(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大する基材成分(A)と、フッ素原子を有する構成単位(f)を有する含フッ素化合物成分(F)とを含有し、前記含フッ素化合物成分(F)が塩基分解性基を主鎖に含む高分子化合物(F1)を含有する請求項1に記載のレジスト組成物。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書及び本特許請求の範囲において、「脂肪族」とは、芳香族に対する相対的な概念であって、芳香族性を持たない基、化合物等を意味するものと定義する。
「アルキル基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状及び環状の1価の飽和炭化水素基を包含するものとする。
「アルキレン基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状及び環状の2価の飽和炭化水素基を包含するものとする。アルコキシ基中のアルキル基も同様である。
「ハロゲン化アルキル基」は、アルキル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基であり、該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
「フッ素化アルキル基」又は「フッ素化アルキレン基」は、アルキル基又はアルキレン基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された基をいう。
「構成単位」とは、高分子化合物(樹脂、重合体、共重合体)を構成するモノマー単位(単量体単位)を意味する。
【0014】
「アクリル酸エステルから誘導される構成単位」とは、アクリル酸エステルのエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。
「アクリル酸エステル」は、アクリル酸(CH
2=CH−COOH)のカルボキシ基末端の水素原子が有機基で置換された化合物である。
アクリル酸エステルは、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよい。該α位の炭素原子に結合した水素原子を置換する置換基は、水素原子以外の原子又は基であり、たとえば炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基、ヒドロキシアルキル基等が挙げられる。なお、アクリル酸エステルのα位の炭素原子とは、特に断りがない限り、カルボニル基が結合している炭素原子のことである。
以下、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されたアクリル酸エステルをα置換アクリル酸エステルということがある。また、アクリル酸エステルとα置換アクリル酸エステルとを包括して「(α置換)アクリル酸エステル」ということがある。
「ヒドロキシスチレン若しくはヒドロキシスチレン誘導体から誘導される構成単位」とは、ヒドロキシスチレン若しくはヒドロキシスチレン誘導体のエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。
【0015】
「ヒドロキシスチレン誘導体」とは、ヒドロキシスチレンのα位の水素原子がアルキル基、ハロゲン化アルキル基等の他の置換基に置換されたもの、並びにそれらの誘導体を含む概念とする。それらの誘導体としては、α位の水素原子が置換基に置換されていてもよいヒドロキシスチレンの水酸基の水素原子を有機基で置換したもの、α位の水素原子が置換基に置換されていてもよいヒドロキシスチレンのベンゼン環に、水酸基以外の置換基が結合したもの、等が挙げられる。なお、α位(α位の炭素原子)とは、特に断りがない限り、ベンゼン環が結合している炭素原子のことをいう。
ヒドロキシスチレンのα位の水素原子を置換する置換基としては、前記α置換アクリル酸エステルにおいて、α位の置換基として挙げたものと同様のものが挙げられる。
「ビニル安息香酸若しくはビニル安息香酸誘導体から誘導される構成単位」とは、ビニル安息香酸若しくはビニル安息香酸誘導体のエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。
「ビニル安息香酸誘導体」とは、ビニル安息香酸のα位の水素原子がアルキル基、ハロゲン化アルキル基等の他の置換基に置換されたもの、並びにそれらの誘導体を含む概念とする。それらの誘導体としては、α位の水素原子が置換基に置換されていてもよいビニル安息香酸のカルボキシ基の水素原子を有機基で置換したもの、α位の水素原子が置換基に置換されていてもよいビニル安息香酸のベンゼン環に、水酸基およびカルボキシ基以外の置換基が結合したもの、等が挙げられる。なお、α位(α位の炭素原子)とは、特に断りがない限り、ベンゼン環が結合している炭素原子のことをいう。
「スチレン」とは、スチレンおよびスチレンのα位の水素原子がアルキル基、ハロゲン化アルキル基等の他の置換基に置換されたものも含む概念とする。
「スチレンから誘導される構成単位」、「スチレン誘導体から誘導される構成単位」とは、スチレン又はスチレン誘導体のエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。
【0016】
上記α位の置換基としてのアルキル基は、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基)等が挙げられる。
また、α位の置換基としてのハロゲン化アルキル基は、具体的には、上記「α位の置換基としてのアルキル基」の水素原子の一部または全部を、ハロゲン原子で置換した基が挙げられる。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。
また、α位の置換基としてのヒドロキシアルキル基は、具体的には、上記「α位の置換基としてのアルキル基」の水素原子の一部または全部を、水酸基で置換した基が挙げられる。該ヒドロキシアルキル基における水酸基の数は、1〜5が好ましく、1が最も好ましい。
「露光」は、放射線の照射全般を含む概念とする。
【0017】
≪レジスト組成物≫
本発明のレジスト組成物は、露光により酸を発生し、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化するレジスト組成物であって、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分(A)(以下「(A)成分」という。)を含有する。
かかるレジスト組成物を用いてレジスト膜を形成し、該レジスト膜に対して選択的露光を行うと、露光部では酸が発生し、該酸の作用により(A)成分の現像液に対する溶解性が変化する一方で、未露光部では(A)成分の現像液に対する溶解性が変化しないため、露光部と未露光部との間で現像液に対する溶解性の差が生じる。そのため該レジスト膜を現像すると、当該レジスト組成物がポジ型の場合は露光部が溶解除去されてポジ型のレジストパターンが形成され、当該レジスト組成物がネガ型の場合は未露光部が溶解除去されてネガ型のレジストパターンが形成される。
本明細書においては、露光部が溶解除去されてポジ型レジストパターンを形成するレジスト組成物をポジ型レジスト組成物といい、未露光部が溶解除去されるネガ型レジストパターンを形成するレジスト組成物をネガ型レジスト組成物という。
本発明のレジスト組成物は、ポジ型レジスト組成物であってもよく、ネガ型レジスト組成物であってもよい。
本発明のレジスト組成物は、ポジ型レジスト組成物であってもよく、ネガ型レジスト組成物であってもよい。また、本発明のレジスト組成物は、レジストパターン形成時の現像処理にアルカリ現像液を用いる。
【0018】
本発明のレジスト組成物は露光により酸を発生する酸発生能を有するものであり、基材成分が露光により酸を発生してもよく、基材成分とは別に配合された添加剤成分が露光により酸を発生してもよい。
具体的には、本発明のレジスト組成物は、
(1)露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)(以下、「(B)成分」という。)を含有するものであってもよく;
(2)(A)成分が露光により酸を発生する成分であってもよく;
(3)(A)成分が露光により酸を発生する成分であり、且つ、さらに(B)成分を含有するものであってもよい。
すなわち、上記(2)及び(3)の場合、(A)成分は、「露光により酸を発生し、且つ酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分」となる。(A)成分が露光により酸を発生し、且つ酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分である場合、後述する(A1)成分が、露光により酸を発生し、且つ酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する樹脂成分(A1’)(以下、「(A1’)成分」ということがある。)であることが好ましい。このような(A1’)成分としては、露光により酸を発生する構成単位を有する樹脂を用いることができる。露光により酸を発生する構成単位としては、公知のものを用いることができる。なかでも、本発明においては上記(1)の場合であることが特に好ましい。
【0019】
<基材成分(A)>
本発明のレジスト組成物は、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が変化する基材成分(A)(以下「基材成分(A)」ともいう。)を含有することが好ましい。
ここで「基材成分」とは、膜形成能を有する有機化合物であり、好ましくは分子量が500以上の有機化合物が用いられる。該有機化合物の分子量が500以上であることにより、膜形成能が向上し、また、ナノレベルのレジストパターンを形成しやすい。前記基材成分として用いられる「分子量が500以上の有機化合物」は、非重合体と重合体とに大別される。
非重合体としては、通常、分子量が500以上4000未満のものが用いられる。以下、分子量が500以上4000未満の非重合体を低分子化合物という。
重合体としては、通常、分子量が1000以上のものが用いられる。以下、分子量が1000以上の重合体を高分子化合物という。高分子化合物の場合、「分子量」としてはGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の質量平均分子量を用いるものとする。以下、高分子化合物を単に「樹脂」ということがある。
【0020】
(構成単位(a1))
基材成分(A)は、構成単位(a1)を含有することが好ましい。構成単位(a1)は、酸の作用により極性が増大する酸分解性基を含む構成単位である。
「酸分解性基」は、酸の作用により、当該酸分解性基の構造中の少なくとも一部の結合が開裂し得る酸分解性を有する基である。
酸の作用により極性が増大する酸分解性基としては、たとえば、酸の作用により分解して極性基を生じる基が挙げられる。
極性基としては、たとえばカルボキシ基、水酸基、アミノ基、スルホ基(−SO
3H)等が挙げられる。これらのなかでも、構造中に−OHを含有する極性基(以下「OH含有極性基」ということがある。)が好ましく、カルボキシ基または水酸基が好ましく、カルボキシ基が特に好ましい。
酸分解性基としてより具体的には、前記極性基が酸解離性基で保護された基(たとえばOH含有極性基の水素原子を、酸解離性基で保護した基)が挙げられる。
ここで「酸解離性基」とは、
(i)酸の作用により、当該酸解離性基と該酸解離性基に隣接する原子との間の結合が開裂し得る酸解離性を有する基、又は、
(ii)酸の作用により一部の結合が開裂した後、さらに脱炭酸反応が生じることにより、当該酸解離性基と該酸解離性基に隣接する原子との間の結合が開裂し得る基、
の双方をいう。
酸分解性基を構成する酸解離性基は、当該酸解離性基の解離により生成する極性基よりも極性の低い基であることが必要で、これにより、酸の作用により該酸解離性基が解離した際に、該酸解離性基よりも極性の高い極性基が生じて極性が増大する。その結果、(A1)成分全体の極性が増大する。極性が増大することにより、相対的に、現像液に対する溶解性が変化し、現像液が有機系現像液の場合には溶解性が減少する。
【0021】
酸解離性基としては、特に限定されず、これまで、化学増幅型レジスト用のベース樹脂の酸解離性基として提案されているものを使用することができる。
上記極性基のうち、カルボキシ基または水酸基を保護する酸解離性基としては、たとえば、下記一般式(a1−r−1)で表される酸解離性基(以下、便宜上「アセタール型酸解離性基」ということがある)が挙げられる。
【0022】
【化2】
[式中、Ra’
1、Ra’
2は水素原子またはアルキル基、Ra’
3は炭化水素基、Ra’
3は、Ra’
1、Ra’
2のいずれかと結合して環を形成してもよい。]
【0023】
式(a1−r−1)中、Ra’
1、Ra’
2のアルキル基としては、上記α置換アクリル酸エステルについての説明で、α位の炭素原子に結合してもよい置換基として挙げたアルキル基と同様のものが挙げられ、メチル基またはエチル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。
【0024】
Ra’
3の炭化水素基としては、炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、炭素数1〜10のアルキル基がより好ましく;直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,1−ジメチルエチル基、1,1−ジエチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、2,2,−ジメチルブチル基等が挙げられる。
【0025】
Ra’
3が環状の炭化水素基となる場合、脂肪族でも芳香族でもよく、また多環式であってもよく、単環式であってもよい。単環式の脂環式炭化水素基としては、モノシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては炭素数3〜6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。多環式の脂環式炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては炭素数7〜12のものが好ましく、具体的にはアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
【0026】
芳香族炭化水素基となる場合、含まれる芳香環として具体的には、ベンゼン、ビフェニル、フルオレン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環;等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。
該芳香族炭化水素基として具体的には、前記芳香族炭化水素環から水素原子を1つ除いた基(アリール基);前記アリール基の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(たとえば、ベンジル基、フェネチル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基、1−ナフチルエチル基、2−ナフチルエチル基等のアリールアルキル基);等が挙げられる。前記アルキレン基(アリールアルキル基中のアルキル鎖)の炭素数は、1〜4であることが好ましく、1〜2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
【0027】
Ra’
3が、Ra’
1、Ra’
2のいずれかと結合して環を形成する場合、該環式基としては、4〜7員環が好ましく、4〜6員環がより好ましい。該環式基の具体例としては、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基等が挙げられる。
【0028】
上記極性基のうち、カルボキシ基を保護する酸解離性基としては、たとえば、下記一般式(a1−r−2)で表される酸解離性基が挙げられる(下記式(a1−r−2)で表される酸解離性基のうち、アルキル基により構成されるものを、以下、便宜上「第3級アルキルエステル型酸解離性基」ということがある)。
【0029】
【化3】
[式中、Ra’
4〜Ra’
6は炭化水素基であり、Ra’
5、Ra’
6は互いに結合して環を形成してもよい。]
【0030】
Ra’
4〜Ra’
6の炭化水素基としては前記Ra’
3と同様のものが挙げられる。Ra’
4は炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましい。Ra’
5、Ra’
6が互いに結合して環を形成する場合、下記一般式(a1−r2−1)で表される基が挙げられる。
【0031】
また、上記極性基のうち水酸基を保護する酸解離性基としては、たとえば、下記一般式(a1−r−3)で表される酸解離性基(以下、便宜上「第3級アルキルオキシカルボニル酸解離性基」ということがある)が挙げられる。
【0032】
【化4】
[式中、Ra’
7〜Ra’
9はアルキル基を示す。]
【0033】
式(a1−r−3)中、Ra’
7〜Ra’
9は炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、1〜3がより好ましい。
また、各アルキル基の合計の炭素数は、3〜7であることが好ましく、3〜5であることがより好ましく、3〜4であることが最も好ましい。
【0034】
構成単位(a1)としては、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位であって、酸の作用により極性が増大する酸分解性基を含む構成単位;ヒドロキシスチレン若しくはヒドロキシスチレン誘導体から誘導される構成単位の水酸基における水素原子の少なくとも一部が前記酸分解性基を含む置換基により保護された構成単位;ビニル安息香酸若しくはビニル安息香酸誘導体から誘導される構成単位の−C(=O)−OHにおける水素原子の少なくとも一部が前記酸分解性基を含む置換基により保護された構成単位等が挙げられる。
【0035】
構成単位(a1)としては、上記のなかでも、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位が好ましい。
構成単位(a1)として、下記一般式(a1−1)で表される構成単位が好ましい。
【0036】
【化5】
[式中、Rは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基である。Va
1はエーテル結合、ウレタン結合、又はアミド結合を有していてもよい2価の炭化水素基であり、n
a1はそれぞれ独立に0〜2であり、
Ra
1は上記式(a1−r−1)〜(a1−r−2)で表される酸解離性基である。Wa
1
はn
a2+1価の炭化水素基であり、n
a2はそれぞれ独立に1〜3であり、Ra
2は上記式(a1−r−1)または(a1−r−3)で表される酸解離性基である。]
【0037】
前記一般式(a1−1)中、炭素数1〜5のアルキル基は、炭素数1〜5の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基は、前記炭素数1〜5のアルキル基の水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置換された基である。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。
Rとしては、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5のフッ素化アルキル基が好ましく、工業上の入手の容易さから、水素原子またはメチル基が最も好ましい。
Va
1の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。脂肪族炭化水素基は、芳香族性を持たない炭化水素基を意味する。Va
1における2価の炭化水素基としての脂肪族炭化水素基は、飽和であってもよく、不飽和であってもよく、通常は飽和であることが好ましい。
該脂肪族炭化水素基として、より具体的には、直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、構造中に環を含む脂肪族炭化水素基等が挙げられる。
またVa
1としては上記2価の炭化水素基がエーテル結合、ウレタン結合、又はアミド結合を介して結合したものが挙げられる。
【0038】
前記直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素数が1〜10であることが好ましく、1〜6がより好ましく、1〜4がさらに好ましく、1〜3が最も好ましい。
直鎖状の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基[−CH
2−]、エチレン基[−(CH
2)
2−]、トリメチレン基[−(CH
2)
3−]、テトラメチレン基[−(CH
2)
4−]、ペンタメチレン基[−(CH
2)
5−]等が挙げられる。
分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、−CH(CH
3)−、−CH(CH
2CH
3)−、−C(CH
3)
2−、−C(CH
3)(CH
2CH
3)−、−C(CH
3)(CH
2CH
2CH
3)−、−C(CH
2CH
3)
2−等のアルキルメチレン基;−CH(CH
3)CH
2−、−CH(CH
3)CH(CH
3)−、−C(CH
3)
2CH
2−、−CH(CH
2CH
3)CH
2−、−C(CH
2CH
3)
2−CH
2−等のアルキルエチレン基;−CH(CH
3)CH
2CH
2−、−CH
2CH(CH
3)CH
2−等のアルキルトリメチレン基;−CH(CH
3)CH
2CH
2CH
2−、−CH
2CH(CH
3)CH
2CH
2−等のアルキルテトラメチレン基などのアルキルアルキレン基等が挙げられる。アルキルアルキレン基におけるアルキル基としては、炭素数1〜5の直鎖状のアルキル基が好ましい。
【0039】
前記構造中に環を含む脂肪族炭化水素基としては、脂環式炭化水素基(脂肪族炭化水素環から水素原子を2個除いた基)、脂環式炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合した基、脂環式炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基などが挙げられる。前記直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては前記と同様のものが挙げられる。
前記脂環式炭化水素基は、炭素数が3〜20であることが好ましく、3〜12であることがより好ましい。
前記脂環式炭化水素基は、多環式であってもよく、単環式であってもよい。単環式の脂環式炭化水素基としては、モノシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては炭素数3〜6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。多環式の脂環式炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては炭素数7〜12のものが好ましく、具体的にはアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
【0040】
芳香族炭化水素基は、芳香環を有する炭化水素基である。
前記Va
1における2価の炭化水素基としての芳香族炭化水素基は、炭素数が3〜30であることが好ましく、5〜30であることがより好ましく、5〜20がさらに好ましく、6〜15が特に好ましく、6〜10が最も好ましい。ただし、該炭素数には、置換基における炭素数を含まないものとする。
芳香族炭化水素基が有する芳香環として具体的には、ベンゼン、ビフェニル、フルオレン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環;等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。
該芳香族炭化水素基として具体的には、前記芳香族炭化水素環から水素原子を2つ除いた基(アリーレン基);前記芳香族炭化水素環から水素原子を1つ除いた基(アリール基)の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(たとえば、ベンジル基、フェネチル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基、1−ナフチルエチル基、2−ナフチルエチル基等のアリールアルキル基におけるアリール基から水素原子をさらに1つ除いた基);等が挙げられる。前記アルキレン基(アリールアルキル基中のアルキル鎖)の炭素数は、1〜4であることが好ましく、1〜2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
【0041】
前記式(a1−2)中、Wa
1におけるn
a2+1価の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。該脂肪族炭化水素基は、芳香族性を持たない炭化水素基を意味し、飽和であってもよく、不飽和であってもよく、通常は飽和であることが好ましい。前記脂肪族炭化水素基としては、直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、構造中に環を含む脂肪族炭化水素基、或いは直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基と構造中に環を含む脂肪族炭化水素基とを組み合わせた基が挙げられ、具体的には、上述の式(a1−1)のVa
1と同じ基が挙げられる。
前記n
a2+1価は、2〜4価が好ましく、2又は3価がより好ましい。
【0042】
前記式(a1−2)としては、特に、下記一般式(a1−2−01)で表される構成単位が好ましい。
【0044】
式(a1−2−01)中、Ra
2は上記式(a1−r−1)または(a1−r−3)で表される酸解離性基である。n
a2は1〜3の整数であり、1又は2であることが好ましく、1であることがより好ましい。cは0〜3の整数であり、0又は1であることが好ましく、1であることがより好ましい。Rは前記と同じである。
以下に上記式(a1−1)、(a1−2)の具体例を示す。以下の各式中、R
αは、水素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基を示す。
【0050】
(A)成分中の構成単位(a1)の割合は、(A)成分を構成する全構成単位に対し、20〜80モル%が好ましく、20〜75モル%がより好ましく、25〜70モル%がさらに好ましい。下限値以上とすることによって、感度、解像性、LWR等のリソグラフィー特性も向上する。また、上限値以下とすることにより他の構成単位とのバランスをとることができる。
【0051】
(構成単位(a2))
基材成分(A)は、ラクトン含有環式基を含む構成単位(a2)をさらに含有することが好ましい。
構成単位(a2)のラクトン環式基は、基材成分(A)をレジスト膜の形成に用いた場合に、レジスト膜の基板への密着性を高めるうえで有効なものである。
なお、前記構成単位(a1)がその構造中にラクトン含有環式基を含むものである場合、該構成単位は構成単位(a2)にも該当するが、このような構成単位は構成単位(a1)に該当し、構成単位(a2)には該当しないものとする。
【0052】
「ラクトン含有環式基」とは、その環骨格中に−O−C(=O)−を含む環(ラクトン環)を含有する環式基を示す。ラクトン環をひとつ目の環として数え、ラクトン環のみの場合は単環式基、さらに他の環構造を有する場合は、その構造に関わらず多環式基と称する。ラクトン含有環式基は、単環式基であってもよく、多環式基であってもよい。
構成単位(a2)におけるラクトン含有環式基としては、特に限定されることなく任意のものが使用可能である。具体的には、下記一般式(a2−r−1)〜(a2−r−7)で表される基が挙げられる。
【0053】
【化12】
[式中、Ra’
21はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、−COOR”、−OC(=O)R”、ヒドロキシアルキル基またはシアノ基であり;R”は水素原子またはアルキル基であり;A”は酸素原子もしくは硫黄原子を含んでいてもよい炭素数1〜5のアルキレン基、酸素原子または硫黄原子であり、n’は0〜2の整数であり、m’は0または1である。]
【0054】
前記一般式(a2−r−1)〜(a2−r−7)中、A”は、酸素原子(−O−)もしくは硫黄原子(−S−)を含んでいてもよい炭素数1〜5のアルキレン基、酸素原子または硫黄原子である。A”における炭素数1〜5のアルキレン基としては、直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基等が挙げられる。該アルキレン基が酸素原子または硫黄原子を含む場合、その具体例としては、前記アルキレン基の末端または炭素原子間に−O−または−S−が介在する基が挙げられ、たとえば−O−CH
2−、−CH
2−O−CH
2−、−S−CH
2−、−CH
2−S−CH
2−等が挙げられる。A”としては、炭素数1〜5のアルキレン基または−O−が好ましく、炭素数1〜5のアルキレン基がより好ましく、メチレン基が最も好ましい。Ra’
21におけるアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、−COOR”、−OC(=O)R”、ヒドロキシアルキル基としては、それぞれ、前記一般式(a0)におけるV
0a1における2価の環式基が有していてもよい置換基として挙げたアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、−COOR”、−OC(=O)R”、ヒドロキシアルキル基と同様のものが挙げられる。
【0055】
下記に一般式(a2−r−1)〜(a2−r−7)で表される基の具体例を挙げる。
【0057】
構成単位(a2)としては、ラクトン含有環式基を有するものであれば他の部分の構造は特に限定されないが、下記一般式(a2−1)で表される構成単位が挙げられる。
【0058】
【化14】
[式中、Rは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基であり、Va
21は炭素数1〜5のアルキレン基であり、Ra
21は上記一般式(a2−r−1)〜(a2−r−7)のいずれかで表される基であり、na
21は0または1である。]
【0059】
Rのアルキル基は、炭素数1〜5の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。
Rの炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基は、前記炭素数1〜5のアルキル基の水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置換された基である。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。
Rとしては、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5のフッ素化アルキル基が好ましく、工業上の入手の容易さから、水素原子またはメチル基が最も好ましい。
Va
21としては、炭素数1〜3のアルキレン基が好ましい。
【0060】
以下に、上記一般式(a2−1)で表される構成単位の具体例をあげる。以下の各式中、R
αは、水素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基を示す。
【0062】
(構成単位(a3))
基材成分(A)は、構成単位(a3)を有していてもよい。構成単位(a3)は、極性基含有脂肪族炭化水素基を含む構成単位(ただし、上述した構成単位(a1)、(a2)に該当するものを除く)である。
基材成分(A)が構成単位(a3)を有することにより、(A)成分の親水性が高まり、解像性の向上に寄与すると考えられる。
極性基としては、水酸基、シアノ基、カルボキシ基、アルキル基の水素原子の一部がフッ素原子で置換されたヒドロキシアルキル基等が挙げられ、特に水酸基が好ましい。
脂肪族炭化水素基としては、炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖状の炭化水素基(好ましくはアルキレン基)や、環状の脂肪族炭化水素基(環式基)が挙げられる。該環式基としては、単環式基でも多環式基でもよく、例えばArFエキシマレーザー用レジスト組成物用の樹脂において、多数提案されているものの中から適宜選択して用いることができる。該環式基としては多環式基であることが好ましく、炭素数は7〜30であることがより好ましい。
その中でも、水酸基、シアノ基、カルボキシ基、またはアルキル基の水素原子の一部がフッ素原子で置換されたヒドロキシアルキル基を含有する脂肪族多環式基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位がより好ましい。該多環式基としては、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどから2個以上の水素原子を除いた基などを例示できる。具体的には、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから2個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。これらの多環式基の中でも、アダマンタンから2個以上の水素原子を除いた基、ノルボルナンから2個以上の水素原子を除いた基、テトラシクロドデカンから2個以上の水素原子を除いた基が工業上好ましい。
【0063】
構成単位(a3)としては、極性基含有脂肪族炭化水素基を含むものであれば特に限定されることなく任意のものが使用可能である。
構成単位(a3)としては、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位であって極性基含有脂肪族炭化水素基を含む構成単位が好ましい。
構成単位(a3)としては、極性基含有脂肪族炭化水素基における炭化水素基が炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖状の炭化水素基のときは、アクリル酸のヒドロキシエチルエステルから誘導される構成単位が好ましく、該炭化水素基が多環式基のときは、下記の式(a3−1)で表される構成単位、式(a3−2)で表される構成単位、式(a3−3)で表される構成単位が好ましいものとして挙げられる。
【0064】
【化16】
[式中、Rは前記と同じであり、jは1〜3の整数であり、kは1〜3の整数であり、t’は1〜3の整数であり、lは1〜5の整数であり、sは1〜3の整数である。]
【0065】
式(a3−1)中、jは1又は2であることが好ましく、1であることがさらに好ましい。jが2の場合、水酸基が、アダマンチル基の3位と5位に結合しているものが好ましい。jが1の場合、水酸基が、アダマンチル基の3位に結合しているものが好ましい。
jは1であることが好ましく、特に、水酸基が、アダマンチル基の3位に結合しているものが好ましい。
【0066】
式(a3−2)中、kは1であることが好ましい。シアノ基は、ノルボルニル基の5位または6位に結合していることが好ましい。
式(a3−3)中、t’は1であることが好ましい。lは1であることが好ましい。sは1であることが好ましい。これらは、アクリル酸のカルボキシ基の末端に、2−ノルボルニル基または3−ノルボルニル基が結合していることが好ましい。フッ素化アルキルアルコールは、ノルボルニル基の5又は6位に結合していることが好ましい。
【0067】
基材成分(A)が含有する構成単位(a3)は1種であってもよく2種以上であってもよい。
基材成分(A)中、構成単位(a3)の割合は、当該基材成分(A)を構成する全構成単位の合計に対し、5〜50モル%であることが好ましく、5〜40モル%がより好ましく、5〜25モル%がさらに好ましい。
構成単位(a3)の割合を下限値以上とすることにより、構成単位(a3)を含有させることによる効果が充分に得られ、上限値以下とすることにより、他の構成単位とのバランスをとりやすくなる。
【0068】
基材成分(A)は、さらに、必要に応じて、酸非解離性環式基を含む構成単位(a4)を有してもよい。(A1)成分が構成単位(a4)を有することにより、形成されるレジストパターンのドライエッチング耐性が向上する。また、基材成分(A)の疎水性が高まると考えられる。疎水性の向上は、特に有機溶剤現像の場合に、解像性、レジストパターン形状等の向上に寄与すると考えられる。
構成単位(a4)における「酸非解離性環式基」は、露光により後述の(B)成分から酸が発生した際に、該酸が作用しても解離することなくそのまま当該構成単位中に残る環式基である。
構成単位(a4)としては、例えば酸非解離性の脂肪族多環式基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位等が好ましい。該多環式基は、例えば、前記の構成単位(a1)の場合に例示したものと同様のものを例示することができ、ArFエキシマレーザー用、KrFエキシマレーザー用(好ましくはArFエキシマレーザー用)等のレジスト組成物の樹脂成分に用いられるものとして従来から知られている多数のものが使用可能である。
特にトリシクロデシル基、アダマンチル基、テトラシクロドデシル基、イソボルニル基、ノルボルニル基から選ばれる少なくとも1種であると、工業上入手し易いなどの点で好ましい。これらの多環式基は、炭素数1〜5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を置換基として有していてもよい。
また、構成単位(a4)としては、酸非解離性の芳香族基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位、スチレンから誘導される構成単位、ヒドロキシスチレンから誘導される構成単位等も好ましい。
構成単位(a4)として、具体的には、下記一般式(a4−1)〜(a4−6)の構造のもの、ビニル(ヒドロキシ)ナフタレン、(ヒドロキシ)ナフチル(メタ)アクリレート
(ヒドロキシ)ベンジル(メタ)アクリレート等を例示することができる。
【0069】
【化17】
[式中、R
αは水素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基を示す。]
【0070】
かかる構成単位(a4)を基材成分(A)に含有させる際、構成単位(a4)の割合は、基材成分(A)を構成する全構成単位の合計に対し、1〜30モル%であることが好ましく、10〜20モル%であることがより好ましい。
【0071】
(構成単位(a5))
基材成分(A)は、−SO
2−含有環式基を含む構成単位(a5)をさらに含有することが好ましい。
【0072】
基材成分(A)が有していてもよい「−SO
2−含有環式基」とは、その環骨格中に−SO
2−を含む環を含有する環式基を示し、具体的には、−SO
2−における硫黄原子(S)が環式基の環骨格の一部を形成する環式基である。その環骨格中に−SO
2−を含む環をひとつ目の環として数え、該環のみの場合は単環式基、さらに他の環構造を有する場合は、その構造に関わらず多環式基と称する。−SO
2−含有環式基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。
−SO
2−含有環式基は、特に、その環骨格中に−O−SO
2−を含む環式基、すなわち−O−SO
2−中の−O−S−が環骨格の一部を形成するスルトン(sultone)環を含有する環式基であることが好ましい。−SO
2−含有環式基として、より具体的には、下記一般式(a5−r−1)〜(a5−r−4)で表される基が挙げられる。
【0073】
【化18】
[式中、Ra’
51はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、−COOR”、−OC(=O)R”、ヒドロキシアルキル基またはシアノ基であり;R”は水素原子またはアルキル基であり;A”は酸素原子もしくは硫黄原子を含んでいてもよい炭素数1〜5のアルキレン基、酸素原子または硫黄原子であり、n’は0〜2の整数である。]
【0074】
前記一般式(a5−r−1)〜(a5−r−4)中、A”は前記一般式(a2−r−1)〜(a2−r−7)中のA”と同様である。Ra’
51におけるアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、−COOR”、−OC(=O)R”、ヒドロキシアルキル基としては、前記一般式(a2−r−1)〜(a2−r−7)中のRa’
21と同様である。
【0075】
下記に一般式(a5−r−1)〜(a5−r−4)で表される基の具体例を挙げる。式中の「Ac」は、アセチル基を示す。
【0079】
構成単位(a5)としては、−SO
2−含有環式基を有するものであれば他の部分の構造は特に限定されないが、前記一般式(a2−1)のRa
21が前記一般式(a5−r−1)〜(a5−r−4)のいずれかで表される基である構成単位が挙げられる。
【0080】
−SO
2−含有環式基としては、上記の中でも、前記一般式(a5−r−1)で表される基が好ましく、前記化学式(r−sl−1−1)、(r−sl−1−18)、(r−sl−3−1)および(r−sl−4−1)のいずれかで表される基からなる群から選択される少なくとも一種を用いることがより好ましく、前記化学式(r−sl−1−1)で表される基が最も好ましい。
【0081】
本発明において、基材成分(A)は、後述の塩基分解性基又は後述の一般式(I)で表される塩基分解性基を有していてもよい。
【0082】
基材成分(A)は、各構成単位を誘導するモノマーを、例えばアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビスイソ酪酸ジメチルのようなラジカル重合開始剤を用いた公知のラジカル重合等により重合させることによって得ることができる。
また、基材成分(A)には、上記重合の際に、たとえばHS−CH
2−CH
2−CH
2−C(CF
3)
2−OHのような連鎖移動剤を併用して用いることにより、末端に−C(CF
3)
2−OH基を導入してもよい。このように、アルキル基の水素原子の一部がフッ素原子で置換されたヒドロキシアルキル基が導入された共重合体は、現像欠陥の低減やLER(ラインエッジラフネス:ライン側壁の不均一な凹凸)の低減に有効である。
【0083】
基材成分(A)の質量平均分子量(Mw)(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算基準)は、特に限定されるものではなく、1000〜50000が好ましく、1500〜40000がより好ましく、2000〜30000が最も好ましい。この範囲の上限値以下であると、レジストとして用いるのに充分なレジスト溶剤への溶解性があり、この範囲の下限値以上であると、耐ドライエッチング性やレジストパターン断面形状が良好である。
分散度(Mw/Mn)は、特に限定されず、1.0〜5.0が好ましく、1.0〜4.0がより好ましく、1.0〜3.0が最も好ましい。なお、Mnは数平均分子量を示す。
【0084】
基材成分(A)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0085】
本発明のレジスト組成物において、基材成分(A)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明のレジスト組成物中、基材成分(A)の含有量は、形成しようとするレジスト膜厚等に応じて調整すればよい。
【0086】
本発明で用いるレジスト組成物中、基材成分(A)の含有量は、形成しようとするレジスト膜厚等に応じて調整すればよい。
【0087】
〈塩基分解性基〉
本発明のレジスト組成物は、塩基分解性基を主鎖に含む高分子化合物を含有する。
「塩基分解性基」とは、アルカリ現像液の作用により分解性を示す基である。「アルカリ現像液に対して分解性を示す」とは、0.1〜30質量%のアルカリ現像液の作用により分解し(好ましくは、23℃において、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液の作用で分解し)、アルカリ現像液に対する溶解性が増大することを意味する。これは、塩基(アルカリ現像液)の作用によりエステル結合が分解(加水分解)し、親水基が生成することによる。塩基分解性基としては、塩基により分解して、ポリマーをアルカリ現像液に可溶性にする基であれば特に限定されず、これまで、化学増幅型レジスト用のベース樹脂の塩基分解性基として提案されているものを使用することができる。
【0088】
本発明のレジスト組成物は、下記一般式(I)で表される塩基分解性基主鎖の含む高分子化合物を含有することが好ましい。
【0089】
【化22】
[式中、V
1は置換基を有していてもよいフッ素化アルキレン基であり、V
2はそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキレン基である。]
【0090】
前記一般式(I)中、V
1は置換基を有していてもよいフッ素化アルキレン基である。
V
1におけるフッ素化アルキレン基としては、直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された基が挙げられる。該アルキレン基の炭素数は、1〜12が好ましく、1〜5がより好ましく、2〜4が特に好ましい。
【0091】
V
1として具体的には、−CF
2−、−CF
2CF
2−、−CF
2CF
2CF
2−、−(CF
2)
4−、−(CF
2)
6−、−(CF
2)
8−、−CF(CF
3)CF
2−、−CF(CF
2CF
3)−、−C(CF
3)
2−、−CF(CF
3)CF
2CF
2−、−CF
2CF(CF
3)CF
2−、−CF(CF
3)CF(CF
3)−、−C(CF
3)
2CF
2−、−CF(CF
2CF
3)CF
2−、−CF(CF
2CF
2CF
3)−、−C(CF
3)(CF
2CF
3)−;−CHF−、−CF
2CH
2CF
2−、−CF
2CH
2CH
2CF
2−、−CF
2CH
2CF
2CF
2−、−CF
2CH(CF
3)CH
2CF
2−、−CF
2CH(CF
2CF
3)CF
2−、−CF
2C(CH
3)(CF
3)CF
2−、−CF
2CH
2CH
2CH
2CF
2−、−CF
2CH
2CH
2CF
2CF
2−、−CH(CF
3)CH
2CH
2CF
2−、−CF
2CH
2CH(CF
3)CH
2CF
2−、−CH(CF
3)CH(CF
3)−、−C(CF
3)
2CH
2CF
2−等が挙げられる。
【0092】
前記のフッ素化アルキレン基は、置換基を有していてもよい。
たとえば、V
1におけるフッ素化アルキレン基の一部のメチレン基(またはフルオロメチレン基)が炭素数5〜10の2価の脂肪族環式基または芳香族環式基で置換されていてもよい。当該脂肪族環式基は、前記Ra’
3の環状の炭化水素基から水素原子をさらに1つ除いた2価の基が好ましく、シクロへキシレン基、1,5−アダマンチレン基、2,6−アダマンチレン基、又はフェニレン基がより好ましい。
その他のフッ素化アルキレン基が有していてもよい置換基としては、炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基等が挙げられる。
【0093】
前記一般式(I)中、V
2はそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキレン基である。V
2に隣接するV
1の炭素原子には、フッ素原子が結合していると好ましい。炭素数1〜3のアルキレン基としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基が挙げられる。本発明において、V
2はメチレン基又はエチレン基が好ましい。
【0094】
以下に前記一般式(I)で表される基の具体例を挙げる。
【0096】
本発明のレジスト組成物は、塩基分解性基を主鎖に含む高分子化合物を含有することにより、アルカリ現像した際に、アルカリ現像液に対する溶解性が増大する。より具体的には、下記の反応式(I’)のように、主鎖が分解すると考えられる。
【0097】
【化24】
[式中、V
1は置換基を有していてもよいフッ素化アルキレン基であり、V
2はそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキレン基である。]
【0098】
上記反応式(I’)中、V
1及びV
2は、前記式(I)中のV
1及びV
2と同様である。
【0099】
<酸発生剤成分;(B)成分>
(B)成分は、露光により酸を発生する酸発生剤成分である。
(B)成分としては、特に限定されず、これまで化学増幅型レジスト用の酸発生剤として提案されているものを使用することができる。このような酸発生剤としては、これまで、ヨードニウム塩やスルホニウム塩などのオニウム塩系酸発生剤、オキシムスルホネート系酸発生剤、ビスアルキルまたはビスアリールスルホニルジアゾメタン類、ポリ(ビススルホニル)ジアゾメタン類などのジアゾメタン系酸発生剤、ニトロベンジルスルホネート系酸発生剤、イミノスルホネート系酸発生剤、ジスルホン系酸発生剤など多種のものが知られている。
オニウム塩系酸発生剤としては、例えば下記一般式(b−1)又は(b−2)で表される化合物を用いることができる。
【0100】
【化25】
[式中、R
101は置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、または置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基であり、Y
101は単結合または酸素原子を含む2価の連結基であり、V
101は単結合、アルキレン基、またはフッ素化アルキレン基であり、R
102はフッ素原子または炭素数1〜5のフッ素化アルキル基であり、R
104、R
105は、それぞれ独立に、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数1〜10のフッ素化アルキル基であり、互いに結合して環を形成していてもよい。M’
m+はm価の有機カチオンである。]
【0101】
{アニオン部}
式(b−1)において、R
101は置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、または置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基であって、該環式基は環状の炭化水素基であることが好ましく、該環状の炭化水素基は芳香族炭化水素基であってもよく、脂肪族炭化水素基であってもよい。
R
101における芳香族炭化水素基は、2価の芳香族炭化水素基で挙げた芳香族炭化水素環、または2以上の芳香環を含む芳香族化合物から水素原子を1つ除いたアリール基が挙げられ、フェニル基、ナフチル基が好ましい。
R
101における環状の脂肪族炭化水素基は、2価の脂肪族炭化水素基で挙げたモノシクロアルカンまたはポリシクロアルカンから水素原子を1つ除いた基が挙げられ、アダマンチル基、ノルボルニル基が好ましい。
また、R
101における環状の炭化水素基は、複素環等のようにヘテロ原子を含んでもよく、具体的には、上記一般式(a2−r−1)〜(a2−r−7)で表されるラクトン含有環式基、上記一般式(a5−r−1)〜(a5−r−4)で表される−SO
2−含有環式基、その他以下に挙げる複素環が挙げられる。
【0103】
R
101の環状の炭化水素基における置換基としては、たとえば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、酸素原子(=O)、ニトロ基等が挙げられる。
置換基としてのアルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基であることが最も好ましい。
置換基としてのアルコキシ基としては、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基が最も好ましい。
置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
前記芳香族炭化水素基の置換基としてのハロゲン化アルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基、たとえばメチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基等のアルキル基の水素原子の一部または全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
【0104】
R
101の鎖状のアルキル基としては、直鎖状又は分岐鎖状のいずれでもよく、直鎖状のアルキル基としては、炭素数が1〜20であることが好ましく、1〜15であることがより好ましく、1〜10が最も好ましい。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デカニル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基等が挙げられる。
分岐鎖状のアルキル基としては、炭素数が3〜20であることが好ましく、3〜15であることがより好ましく、3〜10が最も好ましい。具体的には、例えば、1−メチルエチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基などが挙げられる。
【0105】
R
101の鎖状のアルケニル基としては、炭素数が2〜10であることが好ましく、2〜5が好ましく、2〜4が好ましく、3が特に好ましい。例えば、ビニル基、プロペニル基(アリル基)、ブチニル基などが挙げられる。分岐鎖状の1価の不飽和炭化水素基としては、例えば、1−メチルプロペニル基、2−メチルプロペニル基などが挙げられる。
不飽和炭化水素基としては、上記の中でも、特にプロペニル基が好ましい。
R
101のアルキル基またはアルケニル基における置換基としては、たとえば、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、酸素原子(=O)、ニトロ基、アミノ基、上記R
101における環式基等が挙げられる。
【0106】
本発明において、R
101は、置換基を有していてもよい環状の炭化水素基であることが好ましく、フェニル基、ナフチル基、ポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基、前記式(a2−r−1)〜(a2−r−7)で表されるラクトン含有環式基、上記一般式(a5−r−1)〜(a5−r−4)で表される−SO
2−含有環式基、等が好ましい。
【0107】
Y
101が酸素原子を含む2価の連結基である場合、該Y
101は、酸素原子以外の原子を含有してもよい。酸素原子以外の原子としては、たとえば炭素原子、水素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。
酸素原子を含む2価の連結基としては、たとえば、酸素原子(エーテル結合:−O−)、エステル結合(−C(=O)−O−)、アミド結合(−C(=O)−NH−)、カルボニル基(−C(=O)−)、カーボネート結合(−O−C(=O)−O−)等の非炭化水素系の酸素原子含有連結基;該非炭化水素系の酸素原子含有連結基とアルキレン基との組み合わせ等が挙げられる。当該組み合わせに、さらにスルホニル基(−SO
2−)が連結されていてもよい。当該組み合わせとしては、たとえば下記式(y−al−1)〜(y−al−7)で表される連結基が挙げられる。
【0108】
【化27】
[式中、V’
101は単結合または炭素数1〜5のアルキレン基であり、V’
102は炭素数1〜30の2価の飽和炭化水素基である。]
【0109】
V’
102における2価の飽和炭化水素基は、炭素数1〜30のアルキレン基であることが好ましい。
【0110】
V’
101およびV’
102におけるアルキレン基として、具体的には、たとえばメチレン基[−CH
2−];−CH(CH
3)−、−CH(CH
2CH
3)−、−C(CH
3)
2−、−C(CH
3)(CH
2CH
3)−、−C(CH
3)(CH
2CH
2CH
3)−、−C(CH
2CH
3)
2−等のアルキルメチレン基;エチレン基[−CH
2CH
2−];−CH(CH
3)CH
2−、−CH(CH
3)CH(CH
3)−、−C(CH
3)
2CH
2−、−CH(CH
2CH
3)CH
2−等のアルキルエチレン基;トリメチレン基(n−プロピレン基)[−CH
2CH
2CH
2−];−CH(CH
3)CH
2CH
2−、−CH
2CH(CH
3)CH
2−等のアルキルトリメチレン基;テトラメチレン基[−CH
2CH
2CH
2CH
2−];−CH(CH
3)CH
2CH
2CH
2−、−CH
2CH(CH
3)CH
2CH
2−等のアルキルテトラメチレン基;ペンタメチレン基[−CH
2CH
2CH
2CH
2CH
2−]等が挙げられ、直鎖状のアルキレン基が好ましい。
また、V’
101およびV’
102における前記アルキレン基における一部のメチレン基が炭素数5〜10の2価の脂肪族環式基で置換されていてもよい。当該脂肪族環式基は、前記Ra’
3の環状の脂肪族炭化水素基から水素原子をさらに1つ除いた2価の基が好ましく、シクロへキシレン基、1,5−アダマンチレン基または2,6−アダマンチレン基がより好ましい。
【0111】
Y
101としては、エステル結合またはエーテル結合を含む2価の連結基が好ましく、上記式(y−al−1)〜(y−al−5)で表されるものが好ましい。
【0112】
式(b−1)中、V
101は単結合、または炭素数1〜4のフッ素化アルキレン基であることが好ましい。
式(b−1)中、R
102は、フッ素原子または炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基であることが好ましく、フッ素原子であることがより好ましい。
【0113】
式(b−1)のアニオン部の具体例として、たとえば、
Y
101が単結合となる場合、トリフルオロメタンスルホネートアニオンやパーフルオロブタンスルホネートアニオン等のフッ素化アルキルスルホネートアニオンが挙げられ;
Y
101が酸素原子を含む2価の連結基である場合、下記式(an−1)〜(an−3)のいずれかで表されるアニオンが挙げられる。
【0114】
【化28】
[式中、R”
101は、置換基を有していてもよい脂肪族環式基、前記式(r−hr−1)〜(r−hr−6)で表される基、または置換基を有していても良い鎖状のアルキル基であり;R”
102は、置換基を有していてもよい脂肪族環式基、前記式(a2−r−1)〜(a2−r−7)で表されるラクトン含有環式基、または上記一般式(a5−r−1)〜(a5−r−4)で表される−SO
2−含有環式基であり;R”
103は、置換基を有していてもよい芳香族環式基、または置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基であり;
v”は、それぞれ独立に0〜3の整数であり、q”はそれぞれ独立に1〜20の整数であり、t”は1〜3の整数でありn”は0または1である。]
【0115】
R”
101、R”
102およびR”
103の置換基を有していてもよい脂肪族環式基は、前記R
101における環状の脂肪族炭化水素基として例示した基であることが好ましい。前記置換基としては、R
101における環状の脂肪族炭化水素基を置換してもよい置換基が同様に挙げられる。
【0116】
R”
103における置換基を有していてもよい芳香族環式基は、前記R
101における環状の芳香族炭化水素基として例示した基であることが好ましい。前記置換基としては、R
101における環状の芳香族炭化水素基を置換してもよい置換基が同様に挙げられる。
【0117】
R”
101における置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基は、前記R
101における鎖状のアルキル基として例示した基であることが好ましい。R”
103における置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基は、前記R
101における鎖状のアルケニル基として例示した基であることが好ましい。
【0118】
式(b−2)において、R
104、R
105は、それぞれ独立に、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数1〜10のフッ素化アルキル基であり、互いに結合して環を形成していてもよい。
R
104、R
105は直鎖状または分岐鎖状の(フッ素化)アルキル基であることが好ましい。該(フッ素化)アルキル基の炭素数は1〜10であり、好ましくは炭素数1〜7、より好ましくは炭素数1〜3である。R
104、R
105の(フッ素化)アルキル基の炭素数は、上記炭素数の範囲内において、レジスト溶媒への溶解性も良好である等の理由により、小さいほど好ましい。
また、R
104、R
105の(フッ素化)アルキル基において、フッ素原子で置換されている水素原子の数が多いほど、酸の強度が強くなり、また200nm以下の高エネルギー光や電子線に対する透明性が向上するので好ましい。
前記(フッ素化)アルキル基中のフッ素原子の割合、すなわちフッ素化率は、好ましくは70〜100%、さらに好ましくは90〜100%であり、最も好ましくは、全ての水素原子がフッ素原子で置換されたパーフルオロアルキレン基またはパーフルオロアルキル基である。
【0119】
{カチオン部}
式(b−1)及び(b−2)において、M’
m+はm価の有機カチオンであり、スルホニウムカチオンまたはヨードニウムカチオンであることが好ましく、特に下記一般式(ca−1)〜(ca−4)で表されるものが好ましい。
【0120】
【化29】
[式中、R
201〜R
207、およびR
211〜R
212は、それぞれ独立に置換基を有していてもよいアリール基、アルキル基またはアルケニル基を表し、R
201〜R
203、R
206〜R
207、R
211〜R
212は、相互に結合して式中のイオウ原子と共に環を形成してもよい。
R
208〜R
209はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表し、R
210は置換基を有していてもよいアリール基、アルキル基、アルケニル基、又は−SO
2−含有環式基であり、L
201は−C(=O)−または−C(=O)O―を表し、Y
201は、それぞれ独立に、アリーレン基、アルキレン基またはアルケニレン基を表し、xは1または2であり、W
201は(x+1)価の連結基を表す。]
【0121】
R
201〜R
207およびR
210〜R
212におけるアリール基としては、炭素数6〜20の無置換のアリール基が挙げられ、フェニル基、ナフチル基が好ましい。
R
201〜R
207およびR
210〜R
212におけるアルキル基としては、鎖状または環状のアルキル基であって、炭素数1〜30のものが好ましい。
R
201〜R
207、およびR
210〜R
212におけるアルケニル基としては、炭素数が2〜10であることが好ましい。
R
208〜R
209としては水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、アルキル基となる場合相互に結合して環を形成してもよい。
R
210における置換基を有していてもよい−SO
2−含有環式基としては、Ra
21の「−SO
2−含有環式基」と同様のものが挙げられ、上記一般式(a5−r−1)で表される基が好ましい。
R
201〜R
207およびR
210〜R
212が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、オキソ基(=O)、シアノ基、アミノ基、アリール基、下記式(ca−r−1)〜(ca−r−7)で表される置換基が挙げられる。
【0122】
【化30】
[式中、R’
201はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい環式基、鎖状のアルキル基、または鎖状のアルケニル基である。]
【0123】
R’
201の置換基を有していてもよい環式基、鎖状のアルキル基、または鎖状のアルケニル基は、上記R
101と同様のものが挙げられる他、置換基を有していてもよい環式基又は、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基として、上記式(a1−r−2)と同様のものも挙げられる。
【0124】
R
201〜R
203、R
206〜R
207、R
211〜R
212は、相互に結合して式中のイオウ原子と共に環を形成する場合、硫黄原子、酸素原子、窒素原子等のヘテロ原子や、カルボニル基、−SO−、−SO
2−、−SO
3−、−COO−、−CONH−または−N(R
N)−(該R
Nは炭素数1〜5のアルキル基である。)等の官能基を介して結合してもよい。
形成される環としては、式中のイオウ原子をその環骨格に含む1つの環が、イオウ原子を含めて、3〜10員環であることが好ましく、5〜7員環であることが特に好ましい。
形成される環の具体例としては、たとえばチオフェン環、チアゾール環、ベンゾチオフェン環、チアントレン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、9H−チオキサンテン環、チオキサントン環、チアントレン環、フェノキサチイン環、テトラヒドロチオフェニウム環、テトラヒドロチオピラニウム環等が挙げられる。
【0125】
前記式(ca−4)において、xは1または2である。
W
201は、(x+1)価、すなわち2価または3価の連結基である。
W
201における2価の連結基としては、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基が好ましく、前記一般式(a2)におけるYa
21と同様の炭化水素基が例示できる。W
201における2価の連結基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、環状であることが好ましい。なかでも、アリーレン基の両端に2個のカルボニル基が組み合わされた基が好ましい。アリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられ、フェニレン基が特に好ましい。
W
201における3価の連結基としては、前記2価の連結基から水素原子を1個除いた基、前記2価の連結基にさらに前記2価の連結基が結合した基、等が挙げられる。W
201における3価の連結基としては、アリーレン基に3個のカルボニル基が組み合わさった基が好ましい。
【0126】
式(ca−1)の好適なカチオンとして具体的には、下記式(ca−1−1)〜(ca−1−58)で表されるカチオンが挙げられる。
【0128】
【化32】
[式中、g1、g2、g3は繰返し数を示し、g1は1〜5の整数であり、g2は0〜20の整数であり、g3は0〜20の整数である。]
【0129】
【化33】
[式中、R”
201は水素原子又は置換基であって、置換基としては前記R
201〜R
207、およびR
210〜R
212が有していてもよい置換基として挙げたものと同様である。]
【0130】
前記式(ca−3)の好適なカチオンとして具体的には、下記式(ca−3−1)〜(ca−3−6)が挙げられる。
【0132】
前記式(ca−4)の好適なカチオンとして具体的には、下記式(ca−4−1)〜(ca−4−2)が挙げられる。
【0134】
(B)成分は、上述した酸発生剤を1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明のレジスト組成物が(B)成分を含有する場合、(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して0.5〜60質量部が好ましく、1〜50質量部がより好ましく、1〜40質量部がさらに好ましい。(B)成分の含有量を上記範囲とすることで、パターン形成が充分に行われる。また、レジスト組成物の各成分を有機溶剤に溶解した際、均一な溶液が得られ、保存安定性が良好となるため好ましい。
【0135】
<任意成分>
[塩基性化合物(D)]
本発明のレジスト組成物は、任意の成分として、塩基性化合物(D)(以下、(D)成分という。)を含有することが好ましい。
本発明において、(D)成分は、酸拡散制御剤、すなわち露光により前記(A)成分や後述する(B)成分(任意に配合される酸発生剤成分)から発生する酸をトラップするクエンチャーとして作用するものである。なお、本発明において「塩基性化合物」とは、前記(A)成分または(B)成分に対して相対的に塩基性となる化合物をいう。
本発明における(D)成分は、カチオン部とアニオン部とからなる塩基性化合物(D1)(以下、「(D1)成分」という。)であることが好ましい。
【0136】
{(D1)成分}
(D1)成分は、カチオン部とアニオン部とからなる塩基性化合物である。かかる塩基性化合物は、前記(A)成分や酸発生剤成分(B)から発生する酸(強酸)を塩交換によりトラップする。
(D1)成分としてより具体的には、下記一般式(d2)で表される化合物等が挙げられる。
【0137】
【化36】
[式中、Rd
2は置換基を有していてもよい炭化水素基であり、ただし、式(d2)において、S原子に隣接する炭素原子にはフッ素原子は結合していないものとする。M
m+はそれぞれ独立にm価の有機カチオンである。]
【0138】
((d2)成分)
・アニオン部
式(d2)中、Rd
2は置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基である。
Rd
2の置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であっても芳香族炭化水素基であってもよく、前記(B)成分中のR
101の置換基を有していていもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、アルケニル基と同様のものが挙げられる。
なかでもRd
2の置換基を有していてもよい炭化水素基としては、置換基を有していてもよい脂肪族環式基であることが好ましく、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン、カンファー等から1個以上の水素原子を除いた基(置換基を有していてもよい)であることがより好ましい。
Rd
2の炭化水素基は置換基を有していてもよく、置換基としては、(B)成分中のR
101と同様のものが挙げられる。ただし、Rd
2において、SO
3−におけるS原子に隣接する炭素は、フッ素置換されていないものとする。SO
3−とフッ素原子とが隣接しないことにより、当該(d2)成分のアニオンが適度な弱酸アニオンとなり、(d2)成分のクエンチング能が向上する。
以下に(d2)成分のアニオン部の好ましい具体例を示す。
【0140】
・カチオン部
式(d2)中、M
m+は、m価の有機カチオンであり、上記(B)成分におけるカチオンと同様である。中でも、スルホニウムカチオンまたはヨードニウムカチオンであることが好ましく、前記式(ca−1−1)〜(ca−1−57)で表されるカチオン部が好ましい。
(d2)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0141】
<任意成分>
[(E)成分]
本発明のレジスト組成物には、感度劣化の防止や、レジストパターン形状、引き置き経時安定性等の向上の目的で、任意の成分として、有機カルボン酸、ならびにリンのオキソ酸およびその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の化合物(E)(以下、(E)成分という。)を含有させることができる。
有機カルボン酸としては、例えば、酢酸、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸などが好適である。
リンのオキソ酸としては、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸等が挙げられ、これらの中でも特にホスホン酸が好ましい。
リンのオキソ酸の誘導体としては、たとえば、上記オキソ酸の水素原子を炭化水素基で置換したエステル等が挙げられ、前記炭化水素基としては、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基等が挙げられる。
リン酸の誘導体としては、リン酸ジ−n−ブチルエステル、リン酸ジフェニルエステル等のリン酸エステルなどが挙げられる。
ホスホン酸の誘導体としては、ホスホン酸ジメチルエステル、ホスホン酸−ジ−n−ブチルエステル、フェニルホスホン酸、ホスホン酸ジフェニルエステル、ホスホン酸ジベンジルエステル等のホスホン酸エステルなどが挙げられる。
ホスフィン酸の誘導体としては、ホスフィン酸エステルやフェニルホスフィン酸などが挙げられる。
(E)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(E)成分は、(A)成分100質量部に対して、通常、0.01〜5.0質量部の範囲で用いられる。
【0142】
[(F)成分]
本発明のレジスト組成物は、レジスト膜に撥水性を付与するため、フッ素原子を含む構成単位(f)(以下、「構成単位(f)」という。)を有する含フッ素樹脂成分(F)(以下、「樹脂成分(F)」という。)を含有することが好ましい。樹脂成分(F)としては、例えば、特開2010−002870号公報、特開2010−032994号公報、特開2010−277043号公報、特開2011−13569号公報、特開2011−128226号公報に記載の含フッ素高分子化合物を用いることができる。
【0143】
構成単位(f)は、下記一般式(f−1)で表される構成単位であることが好ましい。
【0144】
【化38】
[式中、Rは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基である。Lf
1はO又はNHである。Yf
01は単結合又は2価の連結基であり、Rf
10は有機基であり、Yf
01又はRf
10の少なくとも一方はフッ素原子を有する。vは0又は1である。]
【0145】
式(f−1)中、Rは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基である。Rの炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基としては、上述したα位の炭素原子に結合する置換基としての炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基とそれぞれ同様である。なかでも、Rとしては、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0146】
式(f−1)中、Lf
1はO(酸素原子)又はNHであり、O(酸素原子)であることが好ましい。
式(f−1)中、vは0又は1である。vが0であるとは、式中の−C(=O)−Lf
1−が単結合となることを意味する。
【0147】
式(f−1)中、Yf
01は、単結合又は2価の連結基である。
Yf
01の2価の連結基としては、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基、ヘテロ原子を含む2価の連結基等が好適なものとして挙げられる。但し、Yf
01の2価の連結基は、その構造中に酸分解性基を有しない。該酸分解性基としては、前述した構成単位(a1)における「酸の作用により極性が増大する酸分解性基」と同じものが挙げられる。
【0148】
(置換基を有していてもよい2価の炭化水素基)
2価の連結基としての炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族基であってもよい。
脂肪族炭化水素基は、芳香族性を持たない炭化水素基を意味する。該脂肪族炭化水素基は、飽和であってもよく、不飽和であってもよく、通常は飽和であることが好ましい。
該脂肪族炭化水素基として、より具体的には、直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、構造中に環を含む脂肪族炭化水素基等が挙げられる。
【0149】
前記直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素数が1〜10であることが好ましく、1〜8がより好ましく、1〜5がさらに好ましい。
直鎖状の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基[−CH
2−]、エチレン基[−(CH
2)
2−]、トリメチレン基[−(CH
2)
3−]、テトラメチレン基[−(CH
2)
4−]、ペンタメチレン基[−(CH
2)
5−]等が挙げられる。
分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、−CH(CH
3)−、−CH(CH
2CH
3)−、−C(CH
3)
2−、−C(CH
3)(CH
2CH
3)−、−C(CH
3)(CH
2CH
2CH
3)−、−C(CH
2CH
3)
2−等のアルキルメチレン基;−CH(CH
3)CH
2−、−CH(CH
3)CH(CH
3)−、−C(CH
3)
2CH
2−、−CH(CH
2CH
3)CH
2−、−C(CH
2CH
3)
2−CH
2−等のアルキルエチレン基;−CH(CH
3)CH
2CH
2−、−CH
2CH(CH
3)CH
2−等のアルキルトリメチレン基;−CH(CH
3)CH
2CH
2CH
2−、−CH
2CH(CH
3)CH
2CH
2−等のアルキルテトラメチレン基などのアルキルアルキレン基等が挙げられる。アルキルアルキレン基におけるアルキル基としては、炭素数1〜5の直鎖状のアルキル基が好ましい。
前記直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、水素原子を置換する置換基(水素原子以外の基または原子)を有していてもよく、有していなくてもよい。該置換基としては、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素数1〜5のフッ素化アルキル基、オキソ基(=O)等が挙げられる。
【0150】
前記構造中に環を含む脂肪族炭化水素基としては、環構造中にヘテロ原子を含む置換基を含んでもよい環状の脂肪族炭化水素基(脂肪族炭化水素環から水素原子を2個除いた基)、前記環状の脂肪族炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合した基、前記環状の脂肪族炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基などが挙げられる。前記直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては前記と同様のものが挙げられる。
環状の脂肪族炭化水素基は、炭素数が3〜20であることが好ましく、3〜12であることがより好ましい。
環状の脂肪族炭化水素基は、多環式であってもよく、単環式であってもよい。単環式の脂肪族炭化水素基としては、モノシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては炭素数3〜6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。多環式の脂肪族炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては炭素数7〜12のものが好ましく、具体的にはアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
環状の脂肪族炭化水素基は、水素原子を置換する置換基(水素原子以外の基または原子)を有していてもよいし、有していなくてもよい。該置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、オキソ基(=O)等が挙げられる。
前記置換基としてのアルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基であることが最も好ましい。
前記置換基としてのアルコキシ基としては、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基が最も好ましい。
前記置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
前記置換基としてのハロゲン化アルキル基としては、前記アルキル基の水素原子の一部または全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
環状の脂肪族炭化水素基は、その環構造を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子を含む置換基で置換されてもよい。該ヘテロ原子を含む置換基としては、−O−、−C(=O)−O−、−S−、−S(=O)
2−、−S(=O)
2−O−が好ましい。
【0151】
2価の炭化水素基としての芳香族基は、芳香環を少なくとも1つ有する2価の炭化水素基であり、置換基を有していてもよい。
芳香環は、4n+2個のπ電子をもつ環状共役系であれば特に限定されず、単環式でも多環式でもよい。芳香環の炭素数は5〜30であることが好ましく、5〜20がより好ましく、6〜15がさらに好ましく、6〜12が特に好ましい。ただし、該炭素数には、置換基における炭素数を含まないものとする。芳香環として具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環;等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。芳香族複素環として具体的には、ピリジン環、チオフェン環等が挙げられる。
2価の炭化水素基としての芳香族基として具体的には、前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環から水素原子を2つ除いた基(アリーレン基またはヘテロアリーレン基);2以上の芳香環を含む芳香族化合物(たとえばビフェニル、フルオレン等)から水素原子を2つ除いた基;前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環から水素原子を1つ除いた基(アリール基またはヘテロアリール基)の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(たとえば、ベンジル基、フェネチル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基、1−ナフチルエチル基、2−ナフチルエチル基等のアリールアルキル基におけるアリール基から水素原子をさらに1つ除いた基);等が挙げられる。前記アリール基またはヘテロアリール基に結合するアルキレン基の炭素数は、1〜4であることが好ましく、1〜2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
前記芳香族基は、置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。たとえば当該芳香族基が有する芳香環に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよい。該置換基としては、たとえば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、オキソ基(=O)等が挙げられる。
前記置換基としてのアルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基であることが最も好ましい。
前記置換基としてのアルコキシ基としては、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基が最も好ましい。
前記置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
前記置換基としてのハロゲン化アルキル基としては、前記アルキル基の水素原子の一部または全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
【0152】
(ヘテロ原子を含む2価の連結基)
ヘテロ原子を含む2価の連結基におけるヘテロ原子とは、炭素原子および水素原子以外の原子であり、たとえば酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン原子、ケイ素原子等が挙げられる。
ヘテロ原子を含む2価の連結基として、具体的には、−O−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−S−、−S(=O)
2−、−S(=O)
2−O−、−NH−、−NH−C(=O)−、−NH−C(=NH)−、=N−、−SiH
2−O−等の非炭化水素系連結基、これらの非炭化水素系連結基の少なくとも1種と2価の炭化水素基との組み合わせ等が挙げられる。該2価の炭化水素基としては、上述した置換基を有していてもよい2価の炭化水素基と同様のものが挙げられ、直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましい。
上記のうち、−C(=O)−NH−中の−NH−、−NH−、−NH−C(=NH)−、−SiH
2−O−中のHは、それぞれ、アルキル基、アシル基等の置換基で置換されていてもよい。該置換基の炭素数としては1〜10であることが好ましく、炭素数1〜8であることがさらに好ましく、炭素数1〜5であることが特に好ましい。
また、非炭化水素系連結基と2価の炭化水素基との組み合わせである2価の連結基としては、たとえば、−Y
21−O−Y
22−、−[Y
21−C(=O)−O]
m’−Y
22−、−Y
21−O−C(=O)−Y
22−(ただし、Y
21およびY
22はそれぞれ独立して置換基を有していてもよい2価の炭化水素基であり、Oは酸素原子であり、m’は0〜3の整数である。)、−C(=O)−NH−Y
22−、−[Y
23−O]
n’−(ただし、Y
23はアルキレン基であり、Oは酸素原子であり、n’は1以上の整数である。)等が挙げられる。
上記−Y
21−O−Y
22−、−[Y
21−C(=O)−O]
m’−Y
22−または−Y
21−O−C(=O)−Y
22−において、Y
21およびY
22は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基である。該2価の炭化水素基としては、前記「置換基を有していてもよい2価の炭化水素基」として挙げたものと同様のものが挙げられる。
Y
21としては、直鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましく、直鎖状のアルキレン基がより好ましく、炭素数1〜5の直鎖状のアルキレン基がさらに好ましく、メチレン基またはエチレン基が特に好ましい。
Y
22としては、直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましく、メチレン基、エチレン基またはアルキルメチレン基がより好ましい。該アルキルメチレン基におけるアルキル基は、炭素数1〜5の直鎖状のアルキル基が好ましく、炭素数1〜3の直鎖状のアルキル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。
−[Y
21−C(=O)−O]
m’−Y
22−において、m’は0〜3の整数であり、0〜2の整数であることが好ましく、0または1がより好ましく、1が特に好ましい。つまり、−[Y
21−C(=O)−O]
m’−Y
22−としては、−Y
21−C(=O)−O−Y
22−が特に好ましい。なかでも、−(CH
2)
a’−C(=O)−O−(CH
2)
b’−が好ましい。該式中、a’は、1〜10の整数であり、1〜8の整数が好ましく、1〜5の整数がより好ましく、1または2がさらに好ましく、1が最も好ましい。b’は、1〜10の整数であり、1〜8の整数が好ましく、1〜5の整数がより好ましく、1または2がさらに好ましく、1が最も好ましい。
上記−[Y
23−O]
n’−におけるY
23のアルキレン基は、炭素数1〜4のアルキレン基が好ましい。
【0153】
上記のなかでも、Yf
01としては、単結合、またはヘテロ原子を含む2価の連結基が好ましく、単結合、前記式−Y
21−O−Y
22−で表される基、前記式−[Y
21−C(=O)−O]
m’−Y
22−で表される基、前記式−C(=O)−O−Y
22−で表される基または前記式−Y
21−O−C(=O)−Y
22−で表される基がより好ましく、単結合、前記式−C(=O)−O−Y
22−で表される基が特に好ましい。
【0154】
Yf
01としては、単結合、又はヘテロ原子を含む2価の連結基が好ましく、単結合、−C(=O)−O−を含む2価の連結基、又は−O−を含む2価の連結基であることがより好ましい。
vが0の場合、Yf
01の2価の連結基としては、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基と−O−C(=O)−を含む2価の連結基との組合せ、置換基を有していてもよい2価の脂環式基、置換基を有していてもよい2価の脂環式基と−O−を含む2価の連結基との組合せが好ましい。
より具体的には、置換基を有していてもよいフェニル基又はナフチル基からさらに水素原子を1つ除いた基、置換基を有していてもよいフェニル基又はナフチル基からさらに水素原子を1つ除いた基と−O−C(=O)−との組合せ、置換基を有していてもよいフェニル基又はナフチル基からさらに水素原子を1つ除いた基と−O−C(=O)−と直鎖状のアルキレン基との組合せ、置換基を有していてもよいシクロアルカンから水素原子を2つ除いた基、置換基を有していてもよいシクロアルカンから水素原子を2つ除いた基と−O−との組合せが特に好ましい。
また、vが1の場合、Yf
01の2価の連結基としては、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基と、−C(=O)−O−を含む2価の連結基との組合せ、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基と−O−を含む2価の連結基との組合せ、置換基を有していてもよい2価の鎖状炭化水素基と−O−C(=O)−を含む2価の連結基との組合せが好ましく;置換基を有していてもよい2価の鎖状炭化水素基又は芳香族炭化水素基と−C(=O)−O−との組合せ、置換基を有していてもよい2価の鎖状炭化水素基又は芳香族炭化水素基と−O−C(=O)−との組合せ、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基と−O−と置換基を有していてもよい2価の鎖状炭化水素基との組合せ、置換基を有していてもよい2価の鎖状炭化水素基と−O−C(=O)−と置換基を有していてもよい2価の鎖状炭化水素基との組合せがより好ましい。
Yf
01が2価の連結基である場合、Yf
01はフッ素原子を有していてもよく、有していなくてもよい。Yf
01が単結合の場合、又は、Yf
01の2価の連結基がフッ素原子を有しない場合は、後述するRf
10の有機基がフッ素原子を有するものとする。
【0155】
式(f−1)中、Rf
10は有機基である。
Rf
10の有機基は、フッ素原子を有する有機基であっても、フッ素原子を有しない有機基であってもよいが、上記Yf
01が単結合の場合、又はYf
01の2価の連結基がフッ素原子を有しない場合は、Rf
10の有機基がフッ素原子を有する。
ここで、「フッ素原子を有する有機基」とは、有機基における水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換された基をいう。
Rf
10の有機基としては、たとえば、フッ素原子を有していてもよい炭化水素基が好ましく挙げられる。該フッ素原子を有していてもよい炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。
【0156】
Rf
10の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基が挙げられる。
直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基は、炭素数1〜15であることが好ましく、炭素数1〜10であることがより好ましく、炭素数1〜8であることがさらに好ましく、炭素数1〜5であることが最も好ましい。
環状のアルキル基(脂環式基)は、炭素数4〜15であることが好ましく、炭素数4〜10であることがより好ましく、炭素数6〜10であることがさらに好ましく、炭素数5〜7であることが最も好ましい。
【0157】
Rf
10の芳香族炭化水素基は、炭素数5〜30であることが好ましく、炭素数5〜20がより好ましく、6〜15がさらに好ましく、6〜12が最も好ましく、フェニル基又はナフチル基が特に好ましい。
【0158】
これらのアルキル基や芳香族炭化水素基は、フッ素原子で置換されていることが好ましく、アルキル基や芳香族炭化水素基における水素原子の25%以上がフッ素原子で置換されていることが好ましく、50%以上がフッ素原子で置換されていることがより好ましく、全ての水素原子がフッ素原子で置換されたものであってもよい。
また、これらのアルキル基や芳香族炭化水素基は、フッ素原子以外の置換基で置換されていてもよい。フッ素原子以外の置換基としては、水酸基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のフッ素化アルコキシ基等が挙げられる。また、環状のアルキル基や芳香族炭化水素基は、炭素数1〜5のアルキル基で置換されていてもよい。炭素数1〜5のアルキル基としては、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、上述したα位の置換基としての炭素数1〜5のアルキル基と同様である。
【0159】
前記一般式(f−1)で表される構成単位(f)のうち、フッ素原子を有するものの好ましい具体例としては、下記一般式(f−1−1)〜(f−1−5)でそれぞれ表される構成単位が挙げられる。
【0160】
【化39】
[式中、Rは前記同様であり、Rf
11、Rf
12及びRf
13はフッ素原子を有する有機基であり、Yf
01、Lf
1は前記同様であり、Yf
02〜Yf
03は2価の連結基であり、Rf
14、Rf
15はフッ素原子を有していてもよい有機基である。Yf
02又はRf
14の少なくとも一方、及び、Yf
03又はRf
15の少なくとも一方はフッ素原子を有する。]
【0161】
式(f−1−1)中、Rf
11はフッ素原子を有する有機基であって、フッ素原子を有する芳香族炭化水素基、フッ素原子及び水酸基で置換されたアルキル基とフッ素原子を有していてもよい芳香族炭化水素基との組合せ、フッ素原子及び炭素数1〜5のフッ素化アルコキシ基で置換されたアルキル基と芳香族炭化水素基との組合せであることが好ましい。
フッ素原子を有する芳香族炭化水素基としては、上記Rf
10の芳香族炭化水素基の一部又は全部の水素原子がフッ素原子で置換されたものが挙げられる。
【0162】
式(f−1−2)中、Yf
01は単結合又は2価の連結基であって、上記Yf
01と同じである。
Rf
12はフッ素原子を有する有機基であって、フッ素原子及び水酸基で置換された鎖状のアルキル基、フッ素原子及び水酸基で置換されたアルキル基と環状のアルキル基との組合せが好ましい。
鎖状のアルキル基、環状のアルキル基としては、上記Rf
10の脂肪族炭化水素基(直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基)と同様のものが挙げられる。
【0163】
式(f−1−3)中、Lf
1は前記同様である。
Rf
13はフッ素原子を有する有機基であって、フッ素原子を有する鎖状のアルキル基、フッ素原子を有する環状のアルキル基、フッ素原子を有する芳香族炭化水素基、フッ素原子及び水酸基で置換された鎖状のアルキル基、フッ素原子及び水酸基で置換された芳香族炭化水素基、又はフッ素原子及び水酸基で置換されたアルキル基と環状のアルキル基との組合せが好ましい。
フッ素原子を有する環状のアルキル基、芳香族炭化水素基としては、上記Rf
10の環状のアルキル基、芳香族炭化水素基の一部又は全部の水素原子がフッ素原子で置換されたものが挙げられる。
【0164】
式(f−1−4)中、Yf
02は2価の連結基であって、上記Yf
01の2価の連結基と同様のものが挙げられる。
なかでもYf
02としては、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基が好ましく、置換基を有していてもよいフェニル基又はナフチル基からさらに水素原子を1つ除いた基が特に好ましい。
置換基としては、フッ素原子、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましい。Yf
02がフッ素原子を有しない場合、Rf
14がフッ素原子を有する。
式(f−1−4)中、Rf
14はフッ素原子を有していてもよい有機基であって、上記Rf
10の有機基と同様のものが挙げられる。Rf
14としては、フッ素原子を有していてもよい直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、その炭素数は1〜5であることが好ましい。
【0165】
式(f−1−5)中、Lf
1は前記同様である。
Yf
03は2価の連結基であって、上記Yf
01の2価の連結基と同様のものが挙げられる。
なかでもYf
03としては、置換基を有していてもよい2価の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−C(=O)−O−、−O−C(=O)−)又はこれらの組合せが好ましい。
置換基としては、フッ素原子、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましい。
Yf
03における2価の脂肪族炭化水素基、2価の芳香族炭化水素基は、それぞれ、該炭化水素基を構成する炭素原子が酸素原子、窒素原子で置換されていてもよい。
Yf
03がフッ素原子を有しない場合、Rf
15がフッ素原子を有する。
式(f−1−5)中、Rf
15はフッ素原子を有していてもよい有機基であって、上記Rf
14と同様である
【0166】
以下に、式(f−1−1)〜(f−1−5)でそれぞれ表される構成単位の具体例を示す。式中、R
βは水素原子又はメチル基である。
【0176】
フッ素原子を有する構成単位(f)としては、前記式(f−1−1)〜(f−1−5)のいずれかで表される構成単位からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
なかでも、レジスト膜表面の撥水化の効果がより高いことから、前記式(f−1−3)又は(f−1−5)で表される構成単位がより好ましい。
【0177】
本発明において、樹脂成分(F)は、フッ素原子を含有しかつ塩基分解性基を有する構成単位(f1)(以下、「構成単位(f1)」という。)を有していてもよい。
構成単位(f1)における塩基分解性基は、例えば下記式(f1−r−1)〜(f1−r−4)で表される基が挙げられる。
【0178】
【化49】
[式中、Rf’
1はそれぞれ独立してフッ素原子を有していてもよい有機基である。]
【0179】
前記式(f1−r−1)〜(f1−r−4)中、Rf’
1は前記Rf
14またはRf
15におけるフッ素原子を有していてもよい有機基と同様である。
【0180】
構成単位(f1)は、フッ素原子を有しかつ塩基分解性基を有していれば特に限定されず、例えば前記構成単位(f)において前期式(f1−r−1)〜(f1−r−4)で表されるいずれかの基を有する構成単位等が挙げられる。中でも下記一般式(f1−1)または(f1−2)で表される構成単位であることが好ましい。
【0181】
【化50】
[式中、Rは前記同様であり、Rf
102およびRf
103はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基を表し、Rf
102およびRf
103は同じであっても異なっていてもよい。nf
1は1〜5の整数であり、Rf
104およびRf
105はそれぞれ独立してフッ素原子又は炭素数1〜5のフッ素化アルキル基を表し、Rf
104およびRf
105は同じであっても異なっていてもよい。
Rf
100はフッ素原子有する有機基であり、Rf
101はフッ素原子を有していてもよい有機基である。]
【0182】
式中、Rは前記同様である。Rとしては、水素原子またはメチル基が好ましい。
式中、Rf
102およびRf
103のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。Rf
102およびRf
103の炭素数1〜5のアルキル基としては、上記Rの炭素数1〜5のアルキル基と同様のものが挙げられ、メチル基またはエチル基が好ましい。Rf
102およびRf
103の炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基として、具体的には、上記炭素数1〜5のアルキル基の水素原子の一部または全部が、ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。なかでもRf
102およびRf
103としては、水素原子、フッ素原子、又は炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、水素原子、フッ素原子、メチル基、またはエチル基が好ましく水素原子がより好ましい。
式(f1−2)中、Rf
104およびRf
105としては、フッ素原子又はトリフルオロメチル基が好ましい。
式中、nf
1は1〜5の整数であって、1〜3の整数が好ましく、1又は2であることがより好ましい。
【0183】
式(f1−1)中、Rf
100は前記フッ素原子有する有機基と同様であり、フッ素原子を含む炭化水素基が好ましく、直鎖状、分岐鎖状または環状のいずれであってもよく、炭素数は1〜20であることが好ましく、炭素数1〜15であることがより好ましく、炭素数1〜10が特に好ましい。
また、フッ素原子を含む炭化水素基は、当該炭化水素基における水素原子の25%以上がフッ素化されていることが好ましく、50%以上がフッ素化されていることがより好ましく、60%以上がフッ素化されていることが、浸漬露光時のレジスト膜の疎水性が高まることから、特に好ましい。
なかでも、Rf
100としては、炭素数1〜6のフッ素化炭化水素基が特に好ましく、−CH
2−CF
3、−CH
2−CF
2−CF
3、−CH(CF
3)
2、−CH
2−CH
2−CF
3、−CH
2−CH
2−CF
2−CF
3、−CH
2−CH
2−CF
2−CF
2−CF
3、−CH
2−CH
2−CF
2−CF
2−CF
2−CF
3が最も好ましい。
【0184】
前記式(f1−2)中、Rf
101は、前記フッ素原子有していてもよい有機基と同様であり、Rf
100と同様のものが好適に挙げられる他、メチル基、−CH
2−CH
2−C
8F
17、−CH
2−CH
2−CH
2−CF
3、−CH
2−CH
2−CH
2−C
2F
5、−CH
2−CH
2−CH
2−CH
2−CF
3、が挙げられる。
【0185】
樹脂成分(F)は、前記構成単位(a1)を有していてもよい。
樹脂成分(F)としてより具体的には、上記式(f−1−1)〜(f−1−5)で表される構成単位(f)を有する重合体、より好適には上記式(f1−1)又は(f1−2)で表される構成単位(f1)を有する重合体が挙げられる。かかる重合体としては、構成単位(f)又は(f1)のみからなる重合体(ホモポリマー);上記式(f−1−1)〜(f−1−5)で表される構成単位(f)及び上記式(f1−1)又は(f1−2)で表される構成単位(f1)のいずれかの構成単位と、前記構成単位(a1)との共重合体;上記式(f−1−1)〜(f−1−5)で表される構成単位(f)及び上記式(f1−1)又は(f1−2)で表される構成単位(f1)のいずれかの構成単位と、前記構成単位(a1)と、前記構成単位(a2)とを含む共重合体が好ましい。
【0186】
本発明において、樹脂成分(F)は、塩基分解性基を主鎖に含む高分子化合物(F1)(以下「高分子化合物(F1)」という。)を有していてもよい。高分子化合物(F1)が主鎖に含む塩基分解性基としては、塩基により分解して、ポリマーをアルカリ現像液に可溶性にする基であれば特に限定されないが、より具体的には、上述の塩基分解性基又は上記一般式(I)で表される塩基分解性基であることが好ましく、上記一般式(I)で表される塩基分解性基主鎖に含むことが特に好ましい。
【0187】
レジスト組成物がフッ素原子含有ポリマーを有する場合、レジスト組成物の分子量が小さいと、フッ素が表層へ偏析しにくくなるため、添加量を増やす必要がある。フッ素原子含有ポリマーの添加量を増加させると、リソグラフィー特性の悪化を招くという問題点がある。レジスト組成物がフッ素添加剤を含有する場合、フッ素添加剤を含有するレジスト組成物、又はフッ素添加剤が塩基分解性基を主鎖に含む高分子化合物を有することにより、アルカリ現像前はフッ素添加剤をレジスト膜表面に偏析させることができ、アルカリ現像時には主鎖が分解するため、現像液に対する溶解性を向上させることができると考えられる。
【0188】
本発明のレジスト組成物は、前記基材成分(A)と、前記構成単位(f)を有する樹脂成分(F)とを含有し、さらに該樹脂成分(F)が、前記高分子化合物(F1)を含有していることが好ましい。この場合、さらに塩基分解性基を主鎖に含む高分子化合物を含有することが好ましく、特に前記一般式(I)で表される塩基分解性基を主鎖に含む高分子化合物を含有することが好ましい。
【0189】
前記高分子化合物(F1)は、前記構成単位(f1)を有していてもよく、前記構成単位(a1)を有していてもよい。
【0190】
樹脂成分(F)の質量平均分子量(Mw)(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算基準)は、1000〜100000が好ましく、5000〜80000がより好ましく、10000〜60000が最も好ましい。この範囲の上限値以下であると、レジストとして用いるのに充分なレジスト溶剤への溶解性があり、この範囲の下限値以上であると、耐ドライエッチング性やレジストパターン断面形状が良好である。
樹脂成分(F)の分散度(Mw/Mn)は、1.0〜5.0が好ましく、1.0〜4.0がより好ましく、1.2〜3.0が最も好ましい。
【0191】
樹脂成分(F)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
樹脂成分(F)は、(A)成分100質量部に対して、0.5〜20質量部の割合で用いられ、1〜10質量部が好ましく、1.5〜5質量部がより好ましい。
【0192】
本発明のレジスト組成物は、塩基分解性基を主鎖に含む高分子化合物を含有するが、基材成分(A)が当該高分子化合物を含有する場合、(A)成分全体に対する割合は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが好ましい。上限は特に限定されないが100質量%であることが好ましい。上記範囲とすることで、リソグラフィー特性がより向上すると考えられる。
本発明のレジスト組成物において、含フッ素樹脂成分(F)が塩基分解性基を主鎖に含む高分子化合物(F1)を含有する場合、(F)成分全体に対する(F1)の割合は、1〜100質量%であることが好ましく、10〜100質量%であることがより好ましい。
上記範囲とすることで、リソグラフィー特性とディフェクト低減の特性が向上すると考えられる。
本発明のレジスト組成物において、基材成分(A)が塩基分解性基を主鎖に含む高分子化合物を含有し、かつ(F)成分が高分子化合物(F1)を含有する場合、各成分における当該高分子化合物の割合は、それぞれ上記と同様であり、上記範囲内とすることでリソグラフィー特性とディフェクト低減の特性が向上すると考えられる。
【0193】
本発明のレジスト組成物には、さらに所望により混和性のある添加剤、例えばレジスト膜の性能を改良するための付加的樹脂、溶解抑制剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤、染料などを適宜、添加含有させることができる。
【0194】
[(S)成分]
本発明のレジスト組成物は、材料を有機溶剤(以下、(S)成分ということがある)に溶解させて製造することができる。
(S)成分としては、使用する各成分を溶解し、均一な溶液とすることができるものであればよく、従来、化学増幅型レジストの溶剤として公知のものの中から任意のものを1種または2種以上適宜選択して用いることができる。
たとえば、γ−ブチロラクトン等のラクトン類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、メチル−n−ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2−ヘプタノンなどのケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどの多価アルコール類;エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、またはジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物、前記多価アルコール類または前記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテルまたはモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体[これらの中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)が好ましい];ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類;アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン等の芳香族系有機溶剤、ジメチルスルホキシド(DMSO)などを挙げることができる。
これらの有機溶剤は単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。
なかでも、PGMEA、PGME、γ−ブチロラクトン、ELが好ましい。
また、PGMEAと極性溶剤とを混合した混合溶媒も好ましい。その配合比(質量比)は、PGMEAと極性溶剤との相溶性等を考慮して適宜決定すればよいが、好ましくは1:9〜9:1、より好ましくは2:8〜8:2の範囲内とすることが好ましい。
より具体的には、極性溶剤としてEL又はシクロヘキサノンを配合する場合は、PGMEA:EL又はシクロヘキサノンの質量比は、好ましくは1:9〜9:1、より好ましくは2:8〜8:2である。また、極性溶剤としてPGMEを配合する場合は、PGMEA:PGMEの質量比は、好ましくは1:9〜9:1、より好ましくは2:8〜8:2、さらに好ましくは3:7〜7:3である。
また、(S)成分として、その他には、PGMEA及びELの中から選ばれる少なくとも1種とγ−ブチロラクトンとの混合溶剤も好ましい。この場合、混合割合としては、前者と後者の質量比が好ましくは70:30〜95:5とされる。
(S)成分の使用量は特に限定されず、基板等に塗布可能な濃度で、塗布膜厚に応じて適宜設定される。一般的にはレジスト組成物の固形分濃度が1〜20質量%、好ましくは2〜15質量%の範囲内となるように用いられる。
【0195】
≪高分子化合物≫
本発明の高分子化物は、下記一般式(I)で表される塩基分解性基を主鎖に含むことが好ましい。下記一般式(I)に関する説明は、上記と同様である。また、本発明の高分子化合物は、下記一般式(I)で表される塩基分解性基と、酸の作用により極性が増大する酸解離性基を含む構成単位(a1)を有していてもよい。構成単位(a1)についての説明は、前記同様である。さらに、本発明の高分子化合物は、下記一般式(I)で表される塩基分解性基と、フッ素原子を含む構成単位(f)を有していてもよい。構成単位(f)の説明は、前記同様である。
【0196】
【化51】
[式中、V
1は置換基を有していてもよいフッ素化アルキレン基であり、V
2はそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキレン基である。]
【0197】
≪高分子化合物の製造方法≫
本発明の高分子化合物の製造方法は、一末端にのみカルボキシ基を有する下記一般式(II)で表される高分子化合物と下記一般式(III)で表されるジオールとを反応させて、下記一般式(IV)で表される高分子化合物を製造する方法である。
なおPolyはポリマーを意味するが、重合開始剤等によりポリマーを重合した場合には、末端のカルボキシ基を除いた重合開始剤等の残基までの構造を含むものとする。
【0198】
【化52】
[式中、V
1は置換基を有していてもよいフッ素化アルキレン基であり、V
2はそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキレン基である。]
【0199】
前記一般式(III)、(IV)中のV
1の置換基を有していてもよいフッ素化アルキレン基は、前記一般式(I)中のV
1の置換基を有していてもよいフッ素化アルキレン基と同様である。また、前記一般式(III)、(IV)中のV
2も前記一般式(I)中のV
2と同様である。
【0200】
一末端にのみカルボキシ基を有する上記一般式(II)のPoly−COOHで表される高分子化合物は特に限定されず、(A)成分で挙げた各構成単位や(F)成分で挙げた各構成単位を組み合わせた高分子化合物が挙げられる。中でも、構成単位(f)又は(f1)のみからなる重合体(ホモポリマー);上記式(f−1−1)〜(f−1−5)で表される構成単位(f)及び上記式(f1−1)又は(f1−2)で表される構成単位(f1)のいずれかの構成単位と、前記構成単位(a1)との共重合体;上記式(f−1−1)〜(f−1−5)で表される構成単位(f)及び上記式(f1−1)又は(f1−2)で表される構成単位(f1)のいずれかの構成単位と、前記構成単位(a1)と、前記構成単位(a2)とを含む共重合体; 構成単位(f)及び(f1)のいずれかの構成単位と前記一般式(a1−1)で表させる構成単位との共重合体:構成単位(f)及び(f1)のいずれかの構成単位と前記一般式(a1−2)で表させる構成単位との共重合体:前記構成単位(a1)と、前記構成単位(a2)との共重合体:前記構成単位(a1)と、前記構成単位(a2)と、前記構成単位(a3)との共重合体:前記構成単位(a1)と、前記構成単位(a5)と、前記構成単位(a3)との共重合体:前記構成単位(a1)と、前記構成単位(a2)と、前記構成単位(a3)と、前記構成単位(a5)との共重合体:前記構成単位(a1)と、前記構成単位(a2)と、前記構成単位(a3)と、前記構成単位(a4)との共重合体:の一末端にカルボキシ基を有する高分子化合物が好ましい。これら、一末端にのみカルボキシ基を有する高分子化合物は、4,4−ジメチルアミノピリジン等の求核剤や、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩等の脱水縮合剤等の、一末端にのみカルボキシ基を生成する重合開始剤を用いて、容易に重合することができる。
上記一般式(II)と上記一般式(III)で表されるジオール等の多価アルコール化合物を反応させることにより、上記一般式(II)で表される高分子化合物の約2倍(以上)の分子量をもつ上記一般式(IV)で表される高分子化合物を得ることができる。
【0201】
≪レジストパターン形成方法≫
本発明のレジストパターン形成方法は、より具体的には、たとえば以下の様にして行うことができる。
まず支持体上に、前記レジスト組成物をスピンナーなどで塗布し、ベーク(ポストアプライベーク(PAB))処理を、たとえば80〜150℃の温度条件にて40〜120秒間、好ましくは60〜90秒間施してレジスト膜を形成する。次に、該レジスト膜に対し、例えばArF露光装置、電子線描画装置、EUV露光装置等の露光装置を用いて、所定のパターンが形成されたマスク(マスクパターン)を介した露光、またはマスクパターンを介さない電子線の直接照射による描画等による選択的露光を行った後、ベーク(ポストエクスポージャーベーク(PEB))処理を、たとえば80〜150℃の温度条件にて40〜120秒間、好ましくは60〜90秒間施す。該レジスト膜を、有機系現像液を用いて現像処理した後、好ましくは有機溶剤を含有するリンス液を用いてリンス処理し、乾燥を行う。
前記現像処理またはリンス処理の後に、パターン上に付着している現像液またはリンス液を超臨界流体により除去する処理を行ってもよい。
また、場合によっては、現像処理、リンス処理または超臨界流体による処理の後、残存する有機溶剤を除去するために、ベーク(ポストベーク)処理を行ってもよい。
【0202】
支持体としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができ、例えば、電子部品用の基板や、これに所定の配線パターンが形成されたもの等を例示することができる。より具体的には、シリコンウェーハ、銅、クロム、鉄、アルミニウム等の金属製の基板や、ガラス基板等が挙げられる。配線パターンの材料としては、例えば銅、アルミニウム、ニッケル、金等が使用可能である。
また、支持体としては、上述のような基板上に、無機系および/または有機系の膜が設けられたものであってもよい。無機系の膜としては、無機反射防止膜(無機BARC)が挙げられる。有機系の膜としては、有機反射防止膜(有機BARC)や多層レジスト法における下層有機膜等の有機膜が挙げられる。
ここで、多層レジスト法とは、基板上に、少なくとも一層の有機膜(下層有機膜)と、少なくとも一層のレジスト膜(上層レジスト膜)とを設け、上層レジスト膜に形成したレジストパターンをマスクとして下層有機膜のパターニングを行う方法であり、高アスペクト比のパターンを形成できるとされている。すなわち、多層レジスト法によれば、下層有機膜により所要の厚みを確保できるため、レジスト膜を薄膜化でき、高アスペクト比の微細パターン形成が可能となる。
多層レジスト法には、基本的に、上層レジスト膜と、下層有機膜との二層構造とする方法(2層レジスト法)と、上層レジスト膜と下層有機膜との間に一層以上の中間層(金属薄膜等)を設けた三層以上の多層構造とする方法(3層レジスト法)とに分けられる。
【0203】
露光に用いる波長は、特に限定されず、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、F
2エキシマレーザー、EUV(極紫外線)、VUV(真空紫外線)、EB(電子線)、X線、軟X線等の放射線を用いて行うことができる。前記レジスト組成物は、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、EBまたはEUV用としての有用性が高く、ArFエキシマレーザー、EBまたはEUV用として特に有用である。
【0204】
レジスト膜の露光方法は、空気や窒素等の不活性ガス中で行う通常の露光(ドライ露光)であってもよく、液浸露光(Liquid Immersion Lithography)であってもよい。
液浸露光は、予めレジスト膜と露光装置の最下位置のレンズ間を、空気の屈折率よりも大きい屈折率を有する溶媒(液浸媒体)で満たし、その状態で露光(浸漬露光)を行う露光方法である。
液浸媒体としては、空気の屈折率よりも大きく、かつ露光されるレジスト膜の有する屈折率よりも小さい屈折率を有する溶媒が好ましい。かかる溶媒の屈折率としては、前記範囲内であれば特に制限されない。
空気の屈折率よりも大きく、かつ前記レジスト膜の屈折率よりも小さい屈折率を有する溶媒としては、例えば、水、フッ素系不活性液体、シリコン系溶剤、炭化水素系溶剤等が挙げられる。
フッ素系不活性液体の具体例としては、C
3HCl
2F
5、C
4F
9OCH
3、C
4F
9OC
2H
5、C
5H
3F
7等のフッ素系化合物を主成分とする液体等が挙げられ、沸点が70〜180℃のものが好ましく、80〜160℃のものがより好ましい。フッ素系不活性液体が上記範囲の沸点を有するものであると、露光終了後に、液浸に用いた媒体の除去を、簡便な方法で行えることから好ましい。
フッ素系不活性液体としては、特に、アルキル基の水素原子が全てフッ素原子で置換されたパーフロオロアルキル化合物が好ましい。パーフロオロアルキル化合物としては、具体的には、パーフルオロアルキルエーテル化合物やパーフルオロアルキルアミン化合物を挙げることができる。
さらに、具体的には、前記パーフルオロアルキルエーテル化合物としては、パーフルオロ(2−ブチル−テトラヒドロフラン)(沸点102℃)を挙げることができ、前記パーフルオロアルキルアミン化合物としては、パーフルオロトリブチルアミン(沸点174℃)を挙げることができる。
液浸媒体としては、コスト、安全性、環境問題、汎用性等の観点から、水が好ましく用いられる。
【0205】
アルカリ現像プロセスで現像処理に用いるアルカリ現像液としては、例えば0.1〜30質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液が挙げられる。
溶剤現像プロセスで現像処理に用いる有機系現像液が含有する有機溶剤としては、(A)成分(露光前の(A)成分)を溶解し得るものであればよく、公知の有機溶剤のなかから適宜選択できる。具体的には、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤等の極性溶剤及び炭化水素系溶剤を用いることができる。
有機系現像液には、必要に応じて公知の添加剤を配合できる。該添加剤としてはたとえば界面活性剤が挙げられる。界面活性剤としては、特に限定されないが、たとえばイオン性や非イオン性のフッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤等を用いることができる。
界面活性剤を配合する場合、その配合量は、有機系現像液の全量に対して、通常0.001〜5質量%であり、0.005〜2質量%が好ましく、0.01〜0.5質量%がより好ましい。
現像処理は、公知の現像方法により実施でき、該方法としてはたとえば現像液中に支持体を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、支持体表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止する方法(パドル法)、支持体表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している支持体上に一定速度で現像液塗出ノズルをスキャンしながら現像液を塗出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)等が挙げられる。
【0206】
本発明のレジスト組成物は、リソグラフィー特性を維持しつつ、レジストパターンのディフェクト(表面欠陥)を軽減させるという効果を奏する。その理由は明らかではないが、以下のように推察される。
本発明のレジスト組成物は、塩基分解性基を主鎖に含む高分子化合物を含有する。これにより、アルカリ現像プロセスにおいて、現像時に主鎖が分解することにより分子量が低減すると考えられる。主鎖が分解することによりアルカリ現像液に対する溶解性が向上するため、溶け残りによるレジストパターンのディフェクト(表面欠陥)を軽減させることができると推察される。
一方、現像前においては、主鎖は分解しないため、レジスト組成物が低分子量であることによるTgの低下や、リソグラフィー特性の悪化といった問題は生じないと考えられる。よって、リソグラフィー特性を維持しつつ、ディフェクト(表面欠陥)を軽減させることができると考えられる。
【実施例】
【0207】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0208】
[ポリマー合成例]
高分子化合物1〜12は、各高分子化合物を構成する構成単位を誘導する下記モノマー(1)〜(8)を用い、高分子化合物2〜7、及び9〜12については高分子化合物1と同様の方法により合成した。高分子化合物8〜10については開始剤をアゾビスイソ酪酸ジメチル(V−601)に変えて高分子化合物1′と同様の従来公知の条件で合成した。得られた高分子化合物について、カーボン13核磁気共鳴スペクトル(600MHz−
13C−NMR、内部標準:テトラメチルシラン)により求められた共重合組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))、GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の質量平均分子量(Mw)及び分子量分散度(Mw/Mn)をそれぞれ表1〜2に示した。なお、表1〜2中、ECLは、合成した各高分子化合物において、各ポリマー鎖をつなぐ部分の有無を示すものであり、ECLが空欄のものは高分子化合物中に当該部分が含まれないことを意味する。表1〜2中のECL1及びECL3は、前記ECLが下記式(ECL)で表されるものであることを意味する。
【0209】
【化53】
【0210】
高分子化合物1′の合成
温度計、還流管、窒素導入管を繋いだセパラブルフラスコに、27.88gのメチルエチルケトン(MEK)を入れて、80℃に加熱した。ここに40.00g(176.87mmol)の化合物1、重合開始剤として7.07mmolの4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸) (V−501)を、33.39gのMEKと、18.00gのテトラヒドロフラン(THF)に溶解させた溶液を、窒素雰囲気下、3時間かけて滴下した。
滴下終了後、反応液を3時間加熱攪拌し、その後、反応液を室温まで冷却した。得られた反応重合液を大量のn−ヘプタンに滴下し、重合体を析出させる操作を行い、沈殿した白色粉体をろ別、乾燥して、高分子化合物1′を34.30g得た。
この高分子化合物1′について、GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の質量平均分子量(Mw)は12,500、分子量分散度(Mw/Mn)は1.85であった。また、カーボン13核磁気共鳴スペクトル(600MHz_
13C−NMR)により求められた高分子化合物1′とカルボン酸含有末端のモル比は96.8/3.2であった。
【0211】
【化54】
【0212】
高分子化合物1の合成
窒素雰囲気下で50.00gのジクロロメタンに、10.00gの高分子化合物1′、0.009gの4,4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、0.303gの1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC)を添加して5℃に冷却した。そこに5.00gのアセトニトリルに溶解させた0.188gの2,2’,3,3’,4,4’,5,5’−オクタフルオロ−1,6−ヘキサンジオール(OFHD)をゆっくりと添加し、5℃で4時間反応を行った。
反応終了後、反応液を塩酸水溶液と純水で洗浄し、濃縮、乾燥することで目的の高分子化合物1を8.0g得た。
この高分子化合物1はNMR測定を行い、以下の結果から構造を同定した。
19F−NMR (376MHz, DMSO−d6) : δ(ppm)=−69.8, −115.7, −119.6
また、GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の質量平均分子量(Mw)は24,000、分子量分散度(Mw/Mn)は2.00であった。
【0213】
【化55】
【0214】
【化56】
【0215】
【表1】
【0216】
【表2】
【0217】
【表3】
【0218】
【表4】
【0219】
【表5】
【0220】
【表6】
【0221】
表3、4中、各記号はそれぞれ以下も意味を有する。[]内の数値は配合量(質量部)である。
(A)−10〜(A)−12:それぞれ前記高分子化合物10〜12。
(F)−1〜(F)−9:それぞれ前記高分子化合物1〜9。
(B)―1:下記構造式(B)−1で表される化合物。
(D)−1:下記構造式(D)−1で表される化合物。
(S)―1:PGMEA。
(S)―2:PGME。
(S)―3:シクロヘキサノン。
【0222】
【化57】
【0223】
得られたレジスト組成物を用いて以下の評価を行った。
<レジストパターンの形成1>
12インチのシリコンウェーハ上に、有機系反射防止膜組成物「ARC29A」(商品名、ブリュワーサイエンス社製)をスピンナーを用いて塗布し、ホットプレート上で205℃、60秒間焼成して乾燥させることにより、膜厚82nmの有機系反射防止膜を形成した。そして、該有機系反射防止膜上に、各例のレジスト組成物を、スピンナーを用いて均一にそれぞれ塗布し、110℃で60秒間のベーク処理(PAB)を行ってレジスト膜(膜厚90nm)を成膜した。該レジスト膜に対し、次に、ArF液浸露光装置NSR−S609(ニコン社製;NA(開口数)=1.07,Cross pole(in/out=0.78/0.97)with Polano)、ArFエキシマレーザーを、マスクを介して選択的に照射した。その後、95度で60秒間のベーク処理(PEB)を行い、さらに23℃にてテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)の2.38質量%水溶液(商品名:NMD−3、東京応化工業(株)製)を用いて10秒間のアルカリ現像を行った。
その結果、実施例1〜10、比較例1〜3において、ライン幅55nm、ピッチ110nmのラインアンドスペースのレジストパターン(以下「LSパターン」という。)が形成された。
【0224】
<レジストパターンの形成2>
調製したレジスト組成物を、8インチシリコンウェーハ上にスピンナーを用いて塗布し、ホットプレート上で110℃、60秒間のプレベーク(PAB)処理を行い、乾燥することにより、膜厚90nmのレジスト膜を形成した。
該レジスト膜に対して、ArF露光装置NSR−S302(製品名、Nikon社製)により、ArFエキシマレーザー(193nm)を、マスクを介して選択的に露光した。その後、95℃、60秒間の露光後加熱(PEB)処理を行った。さらに23℃にてテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)の2.38質量%水溶液(商品名:NMD−3、東京応化工業(株)製)を用いて30秒間のアルカリ現像を行った。その結果、実施例11〜13、比較例4において、ライン幅130nm、ピッチ260nmのラインアンドスペースのレジストパターン(以下「LSパターン」という。)が形成された。
【0225】
[ラインワイズラフネス(LWR)の評価]
上記<レジストパターンの形成>で形成したライン幅55nm、ピッチ110nmのLSパターンと、ライン幅130nm、ピッチ260nmのLSパターンについてLWRを示す尺度である3σを求めた。
「3σ」は、走査型電子顕微鏡(加速電圧800V、商品名:S−9220、日立ハイテクノロジーズ社製)により、ライン幅を、ラインの長手方向に400箇所測定し、その測定結果から求めた標準偏差(σ)の3倍値(3s)(単位:nm)を示す。該3sの値が小さいほど、ライン側壁のラフネスが小さく、より均一幅のLSパターンが得られたことを意味する。その結果を「LWR(nm)」として表5、6に示す。
【0226】
[後退角の測定]
前記レジスト被覆膜側表面上に水50μLを滴下し、協和界面科学株式会社製DROP
MASTER−700を用いて、後退角を測定した。
【0227】
[ディフェクト評価]
上記のようにして得られたLSパターンを、KLAテンコール社製の表面欠陥観察装置KLA2371(製品名)を用いて観察した。シリコンウェーハ1枚あたりの未露光部の現像欠陥の個数を測定した。結果を表5に示す。
【0228】
[主鎖分解確認]
NMRチューブに0.80gの重ジメチルスルホキシドと0.05gの高分子化合物1を入れ、そこに0.05gの25wt%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を添加してNMR測定を行ったところ、以下の結果が得られた。
19F−NMR(376MHz,DMSO−d6):δ(ppm)=−72.6,−118.7,−121.1
この結果は2,2’,3,3’,4,4’,5,5’−オクタフルオロ−1,6−ヘキサンジオール(OFHD)(δ(ppm)=−118.7,−121.1)と、2,2’,2’’−トリフルオロエタノール(δ(ppm)=−72.6),と一致したため、主鎖が分解していることが確認された。
【0229】
【化58】
【0230】
本発明により、リソグラフィー特性を維持しながらアルカリ現像液に対する高い溶解性を持ち、ディフェクトの低減を達成することができるレジスト組成物、及び該レジスト組成物を用いたレジストパターン形成方法を提供することができた。