(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
25℃で測定される0.1CA放電容量に対する、0℃で測定される0.1CA放電容量の比が80%以上であり、0℃で測定される0.1CA放電容量が120mAh/g以上であり、
25℃、0.1CA放電での質量エネルギー密度に対する、0℃、0.1CA放電での質量エネルギー密度の比が80%以上であることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用正極材料。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のリチウムイオン二次電池用電極材料、リチウムイオン二次電池用電極およびリチウムイオン二次電池の実施の形態について説明する。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0021】
[リチウムイオン二次電池用電極材料]
本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料は、LiFe
xMn
1−x―yM
yPO
4(0.220≦x≦0.350、0.005≦y≦0.018)からなる電極活物質を含むリチウムイオン二次電池用電極材料であって、Mは、Coのみ、またはCoとZnとの両方であり、電極活物質は結晶構造が斜方晶であり、空間群がPnmaであり、結晶格子定数a、bおよびcの値が、10.28Å≦a≦10.42Å、6.000Å≦b≦6.069Å、4.710Å≦c≦4.728Åを満たし、格子体積Vが289.00Å
3≦V≦298.23Å
3を満たす。
本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料は、主に、リチウムイオン二次電池用電極材料として用いられる。
【0022】
本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料は、LiFe
xMn
1−x―yM
yPO
4からなる電極活物質の一次粒子の表面が炭素質被膜によって被覆されてなる。
【0023】
LiFe
xMn
1−x―yM
yPO
4からなる電極活物質の一次粒子の平均一次粒子径は、50nm以上かつ400nm以下であることが好ましく、80nm以上かつ260nm以下であることがより好ましい。
ここで、LiFe
xMn
1−x―yM
yPO
4粒子の平均一次粒子径を上記の範囲とした理由は、LiFe
xMn
1−x―yM
yPO
4粒子の平均一次粒子径が50nm未満では、微細になり過ぎて結晶性を良好に保つことが難しくなり、その結果、LiFe
xMn
1−x―yM
yPO
4粒子の結晶格子のa軸方向およびc軸方向の長さを大きく保ったままで、b軸方向の長さを特異的に短縮したLiMnPO
4粒子が得られなくなるからである。一方、LiFe
xMn
1−x―yM
yPO
4粒子の平均一次粒子径が400nmを超えると、このLiFe
xMn
1−x―yM
yPO
4粒子の微細化が不充分となり、その結果、非常に微細かつ結晶性の良好なLiFe
xMn
1−x―yM
yPO
4粒子が得られないからである。
【0024】
炭素質被膜の厚みは、1nm以上かつ12nm以下であることが好ましい。
炭素質被膜の厚みを上記の範囲とした理由は、厚みが1nm未満であると、炭素質被膜の厚みが薄すぎるために所望の抵抗値を有する膜を形成することができなくなり、その結果、導電性が低下し、電極材料としての導電性を確保することができなくなるからである。一方、炭素質被膜の厚みが12nmを超えると、電池活性、例えば、電極材料の単位質量あたりの電池容量が低下するからである。
【0025】
炭素質被膜によって被覆されたLiFe
xMn
1−x―yM
yPO
4からなる電極活物質の一次粒子の平均一次粒子径は、65nm以上かつ400nm以下であることが好ましく、75nm以上かつ270nm以下であることがより好ましい。
ここで、炭素質被膜によって被覆されたLiFe
xMn
1−x―yM
yPO
4からなる電極活物質の一次粒子の平均一次粒子径を上記の範囲とした理由は、平均一次粒子径が65nm未満では、炭素質電極活物質複合粒子の比表面積が増えることで必要になる炭素の質量が増加し、充放電容量が低減するばかりでなく、炭素被覆が困難となり、充分な被覆率の一次粒子を得ることができず、特に低温や高速充放電において良好な放電容量や質量エネルギー密度が得られないからである。一方、平均一次粒子径が400nmを超えると、炭素質電極活物質複合粒子内でのリチウムイオンの移動または電子の移動に時間がかかり、よって内部抵抗が増加し、出力特性が悪化するので好ましくないからである。
【0026】
炭素質被膜によって被覆されたLiFe
xMn
1−x―yM
yPO
4からなる電極活物質の一次粒子の形状は特に限定されないが、球状、特に真球状の粒子からなる電極材料を生成し易いことから、その形状も球状であることが好ましい。
ここで、球状が好ましい理由としては、炭素質被膜で被覆されている、電極活物質の一次粒子と、結着剤と、溶媒とを混合して、リチウムイオン二次電池用電極材料ペーストを調製する際の溶媒量を低減させることができるとともに、このリチウムイオン二次電池用電極材料ペーストの集電体への塗工も容易となるからである。また、形状が球状であれば、電極活物質の一次粒子の表面積が最小となり、ひいては、添加する結着剤の混合量を最小限にすることができ、得られる電極の内部抵抗を小さくすることができるからである。
さらに、電極活物質の一次粒子の形状を球状、特に真球状とすることで最密充填し易くなるので、単位体積あたりのリチウムイオン二次電池用電極材料の充填量が多くなり、その結果、電極密度を高くすることができ、リチウムイオン電池の高容量化を図ることができるので、好ましい。
【0027】
本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料に含まれる炭素量は、0.5質量%以上かつ5.0質量%以下であることが好ましく、0.8質量%以上かつ2.5質量%以下であることがより好ましい。
ここで、本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料に含まれる炭素量を上記の範囲に限定した理由は、炭素量が0.5質量%未満では、電池を形成した場合に高速充放電レートにおける放電容量が低くなり、充分な充放電レート性能を実現することが困難となるからである。一方、炭素量が5.0質量%を超えると、炭素量が多すぎて、電極活物質の一次粒子の単位質量あたりのリチウムイオン電池の電池容量が必要以上に低下するからである。
【0028】
また、電極活物質の一次粒子の比表面積に対する炭素担持量([炭素担持量]/[電極活物質の一次粒子の比表面積])は、0.04以上かつ0.40以下であることが好ましく、0.07以上かつ0.30以下であることがより好ましい。
ここで、本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料における炭素担持量を上記の範囲に限定した理由は、炭素担持量が0.04未満では、電池を形成した場合に高速充放電レートにおける放電容量が低くなり、充分な充放電レート性能を実現することが困難となるからである。一方、炭素担持量が0.40を超えると、炭素量が多すぎて、電極活物質の一次粒子の単位質量あたりのリチウムイオン電池の電池容量が必要以上に低下するからである。
【0029】
本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料の比表面積は、8m
2/g以上かつ18m
2/g以下であることが好ましく、10m
2/g以上かつ15m
2/g以下であることがより好ましい。
ここで、本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料の比表面積を上記の範囲に限定した理由は、比表面積が8m
2/g未満では、炭素質電極活物質複合粒子内でのリチウムイオンの移動または電子の移動に時間がかかり、よって内部抵抗が増加し、出力特性が悪化するので好ましくないからである。一方、比表面積が18m
2/gを超えると、炭素質電極活物質複合粒子の比表面積が増えることで必要になる炭素の質量が増加し、充放電容量が低減するので好ましくないからである。
【0030】
「電極活物質」
電極活物質は、Li拡散に好適な結晶構造を有するLiFe
xMn
1−x―yM
yPO
4(0.220≦x≦0.350、0.005≦y≦0.018)からなる。
LiFe
xMn
1−x―yM
yPO
4において、xが、0.220≦x≦0.350を満たすこととした理由は、次のようなものである。
まず、Feは、電圧3.5V付近で充放電容量を発現するために、CoやZnに比べ固溶に伴う質量エネルギー密度の低下が緩やかである。そのため、xを0.350以下という比較的多めの量とすることで、質量エネルギー密度を低減し過ぎない範囲で低温特性の改善が見込める。
一方、Feは、固溶により、電圧が高い状態に保持されながら電極活物質の体積抵抗を低くすることができる。そのため、xを0.220以上とすることで、充放電が容易になり、出力特性や低温特性が改善できる。また、Feは炭化触媒元素であり、Fe固溶により炭素質被膜の被覆性を良好にすることで出力特性や低温特性が改善できる。
【0031】
また、LiFe
xMn
1−x―yM
yPO
4において、yが、0.005≦y≦0.018を満たすこととした理由は、次のようなものである。
まず、CoやZnは、Mnよりイオン半径の小さい元素であり、CoやZnをMnと置換させると正極活物質の結晶格子のパッキング密度を高くすることが可能である。そのため、yを0.005以上とすることで、電子伝導性およびLi拡散性、リチウムイオン(Li
+)の挿入脱離反応の活性化エネルギーにおいて高い改善効果が期待できる。
一方、CoやZnは電圧1.0V〜4.3Vの範囲で電気化学的不活性な元素であり、多量の固溶により充放電容量および質量エネルギー密度の低減が顕著となる。そのため、yを0.018以下という比較的少ない量とすることで、質量エネルギー密度を低減し過ぎない範囲で低温特性を充分に改善可能となる。
【0032】
本発明においては、以上のように、Fe,Co,Znそれぞれの元素の特徴に応じて固溶量を設定している。また、後述の実施例においても効果を確認している。
【0033】
LiFe
xMn
1−x―yM
yPO
4において、Mは、電圧1.0V〜4.3Vの範囲で電気化学的不活性な元素である。電圧1.0V〜4.3Vの範囲で電気化学的不活性とは、具体的には、リチウムイオン二次電池を構成し電圧を1.0V〜4.3Vの範囲で変化させた場合でも、その元素の価数が2価のままで変化せず、充放電容量の発現に寄与しない元素が好ましい。
【0034】
このようなMとしては、
(1)Mnよりイオン半径の小さい元素であるCoのみ
または、
(2)Coと、Mnよりイオン半径の小さい元素であるZnとの両方
が挙げられる。
Mが、Coのみ、またはCoとZnとの両方である場合、上記のyは、0.005≦y≦0.018であり、0.01≦y≦0.015を満たすことが好ましい。
【0035】
本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極活物質では、Mnの一部を、Coのみ、またはCoとZnとの両方で置換することにより、LiFe
xMn
1−x―yM
yPO
4(0.220≦x≦0.350、0.005≦y≦0.018)における、バルクの電子伝導性およびLi拡散性、リチウムイオンの挿入脱離反応の活性化エネルギーを改善でき、出力特性や低温特性等の特性を改善することができる。
MがCoとZnとの両方である場合、Coの量がZnの量よりも多い事が好ましい。
【0036】
LiFe
xMn
1−x―yM
yPO
4は、結晶構造が斜方晶であり、空間群がPnmaである。LiFe
xMn
1−x―yM
yPO
4の結晶格子定数a、bおよびcの値が、10.28Å≦a≦10.42Å、6.000Å≦b≦6.069Å、4.710Å≦c≦4.728Åを満たすこととした理由は、この範囲が、LiFe
xMn
1−x―yM
yPO
4粒子の結晶格子のa軸方向およびc軸方向の長さが長く、かつLiFe
xMn
1−x―yM
yPO
4粒子の結晶格子のb軸方向の長さが特異的に短い範囲だからである。
なお、LiFe
xMn
1−x―yM
yPO
4の結晶格子定数a、bおよびcの値は、X線回折図形から算出した値である。
【0037】
また、LiFe
xMn
1−x―yM
yPO
4の結晶格子の体積、すなわち、格子体積Vが289.00Å
3≦V≦298.23Å
3を満たすこととした理由は、この範囲が、構造中の元素同士の距離が適切となる範囲であり、バルクの電子伝導性およびLi拡散性の双方を改善可能となる範囲だからである。構造中の元素同士の距離が近すぎる場合、元素と元素の間の電子の授受は良好となるため電子伝導性は良好となるが、Liの移動経路となる隙間が狭くなるためにLi拡散性が悪化する。構造中の元素同士の距離が遠すぎる場合、Liの移動経路となる隙間が広くなるためにLi拡散性は良化するが、元素と元素の間の電子の授受が困難となるため電子伝導性が悪化する。
【0038】
本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料を用いて、電極集電体上に電極合剤層を形成してなるリチウムイオン二次電池用電極を備えたリチウムイオン二次電池は、25℃で測定される0.1CA放電容量に対する、0℃で測定される0.1CA放電容量の比が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。
25℃で測定される0.1CA放電容量に対する、0℃で測定される0.1CA放電容量の比が80%以上であれば、例えば、寒冷地でリチウムイオン二次電池を利用する場合に、温暖な地域でリチウムイオン二次電池を利用するのと遜色なく、長時間のリチウムイオン二次電池の利用が可能となる。一方、25℃で測定される0.1CA放電容量に対する、0℃で測定される0.1CA放電容量の比が80%未満では、例えば、寒冷地でリチウムイオン二次電池を利用する場合に、温暖な地域でリチウムイオン二次電池を利用するのに比べ非常に短時間の電池利用となり好ましくない。
【0039】
本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料を用いて、電極集電体上に電極合剤層を形成してなるリチウムイオン二次電池用電極を備えたリチウムイオン二次電池は、0℃で測定される0.1CA放電容量が120mAh/g以上であることが好ましく、125mAh/g以上であることがより好ましい。
0℃で測定される0.1CA放電容量が120mAh/g以上であれば、例えば、寒冷地でリチウムイオン二次電池を利用する場合でも充分な電池容量を有することになり、長時間のリチウムイオン二次電池利用が可能となる。一方、0℃で測定される0.1CA放電容量が120mAh/g未満であれば、例えば、寒冷地でリチウムイオン二次電池を利用する場合には不充分な電池容量を有することになり、長時間のリチウムイオン二次電池の利用は不可能である。
【0040】
本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料を用いて、電極集電体上に電極合剤層を形成してなるリチウムイオン二次電池用電極を備えたリチウムイオン二次電池は、25℃、0.1CA放電での質量エネルギー密度に対する、0℃、0.1CA放電での質量エネルギー密度の比が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。
25℃、0.1CA放電での質量エネルギー密度に対する、0℃、0.1CA放電での質量エネルギー密度の比が80%以上であれば、例えば、寒冷地でリチウムイオン二次電池を利用する場合でも、温暖な地域でリチウムイオン二次電池を利用するのと遜色のない高い質量エネルギー密度が得られる。このようなリチウムイオン電池をEV(電気自動車)等の電動車両に用いた場合、寒冷地でも温暖な地域で運転するのと遜色のない航続距離が達成可能である。一方、25℃、0.1CA放電での質量エネルギー密度に対する、0℃、0.1CA放電での質量エネルギー密度の比が80%未満では、例えば、寒冷地でリチウムイオン二次電池を利用する場合、温暖な地域でリチウムイオン二次電池を利用するのと比べて質量エネルギー密度が著しく低くなる。このようなリチウムイオン二次電池をEV等の電動車両に用いた場合、寒冷地での航続可能が著しく短くなる。
【0041】
本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料では、電極活物質の一次粒子の表面が炭素質被膜によって被覆され、電極活物質と炭素質被膜との界面で起こるリチウムイオン(Li
+)の挿入脱離反応の活性化エネルギーが、55kJ/mol以下であることが好ましく、54kJ/mol以下であることがより好ましい。
リチウムイオンの挿入脱離反応の活性化エネルギーが、55kJ/mol以下であれば、0℃のような低温でもリチウムイオンの挿入脱離反応が著しく阻害されることなく、良好な低温特性を達成可能である。一方、リチウムイオンの挿入脱離反応の活性化エネルギーが、55kJ/molを超えると、0℃のような低温ではリチウムイオンの挿入脱離反応が著しく阻害され、良好な低温特性を達成できない。
【0042】
[リチウムイオン二次電池用電極材料の製造方法]
本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料の製造方法は、例えば、Li源、P源、Fe源、Mn源、Co源および必要に応じてZn源を、水を主成分とする溶媒と混合し、得られた原料スラリーAを120℃以上かつ250℃以下の範囲の温度に加熱することで、加圧下にて、LiFe
xMn
1−x―yM
yPO
4粒子を合成する工程と、水溶性増粘剤を含む水溶媒中にLiFe
xMn
1−x―yM
yPO
4粒子を分散させてなる原料スラリーBを乾燥させて、造粒した後、550℃以上かつ820℃以下の範囲の温度に加熱することで、LiFe
xMn
1−x―yM
yPO
4粒子(一次粒子)の表面を炭素質被膜によって被覆する工程と、を有する方法が挙げられる。
【0043】
結晶構造やLiFe
xMn
1−x―yMyPO
4粒子の純度については、原料スラリーAにおけるLi源、P源、Fe源、Mn源、Co源およびZn源のモル濃度や水熱処理における昇温速度に影響を受ける。
原料スラリーAがあまりに希薄な場合には、高純度なLiFe
xMn
1−x―yMyPO
4粒子が得られるものの、結晶格子定数が拡大しLi拡散に不適な結晶構造となるために好ましくない。原料スラリーAがあまりに濃厚な場合には、結晶格子定数が縮小しLi拡散に好ましい結晶構造が得られるものの、不純物が生成しやすくなりLiFe
xMn
1−x―yMyPO
4粒子の純度が低下してしまうため好ましくない。
昇温速度があまりに遅い場合には、高純度なLiFe
xMn
1−x―yMyPO
4粒子が得られるものの、結晶格子定数が拡大しLi拡散に好ましくない結晶構造となるために好ましくない。昇温速度は1℃/min以上が好ましく、さらに好ましくは3℃/min以上である。
【0044】
上記製造方法においては、まず、Li源、P源、Fe源、Mn源、Co源および必要に応じてZn源を、水を主成分とする溶媒に投入し、撹拌してLiFe
xMn
1−x―yM
yPO
4の前駆体を含む原料スラリーAを調製する。
【0045】
これらLi源、P源、Fe源、Mn源、Co源およびZn源を、これらのモル比(Li源:P源:Fe源:Mn源:Co源:Zn源)、すなわち、Li:P:Fe:Mn:Co:Znのモル比が1.8〜3.5:0.9〜1.3:0.05〜0.35:0.49〜0.945:0〜0.14:0〜0.14となるように水を主成分とする溶媒に投入し、撹拌・混合して原料スラリーAを調製する。
これらLi源、P源、Fe源、Mn源、Co源およびZn源は、均一に混合する点を考慮すると、Li源、P源、Fe源、Mn源、Co源およびZn源をそれぞれ、一旦、水溶液の状態とした後、混合することが好ましい。
この原料スラリーAにおけるLi源、P源、Fe源、Mn源、Co源およびZn源のモル濃度は、高純度であり、結晶性が高くかつ非常に微細であり、好ましい結晶格子定数を有するLiFe
xMn
1−x―yM
yPO
4粒子を得る必要があることから、できあがりのLiFe
xMn
1−x―yM
yPO
4粒子が0.6mol/L以上かつ2.2mol/L以下となる範囲が好ましい。
【0046】
Li源としては、例えば、水酸化リチウム(LiOH)等の水酸化物、炭酸リチウム(Li
2CO
3)、塩化リチウム(LiCl)、硝酸リチウム(LiNO
3)、リン酸リチウム(Li
3PO
4)、リン酸水素二リチウム(Li
2HPO
4)、リン酸二水素リチウム(LiH
2PO
4)等のリチウム無機酸塩、酢酸リチウム(LiCH
3COO)、蓚酸リチウム((COOLi)
2)等のリチウム有機酸塩、および、これらの水和物が挙げられる。Li源としては、これらの群から選択される少なくとも1種が好適に用いられる。
なお、リン酸リチウム(Li
3PO
4)は、Li源およびP源としても用いることができる。
【0047】
P源としては、例えば、オルトリン酸(H
3PO
4)、メタリン酸(HPO
3)等のリン酸、リン酸二水素アンモニウム(NH
4H
2PO
4)、リン酸水素二アンモニウム((NH
4)
2HPO
4)、リン酸アンモニウム((NH
4)
3PO
4)、リン酸リチウム(Li
3PO
4)、リン酸水素二リチウム(Li
2HPO
4)、リン酸二水素リチウム(LiH
2PO
4)等のリン酸塩、および、これらの水和物の中から選択される少なくとも1種が好適に用いられる。
【0048】
Fe源としては、例えば、硝酸鉄(II)(Fe(NO
3)
2)、塩化鉄(II)(FeCl
2)、硫酸鉄(II)(FeSO
4)、酢酸鉄(II)(Fe(CH
3COO)
2)等の鉄化合物またはその水和物や、硝酸鉄(III)(Fe(NO
3)
3)、塩化鉄(III)(FeCl
3)、クエン酸鉄(III)(FeC
6H
5O
7)等の3価の鉄化合物や、リン酸鉄リチウム等が挙げられる。Fe源としては、これらの群から選択される少なくとも1種が好適に用いられる。
【0049】
Mn源としては、Mn塩が好ましく、例えば、硝酸マンガン(II)(Mn(NO
3)
2)、塩化マンガン(II)(MnCl
2)、硫酸マンガン(II)(MnSO
4)、硝酸マンガン(II)(Mn(NO
3)
2)、酢酸マンガン(II)(Mn(CH
3COO)
2)、および、これらの水和物が挙げられる。Mn源としては、これらの群から選択される少なくとも1種が好適に用いられる。
【0050】
Co源としては、Co塩が好ましく、例えば、硝酸コバルト(II)(Co(NO
3)
2)、塩化コバルト(II)(CoCl
2)、硫酸コバルト(II)(CoSO
4)、硝酸コバルト(II)(Co(NO
3)
2)、酢酸コバルト(II)(Co(CH
3COO)
2)、および、これらの水和物が挙げられる。Co源としては、これらの群から選択される少なくとも1種が好適に用いられる。
【0051】
Zn源としては、Zn塩が好ましく、例えば、硝酸亜鉛(II)(Zn(NO
3)
2)、塩化亜鉛(II)(ZnCl
2)、硫酸亜鉛(II)(ZnSO
4)、硝酸亜鉛(II)(Zn(NO
3)
2)、酢酸亜鉛(II)(Zn(CH
3COO)
2)、および、これらの水和物が挙げられる。Zn源としては、これらの群から選択される少なくとも1種が好適に用いられる。
【0052】
水を主成分とする溶媒とは、水単独、あるいは、水を主成分とし、必要に応じてアルコール等の水性溶媒を含む水系溶媒、のいずれかである。
水性溶媒としては、Li源、P源、Fe源、Mn源、Co源およびZn源を分散させることのできる溶媒であれば、特に制限されないが、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール(イソプロピルアルコール:IPA)、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル類、ジエチルエーテル、エチレングルコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングルコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングルコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、アセチルアセトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類等が挙げられる。これらの水性溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、これらの水性溶媒に、Li源、P源、Fe源、Mn源、Co源およびZn源の一部が溶解してもよい。
【0053】
次いで、この原料スラリーAを耐圧容器に入れ、120℃以上かつ250℃以下、好ましくは160℃以上かつ220℃以下の範囲の温度に加熱し、1時間以上かつ24時間以下、水熱処理を行い、LiFe
xMn
1−x―yM
yPO
4粒子を得る。
この120℃以上かつ250℃以下の範囲の温度に到達したときの耐圧容器内の圧力は、例えば、0.3MPa以上かつ1.5MPa以下となる。
この場合、水熱処理時の温度および時間を調整することにより、LiFe
xMn
1−x―yM
yPO
4粒子の粒子径を所望の大きさに制御することが可能である。
【0054】
次いで、水溶性増粘剤を含む水溶媒中に、LiFe
xMn
1−x―yM
yPO
4粒子を分散させて、原料スラリーBを調製する。
【0055】
「水溶性増粘剤」
水溶性増粘剤としては、特に限定されないが、例えば、ゼラチン、カゼイン、コラーゲン、ヒアルロン酸、アルブミン、デンプン等の天然の水溶性高分子、メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等の半合成高分子、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボマー(カルボキシビニルポリマー)、ポリアクリル酸塩、ポリエチレンオキシド等の合成高分子等が用いられる。
これらの水溶性増粘剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0056】
本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料の製造方法において、水溶性増粘剤の添加量(添加率)は、電極活物質と水溶性増粘剤の合計質量を100質量%とした場合に、1質量%以上かつ15質量%以下であることが好ましく、2.5質量%以上かつ9.5質量%以下がより好ましい。
水溶性増粘剤の添加量が1質量%未満であると、リチウムイオン二次電池用電極材料における混合安定性が低下するため好ましくない。一方、水溶性増粘剤の添加量が15質量%を超えると、相対的に電極活物質の含有量が少なくなり、電池特性が低下するため好ましくない。
【0057】
次いで、この原料スラリーBを、乾燥して、造粒した後、530℃以上かつ850℃以下の範囲の温度にて、0.5時間以上かつ6時間以下加熱し、LiFe
xMn
1−x―yM
yPO
4粒子(一次粒子)の表面を炭素質被膜によって被覆し、本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料を得る。
【0058】
[リチウムイオン二次電池用電極]
本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極は、電極集電体と、その電極集電体上に形成された電極合剤層(電極)と、を備え、電極合剤層が、本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料を含有するものである。
すなわち、本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極は、本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料を用いて、電極集電体の一主面に電極合剤層が形成されてなるものである。
本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極は、主に、リチウムイオン二次電池用正極として用いられる。
【0059】
本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極の製造方法は、本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料を用いて、電極集電体の一主面に電極を形成できる方法であれば特に限定されない。本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極の製造方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
まず、本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料と、結着剤と、導電助剤と、溶媒とを混合してなる、リチウムイオン二次電池用電極材料ペーストを調製する。
【0060】
「結着剤」
結着剤としては、水系で使用できれば特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、酢酸ビニル共重合体や、スチレン・ブタジエン系ラテックス、アクリル系ラテックス、アクリロニトリル・ブタジエン系ラテックス、フッ素系ラテックス、シリコン系ラテックス等の群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0061】
リチウムイオン二次電池用電極材料ペーストにおける結着剤の含有率は、本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料と結着剤と導電助剤の合計質量を100質量%とした場合に、1質量%以上かつ15質量%以下であることが好ましく、3質量%以上かつ9質量%以下であることがより好ましい。
ここで、結着剤の含有率を上記の範囲とした理由は、結着剤の含有率が1質量%未満では、本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料を含むリチウムイオン二次電池用電極材料ペーストを用いて電極合剤層を形成した場合に、電極合剤層と集電体の結着性が十分ではなく、電極合剤層の圧延形成時等において電極合剤層の割れや脱落が生じる場合があり好ましくないからである。また、電池の充放電過程において電極合剤層が集電体から剥離し、電池容量や充放電レートが低下する場合があるため好ましくないからである。一方、結着剤の含有量が15質量%を超えると、リチウムイオン二次電池用電極材料の内部抵抗が増大し、高速充放電レートにおける電池容量が低下する場合があるため好ましくないからである。
【0062】
「導電助剤」
導電助剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ等の繊維状炭素の群から選択される少なくとも1種が用いられる。
【0063】
リチウムイオン二次電池用電極材料ペーストにおける導電助剤の含有率は、本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料と結着剤と導電助剤の合計質量を100質量%とした場合に、1質量%以上かつ15質量%以下であることが好ましく、3質量%以上かつ10質量%以下であることがより好ましい。
ここで、導電助剤の含有率を上記の範囲とした理由は、導電助剤の含有率が1質量%未満では、本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料を含むリチウムイオン二次電池用電極材料ペーストを用いて正極合剤層(電極合剤層)を形成した場合に、電子伝導性が充分ではなく、電池容量や充放電レートが低下するため好ましくないからである。一方、導電助剤の含有量が15質量%を超えると、正極合剤層中に占める電極材料が相対的に減少し、単位体積あたりのリチウムイオン電池の電池容量が低下するため好ましくないからである。
【0064】
「溶媒」
本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料を含むリチウムイオン二次電池用電極材料ペーストでは、集電体等の被塗布物に対して塗布し易くするために、溶媒を適宜添加してもよい。
主な溶媒は水であるが、本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料の特性を失わない範囲内で、アルコール類やグリコール類、エーテル類等の水系溶媒が含有されていてもよい。
【0065】
リチウムイオン二次電池用電極材料ペーストにおける溶媒の含有率は、本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料と結着剤と導電助剤と溶媒の合計質量を100質量%とした場合に、80質量%以上かつ300質量%以下であることが好ましく、100質量%以上かつ250質量%以下であることがより好ましい。
上記の範囲で溶媒が含有されることにより、電極形成性に優れ、かつ電池特性に優れた、リチウムイオン二次電池用電極材料ペーストを得ることができる。
【0066】
本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料と、結着剤と、導電助剤と、溶媒とを混合する方法としては、これらの成分を均一に混合できる方法であれば特に限定されず、例えば、ボールミル、サンドミル、プラネタリー(遊星式)ミキサー、ペイントシェーカー、ホモジナイザー等の混錬機を用いた方法が挙げられる。
【0067】
次いで、リチウムイオン二次電池用電極材料ペーストを、電極集電体の一主面に塗布して塗膜とし、この塗膜を乾燥し、次いで、加圧圧着することにより、電極集電体の一主面に電極合剤層が形成されたリチウムイオン二次電池用電極を得ることができる。
【0068】
[リチウムイオン二次電池]
本実施形態のリチウムイオン二次電池は、本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極(正極)と、負極と、セパレータと、電解液と、とを備えてなる。
【0069】
本実施形態のリチウムイオン二次電池では、負極、電解液、セパレータ等は特に限定されない。
負極としては、例えば、金属Li、炭素材料、Li合金、Li
4Ti
5O
12等の負極材料を用いることができる。
また、電解液とセパレータの代わりに、固体電解質を用いてもよい。
【0070】
電解液は、例えば、エチレンカーボネート(EC)と、エチルメチルカーボネート(EMC)とを、体積比で1:1となるように混合し、得られた混合溶媒に六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)を、例えば、濃度1モル/dm
3となるように溶解することで作製することができる。
セパレータとしては、例えば、多孔質ポリプロピレンを用いることができる。
【0071】
本実施形態のリチウムイオン二次電池では、本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極を正極として用いたので、高容量かつ高エネルギー密度である。
【0072】
以上説明したように、本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料によれば、電子伝導性およびイオン伝導性が向上するため、低温や高速充放電において、放電容量および質量エネルギー密度が高いリチウムイオン二次電池を実現することができる。
【0073】
本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極によれば、本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料を含有しているので、低温や高速充放電において、放電容量および質量エネルギー密度が高いリチウムイオン二次電池用電極を提供することができる。
【0074】
本実施形態のリチウムイオン二次電池によれば、本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極を備えているので、低温や高速充放電において、放電容量および質量エネルギー密度が高いリチウムイオン二次電池を提供することができる。
【実施例】
【0075】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0076】
[実施例1]
「リチウムイオン二次電池用電極材料の合成」
以下のようにして、LiFe
0.22Mn
0.775Co
0.005PO
4を合成した。
Li源およびP源としてLi
3PO
4を、Fe源としてFe(NO
3)
2水溶液を、Mn源としてMn(NO
3)
2水溶液を、Co源としてCo(NO
3)
2水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:Co:P=3:0.22:0.775:0.005:1となるように混合して、600mlの原料スラリーAを調製した。スラリー濃度は、できあがりのLiFe
0.22Mn
0.775Co
0.005PO
4が1.5mol/Lとなるように調製した。
次いで、この原料スラリーAを容積1.3Lの耐圧容器に入れた。
その後、この原料スラリーAについて、昇温速度5℃/minにて昇温させた後、保持温度175℃にて8時間保持することで加熱反応を行い、水熱合成を行った。このときの耐圧容器内の圧力は0.9MPaであった。
反応後、耐熱容器内の雰囲気が室温になるまで冷却して、ケーキ状態の反応生成物の沈殿物を得た。
この沈殿物を蒸留水で複数回、充分に水洗し、乾燥しないように含水率60%に保持し、ケーキ状物質とした。
このケーキ状物質を70℃にて2時間真空乾燥させて、得られた粉体(粒子)の95質量%に対し、あらかじめ10質量%に調整したポリビニルアルコール7質量%を水溶媒中に分散してなる原料スラリーBを乾燥造粒後、750℃にて4時間熱処理を行うことにより、粒子の表面を炭素質被膜によって被覆し、実施例1のリチウムイオン二次電池用電極材料を得た。
【0077】
「リチウムイオン二次電池の作製」
溶媒であるN−メチル−2−ピロリジノン(NMP)に、リチウムイオン二次電池用電極材料と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)と、導電助剤としてのアセチレンブラック(AB)とを、ペースト中の質量比で、電極材料:AB:PVdF=90:5:5となるように加えて、これらを混合し、リチウムイオン二次電池用電極材料ペーストを調製した。
次いで、このリチウムイオン二次電池用電極材料ペーストを、厚さ30μmのアルミニウム箔(集電体)の表面に塗布して塗膜を形成し、その塗膜を乾燥し、アルミニウム箔の表面に電極合剤層を形成した。その後、電極合剤層を、所定の密度となるように、所定の圧力にて加圧し、実施例1のリチウムイオン二次電池用電極を作製した。
次いで、このリチウムイオン二次電池用電極を、成形機を用いて直径16mmの円板状に打ち抜き、真空乾燥後、乾燥アルゴン雰囲気下、ステンレススチール(SUS)製の2016コイン型セルを用いて、実施例1のリチウムイオン二次電池を作製した。
負極としては金属リチウムを、セパレータとしては多孔質ポリプロピレン膜を、電解液としては1MのLiPF
6溶液を用いた。LiPF
6溶液としては、炭酸エチレンと、炭酸エチレンとを、体積比で1:1となるように混合したものを用いた。
【0078】
「反応生成物の沈殿物の評価」
(1)X線回折
ケーキ状態の反応生成物の沈殿物から試料を若干量採取し、この試料を70℃にて2時間真空乾燥させ、粉体を得た。
この粉体を、X線回折装置(商品名:X’Pert PRO MPS、PANalytical社製、線源:CuKa)を用いて同定したところ、単相のLiFe
0.20Mn
0.79Co
0.01PO
4が生成していることが確認された。また、この粉体のX線回折図形から結晶格子定数および格子体積を算出した。評価結果を表2に示す。
【0079】
「リチウムイオン二次電池用電極材料の評価」
(1)炭素量
炭素分析計(商品名:EMIA−220V、HORIBA社製)を用いてリチウムイオン二次電池用電極材料における炭素量を測定した。評価結果を表1に示す。
【0080】
(2)比表面積
比表面積計(商品名:BELSORP−mini、日本ベル社製)を用いて、リチウムイオン二次電池用電極材料の比表面積を、窒素(N
2)吸着によるBET法により測定した。評価結果を表1に示す。
【0081】
(3)平均一次粒子径
リチウムイオン二次電池用電極材料を、走査型電子顕微鏡(SEM)(商品名:S−4800、日立ハイテクノロジーズ社製)により観察し、得られた走査型電子顕微鏡像から、リチウムイオン二次電池用電極材料の平均一次粒子径を得た。評価結果を表1に示す。
【0082】
「リチウムイオン二次電池の評価」
(1)リチウムイオンの挿入脱離反応の活性化エネルギー
インピーダンスアナライザー(商品名:VersaSTAT4、Princeton Applied Research社製)を用いて、リチウムイオン二次電池のインピーダンスを測定した。
インピーダンスの測定では、周波数を1MHz〜0.1mHzの範囲とし、周波数が100Hz以下で現れる半円弧を、電極活物質と炭素質被膜との界面で起こるリチウムイオンの挿入脱離反応の抵抗とした。このインピーダンス測定を、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃で測定し、電極活物質と炭素質被膜との界面で起こるリチウムイオンの挿入脱離反応の抵抗の温度依存性を求め、アレニウスプロットの傾きから、リチウムイオンの挿入脱離反応の活性化エネルギーを算出した。
リチウムイオンの挿入脱離反応が容易である方が高性能な電極活物質と言える。本実施例においては、活性化エネルギー55kJ/mol以下であることを良品の指標とした。
評価結果を表2に示す。
【0083】
(2)電池特性
リチウムイオン二次電池の電池特性を評価した。環境温度25℃にて、正極の電圧がLiの平衡電圧に対して4.3Vになるまで電流値0.1CAにて定電流充電を行い、4.3Vに到達した後、電流値が0.01CAになるまで定電圧充電を行った。その後、1分間休止した後、環境温度25℃もしくは0℃にて、正極の電圧がLiの平衡電圧に対して2.0Vになるまで0.1CAの定電流放電を行った。この試験により、リチウムイオン二次電池の放電容量および質量エネルギー密度(単位:Wh/kg)を評価した。質量エネルギー密度は放電容量と放電電圧の積分値で表され、縦軸に放電電圧、横軸に放電容量をプロットした場合の面積にあたる値である。0℃で測定した場合、25℃で測定した場合に比べて放電容量および放電電圧の低下が起こり、質量エネルギー密度が低下する。ここで例えば、放電容量の低下が小さくとも、放電電圧の低下が大きければ質量エネルギー密度は大きく低下する。本実施例で得られるような電子伝導性およびLi拡散性、リチウムイオン(Li
+)の挿入脱離反応の活性化エネルギーに優れた電極材料を用いることにより、0℃放電においても放電容量および放電電圧双方の低下を抑制することができ、質量エネルギー密度低下の抑制を達成可能となる。
【0084】
本実施例においては、低温環境下で高性能性能を発揮可能な電極活物質とするために、0℃で測定される0.1CA放電容量が120mAh/g以上であることを良品の指標とした。
また、本実施例においては、上記指標に加えて、低温環境下においても常温と遜色ない性能を発揮可能な電極活物質とするために、25℃で測定される0.1CA放電容量に対する、0℃で測定される0.1CA放電容量の比が80%以上であることを良品の指標とした。
【0085】
また、本実施例においては、低温環境下で高性能性能を発揮可能な電極活物質とするために、0℃、0.1CA放電での質量エネルギー密度が450Wh/kg以上であることを良品の指標とした。
また、本実施例においては、上記指標に加えて、低温環境下においても常温と遜色ない性能を発揮可能な電極活物質とするために、25℃、0.1CA放電での質量エネルギー密度に対する、0℃、0.1CA放電での質量エネルギー密度の比が80%以上であることを良品の指標とした。
評価結果を表3に示す。
【0086】
[実施例2]
Li源およびP源としてLi
3PO
4を、Fe源としてFe(NO
3)
2水溶液を、Mn源としてMn(NO
3)
2水溶液を、Co源としてCo(NO
3)
2水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:Co:P=3:0.22:0.77:0.01:1となるように混合して、原料スラリーAを調製したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2のリチウムイオン二次電池用電極材料を合成した。
また、実施例2のリチウムイオン二次電池用電極材料を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0087】
[実施例3]
Li源およびP源としてLi
3PO
4を、Fe源としてFe(NO
3)
2水溶液を、Mn源としてMn(NO
3)
2水溶液を、Co源としてCo(NO
3)
2水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:Co:P=3:0.22:0.765:0.015:1となるように混合して、原料スラリーAを調製したこと以外は実施例1と同様にして、実施例3のリチウムイオン二次電池用電極材料を合成した。
また、実施例3のリチウムイオン二次電池用電極材料を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例3のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0088】
[実施例4]
Li源およびP源としてLi
3PO
4を、Fe源としてFe(NO
3)
2水溶液を、Mn源としてMn(NO
3)
2水溶液を、Co源としてCo(NO
3)
2水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:Co:P=3:0.25:0.745:0.005:1となるように混合して、原料スラリーAを調製したこと以外は実施例1と同様にして、実施例4のリチウムイオン二次電池用電極材料を合成した。
また、実施例4のリチウムイオン二次電池用電極材料を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例4のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0089】
[実施例5]
Li源およびP源としてLi
3PO
4を、Fe源としてFe(NO
3)
2水溶液を、Mn源としてMn(NO
3)
2水溶液を、Co源としてCo(NO
3)
2水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:Co:P=3:0.25:0.74:0.01:1となるように混合して、原料スラリーAを調製したこと以外は実施例1と同様にして、実施例5のリチウムイオン二次電池用電極材料を合成した。
また、実施例5のリチウムイオン二次電池用電極材料を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例5のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0090】
[実施例6]
Li源およびP源としてLi
3PO
4を、Fe源としてFe(NO
3)
2水溶液を、Mn源としてMn(NO
3)
2水溶液を、Co源としてCo(NO
3)
2水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:Co:P=3:0.25:0.735:0.015:1となるように混合して、原料スラリーAを調製したこと以外は実施例1と同様にして、実施例6のリチウムイオン二次電池用電極材料を合成した。
また、実施例6のリチウムイオン二次電池用電極材料を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例6のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0091】
[実施例7]
Li源およびP源としてLi
3PO
4を、Fe源としてFe(NO
3)
2水溶液を、Mn源としてMn(NO
3)
2水溶液を、Co源としてCo(NO
3)
2水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:Co:P=3:0.30:0.695:0.005:1となるように混合して、原料スラリーAを調製したこと以外は実施例1と同様にして、実施例7のリチウムイオン二次電池用電極材料を合成した。
また、実施例7のリチウムイオン二次電池用電極材料を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例7のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0092】
[実施例8]
Li源およびP源としてLi
3PO
4を、Fe源としてFe(NO
3)
2水溶液を、Mn源としてMn(NO
3)
2水溶液を、Co源としてCo(NO
3)
2水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:Co:P=3:0.30:0.69:0.01:1となるように混合して、原料スラリーAを調製したこと以外は実施例1と同様にして、実施例8のリチウムイオン二次電池用電極材料を合成した。
また、実施例8のリチウムイオン二次電池用電極材料を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例8のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0093】
[実施例9]
Li源およびP源としてLi
3PO
4を、Fe源としてFe(NO
3)
2水溶液を、Mn源としてMn(NO
3)
2水溶液を、Co源としてCo(NO
3)
2水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:Co:P=3:0.30:0.685:0.015:1となるように混合して、原料スラリーAを調製したこと以外は実施例1と同様にして、実施例9のリチウムイオン二次電池用電極材料を合成した。
また、実施例9のリチウムイオン二次電池用電極材料を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例9のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0094】
[実施例10]
Li源およびP源としてLi
3PO
4を、Fe源としてFe(NO
3)
2水溶液を、Mn源としてMn(NO
3)
2水溶液を、Co源としてCo(NO
3)
2水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:Co:P=3:0.35:0.645:0.005:1となるように混合して、原料スラリーAを調製したこと以外は実施例1と同様にして、実施例10のリチウムイオン二次電池用電極材料を合成した。
また、実施例10のリチウムイオン二次電池用電極材料を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例10のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0095】
[実施例11]
Li源およびP源としてLi
3PO
4を、Fe源としてFe(NO
3)
2水溶液を、Mn源としてMn(NO
3)
2水溶液を、Co源としてCo(NO
3)
2水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:Co:P=3:0.35:0.64:0.01:1となるように混合して、原料スラリーAを調製したこと以外は実施例1と同様にして、実施例11のリチウムイオン二次電池用電極材料を合成した。
また、実施例11のリチウムイオン二次電池用電極材料を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例11のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0096】
[実施例12]
Li源およびP源としてLi
3PO
4を、Fe源としてFe(NO
3)
2水溶液を、Mn源としてMn(NO
3)
2水溶液を、Co源としてCo(NO
3)
2水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:Co:P=3:0.35:0.635:0.015:1となるように混合して、原料スラリーAを調製したこと以外は実施例1と同様にして、実施例12のリチウムイオン二次電池用電極材料を合成した。
また、実施例12のリチウムイオン二次電池用電極材料を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例12のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0097】
[実施例13]
以下のようにして、LiFe
0.25Mn
0.745Co
0.010Zn
0.005PO
4を合成した。
Li源およびP源としてLi
3PO
4を、Fe源としてFe(NO
3)
2水溶液を、Mn源としてMn(NO
3)
2水溶液を、Co源としてCo(NO
3)
2水溶液を用い、Zn源としてZn(NO
3)
2水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:Co:Zn:P=3:0.25:0.745:0.010:0.005:1となるように混合して、200mlの原料スラリーAを調製した。
以下、実施例1と同様にして、実施例13のリチウムイオン二次電池用電極材料を得た。
また、実施例13のリチウムイオン二次電池用電極材料を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例13のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0098】
[比較例1]
以下のようにして、LiFe
0.250Mn
0.750PO
4を合成した。
Li源およびP源としてLi
3PO
4を、Fe源としてFe(NO
3)
2水溶液を、Mn源としてMn(NO
3)
2水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:P=3:0.25:0.75:1となるように混合して、200mlの原料スラリーAを調製した。
以下、実施例1と同様にして、比較例1のリチウムイオン二次電池用電極材料を得た。
また、比較例1のリチウムイオン二次電池用電極材料を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例1のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0099】
[比較例2]
Li源およびP源としてLi
3PO
4を、Fe源としてFe(NO
3)
2水溶液を、Mn源としてMn(NO
3)
2水溶液を、Co源としてCo(NO
3)
2水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:Co:P=3:0.40:0.59:0.01:1となるように混合して、原料スラリーAを調製したこと以外は比較例1と同様にして、比較例2のリチウムイオン二次電池用電極材料を合成した。
また、比較例2のリチウムイオン二次電池用電極材料を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例2のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0100】
[比較例3]
Li源およびP源としてLi
3PO
4を、Fe源としてFe(NO
3)
2水溶液を、Mn源としてMn(NO
3)
2水溶液を、Co源としてCo(NO
3)
2水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:Co:P=3:0.18:0.81:0.01:1となるように混合して、原料スラリーAを調製したこと以外は比較例1と同様にして、比較例3のリチウムイオン二次電池用電極材料を合成した。
また、比較例3のリチウムイオン二次電池用電極材料を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例3のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0101】
[比較例4]
Li源およびP源としてLi
3PO
4を、Fe源としてFe(NO
3)
2水溶液を、Mn源としてMn(NO
3)
2水溶液を、Co源としてCo(NO
3)
2水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:Co:P=3:0.25:0.73:0.02:1となるように混合して、原料スラリーAを調製したこと以外は比較例1と同様にして、比較例3のリチウムイオン二次電池用電極材料を合成した。
また、比較例4のリチウムイオン二次電池用電極材料を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例4のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0102】
[比較例5]
Li源およびP源としてLi
3PO
4を、Fe源としてFe(NO
3)
2水溶液を、Mn源としてMn(NO
3)
2水溶液を、Co源としてCo(NO
3)
2水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:Co:P=3:0.25:0.748:0.002:1となるように混合して、原料スラリーAを調製したこと以外は比較例1と同様にして、比較例3のリチウムイオン二次電池用電極材料を合成した。
また、比較例5のリチウムイオン二次電池用電極材料を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例5のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0103】
[比較例6]
以下のようにして、LiFe
0.25Mn
0.745Ni
0.005PO
4を合成した。
Li源およびP源としてLi
3PO
4を、Fe源としてFe(NO
3)
2水溶液を、Mn源としてMn(NO
3)
2水溶液を用い、Ni源としてNi(NO
3)
2水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:Ni:P=3:0.25:0.745:0.005:1となるように混合して、200mlの原料スラリーAを調製した。
以下、実施例1と同様にして、比較例6のリチウムイオン二次電池用電極材料を得た。
また、比較例6のリチウムイオン二次電池用電極材料を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例6のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0104】
[比較例7]
Li源およびP源としてLi
3PO
4を、Fe源としてFe(NO
3)
2水溶液を、Mn源としてMn(NO
3)
2水溶液を用い、Ni源としてNi(NO
3)
2水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:Ni:P=3:0.25:0.745:0.005:1となるように混合して、原料スラリーAを調製したこと以外は比較例1と同様にして、比較例7のリチウムイオン二次電池用電極材料を合成した。
また、比較例7のリチウムイオン二次電池用電極材料を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例7のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0105】
[比較例8]
Li源およびP源としてLi
3PO
4を、Fe源としてFe(NO
3)
2水溶液を、Mn源としてMn(NO
3)
2水溶液を用い、Ni源としてNi(NO
3)
2水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:Ni:P=3:0.25:0.735:0.015:1となるように混合して、原料スラリーAを調製したこと以外は比較例1と同様にして、比較例8のリチウムイオン二次電池用電極材料を合成した。
また、比較例8のリチウムイオン二次電池用電極材料を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例8のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0106】
[比較例9]
以下のようにして、LiFe
0.25Mn
0.745Al
0.005PO
4を合成した。
Li源およびP源としてLi
3PO
4を、Fe源としてFe(NO
3)
2水溶液を、Mn源としてMn(NO
3)
2水溶液を用い、Al源としてAl(NO
3)
3水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:Al:P=3:0.25:0.745:0.005:1となるように混合して、200mlの原料スラリーAを調製した。
以下、実施例1と同様にして、比較例9のリチウムイオン二次電池用電極材料を得た。
また、比較例9のリチウムイオン二次電池用電極材料を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例9のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0107】
[比較例10]
Li源およびP源としてLi
3PO
4を、Fe源としてFe(NO
3)
2水溶液を、Mn源としてMn(NO
3)
2水溶液を用い、Al源としてAl(NO
3)
3水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:Al:P=3:0.25:0.74:0.01:1となるように混合して、原料スラリーAを調製したこと以外は比較例1と同様にして、比較例10のリチウムイオン二次電池用電極材料を合成した。
また、比較例10のリチウムイオン二次電池用電極材料を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例10のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0108】
[比較例11]
Li源およびP源としてLi
3PO
4を、Fe源としてFe(NO
3)
2水溶液を、Mn源としてMn(NO
3)
2水溶液を用い、Al源としてAl(NO
3)
3水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:Al:P=3:0.25:0.735:0.015:1となるように混合して、原料スラリーAを調製したこと以外は比較例1と同様にして、比較例11のリチウムイオン二次電池用電極材料を合成した。
また、比較例11のリチウムイオン二次電池用電極材料を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例11のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0109】
「反応生成物の沈殿物の評価」
(1)X線回折
実施例2〜13および比較例1〜11の反応生成物の沈殿物を、実施例1と同様にして、同定した。
その結果、実施例2では単相のLiFe
0.22Mn
0.77Co
0.01PO
4が生成していることが確認された。
また、実施例3では単相のLiFe
0.22Mn
0.765Co
0.015PO
4が生成していることが確認された。
また、実施例4では単相のLiFe
0.25Mn
0.745Co
0.005PO
4が生成していることが確認された。
また、実施例5では単相のLiFe
0.25Mn
0.74Co
0.01PO
4が生成していることが確認された。
また、実施例6では単相のLiFe
0.25Mn
0.735Co
0.015PO
4が生成していることが確認された。
また、実施例7では単相のLiFe
0.30Mn
0.695Co
0.005PO
4が生成していることが確認された。
また、実施例8では単相のLiFe
0.30Mn
0.69Co
0.01PO
4が生成していることが確認された。
また、実施例9では単相のLiFe
0.30Mn
0.685Co
0.015PO
4が生成していることが確認された。
また、実施例10では単相のLiFe
0.30Mn
0.645Co
0.005PO
4が生成していることが確認された。
また、実施例11では単相のLiFe
0.35Mn
0.64Co
0.01PO
4が生成していることが確認された。
また、実施例12では単相のLiFe
0.35Mn
0.635Co
0.015PO
4が生成していることが確認された。
また、実施例13では単相のLiFe
0.25Mn
0.735Co
0.010Zn
0.005PO
4が生成していることが確認された。
【0110】
一方、比較例1ではLiFe
0.25Mn
0.75PO
4が生成していることが確認された。
また、比較例2ではLiFe
0.40Mn
0.59Co
0.01PO
4が生成していることが確認された。
また、比較例3ではLiFe
0.18Mn
0.81Co
0.01PO
4が生成していることが確認された。
また、比較例4ではLiFe
0.25Mn
0.73Co
0.02PO
4が生成していることが確認された。
また、比較例5ではLiFe
0.25Mn
0.748Co
0.002PO
4が生成していることが確認された。
また、比較例6ではLiFe
0.25Mn
0.745Ni
0.005PO
4が生成していることが確認された。
また、比較例7ではLiFe
0.25Mn
0.74Ni
0.01PO
4が生成していることが確認された。
また、比較例8ではLiFe
0.25Mn
0.735Ni
0.015PO
4が生成していることが確認された。
また、比較例9ではLiFe
0.25Mn
0.745Al
0.005PO
4が生成していることが確認された。
また、比較例10ではLiFe
0.25Mn
0.74Al
0.01PO
4が生成していることが確認された。
また、比較例11ではLiFe
0.25Mn
0.735Al
0.015PO
4が生成していることが確認された。
また、実施例2〜13および比較例1〜11の反応生成物の沈殿物のX線回折図形から結晶格子定数を算出した。評価結果を表2に示す。
【0111】
(2)格子体積
実施例1と同様にして、実施例2〜13および比較例1〜11の反応生成物の沈殿物の格子体積を算出した。評価結果を表2に示す。
【0112】
「リチウムイオン二次電池用電極材料の評価」
(1)炭素担持量
実施例1と同様にして、実施例2〜13および比較例1〜11のリチウムイオン二次電池用電極材料における炭素担持量を測定した。評価結果を表1に示す。
【0113】
(2)比表面積
実施例1と同様にして、実施例2〜13および比較例1〜11のリチウムイオン二次電池用電極材料の比表面積を測定した。評価結果を表1に示す。
【0114】
(3)平均一次粒子径
実施例1と同様にして、実施例2〜13および比較例1〜11のリチウムイオン二次電池用電極材料の平均一次粒子径を得た。評価結果を表1に示す。
【0115】
「リチウムイオン二次電池の評価」
(1)リチウムイオンの挿入脱離反応の活性化エネルギー
実施例1と同様にして、実施例2〜13および比較例1〜11のリチウムイオン二次電池のインピーダンスを測定し、リチウムイオンの挿入脱離反応の活性化エネルギーを算出した。評価結果を表1に示す。
【0116】
(2)電池特性
実施例1と同様にして、実施例2〜13および比較例1〜11のリチウムイオン二次電池の電池特性を評価した。評価結果を表3に示す。
【0117】
【表1】
【0118】
【表2】
【0119】
【表3】
【0120】
表1〜3の結果から、実施例1〜13と、比較例1〜11とを比較すると、実施例1〜13のリチウムイオン二次電池は、25℃で測定される0.1CA放電容量に対する、0℃で測定される0.1CA放電容量の比が80%以上であり、0℃で測定される0.1CA放電容量が120mAh/g以上であり、および、25℃、0.1CA放電での質量エネルギー密度に対する、0℃、0.1CA放電での質量エネルギー密度の比が80%以上であり、0℃、0.1CA放電での質量エネルギー密度が450Wh/kg以上のため、低温や高速充放電において、放電容量および質量エネルギー密度が高いことが確認できた。
【0121】
一方、比較例1〜11のリチウムイオン二次電池は、25℃で測定される0.1CA放電容量に対する、0℃で測定される0.1CA放電容量の比が80%未満、0℃で測定される0.1CA放電容量が120mAh/g未満、および、25℃、0.1CA放電での質量エネルギー密度に対する、0℃、0.1CA放電での質量エネルギー密度の比が80%未満、0℃、0.1CA放電での質量エネルギー密度が450Wh/kg以下の少なくともいずれか1つを満たすため、低温や高速充放電において、放電容量および質量エネルギー密度が低いことが確認できた。
【0122】
また、Feの固溶量について、xが0.22を下回る場合として比較例3の結果を見ると、0℃充放電容量が111.5mAh/g、25℃充放電容量が139.6mAh/gと判断基準以下の低い特性となった。
また、xが0.35を上回る場合として比較例2の結果を見ると、0℃エネルギー密度が441.4Wh/kg、25℃エネルギー密度が539.2Wh/kgと判断基準以下の低い特性となった。
対して、Feの固溶量が0.220≦x≦0.350の範囲に含まれるものは、いずれも充放電容量およびエネルギー密度が判断基準を上回る特性となった。
【0123】
また、Coの固溶量について、yが0.005を下回る場合として比較例5の結果を見ると、活性化エネルギーが57.34kJ/molであり、「55kJ/mol以下」という判断基準に合致しない特性となった。
また、yが0.018を上回る場合として比較例4の結果を見ると、0℃エネルギー密度が441.8Wh/kg、25℃エネルギー密度が544.4Wh/kgと判断基準以下の低い特性となった。
対して、CoおよびZnの固溶量が0.005≦y≦0.018の範囲に含まれるものは、いずれも活性化エネルギーおよびエネルギー密度が判断基準を上回る特性となった。
【0124】
以上より、本発明が有用であることが確認できた。
【課題】低温や高速充放電において、放電容量および質量エネルギー密度が高いリチウムイオン二次電池用電極材料、リチウムイオン二次電池用電極、リチウムイオン二次電池を提供する。
(0.220≦x≦0.350、0.005≦y≦0.018)からなる電極活物質を含み、前記Mは、Coのみ、またはCoとZnの両方であり、前記電極活物質は結晶構造が斜方晶であり、空間群がPnmaであり、結晶格子定数a、bおよびcの値が、10.28Å≦a≦10.42Å、6.000Å≦b≦6.069Å、4.710Å≦c≦4.728Åを満たし、格子体積Vが289.00Å