特許第5929683号(P5929683)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5929683半導体基板の分離移載方法及び半導体基板用分離移載装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5929683
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】半導体基板の分離移載方法及び半導体基板用分離移載装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20160526BHJP
【FI】
   H01L21/68 A
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-224274(P2012-224274)
(22)【出願日】2012年10月9日
(65)【公開番号】特開2014-78559(P2014-78559A)
(43)【公開日】2014年5月1日
【審査請求日】2014年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079304
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100114513
【弁理士】
【氏名又は名称】重松 沙織
(74)【代理人】
【識別番号】100120721
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 克成
(74)【代理人】
【識別番号】100124590
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 武史
(72)【発明者】
【氏名】森 力
(72)【発明者】
【氏名】渡部 武紀
(72)【発明者】
【氏名】大塚 寛之
【審査官】 内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−048602(JP,A)
【文献】 特開平04−202678(JP,A)
【文献】 特開2010−165928(JP,A)
【文献】 特開2010−238740(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/109123(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/129982(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の半導体基板が重ね合わされて積載された半導体基板群の最上部の1枚の半導体基板に吸着具を吸着させ、上記半導体基板群を該半導体基板群の共振周波数又はその近傍の周波数で加振しながら、上記吸着具を移動させて吸着している1枚の半導体基板を半導体基板群から分離し、該半導体基板群から分離した半導体基板を上記加振により破損した半導体基板と破損しない半導体基板とに区分し、破損しない半導体基板をキャリアに移載することを特徴とする半導体基板の分離移載方法。
【請求項2】
上記半導体基板は、シリコンインゴットから切り出されたシリコンウエハであることを特徴とする請求項1に記載の半導体基板の分離移載方法。
【請求項3】
上記半導体基板群を加振する周波数は、750〜950kHzであることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体基板の分離移載方法。
【請求項4】
上記半導体基板群を載置した載置台に付設した高周波発振器及び振動子からなる加振器により、該半導体基板群への加振を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体基板の分離移載方法。
【請求項5】
上記加振器の出力は、600〜900Wであることを特徴とする請求項4に記載の半導体基板の分離移載方法。
【請求項6】
重ね合わされた複数の半導体基板からなる半導体基板群を載置する載置台と、該半導体基板群の最上部の1枚の半導体基板に吸着する吸着具と、吸着具を移動させる移動機構と、上記載置台に付設され、上記半導体基板群を加振する高周波発振器及び振動子からなる加振器と、半導体基板のモニター画像の画像処理に基づいて該半導体基板の破損の有無を判定する破損判定部とを備え、半導体基板群の最上部の1枚の半導体基板に吸着具を吸着させ、上記半導体基板群を該半導体基板群の共振周波数又はその近傍の周波数で加振しながら、上記吸着具を移動させて吸着している1枚の半導体基板を半導体基板群から分離し、該半導体基板群から分離した半導体基板について破損判定部の判定結果から上記加振により破損した半導体基板と破損しない半導体基板とに区分し、破損しない半導体基板をキャリアに移載することを特徴とする半導体基板用分離移載装置。
【請求項7】
上記吸着具は、ベルヌーイの原理によって発生する負圧を利用して半導体基板に吸着するもの、又は真空吸引により半導体基板に吸着するものであることを特徴とする請求項に記載の半導体基板用分離移載装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重ね合わされて積載された複数の半導体基板を単枚に分離し、キャリアに互いに隔てて収納する分離移載方法及び半導体基板用分離移載装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体プロセスにおいて、半導体基板、例えばシリコンウエハは、通常、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)、石英、SiC等で作られた保管具(例えばキャリア、石英ボート等)に設置され、その状態で各工程で処理されたり、各工程間を移動したり、所定期間保管されたりする。また、必要な処理を施した後に上下に積み重ねられた複数のシリコンウエハを、キャリアのようなウエハ収納装置へ移し替える作業がたびたび行われることもある。
【0003】
処理後のシリコンウエハとしては、例えばシリコンのインゴットから切り出しされた直後のウエハなどがあり、未研磨のウエハを直積みした状態(重ね合わされて積載された状態、ウエハ群)となっている。従って、そのままではシリコンウエハの処理が行えないため、ウエハ分離移載装置によりこの直積みされた状態のウエハを単枚に分離してキャリアに所定のピッチで互いに隔てて収納する必要がある。
【0004】
ここで、直積み状態のウエハ群からウエハを単枚に分離しようとする際、上下に積み重ねられたウエハが互いに貼りついていることがあるため、そのままでは単枚に分離して1枚ずつキャリアに収納することが困難であった。
【0005】
そこで、特開2010−165928号公報(特許文献1)では、液中で複数のウエハのうち最上位にあるものを吸着した状態で少なくともこの最上位のウエハに超音波を作用させつつ該ウエハを面内方向にスライドさせながらウエハを分離する方法が開示されている。また、特開2011−129652号公報(特許文献2)では、液中で気泡を含んだ水流を噴射させてウエハを1枚ずつ分離する方法が開示されている。
しかしながら、これらの方法によってもウエハの分離が困難であったり、複雑な機構となる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−165928号公報
【特許文献2】特開2011−129652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、簡便な方法で半導体基板群から容易に半導体基板を1枚ずつ分離することが可能な半導体基板の分離移載方法及び半導体基板用分離移載装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するため、下記の半導体基板の分離移載方法及び半導体基板用分離移載装置を提供する。
〔1〕 複数の半導体基板が重ね合わされて積載された半導体基板群の最上部の1枚の半導体基板に吸着具を吸着させ、上記半導体基板群を該半導体基板群の共振周波数又はその近傍の周波数で加振しながら、上記吸着具を移動させて吸着している1枚の半導体基板を半導体基板群から分離し、該半導体基板群から分離した半導体基板を上記加振により破損した半導体基板と破損しない半導体基板とに区分し、破損しない半導体基板をキャリアに移載することを特徴とする半導体基板の分離移載方法。
〔2〕 上記半導体基板は、シリコンインゴットから切り出されたシリコンウエハであることを特徴とする〔1〕に記載の半導体基板の分離移載方法。
〔3〕 上記半導体基板群を加振する周波数は、750〜950kHzであることを特徴とする〔1〕又は〔2〕に記載の半導体基板の分離移載方法。
〔4〕 上記半導体基板群を載置した載置台に付設した高周波発振器及び振動子からなる加振器により、該半導体基板群への加振を行うことを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の半導体基板の分離移載方法。
〔5〕 上記加振器の出力は、600〜900Wであることを特徴とする〔4〕に記載の半導体基板の分離移載方法。
〕 重ね合わされた複数の半導体基板からなる半導体基板群を載置する載置台と、該半導体基板群の最上部の1枚の半導体基板に吸着する吸着具と、吸着具を移動させる移動機構と、上記載置台に付設され、上記半導体基板群を加振する高周波発振器及び振動子からなる加振器と、半導体基板のモニター画像の画像処理に基づいて該半導体基板の破損の有無を判定する破損判定部とを備え、半導体基板群の最上部の1枚の半導体基板に吸着具を吸着させ、上記半導体基板群を該半導体基板群の共振周波数又はその近傍の周波数で加振しながら、上記吸着具を移動させて吸着している1枚の半導体基板を半導体基板群から分離し、該半導体基板群から分離した半導体基板について破損判定部の判定結果から上記加振により破損した半導体基板と破損しない半導体基板とに区分し、破損しない半導体基板をキャリアに移載することを特徴とする半導体基板用分離移載装置。
〕 上記吸着具は、ベルヌーイの原理によって発生する負圧を利用して半導体基板に吸着するもの、又は真空吸引により半導体基板に吸着するものであることを特徴とする〔〕に記載の半導体基板用分離移載装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、半導体基板群を該半導体基板群の共振周波数又はその近傍の周波数で加振することにより、半導体基板群ごと共振するので、半導体基板同士の貼り付きの度合いが緩和され、半導体基板群から1枚単位で半導体基板を容易に分離し、キャリアに収納することができる。また本発明では、チッピング(欠け又は割れ)を有し製品として不適な半導体基板が含まれる場合には、上記加振時に共振してチッピング部分で破壊が進行し、チッピングのない半導体基板と容易に識別可能となるため、必要に応じて半導体基板の分離移載と共に基板の破壊検査も兼ねることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る半導体基板用分離移載装置の構成例を示す断面概略図である。
図2図1の分離移載装置の載置台の構成を示す平面図である。
図3図1の分離移載装置に用いる高周波発振器の構成例を示す概略図である。
図4】本発明に係る半導体基板の分離移載方法の工程図であり、(a)は吸着具を半導体基板に吸着させた図、(b)は加振しながら1枚の半導体基板を分離した図、(c)は半導体基板をキャリアに収納する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る半導体基板の分離移載方法及び半導体基板用分離移載装置の一実施の形態における構成について説明する。
図1に、本発明に係る半導体基板用分離移載装置の構成例を示す。
図1に示すように、半導体基板用分離移載装置1(以下、分離移載装置1)は、重ね合わされた複数の半導体基板2pからなる半導体基板群2を載置する載置台3と、該半導体基板群2の最上部の1枚の半導体基板2pに吸着する吸着具4と、吸着具4を移動させるアーム形状の移動機構5と、上記載置台3に付設され、半導体基板群2を半導体基板群2の共振周波数又はその近傍の周波数で加振する加振器6とを備え、半導体基板群2から半導体基板2pを1枚ずつ分離し、分離した半導体基板2pをキャリア8まで搬送し、収納するものである。図1では、その主要部分を示している。
【0012】
ここで、半導体基板群2は、複数枚の、同形状、同寸法の半導体基板2pからなり、例えば複数枚のシリコンウエハからなる。特に好適には、半導体基板群2を構成する半導体基板2pはシリコンインゴットから切り出された直後のシリコンウエハであり、このときの半導体基板2pはウエット状態にあって基板同士は水分の表面張力により貼り付いた状態にあり、半導体基板群2は1つの構造物となっている。
【0013】
半導体基板2pの厚みtとしては、例えば半導体基板2pが200mm径あるいは擬似正方形シリコンウエハであるときには100〜300μmである。
【0014】
載置台3は、複数の半導体基板2pを板面に対して垂直方向に重ね合わせた半導体基板群2が載置され、該半導体基板群2を支持するベース板3aと、ベース板3aに立設され、半導体基板群2をその半導体基板2pの板面方向(水平方向)の四方を囲んで半導体基板群2の水平方向への移動を規制する囲い3bとからなる。ベース板3a、囲い3bともに、木材、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等からなる。
【0015】
また、囲い3bは、図2に示すように、ベース板3aに固設され、半導体基板群2の水平方向の三方を囲む三方囲い3b1と、三方囲い3b1の開口している一方を取り外し可能に封鎖する封鎖部3b2とからなる。
【0016】
載置台3への半導体基板2pの載置に際しては、まず三方囲い3b1の開口した側から複数の半導体基板2pを、その端部を三方囲い3b1に当接させながらベース板3a上に載置し、次いで三方囲い3b1の開口部を封鎖部3b2で封鎖する。これにより、半導体基板群2は、半導体基板2pそれぞれの端面が揃い、重ね合わされた状態で載置台3に載置される。
【0017】
載置台3に載置する半導体基板2pの枚数は、例えば半導体基板2pがシリコンウエハであるときには、シリコンウエハを収納するキャリア8の収納枚数に対応していることが好ましく、25〜150枚程度である。
【0018】
吸着具4は、例えば特開2002−368065号公報、特開2011−245588号公報に記載されているような、ベルヌーイの原理によって発生する負圧を利用して半導体基板に吸着する汎用の非接触吸着具であることが好ましい。これにより、半導体基板2pを非接触に懸垂するように浮上保持することができ、半導体基板2pへの接触による該半導体基板2pの破損を防止することが可能である。あるいは、吸着具4は、例えば特開2011−29388号公報に記載されているような、真空吸引により半導体基板に吸着する真空吸着パッドであってもよい。
【0019】
移動機構5は、アーム先端に吸着具4を有し、アーム根元に駆動部(不図示)を有する搬送アームである。駆動部により搬送アームである移動機構5を水平方向、垂直方向に移動させることが可能であり、搬送アーム先端の吸着具4を水平方向に移動させて載置台3上の半導体基板群2の最上部の上方に配置したり、そこから離れたりする動作制御を行い、また吸着具4を垂直方向に移動させて載置台3上の半導体基板群2の最上部に接近させたり、遠ざけたりする動作制御を行うことにより、半導体基板2pへの吸着具4の吸着動作、及び半導体基板2pの分離移載動作を行うことができる。なお、図1においては、半導体基板群2から分離された半導体基板2pを後述するキャリア8に収納する移動機構を省略しているが、従来公知の機構を採用すればよい。
【0020】
加振器6は、載置台3の底部、即ちベース板3aの半導体基板群2の載置面とは反対側の面に付設された高周波発振器及び振動子からなる。具体的には、加振器6は、高周波発振器が接続された電極間に振動子となる圧電セラミックスを挿入した構成のものであり、圧電セラミックス(振動子)がベース板3aに固設されている。
【0021】
加振器6の駆動に当たっては、まず高周波発振器から電極間に高周波のパルス電圧又は交流電圧が印加され、この印加電圧に対応して圧電セラミックスが振動子として伸び縮みを繰り返して振動し、その振動が載置台3を経由して半導体基板群2に伝達され、該半導体基板群2を加振するようになる。
【0022】
この圧電セラミックスは、高純度な酸化チタン、酸化バリウム等の粉体を高温で焼き固めた多結晶体セラミックスであり、その形状は、図3に示すように、直径10〜70mmφの円形振動子(図3(a))、あるいはドーナッツ型振動子(図3(b))を基本とする。なお、図3では高周波発振器を省略している。
【0023】
次に、本発明に係る半導体基板の分離移載方法として、上記構造の分離移載装置1を用いた場合の処理手順を図4を参照しながら説明する。なお、半導体基板2pはシリコンインゴットから切り出された直後のシリコンウエハである。
【0024】
まず、分離移載装置1において、複数枚の半導体基板2pをそれぞれの端部を三方囲い3b1に当接させながら載置台3のベース板3a上に載置し、三方囲い3b1の開口部を封鎖部3b2により封鎖し、半導体基板群2として配置する。
次に、移動機構5により吸着具4を移動させて、該吸着具4を半導体基板群2の最上部の1枚の半導体基板2pに近接させ、吸着具4を該半導体基板2pに吸着させる(ここまで図4(a))。
【0025】
次いで、加振器6を駆動させ、半導体基板群2を該半導体基板群2の共振周波数又はその近傍の周波数で加振する。このとき、半導体基板群2を加振する周波数は、750〜950kHzであることが好ましい。半導体基板群2を加振する周波数がその範囲を外れると、半導体基板群2は共鳴せずに振動しないため半導体基板2p同士の貼り付き度合いを緩和させることができず、半導体基板2pを1枚ずつ分離することが困難となる場合がある。
また、加振器6の出力は、600〜900Wであることが好ましい。加振器6の出力が600W未満では、半導体基板2p同士の貼り付きを解消するのに不十分である場合があり、900W超では、チッピングのない正常な半導体基板2pまでをも破壊してしまうおそれがある。
上記加振により、半導体基板2p間の貼り付きが解消され、移動機構5により吸着具4を垂直方向に移動させることにより、半導体基板群2から1枚単位で半導体基板2pを容易に分離することができる(ここまで図4(b))。
【0026】
また、シリコンインゴットから切り出された直後のシリコンウエハ(半導体基板2p)からなる半導体基板群2には、チッピング(欠け又は割れ)を有し製品として不適な半導体基板2pが混在しているが、上記のような加振時にチッピング(欠け又は割れ)を有し製品として不適な半導体基板2pは半導体基板群2の共振により、チッピング部分で破壊が進行し、チッピングのない半導体基板と容易に識別可能となる。そこで、上記のようにして半導体基板群2から分離した半導体基板2pを上記加振により破損した半導体基板2pと破損しない半導体基板2pとに区分し、破損しない半導体基板2pを後述するキャリアに移載するとよい。なお、半導体基板2pの破損有無の識別は、モニター観察によってもよいし、モニター画像の画像処理に基づく破損判定によってもよい。
このように、本発明によれば、半導体基板2pの分離移載と共に基板の破壊検査も兼ねることが可能である。
【0027】
次に、分離した1枚の半導体基板2pをキャリア8に移載する(図4(c))。
ここで、キャリア8は、例えば半導体基板2pをウエット洗浄するために半導体基板2pを1枚ずつ収納する治具であって、PFA(四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等の耐薬品性に優れたフッ素樹脂材料等からなり、底板と側板から構成される上部が開口した矩形箱型の容器であり、互いに対向する一方の両側板8a,8a内面には、それぞれ半導体基板2pの両端部を保持する基板保持溝(あるいは棚)が半導体基板2pの基板面に対して垂直方向、即ち半導体基板2pの並列配置方向に一定間隔で複数設けられている。
【0028】
半導体基板2pのキャリア8への移載に際しては、例えば図4(c)に示すように上部が開口部となるように配置したキャリア8に対して、キャリア8における並列配置方向にその主面を向けて垂直に立てた状態の半導体基板2pをキャリア8の上方からキャリア8に向けて下降させ、その半導体基板2pの両端部をキャリア8の両側板8aに設けた対向する基板保持溝に挿入するようにする。あるいは、キャリア8をその開口部が側方を向くように立てられて両側板8a,8aに設けられた対向する1対の基板保持溝(棚)が垂直方向に互いに平行となるように配置し、半導体基板2pの主面を上に向けた状態で、キャリア8の側方からキャリア8に向けてスライド移動させ、その半導体基板2pの両端部をキャリア8の両側板8aに設けた対向する基板保持溝に挿入するようにしてもよい。これにより、複数の半導体基板2pは基板保持溝により1枚ずつ支持され、並列配置された状態で収納される。以降、このように半導体基板2pが収納されたキャリア8を用いて、定法に従ってスライスダメージを除去するエッチング、テクスチャ形成、洗浄、リンス、水きり乾燥までのウエット処理を行う。
【0029】
以上のように、本発明によれば、半導体基板群2を該半導体基板群2の共振周波数又はその近傍の周波数で加振することにより、半導体基板群2が共振するので、半導体基板2p同士の貼り付きの度合いが緩和され、半導体基板群2から1枚単位で半導体基板2pを容易に分離し、キャリア8に収納することができる。また本発明では、チッピングを有し製品として不適な半導体基板2pは上記加振時の共振によりチッピング部分で破壊が進行し、チッピングのない半導体基板2pと容易に識別可能となるため、半導体基板2pの分離移載と共に基板の破壊検査も兼ねることができる。即ち、本発明によると、強度として強い実用的な半導体基板2pを1枚ずつ移載することが可能である。
【0030】
また、本発明に係る半導体基板の分離移載方法及び半導体基板用分離移載装置は、例えば、シリコン太陽電池の製造ラインに適用することができる。具体的には、本発明は、太陽電池の製造ラインでの基板受け入れ工程で使用できる。太陽電池の製造ラインでは、シリコンインゴットからスライスされて得られたシリコンウエハがスタックされた状態で受け入れられており、通常、その製造ラインにおける最初の工程はテクスチャ形成である。ここで、テクスチャ形成工程は、シリコン基板表面に微細な凹凸を形成し、基板の反射率を低下させる工程であり、一般にその量産性の高さからウエットエッチングが用いられることが多いため、スタックされた状態のシリコンウエハをキャリアに移載して処理する必要がある。その際、本発明を適用すれば貼り付きなくシリコンウエハを確実に1枚ずつ移載でき、チッピングのない強度の強いシリコンウエハを次工程に送ることができる。
【0031】
なお、本発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、上述した実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。
【0032】
例えば、上述した実施の形態では、半導体基板2pをキャリア8に収容する場合について説明したが、これに限らず、半導体基板2pを単に単枚に分離する場合に使用できる。
また、上述した実施の形態では、大気中で半導体基板群2を載置台3に載置した状態で半導体基板2pを分離する場合について説明したが、これに限らず、界面活性剤が添加された純水等の液体中で載置台3上に半導体基板群2を載置した状態で、上記のように加振して半導体基板2pを1枚ずつ分離するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 半導体基板用分離移載装置(分離移載装置)
2 半導体基板群
2p 半導体基板
3 載置台
3a ベース板
3b 囲い
3b1 三方囲い
3b2 封鎖部
4 吸着具
5 移動機構
6 加振器
8 キャリア
8a 側板
図1
図2
図3
図4