【実施例】
【0031】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲がこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0032】
(実施例1)
共重合体(A)と無機材料(B)からなる培養基材例。
[メトキシエチルアクリレート(a)、ジメチルアクリルアミド(b)、無機材料(B)、水媒体(E)を含む反応溶液の調製]
メトキシエチルアクリレート(a)1.952g、ジメチルアクリルアミド(b)0.99g、無機材料(B)として水膨潤性粘土鉱物Laponite XLG(Rockwood Additives Ltd.社製)0.2g、水100g、を均一に混合して反応溶液(1)を調製した。
【0033】
[重合開始剤を溶媒に溶解させた溶液の調整]
溶媒として、メタノール9.8g、重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン「イルガキュアー184」(チバガイギー社製)0.2gを、均一に混合して溶液(2)を調製した。
【0034】
[複合体(X)の分散液(L)の調製(第1工程)]
上記反応溶液(1)全量に、溶液(2)を250μl入れ、均一に分散させた後、365nmにおける紫外線強度が40mW/cm
2の紫外線を180秒照射し乳白色の複合体(X)の分散液(L1)を作製した。
【0035】
この反応系のRa=0.06、無機材料(B)の濃度(質量%)=0.20(%)<12.4Ra+0.05=0.79
【0036】
[培養基材(複合体(X)の薄層)の調製(第2工程)]
直径35mmのポリスチレン製シャーレ(CORNINGセルカルチャデイッシュ430165)に、上記複合体(X)の分散液(L1)を入れ、スピンコーターを用いて3000回転で該分散液をシャーレの表面に薄く塗布した後、80℃の熱風乾燥器中で10分間乾燥させ、次いで、滅菌水によりシャーレを洗浄した後、滅菌袋中でシャーレを40℃、5時間乾燥させて、細胞培養基材1を得た。
【0037】
[血液由来単核細胞の培養・回収]
上記得られた細胞培養基材1を照射線量10kGyの電子線で滅菌した(日本照射サービス株式会社)後、培地としてリンパ球増殖基本培地(LGM-3)を適量入れ、ヒト末梢血液由来の単核細胞(TakaraCC-2072、タカラバイオ株式会社)を2.0×10
6個/Dishで播種して、5%二酸化炭素中、37℃で4日間培養を行った。次いで、ディッシュ中の浮遊している単核細胞を直径35mmのポリスチレン製シャーレ(CORNINGセルカルチャデイッシュ430165)に播種して、5%二酸化炭素中、37℃で1日間培養したところ、接着細胞が観察された。
上記培養基材1で培養後、ポリスチレン製シャーレ(CORNINGセルカルチャデイッシュ430165)に再播種後に接着した細胞の数(10.53×10
4個)が、未コート培養シャーレ(CORNINGセルカルチャデイッシュ430165)で培養後、ポリスチレン製シャーレ(CORNINGセルカルチャデイッシュ430165)に再播種後に接着した細胞の数(2.28×10
4個(比較例2参照))の4.7倍であった。
【0038】
この実施例より、共重合体(A)と無機材料(B)からなる培養基材が、通常のティッシュカルチャデイッシュに比べ、細胞培養性が高いことが理解できる。
なお、播種前後の細胞数は以下の方法でカウントした。まず、冷凍細胞は解凍後に培養液を添加することで細胞懸濁液とした。ディッシュ上の細胞は、0.05%トリプシン/0.53mM EDTAにて細胞回収後、培養液を添加することで懸濁液とした。次に、細胞懸濁液を100μL採取し、1.5mLマイクロチューブに入れた。そこへケモメテック社製細胞溶解液(リージェントA)を等量添加した。チューブをVortexで混和後、ケモメテック社製細胞中和液(リージェントB)をさらに100μL添加した。細胞計測用カートリッジを用いて調製した細胞懸濁液を採取し、細胞計測装置(ヌクレオカウンター
TM、chemometec社)で計測した。
【0039】
(実施例2)
実施例1と同様の細胞培養基材1を作製し、細胞種のみ骨髄由来単核細胞(ベリタス株式会社)とした。上記培養基材1で培養後、ポリスチレン製シャーレ(CORNINGセルカルチャデイッシュ430165)に再播種し1日培養後の接着細胞の数(14.85×10
4個)が、未コート培養シャーレ(CORNINGセルカルチャデイッシュ430165)で培養後、ポリスチレン製シャーレ(CORNINGセルカルチャデイッシュ430165)に再播種後に接着した細胞の数(11.8×10
4個)の1.3倍であった。
【0040】
この実施例より、共重合体(A)と無機材料(B)からなる培養基材が、通常のティッシュカルチャデイッシュに比べ、細胞培養性が高いことが理解できる。
【0041】
(比較例1) メトキシエチルアクリレート(a)のみの重合体と無機材料(B)からなる培養基材例。
[メトキシエチルアクリレート(a)、無機材料(B)、水媒体を含む反応溶液の調製]
メトキシエチルアクリレート(a)3.2g、無機材料(B)として水膨潤性粘土鉱物Laponite XLG(Rockwood Additives Ltd.社製)0.2g、水媒体として水100g、を均一に混合して反応溶液(2)を調製した。
【0042】
[複合体(X)の分散液(L)の調製(第1工程)]
上記反応溶液(2)全量に、溶液(2)を250μl入れ、均一に分散させた後、365nmにおける紫外線強度が40mW/cm
2の紫外線を180秒照射し乳白色の複合体(X)の分散液(L2)を作製した。
【0043】
この反応系のRa=0.06、無機材料(B)の濃度(質量%)=0.20(%)<12.4Ra+0.05=0.79
【0044】
[培養基材(複合体(X)の薄層)の調製(第2工程)]
直径35mmのポリスチレン製シャーレ(CORNINGセルカルチャデイッシュ430165)に、上記複合体(X)の分散液(L2)を入れ、スピンコーターを用いて3000回転で該分散液をシャーレの表面に薄く塗布した後、80℃の熱風乾燥器中で10分間乾燥させ、次いで、滅菌水によりシャーレを洗浄した後、滅菌袋中でシャーレを40℃、5時間乾燥させて、細胞培養基材2を得た。
【0045】
[血液由来単核細胞の培養・回収]
上記得られた細胞培養基材2を照射線量10kGyの電子線で滅菌した(日本照射サービス株式会社)後、実施例1と同様にして、ヒト末梢血液由来の単核細胞の培養を行い、ポリスチレン製シャーレ(CORNINGセルカルチャデイッシュ430165)に再播種後の接着細胞のカウントを行ったところ、接着細胞の数は0.8×10
4個であった。
上記培養基材2で培養された接着細胞の数(0.8×10
4個)が、未コート培養シャーレ(CORNINGセルカルチャデイッシュ430165)を用いた場合(2.28×10
4個)の0.4倍であった。
【0046】
この比較例より、メトキシエチルアクリレート(a)のみの重合体と無機材料(B)からなる細胞培養基材2では、ヒト末梢血液由来の単核細胞に対する培養(増殖)性が低く、ポリスチレン製シャーレ(CORNINGセルカルチャデイッシュ430165)に再播種後に出現する接着細胞が少ないことが理解できる。
【0047】
(比較例2)
直径35mmのポリスチレン製シャーレ(CORNINGセルカルチャデイッシュ430165)をそのまま用いて、実施例1と同様にして、ヒト末梢血液由来の単核細胞の培養を行い、ポリスチレン製シャーレ(CORNINGセルカルチャデイッシュ430165)に再播種後の接着細胞のカウントを行ったところ、接着細胞の数は2.28×10
4個であった。
【0048】
この比較例より、通常のポリスチレン製セルカルチャデイッシュでは、ヒト末梢血液由来の単核細胞に対する培養(増殖)性が低く、ポリスチレン製シャーレ(CORNINGセルカルチャデイッシュ430165)に再播種後に出現する接着細胞が少ないことが理解できる。
【0049】
(比較例3)
直径35mmの市販の低接着培養シャーレ(EZ−BindShutII、AGCテクノグラス株式会社製)を用いて、実施例1と同様にして、ヒト末梢血液由来の単核細胞の培養を行い、ポリスチレン製シャーレ(CORNINGセルカルチャデイッシュ430165)に再播種後の接着細胞のカウントを行ったところ、接着細胞の数は0.4×10
4個であった。
【0050】
この比較例より、市販の低接着培養シャーレでは、ヒト末梢血液由来の単核細胞に対する培養(増殖)性が低く、ポリスチレン製シャーレ(CORNINGセルカルチャデイッシュ430165)に再播種後に出現する接着細胞が少ないことが理解できる。
【0051】
(比較例4) 共重合体(A)のみの(無機材料(B)を含まない)基材の例
[メトキシエチルアクリレート(a)、ジメチルアクリルアミド(b)、水媒体を含む反応溶液の調製]
メトキシエチルアクリレート(a)1.952g、ジメチルアクリルアミド(b)0.99g、水媒体として水100g、を均一に混合して反応溶液(3)を調製した。
[共重合体(A)の分散液の調製(第1工程)]
上記反応溶液(3)全量に、溶液(2)を250μl入れ、均一に分散させた後、365nmにおける紫外線強度が40mW/cm
2の紫外線を180秒照射し乳白色の共重合体(A)の分散液を作製した。この分散液を用いて、実施例1と同様にして細胞培養基材3を得た。
【0052】
上記細胞培養基材3を用いてヒト末梢血液由来の単核細胞の培養を行い、ポリスチレン製シャーレ(CORNINGセルカルチャデイッシュ430165)に再播種後の接着細胞のカウントを行ったところ、接着する細胞は殆ど見当たらなかった。
【0053】
この比較例より、無機材料(B)を含まない、共重合体(A)のみの基材では、細胞との接着性が低過ぎて、細胞が増殖できないことが理解できる。