(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。
<第1実施形態>
太陽熱利用温水器1は、太陽の日射を受光し易い場所(例えば、屋根)に配置され、
図1A及び
図1Bに示すように、太陽からの日射を受けて太陽熱を集熱する太陽熱集熱器10と、この太陽熱集熱器10から放出された太陽熱を受けて蓄熱する蓄熱器20と、この蓄熱器20もしくは太陽熱集熱器10から放出された熱を受熱して外部(本実施形態では水道水)へ伝達する熱交換器30とを備え、これら太陽熱集熱器10、蓄熱器20及び熱交換器30を高さ(厚さ)方向に積層して形成されている。この第1実施形態では、熱交換器30の上に蓄熱器20が配置され、この蓄熱器20の上に太陽熱集熱器10が配置されている。このため、太陽熱利用温水器1の設置面積を抑えることができ、当該太陽熱利用温水器1の小型化を図ることができる。
【0014】
熱交換器30は、板状に形成されたベース板31と、このベース板31上に立設された複数のフィン(伝熱支柱)32,32・・とを備える。これらベース板31及びフィン32は、例えば、銅、アルミニウムなどの熱伝導性に優れた金属または上記金属からなる合金で形成され、当該ベース板31上に所定の間隔をあけて各フィン32がねじ止めやカシメ接合、溶接等によって固定されている。なお、ベース板31及びフィン32を一体に形成しても良い。これら各フィン32は、略同一の高さに形成され、当該フィン32の上端部に太陽熱集熱器10が固定されている。
【0015】
熱交換器30は、
図2に示すように、上記したフィン32が延びる方向に沿って配置される一対の入口ヘッダ33及び出口ヘッダ34と、これら入口ヘッダ33、出口ヘッダ34間を繋ぐ複数の連結管35,35・・とを備える。これら各連結管35は、例えば、銅、アルミニウムなどの熱伝導性に優れた金属または上記金属からなる合金で形成され、それぞれベース板31の下面に熱的に接続され、固定されている。
【0016】
また、入口ヘッダ33には給水源である上水道配管が接続され、出口ヘッダ34には給湯口に接続された給湯用配管が接続される。なお、過度に昇温した湯を適温に調整するために、給湯用配管に、給水源である上水道から分岐させた混合用配管を接続してもよい。給湯用配管を流れる湯に、混合用配管を通じて上水を混合することで、湯を適温に調整することができる。
【0017】
太陽熱集熱器10は、光吸収率を高める表面処理を行った集熱板11を備え、この集熱板11は熱交換器30のフィン32上に固定されている。この集熱板11は、上記した熱交換器30のベース板31、フィン32及び連結管35と同様に熱伝導性の優れた金属材で形成され、当該集熱板11で集められた太陽熱は、複数のフィン32を介して熱交換器30のベース板31に伝達される。
【0018】
蓄熱器20は、太陽熱集熱器10で集熱され、熱交換器30に伝達された太陽熱を蓄えるものである。この蓄熱器20は、複数に小分けされた蓄熱ユニット21,21・・を備え、これら蓄熱ユニット21が隣接するフィン32,32間に並べて配置されている。各蓄熱ユニット21は、潜熱蓄熱材を袋状のラミネート材でパッキングして形成されたものであり、
図1Aに示すように、当該蓄熱ユニット21の上面21A及び下面21Bがそれぞれ集熱板11及びベース板31に接触する高さに形成されている。さらに、集熱板11及びベース板31には、それぞれ蓄熱ユニット21を保持するための突起(図示略)が複数設けられており、当該蓄熱ユニット21を集熱板11とベース板31との間に固定するとともに、当該集熱板11及びベース板31と蓄熱ユニット21との間の熱伝達特性を向上させることができる。従って、集熱板11及びベース板31から伝達される太陽熱を蓄熱ユニット21内の潜熱蓄熱材に効率良く蓄熱することができる。
【0019】
潜熱蓄熱材は、その融解または凝固時の潜熱を利用して蓄熱または放熱する性質を有するものである。本実施形態では、潜熱蓄熱材として酢酸ナトリウム・3水和物を用いているが、上記した性質を有するものであれば特に限定されず、例えば、塩化マグネシウム・6水和物、水酸化バリウム・8水和物、チオ硫酸ナトリウム・5水和物、硝酸マグネシウム・6水和物、パラフィン、キシリトール等、及びこれらの混合物等を使用することができる。
【0020】
潜熱蓄熱材を利用すると、水などの顕熱を利用する手法よりも蓄熱密度が大きくなるので、蓄熱器20の小型化を図ることができる。さらに、潜熱蓄熱材をラミネート材でパッキングして小分けされた蓄熱ユニット21をベース板31上に並べて配置しているため、蓄熱器20の高さ(厚さ)を低く抑えることができ、ひいては太陽熱利用温水器1の小型化を実現できる。
【0021】
潜熱蓄熱材は、太陽熱の蓄熱後に冷却されると、いわゆる過冷却状態となって凝固点以下の温度に冷却されても凝固せず放熱が始まらないという性質を有する。このため、本実施形態では、蓄熱器20は、蓄熱ユニット21にそれぞれ刺激を与えて発熱(凝固)を誘発させる発熱トリガー機構22(
図2)が設けられている。この発熱トリガー機構22は、各蓄熱ユニット21に互いに独立して配置され、蓄熱ユニット21内に潜熱蓄熱材と接触する通電線と、この通電線を通じて潜熱蓄熱材へ電圧を印加するための操作スイッチとを備える。太陽熱利用温水器1の使用時に、この操作スイッチを作動させて潜熱蓄熱材に刺激を与えることで、蓄熱ユニット21内の潜熱蓄熱材の過冷却状態が解除され、この潜熱蓄熱材が凝固する際に、当該潜熱蓄熱材に蓄熱されていた熱が潜熱蓄熱材から熱交換器30のベース板31に放出される。さらに、各発熱トリガー機構22を個別に動作させることにより、各蓄熱ユニット21から必要な熱量だけを取り出すことができ、蓄熱された熱量を有効に利用することもできる。なお、蓄熱ユニット21に刺激を与える手段としては、電圧を印加するものに限らず、例えば、蓄熱ユニット21にせん断応力を加えるものや、液体状態である潜熱蓄熱材に種結晶を接触させる機構を有するものであっても良い。
【0022】
ラミネート材は、フィルム状の薄い部材からなる袋状容器であり、例えば、ポロプロピレン(PP)やポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)等の樹脂製である。潜熱蓄熱材がフィルム状のラミネート材でパッキングされることにより、蓄熱ユニット21は集熱板11及びベース板31に対して優れた接触性を有するとともに、これら集熱板11及びベース板31と潜熱蓄熱材とが直接接触して、集熱板11及びベース板31の腐食を防止できる。さらに、蓄熱ユニット21は、潜熱蓄熱材を袋状のラミネート材でパッキングして小分けされているため、蓄熱時に液化する潜熱蓄熱材の取り扱いを容易にすることができ、ベース板31上に簡単に蓄熱ユニット21を配置することができるとともに、蓄熱ユニット21の伝熱面積を大きく確保することができ、伝熱効率を向上させて素早く熱を取り出すことができる。
【0023】
ところで、複数の蓄熱ユニット21から熱交換器30に熱を伝達し、この熱交換器30で水を加温する場合、各蓄熱ユニット21から均等に熱を取り出すことが難しく、時間とともに熱回収量が減少するという問題が想定される。このため、本実施形態では、太陽熱利用温水器1は、
図2に示すように、蓄熱ユニット21,21間に配置されて複数のフィン32に熱的に接続されるヒートパイプ(均熱部材)40を備える。具体的には、これらヒートパイプ40は、熱交換器30の連結管35の延出方向と略平行に配置され、複数のフィン32に形成された貫通孔32Aをそれぞれ貫通して配置されている。なお、ヒートパイプ40は、フィン32と熱的に接続するように配置すればよく、例えば、各フィン32の上端部にそれぞれ切欠きを形成し、この切欠きにヒートパイプを配置(固定)する構成としても良い。
【0024】
ヒートパイプ40は、例えば、銅、アルミニウムなどの熱伝導性に優れた金属製または上記金属からなる合金製である密閉されたコンテナの内部に、作動液が減圧状態で封入されて形成されている。コンテナは、高さ(厚さ)を抑えて接触面積を多く確保するために、扁平な板状に形成されている。なお、コンテナの形状は、扁平な板状に限るものではなく、例えば、円柱形状に形成しても良い。
【0025】
ヒートパイプ40のコンテナ内部には毛細管力を発揮できるウィックが内壁に密着して配置されている。または、コンテナの内壁にグルーブが形成されていても良い。ヒートパイプ40の内部には、作動液の流路となる空間が設けられている。この空間に収容された作動液が蒸発・凝縮の相変化とヒートパイプ40内部の移動をすることによって、熱輸送が行われる。すなわち、ヒートパイプ40のコンテナが貫通される各フィン32間に温度差が生じている場合、高温のフィン32からコンテナへ伝達されてきた熱により、ヒートパイプ40の吸熱側において液相状態の作動液が蒸発して気相状態へ相変化し、作動液が蒸発して生成した蒸気がヒートパイプ40の吸熱側から放熱側である低温側のフィン32へ移動する。放熱側では、この蒸発した蒸気が冷却されることで作動液が気相状態から液相状態へ戻る。液相状態に戻った作動液は放熱側から再び吸熱側へ移動(還流)する。このように、太陽熱利用温水器1では、ヒートパイプ40を熱交換器30の複数のフィン32に貫通させて配置しているため、このヒートパイプ40を通じて複数のフィン32間で熱移動が行われ、当該フィン32の均熱化が行われる。このため、これら複数のフィン32が設けられている熱交換器30のベース板31の均熱化が行われ、ひいては、ベース板31上に配置されている複数の蓄熱ユニット21の均熱化が図られる。
【0026】
この第1実施形態によれば、熱交換器30のベース板31に立設された複数のフィン32に設けられた貫通孔32Aを貫通させてヒートパイプ40を配置しているため、このヒートパイプ40によって熱交換器30の均熱化が図られる。これにより、熱交換器30のベース板31上に配置された複数の蓄熱ユニット21が均熱化され、当該複数の蓄熱ユニット21に均等に熱を分配し蓄熱することができる。従って、一部の蓄熱ユニット21の温度が過剰に上昇し、劣化が進んで蓄熱器20の蓄熱能力にむらが生じることを防止できる。さらに、熱交換器30を通じて蓄えられた熱を水に受け渡す際(熱回収時)、ヒートパイプ40により複数の蓄熱ユニット21が均熱化されているため、各蓄熱ユニット21内の潜熱蓄熱材の凝固ペース(速度)を一定に保つことができ、当該複数の蓄熱ユニット21から熱を均等に取り出すことが可能となる。その結果、一部の蓄熱ユニット21が先に熱の放出を終了してしまい、温水への熱の供給が途中で止まってしまうことが防止され、これにより熱交換器30を通過して供給される温水温度の時間的な変動を抑制することができる。
【0027】
また、ヒートパイプ40は、複数の連結管35に沿って並設されているため、連結管35を流れる水の流れ方向と、ヒートパイプ40の熱の移動方向が略平行となる。これによれば、蓄熱ユニット21から熱を取りだす際に、ヒートパイプ40を通じて熱を均等に連結管35内の水に与えることができ、供給される温水温度の時間的な変動をより一層抑制することができる。
【0028】
なお、本実施形態では、各蓄熱ユニット21は、熱交換器30のベース板31及びフィン32を介して、ヒートパイプ40と熱的に接触する構成として説明したが、蓄熱ユニット21とヒートパイプ40とが直接接触することを妨げるものではなく、例えば、ヒートパイプ40に蓄熱ユニット21の一部を接触させた状態で、当該蓄熱ユニット21をベース板31上に配置しても良い。
また、本実施形態では、均熱部材の一例としてヒートパイプ40を用いた態様を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。均熱部材によって蓄熱ユニット21を均熱化するための別の態様としては、例えば熱伝導性の良い金属もしくは合金による棒状体等を均熱部材として用いる態様が考えられる。
【0029】
<第2実施形態>
図3Aは、第2実施形態にかかる太陽熱利用温水器50の側面図であり、
図3Bは、
図3AのB−B断面図、
図4は、集熱板を取り外した状態の太陽熱利用温水器50の平面図である。
太陽熱利用温水器50は、
図3A及び
図3Bに示すように、ヒートパイプ40を熱交換器30に熱的に接続する態様として、ヒートパイプ40が熱交換器30のベース板31の下面側に配置されている点、蓄熱ユニット61がフィン32と略同一の長さに一体に形成されている点で、上記した第1実施形態にかかる太陽熱利用温水器1と構成を異にしている。上記した太陽熱利用温水器1と同一の構成のものについては同一の符号を付して説明を省略する。
第2実施形態では、
図4に示すように、扁平の板状に形成されたヒートパイプ40の上面が熱交換器30のベース板31の下面と接触させた状態で固定されているため、ヒートパイプ40とベース板31との熱交換面積を大きく確保することができ、熱交換器30の均熱化をより効率良く行うことができる。
ヒートパイプ40の高さは、同じくベース板31の下面に配置されている複数の連結管35の高さと略同一に形成されているため、ヒートパイプ40が連結管35よりも大きく下方に突出することを防止でき、太陽熱利用温水器50の高さ(厚さ)方向の小型化を実現することができる。
【0030】
第2実施形態では、ヒートパイプ40がベース板31の下面側に配置されることにより、このベース板31の上面側には、その分大きなスペースが生じる。このため、フィン32,32間には、当該フィン32の長さと略同一の長さを有する扁平板状に形成された蓄熱ユニット61が配置されている。この蓄熱ユニット61は、フィン32の高さと略同一の高さに形成され、当該蓄熱ユニット61の上面61A及び下面61Bがそれぞれ集熱板11及びベース板31に接触している。
【0031】
このため、第1実施形態と比べて、高さ(厚さ)方向に大型化することなく、ベース板31上に配置される潜熱蓄熱材の量を増大することができ、より長時間にわたり熱交換器30を通過して供給される温水温度の時間的な変動を抑制することができる。なお、蓄熱ユニット61は、第1実施形態にかかる蓄熱ユニット21と大きさが異なるがその他の構成については同じである。また、フィン32,32間に当該フィン32と略同一の長さに亘って蓄熱ユニットを配置できるのであれば、小さく小分けされた蓄熱ユニットを複数並べても良い。
【0032】
この第2実施形態によれば、ヒートパイプ40がベース板31の下面側に固定配置されるため、熱交換器30はヒートパイプ40により均熱化される。これにより、熱交換器30のベース板31上に配置される複数の蓄熱ユニット61は、集熱板11からの熱を受け取り蓄熱する過程においても互いに均熱化されている。このため、各蓄熱ユニット61に均等に熱を蓄積することが可能となることにより、一部の蓄熱ユニット61の温度が過剰に上昇し、劣化が進んで蓄熱器60の蓄熱能力にむらが生じることを防止できる。さらに、熱交換器30を通じて蓄えられた熱を水に受け渡す際、ヒートパイプ40により複数の蓄熱ユニット61が均熱化されているため、当該複数の蓄熱ユニット61から熱を均等に取り出すことが可能となる。その結果、一部の蓄熱ユニット61が先に熱の放出を終了してしまい、温水への熱の供給が途中で止まってしまうことが防止され、これにより熱交換器30を通過して供給される温水温度の時間的な変動を抑制することができる。
【0033】
また、上記した第1実施形態及び第2実施形態では、太陽熱利用温水器1、50は、太陽熱集熱器10、蓄熱器20、60及び熱交換器30を上下方向に積層する構成としていたが、これに限るものではなく、これら太陽熱集熱器10、蓄熱器20、60及び熱交換器30を、例えば、水平方向に重ねて配置するものであっても良い。
【0034】
<第3実施形態>
図5Aは、第3実施形態にかかる太陽熱利用温水器80の側面図であり、
図5Bは、
図5AのB−B断面図、
図6は、太陽熱利用温水器80の平面図である。
太陽熱利用温水器80は、
図5A及び
図5Bに示すように、太陽熱集熱器10と、この太陽熱集熱器10から放出された太陽熱を受けて蓄熱する蓄熱器90と、この蓄熱器90から放出された熱を受熱して外部(本実施形態では水道水)へ伝達する熱交換器100とを備え、この熱交換器30の上に蓄熱器90が積層されて配置されるとともに、当該熱交換器100及び蓄熱器90に対して太陽熱集熱器10を横並びに配置して形成されている。この太陽熱集熱器10と熱交換器100とは移送用ヒートパイプ110にて熱的に接続されている。
【0035】
熱交換器100は、板状に形成されたベース板101と、このベース板101上に立設された複数のフィン102,102・・とを備える。これらベース板101及びフィン102は、例えば、銅、アルミニウムなどの熱伝導性に優れた金属または上記金属からなる合金で形成され、当該ベース板101上に所定の間隔をあけて各フィン102がねじ止めやカシメ接合、溶接等によって固定されている。なお、ベース板101及びフィン102を一体に形成しても良い。
熱交換器100は、
図6に示すように、上記したフィン102が延びる方向に沿って配置される一対の入口ヘッダ103及び出口ヘッダ104と、これら入口ヘッダ103、出口ヘッダ104間を繋ぐ複数の連結管105,105・・とを備える。これら各連結管105は、例えば、銅、アルミニウムなどの熱伝導性に優れた金属または上記金属からなる合金で形成され、それぞれベース板101の下面に固定されている。また、入口ヘッダ103には給水源である上水道配管が接続され、出口ヘッダ104には給湯口に接続された給湯用配管が接続される。なお、過度に昇温した湯を適温に調整するために、給湯用配管に、給水源である上水道から分岐させた混合用配管を接続してもよい。給湯用配管を流れる湯に、混合用配管を通じて上水を混合することで、湯を適温に調整することができる。
【0036】
蓄熱器90は、太陽熱集熱器10で集熱され、移送用ヒートパイプ110を通じて熱交換器100に伝達された太陽熱を蓄えるものである。この蓄熱器90は、複数に小分けされた蓄熱ユニット91を備え、これら蓄熱ユニット91が隣接するフィン102,102間に狭持されている。蓄熱ユニット91は、上記した実施形態と同様に、それぞれ発熱トリガー機構22(
図6)が配置されるとともに、潜熱蓄熱材を袋状のラミネート材でパッキングして形成され、
図5Aに示すように、扁平な蓄熱ユニット91を立てて隣接するフィン102,102間に配置されている。
【0037】
蓄熱ユニット91は、
図5Aに示すように、当該蓄熱ユニット91の一方の面91A及び他方の面91Bがそれぞれ隣接するフィン102,102に接触する厚みに形成されている。さらに、各フィン102には、それぞれ蓄熱ユニット91を保持するための突起(図示略)が複数設けられており、当該蓄熱ユニット91を隣接するフィン102,102間に固定するとともに、当該フィン102と蓄熱ユニット91との間の熱伝達特性を向上させることができる。従って、フィン102から伝達される太陽熱を蓄熱ユニット91内の潜熱蓄熱材に効率良く蓄熱することができる。
【0038】
また、この実施形態では、太陽熱利用温水器80は、
図6に示すように、太陽熱集熱器10と熱交換器100とを熱的に接続する移送用ヒートパイプ(熱移送部材)110と、この移送用ヒートパイプ110に並設されたヒートパイプ(均熱部材)120とを備える。このヒートパイプ120は、上記したヒートパイプ40と同様に熱交換器100のフィン102に形成された貫通孔102Aを貫通して配置され、熱交換器100及びこの熱交換器100のフィン102,102間にそれぞれ配置される複数の蓄熱ユニット91の均熱化を図るものである。なお、この第3実施形態では、ヒートパイプ120を円柱状に形成し、フィン102に形成された貫通孔102Aを貫通して配置しているが、このヒートパイプを扁平な板状に形成し、熱交換器100のベース板101の下面に配置して良い。
【0039】
一方、移送用ヒートパイプ110は、太陽熱集熱器10で集熱された太陽熱を蓄熱器90に移送するためのものであり、円柱状に形成された移送部110Aと、この移送部110Aに連結された均熱部110Bとを備え、移送部110Aが太陽熱集熱器10の集熱板11に固定され、均熱部110Bが熱交換器100の複数のフィン102に貫通して固定されている。
図6では、移送用ヒートパイプ110が1本のみの例を示しているが、移送用ヒートパイプ110は、当然複数本あって良い。
【0040】
この実施形態では、太陽熱利用温水器80は、熱交換器100が太陽熱集熱器10よりも高さ位置が上方となるように、太陽の日射を受光し易い場所(例えば、屋根)に斜めに配置されることが望ましい。この構成によれば、移送用ヒートパイプ110では、均熱部110Bが移送部110Aよりも上側に位置することにより、重力に逆らって移送部110Aから均熱部110Bへの作動液の還流が抑制されるため、夜間等に太陽熱集熱器10の集熱板11が冷却された場合であっても、蓄熱器90から太陽熱集熱器10への熱の逆流を抑えることができる。
なお、移送用ヒートパイプの移送部から均熱部への作動液の還流が抑制するための構成として、均熱部の内部にウィック等の毛細管力を発生させる機構を設けるのに対し、移送部の内部には当該毛細管力を発生させる機構を設けない構成としてもよい。この構成では、熱交換器を太陽熱集熱器よりも上方に配置しなくても、移送部から均熱部への作動液の還流が抑制されるため、例えば、平坦な屋根の上に太陽熱利用温水器を設置することができ、当該太陽熱利用温水器の設置態様の多様化を実現できる。
【0041】
この構成では、太陽熱集熱器10と横並びに、蓄熱器90及び熱交換器100が上下に積層されて配置され、太陽熱集熱器10と蓄熱器90とが移送用ヒートパイプ110により熱的に接続されているため、太陽熱集熱器10から蓄熱器90への熱輸送を効率良く行うことができる。さらに、熱交換器100のフィン102,102間に蓄熱ユニット91を立てて配置したことにより、熱交換器100の設置面積の増大を抑えることができ、太陽熱集熱器10と横並びに、蓄熱器90及び熱交換器100が上下に積層されて配置された構成とした場合であっても、太陽熱利用温水器80の小型化を図ることができる。
【0042】
また、熱交換器100のベース板101に立設された複数のフィン102に設けられた貫通孔102Aを貫通させてヒートパイプ120及び移送用ヒートパイプ110の均熱部110Bを配置しているため、これらヒートパイプ120及び移送用ヒートパイプ110の均熱部110Bによって熱交換器100の均熱化が図られる。これにより、熱交換器100のフィン102,102間に配置された複数の蓄熱ユニット91が均熱化され、当該複数の蓄熱ユニット91に均等に熱を分配し蓄熱することができる。従って、一部の蓄熱ユニット91の温度が過剰に上昇し、劣化が進んで蓄熱器90の蓄熱能力にむらが生じることを防止できる。さらに、熱交換器100を通じて蓄えられた熱を水に受け渡す際、ヒートパイプ120及び移送用ヒートパイプ110の均熱部110Bにより複数の蓄熱ユニット91が均熱化されているため、当該複数の蓄熱ユニット91から熱を均等に取り出すことが可能となる。その結果、一部の蓄熱ユニット91が先に熱の放出を終了してしまい、温水への熱の供給が途中で止まってしまうことが防止され、これにより熱交換器100を通過して供給される温水温度の時間的な変動を抑制することができる。
【0043】
<第4実施形態>
太陽熱利用温水器130は、
図7A及び
図7Bに示すように、熱交換器100に設けられて入口ヘッダ103と出口ヘッダ104とを繋ぐ連結管106がそれぞれ入口ヘッダ103から出口ヘッダ104に向かって徐々に拡径している点で、上記した太陽熱利用温水器80と構成を大きく異にしている。その他の構成について、上記した太陽熱利用温水器80と同一の構成のものについては同一の符号を付して説明を省略する。
【0044】
この第4実施形態では、各連結管106は、
図8に示すように、入口ヘッダ103側の端部106Aよりも出口ヘッダ104側の端部106Bが大きく形成されており、入口ヘッダ103から出口ヘッダ104に向かって徐々に拡径している。出口ヘッダ104側の端部106Bの径の大きさは、当該連結管106を流れる水の流量、流速等によって決定される。
【0045】
この構成によれば、移送用ヒートパイプ110の均熱部110Bによって熱交換器100の均熱化が図られるため、熱交換器100のフィン102,102間に配置された複数の蓄熱ユニット91が均熱化され、当該複数の蓄熱ユニット91に均等に熱を分配し蓄熱することができる。従って、一部の蓄熱ユニット91の温度が過剰に上昇し、劣化が進んで蓄熱器90の蓄熱能力にむらが生じることを防止できる。
【0046】
また、熱交換器100を通じて蓄えられた熱を水に受け渡す際、移送用ヒートパイプ110の均熱部110Bにより複数の蓄熱ユニット91が均熱化される。更に、上記連結管106がそれぞれ入口ヘッダ103から出口ヘッダ104に向かって徐々に拡径しているため、当該連結管106を流れる水の流速が下流側ほど遅くなることにより、複数の蓄熱ユニット91から熱を均等に取り出すことが可能となる。その結果、一部の蓄熱ユニット91が先に熱の放出を終了してしまい、温水への熱の供給が途中で止まってしまうことが防止され、これにより熱交換器100を通過して供給される温水温度の時間的な変動を抑制することができる。
【0047】
<第5実施形態>
上記した各実施形態にかかる太陽熱利用温水器では、蓄熱器の複数の蓄熱ユニットをヒートパイプ(均熱部材)で均熱化する構成について説明した。この構成では、各蓄熱ユニットは、過冷却を生じる同一種類の潜熱蓄熱材を備え、同一温度で相変化する性質を有する。このため、各蓄熱ユニットを順番に潜熱蓄熱することは実質的に困難であり、すべての蓄熱ユニットに対して一様に潜熱蓄熱することとなる。従って、例えば、曇天等により日射量が少ない場合には、すべての蓄熱ユニットの潜熱蓄熱が終了しないまま(少なくとも一部の蓄熱ユニットが部分的に固相を残したまま)日没を迎える可能性がある。この場合、蓄熱ユニットは、残った固相を核にして固化が進み、常温(例えば20℃)に下がるまでの過程で、過冷却状態になれないため、潜熱を保持しておくことができず、顕熱分だけでなく潜熱分も放熱により失われてしまうという問題が想定される。この問題を解決するため、本実施形態では、蓄熱器は、蓄熱ユニットごとに、融点の異なる潜熱蓄熱材を備えている。
【0048】
図9は、第5実施形態にかかる太陽熱利用温水器200の平面図であり、集熱板11を取り外した状態を示している。本実施形態では、太陽熱利用温水器200の蓄熱器20は、融点の異なる潜熱蓄熱材を有する2種類の蓄熱ユニット221,222を備える点で、上記第1実施形態にかかる太陽熱利用温水器1と構成を異にする。その他の構成は、太陽熱利用温水器1と同一であるため、同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。なお、本実施形態では、融点の異なる潜熱蓄熱材を有する2種類の蓄熱ユニット221,222を備える構成としたが、これに限るものではなく、融点の異なる潜熱蓄熱材を有する3種類以上の蓄熱ユニットを備えても良いことは勿論である。
【0049】
蓄熱器20は、
図9に示すように、融点の低い(例えば50℃)潜熱蓄熱材(低融点蓄熱材)を備える低融点潜熱蓄熱ユニット221と、この低融点潜熱蓄熱ユニット221内の潜熱蓄熱材よりも融点の高い(例えば60℃)潜熱蓄熱材(高融点蓄熱材)を備える高融点潜熱蓄熱ユニット222とを備える。低融点蓄熱材及び高融点蓄熱材の組み合わせとしては、例えば、酢酸ナトリウム・3水和物と水酸化バリウム・8水和物の組み合わせや、チオ硫酸ナトリウム・5水和物と水酸化マグネシウム・6水和物の組み合わせを用いることができる。
これら低融点潜熱蓄熱ユニット221及び高融点潜熱蓄熱ユニット222をベース板31上に並べて配置されている。具体的には、低融点潜熱蓄熱ユニット221及び高融点潜熱蓄熱ユニット222は、熱交換器30の連結管35の延出方向(行方向)及びフィン32の延出方向(列方向)にそれぞれ交互に配置され、いわゆる市松模様を形成している。
【0050】
太陽熱利用温水器200は、太陽熱集熱器10、蓄熱器20及び熱交換器30を高さ(厚さ)方向に積層して形成されている。このため、日射による太陽熱は、太陽熱集熱器10の集熱板11全体で集められ、この集熱板11と接触する低融点潜熱蓄熱ユニット221及び高融点潜熱蓄熱ユニット222に一様に伝達される。
本実施形態では、低融点潜熱蓄熱ユニット221及び高融点潜熱蓄熱ユニット222は、市松模様状に配置されているため、当該低融点潜熱蓄熱ユニット221は、集熱板11の下に均一にバラけた状態で配置される。
このため、各蓄熱ユニットのどの領域に入った太陽熱も、近傍にある低融点潜熱蓄熱ユニット221の潜熱蓄熱に利用することができるようになり、先に低融点蓄熱材、次に高融点蓄熱材という順で潜熱蓄熱させることができる。
【0051】
更に、太陽熱利用温水器200は、ヒートパイプ40を備えるため、このヒートパイプ40を通じて、低融点潜熱蓄熱ユニット221及び高融点潜熱蓄熱ユニット222が均熱化される。このため、各蓄熱ユニット221,222の温度が、最も融点の低い低融点潜熱蓄熱ユニット221の低融点蓄熱材の融点に達した後は、高融点潜熱蓄熱ユニット222の顕熱上昇に費やされる熱が、ヒートパイプ40により高融点潜熱蓄熱ユニット222から低融点潜熱蓄熱ユニット221へと輸送され、低融点潜熱蓄熱ユニット221に優先的に蓄熱される。
従って、例えば、曇天等により、日射量が十分でない場合であっても、少なくとも低融点潜熱蓄熱ユニット221には、固相を残さず蓄熱することが可能になる。このため、顕熱分が失われて温度が低下した後でも、低融点潜熱蓄熱ユニット221は、過冷却により低融点蓄熱材の潜熱蓄熱分を保持することができ、当該蓄熱した熱量を水と熱交換し、湯として有効に利用することができる。
【0052】
一方、晴天等の日射量が十分にある場合には、各蓄熱ユニット221,222の温度は、高融点潜熱蓄熱ユニット222の潜熱蓄熱材の融点まで上昇する。このため、各蓄熱ユニット221,222の温度が高融点潜熱蓄熱ユニット222の潜熱蓄熱材の融点に達した後は、低融点潜熱蓄熱ユニット221の顕熱上昇に費やされる熱が、ヒートパイプ40により低融点潜熱蓄熱ユニット221から高融点潜熱蓄熱ユニット222へと輸送され、高融点潜熱蓄熱ユニット222に蓄熱される。従って、低融点潜熱蓄熱ユニット221及び高融点潜熱蓄熱ユニット222には、段階的に蓄熱されることにより、当該低融点潜熱蓄熱ユニット221及び高融点潜熱蓄熱ユニット222に確実に蓄熱することが可能となり、当該蓄熱した熱量を有効に利用することができる。
【0053】
本実施形態では、
図9に示すように、低融点潜熱蓄熱ユニット221及び高融点潜熱蓄熱ユニット222は、略同等に配置されている。上述のように、低融点潜熱蓄熱ユニット221は、日射量が十分でない場合の蓄熱量に関係するため、多い方が望ましいと考えられる。しかし、低融点潜熱蓄熱ユニット221が高融点潜熱蓄熱ユニット222に比べて過多な場合には、高融点潜熱蓄熱ユニット222から低融点潜熱蓄熱ユニット221への熱の輸送が低減するため、低融点潜熱蓄熱ユニット221に固相を残さず蓄熱することが困難となる。
これに対して、低融点潜熱蓄熱ユニット221を高融点潜熱蓄熱ユニット222に比べて過少な場合には、低融点潜熱蓄熱ユニット221への蓄熱量が減少してしまう。
このため、本実施形態では、低融点潜熱蓄熱ユニット221及び高融点潜熱蓄熱ユニット222を略同等に配置することにより、蓄熱器20への蓄熱量を確保しつつ、低融点潜熱蓄熱ユニット221に対する確実な蓄熱を図っている。
【0054】
続いて、蓄熱された熱を利用する場合について説明する。
低融点潜熱蓄熱ユニット221及び高融点潜熱蓄熱ユニット222に対して、蓄熱を完了した場合、これら低融点潜熱蓄熱ユニット221と高融点潜熱蓄熱ユニット222とでは、潜熱蓄熱材の相変化温度(融点)が異なるため、熱交換器30における熱交換温度にムラができ、それによって生成する温水の温度も場所によるムラが生じるおそれがある。
しかし、本実施形態では、低融点潜熱蓄熱ユニット221及び高融点潜熱蓄熱ユニット222は、ヒートパイプ40によって均熱化されているため、各蓄熱ユニット221,222から熱を取りだす際に、ヒートパイプ40を通じて熱を均等に連結管35内の水に与えることができ、供給される温水温度の場所によるムラを抑制できる。
また、低融点潜熱蓄熱ユニット221のみ蓄熱を完了し、高融点潜熱蓄熱ユニット222には蓄熱されていない場合には、高融点潜熱蓄熱ユニット222は、相変化せず一定温度に保持されないため、熱交換温度にムラができ、それによって生成する温水の温度も場所によるムラが生じるおそれがある。
しかし、この場合であっても、本実施形態では、低融点潜熱蓄熱ユニット221及び高融点潜熱蓄熱ユニット222は、ヒートパイプ40によって均熱化されているため、各蓄熱ユニット221,222から熱を取りだす際に、ヒートパイプ40を通じて熱を均等に連結管35内の水に与えることができ、供給される温水温度の場所によるムラを抑制できる。
【0055】
このように、本実施形態では、蓄熱器20が低融点潜熱蓄熱ユニット221及び高融点潜熱蓄熱ユニット222を備えるとともに、これら低融点潜熱蓄熱ユニット221及び高融点潜熱蓄熱ユニット222をヒートパイプ40で均熱化しているため、熱交換器30における熱交換温度のムラがなくなる。このため、異なる融点を持つ蓄熱ユニットの配置には制約は無くなり、低融点潜熱蓄熱ユニット及び高融点潜熱蓄熱ユニットを偏った配置としても問題なく、これら低融点潜熱蓄熱ユニット及び高融点潜熱蓄熱ユニットがそれぞれヒートパイプと熱的に接続されていれば、当該蓄熱ユニット同士が一端で直接接触していても構わない。
【0056】
例えば、
図10A及び
図10Bに示すように、変形例にかかる太陽熱利用温水器201では、蓄熱器20は、低融点潜熱蓄熱ユニット223及び高融点潜熱蓄熱ユニット224を備え、これら各蓄熱ユニット223,224を高さ(厚さ)方向に積層して構成されている。
【0057】
具体的には、高融点潜熱蓄熱ユニット224は、その下面224Bがベース板31と接触するように当該ベース板31上に配置され、この高融点潜熱蓄熱ユニット224上にそれぞれ低融点潜熱蓄熱ユニット223が、その上面223Aを集熱板11と接触するように配置されている。低融点潜熱蓄熱ユニット223及び高融点潜熱蓄熱ユニット224は、これらを積層した際の高さがフィン32の高さと略同一となるように形成される。
この構成では、蓄熱器20は、融点の異なる潜熱蓄熱材を有する低融点潜熱蓄熱ユニット223及び高融点潜熱蓄熱ユニット224を備え、ベース板31上に高融点潜熱蓄熱ユニット224を配置し、この高融点潜熱蓄熱ユニット224上に低融点潜熱蓄熱ユニット223を積層するとともに、当該低融点潜熱蓄熱ユニット223上に集熱板11を配置した。このため、集熱板11で集めた太陽熱は、この集熱板11と接触する低融点潜熱蓄熱ユニット221の潜熱蓄熱に利用され、先に低融点蓄熱材、次に高融点蓄熱材という順で潜熱蓄熱させることができる。従って、日射量が少なくても、低融点潜熱蓄熱ユニット223に固相を残さず蓄熱できるので、曇天時でも効率よく太陽熱を利用できる。
【0058】
<第6実施形態>
図11は、第6実施形態にかかる太陽熱利用温水器210の平面図である。この実施形態では、蓄熱器90が融点の異なる潜熱蓄熱材を有する2種類の蓄熱ユニット191,192を備える点で、上記第3実施形態にかかる太陽熱利用温水器80と構成を異にする。その他の構成は、太陽熱利用温水器80と同一であるため、同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態では、蓄熱器90は、
図11に示すように、低融点蓄熱材を備える低融点潜熱蓄熱ユニット191と、この低融点潜熱蓄熱ユニット191内の低融点蓄熱材よりも融点の高い高融点蓄熱材を備える高融点潜熱蓄熱ユニット192とを備える。低融点蓄熱材及び高融点蓄熱材の組み合わせとしては、例えば、酢酸ナトリウム・3水和物と水酸化バリウム・8水和物の組み合わせや、チオ硫酸ナトリウム・5水和物と水酸化マグネシウム・6水和物の組み合わせを用いることができる。
低融点潜熱蓄熱ユニット191及び高融点潜熱蓄熱ユニット192は、それぞれ隣接するフィン102,102間に狭持されるとともに、これら低融点潜熱蓄熱ユニット191及び高融点潜熱蓄熱ユニット192が、熱交換器100の連結管105の延出方向(行方向)に交互に配置して構成されている。また、低融点潜熱蓄熱ユニット191及び高融点潜熱蓄熱ユニット192は略同等に配置されている。
【0059】
この構成においても、蓄熱器90は、融点の異なる潜熱蓄熱材を有する低融点潜熱蓄熱ユニット191及び高融点潜熱蓄熱ユニット192を、熱交換器100の連結管105の延出方向(行方向)に交互に配置することで、日射量が少なくても、低融点潜熱蓄熱ユニット191に固相を残さず蓄熱できるので、曇天時でも効率よく太陽熱を利用できる。
【0060】
また、低融点潜熱蓄熱ユニット191及び高融点潜熱蓄熱ユニット192の配置構成は、
図11に限るものではない。例えば、
図12に示すように、低融点潜熱蓄熱ユニット191及び高融点潜熱蓄熱ユニット192を、熱交換器100の連結管105の一端側と他端側とで区分けして配置しても良い。本変形例では、低融点潜熱蓄熱ユニット191が入口ヘッダ103側(上流側)に配置され、高融点潜熱蓄熱ユニット192が出口ヘッダ104側(下流側)に配置される。
【0061】
ヒートパイプ120を設けない構成では、低融点潜熱蓄熱ユニット191及び高融点潜熱蓄熱ユニット192を区分けてして配置した場合、集熱板11で集められた太陽熱が各蓄熱ユニットに均一に伝わっていくため、低融点潜熱蓄熱ユニット191へ優先的に蓄熱されず、高融点潜熱蓄熱ユニット192へも同時に蓄熱されてしまう。
これに対して、本構成では、ヒートパイプ120を使用して、低融点潜熱蓄熱ユニット191及び高融点潜熱蓄熱ユニット192の均熱化を図っているため、高融点潜熱蓄熱ユニット192の蓄熱が進んで高温になることを防ぎ、高融点潜熱蓄熱ユニット192の顕熱を低融点潜熱蓄熱ユニット191へ輸送し、低融点潜熱蓄熱ユニット191へ優先的に蓄熱させることができる。このようにヒートパイプ120を使用することにより、低融点潜熱蓄熱ユニット191及び高融点潜熱蓄熱ユニット192の配置に関する制約をなくすことができる。
【0062】
更に、本変形例では、低融点潜熱蓄熱ユニット191が入口ヘッダ103側(上流側)に配置され、高融点潜熱蓄熱ユニット192が出口ヘッダ104側(下流側)に配置されているため、蓄熱利用時において、低融点潜熱蓄熱ユニット191及び高融点潜熱蓄熱ユニット192のそれぞれから一様な熱密度で熱を取り出すことができるようになる。従って、水の流れの上流側の潜熱蓄熱材が先に潜熱放出を終了してしまうことないため、供給される温水温度の時間変化が小さくなるという効果を奏する。
なお、本実施形態では、第3実施形態にかかる太陽熱利用温水器80の蓄熱器90が、融点の異なる蓄熱材を有する複数の蓄熱ユニットを備える構成として説明したが、融点の異なる蓄熱材を有する複数の蓄熱ユニットを備えるのであれば、他の実施形態にかかる太陽熱利用温水器50、130に対して適用しても良いことは勿論である。
<第7実施形態>
【0063】
太陽熱利用温水器150は、太陽の日射を受光し易い場所(例えば、屋根)に配置され、
図13Aに示すように、太陽からの日射を受けて太陽熱を集熱する太陽熱集熱器10と、この太陽熱集熱器10から放出された太陽熱を受けて蓄熱する蓄熱器60と、この蓄熱器60もしくは太陽熱集熱器10から放出された熱を受熱して外部(本実施形態では水道水)へ伝達する熱交換器30とを備え、これら太陽熱集熱器10、蓄熱器60及び熱交換器30を高さ(厚さ)方向に積層して形成されている。本実施形態では、熱交換器30の上に蓄熱器60が配置され、この蓄熱器60の上に太陽熱集熱器10が配置されている。このため、太陽熱利用温水器150の設置面積を抑えることができ、当該太陽熱利用温水器150の小型化を図ることができる。
【0064】
熱交換器30は、板状に形成されたベース板31と、このベース板31上に立設された複数のフィン32,32・・とを備える。これらベース板31及びフィン32は、例えば、銅、アルミニウムなどの熱伝導性に優れた金属または上記金属からなる合金で形成され、当該ベース板31上に所定の間隔をあけて各フィン32がねじ止め等によって固定されている。なお、ベース板31及びフィン32を一体に形成しても良い。これら各フィン32は、略同一の高さに形成され、当該フィン32の上端部に太陽熱集熱器10が固定されている。
熱交換器30は、
図14に示すように、上記したフィン32が延びる方向に沿って配置される一対の入口ヘッダ33及び出口ヘッダ34と、これら入口ヘッダ33、出口ヘッダ34間を繋ぐ複数の連結管36,36・・とを備える。これら各連結管36は、例えば、銅、アルミニウムなどの熱伝導性に優れた金属または上記金属からなる合金で形成され、それぞれベース板31の下面に固定されている。
【0065】
また、入口ヘッダ33には給水源である上水道配管が接続され、出口ヘッダ34には給湯口に接続された給湯用配管が接続される。なお、過度に昇温した湯を適温に調整するために、給湯用配管に、給水源である上水道から分岐させた混合用配管を接続してもよい。給湯用配管を流れる湯に、混合用配管を通じて上水を混合することで、湯を適温に調整することができる。
【0066】
太陽熱集熱器10は、ベース板31と略同じ大きさの板状に形成され、光吸収率を高める表面処理を行った集熱板11を備え、この集熱板11は熱交換器30のフィン32上に固定されている。この集熱板11は、上記した熱交換器30のベース板31,フィン32及び連結管35と同様に熱伝導性の優れた金属材で形成され、当該集熱板11で集められた太陽熱は、複数のフィン32を介して熱交換器30に伝達される。
【0067】
蓄熱器60は、太陽熱集熱器10で集熱され、熱交換器30に伝達された太陽熱を蓄えるものである。この蓄熱器60は、小分けされた複数の蓄熱ユニット61,61・・を備え、これら蓄熱ユニット61が隣接するフィン32,32間に並べて配置されている。各蓄熱ユニット61は、潜熱蓄熱材を袋状のラミネート材でパッキングして形成されたものであり、
図13Aに示すように、当該蓄熱ユニット61の上面61A及び下面61Bがそれぞれ集熱板11及びベース板31に接触する高さ(厚さ)に形成されている。さらに、集熱板11及びベース板31には、それぞれ蓄熱ユニット61を保持するための突起(図示略)が複数設けられており、当該蓄熱ユニット61を集熱板11とベース板31との間に固定するとともに、当該集熱板11及びベース板31と蓄熱ユニット61との間の熱伝達特性を向上させることができる。従って、集熱板11及びベース板31から伝達される太陽熱を蓄熱ユニット61内の潜熱蓄熱材に効率良く蓄熱することができる。
【0068】
潜熱蓄熱材は、その融解または凝固時の潜熱を利用して蓄熱または放熱する性質を有するものである。本実施形態では、潜熱蓄熱材として酢酸ナトリウム・3水和塩を用いているが、上記した性質を有するものであれば特に限定されず、例えば、塩化マグネシウム・6水和塩、水酸化バリウム・8水和塩、チオ硫酸ナトリウム・5水和物、硝酸マグネシウム・6水和物、パラフィン、キシリトール等、及びこれらの混合物等を使用することができる。
【0069】
潜熱蓄熱材を利用すると、水などの顕熱を利用する手法よりも蓄熱密度が大きくなるので、蓄熱器60の小型化を図ることができる。さらに、潜熱蓄熱材をラミネート材でパッキングして小分けされた蓄熱ユニット61をベース板31上に配置しているため、太陽熱利用温水器1の高さ(厚さ)を低く抑えることができ、当該太陽熱利用温水器1の小型化を実現できる。
【0070】
潜熱蓄熱材は、太陽熱の蓄熱後に冷却されると、いわゆる過冷却状態となって凝固点以下の温度に冷却されても凝固せず放熱が始まらないという性質を有する。このため、本実施形態では、蓄熱器60は、蓄熱ユニット61にそれぞれ刺激を与えて発熱(凝固)を誘発させる発熱トリガー機構22(
図14)が設けられている。この発熱トリガー機構22は、各蓄熱ユニットに互いに独立して配置され、蓄熱ユニット61内に潜熱蓄熱材と接触する通電線と、この通電線を通じて潜熱蓄熱材へ電圧を印加するための操作スイッチとを備える。太陽熱利用温水器150の使用時に、この操作スイッチを作動させて潜熱蓄熱材に刺激を与えることで、蓄熱ユニット61内の潜熱蓄熱材の過冷却状態が解除され、この潜熱蓄熱材が凝固する際に、当該潜熱蓄熱材に蓄熱されていた熱が潜熱蓄熱材から熱交換器30のベース板31に放出される。さらに、各発熱トリガー機構22を個別に動作させることにより、各蓄熱ユニット61から必要な熱量だけを取り出すことができ、蓄熱された熱量を有効に利用することができる。なお、蓄熱ユニット61に刺激を与える手段としては、電圧を印加するものに限らず、例えば、蓄熱ユニット61にせん断応力を加えるものや、液体状態である潜熱蓄熱材に種結晶を接触させる機構を有するものであっても良い。
【0071】
ラミネート材は、フィルム状の薄い部材からなる袋状容器であり、例えば、ポロプロピレン(PP)やポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)等の樹脂製である。潜熱蓄熱材がフィルム状のラミネート材でパッキングされることにより、蓄熱ユニット61は集熱板11及びベース板31に対して優れた接触性を有するとともに、これら集熱板11及びベース板31と潜熱蓄熱材とが直接接触して、集熱板11及びベース板31の腐食を防止できる。さらに、蓄熱ユニット61は、潜熱蓄熱材を袋状のラミネート材でパッキングして小分けされているため、蓄熱時に液化する潜熱蓄熱材の取り扱いを容易にすることができ、ベース板31上に簡単に蓄熱ユニット61を配置することができるとともに、蓄熱ユニット61の伝熱面積を大きく確保することができ、伝熱効率を向上させて素早く熱を取り出すことができる。
【0072】
ところで、複数の蓄熱ユニット61から熱交換器30に熱を伝達し、この熱交換器30で水を加温する場合、各蓄熱ユニット61から均等に熱を取り出すことが難しく、時間とともに熱回収量が減少するという問題が想定される。このため、本実施形態では、熱交換器30の入口ヘッダ33と出口ヘッダ34とを繋ぐ連結管36は、
図13B及び
図13Cに示すように、入口ヘッダ33側の端部36Aよりも出口ヘッダ34側の端部36Bが大きく形成されており、
図14に示すように、入口ヘッダ33から出口ヘッダ34に向かって徐々に拡径している。出口ヘッダ34側の端部36Bの径の大きさは、当該連結管36を流れる水の流量、流速等によって決定される。ここで、上記した入口ヘッダ33、出口ヘッダ34及び複数の連結管36が均熱部材を構成する。
【0073】
第7実施形態によれば、熱交換器30の上に蓄熱器60が配置され、この蓄熱器60の上に太陽熱集熱器10が配置されている。このため、太陽熱利用温水器150の設置面積を抑えることができ、当該太陽熱利用温水器150の小型化を図ることができる。また、熱交換器30は、ベース板31に立設された複数のフィン32,32を備え、このフィン32,32上に太陽熱集熱器10の集熱板11を配置しているため、この集熱板11で集熱した太陽熱は、フィン32,32を通じてベース板31に伝達されることにより、このベース板31上に配置された蓄熱ユニット61に効率良く蓄熱することができる。
更に、上記連結管36がそれぞれ入口ヘッダ33から出口ヘッダ34に向かって徐々に拡径しているため、当該連結管36を流れる水の流速が下流側ほど遅くなることにより、複数の蓄熱ユニット61から熱を均等に取り出すことが可能となる。その結果、一部の蓄熱ユニット61が先に熱の放出を終了してしまい、温水への熱の供給が途中で止まってしまうことが防止され、これにより熱交換器30を通過して供給される温水温度の時間的な変動を抑制することができる。
なお、本実施形態では、蓄熱器60の各蓄熱ユニット61は、過冷却を生じる同一種類の潜熱蓄熱材を備える構成としたが、これに限るものではなく、蓄熱器60が融点の異なる潜熱蓄熱材を有する複数種類の蓄熱ユニットを備える構成としても良いことは勿論である。
【0074】
また、上記した第1〜第7実施形態において、少なくとも蓄熱器及び熱交換器をケース体(不図示)に収容し、このケース体ごと屋根の上に配置する構成としても良い。この場合、ケース体は断熱性の高い材料で形成することが望ましい。さらに、太陽熱利用温水器全体をケース体に収容し、当該ケース体の、太陽熱集熱器(集熱板)に対向する面をガラス等の透光性を有する部材で形成する構成としても良い。