(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
発光成分に波長420〜490nmの青色光を含むLED光源を有した青色光の発光装置又は擬似白色光の発光装置であって、青色光を吸収して赤色光を発光する蛍光体を含有した演色性向上部材が、上記LED光源から光が照射される領域のうち、LED光源の発光面の外周を通る、発光軸と平行な周面を仮想した場合の、該周面とその内側の領域から外れた位置に、上記LED光源から離間し、かつ空間的に独立して配置されていることを特徴とする発光装置。
上記演色性向上部材及び上記LED光源の背後に設けられた、該演色性向上部材からの光を反射する反射板、又はランプシェードを具備し、上記反射板周辺又は上記ランプシェード周辺に、上記演色性向上部材が配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の発光装置。
上記演色性向上部材及び上記LED光源の背後に設けられた、該演色性向上部材からの光を反射する反射板を具備し、該反射板上に上記演色性向上部材が配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の発光装置。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオードは、現在利用可能な光源の中で最も効率的な光源の一つである。このうち、白色発光ダイオードは、白熱電球、蛍光灯、CCFL(Cold Cathode Fluorescent Lamp)バックライト、ハロゲンランプなどに代わる次世代光源として急激に市場を拡大している。白色LED(Light Emitting Diode)を実現する構成の一つとして、青色発光ダイオード(青色LED)と、青色光励起によって、より長波長、例えば黄色や緑色に発光する蛍光体との組み合わせによるLED発光装置(LED照明)が実用化されている。
【0003】
その中でも現在主流となっているのは、青色LEDと黄色発光する蛍光体(以下、黄色蛍光体という)による擬似白色LED装置であり、この黄色蛍光体としては、Y
3Al
5O
12:Ce、(Y,Gd)
3(Al,Ga)
5O
12:Ce、(Y,Gd)
3Al
5O
12:Ce、Tb
3Al
5O
12:Ce、CaGa
2S
4:Eu、(Sr,Ca,Ba)
2SiO
4:Eu、Ca−α−サイアロン(SiAlON):Eu等が知られている。
【0004】
このような擬似白色LED装置においては、例えば、青色LEDの前面に密着する形で黄色発光蛍光体粒子を分散したシリコーン樹脂又はガラスよりなる蛍光部材(波長変換部材)を配置することで、入射してくる波長450nm前後の青色光により中心波長570nm前後(波長510〜600nm)の黄色蛍光を発生させ、波長変換部材を透過した青色LEDからの光と合わせることで白色光としているものが多い。
【0005】
しかしながら、黄色蛍光体として一般的なY
3Al
5O
12:Ceを用いた擬似白色LED装置からの光には、波長500nm近傍の緑色波長成分、あるいは波長600nm以上の赤色波長成分は僅かであり、結果的にこのような擬似白色LED装置の出射光の演色性は自然光に比べて劣るものとなっている。
【0006】
そこで、従来より、白色LED装置の演色性の改善に関し、出射光に温かみや優しさをもたらす赤色発光特性の改善が検討されており、そのひとつの方法として、擬似白色LED装置の波長変換部材に黄色蛍光体、又は緑色発光する蛍光体(以下、緑色蛍光体という)より、長波長域の蛍光成分が多い、Sr−CaAlSiN
3:Eu、又はMn賦活フッ化4価金属塩蛍光体等の赤色発光する蛍光体(以下、赤色蛍光体という)を更に混合する方法(例えば、特開2009−280763号公報(特許文献1)、特開2010−045328号公報(特許文献2)、特開2010−093132号公報(特許文献3)、国際公開第2009/110285号(特許文献4))が挙げられる。
【0007】
しかしながら、黄色蛍光体又は緑色蛍光体と赤色蛍光体とを混合する方法では、赤色蛍光体の追加分だけ発光効率が低下し、赤色蛍光体の種類によっては黄色蛍光体からの黄色発光を吸収してしまい、発光効率が更に損なわれるという問題がある。また、広く行われているシリコーン樹脂又はエポキシ樹脂に両蛍光体を混合分散させて青色LED前面に塗布して波長変換部を形成するポッティング法を適用して波長変換部材を製作した場合、各々のLED上の蛍光体の分散状態の違いから、LEDごとの波長変換の割合が違ってしまい、歩留よく均一な発光色を得ることは困難である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る発光装置について説明する。
本発明の発光装置は、LED光源からの励起光を蛍光体により波長変換することで白色発光するLED照明具に関するものである。
従来のこの種の発光装置としては、光源となるLEDチップの前面の封止樹脂にY
3Al
5O
12:Ce
3+等の黄色蛍光体を混ぜ込んで、黄色系の波長変換部とした白色LED装置が広く用いられている。また、LED装置の中には、LED装置の照明具としての配光特性を改善する目的で、独立した大面積の黄色系波長変換部材を、青色発光LEDチップの前面に数〜数十mmだけ離間させて配置するリモートフォスファーと呼ばれる構造のものもある。
このリモートフォスファー構造の発光装置では、一般に、LED光源から側方に発する励起光、並びに励起光のうち波長変換部材で反射された光は、LED光源の背後に配置した反射板によって反射されて、波長変換部材に再入射する構成となっている。
本発明者らは、まず、このようなリモートフォスファー構造の発光装置と、赤色蛍光体を含む演色性向上部材とを組み合わせて、LED照明器具としての演色性を改善することを試みた。その結果、リモートフォスファー構造の発光装置において、LEDの背面に反射板が設けられているLED光源の発光軸に平行な光の照射領域から外れた位置等に、演色性向上部材を配置することで、LED照明器具としての演色性が改善されることを見出した。
更に、本発明者らは、青色LEDチップ上に蛍光体を配置した構造の発光装置においても、赤色蛍光体を含む演色性向上部材を組み合わせて、LED照明器具としての演色性を改善することを試みた。その結果、青色LEDチップ上に蛍光体を配置した構造の発光装置においても、LED光源の発光軸に平行な光の照射領域から外れた位置等に演色性向上部材を配置することで、LED照明器具としての演色性が改善されることを見出した。
即ち、本発明に係る発光装置は、少なくとも青色波長成分を含む光を出射するLED光源を有し、青色波長成分を含む白色光を出射する発光装置において、青色波長成分の光を吸収して赤色波長成分を含む光を発光する蛍光体を含有した演色性向上部材を、上記LED光源から光が照射される領域のうち、その発光軸に平行な光の照射領域から外れた位置に配置することを特徴とするものである。発光軸に平行な光の照射領域は、具体的には、LED光源の発光面の外周を通る、発光軸と平行な周面を仮想した場合の、該周面とその内側の領域とすることができる。
詳しくは、発光装置として、青色LED光源と黄色系(又は緑色系)の波長変換部材を数〜数十mm離間させて配置し、LED光源の周辺部のような、発光装置から直接前方に射出される励起光をほとんど遮らないような位置に、演色性向上部材を配置し、発光スペクトルに赤色成分を加えて、自然な色再現を可能とするものである。またこの際、演色性向上部材は、LED光源から側方に発生する光や波長変換部材で反射された光で励起されることとなり、照明器具の照度低下となるLED光源から発光軸方向に出射される励起光の減衰、即ち、色度調整による発光量の低下が僅かである。
更には、発光装置として、白色LED光源の周辺部のような、発光装置から直接前方に射出される励起光をほとんど遮らないような位置に、演色性向上部材を配置し、発光スペクトルに赤色成分を加えて、自然な色再現を可能とするものである。またこの際、演色性向上部材は、LED光源から側方に発生する光や波長変換部材で反射された光で励起されることとなり、照明器具の照度低下となるLED光源から発光軸方向に出射される励起光の減衰、即ち、色度調整による発光量の低下が僅かである。
以下、本発明の発光装置を具体的に説明する。
【0015】
図1は、本発明に係る発光装置の第1の実施形態における構成を示す斜視図であり、LED投光機の実施形態を示すものである。
本発明に係る発光装置10は、
図1に示すように、青色光を出射するLED光源11と、LED光源11から光が照射される領域のうち、その発光軸Aに平行な光の照射領域から外れた位置に配置される演色性向上部材13と、LED光源11の発光軸A上に配置される、青色光を吸収して演色性向上部材13に含まれる蛍光体とは波長の異なる光を発する蛍光体を含む波長変換部材12とを備える。演色性向上部材13は、LED光源11と波長変換部材12との間の、励起光が通過する領域を遮らない位置、例えば、LED光源11の発光方向前方以外の位置(例えば、側方又は後方)に設けることが好ましい。
【0016】
ここで、LED光源11は、発光装置10に配置される波長変換部材12及び演色性向上部材13の蛍光体を励起することが可能な発光光を含む必要があり、青色光、好ましくは発光波長420〜490nm、より好ましくは440〜470nm程度の青色光を出射するものがよい。また、LED光源11は、
図1では1つのLEDチップからなる構成を示しているが、LED照明用としては、複数のLEDチップからなるものも好ましい。
【0017】
波長変換部材12は、黄色蛍光体又は緑色蛍光体が分散された樹脂成型体やガラス封止されたものが好ましく、例えば、Y
3Al
5O
12:Ce
3+やLu
3Al
5O
12:Ce
3+等の従来公知
の蛍光体を熱可塑性樹脂に練り込ん
だ波長変換部材であることが好ましい。
【0018】
本発明で用いる波長変換部材12における蛍光体の含有量は、入射する青色光の光量、黄色又は緑色波長領域の光の発光量、青色光の透過率等を考慮して決定され、例えば、Y
3Al
5O
12:Ce
3+蛍光体を含む厚み2mmの波長変換部材の場合、1〜4質量%が好ましい。
【0019】
演色性向上部材13は、青色光を吸収して赤色光を発光する赤色蛍光体を含有するものであり、青色光を出射するLED光源11からの青色光を吸収して赤色光を発光し、発光装置の演色性能を向上するものである。
【0020】
演色性向上部材13は、下記式(1)
A
2(M
1-xMn
x)F
6 (1)
(式中、MはSi、Ti、Zr、Hf、Ge及びSnから選ばれる1種又は2種以上の4価元素、AはLi、Na、K、Rb及びCsから選ばれ、かつ少なくともNa及び/又はKを含む1種又は2種以上のアルカリ金属であり、xは0.001〜0.3、好ましくは0.001〜0.1である。)
で表される複フッ化物蛍光体を含んでなるものであることが好ましい。
【0021】
ここで用いる複フッ化物蛍光体は、上記式(1)で表される赤色蛍光体であり、A
2MF
6で表される複フッ化物の構成元素の一部がマンガンで置換された構造を有するマンガン賦活複フッ化物蛍光体である。このマンガン賦活複フッ化物蛍光体において、賦活元素のマンガンは、特に限定されるものではないが、A
2MF
6で表される4価元素のサイトにマンガンが置換したもの、即ち、4価のマンガン(Mn
4+)として置換したものが好適である。この場合、A
2MF
6:Mn
4+と表記してもよい。このうち、複フッ化物蛍光体が、K
2(Si
1-xMn
x)F
6(xは上記と同じ)で表されるマンガン賦活ケイフッ化カリウムであることが特に好ましい。
【0022】
このようなマンガン賦活複フッ化物蛍光体は、波長420〜490nm、好ましくは波長440〜470nmの青色光により励起されて、波長600〜660nmの範囲内に発光ピーク、あるいは最大発光ピークを有する赤色光を発する。また、該複フッ化物蛍光体は、波長500nm前後の黄色光の吸収率が低いという特徴をもつ。
【0023】
なお、上記式(1)で表される複フッ化物蛍光体は、従来公知の方法で製造したものでよく、例えば、金属フッ化物原料をフッ化水素酸に溶解又は分散させ、加熱して蒸発乾固させて得たものを用いるとよい。
【0024】
また、演色性向上部材13は、上記複フッ化物蛍光体からなるものが好ましい。この場合、例えば、粒子状の上記複フッ化物蛍光体を基板上に平面的に、又は立体的に充填して形成したものであればよく、その形状も発光装置10に適用可能なものであれば特に制限はない。
【0025】
また、演色性向上部材13は、上記複フッ化物蛍光体を分散した樹脂成型体であることが好ましい。この場合の演色性向上部材13の形状は、板状、円盤状、リング状、ハニカム状等、発光装置10に適用可能な形状であれば特に制限はない。
【0026】
蛍光体は、粒子状であることが好ましく、その粒径としては、粒度分布における体積累計50%の粒径D50が、好ましくは2μm以上200μm以下であり、より好ましくは10μm以上60μm以下である。D50値が2μm未満の場合、蛍光体の内部量子効率の低下及び吸収率の低下による演色性向上の効果の低下のおそれがある。D50の値が200μmを超える場合、演色性向上部材製造時に蛍光体粒子の分散性が不均一になりやすい。なお、本発明における粒径の測定方法は、例えば、空気中に対象粉末を噴霧、あるいは分散浮遊させた状態でレーザ光を照射して、その回折パターンから粒径を求める乾式レーザ回折散乱法が好ましい。
【0027】
また、演色性向上部材13を、複フッ化物蛍光体を分散した樹脂成型体からなるものとした場合、該演色性向上部材13におけるマンガン賦活複フッ化物蛍光体の含有量、即ち、該蛍光体の樹脂に対する含有量は、好ましくは1質量%以上60質量%以下であり、より好ましくは3質量%以上20質量%以下、特に好ましくは5質量%以上10質量%以下である。蛍光体含有量が60質量%超となると、演色性向上部材としての機械的強度の低下が懸念される。一方、1質量%未満では、蛍光体含有量の少なさから、演色性向上効果が著しく小さくなってしまう。
【0028】
演色性向上部材13に用いる樹脂としては、特に、限定しないが、酸、アルカリへの化学的耐性が高く、防湿性にも優れている熱可塑性樹脂が好ましい。更に、熱可塑性樹脂では、射出成型などの方法で、容易に演色性向上部材を製造できる利点がある。
【0029】
また、熱可塑性樹脂を選択する場合、250℃を超えるとマンガン賦活複フッ化物蛍光体が熱分解する可能性があるので、演色性向上部材の製造時の温度は250℃以下であることが好ましく、250℃以下で成型可能な熱可塑性樹脂を選択することが好ましい。
【0030】
演色性向上部材13に好ましい光透過性の熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン等のポリオレフィン、汎用ポリスチレン(GPPS)等のポリスチレン、及びスチレン・マレイン酸共重合体、スチレン・メタクリル酸メチル共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)等のスチレン共重合体などが挙げられ、これらの中から選ばれる1種又は2種以上を用いることが好ましい。これらによれば、蛍光体の良好な混合が可能であり、化学的耐性が高く、耐湿性にも優れている演色性向上部材を製造することができる。
【0031】
また、この熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン及び/又はポリスチレンを40質量%以上含む熱可塑性樹脂であることがより好ましい。更に、ポリプロピレンとしては、エチレン単位を共重合体中に2質量%以上6質量%以下の少量含有するランダムコポリマータイプのものが好ましく、JIS K 7210で規定されるメルトフローレート(MFR)が5〜30g/10min程度の射出成型可能なものがより好ましい。
【0032】
更に、演色性向上部材13の樹脂には、従来の熱可塑性プラスチック材と同様に、酸化防止剤、光安定化剤、紫外線吸収剤をはじめとした安定化剤並びに成型滑剤を用途に応じて、0.1〜0.3質量%の範囲で配合してもよい。
【0033】
本発明では、上記熱可塑性樹脂、その他助剤等を原料樹脂とし、マンガン賦活複フッ化物蛍光体を粉体として、二軸混練押出機に投入して、加熱した原料樹脂にこの粉体を練り込む形で両者を混練し、用途に応じた任意の形状に熱成型することが好ましい。例えば、両者を混練し、そのまま演色性向上部材に適した目的の厚み、形状に成型してもよいし、とりあえずペレット状に成型しておき、必要なときにこのペレットから目的の厚み、形状の演色性向上部材に成型してもよい。
【0034】
演色性向上部材13の厚みは、0.05mm以上50mm以下が好ましい。厚み0.05mm未満では、演色性向上部材13の機械強度を維持することが困難な場合があり、50mm超では、演色性向上部材13に入射した光の樹脂による損失が過大となるおそれがあるが、上記範囲を超えた厚みでも使用できないわけではない。
【0035】
このようにして得られた演色性向上部材13は、マンガン賦活複フッ化物蛍光体粒子のような赤色蛍光体が変質することなく所定の熱可塑性樹脂と混合されたものとなる。また、演色性向上部材13は、波長420〜490nmの青色光により、波長約600〜660nm赤色光を発することから、演色性向上部材13を白色LED装置に適用することで、その発光スペクトルに赤色光が加わり、演色性の向上が可能となる。また、演色性向上部材13では、上記マンガン賦活複フッ化物蛍光体を用いた場合、該マンガン賦活フッ化物蛍光体は青色光に対する吸収率がSr−CaAlSiN
3:Eu
2+蛍光体などの窒化物蛍光体に比べて低いため、青色光が入射した部分だけが発光するのではなく、青色光が入射した部分が該青色光の一部を吸収して発光しつつ、残りの青色光を透過、散乱して周囲の蛍光体に供給するので、演色性向上部材13全体が発光する。即ち、演色性向上部材13の形状、大きさに応じて面発光となり、発光装置10において補助的に光の色度を調整するものとして好適なものとなる。この場合、赤色蛍光体としてSr−CaAlSiN
3:Eu
2+蛍光体などの窒化物、酸窒化物蛍光体を用いた場合は、蛍光体の吸収率が高いため、青色光の入射した部分のみが光るため、演色性向上部材としての効果は低いものになってしまう。
【0036】
演色性向上部材13の配置は、LED光源11の発光強度分布に基づいて、発光する赤色波長成分の光(赤色光)の量と、発光装置としての出射光の光量との兼ね合いから決定するとよい。演色性向上部材13の位置は、
図2に示すように、LED光源11の発光軸Aに対する出射角θで表され、例えば出射角θは、10°以上120°以下が好ましく、30°以上90°以下がより好ましく、60°以上90°以下が更に好ましい。出射角10°未満の位置では、発光装置10の出射光の光量を低下させるおそれがあり、120°超の位置では、色度調整用の赤色光が不足する場合がある。
また、発光装置10は、演色性向上部材13及びLED光源11の背後に演色性向上部材13からの光を反射する反射板15を有していることが好ましく、例えば、演色性向上部材13は、
図2に示すように、LED光源11の背後に配置される反射板15上に配することが好ましい。
【0037】
その他、発光の均質化のためには、演色性向上部材13は、LED光源11の周辺に発光軸Aを囲むように、特に、発光軸Aに対して均等に配置されることが好ましい。例えば、
図1に示すように、複数の小型円盤状の演色性向上部材13を発光軸Aに対して同一円周上に均等配分するとよい。あるいは、リング状(環状)の演色性向上部材13を発光軸Aにそのリング中心を一致させるように配置するとよい。これにより、発光装置10の発光軸A方向に出射される光に対して、演色性向上部材13からの赤色光がその出射光の周囲から均等に出ることになり、発光装置として好ましい発光が得られる。
【0038】
本発明の発光装置10によれば、波長変換部材12及び演色性向上部材13に含まれる双方の蛍光体を、同じLED光源11からの励起光が励起する構成となっていることから、複数のLED光源を使用する際に生じやすいLEDの出力や発光色のばらつきによる発光むらを生じにくく、色度が安定し、かつ均一な発光が得られるという効果がある。また、本発明の発光装置10によれば、演色性向上部材13はLED光源11から側方に発生する光や波長変換部材12で反射された光で励起されることとなり、照明器具の照度低下となるLED光源11から発光軸方向に出射される光や波長変換部材12による蛍光を減衰させることはほとんどない。また、発光装置10の組み立てにおいては、目標とする色度や演色性に応じて、蛍光体含有量を調整した波長変換部材12及び演色性向上部材13を組み付ければよく、簡単な調整で自由度の高い調整が可能となる。更に、波長変換部材12及び演色性向上部材13がLED光源(発光チップ)と空間的に独立し、離れているため、波長変換部材12及び演色性向上部材13が高温になりにくく、ハイパワーの発光装置に適している。
【0039】
図3は、本発明に係る発光装置の第1の実施形態における他の構成を示す斜視図である。
本発明に係る発光装置10Aは、
図3に示すように、青色波長成分を含む白色光を出射するLED光源11Aと、該LED光源11
Aから光が照射される領域のうち、その発光軸Aに平行な光の照射領域から外れた位置に配置される演色性向上部材13とを備える。演色性向上部材13は、LED光源11Aから発光した光が発光装置10Aの外側に照射される方向を避けて、例えば、LED光源11Aの発光方向前方以外の位置(例えば、側方又は後方)に設けることが好ましい。
【0040】
ここで、LED光源11Aは、例えば、波長420〜490nm、好ましくは440〜470nmの青色光を発光する青色LEDと、青色LED表面に黄色蛍光体又は緑色蛍光体を含む樹脂塗料を塗布した波長変換部とからなる擬似白色光を出射する光源である。
【0041】
演色性向上部材13及び反射板15は、
図1に示すものと同様のものであり、演色性向上部材13は、LED光源11Aの発光軸に対して、出射角θが、
図1に示すものと同等の位置に配されることが好ましい。
【0042】
上記構成の発光装置10Aにおいて、LED光源11Aから白色光(例えば、青色光及び黄色光による白色光)が出射されると共に、LED光源11Aの側方に発せられる白色光が演色性向上部材13に入射し、白色光中の青色光成分が赤色光に変換される。その結果、発光装置として、赤色光が所定の比率で出射されることになり、演色性のより向上した白色光が得られる。
【0043】
次に、
図4に、本発明に係る発光装置の第2の実施形態における構成を示す。
図4では、中央から右側の部分の一部において内部の構成がわかるような透視図としてある。
本発明に係る発光装置20は、
図4に示すように直管型であり、青色光を吸収して演色性向上部材23に含まれる蛍光体とは波長の異なる光を発する蛍光体を含む波長変換部材22からなる直管と、該直管内部に収納される、支持部材を兼ねた板状の反射板25、青色光を出射するLED光源21、及び演色性向上部材23とを備える。また、LED光源21及び演色性向上部材23は、反射板25上であって、直管長手方向に交互に配置されている。この場合、LED光源21それぞれの発光軸は、反射板25に対して垂直方向であり、演色性向上部材23の配置は、LED光源21から光が照射される領域のうち、その発光軸に平行な光の照射領域から外れた位置となっている。演色性向上部材23は、LED光源21から発光した光が発光装置20の外側に照射される方向を避けて、例えば、LED光源21の発光方向前方以外の位置(例えば、側方又は後方)に設けることが好ましい。また、直管端部の電極26からLED光源21に電力が供給される。
【0044】
上記構成の発光装置20では、LED光源21から青色光が出射されると、青色光が波長変換部材22に入射し、青色光の一部が波長変換部材22に含まれる蛍光体に吸収され、黄色光に変換され、波長変換部材22を透過した残りの青色光と共に出射される。一方、演色性向上部材23には、隣接するLED光源21の側方に発せられる青色光及び波長変換部材22で反射された青色光が入射し、これらの青色光が演色性向上部材23により赤色光に変換される。その結果、発光装置20として、青色光、黄色光、赤色光が所定の比率で出射されることになり、演色性の高い白色光が得られる。
【0045】
本発明の発光装置20によれば、波長変換部材22及び演色性向上部材23に含まれる双方の蛍光体を、同じLED光源21からの励起光が励起する構成となっていることから、複数のLED光源を使用する際に生じやすいLEDの出力や発光色のばらつきによる発光むらを生じにくく、色度が安定し、かつ均一な発光が得られるという効果がある。また、本発明の発光装置20によれば、演色性向上部材23はLED光源21から側方に発生する光や波長変換部材22で反射された光で励起されることとなり、照明器具の照度低下となるLED光源21から発光軸方向に出射される光や波長変換部材22による蛍光を減衰させることはほとんどない。また、発光装置20の組み立てにおいては、目標とする色度や演色性に応じて、蛍光体含有量を調整した波長変換部材22及び演色性向上部材23を組み付ければよく、簡単な調整で自由度の高い調整が可能となる。更に、波長変換部材22及び演色性向上部材23がLED光源(発光チップ)と空間的に独立し、離れているため、波長変換部材22及び演色性向上部材23が高温になりにくく、ハイパワーの発光装置に適している。
【0046】
次に、
図5に、本発明に係る発光装置の第3の実施形態における構成を示す。
図5では、中央から左側の部分の一部において内部の構成がわかるような透視図としてある。
本発明に係る発光装置30は、
図5に示すように、電球タイプのものであり、青色光を吸収して演色性向上部材33に含まれる蛍光体とは波長の異なる光を発する蛍光体を含む波長変換部材32からなる電球カバーと、該電球カバー内部に収納される、支持部材を兼ねた上部が細くなった円柱状の反射板35、青色光を出射するLED光源31及び板状の演色性向上部材33とを備える。また、LED光源31及び演色性向上部材33は、反射板35の外周面上であって、反射板35の外周方向に交互に配置されている。この場合、LED光源31それぞれの発光軸は、反射板35の外周面に対して垂直方向となっており、演色性向上部材33の配置は、LED光源31から光が照射される領域のうち、その発光軸に平行な光の照射領域から外れた位置となっており、演色性向上部材33は、LED光源31の発光方向の側方乃至後方に設けられている。また、口金36からLED光源31に電力が供給される。
【0047】
上記構成の発光装置30では、LED光源31から青色光が出射されると、青色光が波長変換部材32に入射し、青色光の一部が波長変換部材32に含まれる蛍光体に吸収され、黄色波長領域(又は緑色波長領域)を含む光(黄色光又は緑色光)に変換され、波長変換部材32を透過した残りの青色光と共に出射される。一方、演色性向上部材33には、隣接するLED光源31の側方に発せられる青色光及び波長変換部材32で反射された青色光が入射し、これらの青色光が演色性向上部材33に含まれる赤色蛍光体に吸収され、赤色光に変換される。その結果、発光装置30として、青色光、黄色光、赤色光が所定の比率で出射されることになり、演色性の高い白色光が得られる。
【0048】
本発明の発光装置30によれば、波長変換部材32及び演色性向上部材33に含まれる双方の蛍光体を、同じLED光源31からの励起光が励起する構成となっていることから、複数のLED光源を使用する際に生じやすいLEDの出力や発光色のばらつきによる発光むらを生じにくく、色度が安定し、かつ均一な発光が得られるという効果がある。また、本発明の発光装置30によれば、演色性向上部材33はLED光源31から側方に発生する光や波長変換部材32で反射された光で励起されることとなり、照明器具の照度低下となるLED光源31から発光軸方向に出射される光や波長変換部材32による蛍光を減衰させることはほとんどない。また、発光装置30の組み立てにおいては、目標とする色度や演色性に応じて、蛍光体含有量を調整した波長変換部材32及び演色性向上部材33を組み付ければよく、簡単な調整で自由度の高い調整が可能となる。更に、波長変換部材32及び演色性向上部材33がLED光源(発光チップ)と空間的に独立し、離れているため、波長変換部材32及び演色性向上部材33が高温になりにくく、ハイパワーの発光装置に適している。
なお、青色LEDを光源として白色光を得る発光装置のみならず、本発明の演色性向上部材は、LED光源が白色光を出射する発光装置、即ち、発光成分に波長420〜490nmの青色光を含む擬似白色LED光源を有した発光装置への適用も可能である。
【0049】
本発明の発光装置は、青色LED光源から気体層又は真空層を介して、離れた場所に波長変換部材を配設したリモートフォスファー方式の発光装置として好適である。リモートフォスファーは、面発光で放射角が大きいなど、一般的なLED発光装置とは異なる配光特性を有しており、広範囲を照らしたい照明器具などに特に好適である。
【実施例】
【0050】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0051】
[実施例1〜4、比較例1〜4]
以下の条件で、LED発光装置を作製した。
二軸押出機を用いて、透明ポリプロピレンペレット4.5kgに、粒径D50値17.6μmのK
2(Si
0.97Mn
0.03)F
6蛍光体0.5kgの混合を行い、K
2(Si
0.97Mn
0.03)F
6蛍光体の含有量を10質量%としたK
2(Si
0.97Mn
0.03)F
6含有ポリプロピレンペレットを得た。
次に、得られたK
2(Si
0.97Mn
0.03)F
6含有ポリプロピレンペレットを用いて、20t横型射出成型機により成型を行い、内径90mm、外径96mm、厚み10mmのリング状の演色性向上部材を得た。
また、ポリカーボネート樹脂に、粒径D50値50μmのY
3Al
5O
12:Ce
3+蛍光体を含有量3〜10質量%で練り込んだペレットを作製し、これを原料として射出成型を行い、厚み2mm、直径100mmの円盤状の黄色系の波長変換部材を得た。
図6に示すように、得られた演色性向上部材43を、LED投光機(GL−RB100(Cree社製2W型青色LEDチップXT−Eロイヤルブルー6個使用)、日野電子(株)製)4のLEDチップ(LED光源)41設置面であってLED光源41の発光軸に対して円周上に設置した。これにより、演色性向上部材43のリング内に6個のLEDチップ41が収まるようになる。このとき、演色性向上部材43は、LED光源41の発光軸に対して出射角90°の位置に配置されることになる。また、上記波長変換部材42をLED投光機4の前面(発光方向L)の発光軸上にLEDチップ41から15mm離間して配置し、LED発光装置とした。また、比較用として、演色性向上部材を配置せず、波長変換部材のみを配置したLED発光装置も準備した。
作製したLED発光装置を20cm離れた位置で、分光放射照度計CL−500A(コニカミノルタオプティクス(株)製)により白色光の照度、色温度、平均演色評価数Ra、特殊演色評価数△R9を測定し、演色性の良否を評価した。その結果を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
更に、上記ペレットを用いて、実施例3の演色性向上部材と、比較例3の波長変換部材について、厚み2mm、40mm角の板状の演色性向上部材及び波長変換部材を作製し、青色LED(波長460nm)からの光を演色性向上部材及び波長変換部材の40mm角の面に対して垂直方向から照射し、照射面の裏側から見た演色性向上部材及び波長変換部材の発光の状態を目視で確認した。発光状態の斜視像を
図7に示す。
図7(B)の比較例3の波長変換部材の場合、励起光である青色光が照射された部分(図の右側部)のみが発光して輝いているのに対して、
図7(A)の実施例3の演色性向上部材の場合、励起光である青色光が照射された部分と共に、その周縁部(図の中央部から左側部)も発光しており、演色性向上部材の発光範囲が広いことがわかる。
【0054】
以上のように、本発明のLED発光装置によれば、演色性向上部材を配置することにより、黄色系波長変換部材のみを用いたLED発光装置の平均演色評価数Ra及び特殊演色評価数△R9を大きく改善することができる。また、照度が若干向上する傾向が見られた。
【0055】
[実施例5〜12、比較例5]
以下の条件で、LED発光装置を作製した。
二軸押出機を用いて、透明ポリプロピレンペレットに、粒径D50値17.6μmのK
2(Si
0.97Mn
0.03)F
6の蛍光体の混合を行い、K
2(Si
0.97Mn
0.03)F
6蛍光体の含有量を12質量%としたK
2(Si
0.97Mn
0.03)F
6含有ポリプロピレンペレットを得た。
次に、得られたK
2(Si
0.97Mn
0.03)F
6含有ポリプロピレンペレットを用いて、20t横型射出成型機により成型を行い、厚み2mm、25mm×30mm角の板状の演色性向上部材を得た。
また、ポリメタクリル酸メチル樹脂に、粒径D50値50μmのY
3Al
5O
12:Ce
3+蛍光体を含有量4質量%で練り込んだペレットを作製し、これを原料として射出成型を行い、厚み2mm、直径100mmの円盤状の黄色系の波長変換部材を得た。
得られた演色性向上部材を、LED投光機(GL−100、入力15W、発光波長450nm、日野電子(株)製)のLEDチップ設置面に1〜8枚設置した。このとき、演色性向上部材は、LED光源の発光軸に対して出射角90°の位置に配置した。また、上記波長変換部材をLED投光機の前面の発光軸上にLEDチップから40mm離間して配置し、LED発光装置とした。また、比較用として、演色性向上部材を配置せず、波長変換部材のみを配置したLED発光装置も準備した。
作製したLED発光装置を20cm離れた位置で、分光放射照度計CL−500A(コニカミノルタオプティクス(株)製)により色温度、偏差(Δuv)、平均演色評価数Ra、特殊演色評価数△R9を測定し、演色性の良否を評価した。その結果を表2に示す。また、これらの発光スペクトルを
図8に示す。
【0056】
【表2】
【0057】
以上のように、本発明の演色性向上部材を増やせば、平均演色評価数Ra及び特殊演色評価数△R9をより改善することができ、
図8に示されるように、黄色光の光量をほとんど変化させることなく、赤色光の光量を増加させることが可能であることがわかる。
【0058】
なお、これまで本発明を、実施形態をもって説明してきたが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。