(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の基板の成膜装置では、ノズルの洗浄装置がカップ部の外部に設置されているため、ノズルがカップ部と干渉しないようにカップ部の外部に移動させる必要がある。また、洗浄装置で洗浄に用いられた洗浄液を処理するための装置等を、カップ部の廃液処理装置等とは別途設ける必要がある。かといって、ノズルの洗浄装置をカップ部の内部に設置した場合、成膜時に塗布液がノズルの洗浄装置に付着することで異物の発生原因となり得る。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、異物の発生を防ぎつつカップ部の内部においてノズルを洗浄することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基板に塗布液を塗布するノズルの洗浄装置であって、前記基板の周りを囲むカップ部と、前記カップ部の内部において前記ノズルを洗浄する洗浄部と
、前記カップ部の下方において回収液を貯留する貯留部と、前記貯留部の外周端部を覆う形態で、前記カップ部を挟む両側に一対設けられた一対の霧化部と、各霧化部の下面に接続され、前記貯留部の外周端部で霧化された回収液を前記霧化部から回収タンクへ送り込む一対の回収配管とを備え、前記洗浄部は、前記ノズルの洗浄を行う洗浄位置と、前記ノズルの洗浄を行わない待機位置との間を移動可能とされ、前記待機位置は、前記ノズルからの前記塗布液が触れない位置とされている構成としたところに特徴を有する。
【0007】
このような構成によると、カップ部の内部においてノズルを洗浄することができるため、ノズルがカップ部と干渉しないように移動させる必要がない。また、ノズルの洗浄を行わない待機位置では、ノズルからの塗布液がノズルに触れないようにしているため、ノズルが塗布液で汚れて異物が発生することを回避できる。
【0008】
本発明の実施の態様として、以下の構成が好ましい。
待機位置では洗浄部が回収液の内部に配される構成としてもよい。
このような構成によると、待機位置で洗浄部が回収液の内部に配されるため、洗浄部が塗布液で汚れることを回避できる。
【0009】
洗浄部は、洗浄液を霧状にして噴射する洗浄ノズルを備える構成としてもよい。
このような構成によると、洗浄ノズルによって洗浄液を霧状にしてノズルに噴射できるため、洗浄ノズルの洗浄能力を高めることができる。
【0010】
洗浄部は、洗浄ノズルを昇降させる昇降装置を備える構成としてもよい。
このような構成によると、昇降装置によって洗浄ノズルを昇降させることにより、洗浄ノズルを最適な位置に配置してノズルを洗浄することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、異物の発生を防ぎつつカップ部の内部においてノズルを洗浄することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を
図1ないし
図4の図面を参照しながら説明する。本実施形態における基板の成膜装置11は、基板保持部21に保持された基板Bに対して、回転霧化式のスプレーノズルN1を用いてレジスト液(本発明の「塗布液」の一例)を吹き付けて塗布する装置である。この成膜装置11は、水平面に平行な床面に載置されて用いられる。なお、このような成膜装置11は、クリーンルーム内に設置され、成膜装置11内の空気は、ヘパフィルタを介して循環されており、Class100の清浄度に保たれている。
【0014】
まず、全体構成について説明すると、成膜装置11は、
図1に示すように、塗布部20と回収部30とを備えて構成され、塗布部20と回収部30が複数の配管40,50によって互いに接続されている。配管40は回収配管とされ、配管50は供給配管とされている。また、供給配管50の途中には、異物除去用のフィルターFとポンプPが下流側から順に設置されており、回収部30で回収された回収液L中の異物をフィルターFで除去した上で、この清浄化された回収液LをポンプPで塗布部20に供給して再利用できるようになっている。
【0015】
塗布部20は、
図2に示すように、基板保持部21と、この基板保持部21と同軸で円筒状に延びる形態をなすカップ部22と、カップ部22の下方に配された貯留部23と、貯留部23の外周端部23Aを覆う霧化部24とを備えて構成されている。
【0016】
基板保持部21は、基板Bの上下面のうちレジスト液が成膜されない下面を吸着して保持する構成とされている。このため、基板保持部21に保持された基板Bの上面に対してスプレーノズルN1からレジスト液を噴射するようになっている。基板保持部21の上面には、複数の吸着孔(図示せず)が開口されており、これらの吸着孔を塞ぐように基板Bの下面が載置される。また、基板保持部21は、加熱機構(図示せず)や冷却機構(図示せず)を備えている。当該加熱機構および冷却機構の動作は、制御部(図示せず)によって制御可能である。
【0017】
カップ部22は、基板保持部21によって保持される基板Bを全周に亘って囲む側壁22Aを備えている。側壁22Aの上端部は、カップ部22の軸心側に迫り出す形態とされており、塗布液がカップ部22の外部に飛散しにくいように構成されている。側壁22Aの上端部は、基板保持部21よりも上方に位置している。一方、カップ部22の底面は、貯留部23によって構成されている。側壁22Aの下端部と貯留部23との間には、排気口25が形成されている。貯留部23の底面には、排気口25側から基板保持部21側に下り勾配をなす傾斜面23Bが形成されている。また、貯留部23の底面のうち、傾斜面23Bの下端から基板保持部21にかけての範囲は、水平方向に延びる水平面23Cとされている。
【0018】
貯留部23は、基板保持部21の外周面から径方向外側に張り出す円盤状とされている。貯留部23の外周端部23Aには、上方に向かうほど基板保持部21側に迫り出すオーバーハング状をなす返し部23Dが形成されている。返し部23Dの内面は、傾斜面23Bの上端から上方に連なる円弧状とされている。貯留部23には、水などの回収液Lが貯留されている。回収液Lの液面は、カップ部22の側壁22Aの下端部のやや下方に位置するとともに、返し部23Dの下端部に位置している。また、回収液Lは、カップ部22の内部からカップ部22の外部に亘って貯留部23に貯留されている。
【0019】
排気口25の入口25Aは、側壁22Aの下端部と傾斜面23Bとの間に形成された開口部分であり、排気口25の出口25Bは、返し部23Dの上端と側壁22Aの外面との間に形成された開口部分である。カップ部22の内部から排気口25の入口25Aを経由して排気口25の内部に進入した回収液Lは、排気口25を通過する間に霧状になって巻き上げられ、排気口25の出口25Bから霧化部24の内部へ排出される。
【0020】
霧化部24は、貯留部23の返し部23Dを覆う形態で、カップ部22を挟む両側に一対設けられている。各霧化部24の下面には、回収配管40が接続される接続筒24Aがそれぞれ設けられている。接続筒24Aを通して霧化部24の内部が排気されると、排気口25付近の回収液Lが返し部23Dの内面に沿って巻き上げられ、回収液Lの液滴が微小化されて霧化される。このようにして回収液Lを霧化する機構は、一般にベンチュリーブースなどの装置に用いられる機構と同様である。霧化部24の上面は、カップ部22の側壁22Aから外側に張り出し形成された張り出し部22Bによって構成されている。また、霧化部24のうち張り出し部22Bを除く壁部は、貯留部23の外周端部23Aを回り込むようにして貯留部23の下面に連結されている。
【0021】
貯留部23には、洗浄ノズルN2を通す通し孔26が開設されている。洗浄ノズルN2は、
図1に示すエアシリンダ等の昇降装置27によって待機位置(
図2の実線で示す洗浄ノズルN2の位置)と洗浄位置(
図2の二点鎖線で示す洗浄ノズルN2の位置)との間を上下動可能に設けられている。
【0022】
待機位置では、洗浄ノズルN2の上端が回収液Lの内部に位置しており、レジスト液が洗浄ノズルN2に付着しないようになっている。一方、洗浄位置では、洗浄ノズルN2が回収液Lの内部から上方に飛び出してスプレーノズルN1の直下に位置するようになっている。このとき、洗浄ノズルN2の上端は、基板保持部21に保持された基板Bとほぼ同じ高さに位置している一方、スプレーノズルN1の下端は、カップ部22の側壁22Aの上端部よりも下方に位置している。これにより、洗浄ノズルN2から洗浄液(シンナーなど)を噴射してスプレーノズルN1を洗浄した際に、この洗浄液がカップ部22の内部に留まり、カップ部22の側壁22Aや基板保持部21に付着した塗布液などの異物を流し落とし、貯留部23の回収液Lに異物および洗浄液が捕集されるようになっている。
【0023】
洗浄ノズルN2は、
図4に示すように、内筒部N21と、外筒部N22とからなる二重筒構造とされている。内筒部N21の内部には、洗浄液が通る内孔H1が形成されており、内筒部N21と外筒部N22の間には、空気が通る外孔H2が形成されている。これにより、外孔H2から供給される空気によって洗浄液が霧状となり、この霧状となった洗浄液がスプレーノズルN1に向けて勢いよく噴射される。
【0024】
基板保持部21の下端部には、供給配管50の端部が接続される接続孔21Aが設けられている。この接続孔21Aの一端は、基板保持部21の下方に開口しており、接続孔21Aの他端は、貯留部23内に開口している。したがって、供給配管50から供給された回収液Lは、貯留部23内に送り込まれる。なお、接続孔21Aにおける貯留部23側の開口は、回収液Lの液面よりも下方に位置している。
【0025】
次に、回収部30の構成について
図3を参照しながら説明する。回収部30は、回収液Lが収容される回収タンク31と、この回収タンク31の側部から上方に立ち上がる回収ブース32と、回収ブース32の上端部に設けられた排気接続部33と、この排気接続部33の先に設置された排気ファン(図示せず)とを備えて構成されている。また、回収タンク31の天井部には、一対の接続筒31A,31Aが設けられている。各接続筒31A,31Aには、各回収配管40,40の端部がそれぞれ接続されている。また、各接続筒31A,31Aには、これらの内部流路を開閉可能とする一対のバルブ31B,31Bがそれぞれ設けられている。
【0026】
回収タンク31と回収ブース32の接続部分には、回収ブース32に向けて上り勾配をなす傾斜部34が設けられている。この傾斜部34は、回収タンク31から側方に張り出す形態をなし、この傾斜部34から回収ブース32が上方に立ち上がる形態とされている。回収ブース32の内部には、複数の邪魔板32Aが配置されている。各邪魔板32Aは、空気とともに回収ブース32の内部に進入した回収液Lとぶつかるように配置されている。回収ブース32の内部に進入した回収液Lは、当初霧化された状態とされているものの、各邪魔板32Aにぶつかって下向きの力が付与されることで、空気と分離して液化されるようになっている。一方、空気は、排気ファンの吸引力で上昇して、外部へ排気される。これにより、液化された回収液Lは、回収ブース32の下方に滴下して、傾斜部34から回収タンク31に回収されることになる。
【0027】
また、回収タンク31の下端部には、供給配管50の端部が接続される接続孔31Cが開設されている。回収タンク31に回収された回収液Lは、接続孔31Cを通って供給配管50へ送られ、回収液L内の異物は、フィルターFで除去される。そして、異物が除去された回収液Lは、ポンプPによって貯留部23へと送り込まれる。
【0028】
本実施形態は以上のような構成であって、続いてその作用を説明する。まず、基板Bを基板保持部21に載置して吸着することで基板Bを固定する。基板Bを所定の温度になるまで加熱した後、スプレーノズルN1を基板B上へ移動させる。排気ファンを始動させてカップ部22内の空気を吸引した上で、スプレーノズルN1から霧化されたレジスト液を下方に噴射して基板Bの上面に塗布する。
【0029】
ここで、霧化されたレジスト液のうち、基板Bの上面に成膜されなかったレジスト液については、回収液Lに捕集され、あるいは排気口25から霧化部24へ直接吸引されることになる。一方、排気口25で吸引された回収液Lは、霧状になって巻き上げられ、異物(例えば、成膜されなかった塗布液や、この塗布液が凝固したもの)を吸着する。この回収液Lは、空気とともに回収配管40を通って回収タンク31へ送り込まれ、回収ブース32へと送り込まれる。すると、回収液Lが複数の邪魔板32Aによって液化され、空気と分離される。この液化された回収液Lには、レジスト液やその他の異物が含まれており、傾斜部34を通って回収タンク31に回収される。さらに、回収液Lは、接続筒31Aを通って供給配管50へと送られ、フィルターFによって異物が除去された後、ポンプPによって貯留部23に送り込まれる。
【0030】
スプレーノズルN1によるレジスト液の噴射が終了した後、スプレーノズルN1の洗浄を行う。レジスト液が塗布されている間、洗浄ノズルN2は待機位置に配置されており、レジスト液が洗浄ノズルN2に直接付着するおそれはない。しかし、レジスト液の塗布が完了してスプレーノズルN1の洗浄を行う時点では、昇降装置27によって洗浄ノズルN2が回収液Lの内部から現れて洗浄位置(スプレーノズルN1の直下)に配置される。この洗浄位置で洗浄ノズルN2から霧状の洗浄液が上方に噴射され、スプレーノズルN1の洗浄が行われる。このとき、スプレーノズルN1にぶつかって飛散した洗浄液は、カップ部22の内部に留まり、回収液Lに回収される。
【0031】
以上のように本実施形態では、霧化部24で回収液Lを霧化することにより、異物の捕集効率を高めるとともに、カップ部22や回収配管40内を汚すことなく、異物を回収することができる。また、異物を回収する機構として大掛かりな装置を必要とすることもない。また、回収タンク31で回収された回収液LをポンプPによって貯留部23に送り込むようにしたから、この回収液Lを再利用することができる。また、回収液Lに含まれる異物をフィルターFによって除去するようにしたから、回収液Lを浄化した上でポンプPおよび貯留部23に送り込むことができる。
【0032】
また、貯留部23の外周端部23Aは、霧化部24の内部に収容されており、貯留部23の外周端部23Aには、返し部23Dが設けられているから、貯留部23と霧化部24を一体に形成することができる。すなわち、排気口25の内部形状を工夫することで回収液Lを霧化することができ、回収液Lを霧化する装置を別途設ける必要がないから、成膜装置11全体を簡素化して小型化できる。また、回転霧化式のスプレーノズルN1を採用したから、基板Bの上面に形成された微細な孔の内部にまでレジスト液を塗布して成膜できるとともに、霧化されたレジスト液を排気口25から吸引しやすくなる。
【0033】
また、カップ部22の内部でスプレーノズルN1を洗浄できる洗浄ノズルN2を設けたから、カップ部22との干渉を回避しつつスプレーノズルN1をカップ部22の内部から外部へ移動させる必要はない。また、回収液Lの排水処理と排気装置を利用して、洗浄液の排水処理と排気を行うことができるため、洗浄液専用の排水処理や排気装置を設けなくてもよい。さらに、待機位置では洗浄ノズルN2が回収液Lの内部に収容されているため、洗浄ノズルN2にレジスト液が直接付着することを回避できる。また、洗浄部の構成として洗浄液を霧状にして噴射する洗浄ノズルN2を採用したから、洗浄能力を高めることができる。また、昇降装置27によって洗浄ノズルN2の高さを最適な位置に配置できるため、洗浄ノズルN2をスプレーノズルN1の直下に配置して効率良く洗浄することができる。
【0034】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を
図5の図面を参照しながら説明する。本実施形態の成膜装置12は、実施形態1の成膜装置11の塗布部20の構成を一部変更したものであって、実施形態1と同じ構成については同一の符号を用いるものとし、実施形態1と同じ構成、作用、および効果については重複するため、その説明を省略するものとする。
【0035】
本実施形態の塗布部60は略円筒状をなすカップ部61を有している。このカップ部61は、基板Bを全周に亘って囲む側壁62を備え、霧化部63は、側壁62の上方に配された囲い壁64を備えている。側壁62の上端部62Aと囲い壁64の間には、吸引口65が設けられている一方、側壁62の下端部62Bには、実施形態1の排気口25と同様の排気口66が設けられている。吸引口65と排気口66はいずれも、霧化部63の内部空間に連通し、回収配管40を経由して回収タンク31に接続されている。
【0036】
なお、側壁62に下端部62Bにおける内面には、鋸歯状の補助板67が取り付けられている。本実施形態では吸引口65を設けたことで排気口66を通る空気の風量が低下することが懸念されるものの、補助板67と回収液Lの液面との間の隙間を小さくすることでこの隙間を通る空気の風速をより高速化させることができる。したがって、少ない風量でも回収液Lを効率良く霧化することができる。
【0037】
本実施形態によると、吸引口65と排気口66の双方からカップ部61の内部の空気を吸引することができる。したがって、吸引口65からも異物を回収することができるため、カップ部61内をより清浄に保つことができる。
【0038】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、洗浄位置では洗浄ノズルN2が回収液Lの内部に収容されるものを例示しているものの、本発明によると、回収液Lの内部に収容される必要はなく、仮に回収液Lがないとした場合、洗浄ノズルN2が通し孔26の内部に収容されるものとしてもよい。
【0039】
(2)上記実施形態では、洗浄ノズルN2を昇降させる昇降装置27を備えるものを例示しているものの、本発明によると、洗浄ノズルN2を固定させ、スプレーノズルN1を昇降させてもよい。
【0040】
(3)上記実施形態では、内筒部N21と外筒部N22からなる二重筒構造の洗浄ノズルN2を例示しているものの、本発明によると、内筒部のみを有するシャワー式の洗浄ノズルとしてもよい。