特許第5928481号(P5928481)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5928481-複合基板 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5928481
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月1日
(54)【発明の名称】複合基板
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20160519BHJP
   H01L 27/12 20060101ALI20160519BHJP
   H01L 21/20 20060101ALI20160519BHJP
【FI】
   H01L27/12 B
   H01L21/02 B
   H01L21/20
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-550319(P2013-550319)
(86)(22)【出願日】2012年12月20日
(86)【国際出願番号】JP2012082999
(87)【国際公開番号】WO2013094665
(87)【国際公開日】20130627
【審査請求日】2014年4月9日
(31)【優先権主張番号】特願2011-280806(P2011-280806)
(32)【優先日】2011年12月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079304
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100114513
【弁理士】
【氏名又は名称】重松 沙織
(74)【代理人】
【識別番号】100120721
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 克成
(74)【代理人】
【識別番号】100124590
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100157831
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 克彦
(72)【発明者】
【氏名】小西 繁
(72)【発明者】
【氏名】久保田 芳宏
(72)【発明者】
【氏名】川合 信
【審査官】 小山 満
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/011152(WO,A1)
【文献】 特開2011−181907(JP,A)
【文献】 特許第3083725(JP,B2)
【文献】 特開2005−223304(JP,A)
【文献】 特開2006−261556(JP,A)
【文献】 特開2010−278160(JP,A)
【文献】 特開2001−064080(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/00−21/02、
21/04−21/20、
21/34−21/76、
21/84−23/52、
27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化珪素からなり熱伝導率が5W/m・K以上、かつ体積抵抗率が1×108Ω・cm以上の無機絶縁性焼結体基板と、単結晶シリコン膜と、前記無機絶縁性焼結体基板と前記単結晶シリコン膜の間に単独で介在し、該無機絶縁性焼結体基板の全体を覆っている窒化珪素からなる化学気相成長膜とを備え、該窒化珪素からなる化学気相成長膜は、当該複合基板を用いた半導体デバイス製造プロセスにおいて前記無機絶縁性焼結体基板中に含まれるAl及び/又はFeの溶出又は拡散を防止する薄膜であることを特徴とする複合基板。
【請求項2】
前記窒化珪素からなる化学気相成長膜中におけるAlの濃度が1×1017atoms/cm3以下であり、Feの濃度が1×1017atoms/cm3以下であることを特徴とする請求項1記載の複合基板。
【請求項3】
前記複合基板の少なくとも裏面に多結晶又はアモルファスのシリコン層が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の複合基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性の高い窒化珪素のような無機絶縁性焼結体の表面にシリコン薄膜等の単結晶半導体膜を形成した半導体デバイス製造用の複合基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、シリコン系半導体デバイスでは、デザインルールの微細化に伴い、益々その性能が向上している。そのため個々のトランジスタや、トランジスタ間を接続する金属配線からの放熱が問題となっている。この問題に対応するために、デバイスの作製後にシリコンの裏面を百〜数百μm程度まで薄化し、巨大なファンをチップ上に取り付け、放熱を促すものや、水冷チューブをめぐらせたものも出現している。
【0003】
しかし、実際にシリコンを薄化しても、デバイスが作られる領域は表面から数μm程度であり、これ以外の領域は熱溜まりとして作用するので、放熱という観点からは効率が悪くなっている。また近年、高性能プロセッサーなどに用いられるSOIウェハなどは、デバイス活性層の直下にSiO2からなる絶縁層を介した構造を有しているが、SiO2の熱伝導率は1.38W/m・Kと低く、放熱という観点から極めて問題があった。更に、シリコン基板は誘電特性の関係から高周波領域での損失が大きく、その使用には限界があった。
【0004】
熱伝導性がよく、かつ高周波領域での損失が小さいことより、サファイア基板を使用したシリコン・オン・サファイアが注目されているが、以下の問題がある。即ち、サファイア基板は可視光領域で透明であることより、デバイス製造プロセス中で基板の有無確認やウェハの位置決めに使用する光センサーに反応しない問題がある。またサファイア基板はコストが高いという問題がある。
【0005】
可視光に不透明で熱伝導性がよく、かつ安価な基板として、窒化珪素や窒化アルミニウムなどのセラミックス焼結体を挙げることができる。しかし、これらは窒化珪素や窒化アルミニウムの粉体を焼結助剤で固めたものであるため、粉体中に含まれるFeやAlなどの金属不純物、あるいはアルミナなど焼結助剤そのものがデバイス製造プロセス中の汚染原因となり、その使用が困難であるという問題があった。
【0006】
なお、特許文献1(特開平4−82256号公報)には、絶縁及び汚染防止の目的でCVD法で形成されたSiO2膜が積層された基板などが開示されているが、体積抵抗率という観点は検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4−82256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、可視光に不透明で熱伝導性がよく、更に高周波領域での損失が小さく、かつ安価な無機絶縁性焼結体基板上に単結晶半導体の薄膜を設けた複合基板であって、焼結体からの金属不純物汚染を抑制した複合基板の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、熱伝導率が5W/m・K以上、かつ体積抵抗率が1×108Ω・cm以上の無機絶縁性焼結体基板と単結晶半導体膜、又は前記無機絶縁性焼結体基板と単結晶半導体膜とこれらの間に酸化物、窒化物、酸窒化物から選ばれた薄層を介在させた複合基板を用いることにより、上記目的が効果的に達成されることを知見した。
【0010】
即ち、本発明は、下記の複合基板を提供する。
〔1〕
窒化珪素からなり熱伝導率が5W/m・K以上、かつ体積抵抗率が1×108Ω・cm以上の無機絶縁性焼結体基板と、単結晶シリコン膜と、前記無機絶縁性焼結体基板と前記単結晶シリコン膜の間に単独で介在し、該無機絶縁性焼結体基板の全体を覆っている窒化珪素からなる化学気相成長膜とを備え、該窒化珪素からなる化学気相成長膜は、当該複合基板を用いた半導体デバイス製造プロセスにおいて前記無機絶縁性焼結体基板中に含まれるAl及び/又はFeの溶出又は拡散を防止する薄膜であることを特徴とする複合基板。

前記窒化珪素からなる化学気相成長膜中におけるAlの濃度が1×1017atoms/cm3以下であり、Feの濃度が1×1017atoms/cm3以下であることを特徴とする〔1〕記載の複合基板。

前記複合基板の少なくとも裏面に多結晶又はアモルファスのシリコン層が設けられていることを特徴とする〔1〕又は2〕記載の複合基板。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、可視光に不透明で熱伝導性がよく、更に高周波領域での損失が小さく、安価な無機絶縁性焼結体を用いて、金属不純物汚染が抑制された安価な複合基板を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態を示す複合基板の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明において、基板として使用する無機絶縁性焼結体としては、その熱伝導率はSiO2の熱伝導率1.5W/m・Kより高いことが好ましく、より好ましくは5W/m・K以上、更に好ましくは10W/m・K以上である。その上限は特に制限されないが、通常2,500W/m・K以下、特に2,000W/m・K以下である。
【0014】
また、誘電特性による電力ロスを抑えるため、基板の体積抵抗率ができるだけ高いことが望まれ、1×108Ω・cm以上であることが好ましく、より好ましくは1×1010Ω・cm以上である。その上限は特に制限されないが、通常1×1018Ω・cm以下、特に1×1016Ω・cm以下である。これらの条件を満たす無機絶縁性焼結体としては、窒化珪素、窒化アルミニウム、サイアロン(SIALON:Si34・Al23)などの焼結体を挙げることができる。
その中でも、デバイス製造プロセス中に使用される薬液耐性が高いこと、また基板コストが安いことより、窒化珪素が最も好ましい。
【0015】
なお、上記基板の厚さは100〜2,000μm、特に200〜1,000μmとすることが好ましい。
【0016】
上記焼結体にはFe、Alなどの金属元素、特にAlが多く含まれる場合があり、それらがデバイス製造プロセスにおいて溶出あるいは拡散などによって悪影響を及ぼすおそれがある。
この場合、基板中の不純物濃度をICP−MS法で評価した場合、Feが1×1017atoms/cm3以下、Alが1×1017atoms/cm3以下の場合は、基板表面に直接単結晶半導体膜を形成することができるが、Feが上記濃度を超え1×1020atoms/cm3以下、Alが上記濃度を超え1×1020atoms/cm3以下の場合は、これらの不純物の溶出を防止するため、基板全体を酸化物、窒化物あるいは酸窒化物の薄膜で覆うことが好ましい。もちろん、Feが1×1017atoms/cm3以下、Alが1×1017atoms/cm3以下の場合も、上記薄膜を形成することは推奨される。上記薄膜を介して、素子を形成する単結晶半導体膜、具体的には単結晶シリコン膜を設けることにより、所望の複合基板を得ることができる。なお、上記薄膜は基板全体を覆って形成することが好ましい。
【0017】
上記酸化物、窒化物あるいは酸窒化物の薄膜は、基板中の金属不純物の溶出あるいは拡散防止が目的であり、これらの膜は高純度である必要がある。それを実現するため、これらの膜を設ける手段として、スパッタリング、電子ビーム蒸着又は化学気相成長法を用いることが好ましい。こうした手段を用いることにより、膜中のAlやFeの濃度を焼結体中の濃度以下、典型的には1×1017atoms/cm3以下、好ましくは1×1016atoms/cm3以下、より好ましくは1×1015atoms/cm3以下にすることができ、基板からの金属不純物汚染を抑えることができる。上記薄膜の体積抵抗率は1×108〜1×1018Ω・cm、特に1×1010〜1×1016Ω・cmであることが好ましく、熱伝導率は2〜100W/m・K、特に5〜50W/m・Kであることが好ましい。膜種としては、上記手段によって高純度で形成されるSiO2、Si34、SiOxy(0<x<2、0<y<1.3)などの絶縁膜を挙げることができるが、基板の高い熱伝導率を維持することを考慮すると、特に窒化珪素であることが好ましい。
【0018】
なお上記薄膜の厚さは0.01〜50μm、特に0.1〜20μmとすることが好ましい。
また、上記基板表面に直接又は上記薄膜を介して形成される単結晶半導体膜としては、単結晶シリコン膜とすることができ、通常0.01〜100μm、特に0.05〜1μmの厚さに形成することが好ましい。この場合、単結晶半導体の形成方法としては、スマートカット法のような水素や希ガスイオンをインプラした基板を貼り合わせたのち、インプラした層から剥離して転写する方法、SiやSOIなどの半導体層を接合したのち、機械的及び/又は化学的手段で薄化する方法などが挙げられる。
【0019】
また、デバイス製造プロセスにおいては、一般的に基板を静電チャックで保持するが、窒化珪素自体は絶縁体であるため静電チャックで保持することが難しい。そのため基板の裏面側は導電性又は半導電性の状態にすることが必要である。これは静電チャックの保持が可能であり、デバイス製造ラインの汚染の懸念のない、シリコン膜が好ましく、その形態は単結晶シリコン膜、多結晶シリコン膜、あるいはアモルファスシリコン膜のいずれでも可能である。なお、その厚さは0.01〜100μm、特に0.05〜10μmであることが好ましい。
【0020】
本発明の複合基板は、主として発熱の大きいパワーデバイスや高周波を用いるRFデバイスなどに用いられる。
【実施例】
【0021】
以下、実施例比較例及び参考例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0022】
[実施例1]
本発明の実施形態を図1に示す。焼結体基板として外径200mm、厚さ725μmのSi34焼結体11を作製した。この基板の体積抵抗率を4探針法で測定したところ、1×1014Ω・cmであった。また熱伝導率をレーザーフラッシュ法で測定したところ、15W/m・Kであった。なお、この基板と同じ体積抵抗率及び熱伝導率である基板Si34焼結体基板を作製した。この基板をHF水溶液に溶解し、ICP−MS法で金属不純物濃度を評価したところ、Feが1×1019atoms/cm3、Alが5×1018atoms/cm3であった。
この基板全面に窒化珪素膜12をLP−CVD法で1μm形成した。形成した窒化珪素膜の体積抵抗率及び熱伝導率を評価したところ、1×1014Ω・cm、13W/m・Kであり、焼結体とほぼ同じ物性であった。また、膜中に含まれる金属不純物濃度は、膜をHF水溶液に溶解し、ICP−MS法で分析することにより行った。その結果、膜中の金属不純物はFeが最も多く、1×1015atoms/cm3であった。次に多い金属不純物はAlであり、その濃度は1×1014atoms/cm3であった。その他の金属不純物は検出限界以下であり、デバイス製造プロセスで問題の無い濃度であった。
その基板の一方の面に厚さ0.3μmの単結晶シリコン薄膜13を貼り合わせることによって、熱伝導率が高く安価な焼結体基板を用いて、金属汚染の懸念が少ない複合基板を作製することができた。
上記で作製した基板の裏面に、LP−CVD法を用いて厚さ1μmのアモルファスシリコン薄膜14を成膜した。アモルファスシリコン表面の金属不純物濃度を、ICP−MS法で測定したが、検出限界以下であり、裏面への金属汚染は見られなかった。
【0023】
参考例1
焼結体基板として、実施例1と同様のSi34焼結体を準備した。
この基板全面にSiO2膜をLP−CVD法で1μm形成した。形成したSiO2膜の体積抵抗率及び熱伝導率を評価したところ、1×1014Ω・cm、1.5W/m・Kであった。また、膜中に含まれる金属不純物濃度は、実施例1と同様な手順で評価したところ、Fe及びAl共に1×1014atoms/cm3であった。その他の金属不純物は検出限界以下であり、デバイス製造には問題の無い濃度であった。
実施例1と同様に、基板の片面に厚さ0.3μmの単結晶シリコン薄膜を貼り合わせることによって、熱伝導率が高い絶縁性基板を用い、金属汚染の懸念の無い複合基板を作製することができた。
上記で作製した基板の裏面に、LP−CVD法を用いて厚さ1μmのポリシリコン薄膜を成膜した。ポリシリコン表面の金属不純物濃度を、ICP−MS法で測定したが、検出限界以下であり、裏面への金属汚染は見られなかった。
【0024】
参考例2]
焼結体基板として、外径200mm、厚さ725μmのAlN焼結体を作製した。この基板の体積抵抗率を4端針法で測定したところ、1×1013Ω・cmであった。またレーザーフラッシュ法で測定した熱伝導率は160W/m・Kであった。実施例1と同様に、基板中の金属不純物濃度を評価したところ、Feが5×1019atoms/cm3、Alが1×1019atoms/cm3であった。
この基板全面に、実施例1と同様に、窒化珪素薄膜をLP−CVD法で1μm形成した。形成した膜の体積抵抗率、熱伝導率及び金属不純物濃度は実施例1と同等であった。
実施例1と同様に、基板の片面に厚さ0.3μmの単結晶シリコン薄膜を貼り合わせることによって、熱伝導率が高い絶縁性基板を用い、金属汚染の懸念の無い複合基板を作製することができた。
上記で作製した基板の裏面に、LP−CVD法を用いて厚さ1μmのアモルファスシリコン薄膜を成膜した。アモルファスシリコン表面の金属不純物濃度を、ICP−MS法で測定したが、検出限界以下であり、裏面への金属汚染は見られなかった。
【0025】
参考例3]
焼結体基板として、外径200mm、厚さ725μmのSIALON(Si34・Al23)焼結体を作製した。この基板の体積抵抗率を4端針法で測定したところ、1×1014Ω・cmであった。またレーザーフラッシュ法で測定した熱伝導率は45W/m・Kであった。実施例1と同様に、基板中の金属不純物濃度を評価したところ、Feが2×1019atoms/cm3、Alが1×1020atoms/cm3であった。
この基板全面に、実施例1と同様に、窒化珪素薄膜をLP−CVD法で2μm形成した。形成した膜の体積抵抗率、熱伝導率及び金属不純物濃度は実施例1と同等であった。
実施例1と同様に、基板の片面に厚さ0.3μmの単結晶シリコン薄膜を貼り合わせることによって、熱伝導率が高い絶縁性基板を用い、金属汚染の懸念の無い複合基板を作製することができた。
上記で作製した基板の裏面に、LP−CVD法を用いて厚さ1μmのアモルファスシリコン薄膜を成膜した。アモルファスシリコン表面の金属不純物濃度を、ICP−MS法で測定したが、検出限界以下であり、裏面への金属汚染は見られなかった。
【0026】
[比較例1]
実施例1と同じ体積抵抗率及び熱伝導率である基板Si34焼結体基板を作製した。この基板をHF水溶液に溶解し、ICP−MS法で金属不純物濃度を評価したところ、Feが1×1019atoms/cm3、Alが5×1018atoms/cm3であり、実施例1の窒化珪素膜中の濃度に比べ著しく高かった。体積抵抗率や熱伝導率は問題ないが、デバイス製造プロセスで用いるには製造ラインの汚染が問題になる濃度レベルであり、そのままの形態では使用できなかった。
【0027】
[比較例2]
参考例2と同じ体積抵抗率及び熱伝導率である基板AlN焼結体基板を作製した。この基板をHF水溶液に溶解し、ICP−MS法で金属不純物濃度を評価したところ、Feが5×1019atoms/cm3、Alが1×1019atoms/cm3であり、参考例2の窒化珪素膜中の濃度に比べ著しく高かった。体積抵抗率や熱伝導率は問題ないが、デバイス製造プロセスで用いるには製造ラインの汚染が問題になる濃度レベルであり、そのままの形態では使用できなかった。
【0028】
[比較例3]
参考例3と同じ体積抵抗率及び熱伝導率である基板SIALON焼結体基板を作製した。この基板をHF水溶液に溶解し、ICP−MS法で金属不純物濃度を評価したところ、Feが2×1019atoms/cm3、Alが1×1020atoms/cm3であり、参考例3の窒化珪素膜中の濃度に比べ著しく高かった。体積抵抗率や熱伝導率は問題ないが、デバイス製造プロセスで用いるには製造ラインの汚染が問題になる濃度レベルであり、そのままの形態では使用できなかった。
【0029】
実施例1、比較例1〜3、参考例1〜3で作製したウェハについて静電チャックで保持できるかを確認するため、300mmφサイズの電極を設けた基板に複合基板を搭載し、±300Vの電圧をかけたときの吸着力を、電圧印加の状態で基板を引っ張り、テーブルから基板が外れた時の力をロードセルによって測定し、それを吸着力として評価した。その結果を表1に示す。
表1には、実施例1、比較例1〜3、参考例1〜3で作製した複合基板の吸着力測定値と、同サイズのシリコンウェハについて測定した値を示す。その結果、アモルファスシリコン又はポリシリコンを成膜していない比較例1〜3に示す複合基板は、ほとんど静電チャックされないのに対し、実施例1、参考例1〜3のアモルファスシリコン又はポリシリコンを成膜した複合基板では、シリコンウェハと同程度の吸着力であった。
【0030】
【表1】

図1