(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
発光成分に波長420〜490nmの青色光成分を含む光源又は該光源及び波長変換部材を有し、青色光又は擬似白色光を出射する発光装置から出射される照明光の色度及び/又は演色評価数を調整する調整部品であり、上記波長変換部材が、上記光源の光軸上に配置され、青色光を吸収して上記調整部品に含まれる蛍光体とは波長の異なる光を発する蛍光体を含む波長変換部材である調整部品であって、
上記光源又は上記光源及び波長変換部材から離間し、かつ空間的に独立して配置され、
下記式(1)
A2(M1-xMnx)F6 (1)
(式中、MはSi、Ti、Zr、Hf、Ge及びSnから選ばれる1種又は2種以上の4価元素、AはLi、Na、K、Rb及びCsから選ばれ、かつ少なくともNa及び/又はKを含む1種又は2種以上のアルカリ金属であり、xは0.001〜0.3である。)
で表される複フッ化物蛍光体を含んでなり、波長420nm以上490nm以下の光を吸収して赤色波長成分を含む光を発光することを特徴とする調整部品。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオードは、現在利用可能な光源の中で最も効率的な光源の一つである。このうち、白色発光ダイオードは、白熱電球、蛍光灯、CCFL(Cold Cathode Fluorescent Lamp)バックライト、ハロゲンランプなどに代わる次世代光源として急激に市場を拡大している。白色LED(Light Emitting Diode)を実現する構成の一つとして、青色発光ダイオード(青色LED)と、青色光励起によって、より長波長、例えば黄色や緑色に発光する蛍光体との組み合わせによるLED発光装置(LED照明)が実用化されている。
【0003】
そのなかでも現在主流となっているのは、青色LEDと黄色蛍光体による擬似白色LED装置であり、この黄色蛍光体としては、Y
3Al
5O
12:Ce、(Y,Gd)
3(Al,Ga)
5O
12:Ce、(Y,Gd)
3Al
5O
12:Ce、Tb
3Al
5O
12:Ce、CaGa
2S
4:Eu、(Sr,Ca,Ba)
2SiO
4:Eu、Ca−α−サイアロン(SiAlON):Eu等が知られている。
【0004】
このような擬似白色LED装置においては、例えば、青色LEDの前面に黄色発光蛍光体粒子を分散したシリコーン樹脂又はガラスよりなる蛍光部材(波長変換部材)を配置することで、入射してくる波長450nm前後の青色光により中心波長570nm前後(波長510〜600nm)の黄色蛍光を発生させ、波長変換部材を透過した青色LEDからの光と合わせることで擬似白色光としている。
【0005】
しかしながら、黄色蛍光体として一般的なY
3Al
5O
12:Ceを用いた擬似白色LED装置からの光には、波長500nm近傍の緑色波長成分、あるいは波長600nm以上の赤色波長成分は僅かであり、結果的に、このような擬似白色LED装置の出射光の演色性は自然光や白熱電球、3波長蛍光灯に比べて劣るものとなっている。
【0006】
そこで、従来より、白色LED装置の演色性を向上させる試みがなされてきた。そのなかでも、出射光に温かみや優しさをもたらす赤色発光特性の改善の一つとして、擬似白色LED装置の波長変換部材に黄色蛍光体又は緑色蛍光体とともに赤色蛍光体を混合する試みがなされてきた。使用される代表的な蛍光体としてはSr−CaAlSiN
3:Eu
2+などの窒化物蛍光体がよく知られている。
【0007】
この白色LEDの構造としては、青色LED上又はそのごく近傍に樹脂やガラスなどに混合した状態で蛍光体を配置し、青色光の一部又は全部を、この事実上青色LEDと一体化したこれらの蛍光体層で波長変換して白色光を得る、いわば白色LED素子と呼ぶべき方式が主流である。
【0008】
しかしながら、上記の方法のような、波長変換部材として黄色蛍光体又は緑色蛍光体と赤色蛍光体とを混合する他、赤色発光のLEDやLD(Laser Diode)を並列に用いる方法以外に発光に赤色成分を加える方法は提案されていなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、発光装置に容易に赤色の発光成分を追加しつつ、発光効率の低下を抑えられる調整部品及び該調整部品を用いた発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行い、従来の擬似白色光に対する赤色光付加による改善の程度を検討したところ、出射光として擬似白色光をもたらす黄色光に対し、光量(光子の量)として概ね5〜10%程度の赤色光を追加することで色再現性が大幅に改善された白色光が得られることを見出した。また、このような赤色光を得る方法について検討を進めた結果、擬似白色光を発するLED発光装置において、マンガン賦活複フッ化物赤色蛍光体を用いた調整部品を演色性改善もしくは色度調整の目的で設置することで、発光装置に容易に赤色の発光成分を追加しつつ、発光効率の低下を抑えられることを見出し、本発明を成すに至った。
【0011】
従って、本発明は、下記の調整部品及び発光装置を提供する。
〔1〕 発光成分に波長420〜490nmの青色光成分を含む光源又は該光源及び波長変換部材を有し、青色光又は擬似白色光を出射する発光装置から出射される照明光の色度及び/又は演色評価数を調整する調整部品であり、上記波長変換部材が、上記光源の光軸上に配置され、青色光を吸収して上記調整部品に含まれる蛍光体とは波長の異なる光を発する蛍光体を含む波長変換部材である調整部品であって、
上記光源又は上記光源及び波長変換部材から離間し、かつ
空間的に独立して配置され、
下記式(1)
A
2(M
1-xMn
x)F
6 (1)
(式中、MはSi、Ti、Zr、Hf、Ge及びSnから選ばれる1種又は2種以上の4価元素、AはLi、Na、K、Rb及びCsから選ばれ、かつ少なくともNa及び/又はKを含む1種又は2種以上のアルカリ金属であり、xは0.001〜0.3である。)
で表される複フッ化物蛍光体を含んでなり、波長420nm以上490nm以下の光を吸収して赤色波長成分を含む光を発光することを特徴とする調整部品。
〔2〕 上記複フッ化物蛍光体からなる〔1〕記載の調整部品。
〔
3〕 厚みが1mm以上20mm以下である〔1〕
又は〔2〕記載の調整部品。
〔
4〕 上記複フッ化物蛍光体が、K
2(Si
1-xMn
x)F
6(xは上記と同じ)で表されるマンガン賦活ケイフッ化カリウムである〔1〕〜〔
3〕のいずれかに記載の調整部品。
〔
5〕 上記複フッ化物蛍光体が、体積累計50%の粒径D50が2μm以上200μm以下の粒子状である〔1〕〜〔
4〕のいずれかに記載の調整部品。
〔
6〕 発光成分に波長420〜490nmの青色光成分を含む光源又は該光源及び波長変換部材を有し、青色光又は擬似白色光を出射する発光装置であって、〔1〕〜〔
5〕のいずれかに記載の調整部品を上記光源又は上記光源及び波長変換部材から離間し、かつ
空間的に独立して配置したことを特徴とする発光装置。
〔
7〕 上記波長変換部材が、Y
3Al
5O
12:Ce
3+又はLu
3Al
5O
12:Ce
3+を熱可塑性樹脂に練り込んだ樹脂成型体からなる波長変換部材である〔
6〕記載の発光装置。
〔
8〕 上記光源から気体層又は真空層を介して、離れた場所に上記波長変換部材を配設したリモートフォスファー方式の発光装置である〔
6〕又は〔
7〕記載の発光装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明の調整部品を用いた発光装置では、発光効率の低下を防ぎつつ、従来の方法では避けられなかった赤色蛍光体の分散の違いに起因する発光色のばらつきを防ぐことができ、安定した発光特性が得られる。また、調整部品の大きさ、蛍光体の含有率を変化させることで発光装置の色度や演色性能を容易に調整することが可能である。
また、本発明の発光装置によれば、本発明の調整部品は波長420nm以上490nm以下の光が入射する位置であれば光源の光軸上に配置する必要はなく、例えば反射板周辺やランプシェード周辺にも配置でき、調整部品による発光効率の低下がほとんどないという利点も得られる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[調整部品]
以下に、本発明に係る調整部品について説明する。
本発明に係る調整部品は、下記式(1)
A
2(M
1-xMn
x)F
6 (1)
(式中、MはSi、Ti、Zr、Hf、Ge及びSnから選ばれる1種又は2種以上の4価元素、AはLi、Na、K、Rb及びCsから選ばれ、かつ少なくともNa及び/又はKを含む1種又は2種以上のアルカリ金属であり、xは0.001〜0.3、好ましくは0.001〜0.1である。)
で表される複フッ化物蛍光体を含んでなり、波長420nm以上490nm以下の光を吸収して赤色波長成分を含む光を発光する調整部品である。本発明の調整部品は、照明光、特にLED照明光の色度及び/又は演色評価数を調整することが可能である。
【0015】
ここで、本発明に用いる複フッ化物蛍光体は、上記式(1)で表される赤色蛍光体であり、A
2MF
6で表される複フッ化物の構成元素の一部がマンガンで置換された構造を有するマンガン賦活複フッ化物蛍光体である。このマンガン賦活複フッ化物蛍光体において、賦活元素のマンガンは、特に限定されるものではないが、A
2MF
6で表される4価元素のサイトにマンガンが置換したもの、即ち、4価のマンガン(Mn
4+)として置換したものが好適である。この場合、A
2MF
6:Mnと表記してもよい。このうち、複フッ化物蛍光体が、K
2(Si
1-xMn
x)F
6(xは上記と同じ)で表されるマンガン賦活ケイフッ化カリウムであることが特に好ましい。
【0016】
このようなマンガン賦活複フッ化物蛍光体は、波長420〜490nm、好ましくは波長440〜470nmの青色光により励起されて、波長600〜660nmの範囲内に発光ピーク、あるいは最大発光ピークを有する赤色光を発する。また、該複フッ化物蛍光体は、波長500nm以上の吸収率が低い。
【0017】
なお、上記式(1)で表される複フッ化物蛍光体は、従来公知の方法で製造したものでよく、例えば、金属フッ化物原料をフッ化水素酸に溶解又は分散させ、加熱して蒸発乾固させて得たものを用いるとよい。
【0018】
マンガン賦活複フッ化物蛍光体は、粒子状であることが好ましく、その粒径としては、粒度分布における体積累計50%の粒径D50が2μm以上200μm以下であり、好ましくは10μm以上60μm以下である。D50値が2μm未満の場合は、蛍光体としての発光効率が低下してしまうおそれがある。一方、蛍光体粒子が大きい場合は、発光に本質的に問題はないが、樹脂との混合時に、蛍光体の分布が不均一になりやすいなどの欠点が生じやすくなるため、D50で200μm以下であるものが使いやすいという利点がある。
なお、本発明における粒径の測定方法は、例えば、空気中に対象粉末を噴霧、あるいは分散浮遊させた状態でレーザー光を照射して、その回折パターンから粒径を求める乾式レーザー回折散乱法が、湿度の影響を受けず、なお且つ粒度分布の評価までできるため好ましい。
【0019】
また、本発明の調整部品は、上記複フッ化物蛍光体からなるものが好ましい。この場合、例えば、粒子状の上記複フッ化物蛍光体を基板上に平面的に、又は立体的に充填して形成したものであればよく、その形状も発光装置に適用可能なものであれば特に制限はない。
【0020】
また、本発明の調整部品は、上記複フッ化物蛍光体を分散した樹脂成型体であることが好ましい。この場合の調整部品の形状は、板状、円盤状、リング状等、発光装置に適用可能な形状であれば特に制限はない。
【0021】
本発明の調整部品が、複フッ化物蛍光体を分散した樹脂成型体である場合、該調整部品におけるマンガン賦活複フッ化物蛍光体の含有量、即ち、該蛍光体を樹脂に練り込む際の濃度は、調整部品の厚み及び目的とする色度や演色性により異なるものの、通常2質量%以上30質量%以下の範囲であり、好ましくは3質量%以上20質量%以下、より好ましくは5質量%以上10質量%以下である。蛍光体含有量が30質量%超となると、練り込みの際の蛍光粉体と成型機の練り込みスクリューとの摩擦及び摩耗が増大し、その結果、調整部品に変色が生じてしまうおそれがある。また、過度に高い含有量とすると、封止樹脂内で蛍光粉体が部分的に凝集して、調整部品における発光分布が不均一なものとなる場合がある。一方、2質量%未満では、調整部品としての効果が薄くなってしまうおそれがあるが、2質量%以上30質量%以下の範囲をはずれて使用できないわけではない。
【0022】
本発明で用いる蛍光体を封止する樹脂としては、特に限定されないが、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂が好ましく、特に、酸、アルカリへの化学的耐性が高く、防湿性にも優れており、射出成型の際にも、より比較的短時間で成型できることから熱可塑性樹脂がより好ましい。
【0023】
また、本発明で用いる蛍光体を封止する樹脂が熱可塑性樹脂の場合、成型の際の上限温度は、250℃以下、更に、200℃以下が好ましい。なお、250℃超では、マンガン賦活複フッ化物蛍光体が熱分解する可能性がある。一方、成型の際の下限温度は、使用する熱可塑性樹脂が軟化すれば特に限定されない。但し、熱可塑性樹脂の選択の際には、光源の発熱を考慮し、使用中に、熱変形を生じない熱可塑性樹脂であることが好ましい。
【0024】
本発明で用いる光透過性の熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン等のポリオレフィン、汎用ポリスチレン(GPPS)等のポリスチレン、及びスチレン・マレイン酸共重合体、スチレン・メタクリル酸メチル共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)等のスチレン共重合体が挙げられ、これらの中から選ばれる1種又は2種以上を用いることが好ましい。これらによれば、蛍光体の良好な練り込みが可能であり、成型温度や光源からの発熱の影響による、樹脂や蛍光体の分解、劣化を生じない。
【0025】
本発明の調整部品では、従来の熱可塑性プラスチック材と同様に、酸化防止剤、光安定化剤、紫外線吸収剤をはじめとした安定化剤並びに成型滑剤を用途に応じて、0.1〜0.3質量%の範囲で配合してもよい。
また、当該部品の発光の均一化を図る目的などで、光拡散剤を練り込み配合することもできる。光拡散剤としては、タルク、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、ケイ酸アルミニウム、酸化イットリウム等の無機セラミックス微粉体が挙げられ、光学的な透明度が高く、樹脂への練り込み時の透過光の損失が小さい、酸化アルミニウム又は酸化ケイ素が好ましい。また、光拡散剤の粒径D50値は0.005μm以上5μm以下が好ましい。
【0026】
本発明では、上記熱可塑性樹脂、その他助剤等を原料樹脂とし、マンガン賦活複フッ化物蛍光体を粉体として、二軸混練押出機に投入して、加熱した原料樹脂にこの粉体を練り込む形で両者を混練し、汎用のプラスチック材料と同様に、用途に応じた任意の形状に熱成型することが好ましい。例えば、両者を混練し、そのまま調整部品に適した目的の厚み、形状に成型してもよいし、とりあえずペレット状に成型しておき、必要なときにこのペレットから目的の厚み、形状の調整部品に成型してもよい。
【0027】
調整部品の厚みは、1mm以上20mm以下が好ましい。厚み1mm未満では、調整部品の機械強度を維持することが困難な場合があり、20mm超では、調整部品に入射した光の樹脂による損失が過大となるおそれがある。
【0028】
このようにして得られた調整部品は、マンガン賦活複フッ化物蛍光体が変質することなく所定の樹脂で封止された樹脂成型体となる。また、該調整部品は光学的に波長420〜490nmの青色光励起により、波長約600〜660nmの赤色波長領域に発光もしくは最大発光ピークを有する蛍光を発することから、上記マンガン賦活複フッ化物を含む本発明の調整部品を波長420〜490nmの青色光を有する発光装置に適用することで、その発光スペクトルに波長約600〜660nmの赤色光が加わり、色度調整及び演色性の向上が可能となる。また、本発明の調整部品では、上記マンガン賦活複フッ化物蛍光体は、波長420〜490nmの青色光に対する吸収係数が比較的小さいため、調整部品の内部まで青色光が入射しやすい特性をもっている。そのため、調整部品のうち、青色光が入射した部分だけが発光するのではなく、調整部品全体が発光し、即ち、その調整部品の形状、大きさに応じて広範囲での発光源となり、発光装置において補助的に光の色度や演色性を調整するものとして好適なものとなる。
【0029】
[発光装置]
次に、本発明に係る発光装置について説明する。
本発明の発光装置は、光源からの波長420〜490nmの青色光を含む励起光を波長変換する調整部品を有する発光装置に関するものであり、該発光装置において、光源の周辺位置等に、調整部品を配置することで、LED発光装置としての演色性や色度が改善されるものである。
即ち、本発明の発光装置は、波長420〜490nmの青色光を有する光源をもつ発光装置において、光源の周辺部のような発光装置としての発光を阻害しないような位置に調整部品が配置されるものである。これにより、発光スペクトルに波長約600〜660nmの赤色波長領域に発光もしくは最大発光ピークを有する蛍光を加えて、演色性や色度の改善がなされる。この際、調整部品は光源から側方に発生する光などで励起されることが多く、照明器具の照度低下となる、光源から光軸方向に出射される励起光の減衰を引き起こすことはほとんどなく、発光効率の低下を抑えられる。
以下、本発明の発光装置を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0030】
図1は、本発明に係る発光装置の第1の実施形態における構成を示す斜視図であり、LED投光機の実施形態を示すものである。
本発明に係る発光装置10は、
図1に示すように、青色光を出射するLED光源11と、LED光源11から光が照射される領域のうち、その光軸Aに平行な光の照射領域から外れた位置に配置される本発明の調整部品13と、LED光源11の光軸A上に配置される、青色光を吸収して調整部品13に含まれる蛍光体とは波長の異なる光を発する蛍光体を含む波長変換部材12とを備える。光軸に平行な光の照射領域は、具体的には、LED光源の発光面の外周を通る、発光軸と平行な周面を仮想した場合の、該周面とその内側の領域とすることができる。また、調整部品13は、LED光源11と波長変換部材12との間の、励起光が通過する領域を遮らない位置、例えば、LED光源11の発光方向前方以外の位置(例えば、側方又は後方)に設けることが好ましい。
【0031】
ここで、LED光源11は、発光装置10に配置される波長変換部材12及び調整部品13の蛍光体を励起することが可能な発光光を含む必要があり、青色光、好ましくは発光波長420〜490nm程度の青色光、又は該青色光成分を含む光を出射する。また、LED光源11は、
図1では1つのLEDチップからなる構成を示しているが、LED照明用としては、複数のLEDチップからなるものでもよい。
【0032】
波長変換部材12は、黄色蛍光体又は緑色蛍光体が分散された樹脂成型体であり、例えばY
3Al
5O
12:Ce
3+やLu
3Al
5O
12:Ce
3+等の従来公知
の蛍光体を熱可塑性樹脂に練り込ん
だ波長変換部材である。
【0033】
波長変換部材12における蛍光体の含有量は、入射する青色光の光量、黄色波長領域の光の発光量、青色光の透過率等を考慮して決定され、Y
3Al
5O
12:Ce
3+蛍光体を練り込んだ場合は、厚み2mmの板材の場合、練り込み濃度は0.5〜5質量%が好ましく、2〜4質量%がより好ましい。
【0034】
調整部品13は、上述した本発明の調整部品であり、その大きさ、配置はLED光源11の発光強度分布に基づいて、発光する赤色波長成分の光(赤色光)の量と、発光装置としての出射光の光量との兼ね合いから決定するとよい。調整部品13の位置は、
図2に示すように、LED光源11の光軸Aに対する角θで表され、角θは、10〜180°であることが好ましく、30〜90°がより好ましく、60〜90°が更に好ましい。出射角10°未満の位置では、発光装置10の出射光の光量を低下させるおそれがある。
【0035】
また、調整部品13は、
図2に示すように、LED光源11の背後に配置される反射部材15上に配することが好ましい。
【0036】
また、調整部品13は、発光装置10の出射光の色度を均一にするために、LED光源11の光軸Aに対して円周上に均等に配置されることが好ましい。例えば、
図1に示すように、複数の小型円盤状の調整部品13を光軸Aに対して同一円周上に均等配分するとよい。あるいは、リング状(環状)の調整部品13を、光軸Aにそのリング中心を一致させるように配置するとよい。これにより、発光装置10の光軸A方向に出射される光に対して、調整部品13がその出射光の周囲で均等に発光し、発光装置10から出射される光として均一な演色性及び色度を得やすい。
【0037】
本発明の発光装置10によれば、波長変換部材12及び調整部品13に含まれる双方の蛍光体を、同じLED光源11からの励起光が励起する構成となっていることから、複数の白色LED光源をもつ発光装置におけるようなLEDの出力のばらつきによる発光色のむらは生じず、演色性や色度が安定し、かつ均一な発光が得られる。また、本発明の発光装置10によれば、調整部品13はLED光源11から側方に発生する光や波長変換部材12で反射された光で励起されることとなり、照明器具の照度低下となるLED光源11から光軸方向に出射される励起光や波長変換部材12による蛍光を減衰させることはほとんどなく、従来と比べても発光効率を低下させることはない。また、発光装置10の組み立ての最終段階で、目的の色度の発光に対応させて、波長変換部材12及び調整部品13を組み付ければよく、簡単な調整で出射光の演色性及び色度の改善が可能となる。更に、調整部品13はLED光源と空間的に離れているため、調整部品13が高温になりにくく、含有される蛍光体の特性変動が小さいという長所をもつ。
【0038】
図3は、本発明に係る発光装置の第1の実施形態における他の構成を示す斜視図である。
本発明に係る発光装置10Aは、
図3に示すように、青色波長成分を含む擬似白色光を出射するLED光源11Aと、該LED光源11Aから光が照射される領域のうち、その光軸Aに平行な光の照射領域から外れた位置に配置される本発明の調整部品13とを備える。調整部品13は、LED光源11Aから発光した光が発光装置10Aの外側に照射される方向を避けて、例えば、LED光源11Aの発光方向前方以外の位置(例えば、側方又は後方)に設けることが好ましい。
【0039】
ここで、LED光源11Aは、例えば、波長420〜490nm、好ましくは440〜470nmの青色光を発光する青色LEDと、青色LED表面に黄色蛍光体又は緑色蛍光体を含む樹脂塗料を塗布した波長変換部とからなる色温度4000K以上の擬似白色光を出射する光源である。
【0040】
調整部品13及び反射部材15は、
図1に示すものと同等であり、調整部品13は、LED光源11Aの光軸Aに対する角θが、
図1に示すものと同等の位置に配置されることが好ましい。
【0041】
上記構成の発光装置10Aにおいて、LED光源11Aから白色光が出射されると共に、LED光源11Aの側方に発せられる白色光が調整部品13に入射し、白色光に含まれる青色光が調整部品13によって波長約600〜660nmの赤色波長領域に発光もしくは最大発光ピークを有する赤色光に変換される。その結果、発光装置として、青色光、黄色光、赤色光が所定の比率で出射されることになり、演色性及び色度の改善された白色光が得られることになる。
【0042】
次に、
図4に、本発明に係る発光装置の第2の実施形態における構成を示す。
図4では、中央から右側の部分の一部において内部の構成がわかるような透視図としてある。
本発明に係る発光装置20は、
図4に示すように、直管型蛍光灯タイプの形状をしており、青色光を出射するLED光源21、青色光を吸収して光を発する蛍光体を含む波長変換部材22、調整部品23を備える。他に、反射部材25をもつこともある。LED光源21及び調整部品23は、直管長手方向に交互に配置されている。また、直管端部の電極26からLED光源21に電力が供給される。
【0043】
上記構成の発光装置20では、LED光源21から青色光が出射されると、青色光が波長変換部材22に入射し、青色光の一部が波長変換部材22に含まれる蛍光体に吸収され、黄色波長領域(又は緑色波長領域)を含む光(黄色光)に変換され、波長変換部材22を透過した残りの青色光と共に出射される。一方、調整部品23には、隣接するLED光源21の側方に発せられる青色光及び波長変換部材22で反射された青色光が入射し、これらの青色光が調整部品23に含まれる赤色蛍光体に吸収され、赤色波長領域を含む光(赤色光)に変換され、光軸方向(直管外側方向)に出射される。その結果、発光装置20として、青色光、黄色光、赤色光が所定の比率で出射されることになり、温かみのある擬似白色光が得られる。
【0044】
本発明の発光装置20によれば、波長変換部材22及び調整部品23に含まれる双方の蛍光体を、同じLED光源21からの励起光が励起する構成となっていることから、発光波長の異なる複数のLED光源に基づいた発光装置におけるようなLEDの出力のばらつきによる発光色の違いは生じず、色度が安定し、かつ均一な発光が得られる。また、本発明の発光装置20によれば、調整部品23はLED光源21から側方に発生する光や波長変換部材22で反射された光で励起されることとなり、照明器具の照度低下となるLED光源21から光軸方向に出射される励起光や波長変換部材22による蛍光を減衰させることはほとんどなく、従来と比べても発光効率を低下させることはない。また、発光装置20の組み立ての最終段階で、目的の色度の発光に対応させて、蛍光体含有量を調整した調整部品23を組み付ければよく、簡単な調整で自由度の高い発光調色が可能となる。更に、波長変換部材22及び調整部品23がLED光源(発光チップ)と空間的に独立し、離れているため、高温になりにくく、含有される蛍光体の特性が安定し、長寿命となる。
【0045】
次に、
図5に、本発明に係る発光装置の第3の実施形態における構成を示す。
図5では、中央から左側の部分の一部において内部の構成がわかるような透視図としてある。
本発明に係る発光装置30は、
図5に示すように、電球タイプのものであり、青色光を吸収して調整部品33に含まれる蛍光体とは波長の異なる光を発する蛍光体を含む波長変換部材32からなる電球カバーと、該電球カバー内部に収納される、支持部材を兼ねた上部が細くなった円柱状の反射部材35、青色光を出射するLED光源31及び本発明の板状の調整部品33とを備える。また、LED光源31及び調整部品33は、反射部材35の外周面上であって、反射部材35の外周方向に交互に配置されている。この場合、LED光源31それぞれの光軸は、反射部材35の外周面に対して垂直方向となっており、調整部品33の配置は、LED光源31から光が照射される領域のうち、その光軸に平行な光の照射領域から外れた位置となっており、調整部品33は、LED光源31の発光方向の側方乃至後方に設けられている。また、口金36からLED光源31に電力が供給される。
【0046】
上記構成の発光装置30では、LED光源31から青色光が出射されると、青色光が波長変換部材32に入射し、青色光の一部が波長変換部材32に含まれる蛍光体に吸収され、黄色波長領域(又は緑色波長領域)を含む光(黄色光又は緑色光)に変換され、波長変換部材32を透過した残りの青色光と共に出射される。一方、調整部品33には、隣接するLED光源31の側方に発せられる青色光及び波長変換部材32で反射された青色光が入射し、これらの青色光が調整部品33に含まれる赤色蛍光体に吸収され、赤色波長領域を含む光(赤色光)に変換され、光軸方向(電球カバー外側方向)に出射される。その結果、発光装置30として、青色光、黄色光、赤色光が所定の比率で出射されることになり、演色性の高い白色光が得られる。
【0047】
本発明の発光装置30によれば、波長変換部材32及び調整部品33に含まれる双方の蛍光体を、同じLED光源31からの励起光が励起する構成となっていることから、発光波長の異なる複数のLED光源に基づいた発光装置におけるようなLEDの出力のばらつきによる発光色の違いは生じず、色度が安定し、かつ均一な発光が得られる。また、本発明の発光装置30によれば、調整部品33はLED光源31から側方に発生する光や波長変換部材32で反射された光で励起されることとなり、照明器具の照度低下となるLED光源31から光軸方向に出射される励起光や波長変換部材32による蛍光を減衰させることはほとんどなく、従来と比べても発光効率を低下させることはない。また、発光装置30の組み立ての最終段階で、目的の色度の発光に対応させて、蛍光体含有量を調整した調整部品33を組み付ければよく、簡単な調整で自由度の高い調色が可能となる。更に、波長変換部材32及び調整部品33がLED光源(発光チップ)と空間的に独立し、離れているため、高温になりにくく、含有される蛍光体の特性が安定し、長寿命となる。
なお、ここでは白色光を得る発光装置について説明したが、本発明の調整部品は、発光成分に波長420〜490nmの青色光を含む青色LED光源を有した青色光の発光装置への適用も可能である。
【0048】
本発明の発光装置は、青色LED光源から気体層又は真空層を介して、離れた場所に波長変換部材を配設したリモートフォスファー方式の発光装置として好適である。リモートフォスファーは、面発光で放射角が大きいなど、一般的なLED発光装置とは異なる配光特性を有しており、広範囲を照らしたい照明器具などに特に好適である。
【実施例】
【0049】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0050】
[実施例1〜4、比較例1〜4]
以下の条件で、LED発光装置を作製した。
二軸押出機を用いて、透明ポリプロピレンペレット4.5kgに、粒径D50値17.6μm、D90値30.2μmのK
2(Si
0.97Mn
0.03)F
6の粉体0.5kgの練り込みを行い、K
2(Si
0.97Mn
0.03)F
6粉体の含有量を10質量%としたK
2(Si
0.97Mn
0.03)F
6含有ポリプロピレンペレットを得た。
次に、得られたK
2(Si
0.97Mn
0.03)F
6含有ポリプロピレンペレットを用いて、20t横型射出成型機により成型を行い、内径90mm、外径96mm、厚み10mmのリング状の赤色系の調整部品を得た。
また、ポリカーボネート樹脂に、粒径D50値50μmのY
3Al
5O
12:Ce粉体を含有量3〜10質量%で練り込んだペレットを作製し、これを原料として射出成型を行い、厚み2mm、直径100mmの円盤状の黄色系の波長変換部材を得た。
図6に示すように、得られた調整部品43を、LED投光機(GL−RB100(Cree社製2W型青色LEDチップXT−Eロイヤルブルー6個使用)、日野電子(株)製)4のLEDチップ(LED光源)41設置面であってLED光源41の光軸に対して円周上に設置した。これにより、調整部品43のリング内に6個のLEDチップ41が収まるようになる。このとき、調整部品43は、LED光源41の光軸に対して出射角90°の位置に配置されることになる。また、上記波長変換部材42をLED投光機4の前面(発光方向L)の光軸上にLEDチップ41から15mm離間して配置し、LED発光装置とした。また、比較用として、調整部品を配置せず、波長変換部材のみを配置したLED発光装置も準備した。
作製したLED発光装置を用いて白色スクリーンに対して20cm離れた位置から白色光を照射した状態で、分光放射照度計CL−500A(コニカミノルタオプティクス(株)製)により白色光の照度、色温度、平均演色評価数Ra、特殊演色評価数△R9を測定し、色再現性の良否を評価した。その結果を表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
更に、上記ペレットを用いて、実施例3の調整部品と、比較例3の波長変換部材について、厚み2mm、40mm角の板状の調整部品及び波長変換部材を作製し、青色LED(波長460nm)からの光を調整部品及び波長変換部材の40mm角の面に対して垂直方向から照射し、照射面の裏側から見た調整部品及び波長変換部材の発光の状態を目視で確認した。発光状態の斜視像を
図7に示す。
図7(B)の比較例3の波長変換部材の場合、励起光である青色光が照射された部分(図の右側部)のみが発光して輝いているのに対して、
図7(A)の実施例3の調整部品の場合、励起光である青色光が照射された部分と共に、その周縁部(図の中央部から左側部)も発光しており、調整部品の発光範囲が広いことがわかる。
【0053】
以上のように、本発明の調整部品を用いたLED発光装置によれば、黄色系波長変換部材のみを用いたLED発光装置の平均演色評価数Ra及び特殊演色評価数△R9を大きく改善することができる。また、調整部品を用いることで、照度が若干向上する傾向が見られた。
【0054】
[実施例5〜12、比較例5]
以下の条件で、LED発光装置を作製した。
二軸押出機を用いて、透明ポリプロピレンペレットに、粒径D50値17.6μm、D90値30.2μmのK
2(Si
0.97Mn
0.03)F
6の粉体の練り込みを行い、K
2(Si
0.97Mn
0.03)F
6粉体の含有量を12質量%としたK
2(Si
0.97Mn
0.03)F
6含有ポリプロピレンペレットを得た。
次に、得られたK
2(Si
0.97Mn
0.03)F
6含有ポリプロピレンペレットを用いて、20t横型射出成型機により成型を行い、厚み2mm、25mm×30mm角の板状の調整部品を得た。
また、ポリメタクリル酸メチル樹脂に、粒径D50値50μmのY
3Al
5O
12:Ce粉体を含有量4質量%で練り込んだペレットを作製し、これを原料として射出成型を行い、厚み2mm、直径100mmの円盤状の黄色系の波長変換部材を得た。
得られた調整部品を、LED投光機(GL−100、入力15W、発光波長450nm、日野電子(株)製)のLEDチップ設置面に1〜8枚設置した。このとき、調整部品は、LED光源の光軸に対して出射角90°の位置に配置した。また、上記波長変換部材をLED投光機の前面の光軸上にLEDチップから40mm離間して配置し、LED発光装置とした。また、比較用として、調整部品を配置せず、波長変換部材のみを配置したLED発光装置も準備した。
作製したLED発光装置を用いて白色スクリーンに対して20cm離れた位置から白色光を照射した状態で、分光放射照度計CL−500A(コニカミノルタオプティクス(株)製)により色温度、偏差(Δuv)、平均演色評価数Ra、特殊演色評価数△R9を測定し、色再現性の良否を評価した。その結果を表2に示す。また、これらの発光スペクトルを
図8に示す。
【0055】
【表2】
【0056】
以上のように、本発明の調整部品を増やせば、平均演色評価数Ra及び特殊演色評価数△R9をより改善することができ、
図8に示されるように、黄色光の光量をほとんど変化させることなく、赤色光の光量を増加させることが可能であることがわかる。
【0057】
なお、これまで本発明を、実施形態をもって説明してきたが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。