【実施例】
【0020】
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0021】
[実施例1 金属抽出剤:PMF18及びPPA−(FO−180)
2の合成]
2L反応フラスコにイソステアリルアルコール(日産化学工業(株)製、製品名:ファインオキソコール、グレード:FO−180、2−(4,4−ジメチルペンタン−2−イル)−5,7,7−トリメチルオクタン−1−オール、下記式(3)で表される化合物参照)を200.09g(740mmol)、5−エチル−2−メチルピリジンを94.45g(779mmol)仕込み、トルエン350mLを添加して内容物を溶解し、攪拌して0℃に冷却した。この反応溶液に、フェニルホスホニックジクロリド(日産化学工業(株)製)144.41g(741mmol)をトルエン25mLに溶解させた溶液を、氷水で0℃に冷却しながら90分かけて滴下した。その後、常温に戻しながら反応溶液を14時間間撹拌した。
その後、反応溶液を分液ロートに移し、水400mLを加え、有機相を2回洗浄した。残った有機相を2L反応フラスコに戻し、水酸化ナトリウム水溶液(6N)164gを添加し、12時間攪拌した。その後、ヘキサン400g、アセトニトリル200g、イオン交換水400gを投入して攪拌して静置し、水相を分取した。残った有機相に、ヘキサン800g、イオン交換水500gを投入して攪拌して静置し、水相を分取した。この2つの水相を混合し、ヘキサン200gを投入して攪拌して静置し、水相を分取した。残った有機相に水酸化ナトリウム水溶液(6N)12g、アセトニトリル200g、イオン交換水600gを投入して攪拌して静置し、水相を分取して、2つの水相を混合した。水相にヘキサン200g、アセトニトリル150gを加えて攪拌し、静置して水相を分取するという操作を5回繰り返して、水相Aを得た。
上記で分液した際の有機相を合わせて減圧濃縮し、ジエステル化合物であるPPA−(FO−180)
2(黄色オイル)72.23g(14.7%、2−(4,4−ジメチルペ
ンタン−2−イル)−5,7,7−トリメチルオクタン−1−オール基準)を得た。
また、水相Aにトルエン650gと塩酸水溶液(6N)248gを加え、攪拌して中和し、有機相を分取した。ここにイオン交換水200gを加えて攪拌、静置、分液することで有機層を洗浄するという操作を10回繰り返し、最終的に得られた有機相を減圧濃縮して、PMF18(淡黄色オイル)214.24gを得た(収率70.6%)。
【化5】
【0022】
反応生成物のPMF18、約10mgを石英皿上に精秤し、ホットプレート上で段階的に加熱(350℃、約5分間 → 450℃、約5分間 → 540℃、約10分間)し
た後、放冷した。その後、電気炉にて550℃で約60分間熱処理した後、放冷した。ここに硝酸(関東化学製、ELグレード)を1mLと純水を適量加え、ホットプレート上にて200℃で加熱することでPMF18を溶解し、ポリプロピレン(PP)容器を用いて純水により合計量10gに希釈した。
この溶液のNa含有量について、ICP−OES装置(セイコーインスツル(株)製、Vista−PRO)により分析し、あらかじめナトリウムイオン標準液(和光純薬工業(株)製、(Naイオン:1,000mg/L))を希釈して調製した溶液で作成した検量線を用いて算出した。数回の定量分析の平均値として得られた反応生成物のPMF18のNa含有量は14ppmであった。同様に、Al、Ca、Co、Cr、Cu、Fe、K、Li、Mg、Mn、Ni、Pb、Ti、V、Znを定量したところ、いずれも10ppm以下であった。
【0023】
次に、反応生成物のPMF18、約10mgを試料ボート上に精秤し、燃焼管(三菱化学(株)製、自動試料燃焼装置:AQF−100)中で加熱(900℃)し、発生したガスを吸収液5mL(内部標準として臭化物イオン0.5ppm添加)に吸収させた。この溶液の塩化物イオン含有量について、イオンクロマト装置(ダイオネクス社製、ICS−1500)により分析し、あらかじめ塩化物イオン標準液を希釈して調製した溶液で作成した検量線を用いて算出した。数回の定量分析の平均値として得られた反応生成物のPMF18の塩化物イオン含有量は15ppm以下であった。
【0024】
得られたPMF18の
1H−NMR測定結果を以下に示す。
[PMF18]
・
1H−NMR(300MHz,CDCl
3,δppm):8.76(1H,s),7.80(2H,dd,J=6.6Hz、J=6.6Hz),7.55−7.39(3H,m),4.00−3.83(2H,m),1.81−1.62(1H,m),1.55−1.30(2H,m),1.28−0.91(8H,m),0.87−0.78(24H,m)
【0025】
得られたPPA−(FO−180)
2の
1H−NMR測定結果及び質量分析結果を以下に示す。
[PPA−(FO−180)
2]
・
1H−NMR(300MHz,CDCl
3,δppm):7.84−7.77(2H,m),7.57−7.42(3H,m),4.06−3.82(4H,m),1.86−1.65(2H,m),1.55−1.33(4H,m),1.32−0.95(16H,m),0.90−0.82(48H,m)
・MS(CI) m/z:662.55
【0026】
[実施例2:水への溶解度]
実施例1で得られたPMF18と、比較としてPC−88A(大八化学工業(株)製)について、濃度が0.5mol/dm
3となるようにケロシン(和光純薬工業(株)製)
を用いてそれぞれ希釈し、溶液形態の金属抽出剤を調製した。
金属抽出剤(有機相)と表1に示す所定濃度の硫酸(水相)をそれぞれ15cm
3ずつ
栓付遠心分離管にいれて接触させ、縦型振盪機で15分間振盪して、遠心分離を行った。水相中の有機炭素濃度を全有機体炭素計((株)島津製作所製、TOC−VCSN)により測定した。
得られた結果を表1に示す。
【0027】
【表1】
【0028】
表1に示すとおり、実施例1で得られたPMF18を用いた金属抽出剤は、何れの硫酸濃度においても水相への溶解率が極めて低く、PC−88Aと比較するとその溶解率は10分の1以下であった。
【0029】
[実施例3:希土類金属の分離係数の測定]
<抽出試験方法>
PC−88A(大八化学工業(株)製)またはPMF18をケロシン(和光純薬工業(株)製)で希釈し、0.1mol/Lとなるように調製し、金属抽出剤(有機相)とした。
供試水相として、希土類酸化物を硫酸に溶解させたものを用いた。水相の初期の希土類金属イオン濃度は5×10
-3mol/Lであった。
抽出操作は、10mLの供試水相と10mLの有機相とを栓付遠心分離管に採取し、縦型振盪機を用いて15分間、300rpmの振盪速度で振盪して行った。その後、遠心分離器を用いて10分間1,500rpmで両相を分離した。水溶液中に残存している金属イオン濃度は、ICP発光分析装置を用いて測定した。平衡時の有機相中の金属濃度は、初期水相金属イオン濃度と平衡水相金属イオン濃度の差として物質収支により求めた。
平衡時の有機相中の金属濃度をC
MO、平衡時の水相中の金属濃度をC
MAとし、各金属の分配比D(D=C
MO/C
MA)を用いて、各金属間の分離係数β(β=D
A/D
B;D
A 金
属Aの分配比、D
B 金属Bの分配比;分子及び分母はβ=1以上となるように決定)を
求めた。得られた結果を表2に示す。
また、
図1に実施例1で得られたPMF18を用いた金属抽出剤による各希土類金属の抽出曲線を、
図2にPC−88Aを用いた金属抽出剤による各希土類金属の抽出曲線を示す。
【0030】
【表2】
【0031】
表2に示すように、実施例1で得られたPMF18を用いた金属抽出剤は、特にランタン(La)−セリウム(Ce)混合物、Ce−プラセオジム(Pr)混合物、Pr−ネオジム(Nd)混合物、ガドリニウム(Gd)−テルビウム(Tb)混合物の分離において、PC−88Aよりも優れた分離能を有するとする結果が得られた。
【0032】
[実施例4:金属の分離係数の測定]
実施例3と同様の抽出試験方法を用いて、マンガン(Mn)、銅(Cu)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)に関する分離係数を求めた。得られた結果を表3に示す。
また
図3に、実施例1で得られたPMF18を用いた金属抽出剤による金属(マンガン、銅、コバルト、ニッケル)の抽出曲線を示す。
【0033】
【表3】
【0034】
[実施例5:Pr−Ndの分離係数の測定]
<抽出試験方法>
水相の希土類金属イオン濃度が5×10
-3mol/dm
3となるように、Pr
6O
11及びNd
2O
3を1mol/dm
3の塩酸水溶液に溶解し、それぞれの単味溶液を供試水相とし
て用いて実験を行った。下記表4に示す抽出剤をケロシンを用いて0.1mol/dm
3
に希釈したものを金属抽出剤(有機相)とした。供試水相は水酸化ナトリウム水溶液及び塩酸水溶液により種々のpHに調整した。供試水相のpHはpHメーター(堀場製作所(
株)F−54)により測定した。供試水相と有機相を遠心分離管に15cm
3ずつ採取し
、縦型振盪機を用いて20分間、300rpmの振盪速度で振盪した。次いで、遠心分離機を用いて15分間、1500rpmで両相を分離した後、水相を採取し水相中の金属イオン濃度を誘導結合プラズマ発光分光光度計(ICPS−7000 ver.2、(株)島津製作所、以下ICP)により測定した。この測定値よりPr−Ndに関する分離係数βを求めた。得られた結果を表4に示す。
【0035】
【表4】
【0036】
表4に示すように、実施例1で得られたPMF18を用いた金属抽出剤は、プラセオジム(Pr)−ネオジム(Nd)の分離において、炭化水素基の全炭素原子数が18であるものの分岐炭素原子数が1個のフェニルホスホン酸エステル類、炭化水素基の全炭素原子数が8または13のフェニルホスホン酸エステル類、PC−88Aよりも優れた分離能を有するとする結果が得られた。
【0037】
[実施例6:Co−Niの分離係数の測定]
実施例5と同様の抽出試験方法を用いて、コバルト(Co)−ニッケル(Ni)に関する分離係数βを求めた。得られた結果を表5に示す。
【0038】
【表5】
【0039】
表5に示すように、実施例1で得られたPMF18を用いた金属抽出剤は、Co−Niの分離において、炭化水素基の全炭素原子数が18であるものの分岐炭素原子数が1個のフェニルホスホン酸エステル類、炭化水素基の全炭素原子数が8のフェニルホスホン酸エステル類よりも優れた分離能を有するとする結果が得られた。