特許第5934608号(P5934608)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5934608
(24)【登録日】2016年5月13日
(45)【発行日】2016年6月15日
(54)【発明の名称】切削装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/08 20060101AFI20160602BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20160602BHJP
【FI】
   B23Q3/08 A
   H01L21/78 F
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-183671(P2012-183671)
(22)【出願日】2012年8月22日
(65)【公開番号】特開2014-39980(P2014-39980A)
(43)【公開日】2014年3月6日
【審査請求日】2015年7月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】前杢 芳雄
【審査官】 長清 吉範
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−145377(JP,A)
【文献】 特開2007−210037(JP,A)
【文献】 特開2012−135850(JP,A)
【文献】 特開2000−308934(JP,A)
【文献】 特開平10−308366(JP,A)
【文献】 特開2010−017798(JP,A)
【文献】 特開平06−126564(JP,A)
【文献】 実開昭51−108571(JP,U)
【文献】 実公昭45−13972(JP,Y1)
【文献】 特開2000−291939(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/08
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持面で吸引保持するチャックテーブルと、前記チャックテーブルで保持された前記被加工物を加工する加工手段と、前記チャックテーブルに負圧を作用させて前記被加工物を吸引する吸引手段と、を備えた切削装置であって、
前記吸引手段は、
圧縮エア供給路から供給される圧縮エアによって負圧を発生するエジェクタと、
前記エジェクタと前記チャックテーブルとを接続し、前記エジェクタが発生する負圧を前記チャックテーブルに作用させる吸引路と、
前記エジェクタの排気口に接続され、前記エジェクタから排出される前記圧縮エアおよび前記吸引路を介して前記チャックテーブルから吸引した流体および前記被加工物の加工屑を排出する排出路と、
を備え、
前記排出路の下流側端部は、前記排出路より内径の大きい排気ダクトの上流側端部に接続手段を介して連通し、
前記接続手段は、
前記排気ダクトの上流側端面を覆い着脱可能に装着される蓋体と、
前記蓋体に形成され、かつ前記排出路を挿通して固定する接続口と、
前記蓋体と前記排気ダクトとの間に配設された漏洩防止用の弾性部材と、
を有し、前記蓋体を前記排気ダクトから取り外すことで、前記蓋体に固定された前記排出路の下流側端部に堆積する前記加工屑を除去可能なことを特徴とする切削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物をチャックテーブルに吸引保持して切削加工する切削装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス装置製造工程や各種の電子部品製造工程において、ダイシングソーと呼ばれる極薄のブレード(切削ブレード)を高速回転して被加工物(半導体ウェーハ、ガラス、セラミックス等)を個々の製品やデバイスチップに分割する切削装置や、レーザーソーと呼ばれるレーザー光線を照射して溝や内部改質層を形成するレーザー加工装置などの加工装置は欠かすことができない。これらの加工装置は、通常、被加工物をチャックテーブルの保持面に吸引保持した状態で加工を行い、チャックテーブルに吸引力を発生させるために、外部から供給される圧縮エアを利用して負圧を発生させるエジェクタが用いられている(特許文献1参照)。加工装置のうち、特に切削液をかけながら切削(破砕)加工を行う切削装置では、チャックテーブルの保持面に形成された吸引口からエジェクタへと切削液や加工屑などが侵入する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−145377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エジェクタの内部を通過した切削液や加工屑などは、圧縮エアとともにエジェクタの排気口に接続されている排出路を通って、最終的に排出路が接続されている排気ダクトへ排気される。排出路から排気ダクトへと開放される部分である接続部分には、加工屑が付着しやすく、多く堆積すると排気効率の低下の可能性がある。従って、接続部分の定期的な清掃が望まれるが、排気ダクトに接続された排出路は、接続部分から排気(圧縮エア)、切削液および加工屑などが外部に漏れないように、通常、シールテープなどで隙間を作ることなく、排気ダクトに対して強固に固定されている。よって、清掃を行う場合は、シールテープを剥がし、強固に固定された状態の排出路を排気ダクトから取り外し、清掃後に、再度同様に排出路をシールテープなどで隙間無く、排気ダクトに対して強固に固定することとなり、接続部分の清掃には複数の工程および多くの時間を要していた。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、排出路と排気ダクトとの接続部分の清掃を容易に行うことができる切削装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、被加工物を保持面で吸引保持するチャックテーブルと、前記チャックテーブルで保持された前記被加工物を加工する加工手段と、前記チャックテーブルに負圧を作用させて前記被加工物を吸引する吸引手段と、を備えた切削装置であって、前記吸引手段は、圧縮エア供給路から供給される圧縮エアによって負圧を発生するエジェクタと、前記エジェクタと前記チャックテーブルとを接続し、前記エジェクタが発生する負圧を前記チャックテーブルに作用させる吸引路と、前記エジェクタの排気口に接続され、前記エジェクタから排出される前記圧縮エアおよび前記吸引路を介して前記チャックテーブルから吸引した流体および前記被加工物の加工屑を排出する排出路と、を備え、前記排出路の下流側端部は、前記排出路より内径の大きい排気ダクトの上流側端部に接続手段を介して連通し、前記接続手段は、前記排気ダクトの上流側端面を覆い着脱可能に装着される蓋体と、前記蓋体に形成され、かつ前記排出路を挿通して固定する接続口と、前記蓋体と前記排気ダクトとの間に配設された漏洩防止用の弾性部材と、を有し、前記蓋体を前記排気ダクトから取り外すことで、前記蓋体に固定された前記排出路の下流側端部に堆積する前記加工屑を除去可能なことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の切削装置は、蓋体を排気ダクトに装着した際に蓋体と排気ダクトとの間に配設された漏洩防止用の弾性部材により隙間が無く、排出路が蓋体を介して排気ダクトに接続されているので、排気(圧縮エア)、切削液および加工屑などの外部への漏れを発生させることがない。そして、清掃する際に蓋体を排気ダクトに対して取り外すことで、排出路と排気ダクトとの接続部分を外部に露出することができるので、容易に清掃を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る切削装置の構成例を示す図である。
図2図2は、実施形態に係る切削装置のブロック図である。
図3図3は、実施形態に係る切削装置の接続手段の構成例(蓋体離脱時)を示す図である。
図4図4は、実施形態に係る切削装置の接続手段の構成例(蓋体装着時)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0010】
〔実施形態〕
図1は、実施形態に係る切削装置の構成例を示す図である。図2は、実施形態に係る切削装置のブロック図である。図3は、実施形態に係る切削装置の接続手段の構成例(蓋体離脱時)を示す図である。図4は、実施形態に係る切削装置の接続手段の構成例(蓋体装着時)を示す図である。
【0011】
切削装置1は、被加工物Wに対して切削加工を行うものである。切削装置1は、図1および図2に示すように、チャックテーブル10と、加工手段20と、吸引手段30と、排気ダクト40と、接続手段50(図1および図2に図示なし)とを含んで構成されている。なお、符号60は、圧縮エア供給源である。
【0012】
チャックテーブル10は、図1に示すように、吸引手段30から供給される負圧によって被加工物Wを保持面11で吸引保持する。保持面11を構成する部分は、本実施形態では、金属製で、図示しない格子状に形成された溝内に吸引口が形成されており、吸引手段30と接続されている。
【0013】
加工手段20は、チャックテーブル10で保持された被加工物Wを加工するものであり、本実施形態では被加工物Wに対して切削加工を行う。加工手段20は、切削ブレード21を有する。切削ブレード21は、高速回転した状態で、被加工物Wに切り込み被加工物Wを切削するためのものであり、砥粒を結合材で結合して円盤形状に形成されている。切削ブレード21は、図示しない回転スピンドルに着脱自在に装着されている。切削装置1は、切削ブレード21を回転駆動する回転駆動源を有しており、回転駆動源により発生した回転力により切削ブレード21を高速回転(数千〜数万rpm)させる。
【0014】
ここで、切削装置1は、図示しないX軸移動手段、Y軸移動手段およびZ軸移動手段を有する。Z軸方向は、チャックテーブル10の保持面11と直交する方向であり、例えば鉛直方向である。X軸方向およびY軸方向は、互いに直交しており、かつZ軸方向とそれぞれ直交する方向である。切削装置1は、X軸移動手段により、待機領域(同図における右側)から加工手段20が設けられている加工領域(同図における左側)にチャックテーブル10に保持された被加工物Wを移動させ、加工領域において各移動手段によってチャックテーブル10と加工手段20とを相対移動させることにより、チャックテーブル10に保持された被加工物Wを切削加工する。
【0015】
吸引手段30は、チャックテーブル10に負圧を作用させて被加工物Wを吸引するものであり、図2に示すように、エジェクタ31と、吸引路32と、排出路33とを含み、さらにエア供給路34と、切替弁35と、逆止弁36とを含んで構成されている。エジェクタ31は、エア供給路34を介して圧縮エア供給源60から供給される圧縮エアの消費流量に比例して負圧を発生させるものである。ここで、エア供給路34には、エア供給路34の開閉を行う切替弁35が設けられ、切削装置1の図示しない制御装置により切替弁35を制御することで、吸引手段30の吸引動作のON/OFF制御が行われる。エジェクタ31は、図示しない供給ポート、真空ポートおよび排気ポートをそれぞれ有している。エジェクタ31は、供給ポートから排気ポートへ向かう圧縮エアの流れによって真空ポートに負圧を発生させる。吸引路32は、エジェクタ31とチャックテーブル10とを接続し、エジェクタ31が発生する負圧をチャックテーブル10に作用させるものである。つまり、エジェクタ31は、吸引路32を介して真空ポートで発生した負圧をチャックテーブル10の保持面11に被加工物Wを吸引保持するために作用させることができる。なお、吸引路32は、チャックテーブル10からエジェクタ31に向かう方向の流れのみを許容する逆止弁36が設けられている。排出路33は、エジェクタ31の排気口37に接続され、エジェクタ31から排出される圧縮エアを排出するものである。また、排出路33は、吸引路32およびエジェクタ31を介して圧縮エアに混入する混入物である、チャックテーブル10から吸引した流体、本実施形態では切削加工時に供給される切削液や、切削加工時に切削ブレード21に被加工物Wを切削することで発生する加工屑なども排出する。排出路33は、図3および図4に示すように、チューブ38で構成されており、下流側端部に後述する蓋体51に固定されるコネクタ39が設けられている。コネクタ39は、先端部が開口し、チューブ38の内部空間と連通しており、排出路33内の圧縮エアが先端部から排出される。コネクタ39は、チューブ38に対して回転自在に装着されており、先端部の外周に雄ネジが形成されている。
【0016】
排気ダクト40は、吸引手段30の下流側、すなわち排出路33と接続され、排出路33内の圧縮エアを切削装置1の外部に排気するものである。排気ダクト40は、図3および図4に示すように、排出路33よりも内径が大きく形成されている。排気ダクト40は、上流側端部に後述する蓋体51が装着されるための装着口41が形成されている。なお、排気ダクト40は、上流側が排出路33と接続され、下流側が例えば図示しない浄化装置などを介して大気に開放されている。また、排気ダクト40は、エジェクタ31からの圧縮エアが排気されるのみならず、切削ブレード21が固定された図示しないスピンドルを支持する空気軸受の排気や、加工領域内の雰囲気が排気される場合がある。
【0017】
接続手段50は、排出路33の下流側端部を排気ダクト40の上流側端部と連通させるものであり、接続口55が形成された蓋体51と、弾性部材52とを含んで構成されている。蓋体51は、排気ダクト40の上流側端面42を覆い着脱可能に装着されるものである。蓋体51は、弾性部材52よりも外径が大きい円盤状の本体部53と、本体部53の一方側である排気ダクト側に突出して形成された円筒状の装着部54とを含んで構成されている。本体部53は、中央部に貫通孔として接続口55が形成されている。装着部54は、外周に雄ネジが形成されている。接続口55は、装着部54と連通して形成されており、内周に、上記コネクタ39の先端部の雄ネジと螺合する雌ネジが形成されている。ここで、コネクタ39は、先端部の雄ネジを図示しないシールテープを介して接続口55の雌ネジに螺合し、先端部の開口が装着部54の内部空間に露出することで、接続口55とコネクタ39との間から外部に漏れることなく、接続口55に対して強固に固定される。つまり、排出路33は、接続口55に挿通して蓋体51に対して固定される。弾性部材52は、蓋体51と排気ダクト40との間に配設され、蓋体51と排気ダクト40との間からの漏洩を防止するためのものである。弾性部材52は、本実施形態では、Oリングであり、蓋体51を排気ダクト40に装着する際に、弾性変形するものである。
【0018】
圧縮エア供給源60は、圧縮気体を各機器に供給するものであり、本実施形態では、圧縮された空気(圧縮エア)を供給する供給源である。圧縮エア供給源60は、例えば、気体を圧縮するポンプと、圧縮された気体を貯留するアキュムレータとを含んで構成される。なお、圧縮エア供給源60は、予め定められた所定圧の圧縮エアを供給できるように制御される。
【0019】
次に、蓋体51の装着・離脱の動作について説明する。蓋体51の排気ダクト40への装着は、図3に示すように、予め排出路33が接続口55に挿通して固定された状態で、排気ダクト40と蓋体51との間に弾性部材52を位置づけ、蓋体51の装着部54の雄ネジを、装着口41の雌ネジに螺合する。これにより、蓋体51と排気ダクト40とに挟まれた弾性部材52は、図4に示すように、装着部54の雄ネジと装着口41の雌ネジとの螺合により弾性変形することで、蓋体51と排気ダクト40との間を周方向に連続してシールする。従って、排気ダクト40内の圧縮エアや、切削液および加工屑などが蓋体51と排気ダクト40との間から外部に漏洩することを防止することができる。蓋体51の排気ダクト40からの離脱は、切削装置1の運転停止時に、図3に示すように、蓋体51の装着部54の雄ネジと装着口41の雌ネジとの螺合を解除する。これにより、排出路33が接続口55に挿通して固定された状態の蓋体51を排気ダクト40から分離することができる。
【0020】
以上のように、本実施形態に係る切削装置1では、蓋体51を排気ダクト40に装着した後、切削装置1の運転を開始すると、加工動作に伴い、圧縮エアや、切削液および加工屑などが排出路33から排気ダクト40に向かって排気される(同図矢印A参照)。このとき、蓋体51と排気ダクト40との間に配設された漏洩防止用の弾性部材52により蓋体51と排気ダクト40との間には隙間が無く、排出路33が蓋体51を介して排気ダクト40に接続されているので、圧縮エアや、切削液および加工屑などが外部に漏洩することを防止することができる。ここで、排出路33内の切削液および加工屑などの圧縮エアの混合物は、切削装置1の加工動作に伴い排出路33から排気ダクト40に排気されると、排出路33のコネクタ39の先端部、すなわち排出路33の下流側端部の縁や、装着部54の内部空間に堆積することとなる(同図D参照)。堆積した混合物を清掃する際には、蓋体51を排気ダクト40に対して取り外すことで、装着口41近傍や装着部54の内部空間、接続口55近傍を外部に露出する。つまり、排出路33と排気ダクト40との接続部分を外部に露出することができるので、容易に清掃を行うことができる。従って、チャックテーブル10から切削液を代表する流体や加工屑などが吸引路32を介して排出路33の圧縮エアに含まれてしまう切削装置1に対して、特に上記効果を奏することができる。
【0021】
なお、上記実施形態において、例えば、切削装置1にドレスボード用のチャックテーブルなどか配設され、1つの切削装置に複数のチャックテーブルがある場合は、エジェクタ31および排出路33が各チャックテーブルに対して設けられ、各排出路33に対して蓋体51に設けられた接続口55に各排出路33が挿通して固定されることとなる。
【符号の説明】
【0022】
1 切削装置
10 チャックテーブル
11 保持面
20 加工手段
21 切削ブレード
30 吸引手段
31 エジェクタ
32 吸引路
33 排出路
34 エア供給路
35 切替弁
36 逆止弁
37 排気口
40 排気ダクト
41 装着口
50 接続手段
51 蓋体
52 弾性部材
53 本体部
54 装着部
55 接続口
60 圧縮エア供給源
図1
図2
図3
図4