(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5932705
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月8日
(54)【発明の名称】印刷回路用銅箔
(51)【国際特許分類】
C25D 7/06 20060101AFI20160526BHJP
H05K 1/09 20060101ALI20160526BHJP
【FI】
C25D7/06 A
H05K1/09 C
【請求項の数】17
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-79819(P2013-79819)
(22)【出願日】2013年4月5日
(62)【分割の表示】特願2010-540445(P2010-540445)の分割
【原出願日】2009年11月13日
(65)【公開番号】特開2013-174017(P2013-174017A)
(43)【公開日】2013年9月5日
【審査請求日】2013年4月8日
(31)【優先権主張番号】特願2008-299431(P2008-299431)
(32)【優先日】2008年11月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100093296
【弁理士】
【氏名又は名称】小越 勇
(72)【発明者】
【氏名】新井 英太
(72)【発明者】
【氏名】樋口 直樹
【審査官】
祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2010/061736(WO,A1)
【文献】
特開2006−210689(JP,A)
【文献】
特開平09−087889(JP,A)
【文献】
特開平04−096395(JP,A)
【文献】
特開平02−292894(JP,A)
【文献】
特開平06−169168(JP,A)
【文献】
特開2004−244710(JP,A)
【文献】
特開2006−278881(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅箔の表面に、銅、コバルト及びニッケルからなる3元系合金電気めっき層を有する銅箔であって、前記銅箔の表面と前記銅、コバルト及びニッケルからなる3元系合金電気めっき層との間に銅粗化処理層を有さず、該電気めっき層が銅箔表面から成長した樹枝状の粒子を有し、銅箔面上から見た面積0.1−0.5μm2の粒子が1000個/10000μm2以下、面積0.5μm2を超える粒子が100個/10000μm2以下、残りの粒子が面積0.1μm2未満の粒子である印刷回路用銅箔。
【請求項2】
前記銅、コバルト及びニッケルからなる3元系合金電気めっき層の銅箔の表面の付着量が15〜40mg/dm2銅−100〜3000μg/dm2コバルト−100〜1000μg/dm2ニッケルである、請求項1に記載の印刷回路用銅箔。
【請求項3】
銅箔面上から見た面積0.1−0.5μm2の粒子が300個/10000μm2以下であることを特徴とする請求項1〜2のいずれか一項に記載の印刷回路用銅箔。
【請求項4】
銅箔面上から見た面積0.1−0.5μm2の粒子が100個/10000μm2以下、0.5μm2を超える粒子が30個/10000μm2以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の印刷回路用銅箔。
【請求項5】
前記銅、コバルト及びニッケルからなる3元系合金電気めっき層の上にコバルト−ニッケル合金層を有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の印刷回路用銅箔。
【請求項6】
前記コバルト−ニッケル合金層の上に亜鉛−ニッケル合金めっき層を有する請求項5に記載の印刷回路用銅箔。
【請求項7】
前記亜鉛−ニッケル合金めっき層の上に防錆処理層を有する請求項6に記載の印刷回路用銅箔。
【請求項8】
前記防錆処理層が、クロム酸化物単独の皮膜処理層或いはクロム酸化物と亜鉛及び/又は亜鉛酸化物との混合物皮膜処理層である請求項7に記載の印刷回路用銅箔。
【請求項9】
前記防錆処理層の上にシラン処理層を有する請求項7又は8のいずれか一項に記載の印刷回路用銅箔。
【請求項10】
樹枝状の粒子の銅箔面からの高さが0.1μmから1.0μmである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の印刷回路用銅箔。
【請求項11】
樹枝状の粒子の銅箔面からの高さが0.2μmから0.6μmである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の印刷回路用銅箔。
【請求項12】
樹枝上の粒子が、銅箔表面から成長した樹枝の主幹直径以上の長さの側枝があるものが100個/10000μm2以下である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の印刷回路用銅箔。
【請求項13】
樹枝上の粒子が、銅箔表面から成長した樹枝の主幹直径以上の長さの側枝があるものが30個/10000μm2以下である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の印刷回路用銅箔。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の銅箔を樹脂基板と接着させた銅張積層板。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の銅箔を有する印刷回路基板。
【請求項16】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の銅箔を有する印刷回路。
【請求項17】
請求項15に記載の印刷回路基板を有する電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷回路用銅箔に関するものであり、特に銅箔の表面に銅−コバルト−ニッケル合金めっきによる粗化処理層の粉落ち及び処理ムラが発生を減少させることのできる印刷回路用銅箔に関する。本発明の印刷回路用銅箔は、例えばファインパターン印刷回路及び磁気ヘッド用FPC( Flexible Printed Circuit )に、特に適する。
【背景技術】
【0002】
銅及び銅合金箔(以下銅箔と称する)は、電気・電子関連産業の発展に大きく寄与しており、特に印刷回路材として不可欠の存在となっている。印刷回路用銅箔は一般に、合成樹脂ボード、フィルム等の基材に接着剤を介して、又は接着剤を使用せずに高温高圧下で積層接着して銅張積層板を製造し、その後目的とする回路を形成するために、レジスト塗布及び露光工程を経て必要な回路を印刷した後、不要部を除去するエッチング処理が施される。
最終的に、所要の素子が半田付けされて、エレクトロニクスデバイス用の種々の印刷回路板を形成する。印刷回路板用銅箔は、樹脂基材と接着される面(粗化面)と非接着面(光沢面)とで異なるが、それぞれ多くの方法が提唱されている。
【0003】
例えば、銅箔に形成される粗化面に対する要求としては、主として、1)保存時における酸化変色のないこと、2)基材との引き剥し強さが高温加熱、湿式処理、半田付け、薬品処理等の後でも充分なこと、3)基材との積層、エッチング後に生じる、いわゆる積層汚点のないこと等が挙げられる。
銅箔の粗化処理は、銅箔と基材との接着性を決定するものとして、大きな役割を担っている。この粗化処理としては、当初銅を電着する銅粗化処理が採用されていたが、その後、様々な技術が提唱され、耐熱剥離強度、耐塩酸性及び耐酸化性の改善を目的として銅−ニッケル粗化処理が一つの代表的処理方法として定着するようになっている。
本件出願人は、銅−ニッケル粗化処理を提唱し(特許文献1参照)、成果を納めてきた。銅−ニッケル処理表面は黒色を呈し、特にフレキシブル基板用圧延処理箔では、この銅−ニッケル処理の黒色が商品としてのシンボルとして認められるに至っている。
【0004】
しかしながら、銅−ニッケル粗化処理は、耐熱剥離強度及び耐酸化性並びに耐塩酸性に優れる反面で、近時ファインパターン用処理として重要となってきたアルカリエッチング液でのエッチングが困難であり、150μmピッチ回路巾以下のファインパターン形成時に処理層がエッチング残となってしまう。
そこで、ファインパターン用処理として、本件出願人は、先にCu−Co処理(特許文献2及び特許文献3参照)及びCu−Co−Ni処理(特許文献4参照)を開発した。これら粗化処理は、エッチング性、アルカリエッチング性及び耐塩酸性については、良好であったが、アクリル系接着剤を用いたときの耐熱剥離強度が低下することが改めて判明し、また耐酸化性も所期程充分ではなくそして色調も黒色までには至らず、茶乃至こげ茶色であった。
【0005】
最近の印刷回路のファインパターン化及び多様化への趨勢にともない、1)Cu−Ni処理の場合に匹敵する耐熱剥離強度(特にアクリル系接着剤を用いたとき)及び耐塩酸性を有すること、2)アルカリエッチング液で150μmピッチ回路巾以下の印刷回路をエッチングできること、3)Cu−Ni処理の場合と同様に、耐酸化性(180℃×30分のオーブン中での耐酸化性)を向上すること、4)Cu−Ni処理の場合と同様の黒化処理であることが更に要求されるようになった。
【0006】
即ち、回路が細くなると、塩酸エッチング液により回路が剥離し易くなる傾向が強まり、その防止が必要である。回路が細くなると、半田付け等の処理時の高温により回路がやはり剥離し易くなり、その防止もまた必要である。ファインパターン化が進む現在、例えばCuCl
2エッチング液で150μmピッチ回路巾以下の印刷回路をエッチングできることはもはや必須の要件であり、レジスト等の多様化にともないアルカリエッチングも必要要件となりつつある。黒色表面も、位置合わせ精度及び熱吸収を高めることの点で銅箔の製作及びチップマウントの観点から重要となっている。
【0007】
こうした要望に答えて、本出願人は、銅箔の表面に銅−コバルト−ニッケル合金めっきによる粗化処理後、コバルトめっき層或いはコバルト−ニッケル合金めっき層を形成することにより、印刷回路銅箔として上述した多くの一般的特性を具備することはもちろんのこと、特にCu−Ni処理と匹敵する上述した諸特性を具備し、しかもアクリル系接着剤を用いたときの耐熱剥離強度を低下せず、耐酸化性に優れそして表面色調も黒色である銅箔処理方法を開発することに成功した(特許文献5参照)。
好ましくは、前記コバルトめっき層或いはコバルト−ニッケル合金めっき層を形成した後に、クロム酸化物の単独皮膜処理或いはクロム酸化物と亜鉛及び(又は)亜鉛酸化物との混合皮膜処理を代表とする防錆処理が施される。
【0008】
その後、電子機器の発展が進む中で、半導体デバイスの小型化、高集積化が更に進み、これらの印刷回路の製造工程で行われる処理が一段と高温となりまた製品となった後の機器使用中の熱発生により、銅箔と樹脂基材との間での接合力の低下があらためて問題となるようになった。
このようなことから、特許文献5において確立された銅箔の表面に銅−コバルト−ニッケル合金めっきによる粗化処理後、コバルトめっき層或いはコバルト−ニッケル合金めっき層を形成する印刷回路用銅箔の処理方法において、耐熱剥離性を改善する発明を行った。
【0009】
これは、銅箔の表面に銅−コバルト−ニッケル合金めっきによる粗化処理後、コバルト−ニッケル合金めっき層を形成し、更に亜鉛−ニッケル合金めっき層を形成する印刷回路用銅箔の処理方法である。非常に有効な発明であり、今日の、銅箔回路材料の主要製品の一つとなっている。
銅箔回路は、一段と細線化されているが、基板上で一旦回路を形成した後、銅回路の上表面を硫酸と過酸化水素を含有するエッチング液によりソフトエッチングする工程が行われているが、この工程において、ポリイミド等の樹脂基板と銅箔の接着部のエッジ部にエッチング液が染み込むという問題が生じた。
これは、銅箔の処理面の一部が侵食されているとも言える。このような侵食は、微細な回路においては、銅箔と樹脂との接合力を低下させるので、重要な問題である。これを解決することも要求されている。
【0010】
銅箔の表面に銅−コバルト−ニッケル合金めっきによる粗化処理後、コバルト−ニッケル合金めっき層を形成し、更に亜鉛−ニッケル合金めっき層を形成する印刷回路用銅箔の処理について、本発明者は多くの提案を行い、印刷回路用銅箔の特性に、いくつか大きな進展があった。銅−コバルト−ニッケル合金めっきによる粗化処理の初期の技術は、特許文献7、特許文献8に開示されている。
しかし、このような最も基本的な、銅−コバルト−ニッケル合金めっきからなる粗化処理において、粗化粒子の形状が樹枝状であるために、この樹枝の上部が銅箔の表面から剥がれ落ち、一般に粉落ち現象と言われる問題が発生した。また、このような粗化処理面にさらにめっき処理を行うと、処理ムラが発生することがあった。これは、回路パターンの微細化に伴い、エッチング残などの問題を発生する原因となった。
【特許文献1】特開昭52−145769号公報
【特許文献2】特公昭63−2158号公報
【特許文献3】特願平1−112227号公報
【特許文献4】特願平1−112226号公報
【特許文献5】特公平6−54831号公報
【特許文献6】特許第2849059号公報
【特許文献7】特開平4−96395号公報
【特許文献8】特開平10−18075号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、最も基本的な、銅−コバルト−ニッケル合金めっきからなる粗化処理において、樹枝状に形成される粗化粒子が銅箔の表面から剥がれ落ち、一般に粉落ちと言われる現象及び処理ムラを抑制するものである。電子機器の発展が進む中で、半導体デバイスの小型化、高集積化が更に進み、これらの印刷回路の製造工程で行われる処理が一段と厳しい要求がなされている。本願発明をこれらの要求にこたえる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明は、
1)銅箔の表面に、銅、コバルト及びニッケルからなる3元系合金電気めっき層を形成した印刷回路用銅箔であって、該電気めっき層が銅箔表面から成長した樹枝状の粒子からなり、銅箔面上から見た面積0.1−0.5μm
2の粒子が1000個/10000μm
2以下、0.5μm
2を超える粒子が100個/10000μm
2以下、残部が0.1μm
2未満である粒子が、銅箔の全面を被覆することを特徴とする印刷回路用銅箔
2)銅箔面上から見た面積0.1−0.5μm
2の粒子が300個/10000μm
2以下であることを特徴とする上記1)記載の印刷回路用銅箔
3)樹枝状の粒子について銅箔面上から見た面積0.1−0.5μm
2の粒子が100個/10000μm
2以下、0.5μm
2を超える粒子が30個/10000μm
2以下であることを特徴とする上記1)又は2)記載の印刷回路用銅箔
4)前記印刷回路用銅箔において、銅箔の表面に付着量が15〜40mg/dm
2銅−100〜3000μg/dm
2コバルト−100〜1000μg/dm
2ニッケルの、銅−コバルト−ニッケル合金めっきによる粗化処理層を備えていることを特徴とする上記1)〜3)のいずれか一項に記載の印刷回路用銅箔
5)上記1)〜4)のいずれか一項に記載の印刷回路銅箔を樹脂基板と接着させた銅張積層板、を提供する。
【0013】
前記銅−コバルト−ニッケル合金めっきによる粗化処理層の上に、コバルト−ニッケル合金めっき層を、また該コバルト−ニッケル合金めっき層の上に、さらに亜鉛−ニッケル合金めっき層を形成した印刷回路用銅箔を提供することができる。
前記コバルト−ニッケル合金めっき層は、コバルトの付着量を200〜3000μg/dm
2とし、かつコバルトの比率が60〜66質量%とすることができる。前記亜鉛−ニッケル合金めっき層においては、その総量を150〜500μg/dm
2の範囲とし、ニッケル量が50μg/dm
2以上の範囲、かつニッケル比率が0.16〜0.40の範囲にある亜鉛−ニッケル合金めっき層を形成することができる。
【0014】
また、前記亜鉛−ニッケル合金めっき層又は該コバルト−ニッケル合金めっき層の上に、防錆処理層を形成することができる。
この防錆処理については、例えばクロム酸化物の単独皮膜処理若しくはクロム酸化物と亜鉛及び(又は)亜鉛酸化物との混合皮膜処理層を形成することができる。さらに、前記混合皮膜処理層上には、シランカップリング層を形成することができる。
上記の印刷回路銅箔は、接着剤を介さずに熱圧着により、樹脂基板と接着させた銅張積層板を製造することが可能である。
さらに、本発明は以下の(1)以下を含む。
(1)
銅箔の表面に、銅粗化処理による予備処理せずに、銅、コバルト及びニッケルからなる3元系合金電気めっき層を形成した銅箔であって、該電気めっき層が銅箔表面から成長した樹枝状の粒子を有し、銅箔面上から見た面積0.1−0.5μm2の粒子が1000個/10000μm2以下、面積0.5μm2を超える粒子が100個/10000μm2以下、残りの粒子が面積0.1μm2未満の粒子である印刷回路用銅箔。
(2)
銅箔の表面に、銅、コバルト及びニッケルからなる3元系合金電気めっき層を形成した銅箔であって、該電気めっき層が銅箔表面から成長した樹枝状の粒子を有し、銅箔面上から見た面積0.1−0.5μm2の粒子が1000個/10000μm2以下、面積0.5μm2を超える粒子が100個/10000μm2以下、残りの粒子が面積0.1μm2未満の粒子である印刷回路用銅箔。
(3)
銅箔の表面に、銅、コバルト及びニッケルからなる3元系合金電気めっき層を形成した銅箔であって、銅箔の表面の付着量が15〜40mg/dm2銅−100〜3000μg/dm2コバルト−100〜1000μg/dm2ニッケルの、銅−コバルト−ニッケル合金めっき層を備え、該電気めっき層が銅箔表面から成長した樹枝状の粒子を有し、銅箔面上から見た面積0.1−0.5μm2の粒子が1000個/10000μm2以下、面積0.5μm2を超える粒子が100個/10000μm2以下、残り部の粒子が面積0.1μm2未満の粒子である印刷回路用銅箔。
(4)
銅箔面上から見た面積0.1−0.5μm2の粒子が300個/10000μm2以下であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか一項に記載の印刷回路用銅箔。
(5)
銅箔面上から見た面積0.1−0.5μm2の粒子が100個/10000μm2以下、0.5μm2を超える粒子が30個/10000μm2以下であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか一項に記載の印刷回路用銅箔。
(6)
前記銅、コバルト及びニッケルからなる3元系合金電気めっき層の上にコバルト−ニッケル合金層を有する(1)〜(5)のいずれか一項に記載の印刷回路用銅箔。
(7)
前記コバルト−ニッケル合金層の上に亜鉛−ニッケル合金めっき層を有する(6)に記載の印刷回路用銅箔。
(8)
前記亜鉛−ニッケル合金めっき層の上に防錆処理層を有する(7)に記載の印刷回路用銅箔。
(9)
前記防錆処理層が、クロム酸化物単独の皮膜処理層或いはクロム酸化物と亜鉛及び/又は亜鉛酸化物との混合物皮膜処理層である(8)に記載の印刷回路用銅箔。
(10)
前記防錆処理層の上にシラン処理層を有する(8)又は(9)のいずれか一項に記載の印刷回路用銅箔。
(11)
樹枝状の粒子の銅箔面からの高さが0.1μmから1.0μmである、(1)〜(10)のいずれか一項に記載の印刷回路用銅箔。
(12)
樹枝状の粒子の銅箔面からの高さが0.2μmから0.6μmである、(1)〜(10)のいずれか一項に記載の印刷回路用銅箔。
(13)
樹枝上の粒子が、銅箔表面から成長した樹枝の主幹直径以上の長さの側枝があるものが100個/10000μm2以下である、(1)〜(12)のいずれか一項に記載の印刷回路用銅箔。
(14)
樹枝上の粒子が、銅箔表面から成長した樹枝の主幹直径以上の長さの側枝があるものが30個/10000μm2以下である、(1)〜(12)のいずれか一項に記載の印刷回路用銅箔。
(15)
(1)〜(14)のいずれか一項に記載の銅箔を樹脂基板と接着させた銅張積層板。
(16)
(1)〜(14)のいずれか一項に記載の銅箔を用いて製造した印刷回路基板。
(17)
(1)〜(14)のいずれか一項に記載の銅箔を用いて製造した印刷回路。
(18)
(16)に記載の印刷回路基板を用いた電子機器。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、銅−コバルト−ニッケル合金めっきからなる粗化処理において、樹枝状に形成される粗化粒子が銅箔の表面から剥がれ落ち、一般に粉落ちと言われる現象及び処理ムラを抑制する効果を有する。電子機器の発展が進む中で、半導体デバイスの小型化、高集積化が更に進み、これらの印刷回路の製造工程で行われる処理が一段と厳しい要求がなされているが、本願発明をこれらの要求にこたえる技術的効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】実施例と比較例の電流密度とめっきの状態を示す顕微鏡写真である。
【
図3】本発明の粉落ちを生じない均一微細な結晶粒径を持つCu−Co−Ni合金めっきと花びら状のCu−Co−Ni合金めっきを持つ比較例の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明において使用する銅箔は、電解銅箔或いは圧延銅箔いずれでも良い。通常、銅箔の、樹脂基材と接着する面即ち粗化面には積層後の銅箔の引き剥し強さを向上させることを目的として、脱脂後の銅箔の表面に、「ふしこぶ」状の電着を行なう粗化処理が施される。電解銅箔は製造時点で凹凸を有しているが、粗化処理により電解銅箔の凸部を増強して凹凸を一層大きくする。
本発明においては、この粗化処理を、銅−コバルト−ニッケル合金めっきにより行なう。粗化前の前処理として銅の正常めっき等が、そして粗化後の仕上げ処理として電着物の脱落を防止するために銅の正常めっき等が行なわれることもある。本願発明は、これらを全て包含する。
圧延銅箔と電解銅箔とでは処理の内容を幾分異にすることもある。本発明においては、こうした前処理及び仕上げ処理をも含め、銅箔粗化と関連する公知の処理を必要に応じて含め、総称して粗化処理と云うものとする。
【0018】
本発明における粗化処理としての銅−コバルト−ニッケル合金めっきは、電解めっきにより、付着量が15〜40mg/dm
2銅−100〜3000μg/dm
2コバルト−100〜500μg/dm
2ニッケルの3元系合金層を形成する。
Co付着量が100μg/dm
2未満では、耐熱性が悪くなり、またエッチング性も悪くなる。Co付着量が3000μg/dm
2を超えると、磁性の影響を考慮せねばならない場合には好ましくなく、エッチングシミが生じ、また、耐酸性及び耐薬品性の悪化が考慮され得る。
【0019】
Ni付着量が100μg/dm
2未満であると、耐熱性が悪くなる。他方、Ni付着量が500μg/dm
2を超えると、エッチング性が低下する。すなわち、エッチング残ができ、またエッチングできないというレベルではないが、ファインパターン化が難しくなる。好ましいCo付着量は2000〜3000μg/dm
2であり、そして好ましいニッケル付着量は200〜400μg/dm
2である。
以上から、銅−コバルト−ニッケル合金めっきの付着量は、15〜40mg/dm
2銅−100〜3000μg/dm
2コバルト−100〜500μg/dm
2ニッケルであることが望ましいと言える。この3元系合金層の各付着量はあくまで、望ましい条件であり、この量を超える範囲を否定するものではない。
ここで、エッチングシミとは、塩化銅でエッチングした場合、Coが溶解せずに残ってしまうことを意味し、そしてエッチング残とは塩化アンモニウムでアルカリエッチングした場合、Niが溶解せずに残ってしまうことを意味するものである。
一般に、回路を形成する場合には、下記の実施例の中で説明するようなアルカリ性エッチング液及び塩化銅系エッチング液を用いて行われる。このエッチング液及びエッチング条件は、汎用性のあるものであるが、この条件に限定されることはなく、任意に選択できることは理解されるべきことである。
【0020】
この3元系銅−コバルト−ニッケル合金めっきを形成するための一般的なめっき浴及びめっき条件は次の通りである。
(銅−コバルト−ニッケル合金めっき)
Cu:10〜20g/リットル
Co:1〜10g/リットル
Ni:1〜10g/リットル
pH:1〜4
温度:30〜40°C
電流密度D
k :20〜30A/dm
2
時間:1〜5秒
【0021】
本願発明は、上記の通り、銅箔の表面に、銅、コバルト及びニッケルからなる3元系合金電気めっき層を形成した印刷回路用銅箔であり、該電気めっき層が銅箔表面から成長した樹枝状の粒子は、銅箔面上から見た面積0.1−0.5μm
2の粒子を1000個/10000μm
2以下、0.5μm
2を超える粒子を100個/10000μm
2以下とし、残部が0.1μm
2未満である粒子が、銅箔の全面を被覆するようにするものであるが、これはめっきの厚さに応じて、上記めっき条件を任意に選択し、調整することにより達成できる。特に、電流密度を下げ、温度を比較的低温でめっきすることが有効である。但し、電流密度D
k が20A/dm
2未満であると、粗化粒子の形成が難しくなる。また、電流密度D
k が30A/dm
2を超えると、樹枝状の粒子が粗大化するので、この点を考慮して調節する。
【0022】
粗化処理粒子の形態を観察すると、銅箔表面から成長する主幹の存在が認められる。この主幹は、銅箔表面から伸びるにしたがって、枝分かれし、樹枝状に広がる。この樹枝状に広がった粗化粒子は、樹脂と接着する際にアンカー効果となって、高い接着力と生む効果を有するが、逆にこの樹枝状に広がった部分の強度が弱くなるため、各種の処理操作の途中で脱落し、粉落ちの現象を生ずる。
この粉落ちは、その後のめっき処理において、めっきむら、さらにはめっき不全を生ずるという問題を生ずることになる。したがって、銅箔表面から成長した樹枝状の粒子の形状は重要となる。
従来は、このような観点で、粗化粒子を検討したことはなく、単に、樹枝状粒子の発達を促進させていただけであり、問題を内包していたのである。本願発明によって、この問題を解決することが可能となり、さらにファインパターン印刷回路形成により有効である。
【0023】
前記粗化粒子は、銅箔面上から見た面積0.1−0.5μm
2の粒子が300個/10000μm
2以下であること、さらには樹枝状の粒子について銅箔面上から見た面積0.1−0.5μm
2の粒子が100個/10000μm
2以下、0.5μm
2を超える粒子が30個/10000μm
2以下であることが望ましい。
前記の通り、樹枝状粒子が大きく発達させることは、粉落ちの量が増加するので得策ではない。この意味から、樹枝状の粒子の銅箔面からの高さを0.1μmから1.0μm、さらには高さが0.2μmから0.6μmとすることが望ましい。また、樹枝上の粒子について、銅箔表面から成長した樹枝の主幹直径以上の長さの側枝があるものが100個/10000μm
2以下、さらには30個/10000μm
2以下とすることが望ましい。
以上によって、異常成長した粒子が少なくなり、粒子径が小さく揃い、かつ全面を覆うことになるので、エッチング性が良好となり、エッチング残、ムラがなく、切れが良い回路形成が可能となる。また、樹脂の塗布において、バブルの発生がなく、均一塗布が可能となる効果がある。
【0024】
本発明は、粗化処理後、粗化面上にコバルト−ニッケル合金めっき層を形成することができる。このコバルト−ニッケル合金めっき層は、コバルトの付着量が200〜3000μg/dm
2であり、かつコバルトの比率が60〜66質量%とするのが望ましい。この処理は広い意味で一種の防錆処理とみることができる。
このコバルト−ニッケル合金めっき層は、銅箔と基板の接着強度を実質的に低下させない程度に行なう必要がある。コバルト付着量が200μg/dm
2未満では、耐熱剥離強度が低下し、耐酸化性及び耐薬品性が悪くなり、また処理表面が赤っぽくなってしまうので好ましくない。また、コバルト付着量が3000μg/dm
2を超えると、磁性の影響を考慮せねばならない場合には好ましくなく、エッチングシミが生じ、また、耐酸性及び耐薬品性の悪化が考慮される。好ましいコバルト付着量は500〜3000μg/dm
2である。
【0025】
また、コバルト付着量が多いと、ソフトエッチングの染み込み発生の原因となる場合がある。このことからコバルトの比率が60〜66質量%とするのが望ましいと言える。
後述するように、ソフトエッチングの染み込み発生の直接の大きな原因は、亜鉛−ニッケル合金めっき層からなる耐熱防錆層であるが、コバルトもソフトエッチングの際の染み発生の原因になることもあるので、上記に調整することが、より望ましいとする条件である。
一方、ニッケル付着量が少ない場合には、耐熱剥離強度が低下し、耐酸化性及び耐薬品性が低下する。また、ニッケル付着量が多すぎる場合には、アルカリエッチング性が悪くなるので、上記コバルト含有量とのバランスで決めることが望ましい。
【0026】
コバルト−ニッケル合金めっきの条件は次の通りである。しかし、この条件は、あくまで好ましい条件であって、他の公知のコバルト−ニッケル合金めっきを使用することができる。このコバルト−ニッケル合金めっきは、本願発明においては、好ましい付加的条件であることが理解されるであろう。
(コバルト−ニッケル合金めっき)
Co:1〜20g/リットル
Ni:1〜20g/リットル
pH:1.5〜3.5
温度:30〜80°C
電流密度D
k :1.0〜20.0A/dm
2
時間:0.5〜4秒
【0027】
本発明は、コバルト−ニッケル合金めっき上に更に、亜鉛−ニッケル合金めっき層を形成することができる。亜鉛−ニッケル合金めっき層の総量を150〜500μg/dm
2とし、かつニッケルの比率を16〜40質量%とする。これは、耐熱防錆層という役割を有するものである。この条件も、あくまで好ましい条件であって、他の公知の亜鉛−ニッケル合金めっきを使用することができる。この亜鉛−ニッケル合金めっきは、本願発明においては、好ましい付加的条件であることが理解されるであろう。
印刷回路の製造工程で行われる処理が一段と高温となり、また製品となった後の機器使用中の熱発生がある。例えば、樹脂に銅箔を熱圧着で接合する、いわゆる二層材では、接合の際に300°C以上の熱を受ける。このような状況の中でも、銅箔と樹脂基材との間での接合力の低下を防止することが必要であり、この亜鉛−ニッケル合金めっきは有効である。
【0028】
また、従来の技術では、樹脂に銅箔を熱圧着で接合した二層材における亜鉛−ニッケル合金めっき層を備えた微小な回路では、ソフトエッチングの際に、回路のエッジ部に染み込みによる変色が発生する。ニッケルは、ソフトエッチングの際に使用するエッチング剤(H
2SO
4:10wt%、H
2O
2:2wt%のエッチング水溶液)の染み込みを抑制する効果がある。
上記の通り、前記亜鉛−ニッケル合金めっき層の総量を150〜500μg/dm
2とすると共に、当該合金層中のニッケル比率の下限値を0.16に、上限値を0.40とし、かつニッケルの含有量を50μg/dm
2以上とすることが、耐熱防錆層という役割を備えると共に、ソフトエッチングの際に使用するエッチング剤の染み込みを抑制し、腐食に回路の接合強度の弱体化を防止することができるという効果を有する。
【0029】
なお、亜鉛−ニッケル合金めっき層の総量が150μg/dm
2未満では、耐熱防錆力が低下して耐熱防錆層としての役割を担うことが難しくなり、同総量が500μg/dm
2を超えると、耐塩酸性が悪くなる傾向がある。
また、合金層中のニッケル比率の下限値が0.16未満では、ソフトエッチングの際の染み込み量が9μmを超えるので、好ましくない。ニッケル比率の上限値0.40については、亜鉛−ニッケル合金めっき層を形成できる技術上の限界値である。
【0030】
亜鉛−ニッケル合金めっきの例を示すと、次の通りである。
(亜鉛−ニッケル合金めっき)
Zn:0〜30g/リットル
Ni:0〜25g/リットル
pH:3〜4
温度:40〜50°C
電流密度D
k :0.5〜5A/dm
2
時間:1〜3秒
【0031】
上記の通り、本発明は、粗化処理としての銅−コバルト−ニッケル合金めっき層上に、必要に応じてコバルト−ニッケル合金めっき層、さらには亜鉛−ニッケル合金めっき層を順次形成することができる。これら層における合計量のコバルト付着量及びニッケル付着量を調節することもできる。コバルトの合計付着量が300〜5000μg/dm
2、ニッケルの合計付着量が260〜1200μg/dm
2とすることが望ましい。
コバルトの合計付着量が300μg/dm
2未満では、耐熱性及び耐薬品性が低下し、コバルトの合計付着量が5000μg/dm
2 を超えると、エッチングシミが生じることがある。また、ニッケルの合計付着量が260μg/dm
2未満では、耐熱性及び耐薬品性が低下する。ニッケルの合計付着量が1200μg/dm
2を超えると、エッチング残が生じる。
好ましくは、コバルトの合計付着量は2500〜5000μg/dm
2であり、そしてニッケルの合計付着量は580〜1200μg/dm
2、特に好ましくは600〜1000μg/dm
2である。上記の条件を満たせば、特にこの段落に記載する条件に制限される必要はない。
【0032】
この後、必要に応じ、防錆処理が実施される。本発明において好ましい防錆処理は、クロム酸化物単独の皮膜処理或いはクロム酸化物と亜鉛/亜鉛酸化物との混合物皮膜処理である。クロム酸化物と亜鉛/亜鉛酸化物との混合物皮膜処理とは、亜鉛塩または酸化亜鉛とクロム酸塩とを含むめっき浴を用いて電気めっきにより亜鉛または酸化亜鉛とクロム酸化物とより成る亜鉛−クロム基混合物の防錆層を被覆する処理である。
めっき浴としては、代表的には、K
2Cr
2O
7、Na
2Cr
2O
7等の重クロム酸塩やCrO
3等の少なくとも一種と、水溶性亜鉛塩、例えばZnO 、ZnSO
4・7H
2Oなど少なくとも一種と、水酸化アルカリとの混合水溶液が用いられる。代表的なめっき浴組成と電解条件例は次の通りである。
【0033】
(クロム防錆処理)
K
2Cr
2O
7(Na
2Cr
2O
7或いはCrO
3):2〜10g/リットル
NaOH或いはKOH :10〜50g/リットル
ZnO 或いはZnSO
4・7H
2O:0.05〜10g/リットル
pH:3〜13
浴温:20〜80°C
電流密度D
k :0.05〜5A/dm
2
時間:5〜30秒
アノード:Pt-Ti 板、ステンレス鋼板等
クロム酸化物はクロム量として15μg/dm
2以上、亜鉛は30μg/dm
2以上の被覆量が要求される。
【0034】
こうして得られた銅箔は、優れた耐熱性剥離強度、耐酸化性及び耐塩酸性を有する。また、CuCl
2エッチング液で150μmピッチ回路巾以下の印刷回路をエッチングでき、しかもアルカリエッチングも可能とする。また、ソフトエッチングの際の、回路エッジ部への染み込みを抑制できる。
ソフトエッチング液には、H
2SO
4:10wt%、H
2O
2:2wt%の水溶液が使用できる。処理時間と温度は任意に調節できる。
アルカリエッチング液としては、例えば、NH
4OH:6モル/リットル、NH
4Cl:5モル/リットル、CuCl
2:2モル/リットル(温度50°C)等の液が知られている。
【0035】
上記の全工程で得られた銅箔は、Cu−Ni処理の場合と同じく黒色を有している。黒色は、位置合わせ精度及び熱吸収率の高いことの点から、意味がある。例えば、リジッド基板及びフレキシブル基板を含め印刷回路基板は、ICや抵抗、コンデンサ等の部品を自動工程で搭載していくが、その際センサーにより回路を読み取りながらチップマウントを行なっている。このとき、カプトンなどのフィルムを通して銅箔処理面での位置合わせを行なうことがある。また、スルーホール形成時の位置決めも同様である。
処理面が黒に近い程、光の吸収が良いため、位置決めの精度が高くなる。更には、基板を作製する際、銅箔とフィルムとを熱を加えながらキュワリングして接着させることが多い。このとき、遠赤外線、赤外線等の長波を用いることにより加熱する場合、処理面の色調が黒い方が、加熱効率が良くなる。
【0036】
最後に、必要に応じ、銅箔と樹脂基板との接着力の改善を主目的として、防錆層上の少なくとも粗化面にシランカップリング剤を塗布するシラン処理が施される。
このシラン処理に使用するシランカップリング剤としては、オレフィン系シラン、エポキシ系シラン、アクリル系シラン、アミノ系シラン、メルカプト系シランを挙げることができるが、これらを適宜選択して使用することができる。
塗布方法は、シランカップリング剤溶液のスプレーによる吹付け、コーターでの塗布、浸漬、流しかけ等いずれでもよい。例えば、特公昭60−15654号は、銅箔の粗面側にクロメート処理を施した後シランカップリング剤処理を行なうことによって銅箔と樹脂基板との接着力を改善することを記載している。詳細はこれを参照されたい。この後、必要なら、銅箔の延性を改善する目的で焼鈍処理を施すこともある。
【実施例】
【0037】
以下、実施例及び比較例に基づいて説明する。なお、本実施例はあくまで一例であり、この例のみに制限されるものではない。すなわち、本発明に含まれる他の態様または変形を包含するものである。
【0038】
(実施例)
圧延銅箔に下記に示す条件範囲で銅−コバルト−ニッケル合金めっきによる粗化処理を施した。銅を17mg/dm
2、コバルトを2000μg/dm
2、そしてニッケルを500μg/dm
2 付着した後に、水洗し、その上にコバルト−ニッケル合金めっき層を形成した。この場合、コバルト付着量800〜1400μg/dm
2、そしてニッケル付着量400〜600μg/dm
2とした。
使用した浴組成及びめっき条件は、次の通りである。
[浴組成及びめっき条件]
【0039】
(A)粗化処理(Cu−Co−Ni合金めっき)
Cu:15.5g/リットル
Co:6g/リットル
Ni:11g/リットル
pH:2.5
温度:30°C
電流密度D
k :20A/dm
2
時間:2秒
銅付着量:17mg/dm
2
コバルト付着量:2000μg/dm
2
ニッケル付着量:500μg/dm
2
【0040】
(比較例)
比較例において、使用した浴組成及びめっき条件は、次の通りである。
[浴組成及びめっき条件]
(B)粗化処理(Cu−Co−Ni合金めっき
Cu:15.5g/リットル
Co:8g/リットル
Ni:8g/リットル
pH:2.5
温度:40°C
電流密度D
k :45A/dm
2
時間:2秒
銅付着量:25mg/dm
2
コバルト付着量:2500μg/dm
2
ニッケル付着量:500μg/dm
2
【0041】
上記実施例と比較例により形成した銅箔上の粗化処理(Cu−Co−Ni合金めっき)を、電子顕微鏡30000倍視野(4μm×3μm)で、10箇所観察し、粗化粒子の外縁の面積を測定して、その度数分布を作成した。この結果を、表1及び
図1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
この表1に示すものは、4μm×3μm×10=120μm
2の度数であり、0.1〜0.5μm
2の粒子は、比較例のB処理では63個、実施例のA処理では4個であった。
また、0.5μm
2を超える粒子は、比較例のB処理では12個、実施例のA処理では0個であった。他の視野の結果から見ても、A処理の場合、粗化粒子が高々0.5μm
2未満であった。
これらの結果をまとめ、100μm角(10000μm
2)に換算したとき、比較例のB処理では0.1〜0.5μm
2の粒子が6000個、0.5μm
2を超える粒子は1000個程度となるのに対して、実施例のA処理では、多い場合でも0.1〜0.5μm
2の粒子は1000個、0.5μm
2を超える粒子は100個程度であり、特に0.5μm
2を超える大きな粒子の頻度が小さいことがわかる。
【0044】
より好ましい条件では、0.1〜0.5μm
2の粒子は300個、0.5μm
2以上を超える粒子は30個程度にまで低減できる。
さらに、粗化粒子の形態を観察すると、比較例のB処理では、銅箔表面から成長する主幹が銅箔面から伸びるに従って枝分かれし、樹枝状に広がる。
この場合、粗化粒子を持つ銅箔表面が樹脂と接着する際にアンカー効果となって高い接着強度を与える利点があるが、逆に樹枝状に広がった部分が処理中に脱落するという問題を生じた。
【0045】
電流密度とCu−Co−Ni合金めっきの顕微鏡写真を
図2に示す。この
図2から、電流密度が20A/dm
2では、粗化粒子の成長が十分でないことが分かる。一方、電流密度が
30A/dm
2を超えると、粒子の成長が肥大化し、また不揃いとなっているのが分かる。好適な範囲は、電流密度D
k :20〜30A/dm
2であることが分かる。
また、本願発明の粉落ちが生じないCu−Co−Ni合金めっきの代表的な顕微鏡写真と粉落ちが生じた比較例の顕微鏡写真を
図3に示す。
図3の左が、本願発明の代表的な例を示すもので、均一微細な粒子のCu−Co−Ni合金めっきが形成されているのが分かる。
これに対して、
図3の右が、比較例であるが、樹枝状の粒子が発達し、花びら状に展開されている。この場合は、粉落ちが多くなるという問題を有するものである。
【産業上の利用可能性】
【0046】
銅−コバルト−ニッケル合金めっきからなる粗化処理において、樹枝状に形成される粗化粒子が銅箔の表面から剥がれ落ち、一般に粉落ちと言われる現象及び処理ムラを抑制することができるという優れた効果を有するので、半導体デバイスの小型化、高集積化が進む電子機器用印刷回路材料として有用である。