(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ジオールが、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブタンジオール、プロパンジオールおよび質量平均分子量4000g/mol以下のポリエチレングリコールからなる群から選択される少なくとも1つであり、前記混合物中のポリエチレングリコールの割合は混合物全体の質量に対して5%以下である、請求項1に記載のコポリエステル樹脂組成物の製造方法。
コモノマーが、イソフタル酸、ネオペンチルグリコール、アジピン酸、2,6−ナフタレンジカルボキシレート(NDC)、2,6−ナフタレンジカルボン酸(NDA)、ジメチルイソフタレート、ペンタエリスリトールおよびグリセロールからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1または2に記載のコポリエステル樹脂組成物の製造方法。
「ジオール−リサイクルPET」のペアをポリエステル生成材料として使用し、解重合段階が190℃〜260℃の範囲の温度で、3.5bar以下の圧力にて、40〜60分間にわたって実施される、請求項1から4のいずれか1項に記載のコポリエステル樹脂組成物の製造方法。
触媒が、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物、錫化合物およびアルミニウム化合物からなる群から選択される少なくとも1つの重縮合触媒である、請求項6に記載のコポリエステル樹脂組成物の製造方法。
鎖延長剤の割合が反応混合物の質量に対して0.05質量%〜2.0質量%であり、かつ得られる押出吹込み成形可能なコポリエステル樹脂組成物は、固有粘度が0.80〜1.40の範囲であり、ゲルを含有せず透明である、請求項1から17のいずれか1項に記載のコポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【技術分野】
【0001】
本発明はコポリエステル樹脂組成物および樹脂組成物の製造方法に関し、前記樹脂組成物は、食物および食物以外の両方に使用可能な優れた色および透明性の容器を製造するための押出吹込み成形ならびに異形押出および高溶融張力ポリエステルを必要とするブローフィルムの製造といった他の応用法に好適である。
【0002】
押出吹込成形(EBM)はプラスチック素材から中空の部品/ボトル/容器を生成するのに使用されるよく知られた製造工程である。EBM工程では、ポリマーを溶解し、中空のチューブ(パリソン)へと押出し、さまざまなサイズおよび形状の容器のなかで吹込み成形を行う。機械および設計ならびに加工の技術はきわめて高度であり成熟している。
【0003】
EBMに現在使用されているポリマーには、ポリエチレン、ポリプロピレン、SBCおよびPETGが含まれる。典型的なEBM法で加工されるポリマーは溶融張力を有さなければならない。さらに、そのポリマーは優れたストレッチ性を有し、いかなるデザインの容器も成形できなければならない。包装に使用するボトル/容器では、色および透明性(透明度)も重要な特性となる。
【0004】
PETポリエステルは、食品等級および非食品等級の品目用のボトルおよび容器をはじめとする多岐にわたる包装材料のデザインおよび開発に必要とされる多くの望ましい特性を有する。たとえば、PETポリエステルは軽量で、破損しにくく、透明かつリサイクルが可能で、高い気体遮断性も有する。さらに、PETは世界中で、食品等級の品目の包装への使用が多くの規制当局から承認されている。これらの理由すべてにより、EBMへの応用に好適なPETポリエステルには多くの市場潜在性がある。包装への応用においては、色および透明性(透明度)も、最も重要な望ましい特性である。
【0005】
しかし、上述の他のポリマーとは異なり、かかるPETポリエステルは溶融張力が低いため、EBMに応用することができない。押出工程で溶融ポリマーを中空チューブなどのパリソンに流し、その後依然としてポリマーが溶融状態にある状態でパリソンに吹込みを行うには高い溶融張力が必要とされる。溶融張力のほか、あらゆるデザインのボトルまたは容器を製造するには優れたストレッチ性もポリマーの重要な特性となる。PETポリエステルは、押出吹込み成形を行ってボトルおよび容器を遺贈する場合には重大な欠点を有する。溶融張力が低いため、従来のPETポリエステルは押出吹込み成形には適さない。EBMへの応用に好適となるよう、PETポリエステルを改変してこの欠点を克服する試みが行われてきた。また、包装への応用にはボトルの色および透明性も重要かつ必要な特性である。特許/出願には、EBMへのPETの応用の好適性を主張するポリエステル樹脂組成物のいくつかの製造方法が開示されている。
【0006】
米国特許第4219527号は、改変ポリエチレンテレフタレートポリマーの吹込み成形方法を開示する。米国特許第4219527号では、PETポリマーの改変に使用する鎖延長剤の使用について特別な言及はなされていない。さらに、改変PETポリマーの透明性、色およびアセトアルデヒド含量についても言及されていない。
【0007】
米国特許出願第20080093777号は、低速結晶化ポリエステルコポリマーを用い、EBMの押出工程において鎖延長剤を用いてPET混合物を押出可能にする方法を開示する。ポリマーを劣化させずに均一に混合するには押出成形機における滞留時間が短すぎるため、均一な溶融品質を保証することは不可能である。また、EBMの機械ごとに混合装置が必要となる。
【0008】
別の米国特許第5523135号は、スチレンコポリマーおよび不飽和酸のグリシジルエステルおよびビニルコモノマーの機械的混合に基づく。これも、色および透明性に重大な影響をもたらすだけでなく、不均一なモノマー品質および不均一な溶融強度をもたらす複雑な混合工程である。さらに、米国特許第5523135号で教示される工程には追加の装置が必要である。米国特許第5523135号は、あらかじめ重合した高分子量のPETを混合または配合段階で使用する、PETの製造方法を開示する。当業者であれば、反応性カルボン酸基の濃度が高く、鎖延長剤との即座の反応が予測されることから、フタル酸およびエチレングリコールを含有する反応混合物に鎖延長剤を添加することは考慮しないと考えられる。したがって、米国特許第5523135号の教示は、溶融物の混合または配合段階のみで鎖延長剤を使用するPETの製造方法に制限される。PETの重合前に鎖延長剤を反応させることが、EBM工程に好適なPETの製造方法であるという言及はされていない。
【0009】
米国特許第5523382号は、優れたレオロジー特性を有する品目へと押出吹込みにより成形されるポリエステルの製造方法を開示しており、ポリエステルの特性の改変には1,4−シクロヘキサンジメタノールが使用される。
【0010】
米国特許第6984694号は、鎖延長剤を用いて、未使用、リサイクルおよび再加工の縮合ポリマーの特性を改善する方法を説明している。この工程では、主として配合によって種々のポリマーとともに鎖延長剤を使用する方法が記述される。
【0011】
本明細書に開示する先行特許は、鎖延長剤をポリマーと配合して使用する。EBM等級のポリエステルを製造する場合、従来のように配合によって添加剤を組み込む方法にはいくつかの欠点がある。たとえば、配合によってポリマーに鎖延長剤を組み込むと、ポリマー溶融物中にゲル粒子が形成されることが多い。さらに、ポリマーの色および透明性が劣化するうえ、ポリマーの衝撃強度および熱安定性も著しく損なわれる。ポリマーの反応押出成形を介して鎖延長を行うには、追加の工程段階および追加の装置が必要である。多くの場合、溶融強度を上げるには少量の鎖延長剤で十分であるが、反応性の添加剤系を少量直接添加するのは実践ではきわめて困難であり、反応押出成形で使用する前に鎖延長剤のマスターバッチを製造しておく必要がある。本発明は、この追加的な費用および工程段階をすべて克服したものである。
【0012】
したがって、透明性が高く色艶がよく、引抜き性に優れ、必要な衝撃強度を備えた、ゲルを含有しない高溶融張力のPETポリエステル組成物に対する需要は依然として存在する。同時に、かかるコポリエステルはリサイクル可能である必要があり、混合/配合といった追加の工程を必要とせず既存のEBM機で直接使用できるのが望ましい。
【0013】
本発明の目的は、溶融張力が高く、押出吹込み成形に適したコポリエステル樹脂を提供することである。
【0014】
本発明の別の目的は、ゲルを含有しない押出吹込み成形が可能なポリエステルを提供することである。
【0015】
本発明のまた別の目的は、透明性に優れ、すなわちかすみが少なく、つやがよく、色がよく、黄ばみがなく、ストレッチ性が高い、押出吹込み成形が可能なポリエステルを提供することである。
【0016】
本発明のまた別の目的は、アセトアルデヒド含量が少ない、押出吹込み成形が可能なポリエステルを提供することである。
【0017】
本発明のさらに別の目的は、押出吹込み成形可能なポリエステルから生成された成形品を提供することである。
【0018】
本発明のさらに別の目的は、押出吹込み成形可能なポリエステルの製造方法を提供することである。
【0019】
本発明のさらに別の目的は、リサイクルPET原料を用いた押出吹込み成形可能なポリエステルの製造方法を提供することである。
【0020】
本発明のさらに別の目的は、バイオエチレングリコールを用いた押出吹込み成形可能なポリエステルを提供することである。
【0021】
本発明のさらに別の目的は、何らかの添加剤との混合/配合段階を追加せずに押出吹込み成形などの応用例に直接使用可能なポリエステルの製造方法を提供することである。
【0022】
本発明のまた別の目的は、食品および非食品への応用に有用な、押出吹込み成形可能なポリエステルを提供することである。
【0023】
本発明のある側面において、押出吹込み成形可能なコポリエステル樹脂組成物の製造方法が提供される。前記方法は以下の段階を包含する:
a. 「ジオール−ジカルボン酸」のペア、「ジオール−ジカルボン酸エステル」のペアおよび
「ジオール−リサイクルPET
」のペアからなるペアの群から選択される1つ以上のポリエステル生成材料のペアを、コモノマーおよび任意には耐衝撃性改良剤、酸化防止剤、触媒、アセトアルデヒド阻害剤およびカラートナーからなる群から選択される1つ以上の添加剤とともに反応器に入れ、反応混合物を得る;
b. この反応混合物に対して、エステル化、エステル交換反応および
解重合からなる群から選択される方法を実施し、プレポリマーを得る;
c. 段階(b)で、約0.05〜約2.0質量%、好ましくは約0.05〜約0.8質量%、さらに好ましくは0.05〜0.40質量%の鎖延長剤を、少なくとも1回で、あるいは
制御された計量供給速度で連続的に、反応混合物の固有粘度が<0.20、好ましくは<0.10である
ときに反応混合物に入れる;
d. プレポリマーを温度約270〜約305℃、圧力10mb未満、好ましくは2mb未満、さらに好ましくは1mb未満で重縮合し、固有粘度0.40〜0.80の非晶質チップを得る;
e. 非晶質チップを温度約110〜170℃で結晶化し、結晶化度30%超のチップを得る;および
f. 結晶化チップを固相重合装置で温度約190〜225℃にて処理し、必要な固有粘度約0.70〜約2.0、好ましくは約0.90〜約1.50、さらに好ましくは約0.90〜約1.40を達成し、EBM等級のコポリエステル樹脂組成物を得る。
【0024】
「プレポリマー」は、その固有粘度が<0.20である限り、反応中に生成されたポリエステルを意味する。
【0025】
典型的には、ジオールは、平均分子量4000g/mol以下のモノエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブタンジオール、プロパンジオールおよびポリエチレングリコールからなる群から選択される少なくとも1つで、前記混合物中のポリエチレングリコールの割合は、混合物全体の質量に対して5%以下とする。モノエチレングリコールが特に好ましい。
【0026】
典型的には「ジオール−ジカルボン酸」のペアをポリエステル生成材料として使用する。
【0027】
典型的には、ジカルボン酸は、精製テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸およびセバシン酸からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0028】
好ましくは、ジカルボン酸は精製テレフタル酸である。
【0029】
ある実施態様に基づいた場合、「ジオール−ジカルボン酸」のペアをポリエステル生成材料として使用し、エステル化段階b)を約200〜300℃、好ましくは220〜280℃、きわめて好ましくは240〜280℃で、圧力約4.5バール以下にて、約1〜10時間、好ましくは1.5〜6時間、きわめて好ましくは2.0〜2.5時間実施する。
【0030】
典型的には、「ジオール−ジカルボン酸」のペアにおけるジオールおよびジカルボン酸のモル比は、約1.04〜約1.45である。
【0031】
本発明の別の実施態様に基づいた場合、「ジオール−ジカルボン酸エステル」のペアをポリエステル生成材料として使用し、ジカルボン酸エステルをジメチルテレフタレートとする。
【0032】
典型的には、ジオール−ジカルボン酸エステルのペアにおけるジオールおよびジメチルテレフタレートのモル比は、約2〜約2.25である。
【0033】
典型的には、ジカルボン酸エステルをジメチルテレフタレートとし、エステル交換反応を約140〜約270℃、絶対圧力約200〜約1200mbar、好ましくは約500〜約1100mbarにて約30分〜3時間実施する。
【0034】
典型的には、コモノマーは、イソフタル酸、ネオペンチルグリコール、ペンタエリスリトール、グリセロール、アジピン酸、2,6ナフタレンジカルボキシレート(NDC)、2,6−ナフタレンジカルボン酸(NDA)、ジメチルイソフタレートペンタエリスリトールおよびグリセロールからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0035】
典型的には、「ジオール−ジカルボン酸エステル」のペアをポリエステル生成材料として使用し、コモノマーをジメチルイソフタレートとする。
【0036】
典型的には、反応混合物の質量に対するコモノマーの割合は約4〜約20%、好ましくは約6〜15%、さらに好ましくは約8〜12%である。
【0037】
本発明のまた別の実施態様に基づいた場合、「ジオール−リサイクルPET」のペアをポリエステル生成材料として使用し、
解重合段階を約190〜約260℃、圧力約3.5バール以下にて、約30〜120分間、好ましくは40〜60分間実施して、プレポリマーを得る。
【0038】
典型的には、触媒は重縮合触媒およびエステル交換触媒からなる群から選択される。
【0039】
典型的には、触媒は、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物、錫化合物およびアルミニウム化合物からなる群から選択される少なくとも1つの重縮合触媒である。
【0040】
典型的には、触媒は、酢酸亜鉛および酢酸マンガンからなる群から選択される少なくとも1つのエステル交換触媒である。
【0041】
典型的には、カラートナーは、酢酸コバルトおよびポリマー可溶性染料からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0042】
典型的には、鎖延長剤は、少なくとも平均2個のエポキシ基/ポリマー鎖を含有する少なくとも1つのコポリマーであり、鎖延長剤の数平均分子量Mnは1000〜10000ダルトンである。
【0043】
典型的には、鎖延長剤は、少なくとも1つのエポキシ化学当量150〜700のコポリマーである。
【0044】
典型的には、鎖延長剤は、鎖延長剤および粉末PETおよび粉末Co−PETからなる群から選択される担体を包含するプレミックスの形態で添加する。
【0045】
典型的には、安定剤は、カルボキシエチルジメチルホスフェートおよび燐酸からなる群から選択される少なくとも1つの脂肪族ホスフェートである。
【0046】
典型的には、コポリエステル樹脂の等級は、反応混合物に添加する鎖延長剤の割合を変化させることによって調節する。
【0047】
典型的には、ポリエステル樹脂のアセトアルデヒド(AA)含量は、段階e)の終了時において10ppm未満、好ましくは5ppm未満、きわめて好ましくは3ppm未満、特に好ましくは1ppm未満である。
【0048】
本発明に基づいて鎖延長剤を段階aおよび/またはbで添加することにより、反応時間を短縮し、鎖延長剤を使用しない工程に比して一定の分子量を達成できることは、本発明の利点である。反応時間が短いほど、熱ストレスを受ける産物は少なくなり、したがってアセトアルデヒドの収量は少なくなる。
【0049】
典型的には、回転乾燥器、回転式結晶化機および高回転撹拌槽反応器(Solidaire)からなる群から選択される装置で、非晶質チップを再結晶化する。
【0050】
典型的には、方法段階(f)はバッチ式反応器および連続式反応器からなる群から選択される反応器で実施する。
【0051】
典型的には、リサイクルPETは、消費者使用後のリサイクルPETおよび製造者使用後のリサイクルPETからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0052】
本発明のある実施態様に基づいた場合、反応混合物の質量に対する鎖延長剤の割合が約0.05〜約2.0質量%、好ましくは約0.05〜約0.8質量%、さらに好ましくは0.05〜0.4質量%であり、得られるEBM等級のコポリエステル樹脂組成物の固有粘度が約0.80〜約1.40であり、ゲルを含有せず透明であるコポリエステル樹脂組成物の製造方法が提供される。
【0053】
本発明の別に実施態様に基づいた場合、固有粘度が約0.70〜約2.0であり、樹脂の質量に対する割合が約0.05〜約2.0%の鎖延長剤が、少なくとも1回で、あるいは
制御された計量供給速度で連続的に、反応混合物の固有粘度が<0.20、好ましくは<0.10である
ときに重合前に添加される、押出吹込み成形可能なコポリエステル樹脂組成物が提供される。
【0054】
鎖延長剤は、2回以上、好ましくは3回以上、きわめて好ましくは4回以上に分けて、とりわけ、連続的に制御された計量供給速度で添加することができる。
【0055】
分注量は同じであっても異なってもよいが、好ましくは同量である。
【0056】
典型的には、260〜275℃におけるコポリエステルの溶融強度は約0.05〜0.5N、好ましくは0.08〜0.25Nであり、引き取り速度は約20〜180m/分、好ましくは約60〜160m/分である。
【0057】
典型的には、押出吹込み成形可能なコポリエステル樹脂組成物は、Hunter L*a*b*色空間の分類で、L*透過率が>92.0%、a*色値が−1.0±0.5、b*色値が0.3±0.5である。
【0058】
本発明の別の側面に基づき、場合により本発明のコポリエステル樹脂組成物から成形された一体型の中空のハンドルを備えた、押出吹込みによって成形される成形品が提供される。
【0059】
典型的には、成形される成形品は、パリソン、容器、フィルムおよびチューブからなる群から選択される少なくとも1つの成形品である。
【0060】
典型的には、成形される成形品の容量は、食品および非食品用で約20mL〜約25Lである。
【0061】
本発明の一実施態様に基づいた場合、コポリエステル樹脂組成物から押出吹込みによって成形される成形品は透明である。
【0062】
発明を以下の図によって説明する。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図1】EBM等級のPET(試料番号11、12、13、35および37)、ISBM等級のPET(PET CB602)およびEBM等級のPP(R520Y)における引き取り力(N)と引き取り速度(m/分)を示すグラフ。
【
図2】EBM等級のPET(試料番号11、12および13)およびEBM等級のPP(T300)におけるさまざまな剪断速度(l/s)での剪断粘性(Pa.s)の変化を示すグラフ。
【
図3】配合を用いた先行技術の工程を示すフローチャート。
【
図4】ジオール−ジカルボン酸経路を用いた本発明に基づく工程を示すフローチャート。
【
図5】ジオール−ジカルボン酸エステル経路を用いた本発明に基づく工程を示すフローチャート。
【
図6】リサイクルPET原料を出発材料として使用した本発明に基づく工程を示すフローチャート。
【0064】
EBM等級のポリエステルを製造するための既知の方法は、種々の添加剤をポリエステルに組み入れる方法として配合を使用しており、鎖延長剤は、ポリエステルの固有粘度が0.55を超える固相重合後にはじめてポリエステルに添加される。既知の工程を
図3のフローチャートに示す。しかし、この既知の工程は、得られるポリエステル中にゲル粒子が生成されるという重大な欠点を有する。これは、最終製品の色および透明性にも悪影響をもたらす。
【0065】
本発明では、鎖延長剤がコポリエステル樹脂自体の生成中に添加される、押出吹込み成形可能なコポリエステル樹脂の製造工程が提供される。配合工程とは異なり、本発明の工程では鎖延長剤が、反応混合物中にモノマーおよびオリゴマーまたはプレポリマーが生成される過程、すなわち反応混合物の粘度がきわめて低く、特に0.2未満、好ましくは0.1未満である時点で添加される。
【0066】
本発明の第一の側面に基づき、押出吹込み成形可能なコポリエステル樹脂組成物の製造方法が提供される。前記方法は以下の段階を包含する:
a. 「ジオール−ジカルボン酸」のペア、「ジオール−ジカルボン酸エステル」のペアおよび「ジオール−リサイクルPET」のペアからなるペアの群から選択される1つ以上のポリエステル生成材料のペアを、コモノマーおよび耐衝撃性改良剤、酸化防止剤、触媒、アセトアルデヒド阻害剤およびカラートナーからなる群から選択される1つ以上の添加剤とともに反応器に入れ、反応混合物を得る;
b. この反応混合物に対して、エステル化、エステル交換反応および
解重合からなる群から選択される方法段階を実施し、プレポリマーを得る;
c. 段階(b)で、約0.05〜約2.0質量%、好ましくは約0.05〜約0.8質量%、さらに好ましくは0.05〜0.40質量%の鎖延長剤を、少なくとも1回で、あるいは
制御された計量供給速度で連続的に、反応混合物の固有粘度が<0.20、好ましくは<0.10である
ときに反応混合物に入れる;
d. プレポリマーを温度約270〜約305℃、圧力10mb未満、好ましくは2mb未満、さらに好ましくは1mb未満で重縮合し、固有粘度0.40〜0.80の非晶質チップを得る;
e. 非晶質チップを温度約110〜170℃で結晶化し、結晶化度30%超のチップを得る;および
f. 結晶化チップを固相重合装置で温度約190〜225℃にて処理し、必要な固有粘度約0.70〜約2.0、好ましくは約0.90〜約1.50、さらに好ましくは約0.90〜約1.40を達成し、EBM等級のコポリエステル樹脂組成物を得る。
【0067】
当業界で既知の通り、PETポリマーは3種類の経路から製造される:
− 「ジオール−ジカルボン酸」のペアをポリエステル生成材料として使用する;
− 「ジオール−ジカルボン酸エステル」のペアをポリエステル生成材料として使用する、および
− ジオール−PETのペアをポリエステル生成材料として使用する。
【0068】
ジオール−ジカルボン酸の経路を使用する場合、反応混合物をエステル化する。一方、「ジオール−ジカルボン酸エステル」の経路を使用する場合は、反応混合物に対してエステル交換反応を行う。PETをリサイクルPETから使用する場合、まず
解重合を行った後に処理を続ける。
【0069】
ジオール−ジカルボン酸経路:
本発明の工程で使用する種々のジカルボン酸には、精製テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸およびセバシン酸が含まれる。本発明の一実施態様に基づき、精製テレフタル酸をジカルボン酸として使用する。エステル化段階を、約200〜300℃、好ましくは220〜280℃、きわめて好ましくは240〜280℃で、圧力約4.5バール以下にて、約1〜10時間、好ましくは1.5〜6時間、きわめて好ましくは2.0〜2.5時間実施する。典型的には、ジオール−ジカルボン酸のペアにおけるジオールおよびジカルボン酸のモル比は、約1.04〜約1.45である。重縮合法の段階で通常使用される触媒は、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物、錫化合物およびアルミニウム化合物からなる群から選択される少なくとも1つの重縮合触媒である。Sb含量は300ppm以下、好ましくは260ppm未満であり得る。Ge含量は150ppm以下、好ましくは80ppm未満であり得る。TiまたはSnまたはAl含量は200ppm以下であり得る。これらの触媒を組み合わせて、常に至適な結果が得られる。
【0070】
「ジオール−ジカルボン酸」経路を使用する場合、コモノマーは、イソフタル酸、ネオペンチルグリコール、ペンタエリスリトール、グリセロール、アジピン酸、2,6ナフタレンジカルボキシレート(NDC)、2,6−ナフタレンジカルボン酸(NDA)からなる群から選択される。
【0071】
典型的には、重縮合反応は約270〜約305℃、好ましくは270〜約290℃、圧力10mb未満、好ましくは2mb未満、さらに好ましくは1mb未満で実施する。
【0072】
ジオール−ジカルボン酸経路を使用する本発明の工程を、
図4のフローチャートで説明した。
【0073】
ジオール−ジカルボン酸エステル経路:[DMT]
「ジオール−テレフタレートエステル」経路の場合、テレフタレートエステルであるジメチルテレフタレートが、ジオールとともに使用するポリマー生成材料となる。ジオールとジメチルテレフタレートのモル比は2〜約2.25である。エステル交換反応を実施する温度は約30分〜3時間で140〜約270℃であり、反応は絶対圧力約200〜約1200mbar、好ましくは約500〜約1100mbarにて実施する。このエステル交換反応では触媒として酢酸亜鉛および酢酸マンガンを単独でまたは組み合わせて使用する。「ジオール−ジカルボン酸エステル」経路を使用する場合、ジメチルイソフタレートをコモノマーとして使用する。
【0074】
ジオール−ジカルボン酸経路を使用する本発明の工程を、
図5のフローチャートで説明した。
【0075】
本明細書で記載した通り、本発明の方法に基づき、鎖延長剤は、反応混合物中でプレポリマーの生成が開始したばかりの時点で反応器に添加される。この段階で鎖延長剤を組み込めるように、反応混合物の固有粘度が事前に定めた値に到達する前に反応器に添加する。この事前に定める値は、通常0.2未満、好ましくは0.1未満である。
【0076】
本発明に基づく場合、ジオールは平均分子量が4000g/mol以下のモノエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブタンジオール、プロパンジオールおよびポリエチレングリコールからなる群から選択される少なくとも1つであり、ポリエチレングリコールの前記混合物に対する割合は、全混合物の質量に対して5%以下である。
【0077】
別の実施態様に基づく場合、ジオールはモノエチレングリコールである。
【0078】
典型的には、反応混合物の質量に対するコモノマーの割合は、約4〜約20%、好ましくは約6〜15%、さらに好ましくは約8〜12%である。
【0079】
本発明の文脈において「鎖延長剤」は2つ以上の官能基を有する炭化水素化合物を意味する。
【0080】
本発明に基づき使用する高分子反応鎖延長剤は、エポキシ官能基を有する(メタ)アクリル酸誘導体、官能基を有さないスチレン誘導体および/または官能基を有さない(メタ)アクリル酸誘導体の繰り返し単位のコポリマーである。用語(メタ)アクリル酸誘導体には、アクリル酸の遊離酸、エステルおよび塩およびメタクリル酸が含まれる。典型的なエステルは、メチル、エチル、プロピル、n−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、2−エチルヘキシルまたはヘキシルエステルである。典型的な塩は、個々の酸のナトリウム、カリウム、アンモニウムまたは亜鉛塩である。
【0081】
用語エポキシ官能基を有する(メタ)アクリル酸誘導体は、エポキシ基を含有するアクリル酸およびメタクリル酸誘導体を包含する。典型的には、これらはアクリル酸グリシジルおよびメタクリル酸グリシジルなど、個々の酸のエポキシ基含有エステルである。
【0082】
官能基を有さないスチレン誘導体とは、例えばスチレン、α−メチルスチレンまたはドデシルスチレンである。
【0083】
典型的には、コポリマーはグリシジル(メタ)アクリレート、スチレン、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートおよびメチルメタクリレートのコポリマーであり、グリシジル(メタ)アクリレートの質量はモノマー混合物の質量に対して5%超である。
【0084】
典型的には、鎖延長剤は、ポリマー鎖につき平均2個以上、好ましくは3個以上のエポキシ基を含有する1つ以上のコポリマーであり、数平均分子量M
nは1000〜10000ダルトンである。
【0085】
典型的には、鎖延長剤は、エポキシ化学当量が150〜700、好ましくは180〜400、きわめて好ましくは200〜320である1つ以上のコポリマーである。
【0086】
典型的には、鎖延長剤は米国特許第6984694号に規定される通り、エポキシ化学当量が180〜約2800、重量平均エポキシ官能価が約140以下、数平均分子量Mnが10000ダルトン未満、好ましくは6000ダルトン未満である。
【0087】
上述したコポリマーは市販製品であり、例えば商標「Joncryl」(RTM)として、特にJoncryl ADR 4300、4370、4368、4380および4385をBASF SEから入手することができ、または同様のポリマー鎖延長剤をBASFから入手することができる。これらの製品、その製造方法および一般的な使用法は例えば米国特許第6984694号に記載されている。
【0088】
典型的には、鎖延長剤は、Joncryl ADR 4300、4370、4368、4380および4385からなる群から選択される少なくとも1つである。本発明のまた別の実施態様に基づく場合、ポリマー鎖延長剤は重量平均分子量Mwが6800、エポキシ化学当量が285g/molのJoncryl ADR 4368である。
【0089】
本発明のコポリエステル樹脂組成物の製造に使用可能な他の鎖延長剤には、ビスオキサゾリン、フェニレン−ビス−オキサゾリン、カルボニルビス(1−カプロラクタム)、ビス−無水物、ジエポキシドビスフェノールA−グリシジルエーテルなどが含まれる。
【0090】
鎖延長剤が均一に分布するよう、鎖延長剤は、鎖延長剤および粉末PETおよび粉末Co−PETからなる群から選択される担体を包含するプレミックスの形態で添加するのが好ましい。典型的には鎖延長剤の割合は、反応混合物の質量に対して約0.05〜0.8%である。
【0091】
本発明の工程で使用する安定剤は、カルボキシエチルジメチルホスフェートおよび燐酸からなる群から選択される少なくとも1つの脂肪族ホスフェートである。
【0092】
典型的には、カラートナーは、酢酸コバルトおよびポリマー可溶性染料からなる群から選択される少なくとも1つである。好ましくは、酢酸コバルトを着色剤として使用する。
【0093】
本発明の工程に基づき使用される別の添加剤である耐衝撃性改良剤は、ポリエチレングリコール(PEG−400)、エチレンアクリル酸エステル無水マレイン酸/グリシジルメタクリレート(Lotader)、エチレンメチル/ブチルアクリレート(Lotryl)、スチレンエチレンブチレンブロックコポリマー(Krayton)からなる群から選択される少なくとも1つの長鎖の脂肪族ジオールである。
【0094】
本発明に基づく工程は、本発明の種々のグレードのコポリエステル樹脂組成物を製造することにより、種々のサイズおよび形状の容器を製造するにあたりコストパフォーマンスのバランスをとる。反応混合物に添加する鎖延長剤の割合を変えることにより、種々のグレードの押出成形可能なコポリエステル樹脂組成物が製造される。
【0095】
本発明の工程に基づき製造したコポリエステル樹脂組成物のアセトアルデヒド(AA)含量は、段階e)の終了時において10ppm未満、好ましくは5ppm未満、きわめて好ましくは3ppm未満、特に好ましくは1ppm未満である。典型的には、回転乾燥器、回転式結晶化機および高回転撹拌槽反応器(solidaire)からなる群から選択される装置で、非晶質チップを再結晶化する。
【0096】
本発明に基づき、固相重合はバッチ式反応器および連続式反応器からなる群から選択される反応器で実施する。
【0097】
本発明の第二の側面に基づき、押出吹込み成形が可能なCo−PET樹脂をリサイクルPET材料から製造する工程が提供され、前記工程は以下の段階を包含する:
− 洗浄したPETボトルをフレーク状に加工し、反応器内で190〜260℃、圧力3.5バール以下にて、モノエチレングリコール(MEG)(フレーク1トンに対し150〜350kg)で
解重合し、
解重合産物を得る;
− コモノマーおよび耐衝撃性改良剤、酸化防止剤、触媒およびカラートナーからなる群から選択される1つ以上の添加剤を、
解重合産物と連続撹拌下で約240℃にて約40〜60分混合して、反応混合物を得る。コモノマーは典型的にはイソフタル酸(IPA)である;
− 約0.05〜約2.0質量%、好ましくは約0.05〜約0.8質量%の鎖延長剤を、少なくとも1回で、あるいは
制御された計量供給速度で連続的に、反応混合物の固有粘度が<0.20、好ましくは<0.10である
ときに反応混合物に入れる;
− 反応混合物を重合して、非晶質コポリエステルを得る。非晶質コポリエステルを結晶化した後、固相重合してEBM等級のPETを得る。
【0098】
典型的には、リサイクルPETは、消費者使用後のリサイクルPETおよび製造者使用後のリサイクルPETからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0099】
本発明に基づきリサイクルPET材料から押出吹込み成形可能なCo−PET樹脂を製造する工程で使用するすべての添加剤およびポリエステル生成材料から押出吹込み成形可能なコポリエステル樹脂組成物を製造する工程で使用する添加剤およびそれぞれの割合は、後者の工程で精製テレフタル酸(PTA)/ジメチルテレフタレート(DMT)および酢酸亜鉛および酢酸マンガン(触媒)を使用しないことを除いては同じである。
【0100】
図6に、リサイクルPET材料を出発材料として使用する本発明に基づく工程をフローチャートで説明する。
【0101】
本発明の一実施態様に基づき、鎖延長剤の割合が反応混合物の質量に対して約0.05〜約2.0質量%、好ましくは約0.05〜約0.8質量%、さらに好ましくは0.05〜0.40質量%であり、得られるEBM等級のコポリエステル樹脂組成物の固有粘度が約0.80〜約1.40であり、ゲルを含有せず透明であるコポリエステル樹脂組成物の製造方法が提供される。
【0102】
本発明の別の側面に基づき、固有粘度が約0.70〜約2.0であり、樹脂の質量に対する割合約0.05〜約2.0%の鎖延長剤が、少なくとも1回で、あるいは
制御された計量供給速度で連続的に、反応混合物の固有粘度が<0.20、好ましくは<0.10である
ときに重合前に添加される、押出吹込み成形可能なコポリエステル樹脂組成物が提供される。
【0103】
典型的には、260〜275℃におけるコポリエステルの溶融強度は約0.05〜0.5N、好ましくは0.08〜0.25Nであり、引き取り速度は約20〜180m/分、好ましくは約60〜160m/分である。
【0104】
典型的には、押出吹込み成形可能なコポリエステル樹脂組成物は、HunterL*a*b色空間の分類で、L*透過率が>92.0%、a*色値が−1.0±0.5、b*色値が0.3±0.5である。
【0105】
本発明の別の側面に基づき、場合により本発明のコポリエステル樹脂組成物から成形された中空のハンドルを備えた、押出吹込みによって成形される成形品が提供される。
【0106】
典型的には、成形される成形品は、パリソン、容器、フィルムおよびチューブからなる群から選択される少なくとも1つの成形品である。
【0107】
典型的には、成形される成形品の容量は約20mL〜約25Lである。
【0108】
本発明の一実施態様に基づき、コポリエステル樹脂組成物から押出吹込みによって成形される成形品は透明である。
【0109】
本発明によるEBM等級のコポリエステル組成物から製造される成形品は、さまざまな食品および非食品の包装に有用である。
【0110】
本明細書中以下、「ポリエステル生成材料」を出発材料として使用し、鎖延長剤の割合を0.1〜0.4%とする本発明の工程に基づき製造した場合の、本発明の押出吹込み成形可能なコポリエステル樹脂組成物のさまざまな特性を記載する。前記組成物から製造された成形品の特性も、下表の最後の欄に記載する。
【0111】
【表1】
【0112】
以下に、本発明の製品のさまざまな特性を測定するのに使用する手順および装置を記載する。
【0113】
A] 固有粘度の測定
1)
原則
ポリマーをフェノール/1.2ジクロロベンゼン溶媒に溶解し、流下時間をUbbelohde粘度計で測定する。
【0114】
ポリマー溶液の流下時間(t)および純粋溶媒の流下時間(to)の商から相対粘度を求める。
【0115】
【数1】
【0116】
Bill Meyer式を用いて、この相対粘度から固有粘度を求める。
【0117】
【数2】
【0118】
固有粘度とは、溶液の相対粘度を溶液中のポリマー濃度「C」で割った値を「ゼロ」の状態に外挿した限界値である。
【0119】
【数3】
【0120】
これは、溶媒の種類、相対粘度を測定する温度および濃度「C」に左右される。濃度「C」はg/100mLで示す。
【0121】
この分析法において、溶液の相対粘度は、濃度「C」=0.5〜0.65g/100mで測定する。
【0122】
2)装置/ガラス製品
・ 粘度計、毛細管タイプ(Ubbelohde)
・ 粘度計を固定するための粘度計ラック
・ S.S.カバー付きパースペクティブバスサーモスタット
・ 0〜50℃が0.1℃刻みで測定可能な温度計
・ オートビュレット−50mL
・ ブロックヒーター/スターラー
・ ストッパー付き円錐フラスコ−50mL
・ 磁気撹拌棒(長さ25mm)
・ ストップウォッチ
・ テフロンテープ
【0123】
3)試薬
・ フェノール(AR等級)
・ 1.2ジクロロベンゼン(AR等級)
・ クロロホルム(AR等級)
【0124】
4)手順:
4.1 フェノールおよび1.2ジクロロベンゼン溶液の製造
4.1.1 フェノールをオーブンで60℃に加熱し、完全にホモジナイズする。
4.1.2 1.2‐ジクロロベンゼン510mLをフェノール1.0kgを入れたボトルに質量比(3:2)で添加する。
4.1.3 褐色ガラス製原液用ボトルに溶液を濾過して入れる。
4.1.4 この原液用ボトルにオートビュレットを入れ、気泡が出ていないか確認する。
4.1.5 このガラスボトルを室温で保存する。
【0125】
4.2 粘度計の較正
4.2.1 サーモスタットを25℃(±0.1℃)に設定する。
4.2.2 十分に清掃し乾燥させた粘度計に、製造した溶液を充填の印まで充填する(約17mL)。
4.2.3 1分後、フェノール/1.2ジクロロベンゼン溶液の流下時間を測定する。
4.2.4 測定を5回行い、平均値を求める(to時間)。フェノール/1.2ジクロロベンゼン溶液を新たに製造するたびに「to」時間を求める。
4.2.5 クロロホルムで粘度計を清掃し、150℃のオーブン内で30分間乾燥させる。
4.2.6 粘度計の「to」時間は80〜120秒である必要がある。
【0126】
4.3 試料の製造:結晶質のポリエステルチップについては、圧縮機を用いてチップを圧縮する。
【0127】
4.4 測定
4.4.1 ポリマー125〜145mgを0.1mg単位で正確に秤量し、50mL入りストッパー付き円錐フラスコに入れる。
4.4.2 磁気撹拌棒およびフェノール/1.2ジクロロベンゼン溶液25mLをオートビュレットを用いて正確に添加し、ストッパー付き円錐フラスコをテフロンテープで密閉する。
4.4.3 120℃のグリコール浴で15分間攪拌しながら試料を溶解し、静置して25℃まで冷却する。
4.4.4 試料溶液で粘度計を洗い流した後、ウォータージェットの真空ポンプで溶液を吸引する。
4.4.5 溶液を25℃にする。
4.4.6 試料溶液を乾燥した粘度計の二つの印の間まで充填する。
4.4.7 ポリマー溶液の流下時間を測定する。測定を3回繰り返す(逸脱が0.2秒を超えないこと)。
4.4.8 3回の測定値の平均を算出する。
【0128】
5)算出
5.1 相対粘度の測定
【数4】
式中、t
1=ポリマー溶液の平均流下時間(秒)
t
2=溶媒の平均流下時間(秒)
【0129】
5.2 F因子
F因子は相対粘度の値を記した表で閲覧可能である。
【0130】
5.3 固有粘度の算出
固有粘度=F/ポリマーの重量(mg)
【0131】
6)正確度
:相対精度±0.003dL/g
【0132】
B] メルトフローインデックスの測定
メルトフローインデックス測定器:製造:International Equipments
型番号:KAYJAY AC
1.0 目的
PETポリエステルチップのメルトフローインデックスを測定すること。
【0133】
2.0 適用範囲:PETポリエステル結晶化チップに適用することができる。
【0134】
3.0 説明
熱可塑性物質のメルトフローインデックス(MFI)とは、所定の温度および圧力条件下で、所定の長さおよび口径を有する押出機から押し出された溶融試料の重量流量を測定したものである。
【0135】
4.1 装置/ガラス製品
・ メルトフローインデックス測定器および付属機器
・ 天秤
【0136】
4.2 試薬
・ MFIが測定済みの熱可塑性物質の試料
・ キシレンまたはテトラヒドロナフタレン
【0137】
4.3 手順
4.3.1 MFI測定器を起動し、MFIを測定する温度を設定する。
4.3.2 測定器が所望の温度に達したら、ペレット状の材料5〜6gをスプーンに取り、上部からバレル内に緩徐に供給し、材料装填器具を用いて材料が正しくバレル内に落ちるようにエアトラップが起きないようにする。
4.3.3 材料の粘度が高い場合は漏斗を使用して、材料が正しく挿入されるようにし、バレル開口部に材料が粘着したり、開口部に制限が加わらないようにする。
4.3.4 材料の上からピストンをバレル内に挿入する。
4.3.5 予熱時間1〜3分が経過した直後にピストン上部に2.16Kgの負荷をかける。
4.3.6 ローターが排出切断を行い、タイマーが直ちに「0」から開始する。時間を設定する(規定の通り1分)。所定の時間1分で切断部を採取する。
4.3.7 それぞれの時間で押し出され採取された材料を秤量し、式に従い算出を行う。
4.3.8 MFI=10W/T g/10分
式中、W=押し出された重量(g)
T=カットオフ毎の押出時間
【0138】
4.4 正確度:相対精度5%
【0139】
C] ヘイズ測定器によるヘイズ値の測定(ホルマジン濁度計)
製造:Merck
型番号:Turbiquant:1500T
1)原則
フェノールおよび1.2−ジクロロベンゼンに溶解したポリエステル溶液(0.5質量%)の濁度を、ヘイズ測定器により測定する。散乱光の強度をホルマジン標準液と比較する。結果をホルマジン濁度単位(NTU)で示す。
【0140】
2)装置/ガラス製品:
・ ホルマジン濁度計(Turbiquant 1500T)
・ 計量装置、原液ボトルで25mL(2.5L)
・ ブロックヒーター/スターラー、50mL円錐フラスコ
・ 磁気撹拌棒(長さ25mm)
・ キャップ付きキュベット 直径:25mm、容量:30.0mL
・ 計量フラスコ、50mL、100mL、200mL、1000mL
・ 目盛り付きピペット、1.0mL、10.0mL
・ 測定用の一般装置
【0141】
3)試薬
・ フェノール(AR)、HPLC水
・ 1.2ジクロロベンゼン(AR)、硫酸ヒドラジン p.a.
・ ヘキサメチレンテトラミン、ホルマジン標準液1000NTU、10NTUおよび0.02NTU
【0142】
4)溶液の製造
4.1 フェノールおよび1.2DCB溶液の製造
4.1.1 乾燥オーブン内でフェノールを振盪しながら60℃に加熱し、完全にホモジナイズする。
4.1.2 1.2−ジクロロベンゼン510mLをフェノール1.0kgを入れたボトルに質量比(3:2)で添加する。
4.1.3 原液用ボトル(褐色)に溶液を濾過して入れる。
【0143】
4.2 ホルマジン一次標準液の製造
4.2.1 ヘキサメチレンテトラミン5.0gを秤量して100mLガラスビーカーに入れ、濁りのない水に溶解し、濁りのない水で容量を40mLとする(溶液A)。
4.2.2 硫酸ヒドラジン0.5gを秤量して100mLガラスビーカーに入れ、濁りのない水に溶解し、濁りのない水で容量を40mLとする(溶液B)。
4.2.3 溶液AおよびBを100mL入り計量フラスコに入れ、静かに混合し(フラスコを前後にゆっくりと回す)、容量を100mLとする。
4.2.4 25±3℃で24時間静置する。
4.2.5 この溶液の濁度は4000NTUである。
【0144】
4.3 希釈液の製造
4.3.1 ホルマジン原液(4000NTU)25mLを100mL入りのガラス製計量フラスコに添加する。濁りのない水を添加して印までの容量とし、フラスコを前後にゆっくりと回して混合する。この希釈標準液の濁度は1000NTUである。
【0145】
濁度計の較正には
作業標準液が必要である。必要とされる作業標準液は、1000NTUの希釈標準液から下表に従って製造することができる。
【0146】
【表2】
【0147】
必要とされる作業標準液は、4000NTUの原液から下表に従って製造することができる。
【0148】
【表3】
【0149】
4.3.2 所望量の1000NTU希釈標準液または4000NTU原液を100mL計量フラスコに入れ、濁りのない水を印まで添加し、フラスコを前後にゆっくりと回して混合する。
【0150】
比較試料として別の濃度が必要な場合は、水に対する原液の比率をそれぞれ調整する。
【0151】
注:測定を狂わせる気泡の形成を予防するため、フラスコは振盪せず前後にゆっくりと回して混合することが重要である。
【0152】
保存:暗所で25±3℃にて保管する。熱および光はポリマー構造の分解を加速しやすい。また、溶液は空気に触れないように保管し、ホルマジンポリマー鎖が酸化しないようにする。
【0153】
5)試料の製造:SSPの場合、液体窒素を用いてチップを粉砕する。
【0154】
6)手順:
最初に測定機器をマニュアルに従って較正する。
6.1 ポリマー0.125gを0.1mgの精度で秤量し、ストッパー付き円錐フラスコに入れる。
6.2 磁気撹拌棒およびフェノール/1.2ジクロロベンゼン溶液25mLを添加する。
6.3 試料容器をヒーティングブロックで120℃に加熱し、撹拌下で15分以内に試料を溶解する。
6.4 静置して溶液を冷却する(25℃)。
6.5 この溶液25mLをNTUキュベットに入れる。
6.6 試料が入ったキュベットを測定装置内に置き、濁度を測定する。結果はディスプレイに表示されるホルマジン濁度単位(NTU)で示す。
6.7 純粋溶媒の濁度を測定する。ブランクは0.2〜0.4NTUである必要がある。
6.8 粒子を含有する溶媒は使用前に濾過しておく。
【0155】
7)算出:
NTU(試料)−−NTU(bv)=NTU(ポリエステル)
NTU:ホルマジン濁度単位
試料:フェノール/1,2ジクロロベンゼンに溶解したポリエステル溶液
一定して測定される最低値が、その試料の真の濁度である。
【0156】
8)
正確度:0.1NTU
【0157】
D] 色の測定
a)非晶質チップ
1)原則
三刺激値測色計により、赤、緑および青のフィルターでそれぞれ処理された3つのフォトセルを用いて試料の色を測定する。
【0158】
2)装置/ガラス製品
・ ガラス製ビーカー
・ ダスター
・ 三刺激値測色計 −Q−Colour−35
・ 標準プレート白 S.No.90001570
・ 測定カップ(ガラス)
【0159】
3)
手順
3.1 測定開始の1時間前に機器のスイッチを「オン」にする。
3.2 機器の較正を行う。
3.3 PETチップ約100gをガラスプレートに入れる。
3.4 150℃の乾燥オーブンに30分入れる。
3.5 チップを室温まで冷却する。
3.6 結晶化チップを測定容器に入れる。容器の底を叩いて隙間がないようにする。
3.7 PET試料が入った測定容器を、機器の測定装置上に置く。
3.8 機器のマニュアルに従って色値を測定する。
3.9 操作は機器のマニュアルに厳密に従って行う必要がある。
【0160】
4)
評価:モニターのディスプレイに従いハンターL、aおよびbを報告する。
【0161】
5)
正確度:絶対精度±0.1%
【0162】
b)SSPチップ
1)
原則
三刺激値測色計により、赤、緑および青のフィルターでそれぞれ処理された3つのフォトセルを用いて試料の色を測定する。
【0163】
2)
装置/ガラス製品
・ ガラス製ビーカー
・ ダスターなど
・ 三刺激値測色計 −Q−Colour−35
・ 標準プレート白 S.No.90001570
・ 測定カップ(ガラス)
【0164】
3)
手順
3.1 測定開始の1時間前に機器のスイッチを「オン」にする。
3.2 機器の較正を行う。
3.3 液体窒素で冷却した後、篩分級を<0.4mmとした遠心粉砕機でSSPチップ約50gを粉砕する。
3.4 チップの粉末を測定容器に充填する。容器の底を叩いて隙間がないようにする。
3.5 PET試料が入った測定容器を、機器の測定装置上に置く。
3.6 機器のマニュアルに従って色値を測定する。
3.7 操作は機器のマニュアルに厳密に従って行う必要がある。
【0165】
4)
評価:モニターのディスプレイに従いハンターL、aおよびbを報告する。
【0166】
5)
正確度:絶対精度±0.1%
【0167】
E] アセトアルデヒド(AA)の測定
1)原則
アセトアルデヒドは、密閉容器でPETを加熱した際に排出され、これをヘッドスペース解析法に基づき、容器のガス容量内でガスクロマトグラフィーにより測定する。
【0168】
2)装置
・ FIDガスクロマトグラフ(製造:Schimadzu Model−14B)、カラム1.5m、S.S.,O.D−1.8′′
・ 充填剤−Porapack Q、80〜100メッシュ、ヘッドスペース注入システム
・ 針付きマイクロリットルシリンジ:長さ5cm、10μL(容量)
・ 遠心粉砕機、RETSCH−ZM 1、1mm篩
・ ガスタイトシリンジ−5mL、セプタムボトル、シリコンセプタムおよびアルミニウムシールキャップを備えた30mL(容量)
【0169】
3)試薬
・ アセトアルデヒド(A.R.)、最高純度の窒素および液体窒素
【0170】
4)被験混合物の製造
4.1 精製水45mLをセプタムキャップ付き50mL計量フラスコに入れる。
4.2 シリンジを用いた解析精度で、これに純粋アセトアルデヒド約0.05gを秤量して入れる。
4.3 この計量フラスコに水を印まで入れる。よく混合する。
【0171】
【表4】
【0172】
5)標準較正曲線の作成
5.1 上記に従い製造した各混合物5mLを、下記のガスクロマトグラフィー条件下で試料ループを介して注入する。
ガスクロマトグラフィー条件:
カラム:1.5m、ステンレススチール、外径1/8"
充填剤:Poropack Q 80〜100メッシュ
ガス:キャリアガスN2=50mL/分
燃焼ガスH2=45mL/分
空気=300mL/分
温度:カラム=150℃
検出器=220℃
試料ループ=150℃
注入量=5mL
増幅器の減衰:11C(高)
【0173】
5.2 IU(積分単位[面積])に対して試料の濃度グラフ(AAのμg)をプロットし、勾配を算出する(面積/濃度)。
【0174】
6)ガスクロマトグラフィーによるアセトアルデヒドの測定手順
6.1 液体窒素で冷却した後、遠心粉砕機で被験対象のPETチップ10gを粉砕する。篩分級は分析用の<0.4mmとする。
6.2 液体窒素であらかじめフラッシュしたバイアルに試料2gを秤量して入れる。
6.3 バイアルを密封する。150℃に設定したヒーティングブロックにバイアルを吊るす。
6.4 機器の指示マニュアルに記載された正しい手順に従ってヘッドスペース解析器を起動する。
6.5 90分後、ヘッドスペース分析機が自動的に起動して排出を行った後、上記のガスクロマトグラフィー条件下で試料の気相を注入する。
6.6 操作終了後、アセトアルデヒドのピークが自動的に積分され、その面積(積分単位)がプリンターによってクロマトグラムに記録される。
【0175】
7)算出
未知の試料については、クロマトグラムからIUを読み取り、AAのμgから濃度を算出する。
アセトアルデヒド含量(ppm)=[試料の面積×勾配]/W(g)
W=試料の重量(g)
【0176】
8)正確度:相対精度±0.1ppm
【0177】
F] Rosandキャピラリーレオメーターを用いた溶融強度およびストレッチ性
1)RH7、Rosandキャピラリーレオメーター、Malvern Instrument Limited
2)押出機の形状:長さ:20mm、直径:2.00mm、角度:180(L/R=20)
3)予熱時間:3分(0.5Mpaまで圧迫した後、2分予熱し、0.5Mpaまで圧迫した後、1分予熱する)
4)剪断速度:37.6s−1
5)ピストン速度:10mm/分
6)引き取り最大速度:1000m/分
7)引き取り開始速度:10m/分
8)引き取り時間:10分
【0178】
G] 結晶化度の測定
1)
原則
ポリマーチップの密度を、不活のよく湿らせた液体と密度勾配カラムを比較することにより、浮遊法で測定する。
得られた密度を用いて、文献に記載された完全に結晶質のポリエチレンテレフタレートおよび完全に非晶質のポリエチレンテレフタレートの密度から結晶化度を算出することができる。
【0179】
2)
装置
以下を包含する密度測定のための作業場:目盛り付き測定カラム
透明材料の熱浴
浸漬サーモスタット
以下を包含する充填デバイス:
保存フラスコ、磁気スターラー、充填チューブ、気泡カウンター
密度1.33〜1.45g/cm
3で各々約0.025g/cm
3が異なる較正済みのガラス製浮き球
温度計(0〜50℃)
比重計、測定範囲1.300〜1.360g/cm
3
【0180】
3)
試薬
n−ヘプタン(AR)
四塩化炭素(AR)
【0181】
4)
測定カラムの充填および較正
4.1 四塩化炭素約900mLをn−ヘプタン約350mLと混合し、比重計を用いて混合物の密度を約1.330g/cm3に調節する。
【0182】
4.2 混合物をフラスコK1に移す。
【0183】
4.3 フラスコK
1がフラスコK
2よりも若干高い位置に置く。
【0184】
4.4 K
1およびK
2の接続部V上の静水圧がほぼ同一になる量の四塩化炭素をK
2に添加する。
【0185】
4.5 接続部のタップVを緩徐に開き、両方の液体が静力学的平衡状態にあるか確認する。K
1の液体が若干K
2に流入している場合は、平衡状態に達するまで四塩化炭素をさらにK
2に添加する。逆の場合、両方のフラスコの静水圧が同じになるまでフラスコK
2の位置を下げる。(接続部のタップVを完全に開いた場合に、両フラスコ間で液体の交換が起こらないように注意しならない)
【0186】
4.6 充填チューブを勾配カラムに挿入し、その下端がカラムの底から約5mm上で留まるようにする。
【0187】
4.7 フラスコK
1の下に設置した磁気スターラーのスイッチをオンにし、液体がよく混合されるようにする。振盪コーンが深さ約15〜20mmの位置に来るようにする。
【0188】
4.8 排水口タップHを開き、フラスコK
1の液体が緩徐かつ均一に、流速が充填高1cmにつき約2〜3分で勾配カラムへ流入するようにする。
(充填作業中、四塩化炭素がK
2からK
1へ持続的に流入するため、K
1の液体密度は上昇し、この高密度の液体が勾配チューブ内で常に新しい下層を形成する)
【0189】
4.9 カラムが目盛りの印の上まで十分に充填されたら排水口タップVおよびHを閉め、充填チューブをゆっくりと取り除く。
【0190】
4.10 較正済みの浮き球を添加する。
【0191】
4.11 23±0.1℃まで冷却する。
【0192】
4.12 30分ほど浮き球が落ち着くのを待ち、その位置を読み取る(上縁と下縁の間の平均値)。
【0193】
4.13 ガラス製の浮き球の密度を、その位置に対してグラフ用紙にプロットする。(得られた値は線形である必要がある)。
【0194】
5)
手順
5.1 測定する2〜4枚の試料チップを勾配カラムに入れ、沈降するのを待つ。
5.2 対応する浸漬時間が終了したら、視差フリーで各試料の浸漬レベルを読み取り、平均値を決定する。
5.3 較正曲線から、その浸漬レベルに応じて各試料の密度を読み取る(10−F−66を参照)。
【0195】
6)
算出
結晶化度=[1.455×(密度−1.938)/密度×0.123]×100
【0196】
7)
正確度:相対精度2%
【0197】
H] ポリマー鎖延長剤の分子量の測定
ポリマー鎖延長剤の分子量分布を、分子篩クロマトグラフィーとも呼ばれるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定する。概ねの手順および方法論はASTM D5296−05に記載されているが、このASTM法はポリスチレンポリマーのみに有効である。本発明の場合、ポリマー鎖延長剤の溶媒はTHFであり、GPCカラムは、Polymer Labs製のPlgel 10μm混合床300×7.5mm分子篩カラムおよびPLgel 10μmガードカラムまたは別の納入業者による同等のカラムの2本である。温度制御屈折率検出器で検出を行う。分子量の算出には、分子量が既知の均質なポリスチレン標準物質を使用する必要がある。この較正用のポリスチレンポリマーは、Polymer Labs社が供給するポリスチレン標準液である。
【0198】
機器の較正後、GPCソフトウェアが試料の数平均分子量および重量平均分子量を算出する。
【0199】
ポリマー鎖毎のエポキシ基の数のH2測定。
【0200】
ポリマー鎖毎のエポキシ基の数および鎖延長剤のエポキシ化学当量は、米国特許第6.984,694号に基づき算出することができる。
【0201】
本発明を以下の非制限的実施例を用いて説明する。
【0202】
実施例
実施例1
樹脂を製造するため(第1表)、モノエチレングリコール(MEG)および精製テレフタル酸(PTA)
を反応器に入れた。MEGおよびPTAとともに、イソフタル酸(IPA)(5〜12質量%)、耐衝撃性改良剤(PEG−400、300〜1000ppmまたは好適な比率の他の耐衝撃性改良剤)、触媒(Sb
2O
3またはSb(AC)
3、100〜200ppm)およびカラートナー(酢酸コバルト水素、50〜60ppm)も添加した。240〜260℃、圧力4.5bar以下で2.0〜2.5時間エステル化を実施した。鎖延長剤のBASF製Joncryl ADR 4368 S 0.2質量%を流速を制御しつつ連続的に添加し、段階的誘導を行った。良好な分布状態を得られやすくするため、鎖延長剤はPET粉末またはCoPET粉末中で含量15質量%以下のイソフタル酸と混合し、計量スクリューを介して反応器内に注入した。エステル化の終了時に、安定剤(H
3PO
4またはテトラエチレンペンタミン、150ppm)を添加した。その後、286℃、圧力0.2mb未満で重縮合を実施した。
【0203】
非晶質チップ(固有粘度0.630)(融解粘度はUbbelohde粘度計により、フェノール/1,2−ジクロロベンゼンを用いてチェックした)が製造され、その後バッチSSPで処理した。初回の結晶化を130℃で実施した後、SSPを190〜215℃で実施して(第2表)、最終的な固有粘度0.80〜1.40を達成した。
【0204】
【表5】
【0205】
本発明に基づき製造されるポリマーの色および透明性は、ISBMで入手可能な最良のボトル等級のポリマーと同等に良好であることが見出される。
【0206】
【表6】
【0207】
本発明に基づき製造されるコポリエステル樹脂組成物の色および透明性は、ISBMで入手可能な最良のボトル等級のチップと同等に良好であることが見出される。さらに、最終的なポリマーはゲルを含有しないことが見出される。
【0208】
実施例2:試験の実施例
種々の試料の特性確認
(a)
本発明の試料のストレッチ性に対する溶融強度を先行技術と比較する:
溶融相重縮合中にポリマー反応鎖延長剤(Joncryl鎖延長剤)の添加速度を変化させるとともに、SSP(固相重合)の実施時間を変化させることにより、種々の試料を製造した。
【0209】
これらの種々の試料の特性確認は、そのストレッチ性に対する溶融強度(引き取り速度/破損速度)に基づき実施した(
図1)。本発明に基づき製造した種々の試料のデータ(第3表)を、EBM等級のPPおよびISBM等級のPET(市販)と比較した(第4表)。
【0210】
データを比較した場合、本発明によるEBM等級のPET(試料番号11、12、13、35および37)の溶融強度が、ISBM等級のPET(PET CB602)およびEBM等級のPP(R520Y)よりもはるかに高いことが明確に示される。
【0211】
(b)
本発明の試料の剪断速度に対する剪断粘性を先行技術と比較する:
これらの種々の試料の特性確認を、さまざまな剪断速度における剪断粘度に基づき実施した。本発明に基づく種々の試料の剪断速度に対する剪断粘度を示すグラフを、EBM等級のPP(T300)を用いて作成した(
図2)。
【0212】
結果は、本発明のコポリエステルを用いてEBM技術により品質パラメータが向上したPETボトルを作製可能なことを明確に示す。
【0213】
【表7】
【0214】
【表8】
【0215】
実施例3:
実施例1と同じ手順を用いた。ポリマー反応鎖延長剤Joncryl ADR4368およびADR4300を0.10%、0.20%および0.30%添加したバッチサイズ50kgのパイロットプラントで、種々の試験を実施した。鎖延長剤はエステル化の途中、エステル化および半重合の途中で添加した。非晶質樹脂の固有粘度は0.640〜0.650であった。樹脂はバッチSSPで処理し、最終の所望固有粘度1.10〜1.20を得た。Ubbelohde粘度計で融解粘度をチェックし(フェノール/1.2−ジクロロベンゼンの混合物を使用)、メルトフロー粘度(MFI)をチェックして高い溶融強度を確認した。すべてのバッチの色は、非晶質およびSSP段階の両方ならびにI.V溶媒における試料の溶解中も良好であった。ゲル粒子は検出されなかった。Rheotensで樹脂試料をチェックし、ポリマーの溶融特性を再確認したところ、押出吹込み成形への応用に好適であることが見出された。
【0216】
【表9】
【0217】
実施例4:DMTを用いた経路
モノエチレングリコール(MEG)およびジメチルテレフタレート(DMT)それぞれ33kgおよび46.6kgを反応器に入れ、バッチサイズを51.2kgとした。ジメチルテレフタレートはフレーク状のものを使用した。撹拌および加熱を開始した後、ジメチルイソフタレート4.6kgを添加した。最初は加熱速度を制御して、反応器の温度を140℃にした。140℃に達した後、酢酸マンガンの触媒溶液(エチレングリコール500mLに対し23g)を反応器に添加した。触媒の添加後、メタノールを用いてエステル交換反応を開始し、コンデンサを介して充填カラムで蒸留した。カラム上部温度は75℃に維持し、MEGの損失を予防した。産物温度のコントローラー設定ポイントは150分かけて140℃から230℃に段階的かつ緩徐に上昇させた。このエステル交換反応中に、Joncryl(登録商標)鎖延長剤ADR4368を3回に分けて添加した。鎖延長剤の合計添加量は0.04kgであった。エステル交換反応は大気圧で実施した。しかし、メタノールの生成により反応器内の圧力は50〜80mbを維持した。
【0218】
色およびMFIはこの産物が高品質であることを示しており、研究所内でゲルの生成は認められなかった。
【0219】
バッチ温度220℃および合計エステル交換時間150分で還流を終了し、産物の加熱は継続して過剰なグリコールを蒸留した。230℃で安定剤としてリン酸を、中和剤としてMnを添加した。約20ppmのCo(MEG 200mLに対して酢酸コバルト(含水)85g)を最初に添加した。10分後、必要量のリン酸(MEG 100mLで21gを希釈)を反応器に添加した。バッチ温度260℃で過剰EGの蒸留が終了し、エステル交換終了から25分後に240ppmのSbおよび20ppmのGe触媒を反応器に添加し、その10分後にバッチをポリ反応器に移して、そこで290℃、圧力0.5mbで重縮合を実施した。
【0220】
終了時のバッチの固有粘度は0.650であった。非晶質チップを140℃の回転乾燥器で2時間結晶化したところ、その後の固有粘度は225℃で1.150に上がった。
【0221】
【表10】
【0222】
実施例5:消費者使用後のPETボトルフレークを用いた経路:
モノエチレングリコール(MEG)10kgをエステル化反応器に入れた。振盪および加熱を開始した。180℃に達した後、洗浄済みのフレーク38kg(不純物を含有せず)を30分で段階的に添加した。PETフレークの添加終了後、反応器を窒素を用いて絶対圧力4.5barまで加圧した。反応器の温度を240℃まで上昇させ、
解重合を40分間継続した。その後、イソフタル酸(IPA)2.4kgおよびGeO
2触媒1.6gを反応器に添加した。イソフタル酸(IPA)と40分間反応させ、水を副産物として蒸留除去した。この40分間に、鎖延長剤0.08kgを3回に分けて反応器に添加した。
【0223】
イソフタル酸との反応終了後、バッチを重縮合反応器に移した。この重縮合反応器から圧力0.5mbまで段階的に空気を抜き、反応器温度を290℃まで上昇させた。反応器振盪機の消費電力に基づいて重縮合反応をモニターし、反応を終了して固有粘度0.620を得た。ポリマーを非晶質チップの形状に押出成形した。
【0224】
その後、非晶質PETチップを140℃にてバッチSSPで結晶化し、最終固有粘度を1.20に上げた。
【0225】
【表11】
【0226】
比較例1:
添加剤を使用しない従来のPETポリマーの製造:ブランクPETポリエステル
本実験は、パイロットプラントで添加剤を使用せずに実施した。最初に、PTAおよびMEGを原料として使用し、非晶質のPET樹脂を製造した。アンチモントリアセテート触媒を200ppmで、二酸化ゲルマニウム触媒をゲルマニウム40ppmで添加した。カラートナーとして酢酸コバルトをコバルト40ppmで添加した。PTAに対するMEGのモル比は1.125に維持した。250℃、圧力3.0バールで約2.5時間エステル化反応を実施し、副産物の水の生成の終了によってエステル化反応の終了を確認した。安定剤の燐酸をリン40ppmで添加し、バッチを重合反応器に移し、290℃、圧力0.2mbにて重縮合を実施した。反応器振盪機の消費電力に基づいて重縮合反応をモニターし、振盪機の消費電力の設定値でバッチを終了して、所望の固有粘度0.650を得た。その後バッチを、固有粘度0.650の非晶質顆粒として押出し成形した。
【0227】
こうして製造した非晶質樹脂を、バッチSSP装置(回転乾燥器)で130℃にて結晶化し、温度を段階的に220℃まで上昇させて、圧力0.5mb未満で固相重合が起こりやすいようにした。定期的に試料を採取し、SSPの速度をモニターして必要な固有粘度1.20を得てから、バッチを冷却し、窒素を導入して真空状態を中断し、最終的なSSP産物を採取した。
【0228】
【表12】
【0229】
Rheotonsでチェックすると、上記SSP試料の溶融強度は低かった。この樹脂は溶融強度が低いためEBM機で使用することができなかった。また、色(b*)は黄色がかっており、ボトルへの応用には適さない樹脂であった。SSPをさらに続ければ溶融強度は高くなる、すなわち固有粘度は高くなるが、色はさらに劣化すると考えられる。
【0230】
比較例2:(米国特許第5,523,135号の方法に基づく)
添加剤(鎖延長剤、コモノマー)の配合によるコポリエステルの製造
鎖延長剤を、8.5% IPAを含有する非晶質CoPETチップと配合した。鎖延長剤(Joncryl ADR 4368)の含量は最終ポリマーにおいて0.3〜0.5%であった。配合後、色値が劣化し、固有粘度の上昇も、MFIの著明な低下もみられなかった。
【0231】
これらの配合チップをバッチSSP装置でさらに処理したところ、得られた樹脂の固有粘度は0.90であった。ゲル粒子も確認された。そのうえ、色値もさらに劣化した。このため、この配合工程に従った場合、均質な製品品質は得られないことが見出された。また、重合工程後に添加剤をコポリエステルに配合した場合、EBMへの応用に必要な溶融強度も達成することができなかった。
【0232】
2A)0.3%の鎖延長剤を配合
【表13】
【0233】
2B)0.5%の鎖延長剤を配合(Joncryl ADR 4368)
【表14】
【0234】
非晶質樹脂中にゲルの生成を認めたため、SSPを中止した。
【0235】
本発明の技術的進歩
本発明のコポリエステルから成形したボトルおよび容器は、透明性が高く艶がよく、容器の色値および透明性は、ISBMによりボトル等級のPETで得られる色のよい透明容器と少なくとも同程度に良好である。
【0236】
本発明に基づく結晶化コポリエステル樹脂は、乾燥工程の直後から加工することができる。ポリマーチップは従来のホッパー乾燥器で、除湿空気を用いて160〜175℃にて乾燥することができる。ボトルの製造者が混合または配合を行う必要はない。
【0237】
本発明に基づくコポリエステル樹脂組成物は、溶融相重合および固相重合の両方で反応速度が早いため、迅速な加工が可能になるという利点を有する。
【0238】
本発明のコポリエステル樹脂組成物は、中空の容器、きわめて色がよく透明性の高いさまざまなデザイン、形状および容積の、持ち手が組み込まれているまたは組み込まれていないパリソンを製造するためのEBMへの応用に好適である。
【0239】
さまざまな物理的パラメータ、寸法または数量に関して記載された数値は単なる近似値であって、このパラメータ、寸法または数量に割り当てられた数値よりも高値/低値は、特に記載がない限り、本発明の適用範囲内であると考える。
【0240】
当然のことながら、望ましい実施態様の特別な特性に関して強調が行われていても、多くの追加的な特性を付け加えることができ、本発明の原則から離れることなくその好ましい実施態様において多くの変更を行うことができる。本発明の好ましい実施態様におけるこれらおよびその他の変更は、本明細書の開示内容をみれば当業者には明らかであり、前述の説明は本発明を説明するためだけのものであって、制限するものではないことは明確に理解される。