(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本実施の形態を説明する。
[第一実施形態]
図1は、第一実施形態に係る基板処理装置100の構成を示す模式図である。
図1に示すように、基板処理装置100は、帯状に形成されたシート基板(例えば、帯状のフィルム部材)Sを供給する基板供給部2と、基板Sの表面(被処理面)Saに対して処理を行う基板処理部3と、基板Sを回収する基板回収部4と、これらの各部を制御する制御部CONTと、を有している。
【0011】
基板処理部3は、基板供給部2から基板Sが送り出されてから、基板回収部4によって基板Sが回収されるまでの間に、基板Sの表面に各種処理を実行するための基板処理装置100を備える。この基板処理装置100は、基板S上に例えば有機EL素子、液晶表示素子等の表示素子(電子デバイス)を形成する場合に用いることができる。
【0012】
なお、本実施形態では、
図1に示すようにXYZ座標系を設定し、以下では適宜このXYZ座標系を用いて説明を行う。XYZ座標系は、例えば、水平面に沿ってX軸及びY軸が設定され、鉛直方向に沿って上向きにZ軸が設定される。また、基板処理装置100は、全体としてX軸に沿って、そのマイナス側(−側)からプラス側(+側)へ基板Sを搬送する。その際、帯状の基板Sの幅方向(短尺方向)は、Y軸方向に設定される。
【0013】
基板処理装置100において処理対象となる基板Sとしては、例えば樹脂フィルムやステンレス鋼などの箔(フォイル)を用いることができる。例えば、樹脂フィルムは、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、エチレンビニル共重合体樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、などの材料を用いることができる。
【0014】
基板Sは、例えば200℃程度の熱を受けても寸法が変わらないように熱膨張係数が小さい方が好ましい。例えば、無機フィラーを樹脂フィルムに混合して熱膨張係数を小さくすることができる。無機フィラーの例としては、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、酸化ケイ素などが挙げられる。
【0015】
基板Sの幅方向(短尺方向)の寸法は例えば50cm〜2m程度に形成されており、長さ方向(長尺方向)の寸法は例えば10m以上に形成されている。勿論、この寸法は一例に過ぎず、これに限られることは無い。例えば基板Sの幅方向の寸法が50cm以下であっても構わないし、2m以上であっても構わない。また、基板Sの長さ方向の寸法が10m以下であっても構わない。
【0016】
基板Sは、例えば1mm以下の厚みを有し、可撓性を有するように形成されている。ここで可撓性とは、基板に自重程度の力を加えても剪断したり破断したりすることはなく、該基板を撓めることが可能な性質をいう。また、自重程度の力によって屈曲する性質も可撓性に含まれる。また、上記可撓性は、該基板の材質、大きさ、厚さ、又は温度などの環境、等に応じて変わる。なお、基板Sとしては、1枚の帯状の基板を用いても構わないが、複数の単位基板を接続して帯状に形成される構成としても構わない。
【0017】
基板供給部2は、例えばロール状に巻かれた基板Sを基板処理部3に向けて送り出し、シート基板Sを基板処理部3内に供給する。この場合、基板供給部2には、基板Sを巻きつける軸部及び当該軸部を回転させる回転駆動装置などが設けられる。さらに、基板供給部SUは、例えばロール状に巻かれた状態の基板Sを覆うカバー部を備える構成であっても構わない。なお、基板供給部2は、ロール状に巻かれた基板Sを送り出す機構に限定されず、ロール状に巻かれていない状態、例えば、折り重ねられた基板Sをその長さ方向に順次送り出す機構を含むものであればよい。
【0018】
基板回収部4は、基板処理部3が備える基板処理装置100を通過した基板Sを例えばロール状に巻きとって回収する。基板回収部4には、基板供給部2と同様に、基板Sを巻きつけるための軸部や当該軸部を回転させる回転駆動源、回収した基板Sを覆うカバー部などが設けられている。なお、基板処理部3において基板Sがパネル状に切断される場合などには例えば基板Sを重ねた状態で回収するなど、ロール状に巻いた状態とは異なる状態で基板Sを回収する構成であっても構わない。
【0019】
基板処理部3は、基板供給部2から供給される基板Sを基板回収部4へ搬送すると共に、搬送の過程で基板Sの被処理面Saに対して処理を行う。基板処理部3は、処理装置10及び搬送装置20を有している。処理装置10としては、基板Sの被処理面Saに対して例えば有機EL素子を形成するための各種装置が設けられる。
【0020】
このような装置としては、例えば被処理面Sa上に隔壁を形成するための隔壁形成装置、電極を形成するための電極形成装置、発光層を形成するための発光層形成装置などが挙げられる。より具体的には、液滴塗布装置(例えばインクジェット型塗布装置など)、成膜装置(例えば鍍金装置、蒸着装置、スパッタリング装置)、露光装置、現像装置、表面改質装置、洗浄装置などが挙げられる。これらの各装置は、基板Sの搬送経路に沿って適宜設けられる。
【0021】
図2は、搬送装置20の一部の構成を示す図である。
搬送装置20は、第一案内部材21、第二案内部材22、第三案内部材23、振動付与部24及び駆動部25を有している。第一案内部材21、第二案内部材22及び第三案内部材23は、それぞれ円筒状に形成されており、各中心軸がY方向に平行となるように基板Sの搬送方向に沿って順に設けられている。基板Sは、第一案内部材21、第二案内部材22及び第三案内部材23に直接掛けられた状態で案内される。
【0022】
第一案内部材21の外周面は、基板Sを案内する案内面21fとなっている。第二案内部材22の外周面は、基板Sを案内する案内面22fとなっている。第三案内部材23の外周面は、基板Sを案内する案内面23fとなっている。第一案内部材21及び第二案内部材22は、同一のXY平面上に配置されている。第三案内部材23は、第一案内部材21及び第二案内部材22よりも−Z側(下方)に配置されている。
【0023】
このため、基板Sは、第二案内部材22の案内面22fによって進行方向が+X方向から−Z方向(下方)へ変換されるようになっている。このように、第二案内部材22の案内面22fは、基板Sの進行方向を第一方向である+X方向から第二方向である−Z方向に変更するように基板Sを案内する。なお、第一案内部材21の案内面21fは、基板Sの進行方向を+Z方向(上方)から+X方向(水平方向)に変換する。また、第三案内部材23の案内面23fは、基板Sの進行方向を−Z方向(下方)から+X方向(水平方向)に変換する。
【0024】
第一案内部材21及び第三案内部材23は、基板Sの裏面に接触した状態で、基板Sを搬送するために、回転軸を中心に回転可能に基板処理部3内に取り付けられている。なお、第一案内部材21及び第三案内部材23が、基板Sの裏面に対して非接触の状態(例えば、エア浮上させる等)で案内する場合、第一案内部材21及び第三案内部材23を基板処理部3内に固定してもよい。
【0025】
一方、第二案内部材22は、Y方向に4つ並んで配置された複数の単位ローラー部材22a〜22dを有している。各単位ローラー部材22a〜22dは、例えば同一の径を有しており、各中心軸の軸線方向がY方向に一致するように配置されている。また、単位ローラー部材22a〜22dは、Y方向の寸法が同一となるように形成されている。勿論、単位ローラー部材22a〜22dの間で、径若しくはY方向の寸法が異なるように形成されていても構わない。
【0026】
単位ローラー部材22a〜22dは、それぞれ個別に中心軸周り(Y軸周り)に回転可能に設けられている。また、単位ローラー部材22a〜22dは、それぞれ中心軸の軸線方向(Y方向)に個別に移動可能に設けられている。また、単位ローラー部材22a〜22dは、それぞれ中心軸の軸線方向(Y方向)に対して個別に傾斜可能に設けられている。駆動部25は、単位ローラー部材22a〜22dのそれぞれに対して、回転動作、直線移動動作及び傾斜動作を個別に行わせる。駆動部25の動作は、制御部CONTによって制御されるようになっている。
【0027】
例えば、単位ローラー部材22a〜22dのそれぞれは、中心軸方向に伸縮可能な回転軸に固定され、各回転軸は、自在継手(ユニバーサルジョイント部等)で連結されている。このような構成によって、単位ローラー部材22a〜22dは、回転軸が伸縮することによって中心軸の軸線方向に移動し、かつ、中心軸の軸線方向に個別に傾斜することが可能になる。
【0028】
なお、
図2においては、単位ローラー部材22a〜22dがY方向に接するように配置された状態が示されているが、単位ローラー部材22a〜22dを互いに離れるように配置された状態であっても勿論構わない。
【0029】
振動付与部24は、それぞれの単位ローラー部材22a〜22dに対して個別に振動を付与する。このような振動としては、例えば超音波振動などが挙げられる。具体的には、案内面22f上を案内される基板Sの進行方向(+Y方向に見て時計回りの方向)に対して逆方向(+Y方向に見て反時計回りの方向)に進行する正弦波振動などが挙げられる。
【0030】
なお、当該超音波振動の振動方向は、単位ローラー部材22a〜22dの径方向に平行な方向であっても構わないし、単位ローラー部材22a〜22dの外周面(円筒面)の周方向であっても構わない。振動付与部24は、単位ローラー部材22a〜22dに対して、このような超音波振動を付与することにより、案内面22fのうち単位ローラー部材22a〜22dに対応する部分と、基板Sとの間の摩擦力を低減させる。
【0031】
図3は、第二案内部材22の案内面22fを拡大して示す図である。
図3に示すように、第二案内部材22の案内面22fには、微小の突起である凸部26が形成されている。当該凸部26は、案内面22fの周方向及び軸方向に複数設けられている。複数の凸部26は、例えば周方向に等しいピッチで配置されている。なお、複数の凸部26は、ランダムに配置されてもよい。基板Sは、当該複数の凸部26を介して第二案内部材22(単位ローラー部材22a〜22d)に接触している。
【0032】
上記のように構成された基板処理装置100は、制御部CONTの制御により、ロール方式によって有機EL素子、液晶表示素子などの表示素子(電子デバイス)を製造する。以下、上記構成の基板処理装置100を用いて表示素子を製造する工程を説明する。
【0033】
まず、不図示のローラーに巻き付けられた帯状の基板Sを基板供給部2に取り付ける。制御部CONTは、この状態から基板供給部2から当該基板Sが送り出されるように、不図示のローラーを回転させる。そして、基板処理部3を通過した当該基板Sを基板回収部4に設けられた不図示のローラーで巻き取らせる。この基板供給部2及び基板回収部4を制御することによって、基板Sの被処理面Saを基板処理部3に対して連続的に搬送することができる。
【0034】
制御部CONTは、基板Sが基板供給部2から送り出されてから基板回収部4で巻き取られるまでの間に、基板処理部3の搬送装置20によって基板Sを当該基板処理部3内で適宜搬送させつつ、処理装置10によって表示素子の構成要素を基板S上に順次形成させる。この工程の中で、上記の搬送装置20によって基板Sを搬送する場合、振動付与部24によって単位ローラー部材22a〜22dに振動を付与することにより、基板Sの進行方向を微調整することができる。
【0035】
図4は、1つの凸部26を拡大して示す図である。制御部CONTは、振動付与部24により、例えば第二案内部材22の径方向に振動する第一正弦波振動(
図4の白抜き矢印で示す方向)と、第二案内部材22の円周方向に振動する第二正弦波振動(
図4の黒塗り矢印で示す方向)とを組み合わせて、凸部26に付与させる。この場合、第一正弦波振動及び第二正弦波振動の付与のタイミングを調整することで、凸部26が基板Sを当該基板Sの搬送方向の下流側に推進するように振動させることができる。
【0036】
つまり、凸部26に第一正弦波振動を付与させると、凸部26は第二案内部材22の径方向の外側に変位(伸長)する動作と、径方向の内側に変位(収縮)する動作とを周期的に繰り返す。また、凸部26に第二正弦波振動を付与させると、凸部26は第二案内部材22の周方向の時計回りの方向(基板Sの搬送方向に沿った方向。以下、正側、と表記する)に変位する動作と、反時計回りの方向(基板Sの搬送方向とは反対の方向。以下、負側、と表記する)に変位する動作とを周期的に繰り返す。
【0037】
このため、振動付与部24は、まず
図5に示すように、凸部26が径方向の内側に変位するように凸部26に対して第一正弦波振動を付与する。次に、
図6に示すように、凸部26が径方向の内側に変位した位置から径方向の外側に変位しようとするタイミングで凸部26が負側に移動するように、当該凸部に対して第二正弦波振動を付与する。
【0038】
このように第一正弦波振動及び第二正弦波振動を付与することにより、
図7に示すように、凸部26が負側から正側に移動するにつれて当該凸部26が径方向の外側に変位する。凸部26が負側と正側との中央に位置するタイミングで、径方向の外側に最も変位した位置に到達する。次に、
図8に示すように、凸部26は正側に移動しつつ、径方向の内側に変位していく。その後、凸部26が負側に移動しつつ、径方向の内側に変位していき、
図5に示す状態に戻る。以降、
図5に示す状態から
図8に示す状態を順に繰り返す。
【0039】
この繰り返しにより、凸部26の+Z側端部(基板Sとの接触部分)は、Y方向において時計回りに回転するように振動する。このような動作により、凸部26は基板Sに対して搬送方向に沿った方向の力を作用させることができる。この力は、基板Sと凸部26との間に働く摩擦力とは反対方向に作用するため、摩擦力の一部が減殺される。このように凸部26が設けられる構成において、当該凸部26に対して上記のタイミングで第一正弦波振動及び第二正弦波振動を加えることで、基板Sと第二案内部材22との間の摩擦力を減少させることができる。
【0040】
次に、
図9及び
図10を参照して、振動付与部24によって単位ローラー部材22a〜22dの一部に上記の第一正弦波振動及び第二正弦波振動を付与した場合の基板Sの挙動を説明する。
図9及び
図10は、基板Sのうち第一案内部材21及び第二案内部材22に掛けられた部分を+Z側から見たときの状態を示す図である。
図9は、単位ローラー部材22a〜22dに振動を付与しない状態を示している。
図10は、単位ローラー部材22a〜22dのうち+Y側に配置される2つの単位ローラー部材22c及び22dに対して、上記第一正弦波振動及び第二正弦波振動を付与した状態を示している。
【0041】
図9に示すように、単位ローラー部材22a〜22dに第一正弦波振動及び第二正弦波振動を付与しない状態で単位ローラー部材22a〜22dをそれぞれ同一速度で回転させる場合、単位ローラー部材22a〜22dと基板Sとの間の摩擦力がY方向において一定となる。
【0042】
このため、基板Sのうち第一案内部材21と第二案内部材22との間の部分の張力T1及びT2は、Y方向において一定となる。ただし、張力T1は、基板Sのうち第一案内部材21と第二案内部材22との間であって、単位ローラー部材22a及び22bによって搬送される部分の張力である。また、張力T2は、基板Sのうち第一案内部材21と第二案内部材22との間であって、単位ローラー部材22c及び22dによって搬送される部分の張力である。
【0043】
したがって、基板Sが+X方向に移動する場合であっても、Z軸回りの方向にはモーメントは発生せず、基板SはX方向に平行に搬送される。
【0044】
これに対して、
図10に示すように、振動付与部24によって単位ローラー部材22c及び22dに上記のタイミングで第一正弦波振動及び第二正弦波振動を付与させつつ単位ローラー部材22a〜22dを同一速度で回転させる場合、単位ローラー部材22a及び22bと基板Sとの間の摩擦力に比べて、単位ローラー部材22c及び22dと基板Sとの間の摩擦力が小さくなる。このため、基板Sのうち第一案内部材21と第二案内部材22との間に作用する張力T1よりも、張力T2の方が小さくなる。
【0045】
したがって、基板Sのうち第一案内部材21と第二案内部材22との間の部分には、Z方向に見て反時計回りの方向に曲げモーメントが発生する。この曲げモーメントにより、基板SはX方向に対して−Y方向に傾いた方向に進行することになる。
【0046】
また、上記同様の原理により、振動付与部24によって単位ローラー部材22a及び22bに超音波振動を付与させつつ単位ローラー部材22a〜22dを同一速度で回転させる場合、単位ローラー部材22a及び22bと基板Sとの間の摩擦力に比べて、単位ローラー部材22c及び22dと基板Sとの間の摩擦力が大きくなる。このため、基板Sのうち第一案内部材21と第二案内部材22との間に作用する張力T1よりも、張力T2の方が大きくなる。
【0047】
したがって、基板Sのうち第一案内部材21と第二案内部材22との間の部分には、Z方向に見て時計回りの方向に曲げモーメントが発生する。この曲げモーメントにより、基板SはX方向に対して+Y方向に傾いた方向に進行することになる。
【0048】
なお、Y方向における基板Sと第二案内部材22との間の摩擦力の差が小さいと、曲げモーメントが小さくなるため、基板SのY方向への進行方向の傾きが小さくなる。したがって、単位ローラー部材22a〜22dを同一速度で回転させた状態で例えば単位ローラー部材22aのみに超音波振動を付与させる場合や、単位ローラー部材22dのみに超音波振動を付与させる場合には、上記の場合に比べて基板Sの進行方向のY方向への傾きは小さくなる。
【0049】
また、
図11及び
図12は、基板Sのうち第一案内部材21及び第二案内部材22に掛けられた部分を+Z側から見たときの状態を示す図である。
図11は、単位ローラー部材22a〜22dに振動を付与しない状態を示している。
図12は、単位ローラー部材22a〜22dのうち+Y側に配置される2つの単位ローラー部材22c及び22dに上記の第一正弦波振動及び第二正弦波振動を付与した状態を示している。
【0050】
図11に示すように、単位ローラー部材22a〜22dに第一正弦波振動及び第二正弦波振動を付与せず、かつ、単位ローラー部材22a〜22dの回転を停止させた場合には、単位ローラー部材22a〜22dと基板Sとの間では、摩擦力がY方向において一定となる。なお、この場合には、第一案内部材21〜第三案内部材23とは異なる部分の駆動系を用いて基板Sを搬送方向に搬送させる。
【0051】
図11に示す場合には、
図9に示す単位ローラー部材22a〜22dを回転させる場合と同様に、基板Sのうち第一案内部材21と第二案内部材22との間の部分の張力T1及びT2は、Y方向において一定となる。基板Sが+X方向に移動する場合であっても、Z軸回りの方向にはモーメントは発生しない。したがって、基板Sは、X方向に沿って搬送される。
【0052】
これに対して、
図12に示すように、単位ローラー部材22a〜22dの回転を停止させた状態で、振動付与部24によって単位ローラー部材22c及び22dに上記のタイミングで第一正弦波振動及び第二正弦波振動を付与させる場合、単位ローラー部材22a及び22bと基板Sとの間の摩擦力に比べて、単位ローラー部材22c及び22dと基板Sとの間の摩擦力が大きくなる。このため、基板Sのうち第一案内部材21と第二案内部材22との間に作用する張力T1よりも、張力T2の方が大きくなる。
【0053】
したがって、基板Sのうち第一案内部材21と第二案内部材22との間の部分には、Z方向に見て時計回りの方向に曲げモーメントが発生する。この曲げモーメントにより、基板SはX方向に対して+Y方向に傾いた方向に進行することになる。
【0054】
また、同様の原理により、振動付与部24によって単位ローラー部材22a及び22bに第一正弦波振動及び第二正弦波振動を付与させつつ単位ローラー部材22a〜22dを同一速度で回転させる場合、単位ローラー部材22a及び22bと基板Sとの間の摩擦力に比べて、単位ローラー部材22c及び22dと基板Sとの間の摩擦力が小さくなる。このため、基板Sのうち第一案内部材21と第二案内部材22との間に作用する張力T1よりも、張力T2の方が小さくなる。
【0055】
したがって、基板Sのうち第一案内部材21と第二案内部材22との間の部分には、Z方向に見て反時計回りの方向に曲げモーメントが発生する。この曲げモーメントにより、基板SはX方向に対して−Y方向に傾いた方向に進行することになる。
【0056】
なお、Y方向における基板Sと第二案内部材22との間の摩擦力の差が小さいと、曲げモーメントが小さくなるため、基板SのY方向への進行方向の傾きが小さくなる。したがって、単位ローラー部材22a〜22dの回転を停止させた状態で例えば単位ローラー部材22aのみに第一正弦波振動及び第二正弦波振動を付与させる場合や、単位ローラー部材22dのみに第一正弦波振動及び第二正弦波振動を付与させる場合には、上記の場合に比べて基板Sの進行方向のY方向への傾きは小さくなる。
【0057】
このように、単位ローラー部材22a〜22dのそれぞれに対して、個別に第一正弦波振動及び第二正弦波振動を付与させることにより、基板Sの搬送方向をXY平面内において微調整することができる。また、当該振動の付与に加えて、単位ローラー部材22a〜22dの回転の有無、回転速度、Y方向に対する傾きを駆動部25により調整することで、基板Sの搬送方向を補助的に微調整することができる。例えば、単位ローラー部材22a〜22dが回転の有無を切り替えることにより振動を付与させた場合の基板Sの進行方向を逆向きに調整することができる。
【0058】
以上のように、本実施形態によれば、帯状の基板Sを搬送する搬送装置20において、基板Sの移動経路に設けられ、基板Sの搬送方向を例えば+X方向から−Z方向に変更する案内面22fを有する第二案内部材22と、案内面22fの一部に対して振動を付与する振動付与部24とを備えることとしたので、第二案内部材22と基板Sとの間の摩擦力を局所的に変化させることができる。
【0059】
この構成により、第二案内部材22によって基板Sに作用する張力が局所的に変化するため、基板Sの搬送方向である+X方向に交差するY方向に曲げモーメントが発生する。当該曲げモーメントにより、基板Sの搬送方向をY方向に傾けることができるため、基板Sの搬送方向の微調整を行うことができる。これにより、帯状の基板を高精度に搬送することができる。
【0060】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
例えば、上記実施形態では、第二案内部材22にのみ振動付与部24が設けられた構成としたが、これに限られることは無く、例えば第一案内部材21や第三案内部材23など、案内面22fとは異なる案内面21f及び23fを有する案内部材に振動付与部24が設けられた構成としても構わない。この構成において、複数の案内面21f、22f及び23fに対して、例えば振動の種類、振動方向、振動の進行方向などが異なるように、振動を付与するようにしても構わない。
【0061】
また、例えば上記実施形態では、第二案内部材22を構成する単位ローラー部材22a〜22dの全てに凸部26が設けられた構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無い。例えば、単位ローラー部材22a〜22dのうちY方向の両端部に配置される単位ローラー部材22a及び22dにのみに凸部26が設けられた構成であっても構わない。さらに、凸部26は、基板Sの裏面に対して点接触する構成であっても、所定の面積で接触する構成であってもよい。