【文献】
Hiromi TAKARADA et al.,Mutational Study on αGln90 of Fe-Type Nitrile Hydratase from Rhodococcus sp. N771 ,Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry ,2006年,Vol. 70 No. 4 ,P881-889
【文献】
Nitrile hydratases (NHases): At the interface of academia and industry,Biotechnology Advances,2010年,Volume 28, Issue 6,Pages 725-741
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明を詳細に説明する。
1.ニトリルヒドラターゼ
(a)既知のニトリルヒドラターゼ
本発明の改良型ニトリルヒドラターゼは、既知のニトリルヒドラターゼの改良型であり、その由来は特に限定されるものではない。例えば、米国生物工学情報センター(NCBI;National Center for Biotechnology Information)により提供されるGenBankデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?CMD=search&DB=protein)においてニトリルヒドラターゼとして登録されているものや、公知文献でニトリルヒドラターゼについて記載されているものがあればそれを参考にしてもよい。例えば、特許文献5〜9(参照することにより、本明細書に取り込まれる)に記載されたニトリルヒドラターゼを示すことができる。特許文献5〜9のニトリルヒドラターゼは耐熱性やアクリルアミド耐性を有しており、本発明のアミノ酸置換の付加により、触媒活性の向上という性質を付加することができる。具体的には、配列番号53〜57のアミノ酸配列を有するニトリルヒドラターゼを挙げることができる。
【0014】
また、上記アミノ酸配列をコードする遺伝子から公知の方法を用いて変異を導入し、所望の性能を有する変異酵素を評価・選抜する事で、さらに性能向上した改良酵素を取得することができる。具体的には配列番号58〜61のアミノ酸配列を有するニトリルヒドラターゼを挙げることができる。
【0015】
「ニトリルヒドラターゼ」は、αサブユニット及びβサブユニットのドメインが集合してなる高次構造をとり、補欠分子として非ヘム鉄原子、又は非コリン核コバルト原子を有している。これらのニトリルヒドラターゼは、それぞれ鉄型ニトリルヒドラターゼ及びコバルト型ニトリルヒドラターゼという呼称で区別されている。
【0016】
鉄型ニトリルヒドラターゼとしては、ロドコッカス属N−771株由来のものをその代表例として挙げることができる。この鉄型ニトリルヒドラターゼは、X線結晶構造解析がなされ、その立体構造が明らかになっている。その結果、当該酵素は、活性中心を形成するαサブユニットのシステインクラスター(Cys−Ser−Leu−Cys−Ser−Cys)(配列番号48)中の4つのアミノ酸残基を介して非へム鉄と結合している。
【0017】
コバルト型ニトリルヒドラターゼとしては、ロドコッカス・ロドクロウスJ1株(以下「J1菌」と称する場合がある)由来のもの、又はシュードノカルディア・サーモフィラ(Pseudonocardia thermophila)由来のものを代表例として挙げることができる。
【0018】
J1菌由来のコバルト型ニトリルヒドラターゼは、活性中心を形成するαサブユニットのシステインクラスター(Cys−Thr−Leu−Cys−Ser−Cys)(配列番号49)で示される領域を介してコバルト原子と結合している。なお、シュードノカルディア・サーモフィラ由来のコバルト型ニトリルヒドラターゼのシステインクラスターは、上記J1菌由来のシステインクラスターにおける上流側(N末端側)から第4番目のシステイン(Cys)がシステインスルフィン酸(Csi)であり、最も下流側(C末端側)の第6番目のシステイン(Cys)がシステインスルフェン酸(Cse)である。
【0019】
上述の通り、補欠分子は、αサブユニット中のシステインクラスター「C(S/T)LCSC」(配列番号48、49)で表される領域と結合している。このような補欠分子結合領域を含むニトリルヒドラターゼとしては、例えば、ロドコッカス・ロドクロウスJ1(FERM BP−1478)、ロドコッカス・ロドクロウスM8(SU1731814)、ロドコッカス・ロドクロウスM33(VKM Ac−1515D)、ロドコッカス・ロドクロウスATCC39484(特開2001−292772)、バチルス・スミシ(Bacillus smithii)(特開平9−248188)、シュードノカルディア・サーモフィラ(特開平9−275978) 又はジオバチルス・サーモグルコシダシアス(Geobacillus thermoglucosidasius)由来のアミノ酸配列を有するニトリルヒドラターゼ及び遺伝子配列でコードされるニトリルヒドラターゼが挙げられる。
【0020】
一方、βサブユニットの機能については構造の安定性に関与していると考えられている。
【0021】
例えば、ロドコッカス・ロドクロウスJ1(FERM BP−1478)由来のαサブユニットは、アミノ酸配列が配列番号4で示され、塩基配列が配列番号3で示される。また、βサブユニットはアミノ酸配列が配列番号2で示され、塩基配列が配列番号1で示され、アクセッション番号は「P21220」である。また、ロドコッカス・ロドクロウスM8(SU1731814)由来のαサブユニットのアクセッション番号は「ATT79340」であり、βサブユニットのアクセッション番号は「AAT79339」である。ロドコッカス・ピリジノボランスMW3由来のニトリルヒドラターゼ遺伝子のアクセッション番号はAJ582605、ロドコッカス・ピリジノボランスS85−2由来のニトリルヒドラターゼ遺伝子のアクセッション番号はAJ582605、ロドコッカス・ルーバーRH(CGMCC No.2380)のニトリルヒドラターゼ遺伝子はCN101463358に記載されている。さらに、ノカルジア・YS−2002由来のニトリルヒドラターゼ遺伝子はアクセッション番号「X86737」であり、ノカルジア sp.JBRs由来ニトリルヒドラターゼ遺伝子はアクセッション番号「AY141130」である。
【0022】
(b−1)改良型ニトリルヒドラターゼ(β48)
各種微生物由来の既知のニトリルヒドラターゼのβサブユニットのアミノ酸(一文字表記)配列のアライメントを、
図2−1および2−2に示した。なお、
図2−1、2−2のそれぞれにおいて、各アミノ酸配列は、上から順に、配列番号2、5〜12および42〜47を示す。
【0023】
さらに、本発明の改良型ニトリルヒドラターゼには、配列番号50で示されるアミノ酸配列を除く既知のニトリルヒドラターゼのアミノ酸配列において、1個又は数個(例えば1個〜10個程度、好ましくは1個〜5個程度)のアミノ酸残基が欠失、置換及び/又は付加された改良型ニトリルヒドラターゼも含まれる。
【0024】
本発明の改良型ニトリルヒドラターゼの一例としては、
図3に示すように、βサブユニットが配列番号51に示されるアミノ酸配列を有するものを挙げることができる。ここでは、N末端から数えて44番目〜52番目に、配列番号50で示されるアミノ酸配列が存在する。
【0025】
一つの実施態様では、配列番号51に示されるアミノ酸配列を有する改良型ニトリルヒドラターゼにおいて、X
1、X
2、X
3、X
5、X
6はそれぞれ独立に任意のアミノ酸残基を表し、X
4は、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、セリンおよびスレオニンよりなる群から選択されるアミノ酸である。
【0026】
また、他の実施態様では、配列番号51に示されるアミノ酸配列を有する改良型ニトリルヒドラターゼにおいて、X
1、X
3、X
5、X
6はそれぞれ独立に任意のアミノ酸残基を表し、X
2はS(セリン)であり、X
4は、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、セリンおよびスレオニンよりなる群から選択されるアミノ酸である。
【0027】
さらに、他の実施態様では、配列番号51に示されるアミノ酸配列を有する改良型ニトリルヒドラターゼにおいて、X
1がI(イソロイシン)、X
2がS(セリン)、X
3がW(トリプトファン)、X
5がK(リジン)、X
6がS(セリン)であり、X
4は、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、セリンおよびスレオニンよりなる群から選択されるアミノ酸である。
【0028】
本発明の改良型ニトリルヒドラターゼの他の一例としては、配列番号2で示される既知のニトリルヒドラターゼのアミノ酸配列において、βサブユニットの48番目のアミノ酸残基(トリプトファン)が、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、セリン、またはスレオニンに置換したものが挙げられる。
【0029】
このようなアミノ酸置換の態様の表記例としては、Wβ48C、Wβ48D、Wβ48E、Wβ48H、Wβ48I、Wβ48K、Wβ48M、Wβ48N、Wβ48P、Wβ48Q、Wβ48S、Wβ48Tが挙げられる。尚、アミノ酸のアルファベット表記は通常の1文字で表すことができ、置換箇所までのアミノ酸残基数を表す数字(例えば「48」)の左側に表示したアルファベットは、置換前のアミノ酸の1文字表記を示し、右側に表示したアルファベットは置換後のアミノ酸の1文字表記を示している。
【0030】
具体的には、配列番号2に示すβサブユニットのアミノ酸配列に関して、「Wβ48C」と表記した場合は、βサブユニットのアミノ酸配列(配列番号2)のうちN末端のアミノ酸残基から数えて(当該N末端のアミノ酸残基を含めて数えて)48番目のトリプトファイン(W)がシステイン(C)に置換された改良型ニトリルヒドラターゼにおけるアミノ酸置換の態様を意味する。
【0031】
本発明のより好ましい改良型ニトリルヒドラターゼにおけるアミノ酸置換の態様は、それぞれ以下の1〜12の表記で表すことができる。
1. Wβ48C
2. Wβ48D
3. Wβ48E
4. Wβ48H
5. Wβ48I
6. Wβ48K
7. Wβ48M
8. Wβ48N
9. Wβ48P
10. Wβ48Q
11. Wβ48S
12. Wβ48T
上記アミノ酸置換を生じさせるための塩基置換としては、以下の態様が好ましく挙げられる。
【0032】
Wβ48C:塩基配列TGG(配列番号1における142〜144番目に位置する)をTGCに置換させること(TGG→TGC)が好ましい。
Wβ48D:塩基配列TGG(配列番号1における142〜144番目に位置する)をGACに置換させること(TGG→GAC)が好ましい。
Wβ48E:塩基配列TGG(配列番号1における142〜144番目に位置する)をGAGに置換させること(TGG→GAG)が好ましい。
Wβ48F:塩基配列TGG(配列番号1における142〜144番目に位置する)をTTCに置換させること(TGG→TTC)が好ましい。
Wβ48H:塩基配列TGG(配列番号1における142〜144番目に位置する)をCACに置換させること(TGG→CAC)が好ましい。
Wβ48I:塩基配列TGG(配列番号1における142〜144番目に位置する)をATCに置換させること(TGG→ATC)が好ましい。
Wβ48K:塩基配列TGG(配列番号1における142〜144番目に位置する)をAAGに置換させること(TGG→AAG)が好ましい。
Wβ48M:塩基配列TGG(配列番号1における142〜144番目に位置する)をATGに置換させること(TGG→ATG)が好ましい。
Wβ48N:塩基配列TGG(配列番号1における142〜144番目に位置する)をAACに置換させること(TGG→AAC)が好ましい。
Wβ48P:塩基配列TGG(配列番号1における142〜144番目に位置する)をCCGに置換させること(TGG→CCG)が好ましい。
Wβ48Q:塩基配列TGG(配列番号1における142〜144番目に位置する)をCAGに置換させること(TGG→CAG)が好ましい。
Wβ48S:塩基配列TGG(配列番号1における142〜144番目に位置する)をTCCに置換させること(TGG→TCC)が好ましい。
Wβ48T:塩基配列TGG(配列番号1における142〜144番目に位置する)をACCに置換させること(TGG→ACC)が好ましい。
【0033】
(b−2)改良型ニトリルヒドラターゼ(β37)
各種微生物由来の既知のニトリルヒドラターゼのβサブユニットのアミノ酸(一文字表記)配列のアライメントを、
図6−1および6−2に示した。なお、
図6−1、6−2のそれぞれにおいて、各アミノ酸配列は、上から順に、配列番号2、5〜12、42〜49を示す。
【0034】
さらに、本発明の改良型ニトリルヒドラターゼには、配列番号81で示されるアミノ酸配列を除く既知のニトリルヒドラターゼのアミノ酸配列において、1個又は数個(例えば1個〜10個程度、好ましくは1個〜5個程度)のアミノ酸残基が欠失、置換及び/又は付加された改良型ニトリルヒドラターゼも含まれる。
【0035】
本発明の改良型ニトリルヒドラターゼの一例としては、
図7に示すように、βサブユニットが配列番号82に示されるアミノ酸配列を有するものを挙げることができる。ここでは、N末端から数えて29番目〜49番目に、配列番号81で示されるアミノ酸配列が存在する。
【0036】
一つの実施態様では、配列番号82に示されるアミノ酸配列を有する改良型ニトリルヒドラターゼにおいて、X
1〜X
6およびX
8〜X
18はそれぞれ独立した任意のアミノ酸残基を表し、X
7は、アラニン、バリン、アスパラギン酸、スレオニン、フェニルアラニン、イソロイシンおよびメチオニンよりなる群から選択されるアミノ酸である。
【0037】
また、他の実施態様では、配列番号82に示されるアミノ酸配列を有する改良型ニトリルヒドラターゼにおいて、X
1〜X
6、X
8〜X
13およびX
15〜X
18はそれぞれ独立した任意のアミノ酸残基を表し、X
14はG(グリシン)であり、X
7は、アラニン、バリン、アスパラギン酸、スレオニン、フェニルアラニン、イソロイシンおよびメチオニンよりなる群から選択されるアミノ酸である。
【0038】
さらに、他の実施態様では、配列番号82に示されるアミノ酸配列を有する改良型ニトリルヒドラターゼにおいて、X
15〜X
18はそれぞれ独立した任意のアミノ酸残基を表し、X
1がG(グリシン)、X
2がR(アルギニン)、X
3がT(スレオニン)、X
4がL(ロイシン)、X
5がS(セリン)、X
6がI(イソロイシン)、X
8がT(スレオニン)、X
9がW(トリプトファン)、X
10がM(メチオニン)、X
11がH(ヒスチジン)、X
12がL(ロイシン)、X
13がK(リジン)、X
14がG(グリシン)であり、X
7は、アラニン、バリン、アスパラギン酸、スレオニン、フェニルアラニン、イソロイシンおよびメチオニンよりなる群から選択されるアミノ酸である。
【0039】
本発明の改良型ニトリルヒドラターゼの他の一例としては、配列番号2で示される既知のニトリルヒドラターゼのアミノ酸配列において、βサブユニットの37番目のアミノ酸残基(ロイシン)が、アラニン、バリン、アスパラギン酸、スレオニン、フェニルアラニン、イソロイシンまたはメチオニンに置換したものが挙げられる。
【0040】
このようなアミノ酸置換の態様の表記例としては、Lβ37A、Lβ37D、Lβ37F、Lβ37I、Lβ37M、Lβ37T、Lβ37Vが挙げられる。尚、アミノ酸のアルファベット表記は通常の1文字で表すことができ、置換箇所までのアミノ酸残基数を表す数字(例えば「37」)の左側に表示したアルファベットは、置換前のアミノ酸の1文字表記を示し、右側に表示したアルファベットは置換後のアミノ酸の1文字表記を示している。
【0041】
具体的には、配列番号2に示すβサブユニットのアミノ酸配列に関して、「Lβ37A」と表記した場合は、βサブユニットのアミノ酸配列(配列番号2)のうちN末端のアミノ酸残基から数えて(当該N末端のアミノ酸残基を含めて数えて)37番目のロイシン(L)がアラニン(A)に置換された改良型ニトリルヒドラターゼにおけるアミノ酸置換の態様を意味する。
【0042】
本発明のより好ましい改良型ニトリルヒドラターゼにおけるアミノ酸置換の態様は、それぞれ以下の1〜7の表記で表すことができる。
1. Lβ37A
2. Lβ37D
3. Lβ37F
4. Lβ37I
5. Lβ37M
6. Lβ37T
7. Lβ37V
上記アミノ酸置換を生じさせるための塩基置換としては、以下の表1に示す態様が好ましく挙げられる。
【0044】
(b−3)改良型ニトリルヒドラターゼ(α83)
各種微生物由来の既知のニトリルヒドラターゼのαサブユニットのアミノ酸(一文字表記)配列のアライメントを、
図8−1および8−2に示した。なお、
図8−1、8−2のそれぞれにおいて、各アミノ酸配列は、上から順に、配列番号4、105〜108、121、109、110、112、111、122〜124、113、114、125をそれぞれ示す。
【0045】
さらに、本発明の改良型ニトリルヒドラターゼには、配列番号119で示されるアミノ酸配列を除く既知のニトリルヒドラターゼのアミノ酸配列において、1個又は数個(例えば1個〜10個程度、好ましくは1個〜5個程度)のアミノ酸残基が欠失、置換及び/又は付加された改良型ニトリルヒドラターゼも含まれる。一例としては、特許文献5〜9(参照により本明細書に取り込まれるものとする)に記載されたニトリルヒドラターゼを示すことができる。特許文献5〜9のニトリルヒドラターゼは耐熱性やアクリルアミド耐性を有しており、本発明のアミノ酸置換の付加により、触媒活性の向上という性質を付加することができる。
【0046】
本発明の改良型ニトリルヒドラターゼの一例としては、
図9に示すように、αサブユニットが配列番号120に示されるアミノ酸配列を有するものを挙げることができる。ここでは、N末端から数えて73番目〜83番目に、配列番号119で示されるアミノ酸配列が存在する。
【0047】
一つの実施態様では、配列番号120に示されるアミノ酸配列を有する改良型ニトリルヒドラターゼにおいて、X
1〜X
7は独立した任意のアミノ酸残基を表し、X
8はアラニン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、リジン、プロリン、アルギニン、セリン、スレオニン、チロシン、トリプトファンよりなる群から選択されるアミノ酸である。
【0048】
また、他の実施態様では、配列番号120に示されるアミノ酸配列を有する改良型ニトリルヒドラターゼにおいて、X
1がM(メチオニン)、X
2がA(アラニン)、X
3がS(セリン)、X
4がL(ロイシン)、X
5がY(チロシン)、X
6がA(アラニン)、X
7がE(グルタミン酸)であり、X
8はアラニン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、リジン、プロリン、アルギニン、セリン、スレオニン、チロシン、トリプトファンよりなる群から選択されるアミノ酸である。
【0049】
本発明の改良型ニトリルヒドラターゼの他の一例としては、配列番号4で示される既知のニトリルヒドラターゼのアミノ酸配列において、αサブユニットの83番目のアミノ酸残基(グルタミン)が、アラニン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、リジン、プロリン、アルギニン、セリン、スレオニン、チロシンまたはトリプトファンに置換したものが挙げられる。
【0050】
このようなアミノ酸置換の態様の表記例としては、Qα83A、Qα83C、Qα83D、Qα83E、Qα83F、Qα83G、Qα83H、Qα83K、Qα83L、Qα83M、Qα83N、Qα83P、Qα83R、Qα83S、Qα83T、Qα83AY、Qα83Wが挙げられる。尚、アミノ酸のアルファベット表記は通常の1文字で表すことができ、置換箇所までのアミノ酸残基数を表す数字(例えば「83」)の左側に表示したアルファベットは、置換前のアミノ酸の1文字表記を示し、右側に表示したアルファベットは置換後のアミノ酸の1文字表記を示している。
【0051】
具体的には、配列番号4に示すαサブユニットのアミノ酸配列に関して、「Qα83A」と表記した場合は、αサブユニットのアミノ酸配列(配列番号4)のうちN末端のアミノ酸残基から数えて(当該N末端のアミノ酸残基を含めて数えて)83番目のグルタミン(Q)がアラニン(A)に置換された改良型ニトリルヒドラターゼにおけるアミノ酸置換の態様を意味する。
【0052】
本発明のより好ましい改良型ニトリルヒドラターゼにおけるアミノ酸置換の態様は、それぞれ以下の1〜17の表記で表すことができる。
1.Qα83A
2.Qα83C
3.Qα83D
4.Qα83E
5.Qα83F
6.Qα83G
7.Qα83H
8.Qα83K
9.Qα83L
10.Qα83M
11.Qα83N
12.Qα83P
13.Qα83R
14.Qα83S
15.Qα83T
16.Qα83Y
17.Qα83W
上記アミノ酸置換を生じさせるための塩基置換としては、以下の態様が好ましく挙げられる。
【0054】
(b−4)改良型ニトリルヒドラターゼ(α82)
各種微生物由来の既知のニトリルヒドラターゼのαサブユニットのアミノ酸(一文字表記)配列のアライメントを、
図10−1および10−2に示した。なお、
図10−1、10−2のそれぞれにおいて、各アミノ酸配列は、上から順に、配列番号4、105〜108、121、109、110、112、111、122〜124、113、114、125をそれぞれ示す。
【0055】
さらに、本発明の改良型ニトリルヒドラターゼには、配列番号31で示されるアミノ酸配列を除く既知のニトリルヒドラターゼのアミノ酸配列において、1個又は数個(例えば1個〜10個程度、好ましくは1個〜5個程度)のアミノ酸残基が欠失、置換及び/又は付加された改良型ニトリルヒドラターゼも含まれる。一例としては、特許文献5〜9(参照により本明細書に取り込まれるものとする)に記載されたニトリルヒドラターゼを示すことができる。特許文献5〜9のニトリルヒドラターゼは耐熱性やアクリルアミド耐性を有しており、本発明のアミノ酸置換の付加により、触媒活性の向上という性質を付加することができる。
【0056】
本発明の改良型ニトリルヒドラターゼの一例としては、
図11に示すように、αサブユニットが配列番号131に示されるアミノ酸配列を有するものを挙げることができる。ここでは、N末端から数えて73番目〜82番目に、配列番号132で示されるアミノ酸配列が存在する。
【0057】
本発明における一つの実施態様では、配列番号131に示されるアミノ酸配列を有する改良型ニトリルヒドラターゼにおいて、X
1〜X
6は独立した任意のアミノ酸残基を表し、X
7はシステイン、フェニルアラニン、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、メチオニン、グルタミン、アルギニン、トレオニン、チロシンよりなる群から選択されるアミノ酸である。
【0058】
他の実施態様では、配列番号131に示されるアミノ酸配列を有する改良型ニトリルヒドラターゼにおいて、X
1がM(メチオニン)、X
2がA(アラニン)、X
3がS(セリン)、X
4がL(ロイシン)、X
5がY(チロシン)、X
6がA(アラニン)であり、X
7はシステイン、フェニルアラニン、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、メチオニン、グルタミン、アルギニン、トレオニン、チロシンよりなる群から選択されるアミノ酸である。
【0059】
本発明の改良型ニトリルヒドラターゼの他の一例としては、配列番号4で示される既知のニトリルヒドラターゼのアミノ酸配列において、αサブユニットの82番目のアミノ酸残基(グルタミン酸)が、システイン、フェニルアラニン、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、メチオニン、グルタミン、アルギニン、トレオニン、またはチロシンに置換したものが挙げられる。
【0060】
このようなアミノ酸置換の態様の表記例としては、Eα82C、Eα82F、Eα82H、Eα82I、Eα82K、Eα82M、Eα82Q、Eα82R、Eα82T、Eα82Yが挙げられる。尚、アミノ酸のアルファベット表記は通常の1文字で表すことができ、置換箇所までのアミノ酸残基数を表す数字(例えば「82」)の左側に表示したアルファベットは、置換前のアミノ酸の1文字表記を示し、右側に表示したアルファベットは置換後のアミノ酸の1文字表記を示している。
【0061】
具体的には、配列番号4に示すαサブユニットのアミノ酸配列に関して、「Eα82C」と表記した場合は、αサブユニットのアミノ酸配列(配列番号4)のうちN末端のアミノ酸残基から数えて(当該N末端のアミノ酸残基を含めて数えて)82番目のグルタミン酸(E)がシステイン(C)に置換された改良型ニトリルヒドラターゼにおけるアミノ酸置換の態様を意味する。
【0062】
本発明のより好ましい改良型ニトリルヒドラターゼにおけるアミノ酸置換の態様は、それぞれ以下の1〜10の表記で表すことができる。
1.Eα82C
2.Eα82F
3.Eα82H
4.Eα82I
5.Eα82K
6.Eα82M
7.Eα82Q
8.Eα82R
9.Eα82T
10.Eα82Y
上記アミノ酸置換を生じさせるための塩基置換としては、以下の態様が好ましく挙げられる。
【0064】
(b−5)改良型ニトリルヒドラターゼ(α85)
各種微生物由来の既知のニトリルヒドラターゼのαサブユニットのアミノ酸(一文字表記)配列のアライメントを、
図12−1および12−2に示した。なお、
図12−1、12−2のそれぞれにおいて、各アミノ酸配列は、上から順に、配列番号4、105〜108、121、109、110、112、111、122〜124、113、114、125をそれぞれ示す。
【0065】
さらに、本発明の改良型ニトリルヒドラターゼには、配列番号135で示されるアミノ酸配列を除く既知のニトリルヒドラターゼのアミノ酸配列において、1個又は数個(例えば1個〜10個程度、好ましくは1個〜5個程度)のアミノ酸残基が欠失、置換及び/又は付加された改良型ニトリルヒドラターゼも含まれる。一例としては、特許文献5〜9(参照により本明細書に取り込まれるものとする)に記載されたニトリルヒドラターゼを示すことができる。特許文献5〜9のニトリルヒドラターゼは耐熱性やアクリルアミド耐性を有しており、本発明のアミノ酸置換の付加により、触媒活性の向上という性質を付加することができる。
【0066】
本発明の改良型ニトリルヒドラターゼの一例としては、
図13に示すように、αサブユニットが配列番号135に示されるアミノ酸配列を有するものを挙げることができる。ここでは、N末端から数えて73番目〜85番目に、配列番号136で示されるアミノ酸配列が存在する。
【0067】
本発明における一つの実施態様では、配列番号135に示されるアミノ酸配列を有する改良型ニトリルヒドラターゼにおいて、X
1〜X
8は独立した任意のアミノ酸残基を表し、X
9はシステイン、グルタミン酸、フェニルアラニン、イソロイシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、チロシンよりなる群から選択されるアミノ酸である。
【0068】
他の実施態様では、配列番号135に示されるアミノ酸配列を有する改良型ニトリルヒドラターゼにおいて、X
1がM(メチオニン)、X
2がA(アラニン)、X
3がS(セリン)、X
4がL(ロイシン)、X
5がY(チロシン)、X
6がA(アラニン)、X
7がE(グルタミン酸)、X
8がA(アラニン)であり、X
9はシステイン、グルタミン酸、フェニルアラニン、イソロイシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、チロシンよりよりなる群から選択されるアミノ酸である。
【0069】
本発明の改良型ニトリルヒドラターゼの他の一例としては、配列番号4で示される既知のニトリルヒドラターゼのアミノ酸配列において、αサブユニットの85番目のアミノ酸残基(ヒスチジン)が、X
9がシステイン、グルタミン酸、フェニルアラニン、イソロイシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、またはチロシンに置換したものが挙げられる。
【0070】
このようなアミノ酸置換の態様の表記例としては、Hα85C、Hα85E、Hα85FHα85I、Hα85N、Hα85Q、Hα85S、Hα85Yが挙げられる。尚、アミノ酸のアルファベット表記は通常の1文字で表すことができ、置換箇所までのアミノ酸残基数を表す数字(例えば「85」)の左側に表示したアルファベットは、置換前のアミノ酸の1文字表記を示し、右側に表示したアルファベットは置換後のアミノ酸の1文字表記を示している。
【0071】
具体的には、配列番号4に示すαサブユニットのアミノ酸配列に関して、「Hα85C」と表記した場合は、αサブユニットのアミノ酸配列(配列番号4)のうちN末端のアミノ酸残基から数えて(当該N末端のアミノ酸残基を含めて数えて)85番目のヒスチジン(H)がシステイン(C)に置換された改良型ニトリルヒドラターゼにおけるアミノ酸置換の態様を意味する。
【0072】
本発明のより好ましい改良型ニトリルヒドラターゼにおけるアミノ酸置換の態様は、それぞれ以下の1〜8の表記で表すことができる。
1.Hα85C
2.Hα85E
3.Hα85F
4.Hα85I
5.Hα85N
6.Hα85Q
7.Hα85S
8.Hα85Y
上記アミノ酸置換を生じさせるための塩基置換としては、以下の態様が好ましく挙げられる。
【0074】
(b−6)ニトリルヒドラターゼ活性
本発明の改良型ニトリルヒドラターゼの活性は、変異を導入する前のニトリルヒドラターゼの活性に対して触媒活性が向上している。
【0075】
ここで、「ニトリルヒドラターゼ活性」とは、ニトリル化合物を、対応するアミド化合物に変換する水和反応(RCN+H
2O→RCONH
2)を触媒する酵素である。活性測定は、基質であるニトリル化合物をニトリルヒドラターゼと接触させ、対応するアミド化合物に変換した後、当該アミド化合物を定量することにより算出することができる。基質としては、ニトリルヒドラターゼが反応すればいかなるニトリル化合物でも使用できるが、アクリロニトリルが好ましい。
【0076】
反応条件としては、基質濃度は2.5%、反応温度は10℃から30℃、反応時間は10分から30分の範囲で行う。酵素反応はリン酸を添加して停止させる。その後、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)やガスクロマトグラフィーにより、生成したアクリルアミドを分析することでアミド化合物の定量を行うことができる。
【0077】
「触媒活性の向上」とは、改良型ニトリルヒドラターゼを有する形質転換体の培養物又は当該形質転換体から単離した改良型ニトリルヒドラターゼの活性測定によって、改良型ニトリルヒドラターゼの触媒活性が同条件で測定した親株の活性値より1割以上高いことを意味する。本発明における親株とは、変異導入する鋳型プラスミドが導入された形質転換体を意味する。
アミド化合物としては、例えば、下記一般式(1):
R−CONH
2 (1)
(ここで、Rは、置換されていてもよい炭素数1〜10の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基又はアルケニル基、置換されていてもよい炭素数3〜18のシクロアルキル基又はアリール基、あるいは、置換されていてもよい飽和又は不飽和複素環基を表す。)
で表されるアミド化合物が挙げられる。特に、式中、Rが「CH
2=CH−」であるアクリルアミドが好ましい。
【0078】
上記の改良型ニトリルヒドラターゼは、ニトリルヒドラターゼをアミノ酸置換することで得られるものであり、例えば、ロドコッカス・ロドクロウスJ1株由来のニトリルヒドラターゼのアミノ酸配列(配列番号2)を改変し、触媒活性が向上したニトリルヒドラターゼを選択することにより得られる。
【0079】
なお、ロドコッカス・ロドクロウスJ1株は、FERM BP−1478として独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に昭和62(1987)年9月18日付けで国際寄託されている。
【0080】
J1菌以外のニトリルヒドラターゼにおいても上述の変異の位置、変異するアミノ酸種、DNA配列によって触媒活性が向上すると考えられる。その様な菌としては、好ましくは、ロドコッカス・ロドクロウスM8(SU1731814)(配列番号5)、ロドコッカス・ルーバーTH(配列番号6)、ロドコッカス・ロドクロウスM33(VKM Ac−1515D)、ロドコッカス・ピリジノボランスMW3(配列番号7)、ロドコッカス・ピリジノボランスS85−2(配列番号8)、ロドコッカス・ピリジノボランスMS−38(配列番号9)、ロドコッカス・ルーバーRH(CN101463358)(配列番号52)、ノカルジア sp.JBRs(配列番号10)、ノカルジア・YS−2002(配列番号11)、ロドコッカス・ロドクロウス ATCC39384(配列番号12)、アンカルチャード・バクテリウム SP1(配列番号42)、アンカルチャード・バクテリウム BD2(配列番号43)、コマモナス・テストストローニ(配列番号44)、オバチルス・サーモグルコシダシウス Q6(配列番号45)、シュードノカルディア・サーモフィラ JCM3095(配列番号46)、ロドコッカス・ロドクロウス Cr4(配列番号47)等が挙げられる。なお、ロドコッカス・ロドクロウスM33(VKM Ac−1515D)は、上記M8菌(SU1731814)から自然突然変異によって構成的にニトリルヒドラターゼを発現する株として選抜された菌株である。そのニトリルヒドラターゼ自体のアミノ酸配列及び遺伝子配列に変異はない(米国特許第5,827,699号)。これらの菌のβサブユニットにおいて、N末端から48番目のアミノ酸残基を、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、セリン、またはスレオニンに置換したものが挙げられる。
【0081】
ニトリルヒドラターゼをアミノ酸置換する方法としては、ニトリルヒドラターゼ活性を有する微生物にハイドロキシルアミンや亜硝酸等の変異源となる薬剤を接触・作用させる方法、紫外線照射により変異を誘発する方法、ニトリルヒドラターゼをコードする遺伝子にPCRを用いてランダムに変異を導入するError prone PCR方法等を採用することができる。
【0082】
(b−7)Error prone PCR
変異体を用いたタンパク質の機能、性質を研究する方法の一つに、ランダム変異導入法がある。ランダム変異導入法とは、特定のタンパク質をコードする遺伝子に対してランダムな変異を導入し、変異体を作製する方法である。PCRによるランダム変異導入法では、DNA増幅時に厳密度(ストリンジェンシー)の低い条件を設定して、塩基の変異を導入する(Error prone PCR)ことができる。
【0083】
このError prone PCRでは、増幅されるDNAの全域に対して任意の部位に変異が導入される。そうすると、得られた任意の部位に変異が導入された変異体の機能を検討することによって、タンパク質固有の機能に重要なアミノ酸やドメインの情報を得ることができる。
【0084】
Error prone PCRの鋳型となるニトリルヒドラターゼは、野生株由来のニトリルヒドラターゼ遺伝子、Error prone PCRによる増幅産物であるDNAを用いることができる。
【0085】
Error prone PCRの反応条件としては、例えば、反応液中のdNTP(dGTP、dCTP、dATP又はdTTP)のいずれか1種、2種又は3種の配合割合を他のdNTPに比べて減らした組成とする条件が挙げられる。これにより、DNA合成の際、配合割合を減らしたdNTPが必要な箇所においては、誤って他のdNTPが用いられる可能性が高くなり、変異が導入される。また、他の反応条件としては、反応液中のMgCl
2及び/又はMnCl
2量を増やした組成とする条件も好ましく挙げられる。
【0086】
(b−8)改良型ニトリルヒドラターゼ
改良型ニトリルヒドラターゼをコードするDNAは、既知のニトリルヒドラターゼDNAを基に、Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (1987−1997)等に記載の部位特異的変位誘発法に従って調製することができる。DNAに変異を導入するには、Kunkel法や Gapped duplex法等の公知手法により、部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット、例えばQuickChangeTM XL Site−Directed Mutagenesis Kit(ストラタジーン社製)、GeneTailorTM Site−Directed Mutagenesis System(インビトロジェン社製)、TaKaRa Site−Directed Mutagenesis System(Mutan−K、Mutan−Super Express Km等:タカラバイオ社製)等を用いて行うことができる。
【0087】
また、本発明のDNAとしては、当該DNAの塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ニトリルヒドラターゼ活性を有するタンパク質をコードするDNAも含まれる。
【0088】
このような改良型ニトリルヒドラターゼDNAは、上記の通り野性型遺伝子に変異を導入することにより得ることができるが、当該DNA配列若しくはその相補配列、又はこれらの断片をプローブとして、コロニーハイブリダイゼーション、プラークハイブリダイゼーション、サザンブロット等の公知のハイブリダイゼーション法により、cDNAライブラリー及びゲノムライブラリーから得ることもできる。ライブラリーは、公知の方法で作製されたものを利用することが可能であり、市販のcDNAライブラリー及びゲノムライブラリーを利用することも可能である。
【0089】
「ストリンジェントな条件」とは、ハイブリダイゼーション後の洗浄時の条件であって塩濃度が300〜2000mM、温度が40〜75℃、好ましくは塩濃度が600〜900mM、温度が65℃の条件を意味する。例えば、2×SSCで50℃等の条件を挙げることができる。当業者であれば、このようなバッファーの塩濃度、温度等の条件に加えて、その他のプローブ濃度、プローブの長さ、反応時間等の諸条件を加味し、本発明のニトリルヒドラターゼをコードするDNAを得るための条件を適宜設定することができる。
【0090】
ハイブリダイゼーション法の詳細な手順については、Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed. (Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989))等を参照することができる。ハイブリダイズするDNAとしては、本発明のDNAに対して少なくとも40%以上、好ましくは60%、さらに好ましくは90%以上の同一性を有する塩基配列を含むDNA又はその部分断片が挙げられる。
【0091】
(c)組換えベクター、形質転換体
ニトリルヒドラターゼ遺伝子は、形質転換される宿主生物において発現可能なように、ベクターに組み込むことが必要である。例えば、ベクターとしてはプラスミドDNA、バクテリオファージDNA、レトロトランスポゾンDNA、人工染色体DNAなどが挙げられる。
【0092】
また、本発明において使用し得る宿主は、上記組換えベクターが導入された後、目的のニトリルヒドラターゼを発現することができる限り特に限定されるものではない。例えば、大腸菌及び枯草菌等の細菌、酵母、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞等を用いることができる。大腸菌を宿主とする場合、発現効率の高い発現ベクター、例えばtrcプロモーターを有する発現ベクターpkk233−2(アマシャムバイオサイエンス社製)又はpTrc99A(アマシャムバイオサイエンス社製)などを用いることが好ましい。
【0093】
ベクターには、ニトリルヒドラターゼ遺伝子のほか、プロモーター、ターミネーター、エンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、リボソーム結合配列(SD配列)等を連結することができる。なお、選択マーカーとしては、例えばカナマイシン耐性遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子等が挙げられる。
【0094】
細菌を宿主とする場合、例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)が挙げられ、ロドコッカス菌としては、例えばロドコッカス・ロドクロウスATCC12674、ロドコッカス・ロドクロウスATCC17895、ロドコッカス・ロドクロウスATCC19140等が挙げられる。これらのATCC株はアメリカンタイプカルチャーコレクションから入手できる。
【0095】
ニトリルヒドラターゼを発現する形質転換体の作製に際し、宿主に大腸菌を使用した場合、発現した大部分のニトリルヒドラターゼがインクルージョンボディーとなり不溶化するため、触媒活性の低い形質転換体が得られる。一方、ロドコッカス菌を宿主として使用した場合、ニトリルヒドラターゼは可溶性画分に存在するため、高活性な形質転換体が得られる。これらの形質転換体は目的に応じて選択すれば良いが、厳しい条件で改良型酵素を選抜する場合は高活性なロドコッカス菌の形質転換体を用いるのが好ましい。
【0096】
細菌への組換えベクターの導入方法としては、細菌にDNAを導入する方法であれば特に限定されるものではない。例えばカルシウムイオンを用いる方法、エレクトロポレーション法等が挙げられる。
【0097】
酵母を宿主とする場合は、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、ピヒア・パストリス(Pichia pastoris)等が用いられる。酵母への組換えベクターの導入方法としては、酵母にDNAを導入する方法であれば特に限定されず、例えばエレクトロポレーション法、スフェロプラスト法、酢酸リチウム法等が挙げられる。
【0098】
動物細胞を宿主とする場合は、サル細胞COS−7、Vero、CHO細胞、マウスL細胞、ラットGH3、ヒトFL細胞等が用いられる。動物細胞への組換えベクターの導入方法としては、例えばエレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法等が挙げられる。
【0099】
昆虫細胞を宿主とする場合は、Sf9細胞、Sf21細胞等が用いられる。昆虫細胞への組換えベクターの導入方法としては、例えばリン酸カルシウム法、リポフェクション法、エレクトロポレーション法等が用いられる。
【0100】
植物細胞を宿主とする場合は、タバコBY−2細胞等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。植物細胞への組換えベクターの導入方法としては、例えばアグロバクテリウム法、パーティクルガン法、PEG法、エレクトロポレーション法等が用いられる。
【0101】
(d)培養物及び改良型ニトリルヒドラターゼの製造方法
本発明において、改良型ニトリルヒドラターゼは、上記形質転換体を培養し、得られる培養物から採取することにより製造することができる。
【0102】
本発明は当該培養物から改良型ニトリルヒドラターゼを採取することを特徴とする、改良型ニトリルヒドラターゼの製造方法をも含む。
【0103】
本発明において、「培養物」とは、培養上清、培養細胞、培養菌体、又は細胞若しくは菌体の破砕物のいずれをも意味するものである。本発明の形質転換体を培養する方法は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行われる。目的の改良型ニトリルヒドラターゼは、上記培養物中に蓄積される。
【0104】
本発明の形質転換体を培養する培地は、宿主菌が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行うことができる培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。炭素源としては、グルコース、ガラクトース、フラクトース、スクロース、ラフィノース及びデンプン等の炭水化物、酢酸及びプロピオン酸等の有機酸、エタノール及びプロパノール等のアルコール類が挙げられる。窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム及びリン酸アンモニウム等の無機酸、若しくは有機酸のアンモニウム塩、又はその他の含窒素化合物が挙げられる。
【0105】
その他、ペプトン、酵母エキス、肉エキス、コーンスティープリカー、各種アミノ酸等を用いてもよい。無機物としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸亜鉛、硫酸銅、炭酸カルシウム等が挙げられる。また、必要に応じ、培養中の発泡を防ぐために消泡剤を添加してもよい。さらに、培地にはニトリルヒドラターゼの補欠分子であるコバルトイオンや鉄イオンを添加し、酵素の誘導剤となるニトリル類やアミド類を添加してもよい。
【0106】
培養中、ベクター及び目的遺伝子の脱落を防ぐために選択圧を掛けた状態で培養してもよい。すなわち、選択マーカーが薬剤耐性遺伝子である場合に相当する薬剤を培地に添加したり、選択マーカーが栄養要求性相補遺伝子である場合に相当する栄養因子を培地から除いたりしてもよい。
また、選択マーカーが資化性付与遺伝子である場合は、相当する資化因子を必要に応じて唯一因子として添加することができる。例えば、アンピシリン耐性遺伝子を含むベクターで形質転換した大腸菌を培養する場合、培養中、必要に応じてアンピシリンを添加してもよい。
【0107】
プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した形質転換体を培養する場合は、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、イソプロピル−β−D−チオガラクトシド(IPTG)で誘導可能なプロモーターを有する発現ベクターで形質転換した形質転換体を培養するときには、IPTG等を培地に添加することができる。また、インドール酢酸(IAA)で誘導可能なtrpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した形質転換体を培養するときには、IAA等を培地に添加することができる。
【0108】
形質転換体の培養条件は、目的の改良型ニトリルヒドラターゼの生産性及び宿主の生育が妨げられない条件であれば特段限定されるものではないが、通常、10℃〜40℃、好ましくは20℃〜37℃で5〜100時間行う。pHの調整は、無機又は有機酸、アルカリ溶液等を用いて行い、例えば大腸菌であれば6〜9に調整する。
【0109】
培養方法としては、固体培養、静置培養、振盪培養、通気攪拌培養などが挙げられるが、特に大腸菌形質転換体を培養する場合には、振盪培養又は通気攪拌培養(ジャーファーメンター)により好気的条件下で培養することが好ましい。
【0110】
上記培養条件で培養すると、高収率で本発明の改良型ニトリルヒドラターゼを上記培養物中、すなわち、培養上清、培養細胞、培養菌体、又は細胞若しくは菌体の破砕物の少なくともいずれかに蓄積することができる。
【0111】
培養後、改良型ニトリルヒドラターゼが菌体内又は細胞内に生産される場合には、菌体又は細胞を破砕することにより、目的の改良型ニトリルヒドラターゼを採取することができる。菌体又は細胞の破砕方法としては、フレンチプレス又はホモジナイザーによる高圧処理、超音波処理、ガラスビーズ等による磨砕処理、リゾチーム、セルラーゼ又はペクチナーゼ等を用いる酵素処理、凍結融解処理、低張液処理、ファージによる溶菌誘導処理等を利用することができる。
【0112】
破砕後、必要に応じて菌体又は細胞の破砕残渣(細胞抽出液不溶性画分を含む)を除くことができる。残渣を除去する方法としては、例えば、遠心分離やろ過などが挙げられ、必要に応じて、凝集剤やろ過助剤等を使用して残渣除去効率を上げることもできる。残渣を除去した後に得られた上清は、細胞抽出液可溶性画分であり、粗精製した改良型ニトリルヒドラターゼ溶液とすることができる。
【0113】
また、改良型ニトリルヒドラターゼが菌体内又は細胞内に生産される場合、菌体や細胞そのものを遠心分離、膜分離等で回収して、未破砕のまま使用することも可能である。
【0114】
改良型ニトリルヒドラターゼが菌体外又は細胞外に生産される場合には、培養液をそのまま使用するか、遠心分離やろ過等により菌体又は細胞を除去する。その後、必要に応じて硫安沈澱による抽出等により前記培養物中から改良型ニトリルヒドラターゼを採取し、さらに必要に応じて透析、各種クロマトグラフィー(ゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー等)を用いて単離精製することもできる。
【0115】
形質転換体を培養して得られたニトリルヒドラターゼの生産収率は、例えば、培養液あたり、菌体湿重量又は乾燥重量あたり、粗酵素液タンパク質あたりなどの単位で、SDS−PAGE(ポリアクリルアミドゲル電気泳動)やニトリルヒドラターゼ活性測定などにより確認することができるが、特段限定されるものではない。SDS−PAGEは当業者であれば公知の方法を用いて行うことができる。また、ニトリルヒドラターゼ活性は、上述した活性の値を適用することができる。
【0116】
また、本発明においては、生細胞を全く使用することなく、無細胞タンパク質合成系を採用して改良型ニトリルヒドラターゼを産生することが可能である。
【0117】
無細胞タンパク質合成系とは、細胞抽出液を用いて試験管等の人工容器内でタンパク質を合成する系である。なお、本発明において使用される無細胞タンパク質合成系には、DNAを鋳型としてRNAを合成する無細胞転写系も含まれる。
【0118】
この場合、上記の宿主に対応する生物は、下記の細胞抽出液の由来する生物に相当する。ここで、上記細胞抽出液は、真核細胞由来又は原核細胞由来の抽出液、例えば、小麦胚芽、大腸菌などの抽出液を使用することができる。なお、これらの細胞抽出液は濃縮されたものであっても濃縮されていないものであってもよい。
【0119】
細胞抽出液は、例えば限外濾過、透析、ポリエチレングリコール(PEG)沈殿等によって得ることができる。さらに本発明において、無細胞タンパク質合成は、市販のキットを用いて行うこともできる。そのようなキットとしては、例えば試薬キットPROTEIOSTM(東洋紡)、TNTTM System(プロメガ)、合成装置のPG−MateTM(東洋紡)、RTS(ロシュ・ダイアグノスティクス)などが挙げられる。
【0120】
上記のように無細胞タンパク質合成によって得られる改良型ニトリルヒドラターゼは、前述のように適宜クロマトグラフィーを選択して、精製することができる。
【0121】
2.アミド化合物の製造方法
上述のように製造された改良型ニトリルヒドラターゼは、酵素触媒として物質生産に利用することができる。例えば、ニトリル化合物に、上記改良型ニトリルヒドラターゼを接触させることにより、アミド化合物を生成する。そして、接触により生成されるアミド化合物を採取する。これにより、アミド化合物を製造することができる。
【0122】
酵素触媒としては、前述のように分離精製されたニトリルヒドラターゼを使用することができる。また、前述のように適当な宿主内で改良型ニトリルヒドラターゼ遺伝子が発現するように遺伝子導入を行い、宿主を培養した後の培養物、又は当該培養物の処理物を利用することができる。処理物としては、例えば、培養後の細胞をアクリルアミド等のゲルで包含したもの、グルタルアルデヒドで処理したもの、アルミナ、シリカ、ゼオライト及び珪藻土等の無機担体に担持したもの等が挙げられる。
【0123】
ここで、「接触」とは、改良型ニトリルヒドラターゼとニトリル化合物を同一の反応系又は培養系に存在させることを意味し、例えば、分離精製した改良型ニトリルヒドラターゼとニトリル化合物を混合すること、改良型ニトリルヒドラターゼ遺伝子を発現する細胞の培養容器にニトリル化合物を添加すること、当該細胞をニトリル化合物の存在下で培養すること、当該細胞の抽出液をニトリル化合物と混合することなどが含まれる。
【0124】
基質として使用されるニトリル化合物は、酵素の基質特異性、酵素の基質に対する安定性等を考慮して選択される。ニトリル化合物としては、アクリロニトリルが好ましい。反応方法、及び反応終了後のアミド化合物の採取方法は、基質及び酵素触媒の特性により適宜選択される。
【0125】
酵素触媒は、その活性が失活しない限り、リサイクル使用することが好ましい。失活の防止やリサイクルを容易にすることに鑑み、酵素触媒は処理物の形態で使用されることが好ましい。
【実施例】
【0126】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、ロドコッカス・ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)J−1株は、FERM BP−1478として独立行攻法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に寄託されている(原寄託日:1987年9月18日)。
【0127】
[調製例1]
プラスミドpSJ034の作製
本発明のアミノ酸置換を導入するための鋳型となるJ1菌のニトリルヒドラターゼ遺伝子を有するプラスミドpSJ034(
図1)を、以下の方法で作製した。
【0128】
pSJ034は、ロドコッカス菌においてニトリルヒドラターゼを発現するプラスミドであり、pSJ023より特開平10−337185号公報に示す方法で作製した。すなわち、プラスミドpSJ023をXbaIの部分切断とSse8387Iリンカーライゲーションにより、1箇所のXbaIサイトをSse8387Iに置換したプラスミドpSJ033を作製した。次に、pSJ033をSse8387Iで部分切断し、クレノウフラグメントを用いて末端平滑化を行い、セルフライゲーションすることによりプラスミドpSJ034を作製した。なお、pSJ023は形質転換体「R. rhodochrous ATCC12674/pSJ023」であり、受託番号FERM BP−6232として独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に平成9(1997)年3月4日付けで国際寄託されている。
【0129】
[調製例2]
プラスミドpFR005の作製
(1)変異遺伝子ライブラリーの構築
鋳型としたプラスミドとしては、βサブユニットのアミノ酸配列(配列番号2)のN末端のアミノ酸残基から数えて167残基下流のアミノ酸残基がアスパラギン(N)からセリン(S)に変異し、かつ、上記N末端のアミノ酸残基から数えて219残基下流のアミノ酸残基がバリン(V)からアラニン(A)に変異し、かつ、上記N末端のアミノ酸残基から数えて57残基下流のアミノ酸残基がセリン(S)からメチオニン(M)に変異し、かつ、上記N末端のアミノ酸残基から数えて114残基下流のアミノ酸残基がリジン(K)からチオrシン(Y)に変異し、かつ、上記N末端のアミノ酸残基から数えて107残基下流のアミノ酸残基がスレオニン(T)からリジン(K)に変異したプラスミドpER855(特開2010−172295参照)の改変物であるpER855A(
図5)を用いた。
【0130】
先ず、ニトリルヒドラターゼ遺伝子への変異導入を下記の手法で行った。
<PCR反応液組成>
滅菌水 20μl
pER855A (1ng/ml) 1μl
Forward Primer (10mM) 2μl
Reverse Primer (10mM) 2μl
PrimeSTAR MAX (2×) 25μl
合 計 50μl
<PCR反応条件>
(98℃ 10秒、55℃ 5秒、72℃で90秒)×30サイクル
<プライマー>β17の飽和変異プライマー
β17RM−F ggatacggaccggtcNNStatcagaaggacgag (配列番号63)
β17RM−R ctcgtccttctgataSNNgaccggtccgtatcc (配列番号64)
<反応条件>
(94℃で30秒、65℃で30秒、72℃で3分)×30サイクル
【0131】
PCR終了後、反応液5μlを0.7%アガロースゲル電気泳動に供し、11kbの増幅断片を確認し、1μlのDpnI(キットに付属)をPCR反応液に添加して37℃で1時間反応させ、鋳型プラスミドの除去を行った。反応終了液をWizard SV Gel and PCR Clean−Up Syste(プロメガ株式会社)で精製し、精製したPCR反応物を用いてJM109に形質転換した。得られたコロニー数千個をプレートから回収し、QIAprep Spin Miniprep Kit(キアゲン社)を用いてプラスミドDNAを抽出、変異遺伝子ライブラリーとした。
【0132】
(2)ロドコッカス菌形質転換体の作製
ロドコッカス・ロドクロウス ATCC12674株の対数増殖期の細胞を遠心分離器により集菌し、氷冷した滅菌水にて3回洗浄し、滅菌水に懸濁した。上記(2)で調製したプラスミド1μlと菌体懸濁液10μlを混合して氷冷し、キュベットにプラスミドDNAと菌体の懸濁液を入れ、遺伝子導入装置 Gene Pulser II(BIO RAD)により2.0KV、200 OHMSで電気パルス処理を行った。
【0133】
電気パルス処理液の入ったキュベットを氷冷下10分間静置し、37℃で10分間ヒートショクを行った。その後、キュベットにMYK培地(0.5%ポリペプトン、0.3%バクトイーストエキス、0.3%バクトモルトエキス、0.2%K
2HPO
4、0.2%KH
2PO
4)500μlを加え、30℃、5時間静置した後、50μg/mlカナマイシン入りMYK寒天培地に塗布した。30℃、3日間培養後のコロニーを形質転換体とした。同様に比較株としてpER855Aの形質転換体を作製した。
【0134】
(3)ロドコッカス菌形質転換体のアミド処理
スクリーニングには、上記(3)で得られたニトリルヒドラターゼ遺伝子を含むロドコッカス菌形質転換体、及び比較株であるATCC12674/pER855Aを使用した。GGPK培地(1.5%グルコース、1%グルタミン酸ナトリウム、0.1%酵母エキス、0.05%K
2HPO
4、0.05%KH
2PO
4、0.05%MgSO
4・7H
2O、1%CoCl
2、0.1%尿素、50μg/mlカナマイシン、pH7.2)を1mlずつ入れた96穴ディープウェルプレートに上記菌株を各々接種し、30℃で3日間液体培養した。
【0135】
次に、得られた培養液の30μlを96穴プレートに分注し、遠心分離によって培地を除き、最後に50%アクリルアミド溶液を40μl添加し、菌を懸濁した。高濃度アクリルアミド溶液に懸濁した形質転換体をインキュベーター中に置き、50℃の温度下、30分間の加熱処理で比較となる比較株を完全に失活させた。残存ニトリルヒドラターゼ活性は下記の方法で測定した。
【0136】
先ず、アクリルアミド処理をした形質転換体を50mMリン酸緩衝液(pH7.0)で洗浄し、以下の方法で活性測定を行った。試験管に洗浄した形質転換体と50mM リン酸緩衝液(pH7.0)を添加し、30℃で10分間プレインキュベートし、等量の5%アクリロニトリル溶液(pH7.0)を添加して10分間反応させ、1Mリン酸を1/10量添加することにより反応を停止させた。次に停止させた反応液から遠心分離によって形質転換体を除き、適当な濃度に希釈してHPLCにより分析した(WAKOSIL 5C8(和光純薬社)250mm、5mMリン酸を含んだ10%アセトニトリル、移動相の流速1ml/min及び紫外吸収検出器波長260nm)。尚、比較対照としてアクリルアミド処理を行わない各々の無処理菌を用いて活性測定を行い、得られた活性値を基準として、アクリルアミド処理後の残存活性を求めた。
【0137】
上記の方法で変異導入したニトリルヒドラターゼ遺伝子を有する数百個の形質転換体の中から、高濃度アクリルアミドに耐性を有する変異酵素pFR005を選抜した。
【0138】
(4)塩基配列の確認
ニトリルヒドラターゼ遺伝子の塩基配列の確認をするため、得られた選抜株からプラスミドを回収した。ロドコッカス形質転換体を、10mlのMYK培地(ポリペプトン0.5%、バクトイーストエキス0.3%、マルツエキス0.3%、グルコース1%、カナマイシン50μg/ml)に植菌した。24時間培養した後に終濃度2%となるように滅菌した20%グリシン溶液を添加し、さらに24時間培養した。その後、遠心分離により菌体を回収し、菌体をTES(10mMTris−HCl(pH8)−10mMNaCl−1mMEDTA)緩衝液で洗浄後、2mlの50mMTris−HCl(pH8)−12.5%シュークロース−100mMNaCl−1mg/mlリゾチームに懸濁し、37℃にて3時間振盪した。これに0.4mlの10%SDSを加え室温で穏やかに1時間振盪し、さらに2.1mlの5M酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.2)を添加し氷中で1時間静置した。その後、4℃にて10,000xg、1時間遠心し上清を得た。これに5倍量のエタノールを加え、−20℃で30分静置した後、10,000xg、20分間遠心した。沈澱物を10mlの70%エタノールで洗浄した後、100μlのTE緩衝液に溶解しDNA溶液を得た。
【0139】
次に、ニトリルヒドラターゼを含む配列をPCR法で増幅した。
<PCR反応液組成>
鋳型プラスミド 1μl
10× PCR Buffer(NEB社製) 10μl
プライマーNH−19(50μM) 1μl
プライマーNH−20(50μM) 1μl
2.5mM dNTPmix 8μl
滅菌水 79μl
Taq DNAポリメラーゼ(NEB社製) 1μl
<プライマー>
NH−19 GCCTCTAGATATCGCCATTCCGTTGCCGG(配列番号65)
NH−20 ACCCTGCAGGCTCGGCGCACCGGATGCCCAC(配列番号66)
<反応条件>
(94℃で30秒、65℃で30秒、72℃で3分)×30サイクル。
【0140】
PCR終了後、反応液5μlを0.7%アガロースゲル電気泳動に供し、2.5kbのPCR増幅産物の検出を行った。PCR反応液はExo−SAP処理(アマシャムファルマシア)後、サイクルシークエンシング法により配列解析用サンプルを調製し、Beckman CEQ−2000XLで解析を行った。その結果、pFR005の変異箇所は、Nβ167S、Vβ219A、Sβ57M、Kβ114Y、Tβ107K、Pβ17Gであることを確認した。すなわち、pFR005はβサブユニット17番目のプロリンがグリシンに、βサブユニット57番目のセリンがリジンに、βサブユニット107番目のチロシンがリジンに、βサブユニット114番目のリジンがチロシンに、βサブユニット167番目のアスパラギンがセリンに、βサブユニット219番目のバリンがアラニンに変異したものである。
【実施例1】
【0141】
改良型ニトリルヒドラターゼの作製
調製例1で作製したpSJ034を使用し、アミノ酸置換を行った。PCRは、下記反応液組成、反応条件、プライマーを用いて行った。
<PCR反応液組成>
滅菌水 20μl
pSJ034 (1ng/ml) 1μl
Forward Primer (10mM) 2μl
Reverse Primer (10mM) 2μl
PrimeSTAR MAX (2×) 25μl
合 計 50μl
<PCR反応条件>
(98℃ 10秒、55℃ 5秒、72℃で90秒)×30サイクル
<プライマー>
【0142】
【表5】
【0143】
PCR終了後、反応液5μlを0.7%アガロースゲル電気泳動に供し、11kbの増幅断片を確認し、1μlのDpn I(キットに付属)をPCR反応液に添加して37℃で1時間反応させ、鋳型プラスミドの除去を行った。反応終了液をWizard SV Gel and PCR Clean−Up Syste(プロメガ株式会社)で精製し、精製したPCR反応物を用いてJM109を形質転換した。得られた培養物から、QIAprep Spin Miniprep Kit(キアゲン社)を用いてプラスミドDNAを抽出し、オートシークエンサーCEQ 8000(ベックマンコールター社)を用いて、ニトリルヒドラターゼの塩基配列を確認した。得られたプラスミドを以下のように命名した。
【0144】
【表6】
【実施例2】
【0145】
ロドコッカス形質転換体の作製
ロドコッカス・ロドクロウスATCC12674株の対数増殖期の細胞を遠心分離器により集菌し、氷冷した滅菌水にて3回洗浄し、滅菌水に懸濁した。実施例1で調製したプラスミド1μlと菌体懸濁液10μlを混合し、氷冷した。キュベットにDNAと菌体の懸濁液を入れ、遺伝子導入装置Gene Pulser(BIORAD)により2.0kV、200OHMSで電気パルス処理を行った。電気パルス処理液を氷冷下10分静置し、37℃で10分間ヒートショクを行い、MYK培地(0.5%ポリペプトン、0.3%バクトイーストエキス、0.3%バクトモルトエキス、0.2%K
2HPO
4、0.2%KH
2PO
4)500μlを加え、30℃、5時間静置した。その後、50μg/mlカナマイシン入りMYK寒天培地に塗布し、30℃で3日間培養した。30℃、3日間培養後のコロニーを形質転換体とした。
【0146】
上記の工程で得られた各形質転換体をMYK培地(50μg/mlカナマイシン)にそれぞれ接種し、30℃にて2日間振盪培養し、GGPK培地(1.5%グルコース、1%グルタミン酸ナトリウム、0.1%酵母エキス、0.05%K
2HPO
4、0.05%KH
2PO
4、0.05%Mg
2O
4・7H
2O、1% CoCl
2、0.1%尿素、50μg/mlカナマイシン、pH7.2)に1%植菌を行った。30℃で3日間振盪培養し、遠心分離により集菌した。その後、100mMリン酸緩衝液(pH7.0)で菌体を洗浄し、菌体懸濁液を調製した。
【実施例3】
【0147】
改良型ニトリルヒドラターゼの活性
菌体懸濁液のニトリルヒドラターゼ活性の測定は、下記の方法で行った。菌体液0.2mlと50mMリン酸緩衝液(pH7.0)4.8mlとを混合し、さらに5.0%(w/v)のアクリロニトリルを含む50mMリン酸緩衝液(pH7.0)5mlを混合液に加えて、10℃で10分間振盪しながら反応させた。次いで、菌体を濾別して、ガスクロマトグラフィーを用いて生成したアクリルアミドの量を定量した。
<分析条件>
分析機器: ガスクロマトグラフGC−14B(島津製作所製)
検出器: FID(検出200℃)
カラム: ポラパックPS(ウォーターズ社製カラム充填剤)を充填した1mガラスカラム
カラム温度: 190℃
【0148】
アクリルアミドの量からニトリルヒドラターゼ活性を換算した。ここで、ニトリルヒドラターゼ活性は、1分間に1μmolのアクリルアミドを生成する酵素量を1Uと定義する。酵素活性はアミノ酸置換を導入した親株を1.0とした相対活性として表7に示す。
【0149】
【表7】
【0150】
以上の結果より、βサブユニット48番目のアミノ酸をアスパラギン酸、リジン、アスパラギン、プロリン、セリン、スレオニンに置換した改良型ニトリルヒドラターゼは、触媒活性が向上することがわかった。
【実施例4】
【0151】
改良型ニトリルヒドラターゼの作製と評価
鋳型プラスミドとして調製例2で作製したpFR005を使用して、βサブユニット48番目のアミノ酸置換を行った。
【0152】
即ち、実施例1に記載の方法でアミノ酸置換した改良型ニトリルヒドラターゼを作製し、実施例2の方法で形質転換体を得た。さらに、実施例3と同様の方法で触媒活性を調べた。結果を表8に示す。
【0153】
【表8】
【0154】
以上の結果より、配列番号50で示されるアミノ酸配列の中で、X
4(βサブユニット48番目のアミノ酸に相当)をシステイン、グルタミン酸、アスパラギン酸、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、セリン、スレオニンよりなる群から選択されるアミノ酸にすることにより、変異が導入されたニトリルヒドラターゼに対しても同様の効果を有することが示された。
【実施例5】
【0155】
SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動
実施例2で調製した菌体懸濁液を、超音波破砕装置VP−300(タイテック、日本)を用いて、氷冷しながら10分間破砕した。次に、菌体の粉砕溶液を13500rpm、30分間の遠心分離にかけ、上清から無細胞抽出液を得た。得られた細胞抽出液はBio−Radプロテインアッセイキットを使用してタンパク質濃度を測定し、ポリアクリルアミドゲル電気泳動用サンプルバッファー(0.1M Tris−HCl(pH6.8)、4%w/v SDS、12%v/vβメルカプトエタノール、20%v/vグリセロール、微量ブロモフェノールブルー)と混合し、5分間煮沸し変性処理を行った。10%ポリアクリルアミドゲルを作製し、変性処理済みサンプルを1レーンあたりタンパク質量として等量になるようにアプライし、電気泳動分析を行った(
図4)。
【0156】
その結果、全てのサンプルでニトリルヒドラターゼのバンド強度に差がないことから、ニトリルヒドラターゼの発現量は同じであることがわかった。以上の結果より、触媒活性の向上は、酵素の比活性が向上していることによるものであることがわかった。
【実施例6】
【0157】
ロドコッカス ロドクロウス M8株(以下、M8株と称する)由来ニトリルヒドラターゼを有する形質転換体の作製
(1)M8株からの染色体DNA調製
M8株(SU1731814)は、ロシア菌株センターIBFM(VKPM S−926)から入手することができる。M8株を100mlのMYK(0.5% ポリペプトン、0.3% バクトイーストエキス、0.3%バクトモルトエキス、0.2% K2HPO4、0.2% KH2PO4)培地(pH7.0)中、30℃にて72時間振盪培養した。培養液を遠心分離し、集菌した菌体をSaline−EDTA溶液(0.1M EDTA、0.15M NaCl(pH8.0))4mlに懸濁した。懸濁液にリゾチーム8mgを加えて37℃で1〜2時間振盪した後、−20℃で凍結した。
【0158】
次に、当該懸濁液に10mlのTris−SDS液(1%SDS、0.1M NaCl、0.1M Tris−HCl(pH9.0))を穏やかに振盪しながら加えた。さらに、当該懸濁液にプロテイナーゼK(メルク社)(終濃度0.1mg)を加え37℃で1時間振盪した。次に、等量のTE飽和フェノールを加え攪拌後(TE:10mM Tris−HCl、1mM EDTA(pH8.0))遠心した。上層を採取し、2倍量のエタノールを加えて、ガラス棒でDNAを巻きとった。その後、これを順次90%、80%、70%のエタノールで遠心分離しフェノールを取り除いた。
【0159】
次に、DNAを3mlのTE緩衝液に溶解させ、リボヌクレアーゼA溶液(100℃、15分間の加熱処理済)を10μg/mlになるよう加え37℃で30分間振盪した。さらに、プロテイナーゼK(メルク社)を加え37℃で30分間振盪した。これに等量のTE飽和フェノールを加えて遠心分離後、上層と下層に分離した。
【0160】
上層をさらに等量のTE飽和フェノールを加えて遠心分離後、上層と下層に分離した。この操作を再度繰り返した。その後、上層に同量のクロロホルム(4%イソアミルアルコール含有)を加えて遠心分離し、上層を回収した。次いで、上層に2倍量のエタノールを加えガラス棒でDNAを巻きとって回収し、染色体DNAを得た。
【0161】
(2)PCRを用いたM8株染色体DNAからの改良型ニトリルヒドラターゼの調製
M8株由来ニトリルヒドラターゼは非特許文献(Veiko,V.P.et al,Cloning,nucleotide sequence of nitrile hydratase gene from Rhodococcus rhodochrous M8,Biotekhnologiia(Mosc.)5,3−5(1995))に記載されており、βサブユニット、αサブユニット、アクチベーターの配列をそれぞれ配列番号37,配列番号38,配列番号39に示す。配列情報に基づいて、配列表の配列番号40及び41記載のプライマーを合成し、(1)にて調製した染色体DNAを鋳型としてPCRを行った。
【0162】
<PCR反応溶液組成>
滅菌水 20μl
鋳型DNA(染色体DNA) 1μl
プライマーM8−1(10mM) 2μl
プライマーM8−2(10mM) 2μl
PrimeSTAR MAX (2×) 25μl
合 計 50μl
【0163】
<プライマー>
M8−1:GGTCTAGAATGGATGGTATCCACGACACAGGC(配列番号40)
M8−2:cccctgcaggtcagtcgatgatggccatcgattc(配列番号41)
【0164】
<反応条件>
(98℃ 10秒、55℃ 5秒、72℃ 30秒)×30サイクル
【0165】
PCR終了後、反応液5μlを0.7%アガロースゲル(同仁化学社製アガロースI使用;アガロース濃度0.7重量%)電気泳動に供し、1.6kbの増幅断片の検出を行った。反応終了液をWizard SV Gel and PCR Clean−Up Syste(プロメガ株式会社)を用いて精製した。
【0166】
回収したPCR産物はLigation Kit(宝酒造)を用いてベクター(pUC118/HincII部位)に連結し、反応液により大腸菌JM109のコンピテントセルを形質転換した。得られた形質転換体コロニーより数クローンをLB−Amp培地1.5mlに接種し、37℃で12時間振盪培養した。培養後、この培養物を遠心分離により集菌した。QIAprep Spin Miniprep Kit(キアゲン社)を用いることにより、集菌した菌体からプラスミドDNAを抽出した。得られたプラスミドDNAに対し、シークエンシングキットとオートシークエンサーCEQ 8000(ベックマンコールター社)を用いて、ニトリルヒドラターゼの塩基配列を確認した(配列番号62)。
【0167】
次に、得られたプラスミドDNAを制限酵素XbaIとSse8387Iで切断後、0.7%アガロースゲルにより電気泳動を行い、ニトリルヒドラターゼ遺伝子断片(1.6kb)を回収し、プラスミドpSJ042のXbaI−Sse8387Iサイトに導入した。得られたプラスミドをpSJ−N01Aと命名した。尚、pSJ042はロドコッカス菌においてJ1株ニトリルヒドラターゼを発現するプラスミドとして特開2008−154552号公報(参照することにより、本明細書に取り込まれる)に示す方法で作製されたものであり、pSJ042の作製に使用したpSJ023は形質転換体ATCC12674/pSJ023(FERM BP−6232)として独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に平成9年3月4日付けで寄託されている。
【実施例7】
【0168】
改良型ニトリルヒドラターゼの作製と評価
実施例6で得られたプラスミドpSJ−N01Aを用いて、βサブユニット48番目のアミノ酸置換を行った。実施例1と同様の手法でアミノ酸置換を行い、改良型ニトリルヒドラターゼを作製した。さらに、実施例3と同様の手法でロドコッカス・ロドクロウスATCC12674株の形質転換体及びその菌体懸濁液を得た後に、実施例4と同様の方法で触媒活性を測定した。結果を表9に示す。
【0169】
【表9】
【0170】
表9の結果より、βサブユニットの48番目のアミノ酸を置換した改良型ニトリルヒドラターゼは、実施例3と同様に触媒活性が向上することがわかった。
【実施例8】
【0171】
改良型ニトリルヒドラターゼの作製
【0172】
調製例1で作製したプラスミドpSJ034を使用し、アミノ酸置換を行った。PCRは、下記反応液組成、反応条件、表2に示すプライマーを用いて行った。
<PCR反応液組成>
滅菌水 20μl
pSJ034 (1ng/ml) 1μl
Forward Primer (10mM) 2μl
Reverse Primer (10mM) 2μl
PrimeSTAR MAX (2×) 25μl
合 計 50μl
<PCR反応条件>
(98℃ 10秒、55℃ 5秒、72℃で90秒)×30サイクル
<プライマー>
【0173】
【表10】
【0174】
PCR終了後、反応液5μlを0.7%アガロースゲル電気泳動に供し、11kbの増幅断片を確認し、1μlのDpnI(キットに付属)をPCR反応液に添加して37℃で1時間反応させ、鋳型プラスミドの除去を行った。反応終了液をWizard SV Gel and PCR Clean−Up Syste(プロメガ株式会社)で精製し、精製したPCR反応物を用いてJM109を形質転換した。得られた培養物から、QIAprep Spin Miniprep Kit(キアゲン社)を用いてプラスミドDNAを抽出し、オートシークエンサーCEQ 8000(ベックマンコールター社)を用いて、ニトリルヒドラターゼの塩基配列を確認した。得られたプラスミドを表11のように命名した。
【0175】
【表11】
【実施例9】
【0176】
ロドコッカス形質転換体の作製
【0177】
ロドコッカス・ロドクロウスATCC12674株の対数増殖期の細胞を遠心分離器により集菌し、氷冷した滅菌水にて3回洗浄し、滅菌水に懸濁した。実施例1で調製したプラスミド1μlと菌体懸濁液10μlを混合し、氷冷した。キュベットにDNAと菌体の懸濁液を入れ、遺伝子導入装置Gene Pulser(BIORAD)により2.0kV、200OHMSで電気パルス処理を行った。電気パルス処理液を氷冷下10分静置し、37℃で10分間ヒートショクを行い、MYK培地(0.5%ポリペプトン、0.3%バクトイーストエキス、0.3%バクトモルトエキス、0.2%K
2HPO
4、0.2%KH
2PO
4)500μlを加え、30℃、5時間静置した。その後、50μg/mlカナマイシン入りMYK寒天培地に塗布し、30℃で3日間培養した。30℃、3日間培養後のコロニーを形質転換体とした。
【0178】
上記の工程で得られた各形質転換体をMYK培地(50μg/mlカナマイシン)にそれぞれ接種し、30℃にて2日間振盪培養し、GGPK培地(1.5%グルコース、1%グルタミン酸ナトリウム、0.1%酵母エキス、0.05%K
2HPO
4、0.05%KH
2PO
4、0.05%Mg
2O
4・7H
2O、1% CoCl
2、0.1%尿素、50μg/mlカナマイシン、pH7.2)に1%植菌を行った。30℃で3日間振盪培養し、遠心分離により集菌した。その後、100mMリン酸緩衝液(pH7.0)で菌体を洗浄し、菌体懸濁液を調製した。
【実施例10】
【0179】
改良型ニトリルヒドラターゼの活性
【0180】
菌体懸濁液のニトリルヒドラターゼ活性の測定は、下記の方法で行った。
菌体液0.2mlと50mMリン酸緩衝液(pH7.0)4.8mlとを混合し、さらに5.0%(w/v)のアクリロニトリルを含む50mMリン酸緩衝液(pH7.0)5mlを混合液に加えて、10℃で10分間振盪しながら反応させた。次いで、菌体を濾別して、ガスクロマトグラフィーを用いて生成したアクリルアミドの量を定量した。
<分析条件>
分析機器: ガスクロマトグラフGC−14B(島津製作所製)
検出器: FID(検出200℃)
カラム: ポラパックPS(ウォーターズ社製カラム充填剤)を充填した1mガラスカラム
カラム温度: 190℃
【0181】
アクリルアミドの量からニトリルヒドラターゼ活性を換算した。ここで、ニトリルヒドラターゼ活性は、1分間に1μmolのアクリルアミドを生成する酵素量を1Uと定義する。酵素活性はアミノ酸置換を導入していない親株を1.0とした相対活性として表12に示す。
【0182】
【表12】
【0183】
以上の結果より、βサブユニット37番目のアミノ酸を、アラニン、バリン、アスパラギン酸、スレオニン、フェニルアラニン、イソロイシン、メチオニンよりなる群から選択されるアミノ酸に置換した酵素は、触媒活性が向上することがわかった。
【実施例11】
【0184】
SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動
【0185】
実施例2で調製した菌体懸濁液を、超音波破砕装置VP−300(タイテック、日本)を用いて、氷冷しながら10分間破砕した。次に、菌体の粉砕溶液を13500rpm、30分間の遠心分離にかけ、上清から無細胞抽出液を得た。得られた細胞抽出液はBio−Radプロテインアッセイキットを使用してタンパク質濃度を測定し、ポリアクリルアミドゲル電気泳動用サンプルバッファー(0.1M Tris−HCl(pH6.8)、4%w/v SDS、12%v/vβメルカプトエタノール、20%v/vグリセロール、微量ブロモフェノールブルー)と混合し、5分間煮沸し変性処理を行った。10%ポリアクリルアミドゲルを作製し、変性処理済みサンプルを1レーンあたりタンパク質量として等量になるようにアプライし、電気泳動分析を行った。
【0186】
その結果、全てのサンプルでニトリルヒドラターゼのバンド強度に差がないことから、ニトリルヒドラターゼの発現量は同じであることがわかった。以上の結果より、触媒活性の向上は、酵素の比活性が向上していることがわかった。
【実施例12】
【0187】
改良型ニトリルヒドラターゼの作製と評価
鋳型プラスミドとして下記のpFR005を使用して、βサブユニット37番目のアミノ酸置換を行った。
【0188】
即ち、実施例1に記載の方法でアミノ酸置換した改良型ニトリルヒドラターゼを作製し、実施例2の方法でロドコッカス・ロドクロウスATCC12674株の形質転換体及びその菌体懸濁液を得た。さらに、実施例3と同様の方法で活性測定を調べた。結果を表13に示す。
【0189】
【表13】
【0190】
以上の結果より、本発明のアミノ酸置換は野生型ニトリルヒドラターゼだけでなく変異が導入されたニトリルヒドラターゼに対しても同様の効果を有することが示された。
【実施例13】
【0191】
改良型ニトリルヒドラターゼの作製
【0192】
調製例1で作製したプラスミドpSJ034を使用し、アミノ酸置換を行った。PCRは、下記反応液組成、反応条件、表2に示すプライマーを用いて行った。
<PCR反応液組成>
滅菌水 20μl
pSJ034 (1ng/ml) 1μl
Forward Primer (10mM) 2μl
Reverse Primer (10mM) 2μl
PrimeSTAR MAX (2×) 25μl
合 計 50μl
<PCR反応条件>
(98℃ 10秒、55℃ 5秒、72℃で90秒)×30サイクル
<プライマー>
【0193】
【表14】
【0194】
PCR終了後、反応液5μlを0.7%アガロースゲル電気泳動に供し、11kbの増幅断片を確認し、1μlのDpnI(キットに付属)をPCR反応液に添加して37℃で1時間反応させ、鋳型プラスミドの除去を行った。反応終了液をWizard SV Gel and PCR Clean−Up Syste(プロメガ株式会社)で精製し、精製したPCR反応物を用いてJM109を形質転換した。得られた培養物から、QIAprep Spin Miniprep Kit(キアゲン社)を用いてプラスミドDNAを抽出し、オートシークエンサーCEQ 8000(ベックマンコールター社)を用いて、ニトリルヒドラターゼの塩基配列を確認した。得られたプラスミドを表15のように命名した。
【0195】
【表15】
【実施例14】
【0196】
ロドコッカス形質転換体の作製
【0197】
ロドコッカス・ロドクロウスATCC12674株の対数増殖期の細胞を遠心分離器により集菌し、氷冷した滅菌水にて3回洗浄し、滅菌水に懸濁した。実施例1で調製したプラスミド1μlと菌体懸濁液10μlを混合し、氷冷した。キュベットにDNAと菌体の懸濁液を入れ、遺伝子導入装置Gene Pulser(BIORAD)により2.0kV、200OHMSで電気パルス処理を行った。電気パルス処理液を氷冷下10分静置し、37℃で10分間ヒートショクを行い、MYK培地(0.5%ポリペプトン、0.3%バクトイーストエキス、0.3%バクトモルトエキス、0.2%K
2HPO
4、0.2%KH
2PO
4)500μlを加え、30℃、5時間静置した。その後、50μg/mlカナマイシン入りMYK寒天培地に塗布し、30℃で3日間培養した。30℃、3日間培養後のコロニーを形質転換体とした。
【0198】
上記の工程で得られた各形質転換体をMYK培地(50μg/mlカナマイシン)にそれぞれ接種し、30℃にて2日間振盪培養し、GGPK培地(1.5%グルコース、1%グルタミン酸ナトリウム、0.1%酵母エキス、0.05%K
2HPO
4、0.05%KH
2PO
4、0.05%Mg
2O
4・7H
2O、1% CoCl
2、0.1%尿素、50μg/mlカナマイシン、pH7.2)に1%植菌を行った。30℃で3日間振盪培養し、遠心分離により集菌した。その後、100mMリン酸緩衝液(pH7.0)で菌体を洗浄し、菌体懸濁液を調製した。
【実施例15】
【0199】
改良型ニトリルヒドラターゼの活性
【0200】
菌体懸濁液のニトリルヒドラターゼ活性の測定は、下記の方法で行った。
菌体液0.2mlと50mMリン酸緩衝液(pH7.0)4.8mlとを混合し、さらに5.0%(w/v)のアクリロニトリルを含む50mMリン酸緩衝液(pH7.0)5mlを混合液に加えて、10℃で10分間振盪しながら反応させた。次いで、菌体を濾別して、ガスクロマトグラフィーを用いて生成したアクリルアミドの量を定量した。
<分析条件>
分析機器: ガスクロマトグラフGC−14B(島津製作所製)
検出器: FID(検出200℃)
カラム: ポラパックPS(ウォーターズ社製カラム充填剤)を充填した1mガラスカラム
カラム温度: 190℃
【0201】
アクリルアミドの量からニトリルヒドラターゼ活性を換算した。ここで、ニトリルヒドラターゼ活性は、1分間に1μmolのアクリルアミドを生成する酵素量を1Uと定義する。酵素活性はアミノ酸置換を導入していない親株を1.0とした相対活性として表16に示す。
【0202】
【表16】
【0203】
以上の結果より、αサブユニット83番目のアミノ酸をアラニン、アスパラギン酸、フェニルアラニン、ヒスチジン、メチオニン、アスパラギン、よりなる群から選択されるアミノ酸に置換した酵素は、触媒活性が向上することがわかった。
【実施例16】
【0204】
改良型ニトリルヒドラターゼの作製と評価
鋳型プラスミドとして下記のpFR005を使用して、αサブユニット83番目のアミノ酸置換を行った。
【0205】
即ち、実施例1に記載の方法でアミノ酸置換した改良型ニトリルヒドラターゼを作製し、実施例2の方法でロドコッカス・ロドクロウスATCC12674株の形質転換体及びその菌体懸濁液を得た。さらに、実施例3と同様の方法で活性測定を調べた。結果を表17に示す。
【0206】
【表17】
【0207】
以上の結果より、本発明のアミノ酸置換はニトリルヒドラターゼだけでなく変異が導入されたニトリルヒドラターゼに対しても同様の効果を有することが示された。
【実施例17】
【0208】
ロドコッカス ロドクロウス M8株(以下、M8株と称する)由来ニトリルヒドラターゼを有する形質転換体の作製
【0209】
(1)M8株からの染色体DNA調製
M8株(SU1731814)は、ロシア菌株センターIBFM(VKPM S−926)から入手することができる。M8株を100mlのMYK(0.5%ポリペプトン、0.3%バクトイーストエキス、0.3%バクトモルトエキス、0.2%K
2HPO
4、0.2% KH
2PO
4)培地(pH7.0)中、30℃にて72時間振盪培養した。培養液を遠心分離し、集菌した菌体をSaline−EDTA溶液(0.1M EDTA、0.15M NaCl(pH8.0))4mlに懸濁した。懸濁液にリゾチーム8mgを加えて37℃で1〜2時間振盪した後、−20℃で凍結した。
【0210】
次に、当該懸濁液に10mlのTris−SDS液(1%SDS、0.1M NaCl、0.1M Tris−HCl(pH9.0))を穏やかに振盪しながら加えた。さらに、当該懸濁液にプロテイナーゼK(メルク社)(終濃度0.1mg)を加え37℃で1時間振盪した。次に、等量のTE飽和フェノールを加え攪拌後(TE:10mM Tris−HCl、1mM EDTA(pH8.0))遠心した。上層を採取し、2倍量のエタノールを加えて、ガラス棒でDNAを巻きとった。その後、これを順次90%、80%、70%のエタノールで遠心分離しフェノールを取り除いた。
【0211】
次に、DNAを3mlのTE緩衝液に溶解させ、リボヌクレアーゼA溶液(100℃、15分間の加熱処理済)を10μg/mlになるよう加え37℃で30分間振盪した。さらに、プロテイナーゼK(メルク社)を加え37℃で30分間振盪した。これに等量のTE飽和フェノールを加えて遠心分離後、上層と下層に分離した。
【0212】
上層をさらに等量のTE飽和フェノールを加えて遠心分離後、上層と下層に分離した。この操作を再度繰り返した。その後、上層に同量のクロロホルム(4%イソアミルアルコール含有)を加えて遠心分離し、上層を回収した。次いで、上層に2倍量のエタノールを加えガラス棒でDNAを巻きとって回収し、染色体DNAを得た。
【0213】
(2)PCRを用いたM8株染色体DNAからのニトリルヒドラターゼ遺伝子の調製
M8株由来ニトリルヒドラターゼは非特許文献(Veiko,V.P.et al, Cloning,nucleotide sequence of nitrile hydratase gene from Rhodococcus rhodochrous M8, Biotekhnologiia (Mosc.) 5, 3−5 (1995))に記載されており、βサブユニット、αサブユニット、の配列をそれぞれ配列番号17、配列番号18に示す。配列情報に基づいて、配列表の配列番号115及び116記載のプライマーを合成し、(1)にて調製した染色体DNAを鋳型としてPCRを行った。
<PCR反応溶液組成>
滅菌水 20μl
鋳型DNA(染色体DNA) 1μl
プライマーM8−1 (10mM) 2μl
プライマーM8−2 (10mM) 2μl
PrimeSTAR MAX (2×) 25μl
合 計 50μl
<プライマー>
M8−1: GGTCTAGAATGGATGGTATCCACGACACAGGC(配列番号115)
M8−2: CCCCTGCAGGTCAGTCGATGATGGCCATCGATTC(配列番号116)
<反応条件>
(98℃ 10秒、55℃ 5秒、72℃ 30秒)×30サイクル
【0214】
PCR終了後、反応液5μlを0.7%アガロースゲル(同仁化学社製アガロースI使用;アガロース濃度0.7重量%)電気泳動に供し、1.6kbの増幅断片の検出を行った。反応終了液をWizard SV Gel and PCR Clean−Up Syste(プロメガ株式会社)を用いて精製した。
【0215】
回収したPCR産物はLigation Kit(宝酒造)を用いてベクター(pUC118/HincII部位)に連結し、反応液により大腸菌JM109のコンピテントセルを形質転換した。得られた形質転換体コロニーより数クローンをLB−Amp培地1.5mlに接種し、37℃で12時間振盪培養した。培養後、この培養物を遠心分離により集菌した。QIAprep Spin Miniprep Kit (キアゲン社)を用いることにより、集菌した菌体からプラスミドDNAを抽出した。得られたプラスミドDNAに対し、シークエンシングキットとオートシークエンサーCEQ 8000(ベックマンコールター社)を用いて、ニトリルヒドラターゼの塩基配列を確認した。
【0216】
次に、得られたプラスミドDNAを制限酵素XbaIとSse8387Iで切断後、0.7%アガロースゲルにより電気泳動を行い、ニトリルヒドラターゼ遺伝子断片(1.6kb)を回収し、プラスミドpSJ042のXbaI−Sse8387Iサイトに導入した。得られたプラスミドをpSJ−N01Aと命名した。尚、pSJ042はロドコッカス菌においてJ1株ニトリルヒドラターゼを発現するプラスミドとして特開2008−154552号公報に示す方法で作製されたものであり、pSJ042の作製に使用したpSJ023は形質転換体ATCC12674/pSJ023(FERM BP−6232)として独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に平成9年3月4日付けで寄託されている。
【実施例18】
【0217】
改良型ニトリルヒドラターゼの作製と評価
【0218】
実施例5で得られたプラスミドpSJ−N01Aを用いて、αサブユニット83番目のアミノ酸置換を行った。実施例1と同様の手法でアミノ酸置換を行い、改良型ニトリルヒドラターゼを作製した。さらに、実施例2と同様の手法でロドコッカス・ロドクロウスATCC12674株の形質転換体及びその菌体懸濁液を得た後に、実施例4と同様の方法で活性測定を調べた。結果を表18に示す。
【0219】
【表18】
【0220】
以上の結果より、αサブユニットの83番目をメチオニンにアミノ酸置換を行ったpSJR17は、実施例4と同様に触媒活性が向上することがわかった。
【実施例19】
【0221】
改良型ニトリルヒドラターゼの作製
調製例1で作製したプラスミドpSJ034を使用し、アミノ酸置換を行った。PCRは、下記反応液組成、反応条件、表2に示すプライマーを用いて行った。
<PCR反応液組成>
滅菌水 20μl
pSJ034 (1ng/ml) 1μl
Forward Primer (10mM) 2μl
Reverse Primer (10mM) 2μl
PrimeSTAR MAX (2×) 25μl
合 計 50μl
<PCR反応条件>
(98℃ 10秒、55℃ 5秒、72℃で90秒)×30サイクル
<プライマー>
α82の飽和変異プライマー
α82RM−F ATGCCGGTNNSCAGGCACACCAAATTT(配列番号129)
α82RM−R TGTGCCTGSNNACCGGCATAGCCCAAT(配列番号130)
【0222】
PCR終了後、反応液5μlを0.7%アガロースゲル電気泳動に供し、11kbの増幅断片を確認し、1μlのDpnI(キットに付属)をPCR反応液に添加して37℃で1時間反応させ、鋳型プラスミドの除去を行った。反応終了液をWizard SV Gel and PCR Clean−Up Syste(プロメガ株式会社)で精製し、精製したPCR反応物を用いてJM109へ形質転換した。得られた培養物から、QIAprep Spin Miniprep Kit(キアゲン社)を用いてプラスミドDNAを抽出し、オートシークエンサーCEQ 8000(ベックマンコールター社)を用いて、ニトリルヒドラターゼの塩基配列を確認した。得られたプラスミドを表19のように命名した。
【0223】
【表19】
【実施例20】
【0224】
ロドコッカス形質転換体の作製
ロドコッカス・ロドクロウスATCC12674株の対数増殖期の細胞を遠心分離器により集菌し、氷冷した滅菌水にて3回洗浄し、滅菌水に懸濁した。実施例2で調製したプラスミド1μlと菌体懸濁液10μlを混合し、氷冷した。キュベットにDNAと菌体の懸濁液を入れ、遺伝子導入装置Gene Pulser(BIORAD)により2.0kV、200OHMSで電気パルス処理を行った。電気パルス処理液を氷冷下10分静置し、37℃で10分間ヒートショクを行い、MYK培地(0.5%ポリペプトン、0.3%バクトイーストエキス、0.3%バクトモルトエキス、0.2%K
2HPO
4、0.2%KH
2PO
4)500μlを加え、30℃、5時間静置した。その後、50μg/mlカナマイシン入りMYK寒天培地に塗布し、30℃で3日間培養した。30℃、3日間培養後のコロニーを形質転換体とした。
【0225】
上記の工程で得られた各形質転換体をMYK培地(50μg/mlカナマイシン)にそれぞれ接種し、30℃にて2日間振盪培養し、GGPK培地(1.5%グルコース、1%グルタミン酸ナトリウム、0.1%酵母エキス、0.05%K
2HPO
4、0.05%KH
2PO
4、0.05%Mg
2O
4・7H
2O、1% CoCl
2、0.1%尿素、50μg/mlカナマイシン、pH7.2)に1%植菌を行った。30℃で3日間振盪培養し、遠心分離により集菌した。その後、100mMリン酸緩衝液(pH7.0)で菌体を洗浄し、菌体懸濁液を調製した。
【実施例21】
【0226】
改良型ニトリルヒドラターゼの活性
菌体懸濁液のニトリルヒドラターゼ活性の測定は、下記の方法で行った。
【0227】
菌体液0.2mlと50mMリン酸緩衝液(pH7.0)4.8mlとを混合し、さらに5.0%(w/v)のアクリロニトリルを含む50mMリン酸緩衝液(pH7.0)5mlを混合液に加えて、10℃で10分間振盪しながら反応させた。次いで、菌体を濾別して、ガスクロマトグラフィーを用いて生成したアクリルアミドの量を定量した。
<分析条件>
分析機器: ガスクロマトグラフGC2014(島津製作所製)
検出器: FID(検出200℃)
カラム: ポラパックPS(ウォーターズ社製カラム充填剤)を充填した1mガラスカラム
カラム温度: 190℃
【0228】
アクリルアミドの量からニトリルヒドラターゼ活性を換算した。ここで、ニトリルヒドラターゼ活性は、1分間に1μmolのアクリルアミドを生成する酵素量を1Uと定義する。酵素活性はアミノ酸置換を導入していない親株を1.0とした相対活性として表20に示す。
【0229】
【表20】
以上の結果より、αサブユニット82番目のアミノ酸をシステイン、フェニルアラニン、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、メチオニン、グルタミン、アルギニン、トレオニン、チロシンよりなる群から選択されるアミノ酸に置換した酵素は、触媒活性が向上することがわかった。
【実施例22】
【0230】
SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動
実施例3で調製した菌体懸濁液を、超音波破砕装置VP−300(タイテック、日本)を用いて、氷冷しながら10分間破砕した。次に、菌体の粉砕溶液を13500rpm、30分間の遠心分離にかけ、上清から無細胞抽出液を得た。得られた細胞抽出液はBio−Radプロテインアッセイキットを使用してタンパク質濃度を測定し、ポリアクリルアミドゲル電気泳動用サンプルバッファー(0.1M Tris−HCl(pH6.8)、4%w/v SDS、12%v/vβメルカプトエタノール、20%v/vグリセロール、微量ブロモフェノールブルー)と混合し、5分間煮沸し変性処理を行った。10%ポリアクリルアミドゲルを作製し、変性処理済みサンプルを1レーンあたりタンパク質量として等量になるようにアプライし、電気泳動分析を行った。
【0231】
その結果、全てのサンプルでニトリルヒドラターゼのバンド強度に差がないことから、ニトリルヒドラターゼの発現量は同じであることがわかった。以上の結果より、触媒活性の向上は、酵素の比活性が向上していることがわかった。
【実施例23】
【0232】
改良型ニトリルヒドラターゼの作製
調製例1で作製したプラスミドpSJ034を使用し、アミノ酸置換を行った。PCRは、下記反応液組成、反応条件、表2に示すプライマーを用いて行った。
<PCR反応液組成>
滅菌水 20μl
pSJ034 (1ng/ml) 1μl
Forward Primer (10mM) 2μl
Reverse Primer (10mM) 2μl
PrimeSTAR MAX (2×) 25μl
合 計 50μl
<PCR反応条件>
(98℃ 10秒、55℃ 5秒、72℃で90秒)×30サイクル
<プライマー>
α85の飽和変異プライマー
α85RM−F CAGGCANNSCAAATTTCGGCGGTCTTC(配列番号133)
α85RM−R AATTTGSNNTGCCTGCTCACCGGCATA(配列番号134)
【0233】
PCR終了後、反応液5μlを0.7%アガロースゲル電気泳動に供し、11kbの増幅断片を確認し、1μlのDpnI(キットに付属)をPCR反応液に添加して37℃で1時間反応させ、鋳型プラスミドの除去を行った。反応終了液をWizard SV Gel and PCR Clean−Up Syste(プロメガ株式会社)で精製し、精製したPCR反応物を用いてJM109を形質転換した。得られた培養物から、QIAprep Spin Miniprep Kit(キアゲン社)を用いてプラスミドDNAを抽出し、オートシークエンサーCEQ 8000(ベックマンコールター社)を用いて、ニトリルヒドラターゼの塩基配列を確認した。得られたプラスミドを表21のように命名した。
【0234】
【表21】
【実施例24】
【0235】
ロドコッカス形質転換体の作製
ロドコッカス・ロドクロウスATCC12674株の対数増殖期の細胞を遠心分離器により集菌し、氷冷した滅菌水にて3回洗浄し、滅菌水に懸濁した。実施例2で調製したプラスミド1μlと菌体懸濁液10μlを混合し、氷冷した。キュベットにDNAと菌体の懸濁液を入れ、遺伝子導入装置Gene Pulser(BIORAD)により2.0kV、200OHMSで電気パルス処理を行った。電気パルス処理液を氷冷下10分静置し、37℃で10分間ヒートショクを行い、MYK培地(0.5%ポリペプトン、0.3%バクトイーストエキス、0.3%バクトモルトエキス、0.2%K
2HPO
4、0.2%KH
2PO
4)500μlを加え、30℃、5時間静置した。その後、50μg/mlカナマイシン入りMYK寒天培地に塗布し、30℃で3日間培養した。30℃、3日間培養後のコロニーを形質転換体とした。
【0236】
上記の工程で得られた各形質転換体をMYK培地(50μg/mlカナマイシン)にそれぞれ接種し、30℃にて2日間振盪培養し、GGPK培地(1.5%グルコース、1%グルタミン酸ナトリウム、0.1%酵母エキス、0.05%K
2HPO
4、0.05%KH
2PO
4、0.05%Mg
2O
4・7H
2O、1% CoCl
2、0.1%尿素、50μg/mlカナマイシン、pH7.2)に1%植菌を行った。30℃で3日間振盪培養し、遠心分離により集菌した。その後、100mMリン酸緩衝液(pH7.0)で菌体を洗浄し、菌体懸濁液を調製した。
【実施例25】
【0237】
改良型ニトリルヒドラターゼの活性
菌体懸濁液のニトリルヒドラターゼ活性の測定は、下記の方法で行った。
【0238】
菌体液0.2mlと50mMリン酸緩衝液(pH7.0)4.8mlとを混合し、さらに5.0%(w/v)のアクリロニトリルを含む50mMリン酸緩衝液(pH7.0)5mlを混合液に加えて、10℃で10分間振盪しながら反応させた。次いで、菌体を濾別して、ガスクロマトグラフィーを用いて生成したアクリルアミドの量を定量した。
<分析条件>
分析機器: ガスクロマトグラフGC2014(島津製作所製)
検出器: FID(検出200℃)
カラム: ポラパックPS(ウォーターズ社製カラム充填剤)を充填した1mガラスカラム
カラム温度: 190℃
【0239】
アクリルアミドの量からニトリルヒドラターゼ活性を換算した。ここで、ニトリルヒドラターゼ活性は、1分間に1μmolのアクリルアミドを生成する酵素量を1Uと定義する。酵素活性はアミノ酸置換を導入していない親株を1.0とした相対活性として表22に示す。
【0240】
【表22】
【0241】
以上の結果より、αサブユニット85番目のアミノ酸をシステイン、グルタミン酸、フェニルアラニン、イソロイシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、チロシンよりなる群から選択されるアミノ酸に置換した酵素は、触媒活性が向上することがわかった。
【実施例26】
【0242】
SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動
実施例3で調製した菌体懸濁液を、超音波破砕装置VP−300(タイテック、日本)を用いて、氷冷しながら10分間破砕した。次に、菌体の粉砕溶液を13500rpm、30分間の遠心分離にかけ、上清から無細胞抽出液を得た。得られた細胞抽出液はBio−Radプロテインアッセイキットを使用してタンパク質濃度を測定し、ポリアクリルアミドゲル電気泳動用サンプルバッファー(0.1M Tris−HCl(pH6.8)、4%w/v SDS、12%v/vβメルカプトエタノール、20%v/vグリセロール、微量ブロモフェノールブルー)と混合し、5分間煮沸し変性処理を行った。10%ポリアクリルアミドゲルを作製し、変性処理済みサンプルを1レーンあたりタンパク質量として等量になるようにアプライし、電気泳動分析を行った。
【0243】
その結果、全てのサンプルでニトリルヒドラターゼのバンド強度に差がないことから、ニトリルヒドラターゼの発現量は同じであることがわかった。以上の結果より、触媒活性の向上は、酵素の比活性が向上していることがわかった。
【受託番号】
【0248】
ロドコッカス・ロドクロウスJ1株は、FERM BP−1478として独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に昭和62(1987)年9月18日付けで国際寄託されている。
【0249】
pSJ023は形質転換体「R. rhodochrous ATCC12674/pSJ023」であり、受託番号FERM BP−6232として独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に平成9(1997)年3月4日付けで国際寄託されている。
【0250】
[配列表の説明]
配列番号1:ロドコッカス・ロドクロウスJ1(FERM BP−1478)由来のβサブユニットの塩基配列。
配列番号2:ロドコッカス・ロドクロウスJ1(FERM BP−1478)由来のβサブユニットのアミノ酸配列。
配列番号3:ロドコッカス・ロドクロウスJ1(FERM BP−1478)由来のαサブユニットの塩基配列。
配列番号4:ロドコッカス・ロドクロウスJ1(FERM BP−1478)由来のαサブユニットのアミノ酸配列。
配列番号5:ロドコッカス・ロドクロウスM8(SU1731814)のβサブユニットのアミノ酸配列。
配列番号6:ロドコッカス・ルーバーTHのβサブユニットのアミノ酸配列。
配列番号7:ロドコッカス・ピリジノボランスMW33(VKM Ac−1515D)のβサブユニットのアミノ酸配列。
配列番号8:ロドコッカス・ピリジノボランスS85−2のβサブユニットのアミノ酸配列。
配列番号9:ロドコッカス・ピリジノボランスMS−38のβサブユニットのアミノ酸配列。
配列番号10:ノカルジア sp.JBRsのβサブユニットのアミノ酸配列。
配列番号11:ノカルジア SP.YS−2002のβサブユニットのアミノ酸配列。
配列番号12:ロドコッカス・ロドクロウス ATCC39384のβサブユニットのアミノ酸配列。
配列番号13:β48C−Fプライマー。
配列番号14:β48C−Rプライマー。
配列番号15:β48D−Fプライマー。
配列番号16:β48D−Rプライマー。
配列番号17:β48E−Fプライマー。
配列番号18:β48E−Rプライマー。
配列番号19:β48H−Fプライマー。
配列番号20:β48H−Rプライマー。
配列番号21:β48I−Fプライマー。
配列番号22:β48I−Rプライマー。
配列番号23:β48K−Fプライマー。
配列番号24:β48K−Rプライマー。
配列番号25:β48M−Fプライマー。
配列番号26:β48M−Rプライマー。
配列番号27:β48N−Fプライマー。
配列番号28:β48N−Rプライマー。
配列番号29:β48P−Fプライマー。
配列番号30:β48P−Rプライマー。
配列番号31:β48Q−Fプライマー。
配列番号32:β48Q−Rプライマー。
配列番号33:β48S−Fプライマー。
配列番号34:β48S−Rプライマー。
配列番号35:β48T−Fプライマー。
配列番号36:β48T−Rプライマー。
配列番号37:M8株由来ニトリルヒドラターゼのβサブユニットのアミノ酸配列。
配列番号38:M8株由来ニトリルヒドラターゼのαサブユニットのアミノ酸配列。
配列番号39:M8株由来ニトリルヒドラターゼのアクチベーターのアミノ酸配列。
配列番号40:M8−1のプライマー。
配列番号41:M8−2のプライマー。
配列番号42:アンカルチャード・バクテリウム SP1のβサブユニットのアミノ酸配列。
配列番号43:アンカルチャード・バクテリウム BD2のβサブユニットのアミノ酸配列。
配列番号44:コマモナス・テストストローニのβサブユニットのアミノ酸配列。
配列番号45:ジオバチルス・サーモグルコシダシウス Q6のβサブユニットのアミノ酸配列。
配列番号46:シュードノカルディア・サーモフィラ JCM3095のβサブユニットのアミノ酸配列。
配列番号47:ロドコッカス・ロドクロウス Cr4のβサブユニットのアミノ酸配列。
配列番号48:鉄型ニトリルヒドラターゼのαサブユニットのシステインクラスターのアミノ酸配列。
配列番号49:コバルト型ニトリルヒドラターゼのαサブユニットのシステインクラスターのアミノ酸配列。
配列番号50:本発明に用いる特定のアミノ酸配列。
配列番号51:本発明のβサブユニットのアミノ酸配列。
配列番号52:ロドコッカス・ルーバーRH(CN101463358)のβサブユニットのアミノ酸配列。
配列番号53:ニトリルヒドラターゼ J1Dの塩基配列。
配列番号54:ニトリルヒドラターゼ 203の塩基配列。
配列番号55:ニトリルヒドラターゼ 414の塩基配列。
配列番号56:ニトリルヒドラターゼ 855の塩基配列。
配列番号57:ニトリルヒドラターゼ D2のαサブユニットの塩基配列。
配列番号58:ニトリルヒドラターゼ 005の塩基配列。
配列番号59:ニトリルヒドラターゼ 108Aの塩基配列。
配列番号60:ニトリルヒドラターゼ 211の塩基配列。
配列番号61:ニトリルヒドラターゼ 306Aの塩基配列。
配列番号62:ロドコッカス・ロドクロウスM8の両末端にプライマー配列を含むPCR断片の塩基配列。
配列番号63:β17RM−Fプライマー。
配列番号64:β17RM−Rプライマー。
配列番号65:NH−19プライマー。
配列番号66:NH−20プライマー。
配列番号67:β37A−Fプライマー。
配列番号68:β37A−Rプライマー。
配列番号69:β37D−Fプライマー。
配列番号70:β37D−Rプライマー。
配列番号71:β37F−Fプライマー。
配列番号72:β37F−Rプライマー。
配列番号73:β37I−Fプライマー。
配列番号74:β37I−Rプライマー。
配列番号75:β37M−Fプライマー。
配列番号76:β37M−Rプライマー。
配列番号77:β37T−Fプライマー。
配列番号78:β37T−Rプライマー。
配列番号79:β37V−Fプライマー。
配列番号80:β37V−Rプライマー。
配列番号81:本発明に用いる特定のアミノ酸配列。
配列番号82:本発明のβサブユニットのアミノ酸配列。
配列番号83:α83A−Fプライマー。
配列番号84:α83A−Rプライマー。
配列番号85:α83C−Fプライマー。
配列番号86:α83C−Rプライマー。
配列番号87:α83D−Fプライマー。
配列番号88:α83D−Rプライマー。
配列番号89:α83E−Fプライマー。
配列番号90:α83E−Rプライマー。
配列番号91:α83F−Fプライマー。
配列番号92:α83F−Rプライマー。
配列番号93:α83G−Fプライマー。
配列番号94:α83G−Rプライマー。
配列番号95:α83H−Fプライマー。
配列番号96:α83H−Rプライマー。
配列番号97:α83M−Fプライマー。
配列番号98:α83M−Rプライマー。
配列番号99:α83P−Fプライマー。
配列番号100:α83P−Rプライマー。
配列番号101:α83S−Fプライマー。
配列番号102:α83S−Rプライマー。
配列番号103:α83T−Fプライマー。
配列番号104:α83T−Rプライマー。
配列番号105:ロドコッカス・ロドクロウスM8(SU1731814)のαサブユニットのアミノ酸配列。
配列番号106:ロドコッカス・ルーバーTHのαサブユニットのアミノ酸配列。
配列番号107:ロドコッカス・ピリジノボランスMW33(VKM Ac−1515D)のαサブユニットのアミノ酸配列。
配列番号108:ロドコッカス・ピリジノボランスS85−2のαサブユニットのアミノ酸配列。
配列番号109:ノカルジア sp.JBRsのαサブユニットのアミノ酸配列。
配列番号110:ノカルジア sp.YS−2002のαサブユニットのアミノ酸配列。
配列番号111:アンカルチャード・バクテリウム BD2のαサブユニットのアミノ酸配列。
配列番号112:アンカルチャード・バクテリウム SP1のαサブユニットのアミノ酸配列。
配列番号113:シュードノカルディア・サーモフィラ JCM3095のαサブユニットのアミノ酸配列。
配列番号114:ロドコッカス・ロドクロウス Cr4のαサブユニットのアミノ酸配列。
配列番号115:M8−1プライマー。
配列番号116:M8−2プライマー。
配列番号117:鉄型ニトリルヒドラターゼのαサブユニットのシステインクラスターのアミノ酸配列。
配列番号118:コバルト型ニトリルヒドラターゼのαサブユニットのシステインクラスターのアミノ酸配列。
配列番号119:本発明に用いる特定のアミノ酸配列。
配列番号120:本発明のαサブユニットのアミノ酸配列。
配列番号121:ロドコッカス・ピリジノボランスMS−38のαサブユニットのアミノ酸配列。
配列番号122:ロドコッカス・ロドクロウス ATCC39384のαサブユニットのアミノ酸配列。
配列番号123:シノリゾビウム・メディカエ WSM419のαサブユニットのアミノ酸配列。
配列番号124:ゲオバチルス・サーモグルコシダシウス Q6のαサブユニットのアミノ酸配列。
配列番号125:コマモナス・テストステローニのαサブユニットのアミノ酸配列。
配列番号126:ロドコッカス・ルーバーRH(CN101463358)のαサブユニットのアミノ酸配列。
配列番号127:α83N−F プライマー。
配列番号128:α83N−R プライマー。
配列番号129:α82RM−Fプライマー。
配列番号130:α82RM−Rプライマー。
配列番号131:本発明のαサブユニットのアミノ酸配列。
配列番号132:本発明に用いる特定のアミノ酸配列。
配列番号133:α85RM−Fプライマー。
配列番号134:α85RM−Rプライマー。
配列番号135:本発明のαサブユニットのアミノ酸配列。
配列番号136:本発明に用いる特定のアミノ酸配列。