(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
対物レンズの下にビームスプリッター及びミラーを配し、試料表面を含めて、マイケルソン型などの干渉計を構成し、試料までの距離又はミラーまでの距離をピエゾアクチュエーターで走査し、それによりできる干渉波形をCCDカメラで撮影して動画ファイルデータとして記録し、該動画ファイルデータに基き、試料の表面形状を測定する、走査型白色干渉計による試料の表面形状の測定方法において、
CCDカメラを用いてデータ収集間隔をナイキスト間隔(干渉周期の半分)よりも広くして多数の動画ファイルデータを測定し、
こうして測定して収集した波形からヒルベルト変換を用いて算出した収集波形の「包絡線のピーク位置」と「位相が0の走査位置」との間の直線関係の傾きをaとし、また「包絡線のピーク位置」と「位相が0の走査位置」との交点を小数部として、
式(「位相が0の走査位置」−「包絡線のピーク位置」)/(−a + 1) +「包絡線のピーク位置」を、収集データ配列の指標を単位として表し、これを試料の表面上に対応する各画素で求めて、相互に比較することにより各画素の試料表面が他の画素の試料表面と同種であるか異種であるかを判定し、
「包絡線のピーク位置」対「位相が0の走査位置」の関係を表わす直線と、「位相が0の走査位置」=「包絡線のピーク位置」の直線とが上記式の小数部で交わり、該小数部を同一物質の多数の画素に渡って平均値を求め、上記の傾きaについても多数のデータから平均値を求め、
求めた小数部及び上記の傾きaを用いて「位相が0の走査位置」の測定値から、反射光の位相変化に依存せず正しい試料表面高さを表わす「包絡線のピーク位置」を求めることにより試料の表面形状を測定すること
を特徴とする走査型白色干渉計による試料の表面形状の測定方法。
【背景技術】
【0003】
走査型白色干渉計は、可干渉性の少ない白色光を光源として用い、マイケルソン型や、ミラウ型などの等光路干渉計を利用して試料の表面形状を非接触三次元測定できる装置であり、ウエハなどの表面形状の測定に用いられる。走査型白色干渉計の原理を添付図面の
図1に示し、1は光源であり、高輝度白色光源から成っている。2は光源1からの白色光に対するフィルターであり、3はビームスプリッター、4はマイケルソン型干渉計である。マイケルソン型干渉計4は対物レンズ4aとビームスプリッター4bとミラー4cを備えている。マイケルソン型干渉計4には、マイケルソン型干渉計4を垂直走査するピエゾアクチュエーター5が設けられている。また
図1において6は受光素子を成すCCDカメラ、7は試料8を支持する試料ホルダーである。
【0004】
図1に示す装置構成において、光学顕微鏡の対物レンズ4aの下に干渉計が構成され、対物レンズ4a又はミラー4cを走査することにより干渉波形が得られる。すなわち、対物レンズ4aを走査しながら光の強度をCCDカメラ6で動画として撮影することで、CCDカメラ6の各画素での干渉波形が得られる。得られた干渉波形のピークの位置は試料の表面の高さに対応するので、各画素でそのピーク位置を求めれば、撮影した領域で表面高さが得られる。
【0005】
干渉する2つの光路で反射による位相変化がなければ、光路差0で光は強め合い、干渉波形のピークとなる。しかし、試料表面だけでなく、ミラーでの反射時の位相変化もあり、一般的には光路差0で干渉波形が最大になるとは限らない(包絡線は最大になる)。反射時の位相変化があっても、試料が単一の物質なら、位相変化量は試料全面に渡って一定なので、面内での相対高さ関係には影響がなく、干渉波形の位相から表面高さを算出しても問題ない。干渉波形の位相を利用する方法は、複数の複素屈折率の異なる物質から成る試料で問題となる(非特許文献1、2参照)。
【0006】
干渉波形の包絡線は反射光の位相変化の影響を受けず、光路差0で最大になるので、「包絡線のピーク位置」から表面高さを求めればよい。「包絡線のピーク位置」を利用することは、複数の複素屈折率の異なる物質から成る試料では有効である。しかし、包絡線は干渉波形の複数の山の頂点付近をつないだようなものなので、その広がりの幅が広いため、そのピーク位置の算出の精度は低くなる。つまり、包絡線を利用する方法は干渉波形の位相を利用する方法よりも、表面高さの算出精度は低い。そこで、本発明者は先にそれら2つの方法を結びつけて互いを補う方法を提案した(特許文献1参照)。
【0007】
対物レンズ又はミラーを走査しながらデータを収集する際の間隔は、通常は干渉周期の1/5以下である。干渉周期の1/2をナイキスト間隔というが、その0.4倍以下である。収集間隔が狭くてデータ数が多いほど表面高さの算出精度は向上するが、収集時間が長くなるという問題があるので、収集間隔を広げて表面高さを求める試みがなされている。
【0008】
収集間隔をナイキスト間隔よりも広くすると元の干渉波形は得られないので、通常の方法では表面高さを算出できないが、それを克服する方法がいくつか考案されている(特許文献2、非特許文献1参照)。そして本発明者も先にヒルベルト変換を用いて収集波形の位相と包絡線を算出し、それらから表面高さを求める方法を提案した(特許文献3、4参照)。
【0009】
この収集間隔をナイキスト間隔よりも広げたとき得られる波形(以後、収集波形と呼ぶ)は干渉波形とは異なるが、その包絡線と位相はヒルベルト変換を用いて算出でき、その包絡線は元の干渉波形のそれに高精度で一致し、その位相は包絡線とある一定の関係で結ばれており、元々位相は高精度に算出できるので、収集波形の位相から表面高さを高精度に求めることができる。
【0010】
その収集間隔がナイキスト間隔よりも広い収集波形の位相も、通常の干渉波形の場合と同様に、試料表面での反射光の位相変化の影響を受ける。通常の干渉波形では、その「位相が0になる走査位置=干渉波形の山の頂点の位置」と「包絡線のピーク位置」との差は、試料表面物質が同一なら、表面高さが変化しても一定であり、異なる表面物質ではその差が異なるだけの単純な関係なので、測定した「位相が0になる走査位置」から表面物質ごとに表面高さ(=「包絡線のピーク位置」)を算出することは困難ではなかった。
【0011】
しかし、収集間隔がナイキスト間隔よりも広い場合の収集波形では、「位相が0になる走査位置」と「包絡線のピーク位置」との差は一定値ではなく、試料表面高さに依存して変化するので、「位相が0になる走査位置」から表面反射での位相変化分を補正して表面高さを算出することは困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述のように白色干渉計において収集した波形の位相を用いることにより試料表面高さの算出精度は向上するが、表面に金属があると反射光の位相が変化して、異種物質が混在する試料では表面形状を正しく算出できないという問題がある。
【0015】
そこで、本発明は、かかる問題を解決し、データ収集時間を短縮するために収集間隔をナイキスト間隔よりも広くした場合に伴う問題を解決した走査型白色干渉計による試料の表面形状の測定方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を達成するために、本発明によれば、対物レンズの下にビームスプリッター及びミラーを配し、試料表面を含めて、マイケルソン型などの干渉計を構成し、試料までの距離又はミラーまでの距離をピエゾアクチュエーターで走査し、それによりできる干渉波形をCCDカメラで撮影して動画ファイルデータとして記録し、該動画ファイルデータに基き、試料の表面形状を測定する、走査型白色干渉計による試料の表面形状の測定方法において、
CCDカメラを用いてデータ収集間隔をナイキスト間隔(干渉周期の半分)よりも広くして多数の動画ファイルデータを測定し、
こうして測定して収集した波形からヒルベルト変換を用いて算出した収集波形の「包絡線のピーク位置」と「位相が0の走査位置」との間の直線関係の傾きをaとして、
式(「位相が0の走査位置」−「包絡線のピーク位置」)/(−a + 1) +「包絡線のピーク位置」を、収集データ配列の指標を単位として表し、これを試料の表面上に対応する各画素で求めて、相互に比較することにより各画素の試料表面が他の画素の試料表面と同種であるか異種であるかを判定し、
「包絡線のピーク位置」対「位相が0の走査位置」の関係を表わす直線と、「位相が0の走査位置」=「包絡線のピーク位置」の直線とが上記式の小数部で交わり、該小数部を同一物質の多数の画素に渡って平均値を求め、上記の傾きaについても多数のデータから平均値を求め、
「位相が0の走査位置」の測定値から、反射光の位相変化に依存せず正しい試料表面高さを表わす「包絡線のピーク位置」を求めることにより試料の表面形状を測定すること
を特徴としている。
【0017】
データ収集間隔がナイキスト間隔よりも広くなると、収集した波形は干渉波形とは異なり、本明細書において「収集波形」と記載する。収集波形の位相も表面反射での位相変化に影響されるので、試料表面高さの算出値に影響が出る。本発明は、その位相変化に影響されず正しい表面高さを算出する方法に関する。
【0018】
収集波形からヒルベルト変換を用いて求めた包絡線は、本来の干渉波形の包絡線に高い精度で一致するので、そのピーク位置を基準として用いる。その「包絡線のピーク位置」が試料表面高さに対応する。
収集波形の位相もヒルベルト変換を用いて算出し、その位相が0になる走査位置を求める。試料表面物質の複素屈折率が異なると、反射での位相変化量が異なり、干渉波形の位相がその分だけ異なり、それにより収集波形の位相も異なり、「収集波形の位相が0になる走査位置」も異なる。
【0019】
試料表面での反射時の位相変化量の違いにより、干渉波形にある位相変化があると、収集波形では、その定数倍の位相変化が表れる。そして収集波形において、「包絡線のピーク位置」対「位相が0の走査位置」の関係図を、収集データ配列の指標を単位(データ収集時の走査位置は1、 2、 3、 … nと表わされる)として表わすと、その小数部が試料表面での反射による位相変化量に依存して異なる。従って、これを試料表面上に対応する各画素で求めて、互いを比較すれば各画素での物質が同種か異種かを判定できる。
【0020】
収集波形に関する「包絡線のピーク位置」対「位相が0の走査位置」の関係図では、干渉波形の位相変化(つまり試料表面反射での位相変化量の違い)の影響は傾きaには現れず、縦軸方向の一定量のシフトとして現れる。その関係図において、「包絡線のピーク位置」対「位相が0の走査位置」の関係を表わす直線と、「位相が0の走査位置」=「包絡線のピーク位置」の直線は、上記式の小数部で交わる。 従って、その小数部を同一物質の多数の画素に渡って平均値を求め、上記の傾きaについても多数のデータから平均値を求めて、それらを用いれば、「包絡線のピーク位置」対「位相が0の走査位置」の関係図が精度よく決まり(つまり、1次式の傾きaとy切片が精度よく決まり)、「位相が0の走査位置」の測定値から、その関係を用いて「包絡線のピーク位置」、つまり正しい試料表面高さを高精度に算出できる。
【0021】
従って、元々高精度に算出できる「位相が0の走査位置」から、上記関係を用いれば、反射光の位相変化に依存せず正しい試料表面高さを表わす「包絡線のピーク位置」を求められるので、反射での位相変化量が異なる物質が混在する試料表面でも正しい表面形状を高精度に求めることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、次のような効果が得られる。
・ナイキスト間隔よりも広い間隔で収集した波形において、ヒルベルト変換を用いて算出した「包絡線のピーク位置」と「位相が0の走査位置」の直線関係の傾きをaとして
(「位相が0の走査位置」−「包絡線のピーク位置」)/(−a + 1)
+「包絡線のピーク位置」
を、配列指標を単位に表わすと、その小数部が試料表面での反射光の位相変化量に対応しているので、その値からその画素の物質が特定できる(実施例ではシリコンか銅かが特定できる)。
・「包絡線のピーク位置」と「位相が0の走査位置」の間の直線関係(傾きaと上記小数部で決まるy切片)を多数の測定データから求めておき、測定値「位相が0の走査位置」からその直線関係を用いて計算値「包絡線のピーク位置」(試料表面高さに対応)を求め、そして、測定値「位相が0の走査位置」は測定値「包絡線のピーク位置」より元々測定精度が高いので、試料表面高さが高精度に求まる。
・物質によって異なる上記小数部を採用して、その値で決まるy切片の上記直線関係を用いるので、試料表面での反射光の位相変化量の違いを取り除いた正しい試料表面高さが求まる。
・表面反射光の位相変化の影響を受けないためには、従来は包絡線から表面高さを求める必要があったが、本発明では収集波形の位相から求めるので、測定精度が1桁以上向上する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下添付図面を参照して本発明を説明する。
白色干渉計での干渉波形は、
図1の装置においてミラー4c又は対物レンズ4aの走査位置s、試料8の表面高さh、波長λi、光路差0での干渉する2つの光の位相差をφとすると下記の式(1)で表わされる。
Σ[1+cos{2π(s−h)/(λi/2)+φ}]/N (1)
λi
波長λiを変えて総和し、その総数Nで割っている。試料8の表面高さh=0で光路差0になる走査位置をsの0点にしている。
【0025】
中心波長550nm、帯域幅80nmとして、波長λiを510nmから590nmまで0.1nmずつ変えて総和し、総数N=800で割り、干渉波形を算出した例を
図2に点線グラフで示す。φ=0.45π、h=0としている。走査位置については1nmごとの波形データである。φ=0、h=0の場合は干渉波形の最大の山が走査位置0に来るが、φが異なると干渉波形の位相も異なり、干渉波形の山の位置がずれる。しかし、包絡線自体の位置は変化しない(特許文献1参照)。つまり、干渉波形の位相は、試料8の表面での反射光の位相変化の影響を受けるが、包絡線はその影響を受けない。
【0026】
上記の干渉波形を240nm間隔で収集した例を
図2の■で示した。収集間隔はナイキスト間隔の1.75倍である。収集されたデータは一種の波形を形成する。それにヒルベルト変換を施して、その収集波形の包絡線と位相を算出できる。
図2の■で示す波形から求めた包絡線(○)と収集波形の位相(□の中に×)を
図3に示す。収集波形の包絡線は元の干渉波形の包絡線に精度よく一致し、「包絡線のピーク位置」が試料8の表面高さhに対応する。「位相が0になる走査位置」は「包絡線のピーク位置」との間に近似的に1次式の関係が成り立ち、「位相が0になる走査位置」から表面高さhを算出できる。「位相が0になる走査位置」は「包絡線のピーク位置」よりも高精度に算出できるので、それから求めた表面高さhもより高精度に算出される(特許文献4参照)。
【0027】
図2から分かるように干渉波形の位相が変化すると、収集波形も変化し、その位相も変化する。しかし、収集波形の包絡線は変化しない。収集波形の位相の変化量は、干渉波形の位相の変化量に比べて、ある一定倍だけ大きい。このことは式(1)を用いて、その結果を
図2及び
図3に示したような計算を、パラメーターを変えて行うと確認できる。このことは以下に示す実験結果からも確認できる。このため、試料8の表面反射光の、ある一定の位相変化は、干渉波形の位相を変え、収集波形の位相をある値だけ変化させる。従って、表面物質の複素屈折率の値に応じて、収集波形の位相の変化分も決まる。このような収集波形の位相の変化分を各画素で求めると、その値の大きさから各画素の物質が同種か異種かの判定ができる。
【0028】
試料8の表面での反射時の位相変化量の違いにより、干渉波形にある位相変化があると、収集波形では、その定数倍の位相変化が表れる。そして収集波形において、「包絡線のピーク位置」対「位相が0の走査位置」の関係図における傾きをaとして
(「位相が0の走査位置」−「包絡線のピーク位置」)/(−a + 1)
+「包絡線のピーク位置」 (2)
を、収集データ配列の指標を単位(データ収集時の走査位置が1、 2、 3、 … nと表わされる)として表わすと、その小数部が試料表面での反射による位相変化量に依存して異なる。従って、これを試料8の表面上に対応する各画素で求めて、互いを比較すれば各画素での物質が同種か異種かを判定できる。
【0029】
以下に測定結果の例を示しながら説明する。
図4には、収集波形の測定結果(●)と、それにヒルベルト変換を施した結果(○)とそれらから算出した包絡線(□の中に+)とを示し、
図5には位相を示した。用いた光学フィルター2は中心波長550nm、通過帯域幅80nmであり、干渉周期が275nm、ナイキスト間隔が137.5nmである。データの収集間隔は247.5nmであり、ナイキスト間隔の1.8倍である。収集データにはカメラ6の雑音等が乗っているので、包絡線のデータにも雑音が含まれている。包絡線のデータに移動平均処理等を行い平滑化して、そのピーク位置を算出する。位相は、包絡線のピーク位置から大きく離れなければ直線的に変化する。
図5のデータは2pごとに変化するが、位相接続すれば直線状につながり、それを1次式でフィッティングして、位相が0になる走査位置を算出する。「位相が0の走査位置」は複数存在するが、「包絡線のピーク位置」に近いものを採用する。「位相が0の走査位置」は「包絡線のピーク位置」より高精度に算出できる。
【0030】
収集データは配列として扱っており、収集するフレーム数をn個とすると、下記のようにx,yの各画素で走査位置(時間にも対応)について1からnまでの指標で表わされる。
D(1,x,y), D(2,x,y), ・・・ , D(i,x,y), D(i+1,x,y),・・・ D(n,x,y)
【0031】
図4及び
図5の横軸はこの配列の走査位置の指標であり、この1の間隔は収集間隔247.5nmに相当する。
【0032】
各画素で算出した「包絡線のピーク位置」と「位相が0の走査位置」の例を
図6に示す。あるyの画素の行でのx方向での値を示している。試料8は
図12のような形状であり、シリコン基板上に銅薄膜を成膜したもので、x=365辺りが銅薄膜の端で、そこからxが増すと膜厚が増している。走査方向の関係で
図6では
図12と縦軸の方向が逆になっている。「位相が0の走査位置」は「包絡線のピーク位置」より高精度に算出できていることが分かる。
図6では試料8の傾きにより、シリコン領域ではxに対して直線的に「包絡線のピーク位置」が増している。そして「位相が0の走査位置」も傾きは負だが直線的に変化していることが分かる。「位相が0の走査位置」の傾きの絶対値は「包絡線のピーク位置」のそれより大きく、試料8の表面高さhの変化に対して感度が大きいと言える。高精度に算出できることと、表面高さへ感度が大きいことが、「位相が0の走査位置」を用いることの利点である。
【0033】
図7には、
図6のデータを「包絡線のピーク位置」対「位相が0の走査位置」としてプロットして示している。「包絡線のピーク位置」が精度よく算出できないためにデータは横軸方向にばらついている。しかし、「位相が0の走査位置」と「包絡線のピーク位置」の間の直線的な関係が見て取れる(測定データに合わせて
図7の中に引いた傾きが負の多数の直線)。シリコン領域と銅領域のそれぞれで、「包絡線のピーク位置」(配列指標が単位)に対して1ずつずれた繰り返しの直線関係が並ぶ(特許文献4参照)。なお、この例では、これら直線の傾きは −8.0である。そして、シリコン領域と銅領域では、その直線関係が互いにシフトしていることが分かる。このことは、シリコンと銅での反射光の位相変化量の違いを表わしている。
【0034】
図8には、
図6のデータから、式(1)で傾きaを-8.0としたもの、つまり式(3)を縦軸にしてプロットしたものである。
(「位相が0の走査位置」−「包絡線のピーク位置」)/9
+「包絡線のピーク位置」 (3)
こうすると縦軸での1ずつの飛びはあるが、それ以外は横軸への依存性はなくなる。
【0035】
図9には、
図8のデータの小数部をプロットして示している。
図8の銅領域での小数部が0.9などのデータは
図9では−0.1などとして表わしている。シリコンと銅での縦軸の値の違いが明らかに分かる。縦軸の値のばらつきは「包絡線のピーク位置」の算出精度が低いことによる。
【0036】
図10には、
図9のデータを移動平均処理したものが示されている。各画素で縦軸の値が例えば0.27より大きければシリコン、小さければ銅と判定できる(異種か同種か判定できる)。
図10のシリコン領域での縦軸の値の平均値は0.43であり、銅の領域では0.097である。これらの値は
図7の直線の交点の小数部に対応する。
【0037】
図11には、
図7のシリコン領域の一部を拡大した例を示している。
図11の直線A、 B、 Cの傾きaは前述のように−8.0とした。これは多数のデータの平均値から決定できる。「位相が0の走査位置」=「包絡線のピーク位置」の直線と、直線A、 B、 Cとの交点の小数部が前述のように0.43である。
【0038】
各画素での測定値「包絡線のピーク位置」と測定値「位相が0の走査位置」から、その画素が
図11の例えば直線A、 B、 Cのどれに対応するかを特定する。そして、その特定した直線の関係を用いて、その画素での測定値「位相が0の走査位置」から計算値「包絡線のピーク位置」を計算で求める。その直線の関係を用いることで、測定値「包絡線のピーク位置」のばらつきが取り除かれる。計算値「包絡線のピーク位置」が試料8の表面の高さhに対応する。
銅と判定されたら、傾きはシリコンと同じ−8.0だが上記交点の小数部が0.097の直線を用いて、前述と同様にして試料8の表面の高さhが算出される。
【0039】
以下、試料8の表面高さhの算出の方法を
図11のシリコンの例で具体的に示す。「包絡線のピーク位置」の測定値をxm、「位相が0の走査位置」の測定値をymとして、「xmの整数部+0.43」で基準値xmsを作る。0.43は前述のようにシリコンでの式(3)の小数部である。以下のようにして、
図11のどの直線を使うかを決める。直線の傾きはこの例では前述のように−8.0である。その直線を用いて「位相が0の走査位置」の測定値ymに対応する「包絡線のピーク位置」xcを計算で求める。
(1) ym > −8(xm−xms)+xms +4.5 なら
y = −8{xc −(xms+1)} + (xms+1) の直線を用いて
xc = {ym −(xms+1)}/(−8) + (xms+1) 「包絡線のピーク位置」を求める。
上記を42 ≦ xm < 43 の例で表わすと、ymが
図11の点線「B+4.5」より上なら 直線Cを用いてymからxcを求める。
(2)−8(xm−xms)+xms −4.5 < ym < −8(xm−xms)+xms +4.5 なら
y = −8(xc −xms) + xms の直線を用いて
xc = (ym −xms)/(−8) + xms 「包絡線のピーク位置」を求める。
上記を42 ≦ xm < 43 の例で表わすと、ymが
図11の点線「B−4.5」より上で点線「B+4.5」より下なら直線Bを用いてymからxcを求める。
(3)ym < −8(xm−xms)+xms −4.5 なら
y = −8{xc −(xms−1)} + (xms−1) の直線を用いて
xc = {ym −(xms−1)}/(−8) + (xms−1) 「包絡線のピーク位置」を求める。
上記を42 ≦ xm < 43 の例で表わすと、ymが
図11の点線「B−4.5」より下なら直線Aを用いてymからxcを求める。
【0040】
求めたxcが試料8の表面の高さhに対応する。「包絡線のピーク位置」の測定値のばらつきが大きいので上記のような場合分けが必要になる。試料8の表面が銅の場合には、前述の銅での式(3)の小数部の0.097を用いて、「xmの整数部+0.097」で基準値xmsを作ればよい。後の表面高さの求め方はシリコンの場合と同様である。
【0041】
このようにして求めた試料8の表面高さhの例を
図12に示す。既に説明したようにシリコン基板上に銅薄膜を付けたもので、x=365付近が銅薄膜の端であり、その端に近づくにつれ、膜厚は薄くなっている。あるyでのx方向のデータである。用いたカメラの走査方式がインターレース方式のため、y方向のデータが、1行おきに収集時刻がずれてy方向に不連続なので、最終的な試料8の表面高さhの算出データをy方向に2個ずつ移動平均してその不連続を消している。横軸は640画素で900μmに相当する。「包絡線ピーク位置」を基準にして表面高さを算出しているので、表面反射光の位相変化の影響を受けず、銅の段差は正しく算出されている。
【0042】
図13には
図12のシリコン領域を拡大して示している。ナイキスト間隔の1.8倍の広いデータ収集間隔にも関わらす、雑音のピーク対ピークが数nmと高精度に試料表面高さが算出できている。表面反射光の位相変化の影響を受けないためには、従来は包絡線から表面高さを求める必要があったが、本発明では収集波形の位相から計算で求めるので、測定精度が1桁以上向上する。