(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(1)硬化性を有する樹脂、(2)溶剤を成分として含む液晶表示装置用スペーサ形成インクであって、(1)硬化性を有する樹脂が、エポキシ当量200未満、かつ、3官能以上の多官能型エポキシ樹脂であり、前記樹脂硬化物のガラス転移温度が250℃以上である、液晶表示装置用スペーサ形成インク。
対向配置された1対の基板と、該1対の基板間に配された液晶層及び液晶表示装置用スペーサとを備える液晶表示装置の製造方法であって、硬化性を有する樹脂及びこれを溶解する溶剤を含有し固形粒子を実質的に含有しないインクからなる液滴をインクジェット法により基板上に印刷し、基板上の液滴から溶剤を除去して、基板上の所定の位置に表面形状が凸曲面であるスペーサを形成する工程を含む液晶表示装置の製造方法であって、
前記インクが請求項1又は2に記載の液晶表示装置用スペーサ形成インクである液晶表示装置の製造方法。
【背景技術】
【0002】
近年、カラーテレビやパーソナルコンピュータのモニターなどの表示装置として、液晶表示装置が用いられている。液晶表示装置は、一般に、透明電極などを有する透明な1対の基板が1〜10μmのギャップを開けて対向配置され、該1対の基板間に液晶物質を封入して液晶層が形成された構成を有する。液晶層に対して電極を通じて電界を印加することにより液晶物質を配向させ、液晶物質の配向によりバックライトの光の透過・不透過をコントロールして画像を表示させる。
【0003】
液晶表示装置の液晶層の厚さが不均一であると表示ムラやコントラスト異常が発生するため、基板間のギャップを一定に保って液晶層の厚さを均一にすることが必要とされる。そのため、従来、均一な粒度分布を有するシリカ粒子、金属酸化物粒子、及び熱可塑性樹脂粒子などのビーズを基板上に散布し、それらをスペーサとして基板間に配置する方法により、基板間のギャップを一定に保つ方法が用いられてきた。
【0004】
しかし、散布されたビーズをスペーサ(粒子状スペーサ)として用いる上記従来の方法の場合、ビーズが固定されていないため、液晶表示装置の振動によりビーズが移動して表示バラツキを生じる問題があった。また、散布の際にビーズを所望の位置に精度よく配置することが困難であるため、その分布にバラツキが生じやすく、場合によっては液晶表示装置の表示領域にビーズが配置されて、ビーズが表示バラツキや光抜けなどの表示不良の要因となることもあった。
【0005】
そこで、感光性樹脂を用いたフォトリソグラフィー法によって一方の基板上にスペーサを形成する方法が検討されている。この方法によれば、所望の位置にスペーサとしてのレジストパターンを高い位置精度で形成することが可能であり、また、一般に、レジストパターンの基板への付着力は比較的高いため、粒子状スペーサを用いる場合と比べて、配向異常やコントラスト低下など点で改善され得ると考えられる。
【0006】
しかし、フォトリソグラフィー法で形成したスペーサを用いて製造した液晶表示装置では、使用中に液晶が下方に流動し、液晶層の厚みが液晶表示装置の上下方向で異なることに伴い重力不良と呼ばれる色ムラ欠陥が発生することが問題となっていた。これは、高温環境下で液晶が膨張して液晶層の厚みが増し、その厚みの変化にスペーサが追従できず、スペーサが基板から離れ、スペーサに保持されなくなった液晶が下方に流動することが原因と考えられる。
【0007】
重力不良の解消には、高温環境下で液晶が熱膨張し、スペーサが圧縮状態から開放される際に、スペーサが弾性回復して液晶層の厚みの変化に追従し、スペーサと基板間に空隙を生じさせないことが有効である。
【0008】
また、フォトリソグラフィー法で形成したスペーサを用いて製造した液晶表示装置は、低温環境下では液晶が熱収縮して体積が減少する一方で、熱膨張率が液晶より低いスペーサは熱収縮せず液晶層の厚みが保持される。その結果、液晶の熱収縮に伴う体積の不足分を補うために液晶内の溶存空気が析出して気泡が発生する。この現象は低温発泡と呼ばれるもので液晶表示装置の信頼性を損なう要因となる。
【0009】
低温発泡の解消には、低温環境下で液晶が熱収縮する際に、スペーサが柔軟に圧縮変形して液晶層の厚みの変化に追従し、液晶セルの内圧を低下させないことが有効である(特許文献1、2)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、固形粒子を実質的に含有しない、樹脂及びこれを溶解している溶剤を含有するインクによりスペーサを形成する製造方法において、スペーサ樹脂に荷重が加わっても弾性回復し、柔軟性に優れ、当該スペーサを用いて作製した液晶セルが低温度でも低温気泡を発生しない、スペーサ形成用インクを提供することにある。また、本発明は係るスペーサ形成用インクを用いた液晶表示装置用スペーサを有する液晶表示装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
固形粒子を実質的に含有しない、樹脂及びこれが溶解している溶剤を含有するインクからなる液滴から溶剤を除去して、液晶表示装置用スペーサを形成する場合、樹脂組成物がスペーサとして機能するため、フォトリソグラフィー法で形成したスペーサと同様に、高温環境下での重力不良と低温環境下での低温発泡の抑制が課題となる。
上記課題を解決するためには、樹脂が圧縮変形からの回復力に優れるとともに、高い柔軟性を有する必要がある。
本発明では、スペーサ樹脂の最大荷重50mNでの弾性回復率が90%以上、かつ、柔軟性に優れ、当該スペーサを用いて作製した液晶セルが−30℃保管時に低温気泡を発生しないスペーサ形成用インクを提供するとともに、スペーサ形成用インクを用いた、液晶表示装置及びその製造方法を提供するものである。
上記目的を達成するために、本発明では、(1) 硬化性を有する樹脂、(2)溶剤を成分として含む液晶表示装置用スペーサ形成インクであって、(1)硬化性を有する樹脂が、エポキシ当量200未満、かつ、3官能以上の多官能型エポキシ樹脂であり、樹脂硬化物のガラス転移温度が250℃以上である液晶表示装置用スペーサ形成インクを提供する。
また、本発明の液晶表示装置用スペーサ形成インクは、形成されたスペーサの樹脂硬化物の表面形状が凸曲面であると好ましい。
【0013】
上記本発明の液晶表示装置用スペーサ形成インクは、硬化樹脂組成物からなる樹脂硬化物の架橋密度が高く、圧縮変形からの弾性回復力が高い。ガラス転移温度は、樹脂組成物が高架橋密度であるほど高くなる傾向があり、250℃以上であれば、最大荷重50mNでの圧縮試験時に弾性回復率90%以上を示す。また、液晶表示装置用スペーサ形成インクには、多官能型エポキシ樹脂の硬化剤として、フェノール類とアルデヒド類の縮合物を用いることが好ましい。
【0014】
一般に、架橋密度が高い樹脂組成物は硬くて柔軟性が低いため、低温環境下で発泡しやすくなる。本発明の液晶表示装置用スペーサ形成インクを用いて形成した樹脂組成物の樹脂硬化物は半楕円球状で表面形状が凸曲面であるため、樹脂組成物頂点付近における樹脂組成物と基板との接触面積が小さく、圧縮時に樹脂組成物に加わる荷重密度が高くなる。このため、同一の圧縮荷重を加えた場合、頂点付近の形状が平坦に近いフォトスペーサに比べて荷重密度が高く、柔軟に変形しやすい。このため、架橋密度が高い樹脂組成であっても低温発泡を抑制するに足る柔軟性を有する。
【0015】
液晶表示装置用スペーサ形成インク中の樹脂は熱硬化性樹脂であることが好ましい。硬化前の熱硬化性樹脂の粘度は比較的低いため、熱硬化性樹脂を用いることによりインクが低粘度化されて、より安定した吐出性を得ることが可能になる。インクを吐出させて形成する液晶表示装置用スペーサは、基板上の液滴を加熱することにより液滴から溶剤を除去するとともに熱硬化性樹脂を硬化させて、形成される。
【0016】
本発明の液晶表示装置用スペーサ形成インクでは、上記熱硬化性樹脂は前記エポキシ樹脂及びその硬化剤を含むことが好ましい。エポキシ樹脂や硬化剤の種類を適宜選択することにより、スペーサを構成する硬化物を、比較的容易に所望の物性を有するものとすることができる。エポキシ樹脂は、架橋密度の観点からエポキシ当量200未満、かつ、3官能以上の多官能型エポキシ樹脂である。エポキシ当量が200を超える場合、架橋点間分子量増大により架橋密度が低くなる。また、官能基数が2以下の場合、架橋点が少ないために架橋密度が低くなる。
【0017】
本発明の液晶表示装置用スペーサ形成インクは、実質的に固形粒子を含有しない。「実質的に固形粒子を含有しない」とは、単体で液晶表示装置の液晶層の厚みを保持し得る粒子を含有しない、ことを意味する。これにより、形成される液晶表示装置用スペーサの位置精度を向上することができる。
【0018】
別の側面において、本発明は、液晶表示装置用スペーサの製造方法に関する。本発明では硬化性を有する樹脂及びこれが溶解している溶剤を含有し固形粒子を実質的に含有しないインクからなる液滴をインクジェット法により基板上に印刷し、前記基板上の液滴から溶剤を除去して、前記基板上の所定の位置に配されたスペーサを形成させる液晶表示装置用スペーサの製造方法であって、樹脂がエポキシ当量200未満、かつ、3官能以上の多官能型エポキシ樹脂であり、前記樹脂硬化物のガラス転移温度が250℃以上である液晶表示装置用スペーサの製造方法を提供する。この製造方法においては、樹脂硬化物(硬化樹脂組成物)の表面形状が凸曲面であると好ましい。
【0019】
更に別の側面において、本発明は、対向配置された1対の基板と、該1対の基板間に配された液晶層及び液晶表示装置用スペーサとを備える液晶表示装置の製造方法に関する。本発明に係る液晶表示装置の製造方法は、上記本発明に係る液晶表示装置用スペーサの製造方法により少なくとも一方の基板上に液晶表示装置用スペーサを形成させる工程を備える。すなわち、本発明は、対向配置された1対の基板と、該1対の基板間に配された液晶層及び液晶表示装置用スペーサとを備える液晶表示装置の製造方法であって、硬化性を有する樹脂及びこれを溶解する溶剤を含有し固形粒子を実質的に含有しないインクからなる液滴をインクジェット法により基板上に印刷し、基板上の液滴から溶剤を除去して、基板上の所定の位置に表面形状が凸曲面であるスペーサを形成する工程を含む液晶表示装置の製造方法を提供する。
【0020】
上記本発明に係る製造方法によれば、圧縮変形からの弾性回復力に優れ、かつ十分な柔軟性を有する液晶表示装置用スペーサを十分優れた位置精度で形成できる。また、このような液晶表示装置用スペーサを簡易な工程による形成することができる。
【0021】
更に別の側面において、本発明は液晶表示装置に関する。本発明に係る液晶表示装置は、対向配置された1対の基板と、該1対の基板間に配された液晶層及び液晶表示装置用スペーサと、を備える。当該液晶表示装置用スペーサは、上記本発明に係る液晶表示装置用スペーサ形成インク、製造方法により形成されたものである。
【0022】
上記本発明に係る液晶表示装置は、圧縮変形からの弾性回復力に優れ、かつ十分な柔軟性を有するスペーサが、十分に優れた位置精度で配されている。このため、重力不良や低温発泡などの表示不良を十分に抑制することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、圧縮変形からの弾性回復力に優れ、かつ低温発泡を抑制するに十分な柔軟性を有する液晶表示装置用スペーサを形成することが可能な液晶表示装置用スペーサ形成インクを提供することができる。また、かかるインクを用いた液晶表示装置用スペーサの製造方法、及びかかる製造方法によって形成される液晶表示装置用スペーサを備える液晶表示装置及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0026】
図1は、本発明の液晶表示装置用スペーサの製造方法により形成された液晶表示装置用スペーサの一実施形態を示す模式断面図である。樹脂層20からなる液晶表示装置用スペーサ11は、基板23上に設けられる。以下、液晶表示装置用スペーサ11の形成方法について説明する。
【0027】
本実施形態の液晶表示装置用スペーサの形成方法では、まず、液晶表示装置に用いられる基板23上に、樹脂及び溶剤を含有し、固形粒子を実質的に含有しない液晶表示装置用スペーサ形成インクをインクジェット法で印刷する。そして、例えば、加熱処理等により溶媒を除去して、樹脂層20を形成することができる。これによって、基板23上に樹脂層20からなる液晶表示装置用スペーサ11を形成することができる。スペーサ11の高さHは2.0〜5.0μm、スペーサ11の直径は5〜50μmであることが好ましい。本実施形態のように液晶表示装置用スペーサは、表面形状が凸曲面であると好ましい。
【0028】
インクジェット法としては、例えば、ピエゾ素子の振動によって液体を吐出するピエゾ方式や、急激な加熱による液体の膨張を利用して液体を吐出させるサーマル方式等、一般的な吐出方法を使用できる。このようなインクジェット法を実施するためには、例えば、通常のインクジェット装置を用いることができる。
【0029】
インクが基板23上に着弾した後に溶媒を除去する方法としては、例えば、基板を加熱したり、熱風を吹き付けたりする加熱処理方法を採用することができる。このような加熱処理は、例えば、加熱温度150〜250℃、加熱時間0.2〜1.0時間で行うことができる。なお、樹脂として熱硬化性樹脂を用いる場合、溶媒の除去後、または溶媒除去と同時に樹脂を硬化させることができる。
【0030】
図2は、本発明の液晶表示装置用スペーサの製造方法により基板上に形成された液晶表示装置用スペーサの別の実施形態を示す模式断面図である。樹脂層20及び樹脂層22がこの順で積層されてなる液晶表示装置用スペーサ12は、基板23上に設けられる。以下、液晶表示装置用スペーサ12の形成方法について説明する。
【0031】
まず、
図1の基板23上に形成された樹脂層20の上に、インクジェット法により樹脂及び溶剤を含有し、固形粒子を実質的に含有しない液晶表示装置用スペーサ形成インクを印刷する。すなわち、基板23上の樹脂層20の形成位置と同じ位置に、液晶表示装置用スペーサ形成インクを印刷する。該インクは、樹脂層20形成用に用いたインクと同一組成でも、異なる組成でもどちらでもよい。このように、樹脂層20上にインクを印刷した後、樹脂層20形成時と同様にして溶媒を除去することによって、樹脂層20の上に樹脂層22を形成することができる。これによって、
図2に示すような、基板23上に、樹脂層20及び樹脂層22がこの順で積層された液晶表示装置用スペーサ12を形成することができる。
【0032】
図3は、
図2のスペーサ12の上面図である。樹脂層22は、樹脂層20を覆うように設けられる(
図2)。このように、本発明のスペーサ形成用インクは、一つの形成領域に一回以上吐出することができる。これにより、広い範囲の液晶層のギャップ高さに容易に対応可能な液晶表示装置用スペーサを形成することができる。
【0033】
ここで、基板23は、液晶表示装置に用いられる基板であり、液晶表示装置用スペーサ11(12)が形成される面側に、例えば、電極や配向層を有するものを用いることができる。なお、液晶表示装置用スペーサ形成インクは、液晶表示装置において対向配置される2枚の基板のうち、一方の基板表面に吐出することが好ましく、スペーサを配置する領域としては、カラーフィルタのブラックマトリックス等の非表示領域上であることが好ましい。
【0034】
なお、本実施形態では、基板23上にスペーサ形成用インクを印刷した後、加熱処理を行って樹脂層20を一旦形成したが、基板23上に液晶表示装置用スペーサ形成インクを印刷した後に加熱処理を行わずに、同じ位置に液晶表示装置用スペーサ形成インクを重ねて印刷し、その後、加熱処理等により溶媒を除去して、樹脂層20と樹脂層22とを同時に形成してもよい。また、樹脂層22上に、さらにインクジェット法により樹脂及び溶剤を含有し固形粒子を実質的に含有しない液晶表示装置用スペーサ形成インクを印刷して溶媒を除去することにより、樹脂層22上にさらに樹脂層を形成してもよい。このように、樹脂層22上にインクを重ねて印刷し、溶媒を除去することによって、基板23上に3層以上の樹脂層からなる液晶表示装置用スペーサを形成することができる。
【0035】
次に、液晶表示装置用スペーサの製造方法に用いられる液晶表示装置用スペーサ形成インクについて、詳細に説明する。本発明の液晶表示装置用スペーサの製造方法では、樹脂及びこれが溶解している溶剤を含有し、固形粒子を実質的に含有しないインクを用いる。ここで、「実質的に含有しない」とは、単体で液晶表示装置の液晶層の厚みを保持し得る粒子を含有しないことを意味する。
【0036】
本実施形態の液晶表示装置用スペーサ形成インク、すなわちインクは、溶剤中に樹脂が均一に溶解されていることが好ましい。ここで、「樹脂が均一に溶解している」とは、インクを常温下(15〜25℃)で目開き1μmのフィルタでろ過した場合に、ろ別されるスペーサの固形分の量が、インク質量に対して0.3質量%未満であることをいう。
【0037】
本実施形態の液晶表示装置用スペーサ形成インクは、表面張力が20mN/m以上であることが好ましい。液晶表示装置用スペーサ形成インクの表面張力が20mN/m未満の場合、インク液滴が基材に着弾後に濡れ広がり、液晶表示装置の狭い幅の非表示領域内に確実にスペーサを形成できない傾向がある。液晶表示装置用スペーサ形成インクの表面張力は、20〜80mN/mの範囲であることがより好ましい。これは、インクの表面張力が80mN/mを超える場合、インクジェットノズル詰まりが発生し易くなる傾向があるためである。
【0038】
本実施形態の液晶表示装置用スペーサ形成インクの粘度は、25℃で50mPa・s以下であることが好ましい。液晶表示装置用スペーサ形成インクの粘度が50mPa・s以下であれば、インクジェット印刷時の不吐出ノズルの発生や、ノズルの目詰まりの発生を一層確実に防止することができる。また、液晶表示装置用スペーサ形成インクの粘度は、25℃で1.0〜30mPa・sであることがより好ましい。インク粘度を当該範囲とすることによって、液滴を小径化でき、インクの着弾径を一層小さくすることができる傾向がある。
【0039】
液晶表示装置用スペーサ形成インクに含まれる溶剤の25℃での蒸気圧は、1.34×10
3Pa未満であることが好ましい。このような溶剤であれば、溶剤の揮発によるインク粘度の上昇を抑えることができる。例えば、蒸気圧が1.34×10
3Pa以上のインクを使用すると、インク液滴が乾燥しやすく、インクジェットヘッドのノズルから液滴を吐出することが困難になり、インクジェットヘッドの目詰まりが生じやすくなる傾向がある。スペーサ形成用インクに含まれる溶剤の蒸気圧を1.34×10
3Pa未満にすることによって、上述の不具合を回避することができる。なお、蒸気圧が1.34×10
3Pa未満の溶剤と、蒸気圧が1.34×10
3Pa以上の溶剤とを併せて用いてもよいが、その場合、蒸気圧が1.34×10
3Pa以上の溶剤の配合割合を、溶剤全量の質量基準で、60質量%以下とすることが好ましく、50質量%以下とすることがより好ましく、40質量%以下とすることがさらに好ましい。なお、溶剤としては、蒸気圧が所望の範囲で、かつ絶縁性の樹脂を分散又は溶解するものであれば種々のものを用いることができる。
【0040】
25℃における蒸気圧が、1.34×10
3Pa未満の溶剤としては、具体的には、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリドン、アニソール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。また、25℃における蒸気圧が1.34×10
3Pa以上の溶剤として具体的には、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、イソプロピルアルコール等が挙げられる。これらの溶剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0041】
インク中における溶剤の含有割合については、特に限定されず、インクの25℃における粘度及び表面張力が上記範囲内となるように適宜調整することが好ましいが、通常、インク質量に対して、50〜99質量%とすることが好ましい。
【0042】
液晶表示装置用スペーサ形成インクに含まれる樹脂は、硬化性を有する樹脂であり、エポキシ当量200未満、かつ、3官能以上の多官能型エポキシ樹脂である。多官能型エポキシ樹脂を用いることによる架橋密度、Tgを阻害しない範囲で、電気絶縁性を示し、基材への付着性を付与できる材料である、例えば前記以外のエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、シリコーン変性ポリアミドイミド樹脂、ポリエステル樹脂、シアネートエステル樹脂、BTレジン、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂などの一種を単独で、又は二種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0043】
樹脂として、エポキシ当量200未満、かつ、3官能以上の多官能型エポキシ樹脂とその他の熱硬化性樹脂を用いる場合には、モノマー、オリゴマー等を必要に応じて溶剤に溶解し、基板に印刷後、加熱処理することにより溶剤除去及び/又は樹脂硬化を行うことができる。なお、液晶表示装置用スペーサ形成インクには、硬化剤と必要に応じて硬化促進剤、カップリング剤、酸化防止剤、充填剤などを配合しても良い。
【0044】
本発明で用いる多官能エポキシ樹脂は、1分子内に3個以上のエポキシ基を有し、例えば、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4−(1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)フェニル)エチリデン)ビスフェノール等のトリスフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;1,1,2,2,−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等のテトラキスフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック、臭素化フェノールノボラック、臭素化ビスフェノールAノボラック、ナフトールノボラック、フェノール−クレゾール共縮ノボラック、ナフトール−フェノール共縮ノボラック、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック等のノボラック類をグリシジル化したノボラック型エポキシ樹脂;ナフトールアラルキル樹脂類をグリシジル化したナフトールアラルキル型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン−フェノール付加型樹脂をグリシジル化したジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂等が挙げられる。
また、多官能グリシジルエーテル型エポキシ樹脂や多官能グリシジルアミン型エポキシ樹脂などが例示できる。多官能グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、トリフェニルグリシジルエーテルやテトラフェニルグリシジルエーテルエタンがあり、分子内にt−ブチル基などの疎水基を導入することもできる。多官能グリシジルアミン型エポキシ樹脂は、トリグリシジルアミノフェノール、トリグリシジルイソシアヌレート、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン等がある。これらは、3官能、4官能などであり、組成物中のエポキシ基量を多くして架橋密度を高めることができる。
【0045】
エポキシ樹脂とともに用いられる硬化剤としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、メタキシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、m−フェニレンジアミン、ジシアンジアミドなどのアミン類;無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸などの酸無水物、イミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、4,5−ジフェニルイミダゾール、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2−ウンデシルイミダゾリン、2−ヘプタデシルイミダゾリン、2−イソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾリン、2−イソプロピルイミダゾリン、2,4−ジメチルイミダゾリン、2−フェニル−4−メチルイミダゾリンなどのイミダゾール類;イミノ基がアクリロニトリル、フェニレンジイソシアネート、トルイジンイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、メチレンビスフェニルイソシアネート、メラミンアクリレートなどでマスクされたイミダゾール類;ビスフェノールF、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ポリビニルフェノールなどのフェノール類;フェノール、クレゾール、アルキルフェノール、カテコール、ビスフェノールF、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどのフェノール類とホルムアルデヒドやサリチルアルデヒドなどのアルデヒド類との縮合物及びこれらのハロゲン化物などが挙げられる。これらのうち、耐熱性及び接着性の観点から、フェノール類とアルデヒド類との縮合物が好ましい。これらの化合物の分子量はどのようなものでも良く、また、これらの一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0046】
液晶表示装置用スペーサ形成インク中における絶縁性の樹脂(多官能型エポキシ樹脂、硬化剤など)の含有割合については、インクの25℃における粘度及び表面張力が上記範囲内となるように適宜調整することが好ましいが、通常、インク質量に対して1〜50質量%とすることが好ましい。
【0047】
次に、本発明の液晶表示装置について説明する。本発明の液晶表示装置は、対向配置された一対の基板と、上記一対の基板間に封入された液晶物質からなる液晶層と、上記液晶層の厚さを一定に保つために上記基板間に配置された液晶表示装置用スペーサと、を備える液晶表示装置である。そして、上記液晶表示装置用スペーサは、上記本発明の液晶表示装置用スペーサ形成用インクを用いてインクジェット印刷法により上記基板上の所望の位置に形成されたものである。ここで、液晶表示装置用スペーサは、例えば、液晶表示装置用スペーサ形成用インクをインクジェット印刷装置により基板上の所望の位置に塗布し、加熱処理により樹脂の硬化及び/又は溶剤除去を行うことで形成することができる。
【0048】
図4は、本発明の液晶表示装置の一実施形態を示す模式断面図である。
図4に示すように、液晶表示装置1は、対向させて配設された一対の基板部材6a、6bを有している。基板部材6aは、電極2a、カラーフィルタ7、基板3a、位相差板8及び偏光板5aからなり、これらがこの順序で積層されている。また、基板部材6bは、電極2b、基板3b及び偏光板5bからなり、これらがこの順序で積層されている。また、基板部材6bにおける偏光板5bの外側には、バックライト9が配置されている。さらに、基板部材6a、6bの電極2a、2bが形成されている側には、それぞれ配向層17a、17bが積層されている。そして、液晶層18は、配向層17a、17bを介して、基板部材6a、6bによって挟持されている。そして、液晶層18の周縁部であって基板部材6a、6bの間にはシール材13が設けられており、これにより基板部材6a、6bが結合されている。
【0049】
このような液晶表示装置において、
図4に示すように、液晶表示装置用スペーサ10は液晶層18の厚さを一定に保つために、液晶表示装置1の所定の位置に配設される。液晶表示装置用スペーサ10は、高品位な画像を表示する観点から、透光部である表示ドット部以外の位置に配設されることが好ましい。
【0050】
また、液晶表示装置用スペーサ10は、画面表示全領域にわたって均等な間隔で配設されることが好ましい。この液晶表示装置用スペーサ10は、本発明の液晶表示装置用スペーサ形成インクを用いてインクジェット印刷法により形成されているため、画面表示全領域にわたって十分に高い位置精度で配設されており、表示バラツキや光抜けなどの表示不良を十分に抑制することができる。
【0051】
このような液晶表示装置は、基板3b上に設けられた配向層17b上に、樹脂及び溶剤を含有し固形粒子を実質的に含有しないインクからなる液滴をインクジェット法により印刷し、溶媒を除去することによって液晶表示装置用スペーサ10を形成する工程を備える製造方法によって製造することができる。液晶表示装置用スペーサ10は、上述のインクをインクジェット法により2回以上重ねて印刷して形成することによって、所望の高さに調整することができる。
【0052】
なお、
図4に示す基板部材6a、bはそれぞれ、上述した各層が積層された構造を有しているが、必ずしもこれら全てが積層されている必要はない。また、基板部材6a、bには、必要に応じて、さらに絶縁層、ブラックマトリックスの層、緩衝材層、TFT等が設けられていてもよい。
【0053】
電極2a、2bとしては、スズドープ酸化インジウム(ITO)等の透明電極を用いることができる。また、基板3a、3bとしては、プラスチック板、ガラス板等を例示できる。また、カラーフィルタ7、位相差板8、偏光板5a、5b及びバックライト9としては、それぞれ公知のものを用いることができる。また、配向層17a、17bについても、公知の液晶配向剤を用いて形成することができる。
【実施例】
【0054】
以下、本発明を実施例及び比較例によって、より具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、各実施例の液晶表示装置用スペーサ形成インクをろ別したときに、ろ別される固形分の量は、常温下(25℃)で、目開き1μmのフィルタを用いてインクをろ過し、ろ別された固形分を温度200℃で1時間乾燥した後の質量を計測して求めた。
【0055】
(液晶表示装置用スペーサ形成インク1の調製)
4官能ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、商品名:HP4710、エポキシ当量170)11.9g、ビスフェノールノボラック樹脂(DIC株式会社製、商品名:VH−4170)8.0g、2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製、商品名:2E4MZ)0.1gを、溶剤であるγ―ブチロラクトン80.0gに溶解し、液晶表示装置用スペーサ形成インク1を調製した。
【0056】
調製したインクのろ別される固形分の量は0.001質量%であった。
【0057】
(液晶表示装置用スペーサ形成インク2の調製)
トリフェニルメタン型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製、商品名:1032H60、エポキシ当量169)11.9g、ビスフェノールノボラック樹脂(DIC株式会社製、商品名:VH−4170)8.0g、2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製、商品名:2E4MZ)0.1gを、溶剤であるγ―ブチロラクトン80.0gに溶解し、液晶表示装置用スペーサ形成インク2を調製した。
【0058】
調製したインクのろ別される固形分の量は0.001質量%であった。
【0059】
(液晶表示装置用スペーサ形成インク3の調製)
トリフェニルメタン型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製、商品名:1032H60、エポキシ当量169)11.9g、ビスフェノールノボラック樹脂(DIC株式会社製、商品名:KH−6021)8.0g、2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製、商品名:2E4MZ)0.1gを、溶剤であるγ―ブチロラクトン80.0gに溶解し、液晶表示装置用スペーサ形成インク3を調製した。
【0060】
調製したインクのろ別される固形分の量は0.001質量%であった。
【0061】
(液晶表示装置用スペーサ形成インク4の調製)
ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、平均官能数5.6、商品名:N865、エポキシ当量208)12.8g、ビスフェノールノボラック樹脂(DIC株式会社製、商品名:VH−4170)7.0g、2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製、商品名:2E4MZ)0.1gを、溶剤であるγ―ブチロラクトン80.0gに溶解し、液晶表示装置用スペーサ形成インク4を調製した。
【0062】
調製したインクのろ別される固形分の量は0.001質量%であった。
【0063】
(液晶表示装置用スペーサ形成インク5の調製)
ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、平均官能数5.6、商品名:N865、エポキシ当量208)13.6g、トリフェノールアルカン型フェノール樹脂(明和化成株式会社製、商品名:MEH−7500)6.3g、2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製、商品名:2E4MZ)0.1gを、溶剤であるγ―ブチロラクトン80.0gに溶解し、液晶表示装置用スペーサ形成インク5を調製した。
【0064】
調製したインクのろ別される固形分の量は0.001質量%であった。
【0065】
(実施例1)
液晶表示装置用スペーサ形成インクを、1μmの目開きのメンブレンフィルタでろ過して異物を除去し、口径50μmのヘッドを搭載したピエゾ方式のインクジェット装置(株式会社マイクロジェット製、商品名:ナノプリンター1000)に供給した。
【0066】
(液晶表示装置用スペーサ形成インクの印刷、液晶表示装置用スペーサの形成)
当該インクジェット装置を用いて、VA(Vertical Alignment)液晶用配向膜が形成されたガラス板(基板)の配向膜が形成された表面上に、150μm間隔で、液滴容量を15pLとして、液晶表示装置用スペーサ形成インクを印刷した。インクを1回印刷した後、当該基板を180℃に加熱したホットプレート上に速やかに移し、30分間乾燥・硬化させて、スペーサを形成した。
【0067】
(着弾位置精度の評価)
形成した液晶表示装置用スペーサを金属顕微鏡で観察し、1視野に8列×10点の合計80点のスペーサが含まれる状態で画像を撮影した。その後、パソコンの画面上で、この画像に予め作製した幅50μmの格子パターン画像を、任意のスペーサの中心が格子パターンの任意の交点になるようにして重ね合わせ、以下の評価基準で着弾位置精度を評価した(n=80)。評価結果は、表1に示す通りであった。
【0068】
<着弾位置精度、サテライト発生割合の評価基準>
A:格子の枠内に液晶表示装置用スペーサの中心点が位置するように配置されたスペーサの割合が98%以上
B:格子の枠内に液晶表示装置用スペーサの中心点が位置するように配置されたスペーサの割合が98%未満
【0069】
(密着性の評価)
形成した液晶表示装置用スペーサに市販のセロハンテープを強く圧着させた後、当該セロハンテープを一気に引き剥がして、スペーサの剥がれの有無を確認することにより、密着性の評価を行った。密着性の評価基準は以下の通りである。密着性の評価結果は、表1に示す通りであった。
【0070】
<密着性の評価基準>
A:テープ試験により液晶表示装置用スペーサが全く剥がれない。
B:テープ試験により液晶表示装置用スペーサの少なくとも一部が剥がれる。
【0071】
(液晶表示装置用スペーサ高さの評価)
形成した液晶表示装置用スペーサの高さを、株式会社菱化システム製三次元非接触表面形状計測システム(商品名:Vertscan2.0)により測定し(n=96)、測定値の平均値及び標準偏差を求めた。評価結果は、表1に示す通りであった。
【0072】
(スペーサ直径の評価)
形成した液晶表示装置用スペーサの直径を、顕微鏡で観察して測定した(n=96)。評価結果は、表1に示す通りであった。
【0073】
(液晶表示装置用スペーサ樹脂組成物のガラス転移温度の評価)
液晶表示装置用スペーサ形成インクをアプリケータによりガラス板上に塗布し、180℃で加熱乾燥して硬化樹脂膜を作製した。この硬化樹脂膜をガラス板から剥がして得た樹脂フィルムのガラス転移温度をRSAIII(ティー・エイ・インスツルメント社製)を用いて引張モードで測定した。試験条件は周波数1Hz、測定温度20〜300℃、昇温速度5℃/分とした。評価結果は、表1に示す通りであった。
【0074】
(スペーサの弾性回復率の評価)
温度25℃に調整した室内において、液晶表示装置用スペーサを2.5mN/sの荷重印加速度で圧縮し、荷重50mNで5秒間保持し、2.5mN/sの荷重印加速度で負荷を取り除き弾性回復によるスペーサ高さの回復変形を測定した。この間の圧縮変形が最大となった時点のスペーサの変形量をH1とし、負荷を取り除いた時点のスペーサの変形量をH2とした。得られた値を用いた下記式(1)によりスペーサの弾性回復率を算出した。
弾性回復率=[(H1−H2)/H1]×100
評価結果は、表1に示す通りであった。
【0075】
(信頼性試験用の簡易液晶セルの作製)
VA液晶用配向膜塗布ITOガラス基板(100mm×100mm)上に所定の条件で液晶表示装置用スペーサ形成インクを印刷してスペーサパターンを形成した。スペーサを形成した基板側に所定の粒径のビーズを混入したシール材料を塗布した。シールパターンは基板端から4.0mmと7.5mmの位置に正方形を描く二重シールとした。二重シールの内側に液晶材料を22.1mg滴下し、その後、ITOガラス基板を対向させ、真空チャンバ内で減圧下において位置合わせと重ね合わせを行った。重ね合わせが終了したセルは、減圧チャンバから大気圧中に取り出した。以上の操作は、自家製液晶セル貼り合わせ装置を用いて行った。その後、紫外線照射(6000mJ/cm
2)、加熱(120℃/1h)を行い、シール材料を硬化させ、液晶を封入したセルを得た。
【0076】
(低温信頼性試験)
作製した液晶セルを−30℃の環境下で500時間放置した後、気泡発生の有無を光学顕微鏡で調べた。評価結果は、表1に示す通りであった。
【0077】
(実施例2)
液晶表示装置用スペーサ形成インク1に代えて、液晶表示装置用スペーサ形成インク2を用いた以外は、実施例1と同様にして基板上に液晶表示装置用スペーサを形成し、各評価を行った。評価結果は、表1に示す通りであった。
【0078】
(実施例3)
液晶表示装置用スペーサ形成インク1に代えて、液晶表示装置用スペーサ形成インク3を用いた以外は、実施例1と同様にして基板上に液晶表示装置用スペーサを形成し、各評価を行った。評価結果は、表1に示す通りであった。
【0079】
(比較例1)
液晶表示装置用スペーサ形成インク1に代えて、液晶表示装置用スペーサ形成インク4を用いた以外は、実施例1と同様にして基板上に液晶表示装置用スペーサを形成し、各評価を行った。評価結果は、表1に示す通りであった。
【0080】
(比較例2)
液晶表示装置用スペーサ形成インク1に代えて、液晶表示装置用スペーサ形成インク5を用いた以外は、実施例1と同様にして基板上に液晶表示装置用スペーサを形成し、各評価を行った。評価結果は、表1に示す通りであった。
【0081】
【表1】
【0082】
エポキシ当量200未満、3官能以上の多官能型エポキシ樹脂で、樹脂硬化物のガラス転移温度が250℃以上である実施例1〜3では、スペーサ樹脂の弾性回復率が90%以上、かつ、−30℃保管液晶セルの低温発泡が未発生であり、良好であった。
【0083】
一方、3官能以上の多官能型エポキシ樹脂であるが、エポキシ当量200を超える比較例1及び2は、−30℃保管液晶セルの低温発泡が未発生であったものの、スペーサ樹脂の弾性回復率が90%未満と不良であった。