特許第5929904号(P5929904)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5929904
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】ガラスアンテナ及び窓ガラス
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/32 20060101AFI20160526BHJP
   H01Q 1/22 20060101ALI20160526BHJP
   H01Q 9/42 20060101ALI20160526BHJP
   H01Q 5/371 20150101ALI20160526BHJP
   H01Q 7/00 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
   H01Q1/32 A
   H01Q1/22 C
   H01Q9/42
   H01Q5/371
   H01Q7/00
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-513988(P2013-513988)
(86)(22)【出願日】2012年4月27日
(86)【国際出願番号】JP2012061466
(87)【国際公開番号】WO2012153664
(87)【国際公開日】20121115
【審査請求日】2015年2月3日
(31)【優先権主張番号】特願2011-107676(P2011-107676)
(32)【優先日】2011年5月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】旭硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】林 拓司
(72)【発明者】
【氏名】徳永 諭
【審査官】 米倉 秀明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−081567(JP,A)
【文献】 特開平06−268421(JP,A)
【文献】 特開2004−072419(JP,A)
【文献】 特開平08−084012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/32
H01Q 1/22
H01Q 5/371
H01Q 7/00
H01Q 9/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の窓ガラスに設けられるガラスアンテナであって、
アンテナ導体と、給電部とを備え、
前記アンテナ導体は、
前記給電部に接続され、第1の方向に延在するようにループ状に形成された第1のアンテナエレメントと、
前記第1のアンテナエレメントに接続され前記第1の方向に延在する第1の部分エレメントと、前記第1の部分エレメントに接続され前記第1の方向と直交する第2の方向に延在する第2の部分エレメントとによって、L字状に形成された第2のアンテナエレメントと、
前記第1のアンテナエレメントに接続され、且つ前記第1の部分エレメントに対し前記第2の部分エレメントが延在する側で前記第2の方向に延在する第3のアンテナエレメントと、
前記第1のアンテナエレメントのループを2つのループに分割する第4のアンテナエレメントと
前記第1のアンテナエレメントに接続され、且つ前記第1の部分エレメントに対し前記第2の部分エレメントが延在する反対側でL字状に形成された第6のアンテナエレメントとを含む、ことを特徴とする、ガラスアンテナ。
【請求項2】
前記アンテナ導体は、
前記給電部に接続され、前記第1の方向に延在する第5のアンテナエレメントを含む、請求項1に記載のガラスアンテナ。
【請求項3】
前記第2の部分エレメントと前記第3のアンテナエレメントとの間に、前記給電部を給電点としない別の導体が配置される、請求項1又は2に記載のガラスアンテナ。
【請求項4】
前記別の導体は、AMアンテナエレメントである、請求項に記載のガラスアンテナ。
【請求項5】
請求項1からのいずれか一項に記載のガラスアンテナが設けられた窓ガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の窓ガラスに設けられるガラスアンテナ、ガラスアンテナが設けられた窓ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、デジタルオーディオ放送(Digital Audio Broadcasting:DAB)を受信可能なガラスアンテナが知られている(例えば、特許文献1〜5参照)。DABは、174〜240MHzのband III(バンドIII)と1452〜1492MHzのL band(Lバンド)の2つの異なる周波数帯から構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本国特開平10−327009号公報
【特許文献2】日本国特開2000−307321号公報
【特許文献3】米国特許第6924771号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第1732160号明細書
【特許文献5】日本国特開2010−81567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
DABのように周波数帯域がデュアルバンドの場合、帯域が離れているため、両方の帯域に対応可能な十分な受信性能を持つガラスアンテナを設計することは難しく、デュアルバンドに対応可能で高い受信感度を有するガラスアンテナが要望されている。デュアルバンドに対応可能で高い受信感度を有するガラスアンテナとして、例えば特許文献5に開示されたガラスアンテナ50がある(図1参照)。
【0005】
一方、AM放送に対応するAMガラスアンテナが、良好な受信感度を得るためには、その面積を大きくする必要がある。しかしながら、AMガラスアンテナと上下方向に長いガラスアンテナ50とを同じ窓ガラスに設ける場合、ガラスアンテナ50の給電位置によっては、AMガラスアンテナの面積を確保できない場合がある。
【0006】
例えば図1に示されるように、ガラスアンテナ50の給電部56の位置は、車体側の給電位置の制約があるため、窓ガラスのピラー側よりも中央に近いルーフ側になることがあり、窓ガラスの中央寄りの位置にアンテナエレメントを配置しなければならなくなる。その場合、AMガラスアンテナは窓ガラスの中央付近のみに形成されることになり、十分な面積を確保できない。窓ガラスのピラー側の近傍にはアンテナエレメントを配設可能な空白領域51ができるが、上下方向に長いガラスアンテナ50が邪魔になって、AMガラスアンテナ20の面積を空白領域51まで拡張することができない。
【0007】
図1の場合、ガラスアンテナ50のエレメント52とデフォッガ30のヒータ線30aとの間を通るように、AMガラスアンテナ20のエレメントを延長し、空白領域51に新たに配置したアンテナエレメントと接続することで、AMガラスアンテナ20の面積を拡張する案も考えられる。しかしながら、AMガラスアンテナ20をデフォッガ30に近づけすぎると、AMガラスアンテナ20の受信感度が低下するおそれがある。以上のようなことから、背丈の低い、すなわち上下方向の長さが短いガラスアンテナが求められている。また、背丈の低いガラスアンテナであれば、上記とは別の理由で設置領域が上下方向に狭い場合であっても設置でき汎用性が高いガラスアンテナとなる。
【0008】
そこで、本発明は、DABなどのデュアルバンドに対応可能で高い受信感度を有し、且つ上下方向の長さが短いガラスアンテナの提供を目的とする。また、該ガラスアンテナが設けられた窓ガラスの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係るガラスアンテナは、
車両の窓ガラスに設けられるガラスアンテナであって、
アンテナ導体と、給電部とを備え、
前記アンテナ導体は、
前記給電部に接続され、第1の方向に延在するようにループ状に形成された第1のアンテナエレメントと、
前記第1のアンテナエレメントに接続され前記第1の方向に延在する第1の部分エレメントと、前記第1の部分エレメントに接続され前記第1の方向と直交する第2の方向に延在する第2の部分エレメントとによって、L字状に形成された第2のアンテナエレメントと、
前記第1のアンテナエレメントに接続され、且つ前記第1の部分エレメントに対し前記第2の部分エレメントが延在する側で前記第2の方向に延在する第3のアンテナエレメントと、
前記第1のアンテナエレメントのループを2つのループに分割する第4のアンテナエレメントと
前記第1のアンテナエレメントに接続され、且つ前記第1の部分エレメントに対し前記第2の部分エレメントが延在する反対側でL字状に形成された第6のアンテナエレメントとを含む、ことを特徴とするものである。
【0010】
また、上記目的を達成するため、本発明に係る窓ガラスは、該ガラスアンテナが設けられたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、DABなどのデュアルバンドに対応可能で高い受信感度を得ることができ、且つ、背丈の低いガラスアンテナを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】従来のガラスアンテナ50の平面図である。
図2】本発明の第1の実施形態であるガラスアンテナ100の平面図である。
図3】本発明の第2の実施形態であるガラスアンテナ200の平面図である。
図4】ガラスアンテナ200が設けられたリヤガラス12の平面図である。
図5】バンドIIIのアンテナ利得の実測データである。
図6】Lバンドのアンテナ利得の実測データである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態の説明を行う。なお、形態を説明するための図面において、方向について特に記載しない場合には図面上での方向をいうものとし、各図面の向きは、記号、数字の方向に対応する。また、平行、直角などの方向は、本発明の効果を損なわない程度のズレを許容するものである。また、それらの図面は、窓ガラスが車両に取り付けられた状態での車内視の図であるが、車外視の図として参照してもよい。例えば、窓ガラスが車両の後部に取り付けられるリヤガラスである場合、図面上での左右方向が車幅方向に相当する。また、本発明に係る窓ガラスは、リヤガラスに限定されず、車両の前部に取り付けられるフロントガラス、車両の側部に取り付けられるサイドガラスであってよい。
【0014】
図2は、本発明の第1の実施形態である車両用のガラスアンテナ100の平面図である。ガラスアンテナ100は、車両用の窓ガラス12に平面的なパターンとして設けられる給電部18及びアンテナ導体から、構成される。
【0015】
給電部18は、アンプ等の不図示の信号処理回路にアンテナ導体を接続するための部位である。車体開口縁15aは、窓ガラス12が取り付けられる窓開口部を形成している車体フランジの端部である。給電部18は、窓ガラス12の縁の近傍又は車体開口縁15aの近傍に位置しているとよい。
【0016】
ガラスアンテナ100は、アンテナ導体のパターンとして、第1〜第4のアンテナエレメントを備える。
【0017】
第1のアンテナエレメントは、給電部18に接続され、第1の方向に延在するようにループ状に形成されたものである。なお、本態様での第1の方向とは、窓ガラス12が窓開口部に取り付けらえた状態における窓ガラス12上での上下方向を示している。図2には、第1のアンテナエレメントとして、ループエレメント16が例示されている。ループエレメント16の上端部は、給電部18の下端部aに直接接続されている。給電部18の上下左右の任意の端部に接続エレメントを介して接続されてもよい。また、ループエレメント16は、上下方向を長手方向とする長方形のループから構成される。ループの形状は、長方形に限らず、正方形等の四角形または他の方形状でもよいし、円状でもよい。ループエレメント16を構成するループは、後述の分割エレメント7によって2つのループ部1,2に分割されている。
【0018】
第2のアンテナエレメントは、第1のアンテナエレメントの下側に接続され上下方向に延在する第1の部分エレメントと、第1の部分エレメントに接続され第1の方向に直交する第2の方向に延在する第2の部分エレメントとによって、L字状に形成されたものである。なお、本態様での第2の方向とは、窓ガラス12が窓開口部に取り付けらえた状態における窓ガラス12上での左右方向を示している。図2には、第2のアンテナエレメントとして、L字エレメント5が例示されている。L字エレメント5は、上下方向に延在する第1の部分エレメントとして、線分エレメント3を備え、左右方向に延在する第2の部分エレメントとして、線分エレメント4を備える。線分エレメント3の上端部は、ループエレメント16の下辺の一部である下端部dに直接接続されている。また、線分エレメント4の右端部は、線分エレメント3の下端部eに直接接続されている。線分エレメント4は、下端部eを起点として左方に直線的に延伸し、左方への延伸の終点である左端部fまで延伸する。
【0019】
第3のアンテナエレメントは、第1のアンテナエレメントに接続され、且つ第1の部分エレメントに対し第2の部分エレメントが延在する側で左右方向に延在するものである。図2には、第3のアンテナエレメントとして、直線状の水平エレメント6が例示されている。水平エレメント6の右端部は、ループエレメント16の左辺の一部である左端部bに直接接続されている。また、水平エレメント6は、線分エレメント3に対し線分エレメント4が延在する側で左右方向に延在する。水平エレメント6は、左端部bを起点として左方に直線的に延伸し、左方への延伸の終点である左端部cまで延伸する。
【0020】
第4のアンテナエレメントは、第1のアンテナエレメントのループを2つのループに分割するものである。図2には、第4のアンテナエレメントとして、左右方向に延在する分割エレメント7が例示されている。分割エレメント7は、ループエレメント16を構成するループを、2つのループ部1,2に分割する。分割エレメント7は、その左端がループエレメント16の左辺の一部である左端部gに接続され、その右端がループエレメント16の右辺の一部である右端部hに接続される。
【0021】
このように、図2に例示したような形態のガラスアンテナ100であれば、給電部18をアンプ等の信号処理回路に所定の導電性部材を介して電気的に接続することによって、上下方向の長さH1が短くても、DABなどのデュアルバンドに対応可能な良好な受信特性を得ることができる。具体的には、図1に例示した従来のガラスアンテナ50の受信感度と同等又はそれ以上の受信感度を、ガラスアンテナ50の第1の方向の長さよりも短い110mm以下の長さH1で得ることができる。
【0022】
特に、上下方向に延在するループエレメント16が地平面(特には、水平面)に対して垂直方向の成分を有するように窓ガラス12に設けられることによって、DABなどのデュアルバンドの垂直偏波の電波を一層感度良く受信することができる。車両に対する窓ガラス12の取り付け角度は、地平面に対し、20〜90°、特には、30〜90°が好ましい。
【0023】
上記の導電性部材として、例えば、AV線や同軸ケーブルなどの給電線が用いられる。同軸ケーブルを用いる場合には、同軸ケーブルの内部導体を給電部18に電気的に接続し、同軸ケーブルの外部導体を車体にアース接続すればよい。また、給電線と容易に着脱可能なコネクタを、給電部18に実装する構成を採用してもよい。このようなコネクタによって、AV線や同軸ケーブルの内部導体を給電部18に取り付けることが容易になる。さらに、コネクタと一体的にアンプ等の信号処理回路を設けてもよい。また、給電部18に突起状の導電性部材を設置し、窓ガラス12が取り付けられる車体のフランジに設けられた信号処理回路に接続される端子などの接続部にその突起状の導電性部材が接触、嵌合するような構成としてもよい。
【0024】
また、エレメントの「端部」は、エレメントの延伸の始点又は終点であってもよいし、その始点又は終点手前の導体部分である始点近傍又は終点近傍であってもよい。また、エレメント同士の接続部は、曲率を有して接続されていてもよい。
【0025】
また、アンテナ導体及び給電部18は、銀ペースト等の、導電性金属を含有するペーストを、例えば窓ガラスの車内側表面にプリントし、焼付けて形成される。しかし、この形成方法に限定されず、銅等の導電性物質からなる、線状体又は箔状体を、窓ガラスの車内側表面又は車外側表面に形成してもよく、窓ガラスに接着剤等により貼付してもよく、窓ガラス自身の内部に設けてもよい。
【0026】
給電部18の形状は、上記の導電性部材又はコネクタの実装面の形状に応じて決めるとよい。例えば、正方形、略正方形、長方形、略長方形などの方形状や多角形状が実装上好ましい。なお、円、略円、楕円、略楕円などの円状でもよい。
【0027】
また、アンテナ導体からなる導体層を合成樹脂製フィルムの内部又はその表面に設け、導体層付き合成樹脂製フィルムを窓ガラス板の車内側表面又は車外側表面に形成してガラスアンテナとしてもよい。さらに、アンテナ導体が形成されたフレキシブル回路基板を窓ガラスの車内側表面又は車外側表面に形成してガラスアンテナとしてもよい。
【0028】
また、窓ガラス12の面上に隠蔽膜を形成し、この隠蔽膜の上に給電部及びアンテナ導体の一部分又は全体を設けてもよい。隠蔽膜は黒色セラミックス膜等のセラミックスが挙げられる。この場合、窓ガラスの車外側から見ると、隠蔽膜により隠蔽膜上に設けられているアンテナ導体の部分が車外から見えなくなり、デザインの優れた窓ガラスとなる。図示の構成では、給電部とアンテナ導体の一部を隠蔽膜上に(隠蔽膜の縁と窓ガラス12の縁との間に)形成させることで、車外視において導体の細い直線部分のみを見ることになり、デザイン上好ましい。
【0029】
図3は、本発明の第2の実施形態であるガラスアンテナ200の平面図である。図2のガラスアンテナ100と同様の構成については、その説明を省略する。図3のガラスアンテナ200は、図2のガラスアンテナ100の構成に加えて、給電部に接続され第1の方向に延在する第5のアンテナエレメントとして追加された補助垂直エレメント8と、第6のアンテナエレメントとして追加されたL字エレメント17とをアンテナ導体のパターンとして備えるものである。
【0030】
したがって、ガラスアンテナ200も、ガラスアンテナ100と同じ構成を有しているので、給電部18をアンプ等の信号処理回路に所定の導電性部材を介して電気的に接続することによって、上下方向の長さH1が短くても、DABなどのデュアルバンドに対応可能な良好な受信特性を得ることができる。
【0031】
補助垂直エレメント8は、給電部18に接続され、上下方向に延在するものである。補助垂直エレメント8が設けられると、デュアルバンドのうち高周波数帯のアンテナ利得向上の点で好適である。例えばDABの場合、Lバンドのアンテナ利得向上の点で好適である。
【0032】
図3の場合、補助垂直エレメント8の上端部は、給電部18の下端部aとは異なる左側の下端部iに直接接続されている。補助垂直エレメント8は、ループエレメント16に対し水平エレメント6が延在する側で上下方向に延在する線分エレメントである。補助垂直エレメント8は、水平エレメント6に接しない範囲内で、下端部iを起点に下方に直線的に延伸し、下方への延伸の終点である下端部jまで延伸する。
【0033】
L字エレメント17は、ループエレメント16の側方に接続され、線分エレメント3に対し線分エレメント4が延在する反対側でL字状に形成されたものである。L字エレメント17が設けられると、デュアルバンドのうち低周波数帯のアンテナ利得向上の点で好適である。例えばDABの場合、バンドIIIのアンテナ利得向上の点で好適である。
【0034】
図3の場合、L字エレメント17は、左右方向に延在する第3の部分エレメントとして、線分エレメント9を備え、上下方向に延在する第4の部分エレメントとして、線分エレメント10を備える。線分エレメント9の左端部は、ループエレメント16の右辺の一部である右端部kに直接接続されている。また、線分エレメント10の上端部は、線分エレメント9の右端部lに直接接続されている。線分エレメント10は、右端部lを起点として下方に直線的に延伸し、下方への延伸の終点である下端部mまで延伸する。
【0035】
また、図3に示されるように、水平エレメント6と分割エレメント7とが、連続した線になるように、すなわち、左端部bと左端部gとを一致させるように配置してもよい。このように構成することで見栄えがよくなる。
【0036】
また、図3に示されるように、線分エレメント4と水平エレメント6との間に、給電部18を給電点としない別の独立導体パターンを設けると、デュアルバンドのうち高周波数帯のアンテナ利得向上の点で好適である。例えばDABの場合、Lバンドのアンテナ利得向上の点で好適である。また、その独立導体パターンが、AMガラスアンテナのアンテナエレメントの一部であると、AMガラスアンテナの面積拡大(AM放送帯のアンテナ利得向上)とLバンドのアンテナ利得向上の点で好適である。
【0037】
図3には、このような独立導体パターンとして、線状導体11が例示されている。線状導体11は、線分エレメント4と水平エレメント6との間の上下方向の空白領域に線状導体11の右端部nが位置するように、左右方向に延在するエレメントである。線状導体11は、1本でもよいが、複数あってもよい。
【実施例】
【0038】
図4に示されるように上述のガラスアンテナ200の形態を実際の車両のリヤガラスに取り付けて作製された自動車用ガラスアンテナについて、そのアンテナ利得の実測結果について説明する。
【0039】
アンテナ利得は、ガラスアンテナが形成された自動車用窓ガラスを、ターンテーブル上の自動車の窓枠に水平面に対して約25°傾けた状態で組みつけて実測した。給電部にはコネクタが取り付けられていて、フィーダ線を介してネットワークアナライザに接続される。水平方向から窓ガラスに対して全方向から電波が照射されるように、ターンテーブルが回転する。
【0040】
アンテナ利得の測定は、ターンテーブルの中心に、ガラスアンテナのガラスを組みつけた自動車の車両中心をセットして、自動車を360°回転させて行われる。アンテナ利得のデータは、回転角度5°毎に、バンドIIIの周波数範囲において3MHz毎に測定され、Lバンドの周波数範囲において1.7MHz毎に測定される。電波の発信位置とアンテナ導体との仰角は略水平方向(地面と平行な面を仰角=0°、天頂方向を仰角=90°とする場合、仰角=0°の方向)で測定した。アンテナ利得は、半波長ダイポールアンテナを基準とし、半波長ダイポールアンテナのアンテナ利得が0dBとなるように標準化した。
【0041】
図4に示される窓ガラス(リヤガラス)12には、デフォッガ30と、デフォッガ30の上部に配置されたAMガラスアンテナ21及びガラスアンテナ200とが設けられている。さらに、AMガラスアンテナ21の給電部22が設けられている。
【0042】
デフォッガ30は、複数の並走するヒータ線30aと該ヒータ線に給電する複数の帯状のバスバ30b,30cとを有する通電加熱式のパターンである(図4では、上側のみ表示し、下側は省略)。デフォッガ30は、窓ガラス12(又は、車体の車幅方向)の中央線40に対して線対称に配置されている。複数のヒータ線は、窓ガラス12を車両に取り付けた状態で水平面(地平面)に対して平行な方向に並走するように窓ガラス12に配置される。
【0043】
ガラスアンテナ200の形態によれば、DABなどのデュアルバンドの受信感度を確保したまま、上下方向の長さを従来のガラスアンテナよりも短くできる。そのため、AMガラスアンテナ21がデフォッガ30に近くてAMガラスアンテナ21の受信感度が低下することなく、AMガラスアンテナ21のエレメントを、図4に示されるように、ガラスアンテナ200の最下位のエレメントとデフォッガ30との間を通るように延長できる。
【0044】
図5,6は、図4において、ガラスアンテナ200のアンテナ利得の実測データである。図5の縦軸は、バンドIII(170〜240MHz)において3MHz毎に計測された回転角度5°毎のアンテナ利得の帯域での平均値を示している。図6の縦軸は、Lバンド(1452〜1492MHz)において1.7MHz毎に計測された回転角度5°毎のアンテナ利得の帯域での平均値を示している。
【0045】
図5,6を実測したときの各ガラスアンテナの各部(図3,4)の寸法は、単位をmmとすると、
H1:105
H2:70
H3:12
H4:30
H5:45
H6:50
H7:10
W1:15
W2:15
W3:20
W4:100
W5:120
h1:20
h2:20
h3:20
h4:20
h5:40
h6:10
w1:330
w2:70
w3:170
w4:205
w5:155
w6:115
w7:200
w8:175
w9:245
w10:150
w11:120
である。各エレメントの導体幅は0.8mmである。
【0046】
図5,6に示した実測結果によれば、図1に例示した従来のガラスアンテナ50の受信感度と同等又はそれ以上の受信感度を、ガラスアンテナ50の上下方向の長さよりも短い105mmで得ることができた。
【0047】
本出願を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本出願は、2011年5月12日出願の日本特許出願(特願2011-107676)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【符号の説明】
【0048】
1,2 ループ部
3,4 線分エレメント
5 L字エレメント
6 水平エレメント
7 分割エレメント
8 補助垂直エレメント
9,10 線分エレメント
11 線状導体
12 窓ガラス
16 ループエレメント
17 L字エレメント
18 給電部
20,21 AMガラスアンテナ
22 給電部
30 デフォッガ
30b,30c バスバ
40 中央線
50 従来のガラスアンテナ
51 空白領域
56 給電部
100,200 ガラスアンテナ
図1
図2
図3
図4
図5
図6