(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記蒸発器るつぼ(7)は、前記入口(5)を介して前記蒸発器るつぼ(7)を前記蒸気分配器(3)に接続するための前記第1及び第2のバルブ(13、27)を介して前記入口(5)へ向かって及び前記入口(5)から離れる方向に移動可能である請求項1〜3のいずれか1項記載の装置。
第1のバルブ(13)に接続された入口(5)に接続された蒸気分配器(3)を含む真空チャンバと、第2のバルブ(27)に接続されたるつぼチャンバ(12)を含む装置によってコーティングされた基板を製造するための方法であって、
前記るつぼチャンバ(12)内につるぼ(7)を提供する工程と、
前記第1のバルブ(13)と前記第2のバルブ(27)を互いに接続する工程と、
前記第1のバルブ(13)と前記第2のバルブ(27)を開く工程と、
前記入口(5)を介して前記蒸気分配器(3)を前記るつぼ(7)に接続する工程と、
前記第1のバルブ(13)と前記第2のバルブ(27)を閉じる工程と、
前記第2のバルブ(27)を前記蒸発器るつぼ(7)及び前記るつぼチャンバ(12)と共に移動させる工程を含む方法。
前記入口(5)を介して前記蒸気分配器(3)を前記るつぼ(7)に接続する工程は、前記るつぼ(7)を前記第1及び第2のバルブ(13、27)を介して前記入口(5)へ向かって移動させる工程を含む請求項10記載の方法。
【背景技術】
【0001】
本発明は請求項1の前提項に係る基板をコーティングするための装置(アレンジメント
)に関する。
【0002】
硫化カドミウム又は硫化亜鉛カドミウムで基板をコーティングする、又はOLED物質
で基板をコーティングするための装置は既知である(US4,401,052、DE10
2 24 908 A1、EP1 357 200 A1)。ここで、基板をコーティン
グする材料は蒸発器で蒸発される。
【0003】
しかしながら、これらの装置によって、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の群
に属する材料は、全く蒸発しない。なぜなら、これらの金属は非常に反応性が高く、ガラ
ス及び水と化合物を形成するからである。アルカリ金属及びアルカリ土類金属の中でも、
リチウムは単に非常にゆっくり放電する電池及びアキュムレータの製造に対しては適して
いるので、特に興味深い。
【0004】
現代のリチウム電池は1991年に初めて市場に登場した。それらにおいては、グラフ
ァイト(Li
xC
6)のアノードと層状酸化物(Li
1−xT
MO
2)のカソードの間で
Li
+イオンを交換し、T
Mは遷移金属−コバルト、ニッケル、時にはマンガンである。
3.8Vの平均電圧では、エネルギー密度は約180Whkg
−1であり、これはかなり
古い鉛蓄電池のおよそ5倍である。
【0005】
Li
+電池の分野における最新の開発は、ナノ材料の使用を含んでいる。さらに、酸素
カソードとリチウムアノードを含むリチウム酸素電池が研究されている(M.Arman
d and J.−M.Tarascon: Building Better Bat
teries,Nature,Vol.451,7 Febr.2008,pp.652
−657)。
【0006】
また、リチウム電池は薄層電池として生産されている(WO02/099910A1、
1頁、17−20行)。薄層の成膜はスパッタリングで行われている。イオンのスパッタ
リングの間に、例えばオルト燐酸リチウムが基板上に堆積する。反応性スパッタリングを
介して、Li
xP
yON
zの電解質層を成膜できる。
【0007】
また、PECVD(Plasma Enhanced Chemical Vapor
Deposition、プラズマCVD)によって基板上にSiO
2及びリチウムの薄
層を成膜することも知られている(US 6 177 142 B1)。
【0008】
さらに、Li−Co−Oで基板をコーティングすることが知られており、これは電子ビ
ーム蒸発器が使用されている(JP2003−234100)。
【0009】
基板上にリチウム又はリチウム合金の薄層を作るための別の既知の装置においては、る
つぼ中に配置されたリチウムが真空下で蒸発する(JP2002−206160)。
【0010】
最後に、真空又は減圧された状態が形成されて、昇華又は蒸発した膜形成材料が基板上
の膜内に形成される膜形成チャンバを有する膜形成装置内で使用される膜形成源は既知で
ある(EP1 584 705A)。この膜形成源はさらに、基板の膜形成面に向かって
膜形成材料を放電するための膜形成チャンバ内に配置された放電出口と、膜形成チャンバ
の外側に配置された材料収納部と、膜形成材料を含む材料容器を含んでいる。膜形成源に
は、気密性が高く放電出口を材料収納部に連通させている放電通路も提供されている。
【0011】
本発明は、コーティング材料が化学的に反応性の高いアルカリ金属及びアルカリ土類金
属の群の要素である可能性のある基板をもコーティングするための装置を提供するという
問題を対象とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は真空チャンバ用蒸気供給システム1を示している。真空チャンバの中で、チャン
バ壁2だけは明らかである。DE102 24 908A1の
図1〜3において、このよ
うな真空チャンバは詳細に示されている。
【0018】
蒸気供給システム1は、垂直に指向される蒸発器チューブ3を含み、その反対側にコー
ティングされる基板4が配置されている。数本の直線的に垂直に配置された蒸発器ノズル
を備えた蒸発器チューブ3は、蒸発器チューブ3に対して直角に向けられた入口チューブ
5に接続される。従って、この蒸発器チューブ3は蒸気分配器として機能する。蒸発器チ
ューブ3に平行に、入口チューブ5に直角に、筒状の蒸発器るつぼ7が提供され、これは
るつぼハウジング8内に位置している。例えばリチウムのような反応性の高い物質が蒸発
するならば、るつぼ7は例えばステンレス鋼、チタン又はモリブデンで作られる。蒸発器
るつぼ7の下方には、ピストン10を有するシリンダ9が位置している。
図1ではその下
位にある蒸発器るつぼ7は、ピストン10によって上下動可能である。真空バルブ11は
ピストン10に対して横方向に提供されており、それを介して、るつぼチャンバ12は排
気又は例えば保護ガスを注入できる。
【0019】
しかしながら、るつぼ7だけが反応性の高い物質にさらされるのではないので、蒸気供
給システム全体がこれらの反応性の高い物質に対して不活性な材料で作られなければなら
ないのは明らかである。
【0020】
このるつぼチャンバ12の中に、るつぼチャンバ12の安定化に貢献するリニアガイド
31が位置している。このリニアガイド31上には、蒸発器るつぼ7に接続された案内要
素32が配置されている。リニアガイド31に沿って案内要素32を移動することによっ
て、蒸発器るつぼ7もリニアガイド31に沿って、すなわち矢印33及び34の向きに移
動する。
【0021】
閉じた状態で
図1に示される分離バルブ13の補助によって、るつぼ7と共にるつぼチ
ャンバ12は入口チューブ5から分離することができる。この分離バルブ13はスペーサ
リング25上に配置される。入口チューブ5は下方へ指向された接続フィッティング14
を含んでいる。
図1には更に、加熱ジャケット15を見ることができる。接続フィッティ
ング14は、ピストン17の末端部16によって閉じることができる。更に、この接続フ
ィッティング14は、蒸発器るつぼ7の上部18が締結可能な帽形部19を含む。ピスト
ン17は、ピストン17を移動可能にしているシリンダと接続している。シリンダ35は
空圧制御シリンダであることが可能である。
【0022】
更にピストン10上に配置されている把持装置36が、るつぼチャンバ12の内部にあ
ることは明らかである。熱電対44は、耐真空パワーフィードスルー50から把持装置3
6の周りをらせん状に巻かれており、るつぼ7の底部に位置する刻み目51で終わる。
熱電対44によって、蒸発器るつぼ7の底部の温度を測定可能である。一方をパワーフィ
ードスルー50に、他方を把持装置36に固定された熱電対44のらせん状の巻線によっ
て、下位から高位置までるつぼ7を必要なだけ持ち上げることが可能である。これは
図2
で示されている。それに加えて、ピストン10によって熱電対44は矢印33及び34の
向きにそれぞれ動かすことができる。
【0023】
図1においてグローブボックス40の壁6も明らかであり、それは蒸発器るつぼ7及び
蒸発器チャンバ12を取り囲んでいる。これによって、保護ガスのもとで蒸発器るつぼ7
を交換したり、又は材料でそれを満たすことが可能となる。例えば、保護ガスとしてアル
ゴンを用いることが可能である。
図1はグローブボックス40を単に部分的及び図式的に
示している。
【0024】
図1はさらに、蒸発器るつぼ7内の圧力を測定するための圧力計ヘッド38を示してい
る。蒸発器るつぼ7内の圧力が目標値に到達すると、
図1に示されていない制御器によっ
て分離バルブ13は開けられるか又は閉じられる。
【0025】
図1にセグメントとしてのみ示されている冷却手段ポート37も明らかである。この冷
却手段ポート37は、例えばH
2Oのような冷却手段用の、
図1には図示されない供給ユ
ニットに接続されている。もしも必要であるならば、ハウジング41をこの冷却手段で冷
却する。
図1に図示されない要素、例えばゴム製の配管を介して冷却手段ポート37は、
供給ユニットに接続することができる。もしも冷却手段がH
2Oであるならば、供給ユニ
ットは従来の水接続が可能である。
【0026】
図2は
図1と同じ装置を示している。しかしながら、蒸発器るつぼ7がピストン10に
よって持ち上げられ、厳密に言えば蒸発器るつぼ7の最上部18が接続フィッティング1
4の最下部19に挿入されるだけの距離を持ち上げられる。接続フィッティング14の下
部が帽形形状を満たしている一方、蒸発器るつぼ7の上部18はここで球面に形成されて
いる。ここで分離バルブ13が開けられる。
【0027】
蒸発器るつぼ7を取り囲むるつぼ加熱システムが20に示される。このるつぼ加熱シス
テム20はPIDコントローラ21に接続されており、次いでレート取得器22に接続さ
れている。このレート取得器22は、例えば振動水晶又は発光分光器のような測定装置2
3を備えることが可能である。この測定装置23は蒸発器チューブ3から基板4に達する
材料の蒸発速度を取得する。このため蒸発器チューブ3には、基板4上のコーティングレ
ートに比例する速度信号を生成する特殊ノズル24が提供される。このノズル24を通し
て、蒸気が測定装置23に流れる。このように、るつぼ加熱システム20はコーティング
レートの関数として調整可能である。PIDコントローラ21に公称値を設定することも
できる。PIDコントローラの代わりに、別のコントローラを提供することもできる。P
IDコントローラはPDコントローラとIコントローラの並列回路を含むコントローラの
一般的な基本形を含んでおり、それは外乱の早期検知、調整逸脱の迅速な修正と削除とい
った特性を兼ね備えている。もしも調整されたプロセスがデッドタイムを含んでいるなら
ば、そのD成分のためPIDコントローラを利用することはできない。
【0028】
垂直に直線的な配置された穴を通して蒸発器チューブ3を出る蒸気は、矢印26によっ
て象徴的に示されている。穴は、高い蒸発速度と均一なコーティングが達成されるように
レイアウトされている。例えば、それらは1mm〜4mmの直径と、5mm〜30mmの
距離を有している。基板4のマージン領域内における層の厚みの減少を補正するために、
穴又はノズル穴をここに互いにより近接して、例えば互いに半分の距離で配置することが
可能である。また、円筒穴の代わりに、細長い穴又は他の形状の開口も考えられる。
【0029】
図3は
図1と同じ装置を示しているが、2つの分離バルブ13と27は両方とも閉じて
いる。保護ガスのもと、2つの分離バルブ13と27によって、蒸発器るつぼ7をより良
好に交換することができる。上側の分離バルブ13はコーティングチャンバ28を大気圧
29から分離し、一方、下側の分離バルブ27は保護ガスで充満させることが可能なるつ
ぼチャンバ8を大気圧29から分離する。この分離バルブ27はスペーサリング25上に
配置される。
【0030】
分離バルブ27のハウジングは耐真空性を持つように作られなければならないが、バル
ブのゲートはガスに対する耐拡散性を持つことが必要とされるだけである。るつぼ7を大
気圧へ戻した後は周囲の空気に対して圧力差が存在しないので、バルブ27のゲートはい
かなる真空力も吸収する必要がない。
【0031】
図3の表示の中で、蒸発器るつぼ7はその下位に位置している。真空バルブ11を介し
て、るつぼチャンバ12は、別々に排気したり又は例えば保護ガスを注入したりできる。
真空バルブ11のガス供給源及び真空ポンプへの接続は示されていない。真空ポンプのみ
ならずガス供給源は、例えばT型部品、及びバルブ11に通じるフレキシブルな波形の配
管をもつ適切に配置されたバルブを介して任意に接続することが可能である。るつぼチャ
ンバ12から蒸発器るつぼ7を取り除くために、チャンバは大気へ戻される。蒸発器るつ
ぼ7はグローブボックス40内にそれぞれ補充されるか又は交換されることが可能である
。ここでは、グローブボックス40は例えばアルゴンのような保護ガスのもとにある。
【0032】
図4に示された中で、蒸発器るつぼ7はレール30に沿って蒸発チャンバから離れた位
置にもたらされる。これは矢印39の向きに蒸発器チャンバ12を移動させることによっ
て起きる。この位置で蒸発器るつぼ7が交換又は補充されることが望ましい。ここで上側
の分離バルブ13は、蒸発器チャンバが真空下にあり続けるように閉じられている。これ
によって、真空は破られない。
【0033】
るつぼ7の交換又はそれの補充は、バルブ27が開いた状態でのみ可能であることが理
解される。したがって、蒸発器るつぼ7は保護ガスで満たされたグローブボックス40に
よって取り囲まれなければならない。
【0034】
図4に示されるように、蒸発器るつぼ7はその下位に位置している。真空バルブ11を
介して、真空チャンバとは独立して、るつぼチャンバ12は排気又は注入が可能である。
るつぼチャンバ12と共に蒸発器るつぼ7は、グローブボックス40の中に導入される
。ここで、蒸発器るつぼ7は、取り除かれて新しい蒸発器るつぼに取り替えられるか、又
は補充される。
【0035】
蒸発材料でるつぼ7を満たした後、分離バルブ27は閉じられ、るつぼチャンバ12は
排気される。次に、るつぼチャンバ12と蒸発器るつぼ7は、レール30に沿って矢印4
2の向きに移動することによって、それらの後方位置に移動して戻る。分離バルブ13と
27が互いに耐真空性を保って接続され、るつぼチャンバ12が排気された後に、分離バ
ルブ13、27を開けることができる。その後、蒸発器るつぼ7は、矢印33の向きに移
動することによって上方位置にもたらされる。
【0036】
図示されない更なる実施形態の例によると、グローブボックス40はコーティング設備
から離れて間隔を置いて配置することが可能である。この場合、保護ガスのもとにあるる
つぼ7は、スペーサリング25及び図示されない適当な施錠機構と共に、
図4に示される
引き出し位置内で閉じられたバルブ27によって、るつぼチャンバ12から取り除かれ、
つまりレール30から持ち上げられる。この施錠機構はスペーサリング25上に、又はス
ペーサリング25上に固定されたフランジの上にるつぼ7を固定する。このように、離れ
て位置するグローブボックス40に閉じた状態のるつぼ7を搬送することができる。ここ
で、るつぼ7は任意に掃除して、再び補充し、バルブ27で閉じることができる。
【0037】
上述のプロセスは、ガラス基板のコーティングのために利用可能である。しかしながら
、それらを利用して、直径200mm又は300mmのシリコンウェハをコーティングす
ることもでき、基板キャリアは1枚又は数枚のウェハを備えることができる。しかしなが
ら、基板キャリアは
図4に図示されていない。キャリア上に配置される全ての基板を均一
にコーティングするためのコーティング可能な基板の必要高さhは、蒸発器チューブ3の
長さを介して適合させることができる。
【0038】
更に、人工材料又は金属でできたフレキシブルな基板も、例えば、EP1 589 1
30 A1の
図3に示されるように、設備内に利用可能である。この既知の設備において
、蒸気分配器チューブと蒸気出口ノズルのみが、敷板に水平に及び平行に配置される必要
がある。
【0039】
EP1 357 200A1に記載されているように、1つのるつぼの代わりに数個の
るつぼが提供され、相互接続されていてもよいことが理解される。
【0040】
ここに記載された実施形態によって達成された結果と実質的に同じ結果を達成するため
に、多様な変形形態及び代替形態が本発明とその利用及びその構成においてなされてもよ
いことを当業者は容易に認めることができる。従って、本発明を開示された例示的な形態
に制限することは意図していない。特許請求の範囲に表現されているように、多くの変形
形態、修正形態、及び代替構造が、開示された本発明の範囲及び精神に含まれる。