(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5930692
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】バイト切削装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20160526BHJP
B08B 3/04 20060101ALI20160526BHJP
B23D 5/02 20060101ALI20160526BHJP
B23Q 11/00 20060101ALI20160526BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
H01L21/304 642A
H01L21/304 643A
B08B3/04 Z
B23D5/02
B23Q11/00 N
H01L21/92 604Z
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-274007(P2011-274007)
(22)【出願日】2011年12月15日
(65)【公開番号】特開2013-125871(P2013-125871A)
(43)【公開日】2013年6月24日
【審査請求日】2014年11月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100142804
【弁理士】
【氏名又は名称】大上 寛
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 雅之
(72)【発明者】
【氏名】波岡 伸一
【審査官】
井上 弘亘
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−002117(JP,A)
【文献】
特開2007−059524(JP,A)
【文献】
特開2000−021828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B08B 3/04
B23D 5/02
B23Q 11/00
H01L 21/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物の第1面を保持して該第1面と反対側の第2面を露出させるチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物の第2面側を切削するバイト切削手段と、該バイト切削手段で該第2面側が切削された被加工物の該第1面側を保持する保持テーブルと該保持テーブルに保持された被加工物の該第2面側に洗浄液を供給する洗浄液供給手段とを有する第2面洗浄機構と、該バイト切削手段で切削された被加工物の該第1面を露出させた状態で該チャックテーブルから該第2面洗浄機構の該保持テーブルへと被加工物を搬送する搬送手段と、を備えたバイト切削装置であって、
該搬送手段が被加工物を該チャックテーブルから該保持テーブルへと搬送する搬送経路上に配設されて、該搬送手段に保持された被加工物の該第1面側に洗浄液を供給して該第1面側を洗浄する第1面洗浄手段を更に具備し、
該第1面洗浄手段は、該搬送手段に保持された被加工物に対面するよう該搬送経路上に配設された被加工物と略同径の洗浄プレートを有し、
該洗浄プレートの上面には該搬送手段に保持された被加工物に対向して被加工物の該第1面側に洗浄液を噴出する複数の洗浄液噴出口が形成されるとともに該洗浄プレートの上面外周縁には複数の該洗浄液噴出口を囲繞する環状外周壁が形成され、該環状外周壁と該洗浄プレートの上面とで洗浄液溜まり部を形成し、
該搬送手段に保持された被加工物の該第1面が該洗浄液溜まり部に溜まった洗浄液に当接することで被加工物の該第1面が洗浄されることを特徴とするバイト切削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイト切削後の被加工物を洗浄するスピンナ洗浄装置を備えたバイト切削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの軽薄短小化を実現するための技術には様々なものがある。一例として、半導体ウエーハに形成されたデバイス表面に10〜100μm程度の高さのバンプと呼ばれる金属突起物を複数形成し、これらのバンプを配線基板に形成された電極に相対させて直接接合するフリップチップボンディングと呼ばれる実装技術が実用化されている。
【0003】
フリップチップボンディングでは、半導体ウエーハの表面に形成された複数のバンプを所望の高さへ揃える必要がある。バンプを所望の高さへ揃える方法として、特開2009−172723号公報に記載されたようなバイト切削装置を使用して、所定高さに位置付けられたバイト工具を回転させつつ被加工物とバイト工具とを水平方向に相対移動させて被加工物をバイト工具で旋回切削する方法が実施されている。
【0004】
バイト切削装置では、加工品質を向上させるとともにバイト工具の切刃の消耗を抑えるために、切刃と被加工物が接触する加工点に純水等の流体を供給しつつ、切削を遂行している(特開2010−005721号公報参照)。
【0005】
バイト切削終了後のウエーハは、搬送機構により保持されてチャックテーブル上からスピンナ洗浄装置まで搬送され、スピンナ洗浄装置によりスピン洗浄されるとともにスピン乾燥される(例えば、特開2007−059524号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−005721号公報
【特許文献2】特開2007−059524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のバイト切削装置では、ウエーハ等の被加工物の加工が施された面(バイト切削された面)はスピンナ洗浄装置により洗浄が可能だったが、被加工物の加工が施された面と反対面を洗浄することができないという問題があった。
【0008】
加工で発生した加工屑が被加工物の加工が施された面と反対面に付着して被加工物を汚染する恐れがあるため、加工が施された面と反対面も洗浄可能なバイト切削装置が要望されている。
【0009】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、被加工物の切削加工が施された面を洗浄するとともに、切削加工が施された面と反対の面も洗浄することが可能なバイト切削装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によると、被加工物の第1面を保持して
該第1面と反対側の第2面を露出させるチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物の第2面側を切削するバイト切削手段と、該バイト切削手段で該第2面側が切削された被加工物の該第1面側を保持する保持テーブルと該保持テーブルに保持された被加工物の該第2面側に洗浄液を供給する洗浄液供給手段とを有する第2面洗浄機構と、該バイト切削手段で切削された被加工物の該第1面を露出させた状態で該チャックテーブルから該第2面洗浄機構の該保持テーブルへと被加工物を搬送する搬送手段と、を備えたバイト切削装置であって、該搬送手段が被加工物を該チャックテーブルから該保持テーブルへと搬送する搬送経路上に配設されて、該搬送手段に保持された被加工物の該第1面側に洗浄液を供給して該第1面側を洗浄する第1面洗浄手段を更に具備し、該第1面洗浄手段は、該搬送手段に保持された被加工物に対面するよう該搬送経路上に配設された被加工物と略同径の洗浄プレートを有し、該洗浄プレートの上面には該搬送手段に保持された被加工物に対向して被加工物の該第1面側に洗浄液を噴出する複数の洗浄液噴出口が形成されるとともに該洗浄プレートの上面外周縁には複数の該洗浄液噴出口を囲繞する環状外周壁が形成され、該環状外周壁と該洗浄プレートの上面とで洗浄液溜まり部を形成し、該搬送手段に保持された被加工物の該第1面が該洗浄液溜まり部に溜まった洗浄液に当接することで被加工物の該第1面が洗浄されることを特徴とするバイト切削装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明のバイト切削装置によると、洗浄液溜まり部に溜められた洗浄液に被加工物の加工が施された面と反対面を当接させて洗浄するので、被加工物の両面を洗浄できるとともに、切削加工が施されて薄化した被加工物でも破損する恐れなく洗浄を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明実施形態に係るバイト切削装置の斜視図である。
【
図3】被加工物の第1面を洗浄している様子を示す第1面洗浄ユニットの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1を参照すると、本発明実施形態に係るバイト切削装置2の斜視図が示されている。4はバイト切削装置2のハウジングであり、水平ハウジング6の後方にコラム8が立設されている。
【0014】
コラム8には上下方向に伸びる一対のガイドレール12,14が固定されている。この一対のガイドレール12,14に沿ってバイト切削ユニット16が上下方向に移動可能に装着されている。バイト切削ユニット16は、支持部20を介して一対のガイドレール12,14に沿って上下方向に移動する移動基台18に取り付けられている。
【0015】
バイト切削ユニット16は、支持部20に取り付けられたハウジング22と、ハウジング22中に回転可能に収容されたスピンドル24と、スピンドル24を回転駆動するサーボモータ26を含んでいる。
【0016】
スピンドル24の先端部にはホイールマウント28が固定されており、このホイールマウント28にはバイトホイール30が複数のねじにより着脱可能に装着されている。バイトホイール30には先端に切刃を有するバイト工具32が着脱可能に取り付けられている。
【0017】
バイト切削ユニット16は、バイト切削ユニット16を一対の案内レール12,14に沿って上下方向に移動するバイト切削ユニット送り機構(切り込み手段)34を備えている。
【0018】
バイト切削ユニット送り機構34は、ボールねじ36と、ボールねじ36の一端部に固定されたパルスモータ38と、移動基台18に配設されたボールねじ36に螺合するナットとから構成される。パルスモータ38をパルス駆動すると、ボールねじ36が回転し、移動基台18が上下方向に移動される。
【0019】
水平ハウジング部分6の凹部10には、チャックテーブルユニット40が配設されている。チャックテーブルユニット40はチャックテーブル42を含んでおり、チャックテーブル42は図示しない水平移動機構(チャックテーブル移動機構)により装置の前後方向、即ちY軸方向に移動される。
【0020】
換言すると、チャックテーブル42はバイト切削ユニット16に対して接近及び離反する方向に水平移動機構により直線移動される。チャックテーブル42は、ポーラスセラミックス等から形成された吸引保持面42aを有している。
【0021】
チャックテーブル機構40は、水平移動機構の移動経路を覆う保護カバー機構45を備えている。保護カバー機構45は、チャックテーブル42の吸引保持面42aを露出させてチャックテーブル42を囲繞する上面を有するチャックテーブルカバー44と、チャックテーブルカバー44の両端に配設された蛇腹46,48とから構成される。
【0022】
蛇腹46の前端は凹部10を画成する前壁に固定され、後端がチャックテーブルカバー44の前端面に固定されている。また、蛇腹48の後端はコラム8に固定され、その前端はチャックテーブルカバー44の後端面に固定されている。
【0023】
ハウジング4の水平ハウジング部分6には、切削前のウエーハを収容するカセット52と、切削加工後のウエーハを収容するカセット54と、ウエーハ搬送ロボット56と、複数の位置決めピン58を有する位置決め機構60と、ウエーハ搬入機構(ローディングアーム)62と、ウエーハ搬出機構(アンローディングアーム)64と、スピンナテーブル66を有するスピンナ洗浄ユニット68と、オペレータが切削条件等を入力する操作パネル70が設けられている。
【0024】
また、ハウジング4の凹部10には、バイト切削ユニット16による被加工物の切削屑を含んだ切削水を排水する排水口72が設けられている。更に、ウエーハ搬出機構64がチャックテーブル42からウエーハをスピンナ洗浄ユニット68へと搬送する搬送経路上には、ウエーハの切削加工面(第2面)と反対側の面(第1面)に洗浄液を供給して該第1面を洗浄する第1面洗浄機構74が配設されている。
【0025】
第1面洗浄機構74は、
図2の縦断面図に示すように、ウエーハ搬出機構64で保持されたウエーハに対面するように搬送経路上に配設されたウエーハ11と概略同径の洗浄プレート76を含んでいる。
【0026】
洗浄プレート76の上面76aには、
図3に示すように、ウエーハ搬出機構64で保持されたウエーハ11に対向してウエーハ11の第1面11a側に洗浄液を噴出する複数の洗浄液噴出口8
0が形成されている。各洗浄液噴出口80は洗浄液供給路81を介して洗浄液供給源84に接続されている。
【0027】
更に、洗浄プレート76の上面外周縁には複数の洗浄液噴出口80を囲繞する環状外周壁82が形成されており、環状外周壁82と洗浄プレート76の上面76aとで洗浄液溜まり部86となる円形凹部78を形成する。洗浄液としては、純水又は純水に炭酸ガスを吹き込んだ混合流体が使用される。
【0028】
チャックテーブル42に保持されたウエーハ11の切削加工では、バイトホイール30を
図1で時計回り方向に約2000rpmで回転させつつバイト切削ユニット送り機構(切り込み手段)34を駆動してバイト工具32の切刃をウエーハ11の上面(第2面)11bに所定深さ切り込ませる。
【0029】
そして、チャックテーブル42をY軸方向に例えば1mm/sの送り速度で移動させながら、ウエーハ11を旋回切削する。この旋回切削時には、チャックテーブル42は回転させずにY軸方向に加工送りする。
【0030】
ウエーハ11の第2面11bの切削加工が終了すると、水平移動機構(チャックテーブル移動機構)によりチャックテーブル42を装置手前側のウエーハ搬入・搬出位置に移動させた後、ウエーハ搬出機構64でウエーハ11の第2面11b側を吸着し、ウエーハ搬出機構64のアームを回動することにより、
図3に示すように、洗浄液溜まり部86に溜められた洗浄液88にウエーハ11の切削加工が施された第2面11bと反対側の第1面11aを当接させ、この状態でウエーハ11をしばらく保持してウエーハ11の第1面11aを洗浄する。
【0031】
このように洗浄液溜まり部86中に溜められた洗浄液88でウエーハ11の第1面11a側を洗浄するので、例えばバイト切削加工の前に研削加工が施されて薄化したウエーハ11でも、洗浄液の噴出圧によって破損する恐れなくウエーハ11の第1面11a側を洗浄することができる。
【0032】
ウエーハ11の第1面11aの洗浄終了後、ウエーハ搬出機構64のアームを更に回動することによりウエーハ11をスピンナ洗浄ユニット68のスピンナテーブル66まで搬送し、スピンナテーブル66でウエーハ11の第1面11a側を吸引保持しながらウエーハ11の第2面11b側をスピン洗浄するとともにスピン乾燥する。スピン乾燥の終了したウエーハ11は、ウエーハ搬送ロボット56で吸着されてカセット54中に収容される。
【0033】
上述した実施形態では、第1面洗浄ユニット74でウエーハ11の第1面11a側を洗浄する例について説明したが、被加工物はウエーハに限定されるものではなく、ガラス基板、サファイア基板、樹脂封止されたパッケージ基板等の他の被加工物も含むものである。
【符号の説明】
【0034】
2 バイト切削装置
10 バイト切削ユニット
11 ウエーハ
11a 第1面
11b 第2面
30 バイトホイール
32 バイト工具
42 チャックテーブル
64 ウエーハ搬出機構(アンローディングアーム)
68 スピンナ洗浄ユニット
74 第1面洗浄ユニット
76 洗浄プレート
78 円形凹部
82 環状外周壁
86 洗浄液溜まり部