【実施例】
【0025】
以下、図面を参照してこの発明の実施例を説明する。
図1は、印刷装置の全体斜視図であり、
図2は吐出部の底面図であり、
図3は印刷装置の構成を示すブロック図である。
【0026】
1.印刷装置
印刷装置1は、基材91上にインクジェット印刷により指定された画像データを印刷するインクジェット印刷装置である。本実施例では、ワンパス方式のインクジェット印刷装置を採用して説明するが、マルチパス方式の印刷装置を採用してもよい。基材91は、紙でもよいし、ガラス基板またはプラスチック基板でもよい。
【0027】
印刷装置1は、基材91を搬送する搬送機構2と、搬送途上の基材91上にインクを吐出して印刷するプリンタ3と、プリンタ3を制御するプリンタ制御部4と、種々の条件設定を入力する入力部6と、設定された条件および動作状況をモニタリングするモニタ7と、基材91に印刷された画像をスキャナを用いて読み取る読み取り部31と、読み取られた画像データの画像処理を実施する画像処理部41とを備える。本実施例では、プリンタ制御部4、入力部6、モニタ7、画像処理部41としてPC(パーソナルコンピュータ)5を採用する。
【0028】
搬送機構2は、基材91を保持するステージ11と、ステージ11が載置される基台12と、供給ロール(図示省略)から供給される基材91を(+Y)方向へ搬送するローラ13とを有する。ローラ13の回転速度がローラ駆動部(図示省略)により制御され、ローラの回転速度とプリンタ3からの液滴の吐出タイミングとが制御されている。
【0029】
プリンタ3は、インクを吐出する吐出部21と、入力された画像データの値に対してシェーディング補正を実施するシェーディング補正部22と、入力された画像データを並び変えるデータ並び替え処理部23と、吐出部21のインクの吐出量を制御するヘッド制御部26とを有する(
図5参照)。
【0030】
図2に示されているように、吐出部21はそれぞれが互いに異なる色成分のインクを吐出する複数のヘッドユニット24を備え、複数のヘッドユニット24は基材91の搬送方向である(+Y)方向に配列されている。
図2中の最も(−Y)側のヘッドユニット24から(+Y)側のヘッドユニット24に向かって順に、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)のインクを吐出する。なお、吐出部21に、ライトシアン、ライトマゼンタ、ホワイト等の他の色のインクジェットヘッドを設けてもよい。
【0031】
各ヘッドユニット24には、たとえば、ピエゾ駆動方式のヘッド25が基材91の搬送方向と垂直な方向であるX方向(以下、「幅方向」という。)に配列されており、各ヘッド25の下面にはインクの微小液滴を吐出するノズル27を備えている。ノズル27は、印刷装置1の解像度に応じたピッチでヘッドユニット24内に幅方向に配列される。なお、ヘッド25は一部のみが図示されており、ノズル27は概略して示されているので図示されている数に限定されない。
【0032】
印刷は、吐出部21に対して基材91を(+Y)方向に搬送しつつインクの吐出が行われる。各ヘッドユニット24が基材91上の印刷領域の幅方向の全体にわたって設けられているので、基材91が吐出部21に対して(+Y)方向に1回移動するだけで印刷が完了する。
【0033】
2.読み取り部
読み取り部31は、基材91に印刷されたシェーディング補正用チャートをスキャナ32を走査して画像データとして読み取る。
図5に示されているように、読み取り部31は、スキャナ32、スキャナ制御部33、スキャナ移動機構34、照射器制御部36、およびメモリ37を備える。スキャナ制御部33および照射器制御部36はマイクロプロセッサでもよいし、FPGA(Field-Programmable Gate Array)でもよい。
【0034】
スキャナ32は、基材91にY、M、C、Kそれぞれ単色で印刷されたシェーディング補正用チャートを走査して画像データを読み取る。スキャナ32は、本実施例では、CIS方式のラインスキャナを採用する。スキャナ32は、スキャナ制御部33から走査開始の指示が入力されると、基材91上を幅方向(X方向)に走査する(
図4参照)。この際、スキャナ32内に配置されている照射器35から光を照射しながら、シェーディング補正用チャートの読み取りを開始し、読み取った画像データはメモリ37に保管される。
【0035】
図6には、スキャナ32の底面図が示されている。スキャナ32の底面は基材92の搬送方向を長手方向とする長方形の形をしている。スキャナ32は、基材92に光を照射する照射器35と、照射器35から照射された光が基材92に反射した光を受光する受光部38と、スキャナ32のY方向における両端部に短手方向と平行に配置された直方体の突起部39を有する。
【0036】
照射器35は、R(赤)、G(緑)、B(青)の3色のLEDをそれぞれ備え、照射器制御部36から送られる照射タイミング信号に従って3色のLEDを点滅させる。また、3色の光の強度も、照射器制御部36から送られる電流値によって調節可能に制御される。受光部38には、CMOSセンサがY方向に直線上に配置されている。
【0037】
突起部39は、スキャナ32がX方向へ走査する際に、基材91の紙押さえとなり、基材91のしわを引き伸ばす。これより、基材91と受光部38との距離を一定に保つことができる。CIS方式のスキャナはCCD方式と比較して被写界深度が浅いが、基材91と受光部38との距離を一定に保つことで、焦点ズレを防止することができる。突起部39は、直方体に限らず、立方体、半球体、楕円体であってもよい。また、突起部39は、ミシン目紙のようにしわが発生しやすい基材91を印刷するときだけスキャナ32の底面から突出し、しわの発生しにくい基材91の際にはスキャナ32の底面に収納できるように、スキャナ32の底面から出し入れ可能であってもよい。
【0038】
スキャナ移動機構34は、たとえばラックとピニオンで構成され、スキャナ制御部33の指示する走査速度および走査タイミングでスキャナ32を幅方向に走査させる。
【0039】
図7には、シェーディング補正用チャート16の1例が示されている。補正用チャート16は、Y、M、C、Kそれぞれの色でn段階の濃度のチャートで構成される。
図7では、ある色の5段回のチャート16a〜16eが示されている。濃度の1例として、補正用チャート16a〜16eのそれぞれの網かけ率は100%、80%、60%、30%、10%となっている。この網かけ率は、濃度の階調値と対応する値である。たとえば、網かけ率100%は階調値0に相当し、網かけ率0%は階調値255に相当する。
【0040】
図8には、補正用チャート16aおよび16bの印刷パターンの1例が示されている。シェーディング補正用チャート16において、ノズル27と印刷パターンとに対応関係を有する。たとえば、幅方向において、奇数のノズルナンバーと偶数のノズルナンバーとで補正用チャートの印刷をY方向に分けることで、各ノズル27と印刷パターンとの対応関係を明確にすることができる。また、1種類の補正用チャートに対して、1つのノズルでY方向に複数ドット印字する。この印字された複数ドットの濃度値の平均を算出することで、信頼性の高い濃度値を得ることができる。
【0041】
スキャナ制御部33は、シェーディング補正用チャート16に対して光の露光条件を変えて画像データの読み取りをするために、スキャナ移動機構34および照射器制御部36に指示を送る。照射器制御部36は、走査回数によって照射器35から照射する光量を調節する。たとえば、1回目の走査では、適正露光となる光量を照射器35から照射し、2回目の走査では、過剰露光となる光量を照射器35から照射する。シェーディング補正用チャート16に対して光の照射条件を変える例として、照射器35の光量を調節してもよいし、スキャナの走査時間を調節してもよい。
【0042】
照射器35の光量の調節方法として、LEDから光を照射する時間を調節してもよい。
図9(a)には、照射器35から光が照射されるタイミング信号が示されており、
図9(b)には、適正露光における照射器35の点灯時間が示され、
図9(c)には、過剰露光における照射器35の点灯時間が示されている。
【0043】
ノズルナンバーと対応するXライン目の補正用チャートの読み取りのタイミング信号がスキャナ制御部33から照射器制御部36へ入力されると、適正露光での走査の場合、照射器制御部36は対応する通常の点灯時間、照射器35から光を照射するように制御する。また、過剰露光での走査の場合、照射器制御部36は対応する通常の点灯時間よりも長い時間、照射器35から光を照射するように制御する。
【0044】
また、照射器35の光量の調節する他の方法として、照射器制御部36がLEDに流す電流値の大きさを調節すればよい。すなわち、LEDに流す電流値を通常の電流値であれば適正露光を得ることができ、通常よりも大きな電流値を流せば過剰露光を得ることができる。
【0045】
また、スキャナ32の走査時間の調節方法として、スキャナ制御部33がスキャナの走査速度を調節すればよい。すなわち、スキャナ制御部33の指示によりスキャナ移動機構34がスキャナ32を予め適正化された通常の速さで移動させれば適正露光を得ることができ、通常よりも遅い速さで移動させれば過剰露光を得ることができる。このようにして得られた画像データはメモリ37に保管され、その後、画像処理部41に出力される。
【0046】
3.画像処理部
図5を参照して、画像処理部41は、読み取り部31から出力される画像データを基に、ノズルシェーディング用の補正テーブルを作成する。画像処理部41は、RGB値検出部42、ノズル別画像データ検出部43、ノズル別RGB検出部44、メモリ45、濃度値変換部46、目標濃度値算出部47、補正テーブル作成部48、および走査回数判別部49を備える。画像処理部41は、プリンタ制御部4と同じCPU内に構成してもよいし、別のマイクロプロセッサで構成してもよい。
【0047】
RGB値検出部42は、読み取り部31のメモリ37から出力されるシェーディング補正用チャートの輝度値として検出された画像データと、照射器35からRGBそれぞれの光が照射されたタイミング信号とから、RGB値としての画像データを検出する。また、ノズル別画像データ検出部43は、読み取り部31のメモリ37から出力されるシェーディング補正用チャートの画像データに対して、各ノズル27との対応関係を検出する。
【0048】
ノズル別RGB値検出部44は、RGB値検出部42が検出したRGB値としての画像データと、ノズル別画像データ検出部43が検出した各ノズル27と画像データとの対応関係とから、ノズル27ごとのRGB値の画像データを検出する。
【0049】
メモリ45には、予め、RGB値から濃度値への変換テーブルが記憶されている。本実施例では、適正露光用のRGB値−濃度値変換テーブルと、過剰露光用のRGB値−濃度値変換テーブルとの2種類の変換テーブルが保管されている。このように、各走査条件に対応するRGB値−濃度値変換テーブルをそれぞれ有することが好ましい。このRGB値−濃度値変換テーブルは、OD値(Optical Density;光学的濃度値)が0.0〜4.0の基準濃度測定用のパッチを予めスキャナ32で読み取ることで作成され、RGB値と濃度値との対応関係を示すテーブルとして保管される。また、本実施例では、RGB値−濃度値変換テーブルは、R値、G値、B値それぞれの値を濃度値に変換する3種類の2次元テーブルであるが、R値、G値、B値の3種類の値から濃度値に変換する4次元のテーブルでもよい。
【0050】
濃度値変換部46は、メモリ45に保管されたRGB値−濃度値変換テーブルを基に、ノズル別に検出されたRGB値から濃度値へ変換する。この際、ノズル別に検出されたRGB値が適正露光により取得された場合には、適正露光用のRGB値−濃度値変換テーブルを基に、過剰露光により取得された場合には、過剰露光用のRGB値−濃度値変換テーブル変換テーブルを基に、RGB値から濃度値へ変換される。
【0051】
目標濃度算出部47は、濃度値変換部46により変換された濃度値を基に各補正用チャート16a〜16eの濃度に対しての補正用目標濃度を算出する。この目標濃度は、たとえば、補正用チャート16a〜16eごとに全ノズルの濃度値の平均濃度値として算出する。
【0052】
補正テーブル作成部48は、目標濃度算出部47が算出した目標濃度と、各ノズルの濃度値との差である補正値を算出する。
図10に示すように、ノズル別に目標濃度と補正値がそれぞれ算出される。この補正値から補間法または近似により全入力値に対応した各ノズルのシェーディング補正テーブルを作成する(
図11参照)。作成されたシェーディング補正テーブルは、PC5のメモリ8に保管される。
【0053】
走査回数判別部49は、スキャナ制御部33からスキャナ32の走査指示が出される度に信号が入力される。この信号により、走査回数判別部49は、スキャナ32の走査回数をカウントし、走査回数が予め決められた既定回数に到達すると、目標濃度算出部47に走査終了の信号を出力する。
【0054】
4.ノズルシェーディング補正
次に、
図12を参照してノズルシェーディングの補正の流れを説明する。
図12はノズルシェーディング補正の流れを示すフローチャートである。
【0055】
印刷者が入力部6にノズルシェーディング補正の指示を入力する。ノズルシェーディング補正の指示が入力部6からプリンタ制御部4および搬送機構2へ入力される。プリンタ制御部4は、メモリ8に予め記憶されているシェーディング補正用チャート16の画像データをプリンタ3のヘッド制御部26へ出力する。このシェーディング補正用チャート16の画像データを基に、吐出部21の各ノズル27からインクがY方向へ搬送される基材91上に吐出され、シェーディング補正用チャート16が印刷される。(ステップS1)。
【0056】
次に、ヘッド制御部26からシェーディング補正用チャート16の印刷終了の信号がスキャナ制御部33および搬送機構2へ送られる。スキャナ制御部33はスキャナ移動機構に走査指示を、スキャナ32に読み取り開始の指示を送る。スキャナ移動機構34は、スキャナ32を搬送が停止した基材91上を幅方向に走査させる。これにより、基材91上に印刷されたシェーディング補正用チャート16が画像データとして読み込まれる(ステップS2)。
【0057】
読み込まれた画像データはメモリ37に保管され、画像処理部41のRGB値検出部42およびノズル別画像データ検出部43へ出力される。また、RGB値検出部42には、照射器制御部36から、照射器35のRGBの光の点滅照射のタイミング信号が入力される。シェーディング補正用チャートの画像データと、RGBの光が点滅照射されたタイミング信号とから輝度値として検出された画像データからRGB値としての画像データを取得する(ステップS3)。
【0058】
また、ノズル別画像データ検出部43は、読み取り部31から入力されるシェーディング補正用チャートの画像データから、各ノズル27と画像データとの対応関係であるノズル別画像データを検出する(ステップS4)。
【0059】
RGB値検出部42からRGB値としての画像データが、ノズル別画像データ検出部43から各ノズル27と画像データとの対応関係が、それぞれノズル別RGB値検出部44に入力される。ノズル別RGB値検出部44は、これら、RGB値としての画像データと、各ノズル27と画像データとの対応関係とから、ノズル27ごとのRGB値を検出する(ステップS5)。また、ノズル別RGB値検出部44は、検出されたノズル27ごとの各補正チャートにおけるY方向に並ぶ複数のRGB値の画像データから、RGB値の平均値を算出し、この平均値をノズル27ごとのRGB値として濃度値変換部46へ出力する。
【0060】
ノズル27ごとのRGB値がノズル別RGB値検出部42から濃度値変換部46へ入力され、また、このRGB値を取得する際の読み取り条件に対応したRGB値−濃度値変換テーブルがメモリ45から濃度値変換部46へ入力される。濃度値変換部46では、ノズル27ごとのRGB値を、このRGB値を取得する際の読み取り条件に対応したRGB値−濃度値変換テーブルを基に、濃度値へ変換する(ステップS6)。濃度値変換部46は、変換された濃度値を目標濃度算出部47へ出力し、走査回数判別部49へ走査回数の確認信号を出力する。
【0061】
走査回数判別部49は、スキャナ32の走査回数が既定回数に達したか否かを判別する。スキャナ32によるシェーディング補正用チャート16の走査回数が1回目であれば、濃度値変換部46から走査回数の確認信号が入力されると、走査回数判別部49は、スキャナ制御部33に2回目の走査をするように指示する(ステップS7、Yes)。走査回数が2回目であれば目標濃度算出部47に走査終了の信号を出力する(ステップS7、No)。濃度値変換部46から、目標濃度算出部47へ2回分の走査の濃度データが出力されているので、目標濃度算出部47は、各補正用チャート16a〜16eの濃度に対しての補正用目標濃度値を算出する(ステップS8)。
【0062】
算出された補正用目標濃度値は補正テーブル作成部48へ出力される。補正テーブル作成部48は、入力される補正用目標濃度値を基に、各補正用チャート16a〜16eの濃度に対しての補正値を算出する(ステップS9)。これらの補正値は、n個(本実施例では5個)の代表的な濃度値に対応する値であるので、他の濃度値に対応する補正値を補間法または近似により算出する。たとえば、最小二乗近似、曲線近似、ラグランジュ補間、スプライン補間等により算出する。これにより、各ノズルに対する全ての濃度値に対する補正値が算出され、この濃度値と補正値との関係をシェーディング補正テーブルとして作成する(ステップS10)。
【0063】
作成されたシェーディング補正テーブルは、PC5内のメモリ8に保管される。入力部6から、印刷者が望む印刷画像データの印刷指示が入力されると、メモリ8に保管されている所望の印刷画像データおよびシェーディング補正テーブルがシェーディング補正部22へ出力される。シェーディング補正部22では、印刷画像データの階調値(入力階調値)に対してノズル27に応じてシェーディング補正テーブルに基づいて補正される。補正された印刷画像データ(出力階調値)がデータ並び替え処理部23に入力されて、各ノズルごとの印刷画像データに並び替えられる。並び替えられた印刷画像データがヘッド制御部26に送られて、この印刷画像データに基づいて吐出部21のノズル27よりインクが吐出される。
【0064】
上述したノズルシェーディング方法およびそれを用いた印刷装置によれば、シェーディング補正用チャート16に対して、複数の読み取り条件の下で、画像データを読み取り、この複数の読み取られた画像データを基にノズルシェーディングの補正テーブルを作成するので、ダイナミックレンジの狭いCIS方式のスキャナ32を採用しても精度の高いシェーディング補正をすることができ、各ノズルからの吐出量が均一化されたインクジェット印刷を実施することができる。
【0065】
図13は、読み取り条件が適正露光の場合に、CISスキャナによりシェーディング補正用チャートを読み込んだダイナミックレンジを示している。すなわち、適正露光においてこの読み取り条件に対応したRGB値−濃度変換値により得られた網かけ率に対する濃度値を示している。濃度値の低い箇所、および高い箇所では、濃度値の検出が飽和してしまい、白とびおよび黒つぶれが発生している。
図14は、本実施例による、読み取り条件が過剰露光の場合の網かけ率に対する濃度値を示している。すなわち、過剰露光においてこの読み取り条件に対応したRGB値−濃度変換値により得られた網かけ率に対する濃度値を示している。読み取り条件が過剰露光の場合、網かけ率が小さい領域で白とびの領域が適正露光の場合に比べて大きくなるが、網かけ率が大きい領域での黒とびの領域を低減することができる。これら2つの露光条件において検出された濃度値を組み合わせることで、
図15に示すようなダイナミックレンジを得ることができる。本実施例では、適正露光に加えて過剰露光による読み取り条件を更に実施することで、黒つぶれの発生を防止することができる。
【0066】
また、CCDよりもCISの方が小型で低コストであるので、省スペース化およびコストダウンをすることができる。また、異なる読み取り条件で得た各輝度値を、統一された基準となる濃度値へ変換することでより精度の高いノズルシェーディングの補正テーブルを作成することができ、ノズルシェーディングの精度を向上することができる。
【0067】
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0068】
(1)上述した実施例において、スキャナ32には受光部38が1個だけ設けられていたが、これに限らず、受光部38を複数個設けて、各受光部38と同期して光を点滅する照射器35を備えてもよい。たとえば、
図16に示されるように、1個の受光部38とLED3個で1組の照射器35を1個の基本ブロック53として、この基本ブロック53を2個備えてもよい。各基本ブロック53における照射器35から照射される露光条件を変えることで、スキャナ52を1回走査するだけで、2個の読み取り条件の画像データを読み取ることができる。
【0069】
(2)上述した実施例では、露光条件は適正露光と過剰露光の2条件であったが、これに限らず、適正露光と過小露光の2条件でもよい。過小露光の条件を加えることで、白とびを補正することができる。また、露光条件を適正露光、過剰露光および過小露光の3条件としてもよい。過剰露光および過小露光の条件を備えることで、黒つぶれおよび白とびの両方を補正することができ、ダイナミックレンジをさらに拡げることができる。
【0070】
(3)上述した実施例では、各読み取り条件に対応したRGB値−濃度値変換テーブルを用いていたが、これに限らず、同じ濃度のシェーディング補正用チャートに対する各読み取り条件のRGB値から光量比を係数化して、複数条件で測定したシェーディング補正用チャートの網かけ率と濃度値との関係を統一化してもよい。