【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための本発明の手段は、Mo、WおよびNb添加型オーステナイト系耐熱鋼の化学成分を最適化することと、より高温下で鋼材を加熱保持、熱間加工し、鋼材中の化学組成を均質化することである。
【0010】
そこで、考慮すべき第1としては、合金組成中のB添加量である。一般的にBは、オーステナイト系耐熱鋼の高温強度と熱間加工延性の向上に有効な元素であるので、0.001%から0.005%程度、鋼材中に添加される。一方でBは、鉄クロムほう化物を生成させて鋼材のオーバーヒート温度を低下させるので、より高温での熱間加工が行えなくなり、鋼材組成の均質化をはかりにくくさせている。そこで、組成の均質化をはかるためには、B含有量を最小限に留めることが重要である。第2としては、熱間加工中の少量の未固溶炭窒化物である。少量の未固溶炭化物は、高温加熱時の結晶粒粗大化を抑制し、熱間加工性を悪化させずに熱間加工時の結晶粒の微細化に寄与し、拡散による均質化の効果を一層高める。そこで、熱間加工時の再結晶によるMo、WおよびNbの均質化を一層高めるために、熱間加工中にごく少量の未固溶Nb炭窒化物を存在させることが重要である。第3としては、鋼塊を1200℃以上1290℃以下で1時間以上加熱することで、鋼材中のMo、WおよびNbの自己拡散を高めて均質化することである。第4としては、鋼塊をより高温である1200℃以上で鍛錬比3以上の鍛造または圧延を行うことで、自己拡散効果に動的再結晶による拡散効果を加えて、鋼材中のMo、WおよびNbを飛躍的に均質化することである。
【0011】
すなわち、上記の手段における、請求項1の発明は、質量%で、C:0.02〜0.08%、Si:0.3超〜0.8%、Mn:0.6〜2.0%、P:≦0.040%、S:≦0.005%、Ni:15超〜26%、Cr:18〜23%、W:1.8〜4.2%、Mo:<0.5%、Nb:0.2〜0.5%、Al:0.001〜0.040%、N:0.07〜0.13%、B:<0.0010%を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなり、下記の(1)式、(2)式および(3)式を満足し、
700℃、10万時間時点におけるクリープ破断強度が110MPa以上であることからなる優れた高温強度を有するオーステナイト系耐熱鋼である。
0.05%≦Nb−0.031(C+N)
(-0.744Nb-0.772)≦0.15%……(1)
2.8%≦W+2Mo≦4.2%……(2)
7.0%≦Ni+27C+23N+0.2Mn+0.3Cu−1.2(Cr+Mo+0.5W)−0.5Si−0.3Nb+10%……(3)
【0012】
請求項2の発明は、質量%で、C:0.02〜0.08%、Si:0.3超〜0.8%、Mn:0.6〜2.0%、P:≦0.040%、S:≦0.005%、Ni:15超〜26%、Cr:18〜23%、W:1.8〜4.2%、Mo:<0.5%、Nb:0.2〜0.5%、Al:0.001〜0.040%、N:0.07〜0.13%、B:<0.0010%を含有し、さらに、Cu:2.0〜3.2%およびCa:0.001〜0.007%いずれか1種又は2種を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなり、下記の(1)式、(2)式および(3)式を満足し、
700℃、10万時間時点におけるクリープ破断強度が110MPa以上であることからなる優れた高温強度を有するオーステナイト系耐熱鋼である。
0.05%≦Nb−0.031(C+N)
(-0.744Nb-0.772)≦0.15%……(1)
2.8%≦W+2Mo≦4.2%……(2)
7.0%≦Ni+27C+23N+0.2Mn+0.3Cu−1.2(Cr+Mo+0.5W)−0.5Si−0.3Nb+10%……(3)
【0013】
請求項3の発明は、質量%で、C:0.02〜0.08%、Si:0.3超〜0.8%、Mn:0.6〜2.0%、P:≦0.040%、S:≦0.005%、Ni:15超〜26%、Cr:18〜23%、W:1.8〜4.2%、
Mo:<0.5%、Nb:0.2〜0.5%、Al:0.001〜0.040%、N:0.07〜0.13%、
B:<0.0010%を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなり、下記の(1)式、(2)式および(3)式を満足するオーステナイト系耐熱鋼の鋼塊を、1200℃以上の温度で1時間以上加熱した後、鍛練比3以上の鍛造または圧延により形成したビレットを用いて鋼材を製造することからなる優れた高温強度を有するオーステナイト系耐熱鋼の鋼材の製造方法である。
0.05%≦Nb−0.031(C+N)
(-0.744Nb-0.772)≦0.15%……(1)
2.8%≦W+2Mo≦4.2%……(2)
7.0%≦Ni+27C+23N+0.2Mn+0.3Cu−1.2(Cr+Mo+0.5W)−0.5Si−0.3Nb+10%……(3)
【0014】
請求項4の発明は、質量%で、C:0.02〜0.08%、Si:0.3超〜0.8%、Mn:0.6〜2.0%、P:≦0.040%、S:≦0.005%、Ni:15超〜26%、Cr:18〜23%、W:1.8〜4.2%、
Mo:<0.5%、Nb:0.2〜0.5%、Al:0.001〜0.040%、N:0.07〜0.13%、
B:<0.0010%を含有し、さらに、Cu:2.0〜3.2%およびCa:0.001〜0.007%いずれか1種又は2種を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなり、下記の(1)式、(2)式および(3)式を満足するオーステナイト系耐熱鋼の鋼塊を、1200℃以上の温度で1時間以上加熱した後、鍛練比3以上の鍛造または圧延により形成したビレットを用いて鋼材を製造することからなる優れた高温強度を有するオーステナイト系耐熱鋼の鋼材の製造方法である。
0.05%≦Nb−0.031(C+N)
(-0.744Nb-0.772)≦0.15%……(1)
2.8%≦W+2Mo≦4.2%……(2)
7.0%≦Ni+27C+23N+0.2Mn+0.3Cu−1.2(Cr+Mo+0.5W)−0.5Si−0.3Nb+10%……(3)
【0015】
上記の手段の鋼成分の限定理由および(1式)〜(3)式の限定理由について以下に説明する。なお、%は質量%である。
【0016】
C:0.02〜0.08%
Cは、高温強度向上のために0.02%以上必要である。しかし、Cが0.08%を超えると炭化物が多量に粒界に析出し、高温長時間経過後に靭性が著しく悪化する。そこで、Cは0.02〜0.08%とする。
【0017】
Si:0.3超〜0.8%
Siは、脱酸のために必要な元素で、そのために0.3%より多く必要である。しかし、Siが0.8%を超えると、σ相の粒界析出を促進し、高温長時間経過後に靭性が著しく悪化する。そこで、Siは0.3超〜0.8%とし、望ましくは0.3超〜0.6%とする。
【0018】
Mn:0.6〜2.0%
Mnは、脱酸のために必要な元素で、0.6%以上必要である。しかし、Mnが2.0%を超えると、過剰添加となり高コストとなる。そこで、Mnは0.6〜2.0%とする。
【0019】
P:≦0.040%
Pは、不可避不純物として含有される元素である。しかし、Pが0.040%より多く含有されると溶接性が著しく悪化する。そこで、Pは0.040%以下とする。
【0020】
S:≦0.005%
Sは、不可避不純物として含有される元素である。しかし、Sが0.005%より多く含有されると熱間加工性が悪化し、加工中の割れ発生を促進する。そこで、Sは0.005%以下とする。
【0021】
Ni:15超〜26%
Niは、オーステナイト組織を安定化するために必要な元素で、15%より多く必要である。しかし、Niが26%を超えると、過剰添加となり高コストとなる。そこで、Niは15超〜26%とする。
【0022】
Cr:18〜23%
Crは、優れた耐高温腐蝕性と耐水蒸気酸化性を確保するために必要な元素で、18%以上必要である。しかし、Crが23%を超えると、σ相の粒界析出を促進し、高温長時間経過後に靭性が著しく悪化する。そこで、Crは18〜23%とし、望ましくは19〜22%とする。
【0023】
W:1.8〜4.2%
Wは、高温強度向上のために1.8%以上必要な元素である。しかし、Wが4.2%を超えると、Laves相が粒界に析出するようになり、高温長時間経過後に靭性が著しく悪化する。そこで、Wは1.8〜4.2%とする。
【0024】
Mo:<0.5%
Moは、高温強度向上のために必要な元素である。しかし、Moが0.5%以上含有されるとLaves相が析出するようになり、高温長時間経過後に靭性が著しく悪化する。そこで、Moは0.5%未満とし、望ましくは0.3%以下とする。
【0025】
Nb:0.2〜0.5%
Nbは、高温強度向上のために0.2%以上必要な元素である。しかし、Nbが0.5%より多く含有されると熱間加工性が悪化し、加工中の割れを発生する。そこで、Nbは0.2〜0.5%とする。
【0026】
Al:0.001〜0.040%
Alは、脱酸のために必要な元素で、そのために0.001%以上必要である。しかし、Alが0.040%を超えると、粒界にAlNが生じて高温長時間経過後に靭性が著しく悪化する。そこで、Alは0.001〜0.040%とする。
【0027】
N:0.07〜0.13%
Nは、高温強度向上のために0.07%以上必要な元素である。しかし、Nが0.13%を超えると、Laves相の析出を促進させて高温長時間経過後に靭性が著しく悪化する。そこで、Nは0.07〜0.13%とする。
【0028】
B:<0.0010%
Bは、鋼材の熱間加工延性の向上に有効な元素である。しかし、Bが
0.0010%以上添加されると、鋼材のオーバーヒート温度が低下し、より高温で熱間加工ができなくなって、動的再結晶による均質化効果が得られなくなる。そこで、Bは
0.0010%未満とする。
【0029】
0.05%≦Nb−0.031(C+N)
(-0.744Nb-0.772)≦0.15%……(1)
(1)式は、材料の熱間加工中の動的再結晶を促進させ、材料中の元素組成を均質化し高温強度を向上させるために0.05%以上とする必要がある。しかし、(1)式が0.15%より多いと熱間加工性を悪化し、加工中に割れを発生する。そこで、(1)式は0.05〜0.15%とする。
【0030】
2.8%≦W+2Mo≦4.2%……(2)
(2)式は、材料の優れた高温強度を確保するために2.8%以上とする必要がある。しかし、(2)式が4.2%より多いと、Laves相が粒界に多量に析出するようになり、高温長時間経過後に靭性が著しく悪化する。そこで、(2)式は2.8〜4.2%とする。
【0031】
7.0%≦Ni+27C+23N+0.2Mn+0.3Cu−1.2(Cr+Mo+0.5W)−0.5Si−0.3Nb+10%……(3)
(3)式は、オーステナイト組織安定化に必要な条件式で、優れた高温強度を確保するために
7.0%以上とする必要がある。そこで、(3)式は
7.0%以上とする。