特許第5933708号(P5933708)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5933708スチレンコポリマーを有する耐候安定性のポリエステル成形コンパウンド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5933708
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】スチレンコポリマーを有する耐候安定性のポリエステル成形コンパウンド
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/00 20060101AFI20160602BHJP
   C08L 25/12 20060101ALI20160602BHJP
   C08L 51/04 20060101ALI20160602BHJP
   C08K 5/3435 20060101ALI20160602BHJP
   D01F 6/92 20060101ALI20160602BHJP
   C07D 211/22 20060101ALI20160602BHJP
   C07D 401/14 20060101ALI20160602BHJP
   C07D 493/10 20060101ALI20160602BHJP
【FI】
   C08L67/00
   C08L25/12
   C08L51/04
   C08K5/3435
   D01F6/92 301U
   C07D211/22
   C07D401/14
   C07D493/10 C
【請求項の数】8
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2014-517585(P2014-517585)
(86)(22)【出願日】2012年6月17日
(65)【公表番号】特表2014-527090(P2014-527090A)
(43)【公表日】2014年10月9日
(86)【国際出願番号】EP2012061540
(87)【国際公開番号】WO2013000747
(87)【国際公開日】20130103
【審査請求日】2015年6月15日
(31)【優先権主張番号】11171556.1
(32)【優先日】2011年6月27日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ヴェーバー
(72)【発明者】
【氏名】ロルフ ミンクヴィッツ
(72)【発明者】
【氏名】ノク−ヨン チョイ
(72)【発明者】
【氏名】ペーター アイベック
【審査官】 井上 政志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−002808(JP,A)
【文献】 特開平06−128409(JP,A)
【文献】 特表2002−535471(JP,A)
【文献】 特開平04−253714(JP,A)
【文献】 特開2006−241283(JP,A)
【文献】 特開平01−210445(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K3/00−13/08
C08L1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A) 少なくとも1種のポリエステル 2〜98.8質量%、
B) 次のb1)及びb2)からなる、C)及び/又はG)とは異なるゴム不含の共重合体 0〜49.9質量%、
1) スチレン又は一般式Iaの置換スチレン又はそれらの混合物 60〜95質量%
【化1】
[式中、Rは1〜8個のC原子を有するアルキル基又は水素原子を表し、R1は1〜8個のC原子を有するアルキル基を表し、nは1、2又は3の値を有する]及び
2) 少なくとも1種の不飽和ニトリル 5〜40質量%、
C) 6〜60の膨潤指数(トルエン中)を有し、かつゴム相中にオレフィン系二重結合を有しない1種又はそれ以上の衝撃強さが改質されたグラフトゴム 1〜49.9質量%、
D) 式(I)の化合物 0.1〜1質量%
【化2】
E) 式(II)の化合物の混合物 0.1〜1質量%
【化3】
F) 式(III)の化合物の混合物 0〜1質量%
【化4】
又は、式(IV)の化合物の混合物 0〜1質量%
【化5】
又は、式(V)の化合物の混合物 0〜1質量%
【化6】
又は、式(VI)の化合物の混合物 0〜1質量%
【化7】
又はこれらの混合物、
G) 次の成分g1)〜g4)からなるコポリマー 0〜30質量%
1) 1種又はそれ以上のビニル芳香族モノマーから誘導された構造単位 49.5〜99.5質量%、
2) 1種又はそれ以上のビニルシアニドから誘導された構造単位 0〜50質量%、
3) 1種又はそれ以上のジカルボン酸無水物から誘導された構造単位 0.5〜40質量%及び
4) 他の共重合可能なモノマーから誘導された構造単位 0〜25質量%、
その際、成分G)の質量%はそれぞれ、成分g1、g2、g3及びg4から誘導された構造単位の全質量を基準にし、かつ合わせて100質量%となり、
H) 成分A)〜G)とは異なる添加剤0〜60質量%、
を有し、
その際、A)〜H)の質量%の合計は100%となる、熱可塑性成形組成物。
【請求項2】
A) 20〜97質量%
B) 1〜49.9質量%
C) 1〜40質量%
D) 0.2〜0.9質量%
E) 0.2〜0.9質量%
F) 0〜1質量%
G) 0〜30質量%
H) 0〜50質量%を有し、
その際、A)〜H)は100%となる、請求項1に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項3】
A) 20〜97質量%
B) 1〜49.9質量%
C) 1〜40質量%
D) 0.2〜0.9質量%
E) 0.2〜0.9質量%
F) 0.1〜0.5質量%
G) 0〜30質量%
H) 0〜50質量%を有し、
その際、A)〜H)は100%となる、請求項1又は2に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項4】
A) 20〜97質量%
B) 1〜49.9質量%
C) 1〜40質量%
D) 0.2〜0.9質量%
E) 0.2〜0.9質量%
F) 0.1〜0.5質量%
G) 0.5〜20質量%
H) 0〜50質量%を有し、
その際、A)〜H)は100%となる、請求項1から3までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項5】
成分C)として、
1) アルキル基中で1〜8個のC原子を有するアルキルアクリラートを基礎とし、かつ10℃未満のガラス転移温度を有するゴム弾性ポリマーからなるグラフト幹部 40〜80質量%、
2) 次の成分C21)及びC22)からなるグラフト枝部 20〜60質量%
21) スチレン又は一般式Iaの置換スチレン又はそれらの混合物 60〜85質量%
22) 少なくとも1種の不飽和ニトリル 15〜35質量%
から構成されたグラフト共重合体を有する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項6】
成分G)として、
成分g1) スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、t−ブチルスチレン、ビニルナフタレン又はこれらのモノマーの2種又はそれ以上の混合物、
成分g2) アクリルニトリル、メタクリルニトリル又はこのモノマーの混合物及び
成分g3) 無水マレイン酸、メチルマレイン酸無水物、イタコン酸無水物、又はこれらのモノマーの2種又はそれ以上の混合物
からなるターポリマーを含有する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項7】
繊維、シート又は繊維及びシート以外の成形品を製造するための、請求項1から6までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形組成物の使用。
【請求項8】
請求項1から6までのいずれか1項に記載の熱可塑性組成物から得られる、繊維及びシート以外の成形品、繊維又はシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
A) 少なくとも1種のポリエステル 2〜99.8質量%、
B) 次のb1)及びb2)からなる、C及び/又はGとは異なるゴム不含の共重合体 0〜49.9質量%、
1) スチレン又は一般式Iaの置換スチレン又はこれらの混合物 60〜95質量%
【化1】
[式中、Rは1〜8個のC原子を有するアルキル基又は水素原子を表し、R1は1〜8個のC原子を有するアルキル基を表し、nは1、2又は3の値を有する]及び
2) 少なくとも1種の不飽和ニトリル 5〜40質量%、
C) ゴム相中にオレフィン系二重結合を有しない1種又はそれ以上の衝撃強さが改質されたグラフトゴム 0〜49.9質量%、
D) 式(I)の化合物 0.1〜1質量%
【化2】
E) 式(II)の化合物の混合物 0.1〜1質量%
【化3】
F) 式(III)の化合物の混合物 0〜1質量%
【化4】
又は、式(IV)の化合物の混合物 0〜1質量%
【化5】
又は、式(V)の化合物の混合物 0〜1質量%
【化6】
又は、式(VI)の化合物の混合物 0〜1質量%
【化7】
又は、これらの混合物、
G) 次の成分g1)〜g4)からなるコポリマー0〜30質量%
1) 1種又はそれ以上のビニル芳香族モノマーから誘導された構造単位 49.5〜99.5質量%、
2) 1種又はそれ以上のビニルシアニドから誘導された構造単位 0〜50質量%、
3) 1種又はそれ以上のジカルボン酸無水物から誘導された構造単位 0.5〜40質量%及び
4) 他の共重合可能なモノマーから誘導された構造単位 0〜25質量%、
その際、成分Gの質量%は、成分g1、g2、g3及びg4から誘導された構造単位の全質量をそれぞれ基準にし、かつ合わせて100質量%となり、
H) 他の添加剤0〜60質量%、
を有し、その際、A)〜H)の質量%の合計は100%となる、熱可塑性成形コンパウンド(熱可塑性成形組成物)に関する:
【0002】
更に、本発明は、繊維、シート及び成形品を製造するための、熱可塑性成形コンパウンドの使用、並びに本発明による熱可塑性成形コンパウンドから得られる繊維、シート及び成形品に関する。
【0003】
ポリマー混合物は、カスタムメイドされた特性の組合せを提供するため、工業技術において重要性が増している。この場合、特別に重要なのは、並外れた特性の組合せを有する、非相溶性のポリマーからなるポリマー混合物である。ポリエステル及びスチレンコポリマーを基礎とするポリマー混合物は、数年来公知である(DE 33 36 499, US 4,485,212, EP 135 677)。しかしながらポリエステルとスチレンコポリマーとの間の非相溶性のために、この生成物は不十分な機械特性を有する。
【0004】
従って、文献中では、これらの相の相溶性を改善する多様な試みが議論されていて、特に、官能化されたスチレンコポリマー(EP 284 086, US 4,902,749, US 5,310,793, Lee P.-C, Kuo W.-F., Chang F.-C, Polymer 1994, 35, 5641)及び反応性アクリラートコポリマー(EP 573 680, US 4,352,904, Hage E., Haie W., Keskkula H., Paul D.R. Polymer,1997, 38, 3237)が使用される。
【0005】
特に耐候安定性の製品についての自動車工業の高まる要求に対応するために、既に、ポリエステルを基礎とする安定化された成形コンパウンド及びアクリルエステル含有の成形コンパウンドが公知である。例えば、EP 708800は、特にPBT及びASAからなることができる成形コンパウンドの、立体障害フェノールと金属酸化物との組合せを用いた安定化を記載している。EP 1363883の主題は、ポリエステル及びスチレンコポリマーを有することができる成形コンパウンド用の、アルコキシ架橋された立体障害アミン安定剤である。
【0006】
今まで公知の安定剤系によって、耐候安定性の成形コンパウンドについての自動車工業の要求は完全には満たすことができない。
【0007】
従って、本発明の課題は、良好な長期間耐久性及び特に高い混合温度でも高い加工安定性を有する、ポリエステルとゴム及び場合によりSANとのブレンドを提供することであった。特に、耐候安定性が改善されるべきである。
【0008】
従って、冒頭の定義された成形コンパウンドが見出された。好ましい実施態様は、従属請求項に記載されている。
【0009】
成分A)として、本発明による成形コンパウンドは、少なくとも1種の熱可塑性ポリエステル2〜99.8、好ましくは2〜98.8、好ましくは20〜97、特に40〜85質量%を含有する。
【0010】
一般に、芳香族ジカルボン酸及び脂肪族又は芳香族ジヒドロキシ化合物を基礎とするポリエステルA)を使用する。
【0011】
好ましいポリエステルの第1の群は、ポリアルキレンテレフタラート、特にアルコール部分中に2〜10個のC原子を有するポリアルキレンテレフタラートである。
【0012】
この種のポリアルキレンテレフタラートは自体公知であり、文献に記載されている。このポリアルキレンテレフタラートは主鎖中に、芳香族ジカルボン酸から由来する芳香環を有している。この芳香環は、例えばハロゲン、例えば塩素及び臭素によるか、又はC1〜C4−アルキル基、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基又はt−ブチル基によって置換されていてもよい。
【0013】
このようなポリアルキレンテレフタラートは、芳香族ジカルボン酸、そのエステル又は他のエステル形成する誘導体と脂肪族ジヒドロキシ化合物との反応により自体公知のように製造することができる。
【0014】
好ましいジカルボン酸として、2,6−ナフタリンジカルボン酸、テレフタル酸及びイソフタル酸又はこれらの混合物を挙げることができる。この芳香族ジカルボン酸の30mol%まで、好ましくは10mol%以下は、脂肪族又は脂環式ジカルボン酸、例えばアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸及びシクロヘキサンジカルボン酸に置き換えられていてもよい。
【0015】
脂肪族ジヒドロキシ化合物の中では、2〜6個の炭素原子を有するジオール、特に1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール及びネオペンチルグリコール又はこれらの混合物が好ましい。
【0016】
特に好ましいポリエステルA)として、2〜6個のC原子を有するアルカンジオールから誘導されたポリアルキレンテレフタラートを挙げることができる。この中でも特にポリエチレンテレフタラート、ポリプロピレンテレフタラート及びポリブチレンテレフタラート又はこれらの混合物が好ましい。更に、PET及び/又はPBTが好ましく、これらは他のモノマー単位として1,6−ヘキサンジオール及び/又は2−メチル−1,5−ペンタンジオールを1質量%まで、好ましくは0.75質量%まで含む。
【0017】
ポリエステル(A)の粘度数は、ISO 1628に従って(フェノール/o−ジクロロベンゼン混合物(25℃で1:1の質量比)中での0.5質量%の溶液にて測定)一般に50〜220、好ましくは80〜160ml/gの範囲内にある。
【0018】
特に、カルボキシル末端基含有量が、ポリエステル1kg当たり100mvalまで、好ましくはポリエステル1kg当たり50mvalまで、特にポリエステル1kg当たり40mvalまでであるポリエステルが好ましい。この種のポリエステルは、例えばDE-A 44 01 055の方法により製造することができる。このカルボキシル末端基含有量は、通常では滴定法(例えば電位差法)により決定される。
【0019】
特に好ましい成形コンパウンドは、成分A)として、PBTが異なっている複数のポリエステル、例えばポリエチレンテレフタラート(PET)からなる混合物を含有する。例えばポリエチレンテレフタラートの割合は、好ましくはこの混合物中で、A)100質量%を基準として50質量%まで、特に1.0〜35質量%である。
【0020】
更に、PETリサイクル物(スクラップPETともいわれる)を、場合によりポリアルキレンテレフタラート、例えばPBTと混合して使用することが好ましい。
【0021】
リサイクル物とは、一般に次のものであると解釈される:
1) いわゆる産業廃棄物リサイクル物(Post industrial Rezyklat):これは、重縮合の際又は加工の際の製造くず、例えば射出成形加工時のスプール、射出成形加工又は押出加工時の始動くず、もしくは押し出されたプレート又はシートのトリミングくずである。
【0022】
2) 一般廃棄物リサイクル物(Post Consumer Rezyklat):これは、最終消費者による使用後に集められかつ加工されたプラスチック製品である。この量的に遥かに優勢な物品は、ミネラルウォーター、清涼飲料水及びジュース用のブロー成形されたPETボトルである。
【0023】
この2つの種類のリサイクル物は、粉砕物として又は顆粒の形で存在することができる。後者の顆粒の場合には、この粗リサイクル物は分離及び精製後に押出機中で溶融され、顆粒にされる。それにより、大抵は、更なる加工工程のために取り扱い、流動性及び計量供給性が容易にされる。
【0024】
顆粒化されたリサイクル物も、粉砕物として存在するリサイクル物も使用することができ、この場合、最大の辺の長さは10mm、好ましくは8mm以下であるのが好ましい。
【0025】
加工時に(痕跡量の水分により)ポリエステルは加水分解するため、リサイクル物を予備乾燥することが推奨される。この乾燥後の残留含水率は、好ましくは<0.2%、特に<0.05%である。
【0026】
他の群として、芳香族ジカルボン酸と芳香族ジヒドロキシ化合物とから誘導される全芳香族ポリエステルも挙げることができる。
【0027】
芳香族ジカルボン酸としてはポリアルキレンテレフタラートで既に記載された化合物が適している。イソフタル酸5〜100mol%と、テレフタル酸0〜95質量%からなる混合物、特にテレフタル酸約80%とイソフタル酸20%を有する混合物〜これら2つの酸のほぼ当量の混合物を使用するのが好ましい。
【0028】
この芳香族ジヒドロキシ化合物は、好ましくは次の一般式を有する
【化8】
[式中、Zは、8個までのC原子を有するアルキレン基又はシクロアルキレン基、12個までのC原子を有するアリーレン基、カルボニル基、スルホニル基、酸素原子又は硫黄原子又は化学結合を表し、mは0〜2の値を有する]。この化合物は、フェニレン基にC1〜C6−アルキル基又はアルコキシ基及びフッ素、塩素又は臭素を置換基として有していてもよい。
【0029】
これらの化合物の基本体としては、例えば
ジヒドロキシジフェニル、
ジ−(ヒドロキシフェニル)アルカン、
ジ−(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、
ジ−(ヒドロキシフェニル)スルフィド、
ジ−(ヒドロキシフェニル)エーテル、
ジ−(ヒドロキシフェニル)ケトン、
ジ−(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、
α,α′−ジ−(ヒドロキシフェニル)−ジアルキルベンゼン、
ジ−(ヒドロキシフェニル)スルホン、ジ−(ヒドロキシベンゾイル)ベンゼン、
レゾルシン及びヒドロキノン並びにこれらの核アルキル化された又は核ハロゲン化された誘導体が挙げられる。
【0030】
これらの中で、
4,4′−ジヒドロキシジフェニル、
2,4−ジ−(4′−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、
α,α′−ジ−(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、
2,2−ジ−(3′−メチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロパン及び
2,2−ジ−(3′−クロロ−4′−ヒドロキシフェニル)プロパン、
並びに、特に
2,2−ジ−(4′−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ジ−(3′,5−ジクロロジヒドロキシフェニル)プロパン、
1,1−ジ−(4′−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、
3,4′−ジヒドロキシベンゾフェノン、
4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン及び
2,2−ジ(3′,5′−ジメチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロパン又はこれらの混合物が好ましい。
【0031】
もちろん、ポリアルキレンテレフタラート及び全芳香族ポリエステルの混合物を使用することもできる。これらは、一般に、ポリアルキレンテレフタラート20〜98質量%及び全芳香族ポリエステル2〜80質量%を含有する。
【0032】
もちろん、コポリエーテルエステルのようなポリエステルブロックコポリマーを使用することもできる。この種の製品は自体公知であり、文献、例えばUS A 3651014に記載されている。市場でも、相応する製品、例えばHytrel(R)(DuPont)が入手可能である。
【0033】
成分B)として、本発明の場合に、次のb1)及びb2からなる、C及び/又はGとは異なる、少なくとも1種のゴム不含の共重合体0〜49.9、好ましくは1〜49.9、特に2〜20、更に特に好ましくは2〜15質量%を有することができる
1) スチレン又は一般式Iaの置換スチレン又はこれらの混合物60〜95、好ましくは70〜85質量%
【化9】
[式中、Rは1〜8個のC原子を有するアルキル基又は水素原子を表し、R1は1〜8個のC原子を有するアルキル基を表し、nは1、2又は3の値を有する]及び
2) 少なくとも1種の不飽和ニトリル5〜40、好ましくは15〜30質量%。
【0034】
好ましい基Rは、メチル、エチル又は水素であり、かつ
好ましい基R1は、メチル、エチル又は水素である。
好ましい成分b1)は、スチレン又はα−メチルスチレン又はこれらの混合物である。
好ましい成分b2)は、アクリルニトリル又はメタクリルニトリル又はこれらの混合物である。
【0035】
この共重合体B)は、樹脂状で、熱可塑性で及びゴム不含である。
【0036】
好ましい成分B)は、b1)スチレン50〜90質量%、好ましくは60〜85質量%、特に70〜83質量%及びb2)アクリルニトリル10〜50質量%、好ましくは15〜40質量%、特に17〜30質量%、並びにb3)他のモノマー0〜5質量%、好ましくは0〜4質量%、特に0〜3質量%から構成されていて、その際これらの質量%はそれぞれ成分B)の質量を基準としかつ合わせて100質量%となる。
【0037】
更に、好ましい成分B)は、b1)α−メチルスチレン50〜90質量%、好ましくは60〜80質量%、特に65〜78質量%及びb2)アクリルニトリル10〜50質量%、好ましくは20〜40質量%、特に22〜35質量%、並びにb3)他のモノマー0〜5質量%、好ましくは0〜4質量%、特に0〜3質量%から構成されていて、その際これらの質量%はそれぞれ成分B)の質量を基準としかつ合わせて100質量%となる。
【0038】
同様に、好ましい成分B)は、このスチレン−アクリルニトリルコポリマー、又はα−メチルスチレン−アクリルニトリルコポリマーと、N−フェニルマレインイミド−スチレン−アクリルニトリルターポリマーとの混合物である。
【0039】
上述の他のモノマーとして、全ての共重合可能なモノマー、例えばp−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ビニルナフタレン、例えばC1〜C8−アルキル基を備えたアルキルアクリラート及び/又はアルキルメタクリラート、N−フェニルマレインイミド又はこれらの混合物が使用可能である。
【0040】
これらの共重合体B)は自体公知であり、ラジカル重合、特に乳化重合、懸濁重合、溶液重合及び塊状重合により製造される。これらは、40〜160ml/gの範囲内の粘度数を有し、この粘度数は40000〜2000000g/molの平均分子量Mw(質量平均値)に相当する。
【0041】
成分C)として、本発明による成形コンパウンドは、ゴム相中にオレフィン二重結合を有しない1種又はそれ以上の衝撃強さが改質されたグラフトゴム0〜49.9、特に1〜49.9、好ましくは1〜40、特に5〜20質量%を有することができる。
【0042】
架橋されたポリマー粒子の架橋状態の特性決定する方法は、膨潤指数QIの測定であり、この膨潤指数QIは、程度に差はあるが著しく架橋されたポリマーの溶剤による膨潤性についての尺度である。通常の膨潤剤は、例えばメチルエチルケトン又はトルエンである。好ましくは、本発明による成形コンパウンドのグラフト共重合体CのQIは、QI=6〜60の範囲内にある。好ましくは、QIは、トルエン中で6〜18、特に好ましくは7〜15である。
【0043】
QIの決定は次のように行う:
膨潤指数の決定のために、グラフト共重合体Cの水性分散液をプレート上で軽度の真空(600〜800mbar)で窒素雰囲気中で80℃で一晩中乾燥させる。約2mmの厚さで残留するシートから、引き続き1cm2のサイズの薄片を切り出し、ペニシリンガラス中でトルエン50ml中で一晩中膨潤させる。上澄みのトルエンを吸い取り、膨潤したシートを秤量し、80℃で一晩中乾燥させる。乾燥したシートの質量を決定する。膨潤指数は、膨潤したゲルの質量と乾燥したゲルの質量との商から得られる。
【0044】
好ましい実施態様の場合には、ゴム弾性のグラフト共重合体Cは、Cを基準として、
1 0℃未満のガラス転移温度を有する粒子状のグラフト幹部C1 1〜99質量%、好ましくは55〜80質量%、特に55〜65質量%、及び
2 30℃を超えるガラス転移温度を有するグラフト枝部C2 1〜99質量%、好ましくは20〜45質量%、特に35〜45質量%
から構成されている。
【0045】
この場合、成分C1は、
11 少なくとも1種のアクリル酸のC1〜C8−アルキルエステル、好ましくはC4〜C8−アルキルアクリラート、特にn−ブチルアクリラート及び/又は2−エチルヘキシルアクリラート 60〜99.9質量%、好ましくは80〜99.9質量%、
12 少なくとも1種の多官能性の架橋性モノマー、好ましくはブチレンジアクリラート、ジビニルベンゼン、ブタンジオールジメタクリラート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリラート、ジアリルメタクリラート、ジアリルマレアート、ジアリルフマラート、トリアリルメタクリラート、トリアリルイソシアヌラート、特に好ましくはジアリルフタラート、アリルメタアクリラート及び/又はジヒドロジシクロペンタジエニルアクリラート(DCPA) 0.1〜20質量%、好ましくは0.1〜5質量%及び
13 硬質ポリマーを形成するモノマー、例えば酢酸ビニル、(メタ)アクリルニトリル、スチレン、置換スチレン、メチルメタアクリラート又はビニルエーテル 0〜39.9質量%、好ましくは0〜19.9質量%
から構成されている。
【0046】
この場合、成分C2は、
21 ビニル芳香族モノマー、特にスチレン、α−メチルスチレン又はN−フェニルマレインイミド 40〜100質量%、好ましくは65〜85質量%及び
22 極性の、共重合可能な、エチレン性不飽和モノマー、特にアクリルニトリル、(メタ)アクリル酸エステル又はメタクリルニトリル又はこれらの混合物 0〜60質量%、好ましくは15〜35質量%
から構成されている。
【0047】
成分Cは、グラフト幹部C1と少なくとも1つのグラフト枝部C2とを有するグラフト共重合体である。このグラフト共重合体Cは、程度に差はあるが完璧に特徴付けられたコア−シェル構造を有することができ(グラフト幹部C1はコアを表し、グラフト枝部C2はシェルを表す)、しかしながら、グラフト枝部C2がグラフト幹部C1を不完全に包囲もしくは覆っているか又はグラフト枝部C2がグラフト幹部C1を完全に又は部分的に貫通していることも可能である。
【0048】
グラフト幹部C1は、本発明の1つの実施形態の場合には、このコアは、軟質のゴム弾性重合体又は硬質の重合体から構成されていてもよいいわゆるコアを含むことができ;このグラフト基体C1がコアを含む実施形態の場合には、コアは、好ましくは硬質の重合体、特にポリスチレン又はスチレンコポリマーから形成される。このようなグラフトコア及びその製造は当業者に公知であり、例えばEP-A535456及びEP-A534212に記載されている。もちろん、例えば組成が互いに異なるか又は粒子サイズが互いに異なる2種又はそれ以上のグラフト幹部C1を使用することも可能である。異なるグラフト幹部のこのような混合物は、当業者に自体公知の方法により、例えば2種又はそれ以上のゴムラテックスを別個に製造し、これらの相応する分散液を混合し、これらの相応する分散液から別個に湿ったゴムを沈殿させ、例えば押出機中で混合するか又はこれらの相応する分散液を別個に完全に後処理し、得られたグラフト幹部を引き続き混合することにより製造することができる。
【0049】
このグラフト共重合体Cは、グラフト幹部C1とグラフト枝部C2との間に、例えば他のモノマー組成を有する、1種又はそれ以上の他のグラフト枝部又はグラフト膜部又はグラフトシェル部を有していてもよいが、しかしながら好ましくはこのグラフトコポリマーCは、グラフト枝部C2以外は、他のグラフト枝部又はグラフト膜部又はグラフトシェル部を有しない。
【0050】
このグラフト幹部C1の重合体は、通常では0℃未満のガラス転移温度を有し、好ましくは(−20)℃未満の、特に(−30)℃未満のガラス転移温度を有する。グラフト枝部C2を形成するモノマーからなる重合体は、通常では30℃より高い、特に50℃より高いガラス転移温度を有する(それぞれDIN53765により測定)。
【0051】
このグラフト共重合体Cは、通常では50〜1200nm、好ましくは50〜800nm、特に好ましくは50〜600nmの平均粒子径d50を有する。この粒子径は、グラフト幹部C1として50〜1000nm、好ましくは50〜700nm、特に好ましくは50〜500nmの平均粒子径d50を使用する場合に達成することができる。本発明の1つの実施形態によると、粒子径分布は単峰性である。他の本発明による実施形態によると、成分Cの粒子径分布は複峰性であり、その際、成分Cの質量を基準として60〜90質量%は50〜200nmの平均粒子径を有し、10〜40質量%は200〜800nmの平均粒子径を有する。平均粒子径又は粒子径分布として、積算質量分布(integralen Massenverteilung)から決定されたサイズを定める。この平均粒子径及び本発明の範囲内で挙げられた他の平均粒子径は、全ての場合で、HDCを用いて測定されたような粒子径の質量平均である(W. Wohlleben及びH. Schuch, Measurement of Particle Size Distribution of Polymer Latexes, 2010, 編者: Luis M. Gugliotta及びJorge R. Vega, p. 130 - 153)。
【0052】
このグラフト共重合体Cは、上記されたグラフト幹部C1の少なくとも1種への成分C21及びC22のグラフト重合により製造することができる。グラフト共重合体Cのために適した製造方法は、乳化重合、溶液重合、塊状重合又は懸濁重合である。好ましくは、このグラフト共重合体Cは、成分C1のラテックスの存在で、水溶性又は油溶性開始剤、例えばペルオキソ二硫酸塩又は過酸化ベンジルの使用下で、又はレドックス開始剤を用いて、20〜90℃の温度でラジカル乳化重合により製造される。レドックス開始剤は、20℃未満の重合のためにも適している。適切な重合法は、例えばWO-A-02/10222, DE-A-28 26 925, DE-A-31 49 358及びDE-C 12 60 135に記載されている。このグラフト幹部の構築は、好ましくは、DE-A-32 27 555, DE-A-31 49 357, DE-A-31 49 358, DE-A-34 14 118に記載されているような乳化重合法で行われる。50〜1200nmの平均粒子径の定義された調節は、好ましくは、DE-C-12 60 135及びDE-A 28 26 925又はApplied Polymer Science, 第9巻(1965), 2929頁に記載された方法により行う。異なる粒子径を有する重合体を使用することは、例えばDE-A-28 26 925及びUS-A-5 195 480から公知である。DE-B-12 60 135に記載された方法によると、まず、本発明の1つの実施形態により使用されたアクリル酸エステルC11及び架橋剤又はグラフト剤として作用する化合物C12を場合により他のモノエチレン性不飽和モノマーC13と一緒に、水性エマルション中で、公知のように、20〜100℃、好ましくは50〜90℃の温度で重合させることによりグラフト幹部C1を製造する。通常の乳化剤、例えばアルキルスルホン酸又はアルキルアリールスルホン酸のアルカリ金属塩、アルキルスルファート、脂肪アルコールスルホナート、10〜30個の炭素原子を有する高級脂肪酸の塩又は樹脂石けんを使用することができる。好ましくは、アルキルスルホナート又は10〜18個の炭素原子を有する脂肪酸のナトリウム塩が使用される。1つの実施形態によると、この乳化剤を、グラフト幹部C1の製造の際に使用されたモノマーを基準として0.5〜5質量%、特に0.7〜2質量%の量で使用される。一般に、4:1〜0.6:1の水対モノマーの質量比で作業される。重合開始剤として、特に市販の過硫酸塩、例えば過硫酸カリウムが使用される。しかしながらレドックス系も使用することができる。これらの開始剤は、一般に、グラフト幹部C1の製造の際に使用されたモノマーを基準にして0.1〜1質量%の量で使用される。他の重合助剤として、好ましくは6〜9のpH値を調節する通常の緩衝剤物質、例えば炭酸水素ナトリウム及びピロリン酸ナトリウム、並びに分子量調節剤、例えばメルカプタン、テルピノール又はダイマーのα−メチルスチレン0〜3質量%を重合の際に使用することができる。正確な重合条件、特に乳化剤の種類、配量及び量は、上記の範囲内で個々に、架橋されたアクリル酸エステル重合体C1の得られたラテックスが50〜1000nm、好ましくは50〜700nm、特に好ましくは50〜500nmの範囲内のd50値を有するように決定される。この場合、ラテックスの粒子径分布は、好ましくは、W. Maechtie及びL. Boerger, Analytical Ultracentrifugation of Polymers and Nanoparticles, (Springer, Berlin, 2006). ISBN 3-540-23432-2に従って、<0.75の多分散性指数で狭くあるべきである。
【0053】
このグラフト共重合体Cの製造のために、次の段階で、架橋されたアクリル酸エステル重合体C1のこうして得られたラテックスの存在で、本発明の1つの実施形態に従って、成分C21、好ましくはスチレン、成分C22、好ましくはアクリルニトリル及び/又は(メタ)アクリル酸エステル、及び場合により他の不飽和モノマーからなるモノマー混合物を重合させることができる。この場合、モノマーC21、C22及び場合による不飽和のモノマーは、個別に又は相互に混合した形で添加することができる。例えば、まずスチレンを単独でグラフトさせ、その後にスチレンとアクリルニトリルとからなる混合物をグラフトさせることもできる。グラフト幹部として利用する架橋されたアクリル酸エステル重合体へのグラフト共重合は、ここでも水性エマルション中で、上記の通常の条件下で実施するのが好ましい。このグラフト共重合は、合目的に、グラフト幹部C1の製造のための乳化重合と同じ系中で行うことができ、その際、必要な場合には他の乳化剤及び開始剤を添加することができる。本発明の1つの実施形態によりグラフトされるべきモノマー混合物は、この反応混合物に、一度に添加するか、例えば複数のグラフト枝部の構築のために複数の段階で回分式に添加するか、又は好ましくは重合の間に連続的に添加することができる。架橋するアクリル酸エステル重合体C1の存在での成分C21、C22及び場合により他のモノマーの混合物のグラフト共重合は、グラフト共重合体C中で、成分Cの質量を基準として10〜70質量%、好ましくは20〜60質量%、特に30〜55質量%のグラフト度が生じるように実施される。グラフト共重合の際のグラフト収率は100%ではないため、好ましくは、グラフト共重合の際に、所望のグラフト度に相当するよりも若干多い量の、C21、C22及び場合により他のモノマーからなるモノマー混合物を使用するのが好ましい。グラフト共重合の際のグラフト収率の制御及びそれによる製造されたグラフト共重合体Cのグラフト度の制御は当業者に周知であり、例えば、特に、これらのモノマーの供給速度により又は調節剤添加により行うことができる(Chauvel, Daniel, ACS Polymer Preprints 15 (1974), 第329頁〜第333頁)。乳化グラフト共重合の場合に、一般に、グラフト共重合体を基準として5〜15質量%の、成分C21、C22及び場合による他のモノマーの遊離の、グラフトされていない共重合体が生じる。グラフト共重合の際に得られる重合生成物中のグラフト共重合体Cの割合は、例えばUS-A-2004/0006178に記載された方法により測定することができる。
【0054】
本発明による方法の他の実施形態の場合には、グラフト幹部C1の製造を、シード粒子の存在で行うことができ及び/又はグラフト幹部C1の製造の後でグラフト枝部C2の適用の前に凝集工程を実施することができる。この両方の方法オプションは、当業者に公知であり及び/又は文献に記載されており、例えば、粒子径及び粒子径分布を適切に調節するために選択される。
【0055】
シード粒子は、一般に10〜200nm、好ましくは10〜180nm、特に好ましくは10〜160nmの粒子径d50を有する。狭い幅の粒子径分布を有するシード粒子を使用するのが好ましい。その中で、単峰性の粒子径分布を有するシード粒子が特に好ましい。このシード粒子は、基本的にゴム弾性のポリマーを形成するモノマー、例えば1,4−ブタジエン又はアクリラートから構築されていてもよいか、又はガラス転移温度が0℃より高い、好ましくは25℃より高いポリマーから構築されていてもよい。このシード粒子の基礎となる好ましいモノマーには、ビニル芳香族モノマー、例えばスチレン、環置換されたスチレン又はα−メチルスチレン、その中でも好ましくはスチレン、アクリルニトリル、アルキルアクリル酸、アルキルアクリラート、その中でも好ましくはn−ブチルアクリラートが挙げられる。前記のモノマーの2種又はそれ以上の、好ましくは2種の混合物も考慮される。ポリスチレン又はn−ブチルアクリラートからなるシード粒子が更に特に好ましい。この種のシード粒子の製造は当業者に公知であるか、又は自体公知の方法により行うことができる。好ましくは、このシード粒子は粒子形成する不均一重合法(heterogene Polymerisationsverfahren)により、好ましくは乳化重合により得られる。このシード粒子は、本発明の場合に装入され、この場合、このシード粒子はまず別個に製造し、後処理しかつ次いで使用することも可能である。しかしながら、このシード粒子を製造し、このシード粒子を事前の後処理なしで、C11、C12及び場合によりC13からなるモノマー混合物に添加することも可能である。
【0056】
このグラフト幹部C1を部分的に又は完全に凝集する方法は当業者に公知であるか又はこの凝集は当業者に自体公知の方法により行うことができる(例えばKeppler et al. Angew. Markomol. Chemie, 2, 1968 Nr. 20, 第1頁〜第25頁参照)。この凝集法は、原則として制限はない。物理学的方法、例えば凍結凝集法又は圧縮凝集法を使用することもできる。しかしながら、このグラフト幹部を凝集させるために化学的方法も使用することもできる。後者の化学的方法には、電解質の添加又は無機酸もしくは有機酸の添加が挙げられる。好ましくは、この凝集は凝集重合体を用いて行われる。このような重合体として、例えばポリエチレンオキシドポリマー、ポリビニルエーテル又はポリビニルアルコールが挙げられる。適切な凝集重合体には、更に、C1〜C12−アルキルアクリラート又はC1〜C12−メタアルキルアクリラート又は極性コポリマー、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、エチルアクリルアミド、n−ブチルアクリルアミド、マレイン酸アミド又は(メタ)アクリル酸を含む共重合体が挙げられる。これらのモノマーの他に、この共重合体は、他のモノマー、その中でもジエン、例えばブタジエン又はイソプレンから構成されていてもよい。これらの凝集重合体は、多段階の構造を有していてもよく、例えばコア/シェル構造を有していてもよい。コアとしては、例えばポリアクリラート、例えばポリエチルアクリラートが挙げられ、シェルとしては、(メタ)アルキルアクリラート及び上記の極性コモノマーの粒子が挙げられる。特に好ましい凝集重合体は、エチルアクリラート又はエチルメタクリラート92〜99質量%と(メタ)アクリルアミド及び/又は(メタ)アクリル酸1〜8質量%とからなる共重合体である。この凝集重合体は、一般に分散液の形で使用される。この凝集の際に、一般にグラフト幹部100質量部を基準として0.1〜5、好ましくは0.5〜3質量部の凝集重合体が使用される。
【0057】
本発明によるグラフト共重合体Cは、反応混合物中で沈殿させて、例えばラテックスエマルション又はラテックス分散液として更に使用することができる。これとは別に及び大抵の適用のために好ましくは、これらは更なる工程で後処理することもできる。後処理のための対策は当業者に公知である。これには、例えば、グラフト共重合体Cを反応混合物から、例えば噴霧乾燥、剪断又は強酸もしくは核剤、例えば無機化合物、例えば硫酸マグネシウムを用いた沈殿により単離することが挙げられる。反応混合物中に存在するグラフト共重合体Cは、しかしながら完全に又は部分的に脱水することによって後処理することもできる。同様に、前記の対策の組合せにより後処理を行うこともできる。
【0058】
これらの成分の混合物は、公知の方法によるあらゆる任意の様式で行うことができる。これらの成分が例えば乳化重合によって製造されている場合、得られたポリマー分散液を相互に混合し、その後でこれらの重合体を一緒に沈殿させ、この重合体混合物を後処理することも可能である。しかしながら、好ましくはこれらの成分の混合は、これらの成分の共通の押出、混練又はロール練りにより行い、この場合、これらの成分は、必要な場合には、予め重合の際に得られた溶液又は水性分散液から単離されている。水性分散液中で得られた、グラフト共重合の生成物Cは、部分的にだけ脱水されていてもよく、湿った粒状物として硬質マトリックスと混合し、その際、次いで混合の間にグラフト共重合体C)の完全な乾燥を行う。
【0059】
好ましいグラフト共重合体C)は
1) アルキル基中に1〜8個のC原子を有するアルキルアクリラートを基礎としかつ0℃未満のガラス転移温度を有するゴム弾性ポリマーからなるグラフト幹部 40〜80質量%
2) 次の成分C21)及びC22)からなるグラフト枝部 20〜60質量%
21) スチレン又は一般式Iaの置換スチレン又はそれらの混合物 60〜85質量%
22) 少なくとも1種の不飽和ニトリル 15〜35質量%
から構築されている。
【0060】
本発明による成形コンパウンドの成分D)として、式(I)の化合物が使用される:
【化10】
【0061】
この化合物は、0.1〜1、好ましくは0.2〜0.9、特に0.2〜0.7質量%の量で使用される。
【0062】
この立体障害アミン(CAS番号52829−07−9)及びその製造は当業者に公知であり、文献に記載されている(例えばUS-A-4 396 769及びこれに引用された文献箇所を参照)。市場では、BASF SEからTinuvin(R) 770の商品名で入手可能である。
【0063】
本発明による成形コンパウンドの成分E)として、一般式(II):
【化11】
の化合物の混合物が、A〜Hを基準として0.1〜1、好ましくは0.2〜0.9、特に0.2〜0.7質量%の量で使用される。
【0064】
これらの立体障害アミン(CAS番号167078−06−0)及びその製造は当業者に公知であり、文献に記載されている(Carlsson et al.著, Journal of Polymer Science; Polymer Chemistry Edition (1982), 20(2), 575-82)。これは、Cytec Industriesから、Cyasorb(R) 3853の商品名で販売されている。
【0065】
本発明による成形コンパウンドの成分F)として、式(III)から(VI)の化合物を個々に又はこれらの混合物を、0〜1、好ましくは0.1〜0.5、特に0.1〜0.3質量%の量で使用することができる。
【0066】
式IIIの化合物は、n=2〜20を有する混合物である。
【化12】
【0067】
この立体障害アミン(CAS番号71878−19−8)及びその製造は当業者に公知であり、文献に記載されている(例えばEP-A-93 693及びそこに引用された文献箇所を参照)。これは、BASF SEから、Chimassorb(R) 944の商品名で販売されている。
【0068】
本発明による成形コンパウンドの他の成分Fとして、式(IV)の化合物の混合物を使用することができる:
【化13】
【0069】
この立体障害アミン(CAS番号101357−37−3)及びその製造は当業者に公知であり、文献に記載されている(例えばUS-A-5 208 132及びこれに引用された文献箇所を参照)。これは、ADEKAから、Adeka Stab(R) LA-68の商品名で販売されている。
【0070】
本発明による成形コンパウンドの他の成分F)として、式(V)の化合物の混合物を使用することができる:
【化14】
【0071】
この立体障害アミン(CAS番号82451−48−7)及びその製造は当業者に公知であり、文献に記載されている(例えばUS-A-4 331 586及びこれに引用された文献箇所を参照)。これは、Cytec Industriesから、Cyasorb(R) UV-3346の商品名で販売されている。
【0072】
本発明による成形コンパウンドの他の成分F)として、式(VI)の化合物の混合物を使用することができる:
【化15】
【0073】
この立体障害アミン(CAS番号192268−64−7)及びその製造は当業者に公知であり、文献に記載されている(例えばEP-A-782 994及びそこに引用された文献箇所を参照)。これは、BASF SEから、Chimassorb(R) 2020の商品名で販売されている。
【0074】
成分G)として、本発明による成形コンパウンドは、(A〜Hを基準として)0〜30質量%、好ましくは0.5〜20、特に1〜10質量%の
1) 1種又はそれ以上のビニル芳香族モノマーから誘導された構造単位 49.5〜99.5質量%、好ましくは49.5〜93.5質量%、
2) 1種又はそれ以上のビニルシアニドから誘導された構造単位 0〜50質量%、好ましくは6〜50質量%、
3) 1種又はそれ以上のジカルボン酸無水物から誘導された構造単位 0.5〜40質量%、好ましくは0.5〜2.4質量%、及び
4) 他の共重合可能なモノマーから誘導された構造単位 0〜25質量%、
からなるコポリマーを有していてもよく、
その際、この質量%はそれぞれ、成分g1)、g2)、g3)及びg4)から誘導された構造単位の全質量を基準にし、かつ合わせて100質量%となる。
【0075】
好ましい成分G)は、
1) 49.2〜93.2質量%
2) 6〜50質量%
3) 0.8〜2.2質量%
4) 0〜25質量%
を有する。
【0076】
成分g1)として、当業者に公知でかつ先行技術、例えばDE 100 58 302 A1に記載された全てのビニル芳香族モノマーが挙げられ、好ましくはスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ビニルナフタレン又はこれらの混合物が使用され、特に好ましくはスチレンが使用される。
【0077】
成分g2)として、当業者に公知でかつ先行技術、例えばDE 25 40 517 A1に記載された全てのビニルシアニドが挙げられ、好ましくはアクリルニトリル、メタクリルニトリル又はこれらの混合物が使用され、特に好ましくはアクリルニトリルが使用される。
【0078】
成分g3)として、当業者に公知でかつ先行技術に記載された全てのジカルボン酸無水物が挙げられ、好ましくは無水マレイン酸、メチルマレイン酸無水物、イタコン酸無水物又はこれらの混合物が使用され、特に好ましくは無水マレイン酸が使用される。
【0079】
本発明によるコポリマーG)の成分g4)として、成分g1)、g2)及びg3)と共重合可能でかつこれらとは異なる、当業者に周知の他のモノマーが使用される。
【0080】
特に、コポリマーG)は、スチレン−アクリルニトリル−無水マレイン酸コポリマーから構成されているのが好ましい。
【0081】
コポリマーG)の製造は、塊状重合又は溶液重合によって、好ましくはしかしながら溶液重合によって、有機溶剤、例えばシクロヘキサン、エチルベンゼン、トルエン又はジメチルスルホキシド、好ましくはエチルベンゼンの存在で行われる。
【0082】
溶液重合の場合も、塊状重合の場合も、重合反応の開始は、基本的に、例えばDE100 58 302 A1に記載されているような化学的重合開始剤の添加により行うことができ、好ましくはこの開始は、熱によってのみで、つまり重合開始剤の添加なしで行われる。この製造は、バッチ法で又はセミバッチ法で行うことができるが、好ましくは連続的な方法操作が実施される。
【0083】
本発明による方法の特に好ましい実施形態の場合には、この方法操作を連続的に定常の条件下で行い;定常の条件とは、全体の反応体の濃度及び形成されるコポリマーG)の組成が反応の期間の間に実際に一定のままであることを意味する(モノマー組成とポリマー組成との間の関連についてのデータは、定常の反応実施と同じように、特にEP 0 001 625 A1及びDE 25 40 517 A1から推知することができる)。
【0084】
適切な方法パラメータ、例えば圧力、温度、滞留時間など、この方法を実施するために適切な装置並びにモノマー、存在する場合には溶剤、存在する場合には開始剤及び場合により重合添加物の適切な計量供給流量は当業者に公知であり、先行技術に記載されている。
【0085】
重合混合物の後処理及びコポリマーG)の単離は、当業者に公知でかつ先行技術に記載された方法により、例えば真空の印加又は不活性ガスによりストリッピングによる低分子量の化合物の分離により行うことができる。
【0086】
好ましい成分G)は、成分B)のニトリル含有量に対して10質量%未満のニトリル含有量の相違を有する。
【0087】
成分H)として、本発明による成形コンパウンドは、他の添加剤を0〜60、特に50質量%まで含有することができる。
【0088】
成分H)として、エチレンコポリマー、エチレン−プロピレンコポリマー、ポリエステルエラストマー又は熱可塑性ポリウレタンを使用することもできる。
【0089】
好ましくは次のモノマーの少なくとも2から構成された共重合体が特に一般的である:エチレン、プロピレン、イソブテン、クロロプレン、酢酸ビニル、スチレン、アクリルニトリル、並びに、アルコール成分中に1〜18個のC原子を有するアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステル。
【0090】
この種のポリマーは、例えばHouben-Weyl, Methoden der organischen Chemie, Bd. 14/1 (Georg-Thieme-Verlag, Stuttgart, 1961 ), 第392頁〜第406頁及びC.B. Bucknallの学術論文, 「Toughened Plastics」 (Applied Science Publishers, London, 1977)に記載されている。
【0091】
成分H)として、本発明による成形コンパウンドは、10〜40、好ましくは16〜22このC原子を有する飽和又は不飽和の脂肪族カルボン酸と2又は40、好ましくは2〜6個のC原子を有する飽和の脂肪族アルコール又はアミンとの少なくとも1種のエステル又はアミド0〜5、好ましくは0.05〜3、特に0.1〜2質量%を有していてもよい。
【0092】
これらのカルボン酸は1価又は2価であることができる。例として、ペラルゴン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、マルガリン酸、ドデカン二酸、ベヘン酸及び特に好ましくはステアリン酸、カプリン酸及びモンタン酸(30〜40個のC原子を有する脂肪酸の混合物)が挙げられる。
【0093】
脂肪族アルコールは1〜4価であることができる。アルコールについての例はn−ブタノール、n−オクタノール、ステアリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ペンタエリトリットであり、その際、グリセリン及びペンタエリトリットが好ましい。
【0094】
脂肪族アミンは1〜3価であることができる。この例は、ステアリルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジ−(6−アミノヘキシル)アミンであり、その際、エチレンジアミン及びヘキサメチレンジアミンが特に好ましい。好ましいエステル又はアミドは、相応してグリセリンジステアラート、グリセリントリステアラート、エチレンジアミンジステアラート、グリセリンモノパルミタート、グリセリントリラウラート、グリセリンモノベヘナート及びペンタエリトリットテトラステアラートである。
【0095】
多様なエステル又はアミドの混合物又はアミドとのエステルとの混合物を組み合わせて使用することもでき、その際に混合比は任意である。
【0096】
繊維状の又は粒子状の充填剤H)として、炭素繊維、ガラス繊維、ガラスビーズ、非晶質ケイ酸、アスベスト、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、チョーク、粉末化された石英、雲母、硫酸バリウム及び長石が挙げられ、これらは60質量%まで、特に50質量%までの量で使用される。
【0097】
好ましい繊維状の充填剤として、炭素繊維、アラミド繊維及びチタン酸カリウム繊維が挙げられ、この場合、ガラス繊維はEガラスとして特に好ましい。これらは、粉砕ガラスとしてロービング(Rovings)又は切断ガラス(Schnittglas)を市販の形で使用することができる。
【0098】
この繊維状の充填剤は、熱可塑性プラスチックとの相溶性を良くするためにシラン化合物で表面処理されていてもよい。
【0099】
適当なシラン化合物は、一般式
(X−(CH2nk−Si−(O−Cm2m+14-k
のシラン化合物であり、前記式中、置換基は次の意味を有する:
【化16】
nは2〜10、好ましくは3〜4の整数であり、
mは1〜5、好ましくは1〜2の整数であり、
kは1〜3整数、好ましくは1である。
【0100】
好ましいシラン化合物は、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノブチルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノブチルトリエトキシシラン及び置換基Xとしてグリシジル基を有する相応するシランである。
【0101】
これらのシラン化合物は、一般に、0.05〜5、好ましくは0.5〜1.5、特に0.8〜1質量%の量(Hを基準として)で表面被覆のために使用される。
【0102】
針状の鉱物性充填剤も適している。
【0103】
針状の鉱物性充填剤とは、本発明の意味範囲で、極めて特徴的な針状の特性を有する鉱物性充填剤であると解釈される。例として、針状のウォラストナイトが挙げられる。好ましくは、この鉱物は8:1〜35:1、好ましくは8:1〜11:1のL/D(長さ/直径)比を有する。この鉱物性充填剤は、場合により前述のシラン化合物で前処理されていても良いが、この前処理は無条件には必要でない。
【0104】
他の充填剤として、カオリン、焼成カオリン、タルク及びチョークが挙げられる。成分として、本発明による熱可塑性成形コンパウンドは、通常の加工助剤、例えば安定剤、酸化抑制剤、熱分解及び紫外線による分解に対する薬剤、滑剤及び離型剤、着色剤、例えば染料及び顔料、核剤、可塑剤などを有することがきる。
【0105】
酸化防止剤及び熱安定剤の例として、立体障害フェノール及び/又は亜リン酸塩、ヒドロキノン、芳香族の第2級アミン、例えばジフェニルアミン、これらの群の多様な置換された代表物及びこれらの混合物が、熱可塑性成形コンパウンドの質量を基準として1質量%までの濃度で挙げられる。
【0106】
一般に、成形コンパウンドを基準として2質量%までの量で使用されるUV安定剤として、多様な置換されたレゾルシン、サリチラート、ベンゾトリアゾール及びベンゾフェノンが挙げられる。
【0107】
エステル交換安定剤として、Irgaphos(R) PEPQ並びにリン酸塩(例えばリン酸モノ亜鉛(Monozinkphosphat))が挙げられる。
【0108】
無機顔料、例えば二酸化チタン、ウルトラマリンブルー、酸化鉄及びカーボンブラック、更に有機顔料、例えばフタロシアニン、キナクリドン、ペリレン並びに染料、例えばニグロシン及びアントラキノンを着色剤として添加することもできる。
【0109】
核剤として、フェニルホスフィン酸ナトリウム、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素及び好ましくはタルクを使用することができる。
【0110】
他の核剤及び離型剤は、通常では1質量%までの量で使用される。長鎖脂肪酸(例えばステアリン酸又はベヘン酸)、これらの塩(例えばステアリン酸カルシウム又はステアリン酸亜鉛)又はモンタンろう(28〜32個のC原子の鎖長を有する直鎖の飽和カルボン酸からなる混合物)、並びにモンタン酸カルシウム又はモンタン酸カルシウム又はナトリウム、並びに低分子量ポリエチレンろう又はポリプロピレンろうが好ましい。
【0111】
可塑剤の例として、フタル酸ジオクチルエステル、フタル酸ジベンジルエステル、フタル酸ブチルベンジルエステル、炭化水素油、N−(n−ブチル)ベンゼンスルホンアミドが挙げられる。
【0112】
本発明による成形コンパウンドは、更にフッ素含有のエチレン重合体0〜2質量%を含むことができる。これは55〜76質量%、好ましくは70〜76質量%のフッ素含有量を有するエチレンの共重合体である。
【0113】
この例は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンヘキサフルオロプロピレンコポリマー又は僅かな割合(一般に50質量%まで)の共重合可能なエチレン性不飽和モノマーを有するテトラフルオロエチレン共重合体である。これらは、例えばSchildknecht, 「Vinyl and Related Polymers」, Wiley-Verlag, 1952, 第484頁〜第494頁及びWall著、「Fluorpolymers」(Wiley Interscience, 1972)に記載されている。
【0114】
このフッ素含有エチレン重合体は成形コンパウンド中に均質に分配されて存在し、好ましくは0.05〜1μm、特に0.1〜5μmの範囲内の粒子径d50(数平均)を有する。この僅かな粒子径は、特に好ましくはフッ素含有エチレン重合体の水性分散液の使用及びポリエステル溶融物中への混入により達成される。
【0115】
本発明による熱可塑性成形コンパウンドは、出発成分を通常の混合装置、例えばスクリュー押出機、ブラベンダーミル又はバンバリーミル中で混合し、引き続き押し出す自体公知の方法により製造することができる。押出の後に押出物を冷却し、粉砕することができる。個々の成分を予備混合し、次いで生じる出発材料を個別に及び/又は同様に混合して添加することもできる。混合温度は、一般に230〜290℃である。
【0116】
他の好ましい作業様式によると、他の成分をポリエステルプレポリマーと混合し、仕上げ、顆粒にすることもできる。得られた顆粒を、固相の形で引き続き不活性ガス中で連続的又は不連続的に、成分A)の融点を下回る温度〜所望の粘度までの温度で縮合させる。
【0117】
本発明による熱可塑性成形コンパウンドは、良好な加工性及び良好な熱安定性と同時に良好な機械特性によって傑出している。特に、高温での加工安定性及び耐候性は明らかに改善されている。
【0118】
これらは、繊維、シート及びあらゆる種類の成形品の製造のため、特にプラグ、スイッチ、ケーシング部材、ケーシングカバー、ヘッドライトバックグラウンド(ベゼル)、シャワーヘッド、計器、アイロン、ロータリースイッチ、オーブンのつまみ、フライヤーカバー、ドアグリップ、(バック)ミラーケーシング、(リア)ウィンドウワイパ、光導波路ジャケットとしての使用のために適している。
【0119】
電気/電子分野において、本発明によるポリエステルを用いて、プラグ、プラグ部材、コネクタ、配線束コンポーネント、スイッチキャリア、スイッチキャリアコンポーネント、立体的に射出成形されたスイッチキャリア、電気的接続エレメント、メカトロニクスコンポーネント、オプトエレクトロニクス部材を製造することができる。
【0120】
自動車の室内において、計器ボード、ステアリングコラムスイッチ、シート部材、ヘッドレスト、センタコンソール、トランスミッションコンポーネント及びドアモジュールのための使用、自動車の室外において、ドアグリップ、ヘッドライトコンポーネント、車外ミラーコンポーネント、ウィンドワイパコンポーネント、ウィンドワイパ保護ケーシング、グリル、ルーフレール、サンルーフフレーム並びにボディ外装部品のための使用が可能である。
【0121】
キッチン分野及び家庭分野のために、このポリエステルの使用は、キッチン用品、例えばフライヤー、アイロン、ボタン用のコンポーネントの製造のため、ガーデニング余暇分野、例えば散水システム又はガーデニング機器用のコンポーネントにおける使用が可能である。
【0122】
実施例
成分A:
130ml/gの粘度VZ及び34mval/kgのカルボキシル末端基含有量を有するポリブチレンテレフタラート(BASF SE社のUltradur(R) B 4500)(VZは、フェノール/o−ジクロロベンゼンからなる0.5%の溶液中で測定)、25℃で1:1の混合物。
【0123】
成分B:
19質量%のAN割合及び70ml/gの粘度数(DMF中で測定、0.5質量%の溶液)を有するSAN
【0124】
成分C1
微細粒のグラフト共重合体の製造:
c1) ブチルアクリラート16部及びトリシクロデセニルアクリラート0.4部を、水150部中で、C12〜C18−パラフィンスルホン酸のナトリウム塩1部、過硫酸カリウム0.3部、炭酸水素ナトリウム0.3部、ピロリン酸ナトリウム0.15部の添加下で撹拌しながら60℃に加熱した。反応が開始してから10分後に、3時間内で、ブチルアクリラート82部及びトリシクロデセニルアクリラート2部とからなる混合物を添加した。その後でそれ自体を1時間放置した。得られたラテックスは40質量%の固体含有量を有していた。平均粒子径(質量平均)は76nmに測定された。粒子径分布は狭かった(商Q=0.29)。
【0125】
c2) c1)により得られたラテックス150部を、スチレン及びアクリルニトリル(質量比75:25)からなる混合物40部及び水60部と混合し、撹拌しながら更に過硫酸カリウム0.03部及び過酸化ラウロイル0.05部の添加後に4時間65℃に加熱した。次いで、塩化カルシウム溶液で95℃で沈殿させ、水で洗浄し、温風流で乾燥した。このグラフト共重合体のグラフト度は35%であった。
【0126】
トルエン中の膨潤指数は13.6であった(測定法は明細書第10頁を参照)。
【0127】
成分C/1V
この製造は、成分C/1により行うが、トリシクロデセニルアクリラート5部を用いた。トルエン中の膨潤指数は4.9であった。
【0128】
成分D/1
式(I)の化合物は、BASF SEから、Tinuvin(R) 770の商品名で市場で販売されていた。
【0129】
D/1V
式(VII)の化合物は、BASF SEから、Tinuvin(R) 765の商品名で市場で販売されていた。
【化17】
【0130】
成分E/1
式(II)の化合物は、Cytec Industriesから、Cyasorb(R) 3853の商品名で市場で販売されていた。
【0131】
成分F
F/1
式(III)の化合物の混合物は、BASF SEから、Chimassorb(R) 944の商品名で市場で販売されていた。
【0132】
F/2
式(V)の化合物の混合物は、Cytec Industriesから、Cyasorb(R) UV-3346の商品名で市場で販売されていた。
【0133】
F/1V
式(VIII)の高分子の立体障害アミン、CAS番号106990−42−6、はSABO S.p.A.から、Sabostab(R) 119の商品名で市場で販売されていた。
【化18】
【0134】
成分G
成分Gとして、74.1/23.9/2.0(質量%)の組成を有するスチレン−アクリルニトリル−無水マレイン酸ターポリマーを使用した、粘度数:67ml/g(DMF中で測定、0.5質量%の溶液)。
【0135】
成分H/1
エポキシサイズ剤で仕上げ処理したガラス繊維、繊維直径10μm。
【0136】
成分H/2
カーボンブラック:Black Pearls 880型、Cabot Corporationにより市場で市販されている。
【0137】
成形コンパウンドの製造及び試験
これらの成分の混合のために、二軸押出機を使用した。この溶融物を水浴に通し、顆粒化した。
【0138】
更に、機械特性を射出成形により製造された試料(コンパウンド温度:250℃/金型温度60℃)に関して測定した。
【0139】
耐候性についての尺度として、試験体(60×60×2mm、ファミリーモールド(family mould)中でISO 294により製造、250℃のコンパウンド温度、60℃の金型温度)について、SAE J 1960による耐候試験を800時間の試験期間で実施した。表1に挙げられた暴露時間の後に、表面の評価を灰色度ケール(5:変化なし、1:激しい変化)を用いて行い、その際、この試料は後処理せずに調査した。この生成物の衝撃強さを、ISO試験片に関してISO 179 1eUによって測定した。極限引張強さ及び破断点引張強さをISO 527により測定した。加工安定性の評価のために、この成形コンパウンドを300℃のコンパウンド温度/60℃の金型温度で加工した。
【0140】
使用したスチレンコポリマーの組成は、定量的にIR分光分析により測定した。
【0141】
この成形コンパウンドの組成及び試験結果は表1に記載されている。
【0142】
表1:
【表1】