特許第5929847号(P5929847)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5929847オルガノポリシロキサン及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5929847
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】オルガノポリシロキサン及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/18 20060101AFI20160526BHJP
   C08G 77/48 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
   C07F7/18 YCSP
   C08G77/48
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-130097(P2013-130097)
(22)【出願日】2013年6月21日
(65)【公開番号】特開2014-28797(P2014-28797A)
(43)【公開日】2014年2月13日
【審査請求日】2015年6月25日
(31)【優先権主張番号】特願2012-143616(P2012-143616)
(32)【優先日】2012年6月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079304
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100114513
【弁理士】
【氏名又は名称】重松 沙織
(74)【代理人】
【識別番号】100120721
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 克成
(74)【代理人】
【識別番号】100124590
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100157831
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 克彦
(72)【発明者】
【氏名】廣神 宗直
(72)【発明者】
【氏名】土田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】工藤 宗夫
【審査官】 山本 昌広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−48985(JP,A)
【文献】 特開2000−38395(JP,A)
【文献】 特開2003−113243(JP,A)
【文献】 特表2004−511598(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/112765(WO,A1)
【文献】 特開2014−214091(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/002750(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 7/00−7/30
C08G 77/00−77/62
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記平均組成式(1)で表される少なくともスルフィド基を有する有機基、長鎖アルキル基、及び加水分解性基を含有するオルガノポリシロキサン。
(A)a(B)b(C)c(D)d(R1eSiO(4-2a-b-c-d-e)/2 (1)
〔式中、Aはスルフィド基含有二価の有機基、Bは炭素数5〜10のアルキル基、Cは加水分解性基及び/又は水酸基、Dはメルカプト基含有有機基、R1は炭素数1〜4のアルキル基、又は炭素数6〜10のアリール基、0<2a<1、0<b<1、0<c<3、0<d<1、0≦e<2、且つ0<2a+b+c+d+e<4であり、前記加水分解性基は下記式(4)
*−OR2 (4)
(式中、R2は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアラルキル基、又は炭素数2〜10のアルケニル基を表す。*−は結合手を示す。)
で表され、前記スルフィド基含有二価の有機基は下記式(2)
*−(CH2n−Sx−(CH2n* (2)
(式中、nは1〜10の整数、xは統計的平均値で1〜6を表す。*−、−*は結合手を示す。)
で表され、前記メルカプト基含有有機基は下記式(3)
*−(CH2m−SH (3)
(式中、mは1〜10の整数を表す。*−は結合手を示す。)
で表される。〕
【請求項2】
式(1)において、0.05≦2a≦0.9、0.05≦b≦0.9、1.0≦c≦2.0、0.05≦d≦0.8、0≦e≦1、2≦2a+b+c+d+e≦3である請求項1に記載のオルガノポリシロキサン。
【請求項3】
式(1)において、0.1≦2a≦0.5、0.2≦b≦0.8、1.0≦c≦1.7、0.1≦d≦0.4、0≦e≦0.05、2≦2a+b+c+d+e≦3である請求項2に記載のオルガノポリシロキサン。
【請求項4】
下記式(5)で表される有機ケイ素化合物と、
【化1】
(式中、nは1〜10の整数、xは統計的平均値で1〜6を表す。R3は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアラルキル基、又は炭素数2〜10のアルケニル基、R4は炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数6〜10のアリール基、yは1〜3の整数を表す。)
下記式(6)で表される有機ケイ素化合物と、
【化2】
(式中、R3、R4、yは上記と同様であり、pは5〜10の整数を表す。)
下記式(7)で表される有機ケイ素化合物と、
【化3】
(式中、R3、R4、m、yは上記と同様である。)
必要により下記式(8)で表される有機ケイ素化合物と
【化4】
(式中、R3、R4、yは上記と同様であり、qは1〜4の整数を表す。)
を共加水分解縮合することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のオルガノポリシロキサンの製造方法。
【請求項5】
式(5)〜(8)の有機ケイ素化合物全体に対し、式(5)の有機ケイ素化合物の使用量が10〜50モル%、式(6)の有機ケイ素化合物の使用量が20〜80モル%、式(7)の有機ケイ素化合物の使用量が10〜40モル%、式(8)の有機ケイ素化合物の使用量が0〜5モル%である請求項4に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スルフィド基含有有機基、長鎖アルキル基、及び加水分解性基を含有する新規なオルガノポリシロキサン及び該オルガノポリシロキサンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、メルカプト基と加水分解性基を含有するオルガノポリシロキサン及びその製造方法は既に公知の技術である。例えば特許文献1(特開平07−292108号公報)では加水分解縮合触媒として中性のフッ素化合物を用いる製造方法が開示されている。また、特許文献2(特開平09−111188号公報)や特許文献3(特開2003−113243号公報)ではメルカプト基及び加水分解性基を含有しているオルガノポリシロキサンのコーティング材組成物やゴム組成物としての用途が開示されている。
【0003】
しかし、メルカプト基と加水分解性基を含むオルガノポリシロキサンを含有する組成物は、活性なメルカプト基の影響により、組成物の保存安定性が悪いという問題点があった。
【0004】
また、スルフィド基と加水分解性基を含有するオルガノポリシロキサン及びその製造方法は既に公知である。例えば特許文献4(特許第4376999号公報)ではスルフィド基とプロピル基を含有するオルガノシロキサン及びその製造方法が開示されている。
【0005】
しかし、スルフィド基含有有機基、長鎖アルキル基、及び加水分解性基を含有するオルガノポリシロキサンは知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平07−292108号公報
【特許文献2】特開平09−111188号公報
【特許文献3】特開2003−113243号公報
【特許文献4】特許第4376999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、スルフィド基含有有機基、長鎖アルキル基、及び加水分解性基を含有する新規なオルガノポリシロキサンを提供することを目的とする。更に、本発明は、上記新規なオルガノポリシロキサンを製造する方法を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、下記方法により、スルフィド基含有有機基、長鎖アルキル基、及び加水分解性基を含有する新規なオルガノポリシロキサンを得ることができ、このオルガノポリシロキサンをエポキシ樹脂組成物等に配合した場合、優れた保存安定性を与えることを知見し、本発明をなすに至った。
【0009】
従って、本発明は、下記のオルガノポリシロキサン及びその製造方法を提供する。
〔1〕
下記平均組成式(1)で表される少なくともスルフィド基を有する有機基、長鎖アルキル基、及び加水分解性基を含有するオルガノポリシロキサン。
(A)a(B)b(C)c(D)d(R1eSiO(4-2a-b-c-d-e)/2 (1)
〔式中、Aはスルフィド基含有二価の有機基、Bは炭素数5〜10のアルキル基、Cは加水分解性基及び/又は水酸基、Dはメルカプト基含有有機基、R1は炭素数1〜4のアルキル基、又は炭素数6〜10のアリール基、0<2a<1、0<b<1、0<c<3、0<d<1、0≦e<2、且つ0<2a+b+c+d+e<4であり、前記加水分解性基は下記式(4)
*−OR2 (4)
(式中、R2は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアラルキル基、又は炭素数2〜10のアルケニル基を表す。*−は結合手を示す。)
で表され、前記スルフィド基含有二価の有機基は下記式(2)
*−(CH2n−Sx−(CH2n* (2)
(式中、nは1〜10の整数、xは統計的平均値で1〜6を表す。*−、−*は結合手を示す。)
で表され、前記メルカプト基含有有機基は下記式(3)
*−(CH2m−SH (3)
(式中、mは1〜10の整数を表す。*−は結合手を示す。)
で表される。〕
〔2〕
式(1)において、0.05≦2a≦0.9、0.05≦b≦0.9、1.0≦c≦2.0、0.05≦d≦0.8、0≦e≦1、2≦2a+b+c+d+e≦3である〔1〕に記載のオルガノポリシロキサン。
〔3〕
式(1)において、0.1≦2a≦0.5、0.2≦b≦0.8、1.0≦c≦1.7、0.1≦d≦0.4、0≦e≦0.05、2≦2a+b+c+d+e≦3である〔2〕に記載のオルガノポリシロキサン。
〔4〕
下記式(5)で表される有機ケイ素化合物と、
【化1】
(式中、nは1〜10の整数、xは統計的平均値で1〜6を表す。R3は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアラルキル基、又は炭素数2〜10のアルケニル基、R4は炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数6〜10のアリール基、yは1〜3の整数を表す。)
下記式(6)で表される有機ケイ素化合物と、
【化2】
(式中、R3、R4、yは上記と同様であり、pは5〜10の整数を表す。)
下記式(7)で表される有機ケイ素化合物と、
【化3】
(式中、R3、R4、m、yは上記と同様である。)
必要により下記式(8)で表される有機ケイ素化合物と
【化4】
(式中、R3、R4、yは上記と同様であり、qは1〜4の整数を表す。)
を共加水分解縮合することを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のオルガノポリシロキサンの製造方法。
〔5〕
式(5)〜(8)の有機ケイ素化合物全体に対し、式(5)の有機ケイ素化合物の使用量が10〜50モル%、式(6)の有機ケイ素化合物の使用量が20〜80モル%、式(7)の有機ケイ素化合物の使用量が10〜40モル%、式(8)の有機ケイ素化合物の使用量が0〜5モル%である〔4〕記載の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明のオルガノポリシロキサンは、スルフィド基含有有機基と長鎖アルキル基を有しており、活性なメルカプト基を立体的に保護しているため、本発明のオルガノポリシロキサン配合組成物の保存安定性が大幅に改善される。また、スルフィド基は酸などにより還元的に開裂してメルカプト基を生成し、更に熱などにより開裂してメルカプト基に相当するチイルラジカルを発生するため、該オルガノポリシロキサンはメルカプト基含有オルガノポリシロキサン相当品として使用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のスルフィド基を有する有機基、長鎖アルキル基、及び加水分解性基を含有するオルガノポリシロキサンは、下記平均組成式(1)で表される。
(A)a(B)b(C)c(D)d(R1eSiO(4-2a-b-c-d-e)/2 (1)
(式中、Aはスルフィド基含有二価の有機基、Bは炭素数5〜10のアルキル基、Cは加水分解性基及び/又は水酸基、Dはメルカプト基含有有機基、R1は炭素数1〜4のアルキル基、又は炭素数6〜10のアリール基、0<2a<1、0<b<1、0<c<3、0≦d<1、0≦e<2、且つ0<2a+b+c+d+e<4である。)
【0012】
a、b、d、eはケイ素原子の合計モル数を1とした場合の各有機基の平均モル数を意味しており、各有機基が一分子中に平均何モル%含まれているかを示している。従って、2a+b+d+e=1である。Aは二価の有機基を示すため2aという表記になる。また、cはケイ素原子1モルに対し、ケイ素上に加水分解性基が平均何モル%含まれているかを示している。
【0013】
より具体的には、前記スルフィド基含有二価の有機基が下記式(2)
*−(CH2n−Sx−(CH2n* (2)
(式中、nは1〜10、好ましくは2〜4、xは統計的平均値で1〜6、好ましくは2〜4を表す。*−、−*は結合手を示す。)
で表され、前記メルカプト基含有有機基が下記式(3)
*−(CH2m−SH (3)
(式中、mは1〜10、好ましくは1〜5の整数を表す。*−は結合手を示す。)
で表され、前記加水分解性基が下記式(4)
*−OR2 (4)
(式中、R2は炭素数1〜20、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜3のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアラルキル基、又は炭素数2〜10、好ましくは2〜4のアルケニル基を表す。*−は結合手を示す。)
また、Bの炭素数5〜10の一価炭化水素基としては、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基が好ましく、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等が挙げられる。
1として、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。
【0014】
前記スルフィド基含有二価の有機基としては、
−CH2−S2−CH2−、
−C24−S2−C24−、
−C36−S2−C36−、
−C48−S2−C48−、
−CH2−S4−CH2−、
−C24−S4−C24−、
−C36−S4−C36−、
−C48−S4−C48
等が挙げられる。
【0015】
前記メルカプト基含有有機基としては、
−CH2SH、
−C24SH、
−C36SH、
−C48SH、
−C510SH、
−C612SH、
−C714SH、
−C816SH、
−C918SH、
−C1020SH
等が挙げられる。
【0016】
2のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、オクタデシル基などが挙げられ、アリール基としては、フェニル基、トリル基などが挙げられ、アラルキル基としては、ベンジル基などが挙げられ、アルケニル基としては、ビニル基、プロペニル基、ペンテニル基などが挙げられる。
【0017】
より具体的には、0<d<1で表すことができるスルフィド基を有する有機基、及び長鎖アルキル基を有する有機基、メルカプト基を有する有機基、加水分解性基を一分子内に含有するオルガノポリシロキサンである。
この場合、好ましくは0.05≦2a≦0.9、0.05≦b≦0.9、1.0≦c≦2.0、0.05≦d≦0.8、0≦e≦0.1、1<2a+b+c+d+e≦3、特に2≦2a+b+c+d+e≦3、より好ましくは0.1≦2a≦0.5、0.2≦b≦0.8、1.0≦c≦1.7、0.1≦d≦0.4、0≦e≦0.05である。
【0018】
また、本発明のオルガノポリシロキサンのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量は、好ましくは400〜10,000、より好ましくは500〜5,000、更に好ましくは600〜2,000である。重量平均分子量が小さすぎると、未反応の有機ケイ素化合物が大量に残存してしまう場合があり、重量平均分子量が大きすぎると、高粘度乃至固化してしまい、取り扱いが難しくなるおそれがある。
【0019】
本発明のオルガノポリシロキサンの製造は、下記式(5)で表される有機ケイ素化合物と、
【化5】
(式中、n、xは上記と同様であり、R3は炭素数1〜20、好ましくは1〜5のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアラルキル基、又は炭素数2〜10、好ましくは2〜4のアルケニル基、R4は炭素数1〜10、好ましくは1〜3のアルキル基、又は炭素数6〜10のアリール基、yは1〜3、特に2又は3の整数を表す。)
下記式(6)で表される有機ケイ素化合物と、
【化6】
(式中、R3、R4、yは上記と同様であり、pは5〜10の整数を表す。)
必要により下記式(7)で表される有機ケイ素化合物と、
【化7】
(式中、R3、R4、m、yは上記と同様である。)
必要により下記式(8)で表される有機ケイ素化合物と
【化8】
(式中、R3、R4、yは上記と同様であり、qは1〜4、好ましくは1〜3の整数を表す。)
を共加水分解縮合することにより行われる。
【0020】
3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、オクタデシル基などが挙げられ、アリール基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基などが挙げられ、アルケニル基としては、ビニル基、プロペニル基、ペンテニル基などが挙げられる。R4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、オクタデシル基などが挙げられ、アリール基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基などが挙げられ、アラルキル基としては、ベンジル基、フェニルエチル基などが挙げられる。
【0021】
上記式(5)で表される有機ケイ素化合物としては、特に限定されないが、具体的にはビス(トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドなどが挙げられる。
【0022】
上記式(6)で表される有機ケイ素化合物としては、特に限定されないが、具体的にはペンチルトリメトキシシラン、ペンチルメチルジメトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ペンチルメチルジエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルメチルジメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキシルメチルジエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルメチルジメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、オクチルメチルジエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルメチルジメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、デシルメチルジエトキシシランなどが挙げられる。
【0023】
上記式(7)で表される有機ケイ素化合物としては、特に限定されないが、具体的にはα−メルカプトメチルトリメトキシシラン、α−メルカプトメチルメチルジメトキシシラン、α−メルカプトメチルトリエトキシシラン、α−メルカプトメチルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシランなどが挙げられる。
【0024】
上記式(8)で表される有機ケイ素化合物としては、特に限定されないが、具体的にはメチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルエチルジエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルメチルジメトキシシラン、プロピルメチルジエトキシシランなどが挙げられる。
【0025】
ここで、上記式(5)〜(8)の有機ケイ素化合物の使用量は、式(1)において、a〜eが上述した数となるように選択される。具体的には、式(5)〜(8)の有機ケイ素化合物全体に対し、式(5)の有機ケイ素化合物は5〜90モル%、特に10〜50モル%であり、式(6)の有機ケイ素化合物は10〜95モル%、特に20〜80モル%であり、式(7)の有機ケイ素化合物は0〜85モル%、特に10〜40モル%であり、式(8)の有機ケイ素化合物は0〜10モル%、特に0〜5モル%であることが好ましい。
【0026】
共加水分解縮合は、公知の方法によって行うことができ、使用する水の量も公知の量とすることができ、通常、加水分解性シリル基全体1モルに対し、0.5〜0.99モルであり、より好ましくは0.66〜0.90モル使用することができる。
【0027】
本発明のオルガノポリシロキサンの製造には、必要に応じて有機溶媒を用いてもよい。溶媒としては特に限定されないが、具体的にはペンタン、ヘキサン、ヘプタン、デカンなどの脂肪族炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル系溶媒、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール系溶媒などが挙げられる。なかでも、加水分解反応性に優れるという観点から、エタノール、i−プロパノールが好ましい。上記溶媒を使用する場合、その使用量は特に限定されないが、有機ケイ素化合物の質量の2倍量以下程度が好適であり、好ましくは有機ケイ素化合物と同量以下程度である。
【0028】
また、本発明のオルガノポリシロキサンの製造には、必要に応じて触媒を用いてもよい。触媒としては特に限定されないが、具体的には塩酸、酢酸などの酸性触媒、テトラブチルオルトチタネート、アンモニウムフルオリドなどのルイス酸触媒、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カルシウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドなどのアルカリ金属塩、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジンなどのアミン化合物が挙げられる。シランの加水分解反応(及び/又は一部縮合)の触媒として例えば塩酸を使用し、シラノールの縮合(オリゴマー化)の触媒として例えば水酸化カリウムを使用することができる。触媒の量(シランの加水分解反応の触媒とシラノールの縮合反応の触媒を併用する場合はそれぞれの量)は、反応性に優れるという観点から、全加水分解性シリル基全体1モルに対し0.001〜0.05(単位:モル当量)であるのが好ましい。
【0029】
なお、共加水分解縮合は、通常、20〜100℃、特に60〜85℃にて行うことができる。
【0030】
本発明のオルガノポリシロキサンは、樹脂改質剤等として好適に用いられる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例、比較例及び参考例を示して本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0032】
[実施例1]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた2Lセパラブルフラスコに、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(信越化学工業(株)製、KBE−846)215.6g(0.4mol)、オクチルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBE−3083)442.4g(1.6mol)、エタノール162.0gを納めた後、室温にて0.5N塩酸水32.4g(水1.8mol)とエタノール75.6gの混合溶液を滴下した。次いで、80℃にて2時間撹拌した。その後、濾過、5質量%KOH/EtOH溶液15.7gを滴下し、80℃で2時間撹拌した。更に、減圧濃縮、濾過することで、褐色透明液体494.1gを得た。得られたシリコーンオリゴマーをゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した結果、重量平均分子量は880であり、下記平均組成式で示されるものであった。得られたオリゴマーをオリゴマー1とする。
(−C36−S4−C36−)0.167(−C8170.667(−OC251.50SiO0.75
【0033】
[実施例2]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた2Lセパラブルフラスコに、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(信越化学工業(株)製、KBE−846)215.6g(0.4mol)、エタノール50.0gを納め、撹拌しながら室温で0.5N−HCl水溶液7.2g(水0.40mol)とエタノール16.8gの混合溶液を滴下し、室温で30分撹拌した。更に撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに、オクチルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBE−3083)442.4g(1.6mol)、エタノール112.0gを納め、撹拌しながら室温で0.5N−HCl水溶液14.4g(水0.80mol)とエタノール33.6gの混合溶液を滴下し、室温で30分撹拌した後、この反応溶液を先の2Lセパラブルフラスコの中に滴下した。その後、0.5N−HCl水溶液10.8g(水0.60mol)とエタノール25.2gの混合溶液を滴下し、80℃で2時間撹拌した後、5質量%KOH/EtOH溶液15.7gを滴下し、80℃で2時間撹拌した。この反応溶液を減圧留去、濾過することにより、褐色透明液体を489.3g得た。得られたシリコーンオリゴマーをGPCにより測定した結果、重量平均分子量は870であり、下記平均組成式で示されるものであった。得られたオリゴマーをオリゴマー2とする。
(−C36−S4−C36−)0.167(−C8170.667(−OC251.50SiO0.75
【0034】
[実施例3]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた2Lセパラブルフラスコに、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(信越化学工業(株)製、KBE−846)107.8g(0.2mol)、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBE−803)95.4g(0.4mol)、オクチルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBE−3083)442.4g(1.6mol)、エタノール162.0gを納めた後、室温にて0.5N塩酸水32.4g(水1.8mol)とエタノール75.6gの混合溶液を滴下した。次いで、80℃にて2時間撹拌した。その後、濾過、5質量%KOH/EtOH溶液14.6gを滴下し、80℃で2時間撹拌した。更に、減圧濃縮、濾過することで、褐色透明液体490.1gを得た。得られたシリコーンオリゴマーをGPCにより測定した結果、重量平均分子量は860であり、下記平均組成式で示されるものであった。得られたオリゴマーをオリゴマー3とする。
(−C36−S4−C36−)0.083(−C8170.667(−OC251.50(−C36SH)0.167SiO0.75
【0035】
[実施例4]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた2Lセパラブルフラスコに、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(信越化学工業(株)製、KBE−846)107.8g(0.2mol)、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBE−803)95.4g(0.4mol)、エタノール50.0gを納め、撹拌しながら室温で0.5N−HCl水溶液7.2g(水0.40mol)とエタノール16.8gの混合溶液を滴下し、室温で30分撹拌した。更に撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに、オクチルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBE−3083)442.4g(1.6mol)、エタノール112.0gを納め、撹拌しながら室温で0.5N−HCl水溶液14.4g(水0.80mol)とエタノール33.6gの混合溶液を滴下し、室温で30分撹拌した後、この反応溶液を先の2Lセパラブルフラスコの中に滴下した。その後、0.5N−HCl水溶液10.8g(水0.60mol)とエタノール25.2gの混合溶液を滴下し、80℃で2時間撹拌した後、5質量%KOH/EtOH溶液14.6gを滴下し、80℃で2時間撹拌した。この反応溶液を減圧留去、濾過することにより、褐色透明液体を488.1g得た。得られたシリコーンオリゴマーをGPCにより測定した結果、重量平均分子量は860であり、下記平均組成式で示されるものであった。得られたオリゴマーをオリゴマー4とする。
(−C36−S4−C36−)0.083(−C8170.667(−OC251.50(−C36SH)0.167SiO0.75
【0036】
[実施例5]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた2Lセパラブルフラスコに、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(信越化学工業(株)製、KBE−846)107.8g(0.2mol)、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBE−803)95.4g(0.4mol)、オクチルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBE−3083)428.6g(1.55mol)、メチルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBE−13)8.9g(0.05mol)、エタノール162.0gを納めた後、室温にて0.5N塩酸水32.4g(水1.8mol)とエタノール75.6gの混合溶液を滴下した。次いで、80℃にて2時間撹拌した。その後、濾過、5質量%KOH/EtOH溶液14.6gを滴下し、80℃で2時間撹拌した。更に、減圧濃縮、濾過することで、褐色透明液体481.1gを得た。得られたシリコーンオリゴマーをGPCにより測定した結果、重量平均分子量は850であり、下記平均組成式で示されるものであった。得られたオリゴマーをオリゴマー5とする。
(−C36−S4−C36−)0.083(−C8170.645(−OC251.50(−C36SH)0.167(−CH30.021SiO0.75
【0037】
[実施例6]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた2Lセパラブルフラスコに、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(信越化学工業(株)製、KBE−846)107.8g(0.2mol)、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBE−803)95.4g(0.4mol)、エタノール50.0gを納め、撹拌しながら室温で0.5N−HCl水溶液7.2g(水0.40mol)とエタノール16.8gの混合溶液を滴下し、室温で30分撹拌した。更に撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに、オクチルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBE−3083)428.6g(1.55mol)、メチルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBE−13)8.9g(0.05mol)、エタノール112.0gを納め、撹拌しながら室温で0.5N−HCl水溶液14.4g(水0.80mol)とエタノール33.6gの混合溶液を滴下し、室温で30分撹拌した後、この反応溶液を先の2Lセパラブルフラスコの中に滴下した。その後、0.5N−HCl水溶液10.8g(水0.60mol)とエタノール25.2gの混合溶液を滴下し、80℃で2時間撹拌した後、5質量%KOH/EtOH溶液14.6gを滴下し、80℃で2時間撹拌した。この反応溶液を減圧留去、濾過することにより、褐色透明液体を480.3g得た。得られたシリコーンオリゴマーをGPCにより測定した結果、重量平均分子量は850であり、下記平均組成式で示されるものであった。得られたオリゴマーをオリゴマー6とする。
(−C36−S4−C36−)0.083(−C8170.645(−OC251.50(−C36SH)0.167(−CH30.021SiO0.75
【0038】
[比較例1]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた2Lセパラブルフラスコに、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBE−803)572.4g(2.4mol)、エタノール162.0gを納めた後、室温にて0.5N塩酸水32.4g(水1.8mol)とエタノール75.6gの混合溶液を滴下した。次いで、80℃にて2時間撹拌した。その後、濾過、5質量%KOH/EtOH溶液15.7gを滴下し、80℃で2時間撹拌した。更に、減圧濃縮、濾過することで、無色透明液体420.1gを得た。得られたシリコーンオリゴマーをGPCにより測定した結果、重量平均分子量は750であり、下記平均組成式で示されるものであった。得られたオリゴマーをオリゴマー7とする。
(−C36−SH)1.0(−OC251.50SiO0.75
【0039】
[比較例2]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた2Lセパラブルフラスコに、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(信越化学工業(株)製、KBE−846)107.8g(0.2mol)、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBE−803)95.4g(0.4mol)、プロピルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBE−3033)330.2g(1.6mol)、エタノール162.0gを納めた後、室温にて0.5N塩酸水32.4g(水1.8mol)とエタノール75.6gの混合溶液を滴下した。次いで、80℃にて2時間撹拌した。その後、濾過、5質量%KOH/EtOH溶液14.6gを滴下し、80℃で2時間撹拌した。更に、減圧濃縮、濾過することで、褐色透明液体368.9gを得た。得られたシリコーンオリゴマーをGPCにより測定した結果、重量平均分子量は690であり、下記平均組成式で示されるものであった。得られたオリゴマーをオリゴマー8とする。
(−C36−S4−C36−)0.083(−C370.667(−OC251.50(−C36SH)0.167SiO0.75
【0040】
[参考例1〜6、比較参考例1,2]
表1の配合で実施例1〜6、比較例1,2で得られたオリゴマー1〜8を含有する樹脂組成物を作製した。用いたフェノール樹脂、エポキシ樹脂、硬化促進剤を以下に示す。
アルミナ製セラミック基板を樹脂組成物中に浸漬し、基板を50mm/分の一定速度で引き上げ、120℃×1時間+150℃×2時間の条件で硬化させた。
フェノール樹脂:TD−2131(DIC(株)製)
エポキシ樹脂:YD−128(東都化成(株)製)
硬化促進剤:トリフェニルホスフィン
【0041】
なお、得られた塗膜の密着性、樹脂組成物の室温での保存安定性は以下のように実施した。
密着性:碁盤目剥離試験/JIS K 5400に準拠
保存安定性:○ 1ヶ月後ゲル化せず
△ 1ヶ月後ゲル化
× 1週間後ゲル化
【0042】
【表1】
【0043】
上記の結果より、いずれの場合においても、本実施例が保存安定性に優れており、本発明のオルガノポリシロキサンの効果を確認することができた。