【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図10は、従来のレーザ干渉計100の課題を説明するための図である。
具体的に、
図10(A)は干渉計本体30に戻る測定光Lmの強度変化によってA,B相信号Sa,Sbのオフセット成分が変動しない理想的な状態を示し、
図10(B)はA,B相信号Sa,Sbのオフセット成分が変動する実際の状態を示している。
ところで、干渉計本体30と再帰反射体20(被測定物)との距離が大きくなった等の要因で干渉計本体30に戻る測定光Lmの強度が低下した場合には、測定光Lmと干渉できない参照光Lrが増加することとなる。
なお、測定光Lmが遮られて干渉計本体30に戻り測定光Lmの強度が0になった場合も同様である。
【0010】
このような場合には、PD30A〜30Dから出力されるA+,A−,B+,B−相信号Sa1,Sa2,Sb1,Sb2は、干渉計本体30に戻る測定光Lmの強度が十分に高い場合と比較して、オフセット成分が変動することとなる。すなわち、差動増幅装置40から出力されるA,B相信号Sa,Sbのオフセット成分も変動することとなる(
図10(B))。
そして、差動増幅装置40から出力されるA,B相信号のオフセット成分が変動した場合には、信号処理装置50において、内挿分割処理する際に、誤差が生じることとなる。
すなわち、信号処理装置50において、再帰反射体20(被測定物)の変位量を精度良く測定できない、という問題がある。
【0011】
本発明の目的は、変位量を精度良く測定できる変位量測定装置、及びオフセット補正方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の変位量測定装置は、位相が互いに90°ずれたA+相信号及びB+相信号と、前記A+相信号及び前記B+相信号の反転信号であるA−相信号及びB−相信号とをそれぞれ出力する4つの受光素子を備え、各前記信号に基づいて、被測定物の変位量を測定する変位量測定装置であって、入力した前記A+相信号及び前記A−相信号からA相信号を生成する第1信号生成装置と、入力した前記B+相信号及び前記B−相信号からB相信号を生成する第2信号生成装置とを備え、前記第1信号生成装置及び前記第2信号生成装置は、前記入力した各信号に基づいて、減算処理を
施して振幅成分を取り出す減算手段と、
前記入力した各信号のオフセット成分が変動しかつ各変動量が異なる際に、前記入力した各信号に基づいて、加算処理を施して各信号のオフセット成分の各変動量を取り出す加算手段と、前記加算手段による処理結果に基づいて、前記減算手段による処理結果に含まれるオフセット成分を補正するオフセット補正手段とを備えることを特徴とする。
【0013】
なお、以下では、説明の便宜上、本発明に係る変位量測定装置をレーザ干渉計で構成した場合で説明する。
本発明では、第1信号生成装置は、上述した減算手段、加算手段、及びオフセット補正手段を備えるので、干渉計本体に戻る測定光の強度が低くなった場合でもオフセット成分が変動しないA相信号を生成できる。
なお、第2信号生成装置も第1信号生成装置と同様の構成を有しているため、第1信号生成装置と同様に、オフセット成分が変動しないB相信号を生成できる。
【0014】
先ず、減算手段は、A+,A−相信号に基づいて、減算処理を施す(減算ステップ)。
ところで、干渉計本体に戻る測定光の強度が低くなった場合でもA+,A−相信号のオフセット成分が変動しない状態(以下、第1の状態)では、減算手段による処理結果は、以下のようになる。
すなわち、オフセット成分の変動がないため、A+,A−相信号に基づいて、減算処理を施した場合には、当該処理結果には、A+,A−相信号のオフセット成分の変動量が含まれず、A+,A−相信号の振幅成分のみが含まれることとなる。
したがって、第1の状態となる変位量測定装置では、従来の構成でA相信号を生成してもA相信号のオフセット成分の変動がないため、本願のようなオフセット成分の補正は不要である。
【0015】
また、干渉計本体に戻る測定光の強度が低くなった場合に、A+,A−相信号のオフセット成分が変動し、かつ、各変動量が同一の状態(以下、第2の状態)では、減算手段による処理結果は、以下のようになる。
すなわち、減算処理によりA+,A−相信号のオフセット成分の各変動量が互いに打ち消されるため、当該処理結果には、上記同様に、A+,A−相信号の振幅成分のみが含まれることとなる。
したがって、第2の状態となる変位量測定装置でも上記第1の状態となる変位量測定装置と同様に、本願のようなオフセット成分の補正は不要である。
【0016】
一方、干渉計本体に戻る測定光の強度が低くなった場合に、A+,A−相信号のオフセット成分が変動し、かつ、各変動量が異なる状態(以下、第3の状態)では、減算手段による処理結果は、以下のようになる。
すなわち、減算処理によりA+,A−相信号のオフセット成分の各変動量が互いに打ち消されることがないため、当該処理結果には、A+,A−相信号の振幅成分の他、オフセット成分の各変動量が含まれることとなる。
したがって、第3の状態となる変位量測定装置では、従来の構成でA相信号を生成した場合には、A相信号のオフセット成分が変動することとなるため、本願のようなオフセット成分の補正が必要となる。
【0017】
また、加算手段は、A+,A−相信号に基づいて、加算処理を施す(加算ステップ)。
第3の状態では、加算手段による処理結果は、以下のようになる。
すなわち、A+,A−相信号は、振幅が同一で、位相が反転した信号であるため、加算処理によりA+,A−相信号の各振幅成分が互いに打ち消されるため、当該処理結果には、A+,A−相信号のオフセット成分の各変動量のみが含まれることとなる。
そして、オフセット補正手段は、加算手段による処理結果に基づいて、減算手段による処理結果に含まれるオフセット成分を補正する(オフセット補正ステップ)。
この補正により、干渉計本体に戻る測定光の強度が低くなった場合でもオフセット成分が変動しないA相信号を生成できる。
以上のような処理により、オフセット成分が変動しないA,B相信号を生成できるので、干渉計本体に戻る測定光の強度が低い場合であっても、当該A,B相信号に基づいて、被測定物の変位量を精度良く測定できる。
【0018】
本発明の変位量測定装置では、前記第1信号生成装置及び前記第2信号生成装置は、前記加算手段による処理結果を調整する調整手段を備え、前記オフセット補正手段は、前記調整手段にて調整された前記加算手段による処理結果に基づいて、前記減算手段による処理結果に含まれるオフセット成分を補正することが好ましい。
【0019】
本発明では、第1信号生成装置は、上述した調整手段を備える。
このことにより、調整手段にて加算手段による処理結果を調整し、当該調整した加算手段による処理結果を用いて、オフセット補正ステップを実行すれば、第3の状態での減算手段による処理結果に含まれるA+,A−相信号のオフセット成分の各変動量を確実に打ち消すことができる。なお、第2信号生成装置も同様である。
【0020】
本発明の変位量測定装置では、前記第1信号生成装置及び前記第2信号生成装置は、前記加算手段による処理結果の極性を反転させる反転手段を備えることが好ましい。
【0021】
ところで、干渉計本体に戻る測定光の強度が低くなった場合に、減算手段による処理結果に含まれるオフセット成分が+側に変動した状態(以下、第4の状態)では、オフセット補正ステップにおいて、減算手段による処理結果に加算手段による処理結果を単純に加算しても、減算手段による処理結果に含まれるオフセット成分の変動量を打ち消すことができない。
そこで、本発明では、第4の状態となる変位量測定装置において、第1,第2信号生成装置に上述した反転手段を設けたものである。
そして、反転手段にて加算手段による処理結果の極性を反転させ、オフセット補正ステップにおいて、減算手段による処理結果に対して、反転した加算手段による処理結果を加算することで、減算手段による処理結果に含まれるオフセット成分の変動量を打ち消すことができる。なお、第2信号生成装置も同様である。
【0022】
本発明のオフセット補正方法は、位相が互いに90°ずれたA+相信号及びB+相信号と、前記A+相信号及び前記B+相信号の反転信号であるA−相信号及びB−相信号とをそれぞれ出力する4つの受光素子を備え、各前記信号に基づいて、被測定物の変位量を測定する変位量測定装置に用いられるオフセット補正方法であって、前記変位量測定装置は、入力した前記A+相信号及び前記A−相信号からA相信号を生成する第1信号生成装置と、入力した前記B+相信号及び前記B−相信号からB相信号を生成する第2信号生成装置とを備え、前記第1信号生成装置及び前記第2信号生成装置が、前記入力した各信号に基づいて、減算処理を
施して振幅成分を取り出す減算ステップと、
前記入力した各信号のオフセット成分が変動しかつ各変動量が異なる際に、前記入力した各信号に基づいて、加算処理を施して各信号のオフセット成分の各変動量を取り出す加算ステップと、前記加算処理の処理結果に基づいて、前記減算処理の処理結果に含まれるオフセット成分を補正するオフセット補正ステップとを実行することを特徴とする。
本発明のオフセット補正方法は、上述した変位量測定装置に用いられる方法であるので、上述した変位量測定装置と同様の作用及び効果を享受できる。