(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ウエーハを保持する保持面を備えたチャックテーブルと、該チャックテーブルの保持面に保持されたウエーハを研磨する研磨パッドおよび該研磨パッドを回転駆動する電動モータを備えた研磨手段と、該研磨手段の該研磨パッドによる加工領域に研磨液を供給する研磨液供給手段と、該研磨手段をチャックテーブルの保持面に対して垂直な方向に研磨送りする研磨送り手段と、チャックテーブルの保持面に保持されたウエーハに作用する研磨パッドによる研磨荷重を検出するための研磨荷重検出手段と、該研磨パッドを回転駆動する電動モータに供給する電力の負荷電流値を検出する負荷電流値検出手段と、該研磨荷重検出手段および該負荷電流値検出手段からの検出信号に基づいて該研磨送り手段を制御する制御手段と、を具備する研磨装置において、
ウエーハを保持したチャックテーブルを回転するとともに、研磨パッドを回転しつつ研磨送りして研磨液を供給しながら研磨パッドをチャックテーブルに保持されたウエーハの上面に接触させてウエーハを研磨する際に該制御手段は、該研磨荷重検出手段からの検出信号に基づいて研磨パッドによる研磨荷重が所定値になるように該研磨送り手段を制御し、該研磨荷重が所定値に達した後に該負荷電流値検出手段からの検出信号に基づいて該電動モータに供給する電力の負荷電流値が所定値に達してから所定時間経過したら該研磨送り手段を制御して研磨パッドによる研磨荷重を開放する、
ことを特徴とする研磨装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
而して、SOIウエーハにおけるシリコン層の厚みが分かっている場合でも、ウエーハの全面を覆うように研磨パッドをシリコン層に押し当てて研磨する研磨方法においては、シリコン層の厚みを測定することができず、シリコン層を所定の厚みに形成することは困難である。
このような問題は、デバイスの表面から裏面に向けて電極が埋設されたTSVウエーハにおいて、ウエーハの裏面を研磨して電極が裏面に露出する1μm程度手前で研磨を終了させる加工においても生じうる。
【0007】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術課題は、ウエーハの厚みを確実に所望の厚みに形成することができる研磨装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、ウエーハを保持する保持面を備えたチャックテーブルと、該チャックテーブルの保持面に保持されたウエーハを研磨する研磨パッドおよび該研磨パッドを回転駆動する電動モータを備えた研磨手段と、該研磨手段の該研磨パッドによる加工領域に研磨液を供給する研磨液供給手段と、該研磨手段をチャックテーブルの保持面に対して垂直な方向に研磨送りする研磨送り手段と、チャックテーブルの保持面に保持されたウエーハに作用する研磨パッドによる研磨荷重を検出するための研磨荷重検出手段と、該研磨パッドを回転駆動する電動モータに供給する電力の負荷電流値を検出する負荷電流値検出手段と、該研磨荷重検出手段および該負荷電流値検出手段からの検出信号に基づいて該研磨送り手段を制御する制御手段と、を具備する研磨装置において、
ウエーハを保持したチャックテーブルを回転するとともに、研磨パッドを回転しつつ研磨送りして研磨液を供給しながら研磨パッドをチャックテーブルに保持されたウエーハの上面に接触させてウエーハを研磨する際に該制御手段は、該研磨荷重検出手段からの検出信号に基づいて研磨パッドによる研磨荷重が所定値になるように該研磨送り手段を制御し、該研磨荷重が所定値に達した後に該負荷電流値検出手段からの検出信号に基づいて該電動モータに供給する電力の負荷電流値が所定値に達してから所定時間経過したら該研磨送り手段を制御して研磨パッドによる研磨荷重を開放する、
ことを特徴とする研磨装置が提供される。
【0009】
上記制御手段は、負荷電流値が所定の閾値に達した際に負荷電流値が所定値に達したと判定する。
また、制御手段は、単位時間当たりに対する負荷電流値の変化量が所定の閾値に達した際に負荷電流値が所定値に達したと判定する。
【発明の効果】
【0010】
本発明による研磨装置は、ウエーハを保持したチャックテーブルを回転するとともに、研磨パッドを回転しつつ研磨送りして研磨液を供給しながら研磨パッドをチャックテーブルに保持されたウエーハの上面に接触させてウエーハを研磨する際に制御手段は、研磨荷重検出手段からの検出信号に基づいて研磨パッドによる研磨荷重が所定値になるように研磨送り手段を制御し、研磨荷重が所定値に達した後に負荷電流値検出手段からの検出信号に基づいて電動モータに供給する電力の負荷電流値が所定値に達してから所定時間経過したら研磨送り手段を制御して研磨パッドによる研磨荷重を開放するので、ウエーハの厚みを確実に所望の厚みに形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明によるウエーハの研磨方法および研磨装置の好適な実施形態について、添付図面を参照して更に詳細に説明する。
【0013】
図1には本発明によるウエーハの研磨方法を実施するための研磨装置の斜視図が示されている。
図1に示す研磨装置1は、全体を番号2で示す装置ハウジングを具備している。装置ハウジング2は、細長く延在する直方体形状の主部21と、該主部21の後端部(
図1において右上端)に設けられ上下方向に配設された直立壁22とを有している。直立壁22の前面には、上下方向に延びる一対の案内レール221、221が設けられている。この一対の案内レール221、221に研磨手段としての研磨ユニット3が上下方向に移動可能に装着されている。
【0014】
研磨ユニット3は、移動基台31と該移動基台31に装着されたスピンドルユニット32を具備している。移動基台31は、後面両側に上下方向に延びる一対の脚部311、311が設けられており、この一対の脚部311、311に上記一対の案内レール221、221と摺動可能に係合する被案内溝312、312が形成されている。このように直立壁22に設けられた一対の案内レール221、221に摺動可能に装着された移動基台31の前面には前方に突出した支持部313が設けられている。この支持部313にスピンドルユニット32が取り付けられる。
【0015】
スピンドルユニット32は、支持部313に装着されたスピンドルハウジング321と、該スピンドルハウジング321に回転自在に配設された回転スピンドル322と、該回転スピンドル322を回転駆動するための回転駆動手段としての電動モータであるサーボモータ323とを具備している。回転スピンドル322の下端部はスピンドルハウジング321の下端を越えて下方に突出せしめられており、その下端には円板形状の工具装着部材324が設けられている。なお、工具装着部材324には、周方向に間隔をおいて複数のボルト挿通孔(図示していない)が形成されている。この工具装着部材324の下面に研磨工具325が装着される。研磨工具325は、
図2および
図3に図示すように円形状の支持部材326と円形状の研磨パッド327とから構成されている。支持部材326はアルミ合金によって形成されており、
図2に示すように中心部には内径が10mm程度の研磨液が通る穴326aが形成されている。また、支持部材326には、周方向に間隔をおいてその上面から下方に延びる複数の盲ねじ穴326bが形成されている。支持部材326の下面は円形状の支持面を構成しており、研磨パッド327が両面接着テープによって装着されている。
【0016】
上記支持部材326の下面に装着される研磨パッド327は、フェルトをウレタンで固めて直径が450mmの円形状に形成されており、
図3に示すように中心部には内径が10mm程度の研磨液が通る穴327aが形成されている。また、研磨パッド327の下面(研磨面)には格子状に形成された複数の溝327bが設けられている。この複数の溝327bは、図示の実施形態においては幅が4mm、深さが3mmで18mmの間隔で形成されている。このように構成された研磨工具325は、上記回転スピンドル322の下端に固定されている工具装着部材324の下面に位置付け、工具装着部材324に形成されている貫通孔を通して研磨工具325の支持部材326に形成されている盲ねじ孔326bに締結ボルト328(
図1参照)を螺着することによって、工具装着部材324に装着される。なお、このようにして工具装着部材324に装着された研磨工具325の研磨パッド327に設けられた穴327aは、支持部材326に設けられた穴326aを介して
図1に示すように回転スピンドル322に形成された研磨液供給通路322aに連通されている。この研磨液供給通路322aは、研磨液供給手段33に接続されている。従って、研磨液供給手段33が作動すると、研磨液供給通路322aおよび支持部材326に設けられた穴326aを介して研磨パッド327に設けられた穴327aに研磨砥粒が混入された研磨液が供給される。なお、研磨液としては、コロイダルシリカと水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)や水酸化カリウム(KOH)等のアルカリ溶液とヘキサエチレンセルロース等の親水化処理薬を混合した研磨液を用いることができる。
【0017】
図1に戻って説明を続けると、図示の実施形態における研磨装置1は、スピンドルユニット32を構成する電動モータであるサーボモータ323に供給する電力の負荷電流値を検出する負荷電流値検出手段34を具備している。この負荷電流値検出手段34は、検出信号を後述する制御手段に送る。
【0018】
図1を参照して説明を続けると、図示の実施形態における研磨装置1は、上記研磨ユニット3を上記一対の案内レール221、221に沿って上下方向(後述するチャックテーブルの保持面と垂直な方向)に移動せしめる研磨送り手段4を備えている。この研磨送り手段4は、直立壁22の前側に配設され上下方向に延びる雄ねじロッド41を具備している。この雄ねじロッド41は、その上端部および下端部が直立壁22に取り付けられた軸受部材42および43によって回転自在に支持されている。上側の軸受部材42には雄ねじロッド41を回転駆動するための駆動源としてのパルスモータ44が配設されており、このパルスモータ44の出力軸が雄ねじロッド41に伝動連結されている。移動基台31の後面にはその幅方向中央部から後方に突出する連結部(図示していない)が形成されており、この連結部には上下方向に延びる貫通雌ねじ穴が形成されており、この雌ねじ穴に上記雄ねじロッド41が螺合せしめられている。従って、パルスモータ44が正転すると移動基台31即ち研磨ユニット3が下降即ち前進せしめられ、パルスモータ44が逆転すると移動基台31即ち研磨ユニット3が上昇即ち後退せしめられる。
【0019】
図1および
図4を参照して説明を続けると、装置ハウジング2の主部21にはチャックテーブル機構5が配設されている。チャックテーブル機構5は、支持基台51と該支持基台51に配設されたチャックテーブル52とを含んでいる。支持基台51は、上記装置ハウジング2の主部21上に前後方向(直立壁22の前面に垂直な方向)である矢印23aおよび23bで示す方向に延在する一対の案内レール23、23上に摺動自在に載置されており、後述するチャックテーブル機構移動手段56によって
図1に示す被加工物搬入・搬出域24(
図4において実線で示す位置)と上記スピンドルユニット32を構成する研磨工具325の研磨パッド327と対向する研磨域25(
図4において2点鎖線で示す位置)との間で移動せしめられる。
【0020】
上記チャックテーブル52は、多孔質セラミッックスの如き適宜の多孔性材料から構成されており、図示しない吸引手段に接続されている。従って、チャックテーブル52を図示しない吸引手段に選択的に連通することにより、上面である保持面上に載置された被加工物を吸引保持する。なお、チャックテーブル52は、図示の実施形態においては直径が300mmのウエーハを保持する大きさに構成されている。また、チャックテーブル52は、上記支持基台51に回転可能に支持されている。このチャックテーブル52は、その下端に装着された回転軸(図示せず)に連結された回転駆動手段としてのサーボモータ53によって回転せしめられる。なお、図示のチャックテーブル機構5はチャックテーブル52を挿通する穴を有し上記支持基台51等を覆うカバー部材54を備えており、このカバー部材54は支持基台51とともに移動可能に構成されている。以上のように構成されたチャックテーブル52には、
図4に示すようにチャックテーブル52に保持された被加工物に作用する研磨荷重を検出するための研磨荷重検出手段520が配設されている。この研磨荷重検出手段520は、検出信号を後述する制御手段に送る。
【0021】
図4を参照して説明を続けると、図示の実施形態における研磨装置は、上記チャックテーブル機構5を一対の案内レール23に沿ってチャックテーブル52の上面である保持面と平行に矢印23aおよび23bで示す方向に移動せしめるチャックテーブル機構移動手段56を具備している。チャックテーブル機構移動手段56は、一対の案内レール23、23間に配設され案内レール23、23と平行に延びる雄ねじロッド561と、該雄ねじロッド561を回転駆動するサーボモータ562を具備している。雄ねじロッド561は、上記支持基台51に設けられたねじ穴511と螺合して、その先端部が一対の案内レール23、23を連結して取り付けられた軸受部材563によって回転自在に支持されている。サーボモータ562は、その駆動軸が雄ねじロッド561の基端と伝動連結されている。従って、サーボモータ562が正転すると支持基台51即ちチャックテーブル機構5が矢印23aで示す方向に移動し、サーボモータ562が逆転すると支持基台51即ちチャックテーブル機構5が矢印23bで示す方向に移動せしめられる。矢印23aおよび23bで示す方向に移動せしめられるチャックテーブル機構5は、
図4において実線で示す被加工物搬入・搬出域と2点鎖線で示す研磨域に選択的に位置付けられる。
【0022】
図1に戻って説明を続けると、上記チャックテーブル機構5を構成する支持基台51の移動方向両側には、
図1に示すように横断面形状が逆チャンネル形状であって、上記一対の案内レール23、23や雄ねじロッド561およびサーボモータ562等を覆っている蛇腹手段6および7が付設されている。蛇腹手段6および7はキャンパス布の如き適宜の材料から形成することができる。蛇腹手段6の前端はハウジング2を構成する主部21の後半部の前面壁に固定され、後端はチャックテーブル機構5の支持基台51の前端面に固定されている。蛇腹手段7の前端はチャックテーブル機構5の支持基台51の後端面に固定され、後端は装置ハウジング2の直立壁22の前面に固定されている。チャックテーブル機構5が矢印23aで示す方向に移動せしめられる際には蛇腹手段6が伸張されて蛇腹手段7が収縮され、チャックテーブル機構5が矢印23bで示す方向に移動せしめられる際には蛇腹手段6が収縮されて蛇腹手段7が伸張せしめられる。
【0023】
図1に基づいて説明を続けると、装置ハウジング2の主部21における前半部上には、第1のカセット11と、第2のカセット12と、被加工物仮載置手段13と、洗浄手段14と、被加工物搬送手段15と、被加工物搬入手段16および被加工物搬出手段17が配設されている。第1のカセット11は研磨加工前の被加工物を収納し、装置ハウジング2の主部21におけるカセット搬入域に載置される。第2のカセット12は装置ハウジング2の主部21におけるカセット搬出域に載置され、研磨加工後の被加工物を収納する。被加工物仮載置手段13は第1のカセット11と被加工物搬入・搬出域24との間に配設され、研磨加工前の被加工物を仮載置する。洗浄手段14は被加工物搬入・搬出域24と第2のカセット12との間に配設され、研磨加工後の被加工物を洗浄する。被加工物搬送手段15は第1のカセット11と第2のカセット12との間に配設され、第1のカセット11内に収納された被加工物を被加工物仮載置手段13に搬出するとともに洗浄手段14で洗浄された被加工物を第2のカセット12に搬送する。被加工物搬入手段16は被加工物仮載置手段13と被加工物搬入・搬出域24との間に配設され、被加工物仮載置手段13上に載置された研磨加工前の被加工物を被加工物搬入・搬出域24に位置付けられたチャックテーブル機構5のチャックテーブル52上に搬送する。被加工物搬出手段17は被加工物搬入・搬出域24と洗浄手段14との間に配設され、被加工物搬入・搬出域24に位置付けられたチャックテーブル52上に載置されている研磨加工後の被加工物を洗浄手段14に搬送する。また、図示の実施形態における研磨装置は、装置ハウジング2の主部21における中央部に上記チャックテーブル52の保持面を洗浄する洗浄水噴射ノズル18を備えている。この洗浄水噴射ノズル18は、チャックテーブル機構5が被加工物搬入・搬出域24に位置付けられた状態において、チャックテーブル52に向けて洗浄水を噴出する。
【0024】
被加工物を収容した第1のカセット11は、装置ハウジング2の主部21における所定のカセット搬入域に載置される。そして、カセット搬入域に載置された第1のカセット11に収容されていた研磨加工前の被加工物が全て搬出されると、空のカセット11に代えて複数個の被加工物を収容した新しいカセット11が手動でカセット搬入域に載置される。一方、装置ハウジング2の主部21における所定のカセット搬出域に載置された第2のカセット12に所定数の研磨加工後の被加工物が搬入されると、第2のカセット12が手動で搬出され、新しい空の第2のカセット12が載置される。
【0025】
図示の実施形態における研磨装置1は、
図5に示す制御手段8を具備している。制御手段8はコンピュータによって構成されており、制御プログラムに従って演算処理する中央処理装置(CPU)81と、制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)82と、演算結果等を格納する読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)83と、タイマー84と、入力インターフェース85および出力インターフェース86とを備えている。このように構成された制御手段8の入力インターフェース85には、上記負荷電流値検出手段34、研磨荷重検出手段520等からの検出信号が入力される。また、出力インターフェース86からは上記回転スピンドル322を回転駆動するための電動モータであるサーボモータ323、研磨液供給手段33、研磨送り手段4のパルスモータ44、チャックテーブル52を回転駆動するための電動モータ53、チャックテーブル機構移動手段56のサーボモータ562等に制御信号を出力する。
【0026】
図示の実施形態における研磨装置1は以上のように構成されており、以下その作用について説明する。
図6の(a)および(b)には、被加工物としてのSOIウエーハの斜視図および要部拡大側面図が示されている。
図6の(a)および(b)に示すSOIウエーハ10は、シリコン基板101の上面に二酸化珪素からなる絶縁層102が積層され、この絶縁層102の上面にシリコン層103が積層された構造を有している。このように構成されたSOIウエーハ10は、シリコン基板101の厚み(t1)が例えば300μm、絶縁層102の厚み(t2)が例えば10μm、シリコン層103の厚み(t3)が例えば200μmに形成されている。このように構成されたSOIウエーハ10のシリコン層103の厚みを所定の厚みに形成する方法について説明する。
【0027】
上記SOIウエーハ10のシリコン層103の厚みを所定の厚み(例えば50μm)に形成するには、SOIウエーハ10のシリコン層103を例えば147μm研削して、
図7に示すようにシリコン層103の厚み(t31)を例えば53μmに形成する。このようにシリコン層103の厚みが所定の厚み(t31)(例えば53μm)に形成されたSOIウエーハ10は、上記
図1に示す研磨装置1の第1のカセット11にシリコン層103を上側にして収容される。
【0028】
第1のカセット11に収容された研磨加工前のSOIウエーハ10は被加工物搬送手段15の上下動作および進退動作により搬送され、被加工物仮載置手段13に載置される。被加工物仮載置手段13に載置されたSOIウエーハ10は、ここで中心合わせが行われた後に被加工物搬入手段16の旋回動作によって被加工物搬入・搬出域24に位置せしめられているチャックテーブル機構5のチャックテーブル52上に載置される。チャックテーブル52上に載置されたSOIウエーハ10は、図示しない吸引手段を作動することによってチャックテーブル52上に吸引保持される(ウエーハ保持工程)。
【0029】
チャックテーブル52上にSOIウエーハ10を吸引保持したならば、制御手段8はチャックテーブル機構移動手段56を作動してチャックテーブル52を矢印23aで示す方向に移動し、チャックテーブル52を研磨域25に位置付ける。このようにチャックテーブル52が研磨域25に位置付けられると、
図8に示すようにチャックテーブル52に保持されたSOIウエーハ10が研磨パッド327の直下に位置付けられ、SOIウエーハ10の全面が研磨パッド327に覆われた状態となる(ウエーハ位置付け工程)。
【0030】
次に、制御手段8は研磨液供給手段33を作動し、回転スピンドル322に形成された研磨液供給通路322aおよび支持部材326に設けられた穴326aを介して研磨パッド327に設けられた穴327aに上述した研磨液を300〜700ミリリットル/分の流量で供給する。そして、制御手段8はSOIウエーハ10を保持したチャックテーブル52を
図9において矢印52aで示す方向に例えば200rpmの回転速度で回転し、上記サーボモータ323を駆動して研磨工具325を
図9において矢印325aで示す方向に例えば1000rpmで回転するとともに、上記研磨送り手段4のパルスモータ44を正転駆動して研磨ユニット3を下降即ち前進せしめ、研磨工具325の研磨パッド327をチャックテーブル52上のSOIウエーハ10のシリコン層103の上面に所定の研磨荷重で押圧する。このようにして、研磨パッド327をチャックテーブル52に保持されたSOIウエーハ10のシリコン層103の上面に接触させてシリコン層103を研磨する際に、制御手段8は研磨送り手段4を次のように制御する。
【0031】
制御手段8には、上記負荷電流値検出手段34および研磨荷重検出手段520からそれぞれ検出信号が入力されている。制御手段8は、研磨荷重検出手段520からの検出信号に基づいて、研磨パッド327による研磨荷重が所定値(例えば2kN)になるように研磨送り手段4のパルスモータ44を制御する。そして制御手段8は、研磨荷重検出手段520から入力された研磨荷重が所定値(例えば2kN)に達した後、負荷電流値検出手段34からの検出信号に基づいて上記回転スピンドル322を回転駆動するためのサーボモータ323に供給する電力の負荷電流値が所定の閾値(例えば24A)に達してからシリコン層103を3μm研磨するに必要な所定時間(例えば230秒)経過したら研磨送り手段4のパルスモータ44を逆転駆動して研磨ユニット3を上昇即ち後退せしめて研磨荷重を開放する(研磨工程)。なお、サーボモータ323に供給する電力の負荷電流値が所定の閾値(例えば24A)に達してからシリコン層103を3μm研磨するに必要な所定時間(例えば230秒)は実験によって求められ、制御手段8のランダムアクセスメモリ(RAM)83に格納されている。このような制御における研磨荷重と負荷電流値との関係について、
図10を参照して説明する。
【0032】
図10において、横軸は研磨時間(秒)、縦軸右側は研磨荷重(kN)、縦軸左側は負荷電流値(A)を示している。上述したようにチャックテーブル52を回転するサーボモータ53を作動し研磨工具325を回転するサーボモータ323を駆動するとともに、研磨送り手段4のパルスモータ44を正転駆動すると、研磨荷重検出手段520からの検出信号である研磨荷重は、研磨パッド327がSOIウエーハ10のシリコン層103の上面に接触し始める研磨開始より15秒程度後から徐々に上昇し、研磨開始から70秒程度後には2kNに達する。一方、回転スピンドル322を回転駆動するためのサーボモータ323に供給する電力の負荷電流値は、サーボモータ323を駆動すると同時に20Aとなり、研磨荷重が2kNに近づく研磨開始より50秒程度後から急激に増加し、研磨開始から60秒程度後に23Aとなる。しかるに、サーボモータ323に供給する電力の負荷電流値は、研磨荷重が所定値である2kNに達しても直ちに所定の閾値(例えば24A)に達しない。そして、研磨開始より90秒程度後からサーボモータ323に供給する電力の負荷電流値が急激に上昇し、研磨開始より100秒程度後に所定の閾値(例えば24A)に達する。上記のように研磨荷重が所定値である2kNに達してもサーボモータ323に供給する電力の負荷電流値が直ちに所定の閾値(例えば24A)に達しないのは、研磨荷重が所定値である2kNに達しても研磨パッド327とシリコン層103の上面との間で滑りが生じて適正な研磨作用が行われていないためである。従って、研磨荷重が所定値である2kNに達した時点でシリコン層103を3μm研磨するに必要な所定時間(例えば230秒)のカウントを開始すると、上記滑りの時間だけ研磨量が不足する。そこで、本発明においてはサーボモータ323に供給する電力の負荷電流値が所定の閾値(例えば24A)に達した時点(研磨開始から100秒程度後)で、制御手段8はタイマー84のカウントを開始する。そして、制御手段8は、タイマー84によるカウントがシリコン層103を3μm研磨するに必要な所定時間(例えば230秒)に達したら研磨送り手段4のパルスモータ44を逆転駆動して研磨ユニット3を上昇即ち後退せしめて研磨荷重を開放する。この結果、シリコン層103は適正な研磨作用が実行されてから所定時間(例えば230秒)研磨されるため、確実に3μm研磨される。従って、
図11に示すようにシリコン層103の厚み(t32)は図示の実施形態においては設定された所定の厚み(例えば50μm)となる。
【0033】
上述した実施形態においては、研磨荷重検出手段520から入力された研磨荷重が所定値(例えば2kN)に達した後、サーボモータ323に供給する電力の負荷電流値が所定値に達したことを、負荷電流値検出手段34からの検出信号が所定の閾値(例えば24A)に達したか否かによって判定した例を示したが、負荷電流値検出手段34からの検出信号に基づく負荷電流値の単位時間当たりに対する上昇量即ち変化量(微分値)が所定の閾値(例えば0.1秒間に0.3A)に達した際に負荷電流値が所定値に達したと判定してもよい。
【0034】
上記のようにして、研磨作業が終了したら、研磨工具325の回転を停止し、更に、チャックテーブル52の回転を停止する。次に、チャックテーブル機構5は、矢印23bで示す方向に移動されて被加工物搬入・搬出域24に位置付けられる。チャックテーブル機構5が被加工物搬入・搬出域24に位置付けられたならば、チャックテーブル52上の研磨加工されたSOIウエーハ10の吸引保持が解除され、吸引保持が解除されたSOIウエーハ10は被加工物搬出手段17により搬出されて洗浄手段14に搬送される。洗浄手段14に搬送されたSOIウエーハ10は、ここで洗浄された後に被加工物搬送手段15よって第2のカセット12の所定位置に収納される。