特許第5930293号(P5930293)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5930293
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】プリプレグ
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/24 20060101AFI20160526BHJP
【FI】
   C08J5/24CFC
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-95241(P2012-95241)
(22)【出願日】2012年4月19日
(65)【公開番号】特開2013-221136(P2013-221136A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2015年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱レイヨン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田口 真仁
(72)【発明者】
【氏名】三浦 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】三輪 陽平
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 忠義
(72)【発明者】
【氏名】木俣 文雅
(72)【発明者】
【氏名】後藤 和也
【審査官】 北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−050574(JP,A)
【文献】 特開平11−254435(JP,A)
【文献】 特開2011−207930(JP,A)
【文献】 特開平09−040790(JP,A)
【文献】 特開平10−339040(JP,A)
【文献】 特開2011−001499(JP,A)
【文献】 特開平11−005887(JP,A)
【文献】 国際公開第96/002592(WO,A1)
【文献】 特開昭63−221122(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/118208(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/001705(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 11/16
B29B 15/08−15/14
C08J 5/04−5/10
C08J 5/24
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化繊維を一方向に引き揃えた強化基材にマトリックス樹脂組成物を含浸させてなる一方向プリプレグであって、
前記強化基材の繊維目付けが400g/m以上1500g/m以下であり、
前記マトリックス樹脂組成物の30℃における粘度が30Pa・s〜500Pa・s、
前記マトリックス樹脂組成物に、粘着成分が1.0質量%〜5.0質量%の範囲で、溶解された状態で、含まれる一方向プリプレグ。
【請求項2】
前記強化繊維が炭素繊維である請求項1に記載の一方向プリプレグ。
【請求項3】
前記繊維目付けが500g/m以上1500g/m以下である請求項1または2に記載の一方向プリプレグ。
【請求項4】
前記繊維目付けが600g/m以上1200g/m以下である請求項3に記載の一方向プリプレグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一方向に引き揃えた繊維に樹脂を含浸した一方向プリプレグに関するものであり、より詳しくは、繊維目付け、すなわち単位面積当たりの繊維質量の大きなプリプレグ、厚物一方向プリプレグに関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリプレグは、航空機の1次構造材などに代表される航空・宇宙用途、ゴルフシャフトやテニスラケットに代表されるスポーツ用途、および鉄道用途・風車材に代表される産業用途に分類される。近年では産業用途にプリプレグが使用されることが多くなってきている。産業用途に使用されるプリプレグは、積層工程の簡略化から繊維目付けの高い、いわゆる厚目付けのプリプレグが好適に用いられる。プリプレグの製造方法としてはマトリックス樹脂組成物を溶剤に溶かして低粘度化し、強化繊維に含浸させてその後脱溶剤するウェット方式(あるいはラッカー方式)があり、特に厚目付けプリプレグに対しては、含浸時の樹脂粘度が低いため好適であるが、溶剤が大気中へ放散して環境汚染の問題になったり、プリプレグに微量に残存する溶剤が成形時にボイドとなって成形物の機械強度に悪影響を与えたりする。
【0003】
一方、ホットメルト方式と呼ばれるプリプレグの製造方法では、溶剤を含まないマトリックス樹脂組成物を用い、加熱して樹脂を低粘度化し、強化繊維に含浸させる。マトリックス樹脂組成物には多くの場合熱硬化性樹脂が用いられるので、加熱しすぎると反応が始まってプリプレグのライフに悪影響を与えるので注意しなければならない。
また厚目付けのプリプレグの場合、マトリックス樹脂組成物を厚目付けの中心部にまで含浸させようと思うと低粘度であることが好ましい。そこでこれまでの技術では、まず含浸時の速度を遅くして含浸させる方法があるが、この場合、含浸に時間がかかりすぎ、プリプレグはコスト高となってしまう。また粘度の低いマトリックス樹脂組成物を使用する方法もあるが、タックの制御が難しいばかりでなく、一方向プリプレグの場合には繊維と繊維を繋ぎとめる力が弱く、プリプレグがばらばらになってしまう。
【0004】
特にプリプレグの支持体となる離型紙などがない場合、あるいは成形時に離型紙を剥がした場合にはプリプレグがシート状態を保持できず、非常に扱い辛いものとなってしまう。
このような厚物プリプレグに関して、例えば特許文献1には樹脂含浸率を規定して取扱性に優れ、かつ硬化後の成形品にはボイドがほとんどなく、非常に良好な成形品を得られる発明について開示されているが、一方向プリプレグに応用する場合、調製工程が複雑になったり、未含浸部の強化繊維は全く拘束がないので、毛羽の発生原因となる可能性もあった。
【0005】
また一方向の厚物プリプレグに関して、例えば特許文献2には単位長さ当りの質量(繊度)の大きな強化繊維を使用する製造方法について開示され、厚目付けプリプレグには低粘度樹脂が好適であることにも触れられている。更に該文献の実施例には100℃で0.7Pa・sの比較的低粘度の樹脂が用いられているが、含浸速度が2−4m/minと遅い割には含浸レベルは該文献中のテープピール試験によると6.5−9.1で十分とは言えない。(テープピール試験では10.0が完全に含浸している状態で未含浸部は全幅に亘って存在せず、0.0が含浸が不十分で未含浸部が全幅に亘って存在する状態)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−50574号公報
【特許文献2】特開2011−207930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、取扱性に優れ、含浸状態も良好であり、かつ生産性の高い、繊維目付けの大きな厚目付けの一方向プリプレグを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明が要旨するところは、強化繊維を一方向に引き揃えた強化基材にマトリックス樹脂組成物を含浸させてなる一方向プリプレグであって、
前記強化基材の繊維目付けが400g/m以上1500g/m以下であり、
前記マトリックス樹脂組成物の30℃における粘度が30Pa・s〜500Pa・s、
前記マトリックス樹脂組成物に、粘着成分が1.0質量%〜5.0質量%の範囲で、溶解された状態で、含まれる一方向プリプレグである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、繊維目付けが400g/m以上、2000g/m以下の厚物一方向プリプレグであって、含浸されているマトリックス樹脂組成物の粘度は30℃で30Pa・s〜500Pa・sと低い粘度のものが供される。この粘度範囲は、組成にもよるが、100℃付近では0.08Pa・s〜0.5Pa・sとかなり低い。この低粘度の故、本発明の一方向プリプレグは含浸時の速度を上げることができ、非常に生産性の優れたプリプレグとなる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明によれば、繊維目付けが400g/m以上、2000g/m以下の厚物一方向プリプレグであって、含浸されているマトリックス樹脂組成物の粘度は30℃で30Pa・s〜500Pa・sと低い粘度のものが供される。この粘度範囲は、組成にもよるが、100℃付近では0.08Pa・s〜0.5Pa・sとかなり低い。この低粘度の故、本発明の一方向プリプレグは含浸時の速度を上げることができ、非常に生産性の優れたプリプレグとなる。
【0011】
通常これほど粘度が低いマトリックス樹脂組成物を用いると含浸性には優れていて良いのであるが、室温でその形態を保持することができず、ばらばらになってしまう。これでは実際にプリプレグをカットするときには必ず離型紙のようなしっかりとした支持体が必要であるし、支持体を剥がして積層作業をするような場合は非常に作業し辛くなってしまう。
【0012】
そこで本発明では粘着成分を1.0質量%〜5.0質量%、溶解された状態でマトリックス樹脂組成物に含むことを必須とする。粘着成分としては熱可塑性樹脂やエラストマーなどが好適に用いられる。マトリックス樹脂組成物に熱可塑性樹脂やエラストマーを溶解して用いることは公知の技術であるが、その目的は、タックの保持や特に靭性などの性能の発現である。本発明ではマトリックス樹脂組成物を低粘度化し、更に室温でのプリプレグの形態の維持と言う観点から鋭意検討した結果、これらを1.0質量%〜5.0質量%溶解された状態でマトリックス樹脂組成物に含むことにより、マトリックス樹脂組成物内で粘着成分として機能し、マトリックス樹脂組成物を極低粘度化してもプリプレグの形態も保持することがき、取扱性に優れる厚目付けの一方向プリプレグを高生産性で提供できることを見出した。
【0013】
これら粘着成分は高分子鎖からなる熱可塑性樹脂、あるいはエラストマーであるので低粘度のマトリックス樹脂組成物内でつなぎとして働き、低粘度のマトリックス樹脂組成物でも粘着効果を引き出すものと推定している。粘着成分が1.0質量%未満であれば粘着効果に乏しく、一方向プリプレグは室温でその形態を保持できない。また5.0質量%を超えると粘度が高くなってしまい、含浸性が悪くなってしまう。
【0014】
本発明では強化繊維の目付けは400g/m〜1500g/mの厚目付けである。400g/m未満であると成形時の積層枚数が多くなり、特に本発明の好適な用途である産業用途においては扱い辛いものとなってしまう。繊維目付けが500g/m以上であると好ましく、600g/m以上であると積層の手間が更に減るので更に好ましい。
【0015】
また1500g/mを超えると本発明の構成をもってしても含浸に不具合が発生する、あるいは含浸速度を遅くしないと生産できないなど、工程上の不具合を発生してしまうので良くない。1200g/m以下であれば含浸速度を更に向上させることができるので更に好ましい。
【0016】
本発明の一方向プリプレグに用いられるマトリックス樹脂組成物の粘度は30℃で30Pa・s〜500Pa・sでなければならない。30Pa・s未満であると室温でプリプレグの形態が保持できず、ばらばらになってしまう。また500Pa・sを超えると含浸性が悪くなり、プリプレグの生産速度を落とすなど生産性が悪くなってしまう。
粘度の測定方法は次の方法による。すなわち、TAインスツルメント社製のAR−G2または同等の装置により、測定周波数10rad/sec、25mm直径の平プレート、プレート間ギャップは0.5mm、昇温速度2℃/分の条件で26℃〜34℃までの温度範囲で測定し、30℃での粘度を求める。
【0017】
本発明に用いられるマトリックス樹脂組成物としては特に制限はないが、熱硬化性樹脂に粘着成分が溶解された状態の樹脂である。熱硬化性樹脂としては特に制限はなく、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミド樹脂、トリアジン樹脂、ベンゾオキサジン樹脂などが用いられるが、エポキシ樹脂が成形後の強化繊維との接着性、機械特性、靭性、耐熱性などの性能のバランスに優れるため、好適に用いられる。エポキシ樹脂の中でもオキサゾリドン環を構造内に含むエポキシ樹脂は成形後の強化繊維との接着性、靭性、耐熱性に優れるため特に好ましい。
【0018】
また粘着成分としては熱硬化性樹脂に溶解し、粘着効果を発揮するものでなければならない。例示すれば熱可塑性樹脂やエラストマーなどである。熱可塑性樹脂としてはポリビニルホルマール、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリアミドエラストマーなどが好適に用いられる。
【0019】
また硬化性樹脂に溶解可能なエラストマーとしては、CTBNなどのゴム成分や、スチレン、ブタジエン、ブチルアクリレート、メタクリル酸メチル、のブロック共重合体も好適に用いることができる。共重合体としてはアルケマ(株)社製のナノストレングスなどが例示できる。
【0020】
本発明に用いられる強化繊維としては特に制限はなく、ガラス繊維、アラミド繊維、高強度ポリエチレン繊維などの有機繊維、その他、一般的に強化繊維として用いられている繊維全てを用いることができるが、その中でも繊維径の比較的細い炭素繊維は繊維径の太い強化繊維と比較して含浸しにくい傾向があり、本発明には好適に用いられる。
【0021】
また本発明は厚目付けの一方向プリプレグであるので、一繊維糸条の質量(繊維目付け)が大きな強化繊維を用いれば使用するボビンの本数が少なくなり好ましい。例えば炭素繊維の場合は、繊維目付けが2.0g/m以上のものを用いることが好ましく、3.0g/m以上のものは更に好ましい。4.0g/m以上のものは特に本発明のプリプレグを製造するのに好適に用いられる。また繊維目付けが10.0g/mを超えるようなものの場合、ボビンの質量が非常に重くなったり、あるいは巻き長が短くなったりするので好ましくない。
【0022】
本発明の一方向プリプレグは低粘度樹脂をマトリックス樹脂組成物としているので、プリプレグへの樹脂の沈み込みが速く、タックが低くなりすぎることがある。そのような場合にはカバーフィルムなどで保護することによりプリプレグ表面の樹脂の沈み込みを防ぎ、タックを保持することができる。カバーフィルムとしてはポリエチレン製、ポリプロピレン製、ポリエステル製、などが好適に用いられる。
【0023】
また、このカバーフィルムに凹凸を有するカバーフィルム、例えばエンボス加工を施されたフィルムなどを用いることにより、部分的に樹脂の沈み込みを調整することができ、タックを調節することができる。すなわち、プリプレグに接している箇所は樹脂の沈み込みを押さえタックを保持し、プリプレグに接していない箇所は樹脂が沈み込み、この割合を調節することによりプリプレグのタックを調節することができる。
【0024】
また本発明の一方向プリプレグはプリプレグの形態保持性に優れるので、必ずしも離型紙のようなしっかりとした支持体を必要としない。上記したようなカバーフィルムだけで巻き取られたような形態も、本発明の一方向プリプレグを提供する形態としては好ましく、また支持体をまったく含まないような形態でも提供することができる。
【0025】
また本発明の一方向プリプレグで、樹脂含有率30〜35%の場合、積層する際にプリプレグが適度なドレープ性がないと積層がしづらくなってしまう。下記方法により室温環境下23℃で測定したドレープ性が、50°を越えるとプリプレグがやわらかいため、積層作業がしづらくなり、成形体中にボイドが発生する要因となりやすい。また5°未満だとプリプレグが硬くなり、積層型に沿わなくなり積層しづらくなるなどの不具合が発生しやすくなる。
【0026】
本発明の一方向プリプレグの製造方法としては特に制限はなく、樹脂を離型紙などに一旦塗工し、その樹脂を強化繊維に含浸させる方法でも良いし、強化繊維に直接マトリックス樹脂組成物を塗工し含浸させる方法でも良い。
【実施例】
【0027】
以下、実施例によって、本発明の一方向プリプレグをより具体的に説明するが、本発明の一方向プリプレグは実施例に限定されるものではない。実施例で用いた強化繊維、樹脂原料、および各物性の測定方法を、次に示す。
【0028】
<強化繊維>
・炭素繊維糸条1 三菱レイヨン社製 TR50S−15L:フィラメント数15000本、繊維目付け 1.0g/m
・炭素繊維糸条2 三菱レイヨン社製 TRH50−60M:フィラメント数60000本、繊維目付け 3.2g/m
【0029】
<エポキシ樹脂>
・ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製、製品名:jER−828)
・ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製、製品名:jER−1002)
・オキサゾリドン環を含むエポキシ樹脂(旭化成イーマテリアルズ社製、製品名:AER4152)。
【0030】
<硬化剤>
・ジシアンジアミド(三菱化学株式会社製、製品名:jERキュア DICY15)。
【0031】
<硬化助剤>
・ウレア基を有する芳香族化合物(保土ヶ谷化学社製、製品名:DCMU99)
【0032】
<熱可塑性樹脂>
・ポリビニルホルマール (JNC社製、製品名:ビニレックE)
・フェノキシ樹脂 (新日鐵化学社製、製品名:フェノトート YP−50)
・ポリアミドエラストマー (T&K TOKA株式会社、製品名:TPAE32)
【0033】
[樹脂粘度測定方法]
測定装置:TAインスツルメント社製 AR−G2
測定条件:測定周波数10rad/sec.
25mm直径平プレート
プレート間ギャップ0.5mm
昇温速度2℃/分
測定温度:26℃〜34℃
【0034】
(実施例1)
マトリックス樹脂組成物として以下の樹脂組成1を用いた。すなわち、jER828を65質量部、jER1002を10質量部、AER4152を25質量部、均一に混合した樹脂にビニレックEを2.5質量部溶解させ、DICY15を5質量部、DCMU99を5質量部均一に分散させたものをマトリックス樹脂組成物とした。このマトリックス樹脂組成物の30℃での粘度は200Pa・sであった。
強化繊維として炭素繊維糸条1のTR50S−15Lを用い、400g/mになるように一方向に引き揃えて並べ、樹脂組成1のマトリックス樹脂組成物を100℃、10m/分で含浸させた。得られた一方向プリプレグの含浸の状態は良好であり、形態保持性に優れ、支持体なしでも形態を保持していた。
【0035】
(実施例2)
強化繊維として炭素繊維糸条2のTRH50−60Mを用いる以外は実施例1と同様にして一方向プリプレグを調製した。得られた一方向プリプレグの含浸の状態は非常に良好であり、形態保持性に優れ、支持体なしでも形態を保持していた。尚、炭素繊維糸条2は炭素繊維糸条1の3倍以上の繊維目付けであるので、使用ボビンの本数が1/3以下になり、強化繊維のセッティングも含めたプリプレグ調製工程は非常に良好であった。
【0036】
(実施例3)
強化繊維の目付けを600g/mとする以外は実施例2と同様にして一方向プリプレグを調製した。ただし含浸速度は8m/分とした。得られた一方向プリプレグの含浸の状態は非常に良好であり、形態保持性に優れ、支持体なしでも形態を保持していた。
【0037】
(実施例4)
強化繊維の目付けを1500g/mとする以外は実施例2と同様にして一方向プリプレグを調製した。ただし含浸速度は6m/分とした。得られた一方向プリプレグの含浸の状態は非常に良好であり、形態保持性に優れ、支持体なしでも形態を保持していた。
【0038】
(実施例5)
マトリックス樹脂組成物として樹脂組成2を用いる以外は実施例3と同様にして一方向プリプレグ調製した。樹脂組成2は以下の通りである。すなわち、jER828を80質量部、jER1002を20質量部、均一に混合した樹脂にビニレックEを3.5質量部溶解させ、DICY15を5質量部、DCMU99を5質量部均一に分散させた。このマトリックス樹脂組成物の30℃での粘度は400Pa・sであった。得られた一方向プリプレグの含浸の状態は非常に良好であり、形態保持性に優れ、支持体なしでも形態を保持していた。
【0039】
(実施例6)
マトリックス樹脂組成物として樹脂組成3を用いる以外は実施例3と同様にして一方向プリプレグ調製した。樹脂組成3は以下の通りである。すなわち、jER828を80質量部、jER1002を20質量部、均一に混合した樹脂にフェノトートYP−50を5.0質量部溶解させ、DICY15を6質量部、DCMU99を4質量部均一に分散させた。このマトリックス樹脂組成物の30℃での粘度は300Pa・sであった。得られた一方向プリプレグの含浸の状態は非常に良好であり、形態保持性に優れ、支持体なしでも形態を保持していた。
【0040】
(実施例7)
マトリックス樹脂組成物として樹脂組成3を用いる以外は実施例3と同様にして一方向プリプレグ調製した。樹脂組成3は以下の通りである。すなわち、jER828を80質量部、jER1002を20質量部、均一に混合した樹脂にTPAE32を3.0質量部溶解させ、DICY15を6質量部、DCMU99を4質量部均一に分散させた。このマトリックス樹脂組成物の30℃での粘度は350Pa・sであった。得られた一方向プリプレグの含浸の状態は非常に良好であり、形態保持性に優れ、支持体なしでも形態を保持していた。
【0041】
(実施例8)
マトリックス樹脂組成物として樹脂組成4を用いる以外は実施例3と同様にして一方向プリプレグ調製した。樹脂組成4は以下の通りである。すなわちjER828を72質量部、jER1002を10質量部、AER4152を30質量部、均一に混合した樹脂にビニレックEを3.0質量部溶解させ、DICY15を6質量部、DCMU99を4質量部均一に分散させたものをマトリックス樹脂組成物とした。このマトリックス樹脂組成物の30℃での粘度は100Pa・sであった。得られた一方向プリプレグの含浸の状態は非常に良好であり、形態保持性に優れ、支持体なしでも形態を保持していた。
【0042】
(比較例1)
マトリックス樹脂組成物として樹脂組成3を用いる以外は実施例3と同様にして一方向プリプレグ調製した。樹脂組成3は以下の通りである。すなわち、jER828を100質量部にDICY15を5質量部、DCMU99を5質量部均一に分散させた。このマトリックス樹脂組成物の30℃での粘度は15Pa・sであった。得られた一方向プリプレグの含浸の状態は非常に良好であったが、形態保持性が悪く、支持体なしでは形態を保持することができず、非常に扱いづらいものであった。
【0043】
(比較例2)
マトリックス樹脂組成物として樹脂組成4を用いる以外は実施例3と同様にして一方向プリプレグ調製した。樹脂組成4は以下の通りである。すなわち、jER828を75質量部、jER1002を25質量部、均一に混合した樹脂にフェノトートYP−50を8.0質量部溶解させ、DICY15を5質量部、DCMU99を5質量部均一に分散させた。このマトリックス樹脂組成物の30℃での粘度は1000Pa・sであった。得られた一方向プリプレグの含浸の状態は非常に悪く、未含浸由来のボイドがプリプレグ内に多数見られた。
【0044】
【表1】