特許第5930623号(P5930623)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5930623変位量測定装置、及びオフセット補正方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5930623
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】変位量測定装置、及びオフセット補正方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 9/02 20060101AFI20160526BHJP
【FI】
   G01B9/02
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-166878(P2011-166878)
(22)【出願日】2011年7月29日
(65)【公開番号】特開2013-29458(P2013-29458A)
(43)【公開日】2013年2月7日
【審査請求日】2014年6月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】金森 宏之
【審査官】 神谷 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−340112(JP,A)
【文献】 特開平06−300589(JP,A)
【文献】 特開2006−153753(JP,A)
【文献】 特開平01−184402(JP,A)
【文献】 特開2009−115596(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 9/00−11/30
G01D 5/00− 5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
位相が互いに90°ずれたA+相信号及びB+相信号と、前記A+相信号及び前記B+相信号の反転信号であるA−相信号及びB−相信号とをそれぞれ出力する4つの受光素子を備え、各前記信号に基づいて、被測定物の変位量を測定する変位量測定装置であって、
入力した前記A+相信号及び前記A−相信号からA相信号を生成する第1信号生成装置と、入力した前記B+相信号及び前記B−相信号からB相信号を生成する第2信号生成装置とを備え、
前記第1信号生成装置及び前記第2信号生成装置は、
前記入力した各信号に基づいて、減算処理を施して振幅成分を取り出す減算手段と、
前記入力した各信号のオフセット成分が変動しかつ各変動量が異なる際に、前記入力した各信号に基づいて、加算処理を施して各信号のオフセット成分の各変動量を取り出す加算手段と、
前記加算手段による処理結果に基づいて、前記減算手段による処理結果に含まれるオフセット成分を補正するオフセット補正手段とを備える
ことを特徴とする変位量測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の変位量測定装置において、
前記第1信号生成装置及び前記第2信号生成装置は、
前記加算手段による処理結果を調整する調整手段を備え、
前記オフセット補正手段は、
前記調整手段にて調整された前記加算手段による処理結果に基づいて、前記減算手段による処理結果に含まれるオフセット成分を補正する
ことを特徴とする変位量測定装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の変位量測定装置において、
前記第1信号生成装置及び前記第2信号生成装置は、
前記加算手段による処理結果の極性を反転させる反転手段を備える
ことを特徴とする変位量測定装置。
【請求項4】
位相が互いに90°ずれたA+相信号及びB+相信号と、前記A+相信号及び前記B+相信号の反転信号であるA−相信号及びB−相信号とをそれぞれ出力する4つの受光素子を備え、各前記信号に基づいて、被測定物の変位量を測定する変位量測定装置に用いられるオフセット補正方法であって、
前記変位量測定装置は、
入力した前記A+相信号及び前記A−相信号からA相信号を生成する第1信号生成装置と、入力した前記B+相信号及び前記B−相信号からB相信号を生成する第2信号生成装置とを備え、
前記第1信号生成装置及び前記第2信号生成装置が、
前記入力した各信号に基づいて、減算処理を施して振幅成分を取り出す減算ステップと、
前記入力した各信号のオフセット成分が変動しかつ各変動量が異なる際に、前記入力した各信号に基づいて、加算処理を施して各信号のオフセット成分の各変動量を取り出す加算ステップと、
前記加算処理の処理結果に基づいて、前記減算処理の処理結果に含まれるオフセット成分を補正するオフセット補正ステップとを実行する
ことを特徴とするオフセット補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ干渉計や光学式エンコーダ等の変位量測定装置、及び変位量測定装置で用いられるオフセット値補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被測定物の変位量を測定する装置として、例えば、マイケルソン型レーザ干渉計が知られている(例えば、特許文献1参照)。
図7は、従来のレーザ干渉計100を示す模式図である。
レーザ干渉計100は、レーザ光の干渉を利用して、被測定物(後述する再帰反射体20)の変位量を測定する。
このレーザ干渉計100は、図7に示すように、レーザ光源装置10と、再帰反射体20と、干渉計本体30と、差動増幅装置40と、信号処理装置50とを備える。
【0003】
再帰反射体20は、干渉計本体30から出射された測定用の測定光Lmを入射方向に沿って反射させるものであり、被測定物(図示略)に取り付けられる。
干渉計本体30は、図7に示すように、偏光ビームスプリッタ31〜33と、λ/4板34〜36と、λ/2板37と、ビームスプリッタ38と、再帰反射体39と、受光素子としてのPD(Photodiode)30A〜30Dとを備える。
そして、レーザ光源装置10から出射されたレーザ光Lは、偏光ビームスプリッタ31で参照用の参照光Lrと、測定用の測定光Lmとに分離される。
測定光Lmは、λ/4板34を介して再帰反射体20に向けて出射され、再帰反射体20にて反射された後、再度、λ/4板34を透過して偏光ビームスプリッタ31に向う。
一方、参照光Lrも同様に、λ/4板35を介して再帰反射体39に向けて出射され、再帰反射体39にて反射された後、再度、λ/4板35を透過して偏光ビームスプリッタ31に向う。
【0004】
そして、偏光ビームスプリッタ31に向う測定光Lm及び参照光Lrは、干渉光Liとなってλ/2板37を透過した後、ビームスプリッタ38にて第1干渉光Li1と第2干渉光Li2とに分離される。
第1干渉光Li1は、偏光ビームスプリッタ32にて分離されて、PD30A,30Bにそれぞれ照射される。
一方、第2干渉光Li2は、λ/4板36を介して偏光ビームスプリッタ33に向い、偏光ビームスプリッタ33にて分離されて、PD30C,30Dにそれぞれ照射される。
【0005】
PD30A,30Bに照射された光は、PD30A,30Bにてそれぞれ光電変換されて、A+相信号Sa1及びA−相信号Sa2としてそれぞれ出力される。
また、PC30C,30Dに照射された光は、PD30C,30Dにてそれぞれ光電変換されて、B+相信号Sb1及びB−相信号Sb2としてそれぞれ出力される。
なお、上述した光路を辿ることから、A+,B+相信号Sa1,Sb1は位相が90°ずれた信号であり、A−,B−相信号Sa2,Sb2はA+,B+相信号Sa1,Sb1の反転信号となる。
【0006】
図8は、従来の差動増幅装置40にて処理された後のA,B相信号Sa,Sbを示す図である。
差動増幅装置40は、A+,A−相信号Sa1,Sa2を差動増幅するとともに、B+,B−相信号Sb1,Sb2を差動増幅し、二相の信号(A,B相信号Sa,Sb)を出力する。
そして、差動増幅装置40にて処理された後のA,B相信号Sa,Sbは、図8に示すように、位相が90°ずれた信号であり、一定電圧の直流成分(オフセット成分)と、光の強度で変化する交流成分(振幅成分)とで構成されている。
【0007】
図9は、従来の信号処理装置による内挿分割処理を説明するための図である。
信号処理装置50は、差動増幅装置40から出力される正弦波信号であるA,B相信号Sa,Sb(図9(A))に対して内挿分割処理を施して二相方形波(図9(B))に変換し、当該二相方形波に基づいて、再帰反射体20(被測定物)の変位量を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平1−184402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図10は、従来のレーザ干渉計100の課題を説明するための図である。
具体的に、図10(A)は干渉計本体30に戻る測定光Lmの強度変化によってA,B相信号Sa,Sbのオフセット成分が変動しない理想的な状態を示し、図10(B)はA,B相信号Sa,Sbのオフセット成分が変動する実際の状態を示している。
ところで、干渉計本体30と再帰反射体20(被測定物)との距離が大きくなった等の要因で干渉計本体30に戻る測定光Lmの強度が低下した場合には、測定光Lmと干渉できない参照光Lrが増加することとなる。
なお、測定光Lmが遮られて干渉計本体30に戻り測定光Lmの強度が0になった場合も同様である。
【0010】
このような場合には、PD30A〜30Dから出力されるA+,A−,B+,B−相信号Sa1,Sa2,Sb1,Sb2は、干渉計本体30に戻る測定光Lmの強度が十分に高い場合と比較して、オフセット成分が変動することとなる。すなわち、差動増幅装置40から出力されるA,B相信号Sa,Sbのオフセット成分も変動することとなる(図10(B))。
そして、差動増幅装置40から出力されるA,B相信号のオフセット成分が変動した場合には、信号処理装置50において、内挿分割処理する際に、誤差が生じることとなる。
すなわち、信号処理装置50において、再帰反射体20(被測定物)の変位量を精度良く測定できない、という問題がある。
【0011】
本発明の目的は、変位量を精度良く測定できる変位量測定装置、及びオフセット補正方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の変位量測定装置は、位相が互いに90°ずれたA+相信号及びB+相信号と、前記A+相信号及び前記B+相信号の反転信号であるA−相信号及びB−相信号とをそれぞれ出力する4つの受光素子を備え、各前記信号に基づいて、被測定物の変位量を測定する変位量測定装置であって、入力した前記A+相信号及び前記A−相信号からA相信号を生成する第1信号生成装置と、入力した前記B+相信号及び前記B−相信号からB相信号を生成する第2信号生成装置とを備え、前記第1信号生成装置及び前記第2信号生成装置は、前記入力した各信号に基づいて、減算処理を施して振幅成分を取り出す減算手段と、前記入力した各信号のオフセット成分が変動しかつ各変動量が異なる際に、前記入力した各信号に基づいて、加算処理を施して各信号のオフセット成分の各変動量を取り出す加算手段と、前記加算手段による処理結果に基づいて、前記減算手段による処理結果に含まれるオフセット成分を補正するオフセット補正手段とを備えることを特徴とする。
【0013】
なお、以下では、説明の便宜上、本発明に係る変位量測定装置をレーザ干渉計で構成した場合で説明する。
本発明では、第1信号生成装置は、上述した減算手段、加算手段、及びオフセット補正手段を備えるので、干渉計本体に戻る測定光の強度が低くなった場合でもオフセット成分が変動しないA相信号を生成できる。
なお、第2信号生成装置も第1信号生成装置と同様の構成を有しているため、第1信号生成装置と同様に、オフセット成分が変動しないB相信号を生成できる。
【0014】
先ず、減算手段は、A+,A−相信号に基づいて、減算処理を施す(減算ステップ)。
ところで、干渉計本体に戻る測定光の強度が低くなった場合でもA+,A−相信号のオフセット成分が変動しない状態(以下、第1の状態)では、減算手段による処理結果は、以下のようになる。
すなわち、オフセット成分の変動がないため、A+,A−相信号に基づいて、減算処理を施した場合には、当該処理結果には、A+,A−相信号のオフセット成分の変動量が含まれず、A+,A−相信号の振幅成分のみが含まれることとなる。
したがって、第1の状態となる変位量測定装置では、従来の構成でA相信号を生成してもA相信号のオフセット成分の変動がないため、本願のようなオフセット成分の補正は不要である。
【0015】
また、干渉計本体に戻る測定光の強度が低くなった場合に、A+,A−相信号のオフセット成分が変動し、かつ、各変動量が同一の状態(以下、第2の状態)では、減算手段による処理結果は、以下のようになる。
すなわち、減算処理によりA+,A−相信号のオフセット成分の各変動量が互いに打ち消されるため、当該処理結果には、上記同様に、A+,A−相信号の振幅成分のみが含まれることとなる。
したがって、第2の状態となる変位量測定装置でも上記第1の状態となる変位量測定装置と同様に、本願のようなオフセット成分の補正は不要である。
【0016】
一方、干渉計本体に戻る測定光の強度が低くなった場合に、A+,A−相信号のオフセット成分が変動し、かつ、各変動量が異なる状態(以下、第3の状態)では、減算手段による処理結果は、以下のようになる。
すなわち、減算処理によりA+,A−相信号のオフセット成分の各変動量が互いに打ち消されることがないため、当該処理結果には、A+,A−相信号の振幅成分の他、オフセット成分の各変動量が含まれることとなる。
したがって、第3の状態となる変位量測定装置では、従来の構成でA相信号を生成した場合には、A相信号のオフセット成分が変動することとなるため、本願のようなオフセット成分の補正が必要となる。
【0017】
また、加算手段は、A+,A−相信号に基づいて、加算処理を施す(加算ステップ)。
第3の状態では、加算手段による処理結果は、以下のようになる。
すなわち、A+,A−相信号は、振幅が同一で、位相が反転した信号であるため、加算処理によりA+,A−相信号の各振幅成分が互いに打ち消されるため、当該処理結果には、A+,A−相信号のオフセット成分の各変動量のみが含まれることとなる。
そして、オフセット補正手段は、加算手段による処理結果に基づいて、減算手段による処理結果に含まれるオフセット成分を補正する(オフセット補正ステップ)。
この補正により、干渉計本体に戻る測定光の強度が低くなった場合でもオフセット成分が変動しないA相信号を生成できる。
以上のような処理により、オフセット成分が変動しないA,B相信号を生成できるので、干渉計本体に戻る測定光の強度が低い場合であっても、当該A,B相信号に基づいて、被測定物の変位量を精度良く測定できる。
【0018】
本発明の変位量測定装置では、前記第1信号生成装置及び前記第2信号生成装置は、前記加算手段による処理結果を調整する調整手段を備え、前記オフセット補正手段は、前記調整手段にて調整された前記加算手段による処理結果に基づいて、前記減算手段による処理結果に含まれるオフセット成分を補正することが好ましい。
【0019】
本発明では、第1信号生成装置は、上述した調整手段を備える。
このことにより、調整手段にて加算手段による処理結果を調整し、当該調整した加算手段による処理結果を用いて、オフセット補正ステップを実行すれば、第3の状態での減算手段による処理結果に含まれるA+,A−相信号のオフセット成分の各変動量を確実に打ち消すことができる。なお、第2信号生成装置も同様である。
【0020】
本発明の変位量測定装置では、前記第1信号生成装置及び前記第2信号生成装置は、前記加算手段による処理結果の極性を反転させる反転手段を備えることが好ましい。
【0021】
ところで、干渉計本体に戻る測定光の強度が低くなった場合に、減算手段による処理結果に含まれるオフセット成分が+側に変動した状態(以下、第4の状態)では、オフセット補正ステップにおいて、減算手段による処理結果に加算手段による処理結果を単純に加算しても、減算手段による処理結果に含まれるオフセット成分の変動量を打ち消すことができない。
そこで、本発明では、第4の状態となる変位量測定装置において、第1,第2信号生成装置に上述した反転手段を設けたものである。
そして、反転手段にて加算手段による処理結果の極性を反転させ、オフセット補正ステップにおいて、減算手段による処理結果に対して、反転した加算手段による処理結果を加算することで、減算手段による処理結果に含まれるオフセット成分の変動量を打ち消すことができる。なお、第2信号生成装置も同様である。
【0022】
本発明のオフセット補正方法は、位相が互いに90°ずれたA+相信号及びB+相信号と、前記A+相信号及び前記B+相信号の反転信号であるA−相信号及びB−相信号とをそれぞれ出力する4つの受光素子を備え、各前記信号に基づいて、被測定物の変位量を測定する変位量測定装置に用いられるオフセット補正方法であって、前記変位量測定装置は、入力した前記A+相信号及び前記A−相信号からA相信号を生成する第1信号生成装置と、入力した前記B+相信号及び前記B−相信号からB相信号を生成する第2信号生成装置とを備え、前記第1信号生成装置及び前記第2信号生成装置が、前記入力した各信号に基づいて、減算処理を施して振幅成分を取り出す減算ステップと、前記入力した各信号のオフセット成分が変動しかつ各変動量が異なる際に、前記入力した各信号に基づいて、加算処理を施して各信号のオフセット成分の各変動量を取り出す加算ステップと、前記加算処理の処理結果に基づいて、前記減算処理の処理結果に含まれるオフセット成分を補正するオフセット補正ステップとを実行することを特徴とする。
本発明のオフセット補正方法は、上述した変位量測定装置に用いられる方法であるので、上述した変位量測定装置と同様の作用及び効果を享受できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1実施形態におけるレーザ干渉計を示す模式図。
図2】第1実施形態における第1補正装置を示す模式図。
図3】第1実施形態におけるオフセット補正方法を説明するフローチャート。
図4】第1実施形態におけるオフセット補正方法を説明するための図。
図5】第1実施形態の効果を説明するための図。
図6】第2実施形態における第1補正装置を示す模式図。
図7】従来のレーザ干渉計を示す模式図。
図8】従来の差動増幅装置にて処理された後のA,B相信号を示す図。
図9】従来の信号処理装置による内挿分割処理を説明するための図。
図10】従来のレーザ干渉計の課題を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
〔レーザ干渉計の構成〕
図1は、第1実施形態におけるレーザ干渉計1を示す模式図である。
変位量測定装置としてのレーザ干渉計1は、図1に示すように、従来のレーザ干渉計100と同様のレーザ光源装置10、再帰反射体20、干渉計本体30、及び信号処理装置50の他、オフセット補正装置60を備える。
以下では、従来のレーザ干渉計100と同様の構成については同様の符号を付して説明を省略し、本願の要部であるオフセット補正装置60について詳細に説明する。
【0025】
〔オフセット補正装置の構成〕
オフセット補正装置60は、干渉計本体30に戻る測定光Lmの強度が低くなった場合でもオフセット成分(オフセット電圧)が変動しないA,B相信号Sa,Sbを生成し、当該A,B相信号Sa,Sbを信号処理装置50に出力する。
このオフセット補正装置60は、図1に示すように、A相信号Saを生成する第1信号生成装置としての第1補正装置60Aと、B相信号Sbを生成する第2信号生成装置としての第2補正装置60Bとを備える。
なお、第1,第2補正装置60A,60Bは、入力する信号が異なるのみで(第1補正装置60AにはA+,A−相信号Sa1,Sa2が入力、第2補正装置60BにはB+,B−相信号Sb1,Sb2が入力)、同一の構成を有するものである。このため、以下では、第1補正装置60Aの構成のみを説明し、第2補正装置60Bの構成については説明を省略する。
【0026】
図2は、第1補正装置60Aを示す模式図である。
第1補正装置60Aは、図2に示すように、減算手段としての第1アンプ61と、加算手段としての第2アンプ62と、調整手段としての第3アンプ63と、オフセット補正手段としての第4アンプ64と、第5アンプ65とを備える。
第1アンプ61は、差動アンプで構成され、PD30A,30Bから入力したA+,A−相信号Sa1,Sa2の差分を増幅し(減算処理を施し)、信号Diを出力する。
第2アンプ62は、加算アンプで構成され、PD30A,30Bから入力したA+,A−相信号Sa1,Sa2を加算し(加算処理を施し)、信号Adを出力する。
【0027】
第3アンプ63は、可変ゲインアンプで構成され、ゲイン設定値Gを用いて第2アンプ62からの出力信号Adを調整し、信号Ad´を出力する。
第4アンプ64は、差動アンプで構成され、第1アンプ61の出力信号Diと、第3アンプ63の出力信号Ad´との差分を増幅し(減算処理を施し)、信号Anを出力する。
第5アンプ65は、ゲイン及びオフセットを可変とし、第4アンプ64の出力信号Anを調整して、信号処理装置50にて内挿分割処理が可能なA相信号Saを出力する。
【0028】
〔オフセット補正方法〕
次に、上述した第1補正装置60Aによるオフセット補正方法について説明する。
なお、上述したように第2補正装置60Bは、第1補正装置60Aと同様の構成を有しているため、第2補正装置60Bによるオフセット補正方法も第1補正装置60Aによるオフセット補正方法と同様のものとなる。このため、第2補正装置60Bによるオフセット補正方法については説明を省略する。
【0029】
図3は、オフセット補正方法を説明するフローチャートである。
図4は、オフセット補正方法を説明するための図である。
以下では、干渉計本体30に戻る測定光Lmの強度が低くなった場合に、図4に示すように、A+,A−相信号Sa1,Sa2のオフセット電圧が変動し、かつ、その変動量が異なる場合を例に説明する。
また、以下では、図4に示すように、測定光Lmの強度が低くなった場合でのA+,A−相信号Sa1,Sa2の各振幅をそれぞれAm1,Am2、A+,A−相信号Sa1,Sa2のオフセット電圧の各変動量をそれぞれOs1,Os2(Os1及びOs2は異なる)とする。
【0030】
先ず、第1アンプ61は、A+,A−相信号Sa1,Sa2の差分を増幅し、信号Diを出力する(ステップST1:減算ステップ)。
ここで、第1アンプ61の出力信号Diは、以下の式(1)で表すことができる。
【0031】
〔数1〕

【0032】
また、第2アンプ62は、A+,A−相信号Sa1,Sa2を加算し、信号Ad(オフセット補正値)を出力する(ステップST2:加算ステップ)。
ここで、第2アンプ62の出力信号Adは、以下の式(2)で表すことができる。
【0033】
〔数2〕

【0034】
そして、A+,A−相信号Sa1,Sa2は振幅が等しい(Am1=Am2=Am)ため、式(1),(2)は、以下に示すように整理できる。
【0035】
〔数3〕

【0036】
ステップST2の後、第3アンプ63は、ゲイン設定値Gを用いて第2アンプ62の出力信号Ad(オフセット補正値)を調整し、信号Ad´を出力する(ステップST3)。
ここで、ゲイン設定値Gは、干渉計本体30に戻る測定光Lmの強度が低くなった場合でも、第4アンプ64の出力信号Anのオフセット電圧が変動しないように設定されたものである。
具体的に、第4アンプ64の出力信号Anは、以下の式(4)で表すことができる。
【0037】
〔数4〕
【0038】
そして、干渉計本体30に戻る測定光Lmの強度が低くなった場合でも、出力信号Anのオフセット電圧が変動しないようにするためには、式(4)の右辺の第2項が「0」となればよい。
すなわち、ゲイン設定値Gは、以下の式(5)のように、オフセット電圧の変動量Os1,Os2に依存した値に設定する必要がある。
【0039】
〔数5〕

【0040】
ステップST3の後、第4アンプ64は、第1アンプ61の出力信号Diと、第3アンプ63の出力信号Ad´との差分を演算し(式(4))、オフセット電圧が変動しない信号Anを出力する(ステップST4:オフセット補正ステップ)。
すなわち、第4アンプ64は、第3アンプ63にて調整された第2アンプ62の出力信号Adに基づいて、第1アンプ61の出力信号Diのオフセット電圧を補正している。
この後、第5アンプ65は、第4アンプ64の出力信号Anを調整して、信号処理装置50にて内挿分割処理が可能なA相信号Saを出力する。
【0041】
上述した第1実施形態によれば、以下の効果がある。
図5は、第1実施形態の効果を説明するための図である。
具体的に、図5は、実際にオフセット補正装置60を適用した場合と適用しない場合(従来の場合)とを比較したものであり、A相信号Saを横軸、B相信号Sbを縦軸としたリサージュ曲線(円の直径が振幅、中心がオフセット電圧になる)を示している。
なお、図5では、干渉計本体30に戻る測定光Lmの強度が高い状態で、A,B相信号Sa,Sbの振幅が1.0V、及びオフセット電圧が2.5Vとなるように調整されている。
本実施形態では、第1,第2補正装置60A,60Bは、第1,第2,第4アンプ61,62,64を備えるので、干渉計本体30に戻る測定光Lmの強度が低くなった場合でもオフセット電圧が変動しないA,B相信号Sa,Sbを生成できる。
【0042】
具体的には、図5に示すように、干渉計本体30に戻る測定光Lmの強度が高い状態では、オフセット補正装置60の適用の有無に拘らず、A,B相信号Sa,Sbのオフセット電圧が2.5Vとなっている。しかし、干渉計本体30に戻る測定光Lmの強度が低くなった状態では、オフセット補正装置60を適用した場合にはA,B相信号Sa,Sbのオフセット電圧が2.5Vと変化しないが、オフセット補正装置60を適用しない場合にはB相信号Sbのオフセット電圧が2.6Vに増加している。
そして、上述したA,B相信号Sa,Sbを用いれば、干渉計本体30に戻る測定光Lmの強度が低い場合であっても、信号処理装置50において、再帰反射体20(被測定物)の変位量を精度良く測定できる。
【0043】
また、第1補正装置60Aは、第3アンプ63を備える。
このことにより、第3アンプ63にて第2アンプ62の出力信号Adを調整し、当該調整した信号Ad´を用いて、オフセット補正ステップST4を実行すれば、第1アンプ61の出力信号Diに含まれるA+,A−相信号Sa1,Sa2のオフセット電圧の各変動量Os1,Os2を確実に打ち消すことができる。なお、第2補正装置60Bでも同様である。
【0044】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
なお、以下では、前記第1実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、その詳細な説明については省略する。
図6は、第2実施形態における第1補正装置60Aを示す模式図である。
本実施形態では、前記第1実施形態に対して、図6に示すように、第1補正装置60Aに反転手段としての第6アンプ66を追加している。また、具体的な図示は省略したが、第2補正装置60Bにも同様の第6アンプ66を追加している。その他の構成は、前記第1実施形態と同様のものである。
具体的に、第6アンプ66は、反転アンプで構成され、第3アンプ63の出力信号Ad´の極性を反転し、信号IAd´を出力する。
そして、第4アンプ64は、第1アンプ61の出力信号Diと、第6アンプ66の出力
信号IAd´との差分を演算し、信号Anを出力する。
【0045】
上述した第2実施形態によれば、前記第1実施形態と同様の効果の他、以下の効果がある。
ところで、干渉計本体30に戻る測定光Lmの強度が低くなった場合に、第1アンプ61の出力信号Diに含まれるオフセット電圧が+側に変動した状態では、オフセット補正ステップST4において、第1アンプ61の出力信号Diと第3アンプ63の出力信号Ad´とを単純に減算しても、第1アンプ61の出力信号Diに含まれるオフセット電圧の変動量を打ち消すことができない。
【0046】
そこで、本実施形態では、上記状態となるレーザ干渉計1において、第1,第2補正装置60A,60Bに第6アンプ66を設けたものである。
そして、第6アンプ66にて第3アンプ63の出力信号Ad´の極性を反転させ、オフ
セット補正ステップST4において、第1アンプ61の出力信号Diに対して、反転した
信号IAd´を減算(第4アンプ64で差分を演算)することで、第1アンプ61の出力信号Diに含まれるオフセット電圧の変動量を打ち消すことができる。なお、第2補正装置60Bも同様である。
【0047】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
前記各実施形態では、本発明に係る変位量測定装置をレーザ干渉計1で構成していたが、これに限らず、A+,A−,B+,B−相信号をそれぞれ出力する4つの受光素子を備えた構成であれば、例えば、リニアエンコーダやロータリーエンコーダ等の光学式エンコーダで構成しても構わない。
前記各実施形態では、第1,第2補正装置60A,60Bをアナログ回路で構成していたが、これに限らず、A/DコンバータやD/Aコンバータを設けて、ディジタル処理で前記各実施形態で説明したオフセット補正方法を実行する構成を採用しても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、レーザ干渉計や光学式エンコーダ等の変位量測定装置に利用できる。
【符号の説明】
【0049】
1・・・レーザ干渉計(変位量測定装置)
30A〜30D・・・PD(受光素子)
60A・・・第1補正装置(第1信号生成装置)
60B・・・第2補正装置(第2信号生成装置)
61・・・第1アンプ(減算手段)
62・・・第2アンプ(加算手段)
63・・・第3アンプ(調整手段)
64・・・第4アンプ(オフセット補正手段)
66・・・第6アンプ(反転手段)
ST1・・・減算ステップ
ST2・・・加算ステップ
ST4・・・オフセット補正ステップ
図1
図2
図3
図4
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図6
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図8
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図10