(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した特許文献1に開示されている技術を半導体検査装置に適用した場合、レシピ条件を変更した時、計算したレシピ終了時刻と実際の時刻にずれが生じる可能性がある。例えば、半導体検査装置のレシピ条件は半導体製造装置のように画一的ではなく、検査工程の目的に応じて細かく異なる。レシピ条件として、ウェーハの回転を補正するアライメント、測長位置検出を行うアドレッシング、測長を行うメジャーメントといったステップを自由に選択できる他、測長前の画像調整手段として、合焦点に調整するオートフォーカスや非点を除去するオートスティグマなども設定できる。その他に、画像を取得する際のフレーム枚数や測長対象となるパターンの座標登録など全ての項目を合わせると、レシピで設定できる条件の組合せは、数百にのぼる。そのため、レシピ実行時間の始まりから終わりまでを1つのレシピ基準総時間として記憶する特許文献1の方法では、レシピ条件を変更した時に、正確なレシピ終了時刻を計算することができない。
【0007】
さらに、経年変化によって装置状態は刻々と変化するが、前述した特許文献1では、レシピ条件を変更した時に、経年変化による装置状態の変化に合わせたレシピ終了時刻を算出することができない。例えば、半導体検査装置のステージは、XYの2軸方向に移動するため、別々にモーターを備えている。設定される座標はXYの2次元であるため、現在の座標と移動先の座標によってXとYのモーター駆動量が異なり、モーターの劣化度合いも異なる。すなわち、レシピ条件によってステージ移動時間が変化する。そのため、特許文献1の方法では、レシピ条件を変更した時に、経年変化の影響を反映してレシピ終了時刻を計算することができない。
【0008】
このように、従来技術においては、CIMによるライン全体の最適化を行う場合、レシピ条件によって算出時間にずれが生じること、また経年変化による装置状態の変化を把握できないこと等の理由により、レシピ実行時間を正確に予測できず、生産計画の精度向上が行えないという課題があった。
【0009】
そこで、本発明は、このような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、その代表的な目的は、レシピを作成した時点で、検査条件の組合せや経年変化による装置状態の変化を反映した正確なレシピ実行時間を予測する半導体検査技術を提供することにある。さらに詳細には、正確なレシピ実行時間を提供することで、CIMによる効率的な装置運用を可能とするものである。
【0010】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0012】
(1)代表的なレシピ実行時間演算装置は、生産管理ホストコンピュータに表示されるレシピ検査時間を演算するレシピ実行時間演算装置であって、以下のような特徴を有するものである。
【0013】
前記レシピ実行時間演算装置は、既存のレシピ条件と該レシピ条件に対する既存の動作時間との関係をニューラルネットワークに学習させ、前記学習済みニューラルネットワークを用いて、入力されたレシピ条件からレシピ検査時間を予測する機能部を備えることを特徴とする。
【0014】
(2)代表的な半導体検査装置は、検査工程の目的に応じてレシピ条件を設定する半導体検査装置であって、以下のような特徴を有するものである。
【0015】
前記半導体検査装置は、前記レシピ条件を入力するレシピ条件入力部と、前記レシピ条件入力部に入力された前記レシピ条件からレシピ検査時間を演算するレシピ実行時間演算装置と、前記レシピ実行時間演算装置で演算された前記レシピ検査時間を伝送する通信部と、前記通信部を介して受信した前記レシピ検査時間を表示する生産管理ホストコンピュータと、を備える。
【0016】
そして、前記レシピ実行時間演算装置は、既存のレシピ条件と該レシピ条件に対する既存の動作時間との関係をニューラルネットワークに学習させ、前記学習済みニューラルネットワークを用いて、前記レシピ条件入力部に入力された前記レシピ条件から前記生産管理ホストコンピュータに表示する前記レシピ検査時間を予測する機能部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0018】
すなわち、代表的な効果は、レシピ条件に基づく実際の検査を実行しなくても、オペレータがレシピを作成した時点で、検査条件の組合せや経年変化による装置状態の変化を反映した正確なレシピ実行時間を予測できるため、CIMによる効率的な装置運用が可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の実施の形態においては、便宜上その必要があるときは、複数の実施の形態またはセクションに分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらは互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。
【0021】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0022】
[実施の形態の概要]
(1)実施の形態に係るレシピ実行時間演算装置(一例として、()内に対応する構成要素、符号などを付記)は、生産管理ホストコンピュータに表示されるレシピ検査時間を演算するレシピ実行時間演算装置(35)であって、以下のような特徴を有するものである。
【0023】
前記レシピ実行時間演算装置は、既存のレシピ条件と該レシピ条件に対する既存の動作時間との関係をニューラルネットワークに学習させ、前記学習済みニューラルネットワークを用いて、入力されたレシピ条件からレシピ検査時間を予測する機能部(例えば、データ記憶部37と時間演算ネット部36、より好適にはデータ記憶部37と時間演算ネット部36と忘却係数決定部51)を備えることを特徴とする。
【0024】
(2)実施の形態に係る半導体検査装置(一例として、()内に対応する構成要素、符号などを付記)は、検査工程の目的に応じてレシピ条件を設定する半導体検査装置(10)であって、以下のような特徴を有するものである。
【0025】
前記半導体検査装置は、前記レシピ条件を入力するレシピ条件入力部(32)と、前記レシピ条件入力部に入力された前記レシピ条件からレシピ検査時間を演算するレシピ実行時間演算装置(35)と、前記レシピ実行時間演算装置で演算された前記レシピ検査時間を伝送する通信部(23)と、前記通信部を介して受信した前記レシピ検査時間を表示する生産管理ホストコンピュータ(33)と、を備える。
【0026】
そして、前記レシピ実行時間演算装置は、既存のレシピ条件と該レシピ条件に対する既存の動作時間との関係をニューラルネットワークに学習させ、前記学習済みニューラルネットワークを用いて、前記レシピ条件入力部に入力された前記レシピ条件から前記生産管理ホストコンピュータに表示する前記レシピ検査時間を予測する機能部(例えば、データ記憶部37と時間演算ネット部36、より好適にはデータ記憶部37と時間演算ネット部36と忘却係数決定部51)を備えることを特徴とする。
【0027】
上述した実施の形態の概要に基づいた各実施の形態を、以下において図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0028】
[実施の形態1]
実施の形態1について、
図1〜
図7を用いて説明する。
【0029】
<半導体検査装置の構成>
まず、
図1を用いて、本実施の形態に係る半導体検査装置の構成について説明する。
図1は、この半導体検査装置の概略構成の一例を示す図である。
【0030】
図1に示すように、半導体検査装置10は、電子線源12、電子レンズ15、偏向器13、および検出器16などを格納した鏡体11と、XYステージ19などを格納した試料室と、ウェーハを試料室内に搬送するための搬送機構24と、各ハードウェアを制御する制御部34と、検出器16から出力される信号を表示画像に生成する表示画像生成部31と、表示画像生成部31で生成した画像を表示する表示部30とを備える。
【0031】
制御部34には、レシピ条件を入力するレシピ条件入力部32と、本発明の特徴であるレシピ実行時間演算装置35が接続されている。この制御部34には、レシピ条件入力部32からレシピ条件20が入力される。この制御部34から、レシピ実行時間演算装置35へレシピ条件&動作時間21が出力される。
【0032】
レシピ実行時間演算装置35には、レシピ実行時間として算出したレシピ検査時間22を伝送する通信部23を介して、受信したレシピ検査時間22を表示する生産管理ホストコンピュータ33が接続されている。このレシピ実行時間演算装置35には、レシピ条件入力部32からレシピ条件20が入力される。このレシピ実行時間演算装置35から、通信部23を介して、生産管理ホストコンピュータ33へレシピ検査時間22が出力される。
【0033】
生産管理ホストコンピュータ33は、レシピ実行時間演算装置35から通信部23を介して受信したレシピ検査時間22と、現在時刻にこのレシピ検査時間22を加算して算出したレシピ終了時刻を視覚的に表示する表示部などを有するコンピュータである。
【0034】
鏡体11においては、電子線源12から出射された電子線14が試料17に照射されると、電子線14が照射された試料17の部位から二次電子や反射電子が放出され、検出器16はそれらを検出する。この時、電子線14は、試料17の観測領域を走査するように偏向制御される。この偏向制御は、制御部34にて偏向器13を制御することにより行われる。また試料17は、XYステージ19上に設置された試料ホールダ18に固定され、XYステージ19の水平方向の移動制御によって、試料17の観測領域の中心位置が定められる。このXYステージ19の水平方向の移動制御は、制御部34にてXYステージ19を制御することにより行われる。また試料17に対して、フォーカス調整を行う時は、制御部34にて電子レンズ15を制御し、電子線14を集束させる。
【0035】
検出器16によって検出された信号は、表示画像生成部31で画像に形成された後、表示部30へ出力される。オペレータは、表示部30に表示された画像を使って測長条件を決定し、レシピを作成する。以後、レシピに従うと、複数枚のウェーハ上に形成されたパターンのサイズを連続的に測ること(測長)ができる。これらの測長データは、デバイス製造条件の評価や工程管理などに利用されており、特にデバイス製造条件の評価では、数千点に及ぶ測長を行っている。このため、正確にレシピ検査時間を把握することは、生産計画の精度向上にとって重要である。
【0036】
<レシピ実行時間演算装置の構成>
次に、
図2および
図3を用いて、前述したレシピ実行時間演算装置35の構成について説明する。
図2は、このレシピ実行時間演算装置35の概略構成の一例を示す図である。
図3は、時間演算ネット部における学習方法のモデルの一例を示す図である。
【0037】
図2に示すように、レシピ実行時間演算装置35は、既存情報を離散的に蓄積するデータ記憶部37と、既存情報の写像関係を学習した時間演算ネット部36から構成される。
【0038】
データ記憶部37は、制御部34から出力されるレシピ条件&動作時間21である個々のレシピ条件と動作時間を離散的に蓄積したものである。1レシピ条件に対して1動作時間を対応させた情報をテーブルに記憶し、ニューラルネットワークに学習させる時の教示データとして用いる。
【0039】
時間演算ネット部36は、データ記憶部37に蓄積されたレシピ条件と動作時間のペア群の情報を入力とし、この情報を学習したニューラルネットワークである。また、この時間演算ネット部36には、レシピ条件入力部32から出力されたレシピ条件20が入力される。そして、この時間演算ネット部36から、生産管理ホストコンピュータ33へレシピ検査時間22が出力される。
【0040】
図3に示すように、時間演算ネット部36は、入力層(n個)、中間層(j個)、出力層(k個)の3層構造からなる階層型ニューラルネットワークになっており、各層は順方向に結合されている。本実施の形態では、入力となるレシピ条件と、出力となる動作時間との間の非線形な関係を学習させる。この時間演算ネット部36の学習方法は、誤差逆伝播法と呼ばれるアルゴリズムを用いる。データ記憶部37に蓄積したレシピ条件i
1,i
2,…,i
nと、ステージ移動時間や画像処理時間、オートフォーカス処理時間、レシピ検査時間といった動作時間の実測値t
1,t
2,…,t
kを教示データとして、この教示データを時間演算ネット部36の出力値y
1,y
2,…,y
kの相対誤差が最小になるように、各層の結合度Wを決定する。結合度W(Wo
jk)は、下記の式(2)に表すことができる。下記の式(1)のEは総誤差評価関数とする。
【0042】
<半導体検査装置の動作>
次に、
図4および
図5〜
図7を用いて、前述した半導体検査装置10の動作について説明する。
図4は、この半導体検査装置10の動作において、レシピ作成時の工程の一例を示す図である。
図5は、時間演算ネット部36における検査時間推定のモデルの一例を示す図である。
図6は、ステージ移動時の速度変化分布の一例を示す図である。
図7は、表示部の表示の一例を示す図である。
【0043】
前述したように構成された半導体検査装置10において、本発明の特徴であるレシピ実行時間演算装置35を適用した時の動作を、
図4のフローに基づいて説明する。オペレータは、レシピ条件入力部32を使ってレシピを作成する。レシピのアライメント、アドレッシング、メジャーメントの各ステップにおいて、条件を設定する。
【0044】
まず、試料17であるウェーハ自体の回転を補正するアライメント条件を設定する(ステップS1)。アライメントは、2点以上のアライメントポイントにXYステージ19を移動した後、事前に登録しておいたアライメント用のテンプレート画像を使ってパターン認識を行い、テンプレート画像と移動先パターンのずれ量を求める。ずれ量を求めることで、ステージ座標系に対するウェーハの回転量を把握できるため、XYステージ19の移動時にその回転量を補正する。そのため、アライメントで設定できる条件には、アライメントポイントの座標、パターン認識に用いるアルゴリズムの種類、画像取得のためのスキャン領域やフレーム枚数、オートフォーカスやオートスティグマの有無等がある。
【0045】
次に、低倍率で測長位置を検出するためのアドレッシング条件を設定する(ステップS2)。アドレッシングは、段階的に測長位置を検出することを目的としている。XYステージ19の移動で測長位置に移動した後、事前に登録しておいたアドレッシング用のテンプレート画像を使ってパターン認識を行い、測長位置を検出する。そのため、アドレッシングで設定する条件には、測長点の座標、パターン認識に用いるアルゴリズムの種類、画像取得のためのスキャン領域やフレーム枚数、オートフォーカスやオートスティグマの有無等がある。
【0046】
最後に、高倍率で測長位置を検出し、測長を行うためのメジャーメント条件を設定する(ステップS3)。メジャーメントは、測長用のテンプレート画像を使ってパターン認識を行い、微調整が可能な偏向器13によるビーム偏向によって、画像の中心に測長パターンを移動させる。設定された撮像条件や測長条件によって、パターンの測長を行う。そのため、メジャーメントで設定する条件には、パターン認識に用いるアルゴリズムの種類、画像取得のためのスキャン領域やフレーム枚数、オートフォーカスやオートスティグマの有無、測長処理の種類等がある。
【0047】
これらレシピ条件からレシピ検査時間を算出するため、時間演算ネット部36を備えるレシピ実行時間演算装置35に、予め既存のレシピ条件と既存の動作時間のペア群を教示データとして、それらの入出力間に非線形な写像関係を構築しておく。そのため、レシピ条件20を入力するだけで、このレシピ条件20が動作時間に与える影響を同時に計算し、レシピ検査時間22を出力することができる。
【0048】
時間演算ネット部36に、レシピ条件20を入力して動作時間を出力する一例として、XYステージ19のステージ移動時間の算出方法を、
図5を用いて説明する。XYステージ19は、レシピ条件として設定されたアライメントポイントやアドレッシングポイントの座標に移動する。XYステージ19が指定された座標に移動する際の移動速度は、スループットと停止精度、両方の性能を満たすため、
図6に示すステージ速度波形(時間の経過に伴うステージ速度)で移動させている。
【0049】
まず、速度ゼロの状態から加速区間を経て、一定速度区間に入る。その後、最終目的位置近傍に近づいたら減速区間に入り、最終目的位置で停止する。このステージ速度波形は、移動距離が遠い場合と近い場合でそれぞれ異なる。また、XYステージ19はXYの2軸方向に移動するため、XとYのそれぞれにモーターが備えられており、移動先の座標によってモーターの駆動量が異なる。さらに、ステージ機構部の磨耗や機械的疲労度によっても実移動時間に差異が生じる。
【0050】
時間演算ネット部36は、予め上述したステージ移動距離と移動速度の関係、並びに、XとYの2次元の座標とステージ移動速度の関係を学習し、各層の結合度Wを決定している。そのため、レシピ条件を入力すると、中間層において、下記の式(3)を計算し、出力層において、ステージ移動時間である、下記の式(4)を出力する。
【0052】
同様に、
図5に示すレシピ検査時間においても、時間演算ネット部36にレシピ条件とレシピ検査時間の非線形な関係を予め学習させておき、レシピ条件20からレシピ検査時間22を出力する(ステップS4)。レシピ条件20とレシピ検査時間22との間には非線形性があり、各測定処理ステップの時間を加算しただけでは実測時間とは一致しないため、ニューラルネットワークによる学習に基づいて出力させる。
【0053】
レシピ実行時間演算装置35によって計算されたレシピ検査時間22は、通信部23を経由して、生産管理ホストコンピュータ33に送信される。
【0054】
レシピ検査時間22を受信した生産管理ホストコンピュータ33は、
図7に示すように、検査時間と開始時刻(現在時刻)、終了時刻を表示する表示部を備えており、レシピ検査時間22、或いはレシピの終了時刻を視覚的に表示する(ステップS5)。レシピの終了時刻は、現在時刻にレシピ検査時間を加算した値を表示する。
【0055】
オペレータは、生産管理ホストコンピュータ33に表示されたレシピ検査時間22を確認し、レシピの最適化が必要か否かを判断する(ステップS6)。この判断の結果、レシピの最適化が必要であると判断すれば(ステップS6−YES)、再度、ステップS1に戻って、レシピ条件を設定し直す。
【0056】
一方、レシピの最適化が必要ではないと判断すれば(ステップS6−NO)、レシピを実行する(ステップS7)。レシピを実行すると、制御部34は、当該設定に基づいて、XYステージ19や偏向器13、電子レンズ15等のハードウェアを自動制御する。この制御部34は、内部に時間を計測するタイマーを有しており、前記構成に対する命令の動作時間が検知できるようになっている。そのため、制御部34は、レシピ条件とこのレシピ条件と対になる動作時間、すなわち、ステージ移動時間や画像処理時間、オートフォーカス処理時間、レシピ検査時間のペア群をレシピ実行時間演算装置35に提供する。
【0057】
レシピ条件と動作時間のペア群を受け取ったレシピ実行時間演算装置35は、データ記憶部37にて、前記ハードウェアの動作時間のデータを既存情報として蓄積する。また、レシピ実行時間演算装置35の時間演算ネット部36は、先程実行したレシピのレシピ条件と動作時間を新たな教示データとして、ニューラルネットワークに学習させる(ステップS8)。
【0058】
このように、レシピの作成と実行を繰り返し行うことで、レシピ実行時間演算装置35は学習を繰り返し、レシピ検査時間の推定精度を高めていくことができる。
【0059】
<実施の形態1の効果>
以上説明した本実施の形態の半導体検査装置10によれば、レシピ条件入力部32とレシピ実行時間演算装置35と通信部23と生産管理ホストコンピュータ33などを備え、レシピ実行時間演算装置35は、既存のレシピ条件と該レシピ条件に対する既存の動作時間との関係をニューラルネットワークに学習させ、この学習済みニューラルネットワークを用いて、レシピ条件入力部32に入力されたレシピ条件から生産管理ホストコンピュータ33に表示するレシピ検査時間を予測することで、以下のような効果を得ることができる。
【0060】
すなわち、本実施の形態におけるレシピ実行時間演算装置35を備えた半導体検査装置10において、レシピの作成と実行を繰り返し行うことで、レシピ実行時間演算装置35は学習を繰り返し、検査時間の推定精度を高めていくため、オペレータはレシピ条件20を設定するだけで、常に正確なレシピ検査時間22を取得することができるため、装置運用の効率化が可能となる。
【0061】
また、本実施の形態におけるレシピ実行時間演算装置35は、実検査結果に基づいて学習を繰り返すため、レシピ条件20の作成における特徴など、ユーザの使い方に合致した高精度なレシピ検査時間22の推定が可能になる。
【0062】
以上のように、本実施の形態によれば、レシピ条件20に基づく実際の検査を実行しなくても、オペレータがレシピを作成した時点で、検査条件の組合せや経年変化による装置状態の変化を反映した正確なレシピ検査時間22を予測できるため、CIMによる効率的な装置運用が可能になる。
【0063】
[実施の形態2]
実施の形態2について、
図8を用いて説明する。
図8は、本実施の形態に係る半導体検査装置において、忘却係数決定部を備えたレシピ実行時間演算装置の概略構成の一例を示す図である。
【0064】
前述した実施の形態1においては、式(2)の結合度Wを決定するために、過去全ての情報を用いている。しかし、装置状態は経年変化により変化していく。そのため、レシピ検査時間を求める際に、現在の装置特性と異なる過去の動作時間を用いることは好ましくない。
【0065】
そこで、本実施の形態では、
図8に示すように、レシピ実行時間演算装置50に忘却係数決定部51を設ける。学習時に、忘却係数を導入することにより、過去の検査結果を参照しながらも最近の装置状況をより強く反映させた高精度な検査時間の演算が可能になる。忘却係数γを反映した結合度W(Wo
jk)の学習計算式は、下記の式(5)に表すことができる。
【0067】
0<γ<1の場合に、過去の結合度の影響が指数的に減衰していく。すなわち、忘却していく。忘却係数決定部51は、データ記憶部37に蓄積された動作時間の変化の様子から、自動的に忘却係数を決定する。過去の動作時間の変化が大きい場合は、現在の装置特性と異なる可能性が高いため、より強く忘却することを目的に、忘却係数を減少させていく。一方、過去の動作時間の変化が小さい場合は、現在の装置特性と類似しているため、忘却係数を1に近い値に増加させる。
【0068】
以上説明した本実施の形態の半導体検査装置10によれば、レシピ実行時間演算装置50に忘却係数決定部51を備えることで、前述した実施の形態1に比べて、経年変化によって装置状態が変化しても、より現状に近いレシピ実行時間を出力することができる。
【0069】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0070】
例えば、前記実施の形態のような半導体検査装置においては、装置状態によって、忘却係数決定無しのレシピ実行時間演算装置(前記実施の形態1)、もしくは忘却係数決定有りのレシピ実行時間演算装置(前記実施の形態2)を選択して、半導体検査装置に適用することができる。
【0071】
また、前記実施の形態においては、適用先の一例として、半導体検査装置にレシピ実行時間演算装置を適用した場合を例にとって説明したが、これに限定されず、半導体ラインに設置されている他の装置においても、本発明を適用し得ることは言うまでもない。