成長を開始する。スクレーパー30は、図2に示す通り、この被焼成物3の落下地点の直上に固定されていることが好ましい。この位置にスクレーパー30が固定されていることによって、被焼成物3が内壁付着物として成長する前に効率よく内壁から剥離させ除去することができる。
【0037】
又、図5に示す通り、原料投入装置20からキルン本体10の内壁へと落下直後の被焼成物3aの一部は、キルン本体10の内壁に付着し、キルン本体10の回転に伴って上方に掻き上げられるが(3b)、スクレーパー30の掻き取り頂部31に衝突し(3c)、キルン本体10の内壁から剥離されて、キルン本体10の底部に落下する(3d)。このような端部構造2の作用により、被焼成物3からなる内壁付着物は、大きく成長する前にキルン本体10の内壁から除去される。よって、炉尻側において内壁付着物が成長して炉の閉塞を招く事態を未然に防止することができる。
【0038】
尚、ロータリーキルンの操業時において、内壁付着物を掻き取り可能な上記態様でロータリーキルンの一部となっている構造体を含む端部構造である限り、必ずしもスクレーパーが恒常的に原料投入装置に固定されている構造ではなくても本発明のロータリーキルンの端部構造と均等の範囲内である。
【0039】
従来、ロータリーキルン内で成長した固形塊たる内壁付着物の除去には、強度な剛性を有する特殊な形状のスクレーパーによる、キルン本体にも負荷をかけながらの、除去工程が必須とされていた。
【0040】
しかし、本発明の端部構造2によれば、炉尻側での内壁付着物の成長開始地点となる位置に、スクレーパー30を安定的に設置することができる。又、被焼成物3の投入を行うためにロータリーキルン1の操業時に必須の構成部分である原料投入装置20をスクレーパー30の支持体として活用する構造であるため、新たな構造物の追加設置が最小限ですみ、設置コストの面でも極めて優れた構造である。
【0041】
以上のロータリーキルンの端部構造は、以下の効果を奏する。
【0042】
(1) 被焼成物の高温での焼成が行われるロータリーキルンにおいて、特にロータリーキルンの投入口側における内壁付着物を、効率よく除去する手段が求められていた。そこで、本発明においては、ロータリーキルンにおける内壁付着物を除去する手段として、独自の構成からなる端部構造を開発した。本発明の端部構造は、キルン本体の炉尻側から炉内に挿入配置される原料投入装置上に内壁付着物を掻き取るスクレーパーが固定設置されている構造である。そのような端部構造によれば、従来公知の製造及び設置コストの嵩むスクレーパー等の設置によらず、より簡易な構造からなるスクレーパーによって、効率よく内壁付着物の成長を抑制することができる。
【0043】
(2) 又、ロータリーキルンの端部構造において、スクレーパーが外枠と、当該外枠の内部或いは複数の外枠の間を連接する筋交い部により構成される中空構造とした。これにより、キルン内のガス軌道を十分に確保しつつ、スクレーパーを設置することができ、ロータリーキルンの生産性を更に高めることができる。又、このような構造はコスト面、形状の微調整が容易であるという面からも従来品に対する優位性を備える。
【0044】
(3) 又、スクレーパーをキルン本体の炉尻側の炉端部から0.5m〜2.0m以内の範囲であり、且つ、炉内ガス温度が1000℃以下となる位置に配置した。これにより、成長前の軟らかい内壁付着物を未然に除去することできるため、除去効率が更に高まる。又、支持体となる原料投入装置への負荷も最小限に抑えることができる。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限るものではない。又、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施例に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0046】
1 ロータリーキルン
10 キルン本体
11 投入口
12 排出口
2 端部構造
20 原料投入装置
3 被焼成物
30 スクレーパー
31 掻き取り頂部
32 外枠
33 筋交い部
40 バーナー部
50 駆動ギヤ
60 固定フード
図1
図2
図3
図4
図5