特許第5931767号(P5931767)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5931767光反射材料用硬化性樹脂組成物、該組成物の硬化物、該組成物の硬化物からなるリフレクター及びこれを用いた光半導体デバイス
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  • 特許5931767-光反射材料用硬化性樹脂組成物、該組成物の硬化物、該組成物の硬化物からなるリフレクター及びこれを用いた光半導体デバイス 図000037
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5931767
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】光反射材料用硬化性樹脂組成物、該組成物の硬化物、該組成物の硬化物からなるリフレクター及びこれを用いた光半導体デバイス
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20160526BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20160526BHJP
   C08L 83/14 20060101ALI20160526BHJP
   C08K 7/00 20060101ALI20160526BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20160526BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20160526BHJP
   H01L 33/60 20100101ALI20160526BHJP
   C08G 77/50 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
   C08L83/07
   C08L83/05
   C08L83/14
   C08K7/00
   H01L23/30 F
   H01L33/00 432
   C08G77/50
【請求項の数】7
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2013-18195(P2013-18195)
(22)【出願日】2013年2月1日
(65)【公開番号】特開2014-148609(P2014-148609A)
(43)【公開日】2014年8月21日
【審査請求日】2015年1月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】小内 諭
(72)【発明者】
【氏名】原田 良文
【審査官】 久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−151143(JP,A)
【文献】 特開2012−069794(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/039434(WO,A1)
【文献】 特開平04−164966(JP,A)
【文献】 特開2009−259839(JP,A)
【文献】 特開2010−132795(JP,A)
【文献】 特開2012−140556(JP,A)
【文献】 特開2012−233035(JP,A)
【文献】 特開2010−021533(JP,A)
【文献】 特開2012−140548(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0145000(US,A1)
【文献】 特開2010−013503(JP,A)
【文献】 特開2005−272697(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0213926(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08G 77/00−77/62
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光反射材料用硬化性樹脂組成物であって、光反射材である鱗片状又はフレーク状の無機充填材が、熱硬化性樹脂組成物に分散されているものであり、
前記熱硬化性樹脂組成物が、
(A)下記一般式(1)で表される構造を有する化合物:
【化1】
(式中、Rは脂肪族不飽和基であり、Rは同種または異種の、非置換もしくは置換の一価炭化水素基であり、Arは同種または異種の、ヘテロ原子を有してもよいアリール基であり、nは1以上の整数である。)
(B)下記平均組成式(2)で表される構造を有し、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する化合物:
SiO(4−a−b)/2 (2)
(式中、Rは、互いに同一又は異種の非置換もしくは置換の、ケイ素原子に結合した一価炭化水素基(但し、脂肪族不飽和基を除く)であり、a及びbは、0.7≦a≦2.1、0.001≦b≦1.0、かつ0.8≦a+b≦3.0を満足する正数である。)
(C)白金族金属を含むヒドロシリル化触媒
を含む硬化性シリコーン樹脂組成物であることを特徴とする光反射材料用硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記鱗片状又はフレーク状の無機充填材が、金属粒子であるニッケル、銀、アルミニウム、又はそれらの合金、無機粒子であるマイカ、アルミナ、ガラス、シリカ、又はそれらの金属被覆体の中から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の光反射材料用硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記一般式(1)で示される(A)成分において、Arがフェニル基であり1≦n≦100であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光反射材料用硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記熱硬化性樹脂組成物に、下記(D)成分を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の光反射材料用硬化性樹脂組成物。
(D)下記平均組成式(3)で表される構造を有する化合物:
Rc(CSiO(4−c−d)/2(3)
(式中、Rは、同一又は異なり、置換もしくは非置換の、一価炭化水素基又はアルコキシ基及び水酸基のいずれか(但し、フェニル基を除く)であり、全Rのうち0.1〜80mol%がアルケニル基であり、c,dは1≦c+d≦2、0.20≦d/(c+d)≦0.95を満たす正数である。)
【請求項5】
請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の光反射材料用硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項6】
請求項に記載の硬化物を使用したものであって、波長430〜800nmにおける初期光反射率が95%以上であり、150℃、2,000時間放置後の光反射率が80%以上であることを特徴とするリフレクター。
【請求項7】
請求項に記載のリフレクターを使用したものであることを特徴とする光半導体デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光反射材料、特に白色LED(発光ダイオード)用リフレクター材料として有用な硬化物を与える光反射材料用硬化性樹脂組成物、該組成物の硬化物からなる白色発光ダイオード用リフレクター及びこれを用いた光半導体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
LED等の光半導体素子は電力消費量が少ないという優れた特性を有するため、近年では屋外照明用途や自動車用途への光半導体素子の適用が増えてきている。このような用途のパッケージのより一層の小型化、薄型化を目的として、表面実装型の光半導体装置が利用されている。
従来の表面実装型の光半導体装置は、例えば特許文献1のように、光半導体素子を搭載するためのパッドを兼ねた第1のリード、及び第2のリードを有し、各リードを支持し、かつ光半導体素子への通電により得られた光を効果的に反射する役割を担う樹脂成型体(リフレクター)を備えた構造を有している。
【0003】
この表面実装型の光半導体装置において、従来では、ポリアミド(ナイロン系材料)や液晶ポリマーに代表される熱可塑性樹脂がリフレクターとして用いられている。熱可塑性樹脂は分子内に芳香族成分を有するため耐光性に乏しく、近年の光半導体素子の出力向上に伴い、長期にわたり光反射を続けると変色し、やがて黒色になり光半導体装置の発光効率を低下させ、寿命が大幅に短縮化するという問題がある。また、一般に熱可塑性樹脂は接着性を有していないため、リードや光半導体素子の保護のために用いられる封止樹脂との接着が得られないことから、容易に水、空気、その他光半導体に有害な硫黄酸化物の進入を許す。このためリード表面にある光反射効率を高めるためにメッキされた銀などの金属が硫化又は酸化し、光反射効率を低下させるという問題もある。
【0004】
これらの問題を改善するために、特許文献2では、リードフレーム基板の上に熱硬化性樹脂のリフレクターをトランスファー成型により成型した光半導体素子搭載用パッケージ基板が提案されており、前記問題を解決する一つの手段として開発が進められ、更に、前記熱硬化性樹脂として用いられる、熱硬化性樹脂組成物の開発が進められている。
【0005】
そして、特許文献3では、白色LED(発光ダイオード)用リフレクターに好適な材料として有用なシリコーン樹脂硬化物が提案されている。また、特許文献4では、アクリル系の官能基を有するアダマンタン樹脂とシリコーン樹脂とを混ぜ合わせた混合樹脂と硬化剤と球状の粒子形状のアルミナを混ぜ合わせた白色熱硬化性樹脂組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−087780号公報
【特許文献2】特許第4608294号
【特許文献3】特開2010−202831号公報
【特許文献4】特開2012−164729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記提案のようなリフレクターを備えた光半導体素子搭載用パッケージ基板は、機械的な信頼性に優れる一方で、明るさ(輝度)を測定すると、従来の、ポリアミド(ナイロン系材料)や液晶ポリマーに代表される熱可塑性樹脂をリフレクターとして用いたパッケージ基板を使用した場合と比べ、同等程度の輝度しか得られていない。従って、より高輝度が得られるリフレクター用熱硬化性樹脂組成物の開発が望まれていた。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、光反射材料、特に白色LED用リフレクター材料として有用な樹脂硬化物を与える光反射材料用硬化性樹脂組成物、該光反射材料用硬化性樹脂組成物の硬化物からなる白色発光ダイオード用リフレクター及び該リフレクターを用いた光半導体デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明によれば、光反射材料用硬化性樹脂組成物であって、光反射材である鱗片状又はフレーク状の無機充填材が、熱硬化性樹脂組成物に分散されているものであることを特徴とする光反射材料用硬化性樹脂組成物を提供する。
【0010】
このような光反射材料用硬化性樹脂組成物であれば、光の正反射成分の割合が増加され、より高輝度を有する硬化物を与える光反射材料用硬化性樹脂組成物となる。
【0011】
また、前記鱗片状又はフレーク状の無機充填材が、金属粒子であるニッケル、銀、アルミニウム、又はそれらの合金、無機粒子であるマイカ、アルミナ、ガラス、シリカ、又はそれらの金属被覆体の中から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0012】
このような、鱗片状又はフレーク状の無機充填材であれば、光の正反射性を高めることができるとともに安価である。
【0013】
また、前記熱硬化性樹脂組成物が、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂の中から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0014】
このような熱硬化性樹脂組成物であれば、リードフレーム形状を保持することができ、硬化後に硬質となるため、光半導体デバイスを保護することができる。
【0015】
また、前記熱硬化性樹脂組成物が、
(A)下記一般式(1)で表される構造を有する化合物:
【化1】
(式中、Rは脂肪族不飽和基であり、Rは同種または異種の、非置換もしくは置換の一価炭化水素基であり、Arは同種または異種の、ヘテロ原子を有してもよいアリール基であり、nは1以上の整数である。)
(B)下記平均組成式(2)で表される構造を有し、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する化合物:
SiO(4−a−b)/2 (2)
(式中、Rは、互いに同一又は異種の非置換もしくは置換の、ケイ素原子に結合した一価炭化水素基(但し、脂肪族不飽和基を除く)であり、a及びbは、0.7≦a≦2.1、0.001≦b≦1.0、かつ0.8≦a+b≦3.0を満足する正数である。)
(C)白金族金属を含むヒドロシリル化触媒
を含む硬化性シリコーン樹脂組成物であることが好ましい。
【0016】
このような熱硬化性樹脂組成物であれば、透明性、耐熱性、耐光性の観点から、光反射材料に有用である。
【0017】
また、前記一般式(1)で示される(A)成分において、Arがフェニル基であり1≦n≦100であることが好ましい。
【0018】
このように(A)成分において、一般式(1)中のArがフェニル基であれば、屈折率、透明性に優れると共に、耐クラック性もより優れたものとなる。
【0019】
また、前記熱硬化性樹脂組成物に、下記(D)成分を含むことが好ましい。
(D)下記平均組成式(3)で表される構造を有する化合物:
Rc(CSiO(4−c−d)/2(3)
(式中、Rは、同一又は異なり、置換もしくは非置換の、一価炭化水素基又はアルコキシ基及び水酸基のいずれか(但し、フェニル基を除く)であり、全Rのうち0.1〜80mol%がアルケニル基であり、c,dは1≦c+d≦2、0.20≦d/(c+d)≦0.95を満たす正数である。)
【0020】
このような上記(D)成分を含むことによって、硬化後の硬度を得ることができる。
【0021】
また、前記熱硬化性樹脂組成物が、
(E):(X)ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に少なくとも2個有する有機ケイ素化合物と、(Y)ヒドロシリル化反応性炭素−炭素二重結合を1分子中に2個有する多環式炭化水素化合物との付加反応生成物であって、かつ、ケイ素原子に結合した炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個有する多環式炭化水素基含有有機ケイ素化合物、
(F):ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に3個以上有するシロキサン化合物又は有機変性シロキサン化合物及び両者の組み合わせのいずれか、
(C):白金族金属を含むヒドロシリル化触媒
を含む硬化性変性シリコーン樹脂組成物であることが好ましい。
【0022】
このような熱硬化性樹脂組成物であれば、透明性、耐熱性、耐光性の観点から、光反射材料に有用である。
【0023】
また、前記(E)成分中の(X)成分が下記一般式(4)で表されるものであることが好ましい。
【化2】
[式中のAは、下記一般式(5):
【化3】
(式中、R’は独立に非置換もしくは置換の炭素原子数1〜12の1価炭化水素基または炭素原子数1〜6のアルコキシ基であり、mは0〜100の整数である)
で表される基、および下記構造式(6):
【化4】
で表される基から成る群から選ばれる2価の基であり、
R”は独立に非置換もしくは置換の炭素原子数1〜12の1価炭化水素基または炭素原子数1〜6アルコキシ基である]
【0024】
このようなSiH基を少なくとも2個有する化合物が好ましい。
【0025】
また、前記(Y)成分の多環式炭化水素化合物が、5−ビニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン及び6−ビニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンの少なくとも一つであることが好ましい。
【0026】
このように、ヒドロシリル化反応性炭素−炭素二重結合を1分子中に2個有する多環式炭化水素化合物が好ましい。
【0027】
また、前記(F)成分が、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンであることが好ましい。
【0028】
このような化合物であれば、工業的に製造することが容易であり、入手がしやすいため好ましい。また、ヒドロシリル化反応性炭素−炭素二重結合とヒドロシリル化反応により付加して、3次元網状構造の硬化物を与えることができる。
【0029】
また、前記(F)成分が、5−ビニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、6−ビニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンまたは前記両者の組み合わせと、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンとの付加反応生成物であることが好ましい。
【0030】
このようなSiHを1分子中に3個以上有する付加反応生成物であれば、ヒドロシリル化反応性炭素−炭素二重結合とヒドロシリル化反応により付加して、3次元網状構造の硬化物を与えることができる。
【0031】
また、本発明は、上記光反射材料用硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物を提供する。
【0032】
このような硬化物であれば、光反射材料、特に白色LED用リフレクター材料として有用な樹脂硬化物となる。
【0033】
そして、本発明は、光反射材料用硬化性樹脂組成物の硬化物を使用したものであって、波長430〜800nmにおける初期光反射率が95%以上であり、150℃、2,000時間放置後の光反射率が80%以上であることを特徴とするリフレクターを提供する。
【0034】
このような本発明の硬化物を用いたリフレクターであれば、光の正反射成分の割合が増加され、パッケージからの光取り出し効率を高めることが出来る。
【0035】
さらに、前記リフレクターを使用したものであることを特徴とする光半導体デバイスを提供する。
【0036】
このように、本発明のリフレクターを用いた白色LED等の発光装置は長期間にわたって高い光取り出し効率を維持できる。
【発明の効果】
【0037】
以上説明したように、本発明の光反射材料用硬化性樹脂組成物は、鱗片状又はフレーク状の無機充填材を含有することで光の正反射成分の割合が増加されるため、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物をリフレクター材料として用いることでパッケージからの光取り出し効率を高めることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明における光反射材による反射(正反射)を示した概略図である。
図2】従来の拡散材による反射(散乱)を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
前述のように、光反射材料、特に白色LED用リフレクター材料として有用な樹脂硬化物を与える光反射材料用硬化性樹脂組成物の開発が求められていた。
【0040】
ここで、従来のリフレクター用材料は、図2に示すように、バインダーとなる熱硬化性樹脂組成物2に酸化チタンに代表される光拡散微粒子3を含有させてなるものを、成型させることで得られるが、該リフレクターの表面近傍に存在する光拡散微粒子3によって光が散乱され、その結果、光半導体素子からのパッケージ外へ向かう指向性の高い光が、一部パッケージ内に反射されてしまい、明るさが向上されなかった。
これは、パッケージ内に反射した光が数度の反射・屈折を繰り返すうちに減衰され、パッケージ外に取り出される光が減少するためである。
【0041】
そこで、本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意検討を重ねた結果、図1に示すように、光反射材である鱗片状又はフレーク状の無機充填材1を熱硬化性樹脂組成物2に含有させた硬化性樹脂組成物を成型・硬化させることにより、リフレクター表面近傍に鱗片状又はフレーク状の無機充填材1の層が積層され、光半導体素子からの光の一部をパッケージ内に戻すことなく、指向性を持ったまま反射することが可能となる。これによりパッケージからの光取り出し効率を高めることが出来ることを見出し、本発明を完成させた。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0042】
[光反射材]
本発明の光反射材料用硬化性樹脂組成物は、光反射材として鱗片状又はフレーク状の無機充填材を含有することにより、光の正反射成分の割合を高めていることを特徴とする。
鱗片状又はフレーク状の無機充填材は、金属粒子であれば、ニッケル、銀、アルミニウム、又はそれらの合金、無機粒子であれば、マイカ、アルミナ、ガラス、シリカ、又はそれらの金属被覆体の中から選択される少なくとも1種であるものが挙げられる。これら無機充填材は1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0043】
鱗片状又はフレーク状の無機充填材の粒径は、特に制限はないが、分散性や成型時の充填性から、平均粒経が0.1〜100μm、好ましくは1〜50μm、厚さは好ましくは0.01〜10μm、より好ましくは0.1〜5μmである。平均粒径が100μm以下であれば、樹脂の流動性、狭小部への充填性を損なう恐れがない。
【0044】
金属粒子としては、ニッケル、銀、アルミニウム、またはそれらの合金、またはそれらの樹脂被覆金属粒子を挙げることができる。特に好ましくは、光の反射率の点から銀である。
【0045】
無機粒子としては、マイカ、アルミナ、ガラス、シリカ、またはそれらの金属被覆粒子をあげることが出来る。光反射性の観点から透明又は白色であることが好ましく、不純物の少ない人工マイカ、アルミナ、ガラス、シリカが好ましい。
【0046】
更に、光反射性を高めるために、機能性微粒子が内包されていても良い。ここでいう機能性微粒子には、光の反射性を高める目的で酸化マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム等、チタン酸バリウム、酸化チタンに代表される白色微粒子、また、樹脂の強度を高める目的で煙霧状シリカ、ナノアルミナに代表される充填材を好適に用いることができる。
【0047】
上記鱗片状又はフレーク状の無機充填材は、分散性や耐水性、耐薬品性、耐候性等を向上させるための表面処理が施されたものであってもよい。
また、その他目的に応じて、顔料、蛍光物質、反射性物質からなる群から選択される少なくとも1種を混合することもできる。
【0048】
以上説明した光反射材の、熱硬化性樹脂組成物中の配合量は任意に配合することが出来るが、熱硬化性樹脂組成物に対し、好ましくは1〜50体積%、より好ましくは2〜30体積%である。配合量が1体積%以上であると、十分な光反射を実現することができ、また50体積%以下であると、成形性も良好である。
【0049】
[熱硬化性樹脂組成物]
本発明に用いられる熱硬化性樹脂組成物はリードフレーム形状を保持するため、及び光半導体デバイスを保護するために硬化後に硬質となるものが好ましく、また、耐熱性、耐候性、耐光性に優れた樹脂であることが好ましい。
【0050】
熱硬化性樹脂組成物は、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂中から選択される少なくとも1種を含むものが好ましい。硬化前には液状であり、その25℃における粘度は好ましくは5〜500Pa・sであり、より好ましくは10〜400Pa・sである。該粘度が5〜500Pa・sの範囲であると、得られる組成物は、作業性・取扱い性が良好となりやすく、成形硬化時に泡や空気の巻き込みが発生しにくい。本発明の熱硬化性組成物の粘度は、光拡散材、無機充填材、および他の配合成分の配合比率、これら成分の中で液状のものの粘度、ならびに光拡散材及び無機充填材等の平均粒径などにより調節される。
【0051】
また、透明性、耐熱性、耐光性の観点から、硬化性シリコーン樹脂組成物及び硬化性変性シリコーン樹脂組成物であると、なお好ましい。例えば以下に例示するような組成物が好ましいが、これらに限定されるわけではない。
【0052】
[硬化性シリコーン樹脂組成物]
以下、本発明に有効な硬化性シリコーン樹脂組成物は以下(A)〜(C)成分、更に(D)成分を含むものであることが好ましい。この各成分につき、詳細に説明する。
(A)成分
本発明で用いられる(A)成分は、主鎖がジアリールシロキサン単位の繰り返しを有する直鎖状のジオルガノポリシロキサンである。(A)成分のオルガノポリシロキサンは、一種単独で用いてもよく、分子量、ケイ素原子に結合した有機基の種類等が相違する二種以上を併用してもよい。
(A)下記一般式(1)で表される構造を有する化合物:
【化5】
(式中、Rは脂肪族不飽和基であり、Rは同種または異種の、非置換もしくは置換の一価炭化水素基であり、Arは同種または異種の、ヘテロ原子を有してもよいアリール基であり、nは1以上の整数である。)
【0053】
(A)成分において、式(1)中のArとしてのアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等の芳香族炭化水素基、又はフラニル基等のヘテロ原子(O,S,N)を含む芳香族基であり、更に該アリール基はハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子)等の置換基を有してもよい。Arは好ましくは非置換の芳香族炭化水素基であり、特に好ましくはフェニル基である。
【0054】
式(1)中のRとしての脂肪族不飽和基は、付加反応開始前には本発明の光反射材料用硬化性樹脂組成物を未硬化の状態で安定的に維持することができ、かつ、付加反応開始後には該硬化性樹脂組成物を容易に硬化させることができるものであればよく、例えば、エチレン性不飽和基、及びアセチレン性不飽和基が挙げられる。前記脂肪族不飽和基は、同一でも異なってもよく、1分子中に少なくとも2個含有する。このように(A)成分は、両末端に脂肪族不飽和基を含むものがより好ましい。
【0055】
ここで、「エチレン性不飽和基」とは、炭素−炭素二重結合を含み、更に酸素原子、窒素原子等のヘテロ原子を含む又は含まない有機基をいい、その具体例としては、ビニル基、アリル基、5−ヘキセニル基、プロペニル基、ブテニル基等の炭素原子数2〜20、好ましくは2〜10のアルケニル基;1,3−ブタジエニル基等の炭素原子数4〜10のアルカジエニル基;アクリロイルオキシ基(−O(O)CCH=CH)、メタクリロイルオキシ基(−O(O)CC(CH)=CH)等の、前記アルケニル基とカルボニルオキシ基との組み合わせ;アクリルアミド基(−NH(O)CCH=CH)等の、前記アルケニル基とカルボニルアミノ基との組み合わせが挙げられる。
【0056】
また、「アセチレン性不飽和基」とは、炭素−炭素三重結合を含み、更に酸素原子、窒素原子等のヘテロ原子を含む又は含まない有機基をいい、その具体例としては、エチニル基、プロパルギル基等の炭素原子数2〜20、好ましくは2〜10のアルキニル基;エチニルカルボニルオキシ基(−O(O)CC≡CH)等の、前記アルキニル基とカルボニルオキシ基との組み合わせが挙げられる。
【0057】
中でも、(A)成分の原料を得るときの生産性及びコスト、(A)成分の反応性等の観点から、前記脂肪族不飽和基としては、前記アルケニル基が好ましく、ビニル基、アリル基及び5−ヘキセニル基がより好ましく、特にビニル基が好ましい。
【0058】
(A)成分の式(1)中のRとしての非置換又は置換の一価炭化水素基としては、下記脂肪族不飽和基、及びこの脂肪族不飽和基以外の一価炭化水素基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等の炭素原子数1〜6のアルキル基;クロロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等の炭素原子数1〜4のハロアルキル基;フェニル基、トリル基等の炭素原子数6〜10のアリール基が挙げられる。脂肪族不飽和基以外の一価炭化水素基の中では、炭素原子数1〜6のアルキル基、フェニル基、ビニル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。
【0059】
(A)成分において、ジアリールシロキサン単位の重合度nは1以上の整数であり、1〜100の整数であることが好ましく、1〜20の整数であることがより好ましく、2〜10の整数であることが更に好ましい。
【0060】
(A)成分は、例えばジクロロジフェニルシランやジアルコキシジフェニルシラン等の二官能性シランを加水分解・縮合させた後、又は加水分解・縮合と同時に、脂肪族不飽和基含有の末端封止剤で末端を封止することにより得ることができる。
【0061】
(B)成分
(B)成分は、1分子あたり少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)を有し、そして脂肪族不飽和基を有さない有機ケイ素化合物(SiH基含有有機ケイ素化合物)であり、(A)成分とヒドロシリル化付加反応し、架橋剤として作用する。(B)成分は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。(B)成分としては、1分子あたり少なくとも2個のSiH基を有するケイ素化合物である限り、公知のいかなる化合物でも使用することができる。
【0062】
(B)成分中のケイ素原子に結合した有機基は、脂肪族不飽和基を有さない、非置換の一価炭化水素基又はハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子)、エポキシ基含有基(例えば、エポキシ基、グリシジル基、グリシドキシ基)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基)等で置換された一価炭化水素基である。このような一価炭化水素基としては、例えば、(A)成分の式(1)中のRの非置換又は置換の一価炭化水素基として具体的に例示した炭素原子数1〜6のアルキル基;炭素原子数1〜4のハロアルキル基;炭素原子数6〜10のアリール基が挙げられる。該有機基は好ましくは炭素原子数1〜6のアルキル基、又は炭素原子数6〜10のアリール基であり、より好ましくはメチル基、又はフェニル基である。また、一価炭化水素基の置換基としてエポキシ基含有基及び/又はアルコキシ基を有する場合、本発明組成物の硬化物に接着性を付与することができる。
【0063】
(B)成分が1分子あたり少なくとも2個のSiH基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである限り、該オルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造に特に制限はなく、例えば、直鎖状、環状、分岐鎖状、三次元網状構造(樹脂状)等の、従来製造されている各種のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを使用することができる。
【0064】
前記オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1分子中に少なくとも2個(通常、2〜300個程度)、好ましくは3個以上(通常、3〜200個、好ましくは4〜100個程度)のSiH基を有する。前記オルガノハイドロジェンポリシロキサンが直鎖状構造又は分岐鎖状構造を有する場合、これらのSiH基は、分子鎖末端及び分子鎖非末端部分のどちらか一方にのみ位置していても、その両方に位置していてもよい。
【0065】
前記オルガノハイドロジェンポリシロキサンの1分子中のケイ素原子の数(重合度)は、好ましくは2〜1,000個、より好ましくは3〜200個、更により好ましくは4〜100個程度である。更に、前記オルガノハイドロジェンポリシロキサンは25℃で液状であることが好ましく、回転粘度計により測定された25℃における粘度は、好ましくは1〜1,000mPa・s、より好ましくは10〜100mPa・s程度である。
【0066】
前記オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、下記平均組成式(2)で示されるものを用いることができる。
SiO(4−a−b)/2 (2)
(式中、Rは、互いに同一又は異種の非置換もしくは置換の、ケイ素原子に結合した一価炭化水素基(但し、脂肪族不飽和基を除く)であり、a及びbは、0.7≦a≦2.1、0.001≦b≦1.0、かつ0.8≦a+b≦3.0を満足する正数である。)
【0067】
上記Rとしては、例えば、(A)成分における式(1)中の、脂肪族不飽和基以外の非置換又は置換の一価炭化水素基として具体的に例示した炭素原子数1〜6のアルキル基若しくは炭素原子数1〜4のハロアルキル基、及び炭素原子数6〜10のアリール基が挙げられる。Rは、好ましくは炭素原子数1〜6のアルキル基、又は炭素原子数6〜10のアリール基であり、より好ましくはメチル基又はフェニル基である。
【0068】
上記平均組成式(2)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、式:RHSiOで示されるオルガノハイドロジェンシロキサン単位を少なくとも4個含む環状化合物、式:RSiO(HRSiO)SiRで示される化合物、式:HRSiO(HRSiO)SiRHで示される化合物、式:HRSiO(HRSiO)s(RSiO)SiRHで示される化合物等が挙げられる。上記式中、Rは前記の通りであり、s及びtは1以下の正数である。
【0069】
あるいは、上記平均組成式(2)で表されるオルガノハイドロジェンシロキサンは、式:HSiO1.5で示されるシロキサン単位、式:RHSiOで示されるシロキサン単位及び/又は式:RHSiO0.5で示されるシロキサン単位を含むものであってもよい。該オルガノハイドロジェンシロキサンは、SiH基を含まないモノオルガノシロキサン単位、ジオルガノシロキサン単位、トリオルガノシロキサン単位及び/又はSiO4/2単位を含んでいてもよい。上記式中のRは前記の通りである。
【0070】
(B)成分の具体例としては、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)メチルシラン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)フェニルシラン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジフェニルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルフェニルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジフェニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジフェニルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、これらの各例示化合物において、メチル基の一部又は全部がエチル基、プロピル基等の他のアルキル基で置換されたオルガノハイドロジェンポリシロキサン、式:RSiO0.5で示されるシロキサン単位と式:RHSiO0.5で示されるシロキサン単位と式:SiOで示されるシロキサン単位とからなるオルガノシロキサン共重合体、式:RHSiO0.5で示されるシロキサン単位と式:SiOで示されるシロキサン単位とからなるオルガノシロキサン共重合体、式:RHSiOで示されるシロキサン単位と式:RSiO1.5で示されるシロキサン単位及び式:HSiO1.5で示されるシロキサン単位のどちらか一方又は両方とからなるオルガノシロキサン共重合体、及び、これらのオルガノポリシロキサンの2種以上からなる混合物が挙げられる。上記式中のRは、前記と同様の意味を有する。
【0071】
(B)成分の配合量は、(C)成分のヒドロシリル化触媒の存在下に本組成物を硬化させるのに十分な量であるが、通常、(A)成分中の脂肪族不飽和基に対する(B)成分中のSiH基のモル比が0.2〜5、好ましくは0.5〜2となる量である。
【0072】
(C成分)
(C)成分の白金族金属を含むヒドロシリル化触媒としては、(A)成分中のケイ素原子結合脂肪族不飽和基と(B)成分中のSiH基とのヒドロシリル化付加反応を促進するものであればいかなる触媒を使用してもよい。(C)成分は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。(C)成分としては、例えば、白金、パラジウム、ロジウム等の白金族金属や、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸とオレフィン類、ビニルシロキサン又はアセチレン化合物との配位化合物、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等の白金族金属化合物が挙げられるが、特に好ましくは白金化合物である。
【0073】
(C)成分の配合量は、ヒドロシリル化触媒としての有効量でよく、好ましくは(A)及び(B)成分の合計質量に対して白金族金属元素の質量換算で0.1〜1,000ppmの範囲であり、より好ましくは1〜500ppmの範囲である。
【0074】
(D)成分
本発明に有効に使用される硬化性シリコーン樹脂組成物は、硬化後の硬度を得る目的として、(D)成分を添加しても良い。
使用される(D)成分は、下記平均組成式(3)で示される分岐状または三次元構造のオルガノポリシロキサンである。
Rc(CSiO(4−c−d)/2(3)
(式中、Rは、同一又は異なり、置換もしくは非置換の、一価炭化水素基又はアルコキシ基及び水酸基のいずれか(但し、フェニル基を除く)であり、全Rのうち0.1〜80mol%がアルケニル基であり、c,dは1≦c+d≦2、0.20≦d/(c+d)≦0.95を満たす正数である。)
【0075】
このオルガノポリシロキサンは、平均組成式(3)において1≦c+d≦2であることから理解されるように、分子中にRSiO3/2単位、(C)SiO3/2単位、SiO単位の1種又は2種以上を含有する分岐或いは三次元網状構造のものである。
【0076】
ここで、平均組成式(3)において、Cはフェニル基であり、Rはフェニル基を除く置換又は非置換の一価炭化水素基、アルコキシ基もしくは水酸基であり、好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは1〜10の非置換又は置換の一価炭化水素基、アルコキシ基もしくは水酸基であり、このような炭化水素基としては具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;トリル基、キシリル基、ナフチル基等の、フェニル基を除くアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基等のアルケニル基などの不飽和炭化水素基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基などが挙げられ、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、フェノキシ基等の非置換のアルコキシ基の他、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基等のアルコキシ置換アルコキシ基などが挙げられる。
【0077】
本発明では、これら全Rのうち0.1〜80モル%、好ましくは0.5〜50モル%がアルケニル基であることが好ましい。アルケニル基の含有量が0.1モル%以上であればシリコーン樹脂としての必要な硬度が得られ、80モル%以下であれば架橋点が多過ぎるためシリコーン樹脂が脆くなる恐れはない。また、c、dは1≦c+d≦2、好ましくは1.2≦c+d<1.9、0.2≦d/(c+d)≦0.95、好ましくは0.25≦d/(c+d)≦0.90を満たす正数であるが、c+dが1以上で、2以下であれば必要な硬度・強度を得ることができる。またフェニル基の含有量がこのような範囲内であれば、シリコーン樹脂として必要な硬度・強度を得ることが出来る。アルケニル基としては、ビニル基が好ましい。
【0078】
(D)成分の配合量は、硬化後の樹脂組成物の硬度が目的とする値になるように十分な量であるが、通常、(A)成分100質量部に対して、(D)成分は0質量部〜500質量部となる量である。
【0079】
[硬化性変性シリコーン樹脂組成物]
本発明に有効な硬化性変性シリコーン樹脂組成物の各成分につき、詳細に説明する。
(E)成分
(E)成分は、(X)ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に少なくとも2個有する有機ケイ素化合物と、(Y)ヒドロシリル化反応性炭素−炭素二重結合を1分子中に2個有する多環式炭化水素化合物との付加反応生成物であって、かつ、ケイ素原子に結合した炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個有する多環式炭化水素基含有有機ケイ素化合物である。
【0080】
(X)成分
この(E)成分の反応原料であり、(X)はSiH基を少なくとも2個有する化合物であり、好ましくは、
(X)下記一般式(4):
【化6】
[式中のAは、下記一般式(5):
【化7】
(式中、R’は独立に非置換もしくは置換の炭素原子数1〜12の1価炭化水素基または炭素原子数1〜6のアルコキシ基であり、mは0〜100の整数である)
で表される基、および下記構造式(6):
【化8】
で表される基から成る群から選ばれる2価の基であり、
R”は独立に非置換もしくは置換の炭素原子数1〜12の1価炭化水素基または炭素原子数1〜6アルコキシ基である]
【0081】
(X)上記一般式(4)で表されるケイ素原子に結合した水素原子(以下、「SiH」ということがある)を1分子中に2個有する化合物において、上記一般式(4)中のAが上記一般式(5)で表される2価の基である場合、該化合物としては、下記一般式(7):
【化9】
(式中、R”およびR’はそれぞれ独立に非置換もしくは置換の炭素原子数1〜12、好ましくは1〜6の1価炭化水素基または炭素原子数1〜6、好ましくは1〜4のアルコキシ基であり、mは0〜100、好ましくは0〜10の整数である)
【0082】
上記式中、R”,R’が上記1価炭化水素基である場合としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、sec−ヘキシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、o−,m−,p−トリル等のアリール基;ベンジル基、2−フェニルエチル基等のアラルキル基;ビニル基、アリル基、1−ブテニル基、1−ヘキセニル基等のアルケニル基;p−ビニルフェニル基等のアルケニルアリール基;およびこれらの基中の炭素原子に結合した1個以上の水素原子が、ハロゲン原子、シアノ基、エポキシ環含有基等で置換された、例えば、クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基;2−シアノエチル基;3−グリシドキシプロピル基等が挙げられる。
【0083】
また、R”,R’が上記アルコキシ基である場合としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等が挙げられる。
【0084】
上記の中でも、上記R”およびR’としては、アルケニル基およびアルケニルアリール基以外のものが好ましく、特に、その全てがメチル基であるものが、工業的に製造することが容易であり、入手しやすいことから好ましい。
【0085】
この上記一般式(7)で表される化合物の好適な具体例の構造式を下記に示すが、前記化合物が下記構造式のものに限定されるものではない。なお、以下、「Me」はメチル基を意味する。
HMeSiOSiMe
HMeSiO(MeSiO)SiMe
HMeSiO(MeSiO)SiMe
HMeSiO(MeSiO)SiMe
HMeSiO(MeSiO)12SiMe
なお、この上記一般式(4)で表される化合物は、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0086】
該(E)成分の反応原料である、(X)上記一般式(4)で表されるSiHを1分子中に2個有する化合物において、上記一般式(4)中のAが上記構造式(6)で表される2価の基である場合、該化合物としては、下記一般式(8):
【化10】
(式中、R”は上記一般式(7)に関して定義したとおりである(但しアルケニル基およびアルケニルアリール基を除く)。)
で表される化合物が挙げられる。
【0087】
上記一般式(8)中のR”としては、上記一般式(7)中のR”について記載したものと同じ基が挙げられ、アルケニル基およびアルケニルアリール基以外のものが好ましく、特に、その全てがメチル基であるものが好ましい。
この上記一般式(8)で表される化合物としては、例えば、
構造式:HMeSi−p−C−SiMe
で表される1,4−ビス(ジメチルシリル)ベンゼン、
構造式:HMeSi−m−C−SiMe
で表される1,3−ビス(ジメチルシリル)ベンゼン等のシルフェニレン化合物が挙げられる。
【0088】
なお、この上記一般式(8)で表される化合物は、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
更に、この(E)成分の反応原料である上記(X)成分は、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0089】
(Y)成分
この(E)成分の反応原料である(Y)ヒドロシリル化反応性炭素−炭素二重結合を1分子中に2個有する多環式炭化水素において、前記「ヒドロシリル化反応性」とは、ケイ素原子に結合した水素原子の付加(ヒドロシリル化反応として周知)を受け得る性質を意味する。
【0090】
また、前記(Y)成分は、(i)多環式炭化水素の多環骨格を形成している炭素原子のうち、隣接する2つの炭素原子間にヒドロシリル化反応性炭素−炭素二重結合が形成されているもの、(ii)多環式炭化水素の多環骨格を形成している炭素原子に結合した水素原子が、ヒドロシリル化反応性炭素−炭素二重結合含有基によって置換されているもの、または、(iii)多環式炭化水素の多環骨格を形成している炭素原子のうち、隣接する2つの炭素原子間にヒドロシリル化反応性炭素−炭素二重結合が形成されており、かつ、多環式炭化水素の多環骨格を形成している炭素原子に結合した水素原子がヒドロシリル化反応性炭素−炭素二重結合含有基によって置換されているもののいずれかであっても良い。
【0091】
この(Y)成分としては、例えば、下記構造式(x):
【化11】
で表される 5−ビニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
下記構造式(y):
【化12】
で表される 6−ビニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、これら両者の組み合わせ(以下、これら3者を区別する必要がない場合は、「ビニルノルボルネン」と総称することがある);下記構造式(z):
【化13】
で表されるジシクロペンタジエン等が挙げられる。
【0092】
なお、前記ビニルノルボルネンのビニル基の置換位置は、シス配置(エキソ形)またはトランス配置(エンド形)のいずれであってもよく、また、前記配置の相違によって、該成分の反応性等に特段の差異がないことから、これら両配置の異性体の組み合わせであっても良い。
【0093】
(E)成分の調製
本発明組成物の(E)成分は、SiHを1分子中に少なくとも2個有する上記(X)成分の1モルに対して、ヒドロシリル化反応性炭素−炭素二重結合を1分子中に2個有する上記(Y)成分の1モル以上10モル以下、好ましくは1モル以上5モル以下の過剰量を、ヒドロシリル化反応触媒の存在下で付加反応させることにより、SiHを有しない付加反応生成物として得ることができる。
【0094】
こうして得られる(E)成分は、(Y)成分由来のヒドロシリル化反応性炭素−炭素二重結合のほかに、(X)成分に由来する(具体的には、一般式(4)中のR”及び/又は一般式(5)中のR’に由来する)ヒドロシリル化反応性炭素−炭素二重結合を含み得るので、ヒドロシリル化反応性炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含むが、この数は好ましくは2〜6個、より好ましくは2個である。このヒドロシリル化反応性炭素−炭素二重結合が6個以下であれば、本発明の組成物を硬化させて得られる硬化物に割れが生じることもない。
【0095】
前記白金族金属を含むヒドロシリル化触媒としては、従来から公知のものが全て使用することができる。例えば、白金金属を担持したカーボン粉末、白金黒、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応生成物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒;パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等の白金族金属系触媒が挙げられる。また、付加反応条件、溶媒の使用等については、特に限定されず通常のとおりとすればよい。
【0096】
前記のとおり、(E)成分の調製に際し、上記(X)成分に対して過剰モル量の上記(Y)成分を用いることから、前記(E)成分は、上記(Y)成分の構造に由来するヒドロシリル化反応性炭素−炭素二重結合を1分子中に2個有するものである。更に、(E)成分は、上記(X)成分に由来する残基を有し、その残基が、上記(Y)成分の構造に由来するがヒドロシリル化反応性炭素−炭素二重結合を有しない多環式炭化水素の二価の残基によって結合されている構造を含むものであってもよい。
【0097】
即ち、(E)成分としては、例えば、下記一般式(9):
N−M−(N′−M)−N (9)
(式中、Mは上記(X)成分の化合物の二価の残基であり、Nは上記(Y)成分の多環式炭化水素の一価の残基であり、N′は上記(Y)成分の二価の残基であり、pは0〜10、好ましくは0〜5の整数である)
で表される化合物が挙げられる。
【0098】
なお、上記 (N′−M) で表される繰り返し単位の数であるpの値については、上記(X)成分1モルに対して反応させる上記(Y)成分の過剰モル量を調整することにより設定することが可能である。
【0099】
上記一般式(9)中のNとしては、具体的には、例えば、下記構造式:
【化14】
で表される一価の残基(以下、これら6者を区別する必要がない場合は、これらを「NB基」と総称し、また、前記6者の構造を区別せずに「NB」と略記する。);
【0100】
【化15】
で表される一価の残基(以下、これら7者を区別する必要がない場合は、これらの構造を「DCP」と略記する。)が挙げられる。
【0101】
上記一般式(9)中のN’としては、具体的には、例えば、下記構造式:
【化16】
で表される二価の残基が挙げられる。
【0102】
但し、上記構造式で表される非対称な二価の残基は、その左右方向が上記記載のとおりに限定されるものではなく、上記構造式は、実質上、個々の上記構造を紙面上で180度回転させた構造をも含めて示している。
【0103】
上記一般式(9)で表される(E)成分の好適な具体例を、以下に示すが、これに限定されるものではない。(なお、「NB」および「DCP」の意味するところは、上記のとおりである。)
NB−MeSiOSiMe−NB
NB−MeSiO(MeSiO)SiMe−NB
NB−MeSiO(MeSiO)SiMe−NB
NB−MeSiO(MeSiO)SiMe−NB
NB−MeSiO(MeSiO)12SiMe−NB
NB−MeSi−p−C−SiMe−NB
NB−MeSi−m−C−SiMe−NB
【0104】
【化17】
(式中、pは1〜10の整数である。)
【0105】
【化18】
(式中、pは1〜10の整数である。)
【0106】
DCP−MeSiOSiMe−DCP
DCP−MeSiO(MeSiO)SiMe−DCP
DCP−MeSiO(MeSiO)SiMe−DCP
DCP−MeSiO(MeSiO)SiMe−DCP
DCP−MeSiO(MeSiO)12SiMe−DCP
DCP−MeSi−p−C−SiMe−DCP
DCP−MeSi−m−C−SiMe−DCP
【0107】
【化19】
(式中、pは1〜10の整数である。)
【0108】
【化20】
(式中、pは1〜10の整数である。)
更に、本発明の(E)成分は、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0109】
(F)成分
本発明の(F)成分は、SiHを1分子中に3個以上有するシロキサン化合物又は有機変性シロキサン化合物である。該(F)成分中のSiHが、上記(E)成分が1分子中に少なくとも2個有するヒドロシリル化反応性炭素−炭素二重結合とヒドロシリル化反応により付加して、3次元網状構造の硬化物を与える。
【0110】
該(F)成分としては、例えば、下記一般式(10):
【化21】
(式中、Rは独立に水素原子またはアルケニル基以外の非置換もしくは置換の炭素原子数1〜12、好ましくは1〜6の一価炭化水素基であり、qは3〜10、好ましくは3〜8の整数、rは0〜7、好ましくは0〜2の整数であり、かつq+rの和は3〜10、好ましくは3〜6の整数である。)
で表される環状シロキサン系化合物が挙げられる。
【0111】
上記一般式(10)中のRがアルケニル基以外の非置換もしくは置換の一価炭化水素基である場合としては、例えば、メチル基、エチル、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、sec−ヘキシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、o−,m−,p−トリル等のアリール基;ベンジル基、2−フェニルエチル基等のアラルキル基;p−ビニルフェニル基等のアルケニルアリール基;およびこれらの基中の炭素原子に結合した1個以上の水素原子が、ハロゲン原子、シアノ基、エポキシ環含有基等で置換された、例えば、クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基;2−シアノエチル基;3−グリシドキシプロピル基等が挙げられる。
【0112】
上記の中でも、前記Rとしては、特に、その全てがメチル基であるもの(例えば、(F)成分が、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン)が、工業的に製造することが容易であり、入手しやすいことから好ましい。
【0113】
また、該(F)成分としては、例えば、上記ビニルノルボルネン(5−ビニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、6−ビニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン)の一種または二種と 1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンとをヒドロシリル化反応させて得られるSiHを1分子中に3個以上有する付加反応生成物、例えば、下記一般式(11)
【化22】
(式中、sは1〜100、好ましくは1〜10の整数である)
で表される化合物が挙げられる。
【0114】
上記(F)成分の好適な具体例を、以下に示すが、これに限定されるものではない。
(HMeSiO)
(HMeSiO)
(HMeSiO)(MeSiO)
(HMeSiO)(MeSiO)
HMeSiO(PhSiO)(MeHSiO)SiMe
(HMeSiO)SiPh
【0115】
【化23】
【0116】
【化24】
本発明の(F)成分は、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0117】
(F)成分の配合量は、次のように設定されることが好ましい。後述するように、本発明の組成物は、(F)成分以外のケイ素原子に結合した水素原子を有する成分、及び/又は(E)成分以外のケイ素原子に結合したヒドロシリル化反応性炭素−炭素二重結合を有する成分を含有することができる。そこで、本組成物中のケイ素原子に結合したヒドロシリル化反応性炭素−炭素二重結合1モルに対して本組成物中のケイ素原子に結合した水素原子の量は、通常0.5〜2.0モル、好ましくは0.8〜1.5モルである。そして、本組成物中のケイ素原子に結合した水素原子に占める前記(F)成分中のケイ素原子に結合した水素原子の割合は、通常、20〜100モル%、好ましくは40〜100モル%である。また、本組成物中のケイ素原子に結合したヒドロシリル化反応性炭素−炭素二重結合に占める前記(E)成分中のヒドロシリル化反応性炭素−炭素二重結合の割合は、通常、20〜100モル%、好ましくは40〜100モル%である。(F)成分の配合量がこのような条件を満たすようになされると、コーティング材料等の用途に適用する場合に十分な硬度を有する硬化物を得ることができる。
【0118】
上述の(F)成分以外のケイ素原子に結合した水素原子を有する成分及び(E)成分以外のケイ素原子に結合したヒドロシリル化反応性炭素−炭素二重結合を有する成分を含まない場合には、本発明組成物への(F)成分の配合量は、上記(E)成分中のヒドロシリル化反応性炭素−炭素二重結合1モルに対して、該(F)成分中のケイ素原子に結合した水素原子が、通常、0.5〜2.0モル、好ましくは 0.8〜1.5モルとなる量とするのがよい。
【0119】
(C)成分
本発明の(C)成分である白金族金属を含むヒドロシリル化触媒は、上記の硬化性シリコーン樹脂組成物で記載したものと同じである。
【0120】
本発明組成物への(C)成分の配合量は、触媒としての有効量であれば、特に制限されないが、上記(E)成分と(F)成分との合計質量に対して、通常、1〜500ppm、特に2〜100ppm程度となる量を配合することが好ましい。前記範囲内の配合量であれば、硬化反応に要する時間が適度のものとなり、硬化物が着色する等の問題を生じることがない。
【0121】
[その他の成分]
本発明の組成物には、前記(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)成分及び、鱗片状又はフレーク状の無機充填材以外にも、その他の任意の成分を配合することができる。その具体例としては、以下のものが挙げられる。これらのその他の成分は、各々、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0122】
[(A)または(E)成分以外の脂肪族不飽和基含有化合物]
本発明の組成物には、(B)成分あるいは(F)成分と付加反応する脂肪族不飽和基含有化合物を配合してもよい。このような脂肪族不飽和基含有化合物としては、硬化物の形成に関与するものが好ましく、1分子あたり少なくとも2個の脂肪族不飽和基を有するオルガノポリシロキサンが挙げられる。その分子構造は、例えば、直鎖状、環状、分岐鎖状、三次元網状等、いずれでもよい。
【0123】
該脂肪族不飽和基含有化合物の具体例としては、ブタジエン、多官能性アルコールから誘導されたジアクリレートなどのモノマー;ポリエチレン、ポリプロピレン又はスチレンと他のエチレン性不飽和化合物(例えば、アクリロニトリル又はブタジエン)とのコポリマーなどのポリオレフィン;アクリル酸、メタクリル酸、又はマレイン酸のエステル等の官能性置換有機化合物から誘導されたオリゴマー又はポリマーが挙げられる。この脂肪族不飽和基含有化合物は室温で液体であっても固体であってもよい。
【0124】
[付加反応制御剤]
本発明の組成物には、ポットライフを確保するために、付加反応制御剤を本発明組成物に配合することができる。付加反応制御剤は、上記(C)成分の白金族金属を含むヒドロシリル化触媒に対して硬化抑制効果を有する化合物であれば特に限定されず、従来から公知のものを用いることもできる。その具体例としては、トリフェニルホスフィンなどのリン含有化合物;トリブチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ベンゾトリアゾールなどの窒素含有化合物;硫黄含有化合物;アセチレンアルコール類(例えば、1−エチニルシクロヘキサノール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール)等のアセチレン系化合物;アルケニル基を2個以上含む化合物;ハイドロパーオキシ化合物;マレイン酸誘導体などが挙げられる。
【0125】
付加反応制御剤による硬化抑制効果の度合は、その付加反応制御剤の化学構造によって異なる。よって、使用する付加反応制御剤の各々について、その添加量を最適な量に調整することが好ましい。最適な量の付加反応制御剤を添加することにより、組成物は室温での長期貯蔵安定性及び加熱硬化性に優れたものとなる。
【0126】
[接着付与剤]
また、本組成物は、その接着性を向上させるための接着付与剤を含有してもよい。この接着付与剤としては、シランカップリング剤やその加水分解縮合物等が挙げられる。シランカップリング剤としては、エポキシ基含有シランカップリング剤、(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤、イソシアネート基含有シランカップリング剤、イソシアヌレート基含有シランカップリング剤、アミノ基含有シランカップリング剤、メルカプト基含有シランカップリング剤等公知のものが用いられ、(A)成分と(B)成分の合計100質量部あるいは(E)成分と(F)成分の合計100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.3〜10質量部用いることができる。
【0127】
[酸化防止剤]
本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物中には、上記(E)成分中のヒドロシリル化反応性炭素−炭素二重結合が未反応のまま残存している場合があり、或いは、
下記構造式(i):
【化25】
で表される 2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5−イル)エチル基および/または
下記構造式(ii):
【化26】
で表される2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−6−イル)エチル基の開環メタセシス反応により生じる炭素−炭素二重結合が含まれている場合がある。前記炭素−炭素二重結合は、大気中の酸素による酸化によって、前記硬化物の着色が起こる。従って本発明では、前記着色を未然に防止するために、硬化樹脂組成物に酸化防止剤を配合することができる。
【0128】
この酸化防止剤としては、従来から公知のものが全て使用することができ、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,5−ジ−t−アミルヒドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、4,4′−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)等が挙げられる。これらは、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0129】
なお、この酸化防止剤を使用する場合、その配合量は、酸化防止剤としての有効量であれば、特に制限されず、上記(E)成分と(F)成分との合計質量に対して、通常、10〜10,000ppm、特に100〜1,000ppm程度配合することが好ましい。前記範囲内の配合量であれば、酸化防止能力が十分発揮され、着色、白濁、酸化劣化等の発生がなく光学的特性に優れた硬化物を得ることができる。
【0130】
[光安定剤]
更に、太陽光線、蛍光灯等の光エネルギーによる光劣化に抵抗性を付与するため光安定剤を用いることも可能である。この光安定剤としては、光酸化劣化で生成するラジカルを補足するヒンダードアミン系安定剤が適しており、酸化防止剤と併用することで、酸化防止効果がより向上する。光安定剤の具体例としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、4−ベンゾイル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等が挙げられる。
【0131】
[その他の無機充填材]
前述の通り、本発明の光反射材料用硬化性樹脂組成物は、リードフレーム形状を保持するため硬化後に硬質となるものが好ましく、また、耐熱性、耐候性、耐光性に優れた樹脂を用いることが好ましい。このような目的に応じた機能を持たせるため、熱硬化性樹脂組成物に、光反射材以外に無機充填材又は拡散材を添加することが好ましい。無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム等を挙げることができ、これらは単独でも、併用して用いてもよい。熱伝導性、光反射特性、成型性、難燃性の点から、好ましくはシリカ、アルミナ、酸化アンチモン、水酸化アルミニウムであることが好ましい。また、無機充填材の粒径は、特に制限はないが、拡散剤との充填効率、及び熱硬化性樹脂の流動性、狭小部への充填性を考慮すると、100μm以下であることが好ましい。
【0132】
[光拡散材]
光拡散材としては、チタン酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素等を好適に用いることができる。特に好ましくは酸化チタンであり、なお好ましくは結晶形態がルチルである酸化チタン粉末である。
【0133】
結晶形態がルチルである酸化チタン粉末の製造方法については主に硫酸法と塩素法に大別されるが、光反射率の面から塩素法で製造されたものが特に好ましい。また、酸化チタンの結晶形態はアナターゼ、ルチル、ブルカイトに分類されるが、最も熱転移が安定なルチルを用いることによって、耐熱変色性に優れた硬化物を得ることができる。白色である酸化チタンの配合により硬化物は良好な光反射率を発現し、リフレクター材料として十分な反射率を有する硬化物を得ることが可能となる。
【0134】
光拡散材の粒経は、特に制限はないが、熱硬化性樹脂の流動性、狭小部への充填性を考慮すると、100μm以下であることが好ましい。なお好ましくは30μm以下である。無機充填材及び光拡散材は1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
また、その他目的に応じて、顔料、蛍光物質からなる群から選択される少なくとも1種を混合することもできる。
【0135】
[硬化物]
本発明の光反射材料用硬化性樹脂組成物は、公知の硬化条件下、公知の硬化方法により硬化させることができる。具体的には、通常、80〜200℃、好ましくは100〜160℃で加熱することにより、該組成物を硬化させることができる。加熱時間は、0.5分〜5時間程度で、1分〜3時間程度でよい。LED封止用等の精度が要求される場合は、硬化時間を長めにすることが好ましい。得られる硬化物の形態に制限はなく、例えば、ゲル硬化物、エラストマー硬化物及び樹脂硬化物のいずれであってもよい。
【0136】
本発明の光反射材料用硬化性樹脂組成物は、光反射材料用とすることができる。この光反射材料の用途は特に限定されないが、例えば、LED等の発光装置用、特に白色LED用のリフレクター材料として好適に用いることができる。このリフレクター材料を用いた白色LED等の発光装置は長期間にわたって高い光取り出し効率を維持できる。また、本発明の光反射材料用硬化性樹脂組成物は成形しやすいため、白色LEDを含むこれらの発光装置においてリフレクター材料を所望の形状とすることが容易である。
【0137】
光半導体素子搭載用パッケージ基板及びこれを用いた光半導体デバイスの製造方法
本発明に係る光半導体素子搭載用パッケージ基板を用いた光半導体デバイスの製造方法について、以下説明するが、本発明は下記の限りではない。
本発明のリフレクター材料を備えた光半導体素子搭載用パッケージ基板は、例えば、発光素子を搭載するための第1のリードと発光素子と電気的に接続される第2のリードとが、互いに縦横方向に1本あるいは複数本のタイバーによって連結されて多面付け配列される構造を有する所定形状を備えたリードフレームを、射出成型(インジェクション成型)、押し出し成型(トランスファー成型)、又は圧縮成型(コンプレッション成型)を用いて目的のリフレクター形状を有する所定の上下金型内に配置し、金型の樹脂注入口から本発明の光反射材料用硬化性樹脂組成物を注入・充填させて硬化することでなる。射出成型、押し出し成型、又は圧縮成型は公知の通り、液状の樹脂あるいは溶融した樹脂を金型内の製品部となる空間に注入し、金型内で固化させた後金型から製品を取り外してなる成型方法である。より具体的には、例えば、上金型とリードフレーム(金属板)及び下金型を用いて成型するインサート成型法、または、前記金型とリードフレームの間にリリースフィルムを挟むことを特徴とした、インモールド成型法があり、いずれを選択しても良い。好ましくはインモールド成型である。インモールド成型の場合、上金型とリードフレーム(金属板)及び下金型とリードフレーム(金属板)のそれぞれの隙間にリリースフィルムを挟み込むことが可能で、リードフレームと金型の間の微小な空間を残すことなく、すなわち該硬化性樹脂の進入する隙間のない状態で、金型内の空間を保持することが可能であるため、成型中の金型の挟みこみ圧力によるリードフレームへの傷付着防止を図ることができる。また、必要に応じて、成型後の製品を金型からの取り出しを良好とする目的で離型剤を塗布するなどをしても良い。
【0138】
注入した本発明の光反射材料用硬化性樹脂組成物は好ましくは、金型温度100℃〜200℃で10秒〜 300秒の条件で熱硬化させた後、金型を外すことで、光半導体素子搭載用リードフレーム基板を取り出すことができる。その後、必要に応じて、該硬化性樹脂組成物を完全硬化させる目的で、100℃〜200℃で30分〜10時間の条件で熱硬化させてもよい。
【0139】
このようにして得られた光半導体素子搭載用パッケージ基板は、たとえば、光半導体素子を搭載するためのパッドを兼ねた第1のリードと第2のリードを備えており、前記第1のリードに光半導体素子を搭載する。次いで、光半導体素子が持つ第1の電極と第1のリード部とを電気的に接続する。光半導体素子が持つ第2の電極と第2のリード部とを電気的に接続する。この接合は、通常ワイヤーボンドにて行うが、光半導体素子の構造に応じてフリップチップボンドにて接合しても良い。
【0140】
必要に応じて光半導体素子に、光変換材料を塗布しても良い。塗布方法としては公知の方法を用いることが出来、ディスペンス方式、ジェットディスペンス方式、フィルムを貼り付ける等、適宜選択することが出来る。
【0141】
次いで、光半導体素子、ワイヤー等を保護する目的として、レンズモールドや封止樹脂の塗布を行う。前記の光変換材料は、本工程中で混ぜても良い。レンズモールドは公知のレンズ材料を用いれば良く、通常、熱硬化性の透明材料であり、シリコーン樹脂が好適な例として挙げられる。レンズモールドの方式としては、トランスファー成型、インジェクション成型、コンプレッション成型等、公知の方法を用いることが出来る。封止樹脂の塗布方法としては、凹部に公知の方法を用いて封止樹脂を塗布すればよく、ディスペンス方式が一般的である。その他の方法として、ジェットディスペンスを用いる方法等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。封止樹脂について、特に限定されるわけではないが、好ましくは、耐熱性、耐光性の面から、シリコーン樹脂であることが好ましい。このような樹脂として、信越化学工業株式会社製 KER2500,KER6075などが挙げられる。
【0142】
次いで、光半導体素子搭載用パッケージ基板のパッケージ化(個片化)について説明する。光半導体素子搭載用パッケージ基板は、前述のように、例えば、リード部を互いに縦横方向に1本あるいは複数本のタイバーによって連結されて多面付け配列される構造であり、このリード間における側面の空間部とタイバーが存在する周辺の部分、凸部が本発明の光反射材料用硬化性樹脂組成物で充填されている。このタイバーを含む硬化性樹脂を切りしろとし、これを切断することで光半導体素子を1個以上有する光半導体デバイスを得ることができる。切断方法としては公知の方法を採用すればよく、回転ブレードによるダイシング加工、レーザー加工、ウォータージェット加工、金型加工等の公知の方法により切断することで光半導体デバイスを得ることができる。ダイシング加工が経済的、工業的な面で好ましい。
【実施例】
【0143】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例等に制限されるものではない。なお、下記の例において、シリコーンオイル又はシリコーンレジンの平均組成を示す記号は以下の通りの単位を示す。また、各シリコーンオイル又は各シリコーンレジンのモル数は、各成分中に含有されるビニル基又はSiH基のモル数を示すものである。
MH:(CHHSiO1/2
MVi:(CH=CH)(CHSiO1/2
MVi3:(CH=CH)SiO1/2
DH:(CH)HSiO2/2
Dφ:(CSiO2/2
DVi:(CH=CH)(CH)SiO2/2
Tφ:(C)SiO3/2
【0144】
[配合例1]
((A)成分)平均組成式:MViDφ2.8のシリコーンオイル:100質量部、
((B)成分)平均組成式:MHDHDφMHで表されるメチルハイドロジェンシロキサン:51.3質量部、
((C)成分):塩化白金酸/1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体を白金原子含有量として1質量%含有するトルエン溶液:0.06質量部、
エチニルシクロヘキサノール:0.05質量部、
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン:3質量部
をよく撹拌してシリコーン組成物1を調製した。
【0145】
[合成例1]
(E)成分の調製
攪拌装置、冷却管、滴下ロートおよび温度計を備えた500mLの4つ口フラスコに、ビニルノルボルネン(商品名:V0062、東京化成社製;5−ビニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンと6−ビニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンとの略等モル量の異性体混合物)60g(0.5モル)を加え、オイルバスを用いて85℃に加熱した。これに、5質量%の白金金属を担持したカーボン粉末0.02g添加し、攪拌しながら1,4−ビス(ジメチルシリル)ベンゼン38.8g(0.2モル)を25分間かけて滴下した。滴下終了後、更に90℃で加熱攪拌を24時間行った後、室温まで冷却した。その後、白金金属担持カーボンをろ過して除去し、過剰のビニルノルボルネンを減圧留去して、無色透明なオイル状の反応生成物(25℃における粘度:1220mm/s)79gを得た。
【0146】
反応生成物を、FT−IR、NMR、GPC等により分析した結果、この生成物は、
(1)p−フェニレン基を1個有する化合物:NBMeSi−p−C−SiMeNB:約 72モル%、
(2)p−フェニレン基を2個有する化合物:約24モル%(下記に代表的な構造式の一例を示す)、
【化27】
および、(3)p−フェニレン基を3個有する化合物:約4モル%(下記に代表的な構造式の一例を示す)
【化28】
の混合物であることが判明した。また、前記混合物全体としてのヒドロシリル化反応性炭素−炭素二重結合の含有割合は、0.40モル/100gであった。
【0147】
[合成例2]
(F)成分の調製
攪拌装置、冷却管、滴下ロートおよび温度計を備えた500mLの4つ口フラスコに、トルエン80gおよび1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン 115.2g(0.48モル)を加え、オイルバスを用いて117℃に加熱した。これに、5質量%の白金金属を担持したカーボン粉末0.05g添加し、攪拌しながらビニルノルボルネン(商品名:V0062、東京化成社製;5−ビニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンと6−ビニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンとの略等モル量の異性体混合物)48g(0.4モル)を16分間かけて滴下した。滴下終了後、更に125℃で加熱攪拌を16時間行った後、室温まで冷却した。その後、白金金属担持カーボンをろ過して除去し、トルエンを減圧留去して、無色透明なオイル状の反応生成物(25℃における粘度:2,500mm/s)152gを得た。
【0148】
反応生成物を、FT−IR、NMR、GPC等により分析した結果、この生成物は、
(1)テトラメチルシクロテトラシロキサン環を1個有する化合物:約6モル%(下記に代表的な構造式の一例を示す)、
【化29】
(2)テトラメチルシクロテトラシロキサン環を2個有する化合物:約25モル%(下記に代表的な構造式の一例を示す)、
【化30】
(3)テトラメチルシクロテトラシロキサン環を3個有する化合物:約16モル%(下記に代表的な構造式の一例を示す)
【化31】
(4)テトラメチルシクロテトラシロキサン環を4個有する:約11モル%(下記に代表的な構造式の一例を示す)、
【化32】
および、(5)テトラメチルシクロテトラシロキサン環を5〜12個有する化合物:残余(下記に代表的な構造式の一例を示す)
【化33】
(式中、nは4〜11の整数である。)
の混合物であることが判明した。なお、前記混合物全体としてのSiHの含有割合は、0.63モル/100gであった。
【0149】
[配合例2]
((E)成分) 合成例1で得られた反応生成物:60質量部、
((F)成分) 合成例2で得られた反応生成物:30質量部
((C)成分)塩化白金酸/1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体を白金原子含有量として1質量%含有するトルエン溶液:0.06質量部、
エチニルシクロヘキサノール:0.05質量部、及び
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン:3質量部
をよく撹拌してシリコーン組成物2を調製した。
【0150】
[配合例3]
((A)成分)平均組成式:MViDφ2.8のシリコーンオイル:31質量部、
((B)成分)平均組成式:MHDHDφMHで表されるメチルハイドロジェンシロキサン:6.4質量部、
((C)成分)塩化白金酸/1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体を白金原子含有量として1質量%含有するトルエン溶液:0.06質量部、
エチニルシクロヘキサノール:0.05質量部、及び
((D)成分)Tφ0.75DVi0.25で表される分岐鎖状オルガノポリシロキサン(25℃で固体状、ケイ素原子結合ビニル基の含有率=20モル%、ケイ素原子結合全有機基中のケイ素原子結合フェニル基の含有率=50モル%、標準スチレン換算の重量平均分子量=1600):59質量部
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン:3質量部
をよく撹拌してシリコーン組成物3を調製した。
【0151】
[実施例1]
組成物1を100質量部に、フレーク状の無機充填材として、ガラスフレーク(REF−015、日本板硝子社製 平均粒径:15μm)30質量部と、平均粒径0.5μmであり、塩素法で製造され結晶形態がルチルである酸化チタン粉末200質量部を仕込み、5リットルゲートーミキサー(井上製作所(株)製、商品名:5リットルプラネタリミキサー)を用いて室温にて1時間混合し、均一になるように室温にて減圧下30分混合して光反射材料用硬化性組成物(a)を調製した。
【0152】
[実施例2]
組成物2を100質量部に、フレーク状の無機充填材として、(ナノフレックスNTS30K3TA、日本板硝子社製、微粒子酸化チタンの大きさ:約φ30nm、内包量30重量%、ガラス粉体の平面度30nm、a−b面粒径11μm、c軸の厚さ1.1μm、アスペクト比10)50質量部と、平均粒径0.5μmであり、塩素法で製造され結晶形態がルチルである酸化チタン粉末200質量部を仕込み、5リットルゲートーミキサー(井上製作所(株)製、商品名:5リットルプラネタリミキサー)を用いて室温にて1時間混合し、均一になるように室温にて減圧下30分混合して光反射材料用硬化性樹脂組成物(b)を調製した。
【0153】
[実施例3]
組成物3を100質量部に、表面にコーティングされたフレーク状の無機充填材
として、(GT5090RS、日本板硝子社製、酸化チタンコート、平均粒径:90μm)30質量部を仕込み、5リットルゲートーミキサー(井上製作所(株)製、商品名:5リットルプラネタリミキサー)を用いて室温にて1時間混合し、均一になるように室温にて減圧下30分混合して光反射材料用硬化性組成物(c)を調製した。
【0154】
[比較例1]
フレーク状の無機充填材を添加しなかった以外は組成物1と同一組成で、同様の操作を行い、熱硬化性組成物(d)を調製した。
【0155】
[比較例2]
フレーク状の無機充填材を添加しなかった以外は組成物2と同一組成で、同様の操作を行い、熱硬化性組成物(e)を調製した。
【0156】
[比較例3]
球状シリカ(MSR8040 龍森社製、平均粒径11.4μm、比表面積4.2m/g)50質量部をフレーク状の無機充填材の換わりに用いた以外は組成物(a)と同一組成で、同様の操作を行い、熱硬化性組成物(f)を調製した。
【0157】
<光半導体用パッケージ基板の製造>
0.3mm厚のクロム−スズ−亜鉛を含有する銅合金の金属板に、複数個の第1のリードと第2のリードとが設けられ、各々がタイバーで連結された構造が備えられ、銀めっきを施されたリードフレームを、リフレクターを有するパッケージ基板とするため、射出成型機を用いて成型した。具体的には、まず、130℃に加熱した下金型へ固定した。同様に130℃に加熱した上金型でリードフレームを挟み込み、型締めを行った。硬化性樹脂として、実施例及び比較例で調整した光反射材料用硬化性樹脂組成物(a)〜(c)、熱硬化性樹脂組成物(d)〜(f)を用い、射出成型機のノズルより注入した。注入した液状射出成型材料を金型内で130℃、1分間の加熱を行い仮硬化した。次に上金型と下金型とを開き、上記金属板と熱硬化性樹脂が一体化されてなった凹形状を有する光半導体素子搭載用パッケージ基板を金型内から取り出した。取り出した後、さらに150℃、2時間の加熱を行い前記硬化性樹脂組成物の完全硬化を行い、完成された光半導体素子搭載用パッケージ基板を得た。その後、アルカリ薬液を用いて脱脂洗浄を行い、完成された光半導体用パッケージ基板とした。
【0158】
<光半導体用パッケージ基板を用いた光半導体デバイスの作製>
前記製造例で作製した光半導体用パッケージ基板は、複数個の開口部がマトリックス状に設けられたものであり、開口部の角度は30度であった。それぞれの第一のリード表面に、同一ロットからなる、InGaNからなる発光層を有し、主発光ピークが450nmのLEDチップを、ダイボンド剤(信越化学工業製 KER−3000−M2)を用いてダイボンドし、150℃、4時間加熱硬化を行った。次いで、光半導体素子の第1の電極と光半導体用パッケージ基板の第1リード、及び光半導体素子の第2の電極と光半導体用パッケージ基板の第2のリードを、各々ワイヤーボンダーを用いてワイヤーボンディングし電気的に接続した(金線:田中電子工業株式会社製 FA 25μm)。
ワイヤーを備えた光半導体にシリコーン封止剤(信越化学工業製 KER2500)を適量塗布し、150℃、4時間の加熱硬化を行った。ついで、タイバーを含む熱硬化性樹脂部を切りしろとし、回転ブレードによるダイシング加工でこれを切断し、洗浄・乾燥することで光半導体素子有する光半導体デバイスを得ることができた(パッケージとしての外形寸法4.0x1.2x1.2mm)。得られた光半導体デバイスは薄型で製品寸法精度が高いものであった。
【0159】
[比較例4]
<熱可塑性樹脂を用いた光半導体デバイスの作成>
比較例4として代表的なポリアミド樹脂系リフレクター材料(ソルベイアドバンストポリマーズ社製 アモデルA−4422HRからなる白色樹脂)を用いて成型された、光半導体用パッケージ基板を用意した(パッケージとしての外形寸法4.0x1.2x1.2mmとし、本発明のパッケージ基板寸法と同形状とした)。次いで、第一のリード表面に、同一ロットからなる、InGaNからなる発光層を有し、主発光ピークが450nmのLEDチップを、ダイボンド剤(信越化学工業製 KER−3000−M2)を用いてダイボンドし、150℃、4時間加熱硬化を行った。次いで、光半導体素子の第1の電極と光半導体用パッケージ基板の第1リード、及び光半導体素子の第2の電極と光半導体用パッケージ基板の第2のリードを、各々ワイヤーボンダーを用いてワイヤーボンディングし電気的に接続した(金線:田中電子工業株式会社製 FA 25μm)。
ワイヤーを備えた光半導体にシリコーン封止剤(信越化学工業製 KER2500)を適量塗布し、150℃、4時間の加熱硬化を行った。ついで、各々のパッケージをリードフレームから取り外すことで光半導体素子有する光半導体デバイスを得ることができた。
【0160】
<光半導体用パッケージ基板を用いた光半導体デバイスの評価>
上記実施例及び比較例で調製した硬化性樹脂組成物における評価を、下記の要領にて行った。
全光束値の測定
上記で作製した発光半導体デバイス10個を全光束測定システム HM−9100(大塚電子株式会社製)を用い、全光束値を測定した(印加電流IF=20mA)。測定点は40点とし、平均値を求め、その値を比較した。
【表1】
【0161】
上記表1に示したように、実施例1〜実施例3では、フレーク状の無機充填材を含有する樹脂組成物を用いて成型され、製造された光半導体用デバイスでは、良好な全光束値を示した。つまり、フレーク状の無機充填材が含有されてなるリフレクターを用いることで、光の全反射成分の割合が向上され、良好な光半導体デバイスとすることが出来た。
一方、フレーク状の無機充填材を含有していない比較例1及び比較例2では、同様の組成でフレーク状の無機充填材を含有している実施例1及び実施例2と比較して全光束値の低いものであった。すなわち、暗いものであった。また、フレーク状の無機充填材の代わりに球状シリカを用いた比較例3も、実施例1と比較して全光束値の低いものであった。
また、従来のパッケージ基板用材料である、ポリアミド樹脂系材料をリフレクターとして備えているパッケージ基板の例である、比較例4と比較しても、フレーク状の無機充填材を含有している実施例1〜実施例3は全光速値の高いものであり、従来のものと比較して、明るいものであった。
【0162】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0163】
1…鱗片状又はフレーク状の無機充填材、 2…熱硬化性樹脂組成物、 3…光拡散微粒子。
図1
図2