(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5934345
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】リチウムイオンセルのためのバッテリハウジング
(51)【国際特許分類】
H01M 2/10 20060101AFI20160602BHJP
A62C 3/16 20060101ALI20160602BHJP
【FI】
H01M2/10 S
A62C3/16 C
【請求項の数】42
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-508733(P2014-508733)
(86)(22)【出願日】2012年4月16日
(65)【公表番号】特表2014-517986(P2014-517986A)
(43)【公表日】2014年7月24日
(86)【国際出願番号】EP2012056864
(87)【国際公開番号】WO2012150117
(87)【国際公開日】20121108
【審査請求日】2013年11月1日
(31)【優先権主張番号】102011075318.4
(32)【優先日】2011年5月5日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501125231
【氏名又は名称】ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000981
【氏名又は名称】アイ・ピー・ディー国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ベール、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ロイトナー、シュテファン
【審査官】
宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−097836(JP,A)
【文献】
特開2007−252731(JP,A)
【文献】
特開2010−192430(JP,A)
【文献】
特開2010−282906(JP,A)
【文献】
特開平11−214037(JP,A)
【文献】
特開2011−072669(JP,A)
【文献】
特開2004−319101(JP,A)
【文献】
特開2009−219257(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0005781(US,A1)
【文献】
特開2009−207650(JP,A)
【文献】
特開2007−095483(JP,A)
【文献】
特開2008−251263(JP,A)
【文献】
特開2000−084105(JP,A)
【文献】
特開平01−064678(JP,A)
【文献】
特開平08−117353(JP,A)
【文献】
特開2006−004746(JP,A)
【文献】
特開2009−032653(JP,A)
【文献】
特開2007−200880(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0164711(US,A1)
【文献】
特表平09−505931(JP,A)
【文献】
特開2009−224319(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/10
H01M 2/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガルバニセル(2)を収容する内部空間を有するバッテリハウジング(1)において、前記ガルバニセル(2)には、前記ガルバニセル(2)の故障の場合に開けることが可能な少なくとも1つの噴出箇所(3)が設けられ、前記バッテリハウジング(1)の前記内部空間は、火炎抑制剤、火炎遅延剤、及び/又は消火剤を投入するための少なくとも1つのディスペンサ(4)を有し、前記ディスペンサ(4)は、前記ガルバニセル(2)の噴出箇所(3)に隣接して配置可能な又は配置された少なくとも1つの開放可能なディスペンサ開口部(5;5a、5b、5c、5d、5e、5f)を有し、前記ディスペンサ開口部(5;5a、5b、5c、5d、5e、5f)は、所定の限界値を上回る機械的衝撃及び/又は温度上昇及び/又は圧力上昇の際には解放されうるものであり、
前記ディスペンサ開口部(5;5a、5b、5c、5d、5e、5f)は、それにより前記ディスペンサ開口部(5;5a、5b、5c、5d、5e、5f)を自動的に解放することが可能な解放機構を有し、
前記解放機構は、前記バッテリハウジング(1)を備える車両の事故が検出された際には、車両の衝突センサデータに基づいて解放される、バッテリハウジング。
【請求項2】
前記バッテリハウジング(1)は、リチウムイオンセルを含む、請求項1記載のバッテリハウジング。
【請求項3】
前記ディスペンサ(4)は、液体、泡、又は固形物を投入するよう構成される、請求項1または2に記載のバッテリハウジング。
【請求項4】
前記ディスペンサ(4)は、液体を投入するように構成される、請求項3記載のバッテリハウジング。
【請求項5】
前記ディスペンサ開口部(5;5a、5b、5c、5d、5e、5f)は、壁の薄壁化により、又は、壁における継ぎ目の形態により実現される、請求項1〜4のいずれか1項に記載のバッテリハウジング。
【請求項6】
前記壁における継ぎ目は、溶接継ぎ目、溶接線、及び接着継ぎ目のうち、少なくとも1つである、請求項5記載のバッテリハウジング。
【請求項7】
前記ディスペンサ(4)は、少なくとも前記ディスペンサ開口部(5;5a、5b、5c、5d、5e、5f)の領域内では部分的又は完全に、融点が80℃以上、200℃以下の範囲内にある有機物質で構成される、請求項1〜6のいずれか1項に記載のバッテリハウジング。
【請求項8】
前記有機物質は、高分子物質及び/又は蝋状物質で構成される、請求項7記載のバッテリハウジング。
【請求項9】
前記ディスペンサ(4)は、少なくとも前記ディスペンサ開口部(5;5a、5b、5c、5d、5e、5f)の領域内では部分的又は完全に、合成樹脂で構成される、請求項1〜8のいずれか1項に記載のバッテリハウジング。
【請求項10】
前記合成樹脂は、熱可塑性樹脂を含む、請求項9記載のバッテリハウジング。
【請求項11】
前記熱可塑性樹脂は、ポリオレフィンを含む、請求項10記載のバッテリハウジング。
【請求項12】
前記ポリオレフィンは、ポリエチレン及び/又はポリプロピレンを含む、請求項11記載のバッテリハウジング。
【請求項13】
前記解放機構は、弁を有する、請求項1〜12の何れか1項に記載のバッテリハウジング。
【請求項14】
前記衝突センサデータは、加速センサから得られる、請求項1〜13の何れか1項に記載のバッテリハウジング。
【請求項15】
前記ディスペンサ(4)はブロー成形体である、請求項1〜14のいずれか1項に記載のバッテリハウジング。
【請求項16】
前記ディスペンサ(4)は、少なくとも前記ディスペンサ開口部(5;5a、5b、5c、5d、5e、5f)の領域内では部分的又は完全にガラスで構成される、請求項1〜15のいずれか1項に記載のバッテリハウジング。
【請求項17】
前記ディスペンサ(4)は、複数のディスペンサ開口部(5;5a、5b、5c、5d、5e、5f)を有する、請求項1〜16のいずれか1項に記載のバッテリハウジング。
【請求項18】
前記ディスペンサ開口部(5;5a、5b、5c、5d、5e、5f)の数は、接続された複数のガルバニセル(2)から成るモジュールの前記ガルバニセル(2)の数と同じである、請求項17記載のバッテリハウジング。
【請求項19】
前記ディスペンサ開口部(5;5a、5b、5c、5d、5e、5f)の数は、前記噴出箇所(3)の数と同じである、請求項18記載のバッテリハウジング。
【請求項20】
前記ガルバニセル(2)は、前記ガルバニセル(2)の上側にそれぞれ前記噴出箇所(3)を有し、少なくとも1つのディスペンサ開口部(5;5a、5b、5c、5d、5e、5f)は、前記ガルバニセル(2)の上方に配置可能であり、又は配置される、請求項1〜19のいずれか1項に記載のバッテリハウジング。
【請求項21】
前記ディスペンサ開口部(5;5a、5b、5c、5d、5e、5f)は、前記噴出箇所(3)の上方に配置可能であり、又は配置される、請求項20記載のバッテリハウジング。
【請求項22】
前記ディスペンサ(4)は、前記ガルバニセル(2)の極(6、7)、又は複数のガルバニセル(2)から成るモジュールの極(6、7)の間に配置可能であり又は配置される、請求項1〜21のいずれか1項に記載のバッテリハウジング。
【請求項23】
前記ディスペンサ(4)は、前記ガルバニセル(2)の前記極(6、7)の間に提供可能な空間以外に追加的な空間を取らない、請求項22記載のバッテリハウジング。
【請求項24】
前記火炎抑制剤、火炎遅延剤、及び/又は消火剤は、少なくとも1つのアルカリ土類金属化合物、及び/又は、少なくとも1つのラジカル捕捉剤を含む、請求項1〜23のいずれか1項に記載のバッテリハウジング。
【請求項25】
前記アルカリ土類金属化合物は、カルシウム化合物を含む、請求項24記載のバッテリハウジング。
【請求項26】
前記ラジカル捕捉剤は、リンをベースとするハロゲン化又は非ハロゲン化有機化合物を含む、請求項24記載のバッテリハウジング。
【請求項27】
前記有機化合物は、リン酸トリス(2、2、2−トリフルオロエチル)、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、環状リン酸、亜りん酸エステル、フッ素化アルキレンカーボネート、フッ素化エーテル、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項26記載のバッテリハウジング。
【請求項28】
前記環状リン酸は、リン酸アルキル及び/又はリン酸アリルを含む、請求項27記載のバッテリハウジング。
【請求項29】
前記環状リン酸は、環状ホスファゼンを含む、請求項28記載のバッテリハウジング。
【請求項30】
前記環状リン酸は、ヘキサメトキシシクロトリホスファゼンを含む、請求項29記載のバッテリハウジング。
【請求項31】
前記亜りん酸エステルは、亜リン酸トリス(2、2、2−トリフルオロエチル)を含む、請求項27記載のバッテリハウジング。
【請求項32】
前記フッ素化アルキレンカーボネートは、フッ素化プロピレンカーボネートを含む、請求項27記載のバッテリハウジング。
【請求項33】
前記フッ素化エーテルは、メチルノナフルオロブチルエーテルを含む、請求項27記載のバッテリハウジング。
【請求項34】
1つ以上のガルバニセル(2)の燃焼抑制、燃焼阻止、及び/又は消火のための火災抑制剤、火災遅延剤、及び/又は消火剤を投入するためのディスペンサ(4)であって、前記ガルバニセル(2)の上側には、前記ガルバニセル(2)の故障の場合に開けることが可能な少なくとも1つの噴出箇所(3)が設けられ、前記ディスペンサ(4)は、前記ガルバニセル(2)の噴出箇所(3)に隣接して配置可能な、少なくとも1つの開放可能なディスペンサ開口部(5;5a、5b、5c、5d、5e、5f)を有し、前記ディスペンサ開口部(5;5a、5b、5c、5d、5e、5f)は、所定の限界値を上回る機械的衝撃及び/又は温度上昇及び/又は圧力上昇の際には解放可能であり、
前記ディスペンサ開口部(5;5a、5b、5c、5d、5e、5f)は、それにより前記ディスペンサ開口部(5;5a、5b、5c、5d、5e、5f)を自動的に解放することが可能な解放機構を有し、
前記解放機構は、前記ガルバニセル(2)を収容する内部空間を有するバッテリハウジング(1)を備える車両の事故が検出された際には、車両の衝突センサデータに基づいて解放される、ディスペンサ。
【請求項35】
前記ディスペンサは、液状、固形、又は泡状の薬剤を投入する、請求項34記載のディスペンサ。
【請求項36】
前記ディスペンサ(4)は、前記ガルバニセル(2)の極(6、7)、又は複数のガルバニセル(2)から成るモジュールの極(6、7)の間に配置可能であり、その際に、前記ガルバニセル(2)の前記極(6、7)の間に提供される空間以外の追加的な空間が取られない、請求項34記載のディスペンサ。
【請求項37】
ガルバニセル(2)において、前記ガルバニセル(2)は、前記ガルバニセル(2)の上側に、前記ガルバニセル(2)の故障の場合に開けることが可能な少なくとも1つの噴出箇所(3)を有し、前記噴出箇所(3)は、前記ガルバニセル(2)の上側の主表面に対して窪んだ区間内に形成され、
さらに、前記ガルバニセル(2)の上方には、火炎抑制剤、火炎遅延剤、及び/又は消火剤を投入するための少なくとも1つのディスペンサ(4)が設けられ、前記ディスペンサ(4)は、前記ガルバニセル(2)の噴出箇所(3)に隣接して配置可能な又は配置された少なくとも1つの開放可能なディスペンサ開口部(5;5a、5b、5c、5d、5e、5f)を有し、前記ディスペンサ開口部(5;5a、5b、5c、5d、5e、5f)は、所定の限界値を上回る機械的衝撃及び/又は温度上昇及び/又は圧力上昇の際には解放されうるものであり、
前記ディスペンサ開口部(5;5a、5b、5c、5d、5e、5f)は、それにより前記ディスペンサ開口部(5;5a、5b、5c、5d、5e、5f)を自動的に解放することが可能な解放機構を有し、
前記解放機構は、前記ガルバニセル(2)を収容する内部空間を有するバッテリハウジング(1)を備える車両の事故が検出された際には、車両の衝突センサデータに基づいて解放される、ガルバニセル。
【請求項38】
前記ガルバニセル(2)は、リチウムイオンセルを含む、請求項37記載のガルバニセル。
【請求項39】
請求項1〜33のいずれか1項に記載のバッテリハウジング、及び/又は、請求項34〜36のいずれか1項に記載の少なくとも1つのディスペンサ(4)、及び/又は、請求項37または38に記載の少なくとも1つのガルバニセル(2)を備えたバッテリにおいて、少なくとも1つのディスペンサ開口部(5)が、前記ガルバニセルの上方に配置され、及び/又は、前記ディスペンサ開口部(5;5a、5b、5c、5d、5e、5f)の数は、前記ガルバニセル(2)の数と同じである、バッテリ。
【請求項40】
前記バッテリは、リチウムイオンバッテリを含む、請求項39記載のバッテリ。
【請求項41】
前記ディスペンサ開口部(5)は、噴出箇所(3)の上方に配置される、請求項39記載のバッテリ。
【請求項42】
前記ディスペンサ開口部(5;5a、5b、5c、5d、5e、5f)の数は、噴出箇所(3)の数と同じである、請求項39記載のバッテリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にリチウムイオンセルのためのバッテリハウジング、ガルバニセル、及びバッテリに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオンセルは、インタカレーション(Interkation)又はデインタカレーション(Deinterkalation)とも呼ばれるが、リチウムイオンが不可逆的に入り又は再び出ることが可能な正の電極、所謂カソードと、負の電極、所謂アノードと、を有する。リチウムイオンセルの特別な包装形態は、リチウムイオンポリマーセル又はリチウムポリマーセルと呼ばれる。この概念において、アルミニウム複合フィルムに包装されたリチウムイオンセルが理解される。即ち、この包装は、技術的な用語を使用すると、ポーチ(Pouch)又はソフトパック(Softpack)と呼ばれる。
【0003】
インタカレーション又はデインカレーションが起こるように、リチウムイオンセルは電解質を有する。例えば携帯電話、MP3プレーヤ、又は、蓄電池により駆動される工具のような小型電化製品分野における、及び、自動車分野における、例えばハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、プラグインハイブリッド車(PHEV:Plug−in Electric Vehicle)及び電気自動車(EV:Electric Vehicle)における、現在の全てのリチウムイオンセルでは、実際には、この電解質は現在、有機溶剤に溶かれた電気伝導性の塩(Leitsalz)、即ち、六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)で構成される。溶剤として、通常では、炭酸エチレン(EC)及び/又は炭酸ジメチル(DMC)のような有機カーボネートが使用される。しかしながら、電解質におけるこれら有機溶剤の成分は可燃性である。さらに、特に、揮発性溶剤は、空気又は酸素によっても発火し、又は、爆発しうる混合物を形成する可能性がある。
【0004】
例えば、過剰充電の際、セルパックが損傷した際、又は、意図せぬ内部又は外部の短絡の際には、リチウムイオンセルは多かれ少なかれ激しく加熱され、セル包装が開いた際には、気体、液体、又はエアゾールタイプのセル成分が放たれる。その際に、セル成分は、分解されない可燃性のセル成分、例えば電解液や、一酸化炭素(CO)、水素(H
2)、又はメタン(CH
4)のような可燃性の分解生成物である可能性がある。
【0005】
特許文献1には、リチウムイオンバッテリのための火災予防及び/又は火災阻止のための方法及び装置が記載されており、ここでは、消火剤が一時的に、バッテリハウジングの外部に配置された消火剤貯蔵器から、緊急線を介してバッテリの内部空間へと導入されうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第102008059948号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の主題は、セルの故障の場合に開けることが可能な少なくとも1つの噴出箇所が設けられたガルバニセル、特にリチウムイオンセルを収容する内部空間を有するバッテリハウジングである。
【0009】
本発明に基づいて、バッテリハウジングの内部空間は、火炎抑制剤、火炎遅延剤、及び/又は消火剤、特に、火炎抑制剤及び/又は火炎遅延剤を投入するための少なくとも1つのディスペンサを有し、ディスペンサは、セルの噴出箇所に隣接して配置可能な又は配置された少なくとも1つの開放可能なディスペンサ開口部を有し、ディスペンサ開口部は、所定の限界値を上回る機械的衝撃及び/又は温度上昇及び/又は圧力上昇の際に解放されうる。
【0010】
ディスペンサは有利に、従来では機械的衝撃、温度上昇、及び/又は圧力上昇が平行して現れる危険な場合に開き、火災抑制剤、火災遅延剤、及び/又は消火剤が放出されうる。驚くべきことに、既に少量の火災抑制剤、火災遅延剤、及び/又は消火剤によって、特にバッテリハウジングの機械的な損傷の際、又は、可燃性の気体若しくはガスの発生による内部の短絡の際に危険の根源となる爆燃及び火災を予防することが可能である。従って有利に、1つ以上のバッテリセルの故障の場合には、例えば電気的に駆動される車両の事故の際には、火災を予防し、抑制し、場合によっては少なくとも部分的に消火することが可能である。危険発生の直後に、火災抑制剤、火災遅延剤、及び/又は消火剤を使用出来ることによって、火災や火事を特に効果的に予防することが可能である。さらに、早期の作動により明らかにより少量の火災抑制剤、火災遅延剤、及び/又は消火剤が必要であるため、上記薬剤は、本来であれば通常バッテリハウジング内に存在する空いた、所謂「死んだ」(tot)容積内で、追加的な空間を取ることなく提供されうる。火災抑制剤、火災遅延剤、及び/又は消火剤が必要な場合に初めて放出されることによって、バッテリハウジングの構成要素及びセルの構成要素を、長期の化学的な相互作用の前に、火災抑制剤、火災遅延剤、及び/又は消火剤によって保護することが可能である。さらに、火災抑制剤、火災遅延剤、及び/又は消火剤が電解質に添加されないことによって、より多くの量を使用することが可能であるが、このことは、電解質内又はセル内で、例えばセルの電気容量又は寿命に対してネガティブに影響しえない。全体として有利に、火災の予防、抑制及び/又対処のための効果的で、場所を取らず、コストが安価な解決策が提供され、人類及び環境の安全が改善される。
【0011】
機械的衝撃とは、例えば、力を引き起こす状態変数、例えば加速度又はインパルスの、特に突然の変化として理解されうる。例えば、機械的衝撃は、車両の始動事故の場合に発生しうる。多くの場合に、例えば、エアバック(Airbag)を作動させた際の衝撃の場合に、或る時間区間内の変化が評価される。
【0012】
ディスペンサ開口部は、例えば20gより大きい機械的衝撃、例えば40gよりも大きい機械的衝撃の際に、及び/又は、80℃よりも高い温度上昇の際に、及び/又は、2バールよりも高い圧力上昇の際に解放可能でありうる。
【0013】
ガルバニセルは、特に少なくとも1つの噴出箇所(Ausbruchsstelle)を有することが可能である。その際に、ガルバニセルが複数の噴出箇所を有するということが可能である。
【0014】
噴出箇所は、例えば、予定破損箇所(Sollbruchstelle)として実現することが可能であり、例えば、予定破損箇所は、特定の条件が整った場合に、例えば、8バール等のセル内部圧力を超えた場合に裂け、又はセルを開く。
【0015】
一実施形態の枠組みにおいて、液体、泡、又は固形物を投入し、特に液体を投入するディスペンサが設計される。液体、泡、及び固形物の貯蔵、特に液体及び固形物の貯蔵は、気体の貯蔵と比べて明らかに保管コストが安くなる。なぜならば、液体及び固形物の貯蔵は、拡散する気体に対して明らかにより容易に保証されるからである。
【0016】
更なる別の実施形態の枠組みにおいて、ディスペンサ開口部は、壁の薄壁化(Verduennung)により、又は、ディスペンサの壁における継ぎ目、例えば、溶接継ぎ目、溶接線、接着継ぎ目の形態により実現される。これにより、機械的衝撃、温度上昇、及び/又は圧力上昇により解放可能なディスペンサのための非常に簡単でコストが安価な設計の可能性が提供される。
【0017】
更なる別の実施形態の枠組みにおいて、ディスペンサは、少なくともディスペンサ開口部の領域内では部分的又は完全に、融点が80℃以上、200℃以下の範囲内、特に、90℃以上、150℃以下の範囲内、例えば95℃以上、125℃以下の範囲内にある有機物質、例えば高分子物質及び/又は蝋状物質で構成される。従って、簡単なやり方で、温度上昇によって解放可能なディスペンサを実現することが可能である。
【0018】
更なる別の実施形態の枠組みにおいて、ディスペンサは、少なくともディスペンサ開口部の領域内では、部分的又は完全に、合成樹脂で構成される。特に、ディスペンサは、少なくともディスペンサ開口部の領域内では、部分的又は完全に熱可塑性樹脂で構成されうる。例えば、ディスペンサは、少なくともディスペンサ開口部の領域内では、部分的又は完全に、ポリオレフィン、例えばポリエチレン(PE)及び/又はポリプロピレン(PP)で構成されうる。合成樹脂は、簡単で安価なやり方で成形される。さらに、合成樹脂は重量が小さい。ポリオレフィンの場合はさらに材料費が特に安い。ポリオレフィンはさらに、有利に多くの化学製品、特に有機溶剤に対する耐性がある。
【0019】
更なる別の実施形態の枠組みにおいて、ディスペンサ開口部は、それによりディスペンサ開口部を自動的に開けることが可能な解放機構、例えば弁を有する。好適に、開放機構は、バッテリハウジングを備える車両の故障が検出された際には、エアバックのように、車両の、例えば加速センサの衝突センサデータに基づいて解放されるように構成される。自動車分野でバッテリハウジングを利用する際には、ディスペンサの開放機構の開放は、エアバックの開放のように、有利に、車両の同一の制御装置及び同一のセンサによって引き起こすことが可能である。
【0020】
更なる別の実施形態の枠組みにおいて、ディスペンサはブロー成形体である。合成樹脂は特に簡単で安価にブロー成形することが可能である。さらに、有利に、この種の成形体はガラスで形成される。ガラスは有利に、衝撃に対する高い感度を有する。さらに、ガラスは、圧力に対する高い感度を有する。さらに、ガラスは有利にコストが安価で、多くの化学製品に対する耐性を有する。
【0021】
従って、更なる別の実施形態の枠組みにおいて、ディスペンサは、少なくともディスペンサ開口部の領域内では、部分的又は完全にガラスで構成される。しかしながら、衝撃に対する感度及び圧力に対する感度を所望の規模に調整するために、ディスペンサの壁の残りの領域を、衝撃及び圧力に対してあまり感度が高くない他の材料で形成することが有利でありうる。
【0022】
更なる別の実施形態の枠組みにおいて、ディスペンサは、複数のディスペンサ開口部を有する。従って、必要な場合には、複数のセル及び/又は複数の噴出箇所に、火災抑制剤、火災遅延剤、及び/又は消火剤を備えることが可能である。さらに、このことは、ディスペンサに割り当てられたセルの1つ又は小数の故障の場合について、ディスペンサ内に貯蔵された量の火災抑制剤、火災遅延剤、及び/又は消火剤を、少数のセルに備え、上記小数のセルの火災を特に効果的に予防し、場合によっては少なくとも部分的に対処するという可能性が提供される。
【0023】
更なる別の実施形態の枠組みにおいて、セルは、セルの上側にそれぞれ噴出箇所を有する。この構成において、好適に、少なくとも1つのディスペンサ開口部は、セルの上方に、特に噴出箇所の上方に配置可能であり、又は配置される。この種の構成は、液体又は固形物を用いた火災の抑制、阻止、及び対処のために特に効果的である。
【0024】
ガルバニセルは、従来ではモジュールへと繋がれる。その際に、この接続は、並列式及び直列式で行われる。複数のモジュールはさらに、所謂パック又はシステムへと接続されうる。その際に、個々のモジュールも、複数のモジュールから成るパック又はシステムも、バッテリとして理解されうる。
【0025】
ガルバニセルは、例えば、少なくとも2つ、特に少なくとも4つ又は6つ又は8つのセルから成るモジュールへと接続されうる。その際に、各セルは1つ以上の噴出箇所を有しうる。
【0026】
更なる別の実施形態の枠組みにおいて、ディスペンサのディスペンサ開口部の数は、接続された複数のガルバニセルから成るモジュールのセルの数、好適に噴出箇所の数に対応する。従って、簡単で場所を取らない構成によって、モジュールの安全性が有利に改善されうる。
【0027】
更なる別の実施形態の枠組みにおいて、ディスペンサは、ガルバニセルの極、又は複数のガルバニセルから成るモジュールの極の間に配置可能であり、又は配置される。上記極の間の領域は、これまでは、所謂「死んだ」(tot)、即ち利用されていない容積である。従って、この領域内で使利用するためのディスペンサの構成は、最適な空間利用に関して特に有利である。好適に、ディスペンサは、セルの極の間に提供可能な空間以外に追加的な空間を取らない。
【0028】
更なる別の実施形態の枠組みにおいて、火炎抑制剤、火炎遅延剤、及び/又は消火剤は、少なくとも1つのラジカル捕捉剤、例えば、特にリンをベースとするハロゲン化又は非ハロゲン化有機化合物を含み、例えば、上記有機化合物は、リン酸トリス(2、2、2−トリフルオロエチル)、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、環状リン酸、例えば、ヘキサメトキシシクロトリホスファゼン等の環状ホスファゼン、のようなリン酸アルキル及び/又はリン酸アリル、亜リン酸トリス(2、2、2−トリフルオロエチル)のような亜りん酸エステル、フッ素化プロピレンカーボネートのようなフッ素化アルキレンカーボネート、メチルノナフルオロブチルエーテルのようなフッ素化エーテル、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される。火災を抑制し又は阻止するこの種のラジカル捕捉剤は、例えば、リチウムイオンバッテリの電解質添加剤として、Zhangらによる「Journal of Power Sources」、2006年、162、1379〜1394に、及び、そこで引用された文献に記載されている。特に良好な結果は、リン酸トリス(2、2、2−トリフルオロエチル)のようなフッ素化された化学種を用いて得られた。
【0029】
更なる別に実施形態の枠組みにおいて、火炎抑制剤、火炎遅延剤、及び/又は消火剤は、少なくとも1つのアルカリ土類金属化合物、特にカルシウム化合物を含む。アルカリ土類金属イオン、特にカルシウムイオンは有利に、難溶性のアルカリ土類金属フッ化物、例えばフッ化カルシウムの形態による、場合により発生するフッ化水素を結合することが可能である。従って、有利に、人類と環境の安全が更に改善される。
【0030】
さらに、火炎抑制剤、火炎遅延剤、及び/又は消火剤は水を含んでもよい。例えば、火炎抑制剤、火炎遅延剤、及び/又は消火剤は、アルカリ土類金属を含有する水溶液、特にカルシウムを含有する水溶液を含んでもよく、又は、アルカリ土類金属を含有する水溶液、特にカルシウムを含有する水溶液であってもよい。
【0031】
さらに、バッテリハウジングは特に、例えば、セル及び/又はモジュールの接続のため、及び、セル監視装置への接続のために送電線を有してもよい。セル監視装置の場合には、当該装置は、好適にバッテリハウジングにも組み込まれる。消費機器にバッテリハウジングを接続するため、及び/又は、複数のバッテリハウジングの接続のために、バッテリハウジングはさらに、好適に、1つ以上のプラグ、例えば高圧プラグを備える。さらに、バッテリハウジングは、ガルバニセルを冷却するための冷却剤線接続部及び冷却剤線を有してもよい。さらに、バッテリハウジングは、システム内、例えば、車両内又は定置型のエネルギー供給システム内にバッテリハウジングを取り付けるための1つ以上の固定装置を備えてもよい。
【0032】
更なる別の利点及び特徴については、本発明に係るディスペンサ、本発明に係るガルバニセル、本発明に係るバッテリ、及び、図面との関連における解説が明示的に参照される。
【0033】
本発明の更なる別の主題は、1つ以上のリチウムイオンセルの燃焼抑制、燃焼阻止、及び/又は消火のための火災抑制剤、火災遅延剤、及び/又は消火剤、特に、液状、固形、又は泡状の薬剤を投入するためのディスペンサであり、リチウムイオンセルの上側には、セルの故障の場合に開けることが可能な少なくとも1つの噴出箇所が設けられ、ディスペンサは、セルの噴出箇所に隣接して配置可能な、少なくとも1つの開放可能なディスペンサ開口部を有し、ディスペンサ開口部は、所定の限界値を上回る機械的衝撃及び/又は温度上昇及び/又は圧力上昇の際には解放可能であり、特に、ディスペンサは、ガルバニセルの極、又は、複数のガルバニセルから成るモジュールの極の間に配置可能であり、その際に、セルの極の間に提供される空間以外の追加的な空間が取られない。
【0034】
更なる別の利点及び特徴については、本発明に係るバッテリハウジング、本発明に係るガルバニセル、本発明に係るバッテリ、及び、図面との関連における解説が明示的に参照される。
【0035】
本発明の更なる別の主題は、ガルバニセル、特にリチウムオンセルであり、セルは、セルの上側に、セルの故障の場合に開けることが可能な少なくとも1つの噴出箇所を有し、噴出箇所は、セルの上側の主表面に対して窪んだ区間内に形成される。このように構成されたガルバニセルは、本発明に係る構想のために特に良好に適している。なぜならば、噴出箇所の上方に配置されるディスペンサから放出される火炎抑制剤、火炎遅延剤、及び/又は消火剤、特に、液状、固形、又は泡状の薬剤は、窪み(Vertiefung)の中に溜まり、従って燃焼を特に良好に防止し、抑制し、又は対処することが可能である。
【0036】
更なる別の利点及び特徴については、本発明に係るバッテリハウジング、本発明に係るディスペンサ、本発明に係るバッテリ、及び、図面との関連における解説が明示的に参照される。
【0037】
本発明の更なる別の主題は、本発明に係るバッテリハウジング、及び/又は、本発明に係るディスペンサ、及び/又は、本発明に係るガルバニセルを備えたバッテリ、特にリチウムイオンバッテリに関する。その際に好適に、少なくとも1つのディスペンサ開口部は、セルの上方に、特に好適に噴出箇所の上方に配置され、特に、ディスペンサ開口部の数は、セルの数、特に噴出箇所の数に対応する。
【0038】
更なる別の利点及び特徴については、本発明に係るバッテリハウジング、本発明に係るディスペンサ、本発明に係るガルバニセル、及び、図面との関連における解説が明示的に参照される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
本発明に係る主題の更なる別の利点及び有利な構成は図面によって示され、以下の明細書の記載において解説される。その際に、図面は、単に記述的な特徴を有し、本発明を何らかの形態に限定することは意図されていないことに注意されたい。
【
図1】ガルバニセルの側面に対して平行な本発明に係るバッテリの一実施形態の概略的な横断面図を示す。
【
図2a】セルごとにディスペンサが設けられたガルバニセルの側面に対して直交する本発明に係るバッテリの
図1に示された実施形態の第1の構成による概略的な横断面図を示す。
【
図2b】セルごとにディスペンサが設けられたガルバニセルの側面に対して直交する本発明に係るバッテリの
図1に示された実施形態の第2の構成による概略的な横断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1、
図2a、及び
図2bは、それぞれ6個のガルバニセル2、特にリチウムイオンセルから成る16個のモジュールがその内部空間内に配置されたバッテリハウジング1を示す。図面は、セル2にそれぞれ、上記セル2の故障の場合に開けることが可能な噴出箇所3が設けられることを示している。示される実施形態の枠組みにおいて、噴出箇所3は、セルの上側の主表面に対して窪んだ区間内に形成される。図は、バッテリハウジング1の内部空間がさらに、火災抑制剤、火災遅延剤、及び/又は消火剤、液状、固形、又は泡状の薬剤を投入するためのディスペンサ4を有し、ディスペンサ4は、セル2の噴出箇所3に対して隣接して配置される開放可能なディスペンサ開口部5;5a、5b、5c、5d、5e、5fを有することを更に示す。
【0041】
本発明によれば、このディスペンサ開口部5;5a、5b、5c、5d、5e、5fは、所定の限界値を上回る機械的衝撃及び/又は温度上昇及び/又は圧力上昇の際に解放可能に構成される。示される実施形態の枠組みにおいて、ディスペンサ開口部5;5a、5b、5c、5d、5e、5fは、ディスペンサの壁の薄壁化により実現される。その際に、ディスペンサ4は、少なくともディスペンサ開口部5;5a、5b、5c、5d、5e、5fの領域内では、機械的衝撃及び/又は温度上昇及び/又は圧力上昇の際のディスペンサ開口部5;5a、5b、5c、5d、5e、5fの開放を保証するために、部分的又は完全に、有機物質、例えば、高分子物質及び/又は蝋状物質で形成されてもよく、又は、無機物質、例えばガラス質材料で形成されてもよい。代替的に、ディスペンサ開口部5;5a、5b、5c、5d、5e、5fは、それによりディスペンサ開口部を自動的に開けることが可能な解放機構、例えば弁を有する(図示せず)。この種の開放機構の開放は、例えば、バッテリハウジング1を備える車両の事故が検出された際に、車両の、例えば加速センサの衝撃センサデータに基づいて自動的に行うことが可能である。
【0042】
示される実施形態の枠組みにおいて、セル2は、セルの上側にそれぞれ噴出箇所3を有し、その際に、各噴出箇所3の上方に、ディスペンサ開口部5;5a、5b、5c、5d、5e、5fが配置される。従って、必要な場合には、火炎抑制剤、火炎遅延剤、及び/又は、消火剤が、ディスペンサ4から噴出箇所3上へと投じられて、窪みの中に溜まる。
【0043】
示される実施形態の枠組みにおいて、ディスペンサ4はそれぞれ、ガルバニセル2の極6、7の間に配置される。
【0044】
図2aは、各セル2がディスペンサ4を有することが可能であり、その際に、ディスペンサ4の各ディスペンサ開口部5は、セル2の噴出箇所3の上方に配置されることを示している。
【0045】
図2bは、ディスペンサ4が、例えばモジュールの複数のセル2に対して割り当てられ、その際に、モジュールに割り当てられたディスペンサ4が、モジュールのセル2の極6、7の間に配置されうることも同様に可能であることを示している。
図2bは、ディスペンサ4が複数のディスペンサ開口部5;5a、5b、5c、5d、5e、5fを有しうることを更に示している。
図2bは、その際に、各ディスペンサ5;5a、5b、5c、5d、5e、5fが、接続された複数のガルバニセル2から成るモジュールのセル2の噴出箇所3の上方に配置され、特にその際に、ディスペンサ4のディスペンサ開口部5;5a、5b、5c、5d、5e、5fの数が、モジュールのセル2の数、特に噴出箇所3の数に対応することを示している。
【0046】
示される実施形態の枠組みにおいて、ディスペンサ4は有利に、セル2の極6、7の間に提供される空間以外に追加的な空間を取らない。
【0047】
図1、
図2a、及び
図2bは、バッテリハウジング1が基礎ハウジングを有し、この基礎ハウジング内に、ガルバニセル2を収容するための内部空間が配置され、その際に、基礎ハウジング又は基礎ハウジングの内部空間は、ハウジングカバー8により密閉されうることを更に示している。