(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【技術分野】
【0001】
本発明は、元素の硫黄と、アニオン含有添加剤とを含有する混合物、元素の硫黄とアニオン含有添加剤とを含有する混合物の製造方法、及びアニオン含有添加剤、元素の硫黄と、アニオン含有添加剤とを含有する混合物を、熱媒及び/又は熱貯蔵体として用いる使用、並びに元素の硫黄と、アニオン含有添加剤とを含有する混合物を有する熱媒及び/又は熱貯蔵体、並びに元素の硫黄とアニオン含有添加剤を含有する混合物で充填されたパイプライン、熱交換器、及び/又は容器を有する太陽熱発電所に関する(それぞれ請求項で定義の通り)。
【0002】
使用領域によって、熱媒液体又は熱貯蔵液体に対する要求特性は大きく変わる。このため実用上、非常に多くの液体が用いられる。この液体は、室温で又はそれよりずっと低い温度で液状であるべきであり、粘度が低いべきである。比較的高い使用温度については、水はもはや考慮されない。水の蒸発圧が高すぎるためである。このため、最大約320℃の温度では炭化水素をベースとする鉱油、及び最大400℃の温度については、合成の芳香族含有オイル、又はシリコーン油を用いる(Verein Deutscher Ingenieure, VDI-Gesellschaft Verfahrenstechnik und Chemieingenieurwesen (GVC), VDI Waermeatlas, 10. Auflage, Springer Verlag Berlin Heidelberg, 2006)。
【0003】
さらに最近の熱媒液体用適用が、熱的な太陽発電所であり、ここでは電気エネルギーを太陽光線から直接、大量に生成するものである(Butscher.R., Bild der Wissenschaft 2009, 3 p84-92)。
【0004】
ここで太陽光線を、例えばパラボラ形状の鏡(Spiegelrinnen)によって、鏡の焦点線へとフォーカシングする。ここには金属管があり、この金属管は熱損失を避けるためにガラス管内部に存在していてよく、ここで同心状管の間の空間は脱気されている。この金属管は熱媒液体を貫流し、この熱媒液体が太陽光線によって加熱される。現在、熱媒液体としては例えば、ジフェニルエーテルとジフェニルとの混合物が用いられる。
【0005】
この熱媒はこのようにして束になった太陽光線によって最大400℃に加熱される。この熱い熱媒が蒸発器内で水を加熱して水蒸気にする。この水蒸気がタービンを駆動させ、これがまた、慣用の発電所のように、発電ジェネレータを稼働させる。
【0006】
この方法で、太陽光線のエネルギー含分に対して約16%という平均効率が達成できる。この水蒸気タービン効率は、この入口温度では約37%である。
【0007】
従来このような発電所は、数百メガワットという初期性能で設置されており、さらに特にスペイン、また北アフリカ、及び米国では計画中である。
【0008】
熱媒として用いられるジフェニルエーテルとジフェニルとの混合物(以降、この混合物を「熱媒油」と呼ぶ)のこれら2つの構成成分は、常圧下では約256℃で沸騰する。ジフェニルの融点は68〜72℃であり、ジフェニルエーテルの沸点は26〜39℃である。2つの物質の混合により、融点は12℃に低下する。これら2つの物質から得られる混合物は、最大400℃で使用でき、これより高い温度では分解が起こる。蒸発圧はこの温度で約10bar(技術的にはさらに許容可能な圧力)である。
【0009】
37%よりも高いタービン効率を得ることが望ましい。ただしこのためには、400℃より高い蒸発入口温度が必要となる。
【0010】
蒸発タービンの効率は、タービン入口温度と共に上昇する。近代的な化石燃料火力発電所は、最大650℃の蒸発入口温度で稼働し、このため効率は45%に達する。
【0011】
特に太陽熱発電所でも、熱媒液体を鏡の焦線で650℃に加熱し、これにより、例えば化石燃料火力発電所と同様に高い効率を達成することは、技術的に充分可能であろう。しかしながら、現在使用されている熱媒液体の耐温性が限定されているため、これはできない。
【0012】
パラボラ式発電所よりも高い温度は、太陽熱式塔型発電所で達成することができ、当該塔は鏡に取り囲まれており、この鏡は太陽光を塔上部のレシーバーに収束させるものである。このレシーバー内で熱媒を加熱し、それからこの熱媒を熱交換器で、蒸気発生及びタービン稼働のために利用する。塔型発電機(例えば米国、カリフォルニア州のSolar II)では、既に硝酸ナトリウム(NaNO
3)と硝酸カリウム(KNO
3)との混合物(60:40)が、熱媒として用いられている。この混合物は、550℃まで問題なく使用できるが、融点が240℃と非常に高い。つまりこの混合物はこの温度未満では硬化するため、熱媒としてパイプラインで循環させられないのである。
【0013】
あり得る別の高温熱媒としては、硫黄ベースのものが提案されている。硫黄は常圧下では120℃で溶融し、常圧下では440℃で沸騰する。ただし液状の硫黄は、熱媒としては問題がある。と言うのも、160〜220℃という温度範囲では、液状硫黄は一般的に高粘度であり、給送できないからである。
【0014】
このため、溶融硫黄の粘度を低下させるのが望ましい。
【0015】
硫黄溶融物の粘度を低下させるためにWO 2005/071037は、硫黄を少量のセレン及び/又はテルルと混合することを記載している。
【0016】
US 4 335 578は、臭素又はヨウ素の添加による硫黄溶融物の粘度低下を記載している。
【0017】
しかしながらこれらの添加剤は全て、低温では既に高粘度であり、硫黄溶融物の高温下でも高粘度である。
【0018】
太陽熱発電所を連続的に稼働させることが有利である。これは例えば、太陽光線が多い時間の間に、日没後若しくは天候が悪い時間の間、電流生成に利用可能な太陽光線の熱を貯蔵するによって達成される。
【0019】
この熱貯蔵は、加熱した熱媒を断熱性が良好な貯蔵タンクに収蔵することにより直接的に行うことができるか、又は加熱された熱媒から別の媒体(熱貯蔵体)、例えば硝酸ナトリウム−硝酸カリウムの溶融塩へと熱を移すことにより、間接的に行うことができる。
【0020】
間接的な方法は、スペインにある50MWのAndasol I型発電所で実現化されており、ここでは約28,000トンの硝酸ナトリウム−硝酸カリウム(60:40)の溶融塩を熱貯蔵体として、断熱性が良好なタンクで用いている。この溶融物を太陽光線照射時間の間、比較的温度が低い(約280℃)のタンクから、熱媒油−塩の熱交換器によってより温度が高いタンクに給送し、ここで約380℃に加熱される。ここで熱交換器によって熱エネルギーが熱媒油から排出され、溶融塩に導入される(熱媒油−塩の熱交換器)太陽光線照射が少ない時間と夜間には、発電所は完全にチャージされた貯蔵器で約7.5時間、完全負荷で稼働できる。
【0021】
ただし、熱媒も熱貯蔵媒体もともに使用することに利点があるだろう。と言うのも、このように適切な熱媒油−塩の熱交換器は、費用が節約できるからである。
【0022】
さらにこのようにして、還元特性を有する熱媒油と、激しい酸化作用を有する硝酸溶融物とが接触する可能性を避けることができる。熱媒油の値段が、硝酸ナトリウム−硝酸カリウムの溶融体に比較して明らかに高いことが原因で、熱媒油はこれまで熱貯蔵体として考慮されて来なかった。
【0023】
本発明の課題は、良好に適用可能な、改善された熱媒物質及び熱貯蔵物質、好適には熱媒液体及び熱貯蔵液体を提供することである。この液体は400℃より高い温度、好ましくは500℃超の温度で使用可能である。同時にその融点は、従来技術で用いられている公知の無機溶融塩よりも低いべきであり、例えば130℃未満である。この液体はさらに、技術的に存在する蒸発圧ができる限り低いべきであり、好ましくは10barより低い。
【0024】
本発明にとっては基本的にあらゆる種類の元素状硫黄が良好に適している。元素状硫黄は昔から知られており、例えばGmelins Handbuch der Anorganischen Chemieに記載されている(8.Auflage, Verlag Chemie GmbH, Weinheim, 1953)。当該硫黄は混じり気の無い鉱床、若しくは硫化物鉱物から、又はフラッシュ法で得られるものであるが、石油及び天然ガスの脱硫の際にも大量に生じる。
【0025】
適切な硫黄は、純度が98〜100質量%の範囲、好適には99.5〜100質量%の範囲である。100質量%に対する差分は取得形態により、通常は水、無機鉱物、又は炭化水素である。
【0026】
本願の意味合いにおいてアニオン含有添加剤とは、元素周期表の金属化合物であって、単原子若しくは多原子の、形式的には1価又は多価で負に帯電したアニオン、好適には非金属原子から構成されるアニオンを有するものである。
【0027】
このような金属の例は、アルカリ金属、好適にはナトリウム、カリウム;アルカリ土類金属、好適にはマグネシウム、カルシウム、バリウム;元素周期表の13族の金属、好適にはアルミニウム;遷移金属、好適にはマンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛である。
【0028】
このようなアニオンの例は、ハロゲン化物イオン、及びポリハロゲン化物イオン、例えばフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、三ヨウ化物イオン;カルコゲンイオン(Chalkogenide)、及びポリカルコゲンイオン(Polychalkogenide)、例えば酸化物イオン、水酸化物イオン、硫化物イオン、硫化水素イオン、二硫化物イオン、三硫化物イオン、四硫化物イオン、五硫化物イオン、六硫化物イオン、セレン化物イオン、テルル化物イオン;ニコゲンイオン(Pnicogenide)、例えばアミド、イミド、窒化物イオン、リン化物イオン、ヒ化物イオン;擬ハロゲン化物イオン、例えばシアン化物イオン、シアン酸イオン、チオシアン酸イオン;錯体アニオン、例えばリン酸イオン、リン酸水素イオン、リン酸二水素イオン、硫酸イオン、硫酸水素イオン、亜硫酸イオン、次亜硫酸イオン、チオ硫酸イオン、ヘキサシアノフェレートイオン、テトラクロロアルミン酸イオン、テトラクロロフェレートイオンである。
【0029】
アニオン含有添加剤の例は、塩化アルミニウム(III)、塩化鉄(III)、硫化鉄(II)、臭化ナトリウム、臭化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸ナトリウム、硫化ジナトリウム(Na
2S)、四硫化ジナトリウム(Na
2S
4)、五硫化ジナトリウム(Na
2S
5)、五硫化ジカリウム(K
2S
5)、六硫化ジカリウム(K
2S
6)、四硫化カルシウム(CaS
4)、三硫化バリウム(BaS
3)、セレン化ジカリウム(K
2Se)、リン化トリカリウム(K
3P)、カリウムヘキサシアノフェレート(II)、カリウムヘキサシアノフェレート(III)、銅(I)チオシアネート、三ヨウ化カリウム、三ヨウ化セシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化セシウム、シアン化カリウム、シアン酸カリウム、テトラアルミン酸ナトリウム、硫化マンガン(II)、硫化コバルト(II)、硫化ニッケル(II)、硫化銅(II)、硫化亜鉛、リン酸トリナトリウム、リン酸水素ジナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、硫酸ジナトリウム、硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ジナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、リン酸トリカリウム、リン酸水素ジカリウム、リン酸二水素カリウム、硫酸ジカリウム、硫酸水素カリウム、硫酸ジカリウム、硫酸水素カリウム、チオ硫酸カリウムである。
【0030】
本願の意味合いにおいてアニオン含有添加剤とはさらに、2種以上の元素周期表の金属化合物の混合物であって、単原子若しくは多原子の、形式的には1価又は多価で負に帯電したアニオン、好適には非金属原子から構成されるアニオンを有するものである。ここで現在の技術水準に従えば、各成分の量比は重要ではない。
【0031】
特に好ましいアニオン含有添加剤は、アルカリ金属カルコゲナイド、例えば、アルカリ金属(つまりリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、又はセシウム)と、カルコゲン(つまり酸素、硫黄、セレン、又はテルル)との二元系化合物である。
【0032】
もちろんまた、これらの二元化合物の混合物もあり得、ここでその混合比は、現在の知見によれば重要ではない。
【0033】
極めて特に好ましいアニオン含有添加剤は、四硫化ジナトリウム(Na
2S
4)、五硫化ジナトリウム(Na
2S
5)、五硫化ジカリウム(K
2S
5)、六硫化ジカリウム(K
2S
6)、チオシアン酸ナトリウム(NaSCN)、チオシアン酸カリウム(KSCN)、水酸化ナトリウム(NaOH)、又は水酸化カリウム(KOH)、並びにこれらの成分の少なくとも2種の混合物である。
【0034】
上記アニオン含有添加剤の製造方法は基本的に公知であり、文献に記載されている。
【0035】
例えば、式M
2S
x(x=2、3、4、5、6)のアルカリ金属多硫化物は、アルカリ金属硫化物と相応する量の硫黄から直接、400〜500℃の温度で一緒に溶融させることにより製造できる。相応するアルカリ金属硫化物(M
2S)は例えば、相応するアルカリ金属硫酸塩を、炭素で還元することによって得られる。アルカリ金属多硫化物を製造するための、良好に適した別の方法は、アルカリ金属と硫黄とを直接反応させることであり、これは例えばUS 4,640,832に記載されている。アルカリ金属多硫化物を製造するための、良好に適した別の方法は、アルカリ金属炭酸塩若しくはアルカリ金属水酸化物を、硫黄と反応させること、アルカリ金属硫化物と、硫黄とを反応させること、アルカリ金属硫化物若しくはアルカリ金属硫化水素塩を水溶液若しくはアルコール溶液中で、硫黄と反応させること、又はアルカリ金属を硫黄と液状アンモニア中で反応させることである。
【0036】
本発明による混合物は好適には、元素の硫黄をそれぞれ本発明による混合物の全質量に対して、50〜99.999質量%の範囲、好適には80〜99.99質量%の範囲、特に好ましくは90〜99.9質量%の範囲で含有する。
【0037】
本発明による混合物は好適には、アニオン含有添加剤を、それぞれ本発明による混合物の全質量に対して、0.001〜50質量%の範囲、好適には0.01〜20質量%の範囲、特に好ましくは0.1〜10質量%の範囲で、含有する。
【0038】
本発明による混合物は、さらなる添加物質を含有することができ、それは例えば混合物の融点を低下させる添加剤である。一般的にこの添加物質の全量は、本発明による混合物の全質量に対して0.01〜50質量%の範囲である。
【0039】
本発明による混合物の成分の合計は、100%である。
【0040】
元素の硫黄とアニオン含有添加剤とを含有する本発明による混合物(任意で液状の混合物、以下で規定)は、以下のように製造することができる。
【0041】
全ての成分(硫黄、及び1種のアニオンを含有する添加剤、又は複数のアニオンを含有する添加剤)は、固体状で、相応する質量比で相互に混合し、任意で引き続き溶融させて、液状完成混合物を得る。
【0042】
代替的には、まず元素の硫黄を溶融させ、これに1種のアニオンを含有する添加剤、又は複数のアニオンを含有する添加剤を混合しながら添加し、得られた混合物を任意で冷却により固体状にする。好適には、一種のアニオンを含有する添加剤又は複数のアニオンを含有する添加剤は、硫黄溶融物に実質的に完全に溶解する。
【0043】
本願の対象はまた、元素の硫黄と、アニオン含有添加剤を含有する、前述の本発明による液状混合物である。この混合物は以降、「本発明による液状混合物」と呼ぶ。
【0044】
ここで「本発明による液状混合物」という用語は、硫黄がこの混合物中で101325Pa(絶対圧)の圧力で、又はこれより高い圧力で、少なくとも一部が、好適には完全に液状で存在することを意味する。
【0045】
本発明による液状混合物は好適には、101325Pa(絶対圧)の圧力で、温度が120〜450℃の範囲である。101325Pa(絶対圧)よりも高い圧力では、本発明による液状混合物は好適には、温度が120〜600℃の範囲である。
【0046】
本発明による液状混合物は、その組成において基本的に、又は好ましくは、特に好ましくは、又は極めて特に好ましくは、上記の本発明による混合物(元素の硫黄とアニオン含有添加剤とを含有するもの)に相応する。
【0047】
本発明による液状混合物の最大粘度は、実施例で記載するように101325Pa(絶対圧)の圧力で測定して、通常は120〜195℃の範囲の温度で、0.005〜50Pa・s、好適には0.005〜30Pa・s、特に好ましくは0.005〜5Pa・sである。
【0048】
本願はさらに、元素の硫黄とアニオン含有添加剤とを含有する混合物であって、好適には液状のもの(それぞれ前述のもの)を、それぞれ前述のように、熱媒及び/又は熱貯蔵体として用いる使用である。
【0049】
本発明はさらに、元素の硫黄とアニオン含有添加剤とを含有する混合物であって、好適には液状のもの(それぞれ前述のもの)を、熱媒及び/又は熱貯蔵体として、発電所、例えば太陽熱式発電所で用いる使用である。
【0050】
本発明はさらに、元素の硫黄とアニオン含有添加剤とを含有する混合物であって、好適には液状のもの(それぞれ前述のもの)を、熱媒及び/又は熱貯蔵体として、発電所、例えば太陽熱式発電所で、120〜600℃の範囲の温度で用いる使用である。
【0051】
本発明による液状混合物の上記使用は好適には、特に熱媒としての使用は、空気及び湿分を遮断して、好適には閉鎖系(例えばパイプライン、ポンプ、熱交換器、制御装置、及び容器)で行う。
【0052】
本発明の対象はさらに、元素の硫黄とアニオン含有添加剤とを含有する混合物であって、好適には液状のものを有する熱媒又は熱貯蔵体である。
【0053】
熱媒とは、熱源、例えば太陽によって太陽熱発電所で加熱され、当該熱媒に含まれる熱量を特定の区間を介して輸送する媒体である。この熱媒はそれから熱を別の媒体、例えば水又は気体、好適には熱交換器によって移し、この別の媒体が、例えばタービンを稼働させることができる。熱媒はまた、その中に含まれる熱量を、貯蔵容器に存在する別の媒体(例えば硝酸カリウム−硝酸ナトリウムの溶融塩)に移し、こうして熱を貯蔵のために転送する。熱媒はまた、それ自体を貯蔵容器に蓄えることができ、そこに留まることができる。この場合に熱媒は、それ自体が熱媒であり、また熱貯蔵体でもある。
【0054】
熱貯蔵体とは、熱量を一定の時間にわたって貯蔵でき、かつ通常は規定の場所で、好適には熱損失に対して遮断された容器内に存在する媒体、通常は物質的な組成物であって、これは例えば本発明による混合物である。
【0055】
本願の対象はさらに、太陽熱式発電所であって、元素の硫黄とアニオン含有添加剤とを含有する混合物で充填されたパイプライン、熱交換器、及び/又は容器を有するものである。
【0056】
実施例
物理的特性は、以下のように測定した:
混合物の動的粘度を、120〜195℃の温度範囲で、ローテーション粘度計を用いて、内部規則に準じて以下のように特定した。測定構成は、固定式シリンダー容器から成っており、その中には、回転可能に設置された中実シリンダーが存在している。測定する液体を、スリットに入れる。引き続き、中実シリンダーを一定の速度で回転させるために必要な回転モーメントを特定する。生じる速度勾配の関数として、必要な回転モーメントにより、液体の動的粘度が計算できる。
【0057】
実施例1(一般処方1)
実施例2〜6に記載するのと同様に各混合物を、撹拌しながら窒素雰囲気下で室温から250℃に加熱した。約120℃から、混合物は液状になった。さらに加熱すると、約159℃から初期粘度が顕著に増加し、約190℃で最大になり、その後、さらに高い温度では再び低下した。このことは、撹拌モーメントの変更により確認することができた。それからこの混合物を、250℃から150℃に冷却した。
【0058】
この加熱・冷却工程をさらに9回行なった。それから室温で試料を混合物から取り出し、前述のように試料の動的粘度を測定した。
【0059】
実施例2
実施例1を、五硫化ジカリウム(K
2S
5)3g、及び硫黄297gとの混合物を用いて行い、試料の動的粘度を測定した。粘度の最大値は195℃で、5Pa・sであった。
【0060】
実施例3
実施例1を、水酸化カリウム(KOH)5g、及び硫黄295gとの混合物を用いて行い、試料の動的粘度を測定した。粘度の最大値は195℃で、5Pa・sであった。
【0061】
実施例4
実施例1を、水酸化ナトリウム(NaOH)5g、及び硫黄295gとの混合物を用いて行い、試料の動的粘度を測定した。粘度の最大値は195℃で、30Pa・sであった。
【0062】
実施例5
実施例1を、五硫化ジナトリウム(Na
2S
5)3g、及び硫黄297gとの混合物を用いて行い、試料の動的粘度を測定した。粘度の最大値は195℃で、10Pa・sであった。
【0063】
実施例6
実施例1を、塩化鉄(III)(FeCl
3)15g、及び硫黄285gとの混合物を用いて行い、試料の動的粘度を測定した。粘度の最大値は195℃で、38mPa・sであった。
【0064】
実施例7(比較例)
実施例1を硫黄300gで繰り返し、アニオンを含有しない添加剤を添加した。
【0065】
実施例1で記載したように、硫黄は全部で10回加熱・冷却した。
【0066】
それから室温で試料を混合物から取り出し、前述のように動的粘度を測定した。粘度の最大値は190℃で、90Pa・sであった。