【実施例】
【0027】
以下、本発明による銀被覆銅合金粉末およびその製造方法の実施例について詳細に説明する。
【0028】
[実施例1]
銅7.2kgとニッケル0.8kgを加熱した溶湯をタンディッシュ下部から落下させながら高圧水を吹付けて急冷凝固させ、得られた合金粉末をろ過し、水洗し、乾燥し、解砕して、銅合金粉末(銅−ニッケル合金粉末)を得た。
【0029】
また、EDTA−2Na二水和物61.9gと炭酸アンモニウム61.9gを純水720gに溶解した溶液(溶液1)と、EDTA−2Na二水和物263.2gと炭酸アンモニウム526.4gを純水2097gに溶解した溶液に、硝酸銀87.7gを純水271gに溶解した溶液を加えて得られた溶液(溶液2)を用意した。
【0030】
次に、窒素雰囲気下において、得られた銅−ニッケル合金粉末130gを溶液1に加えて、攪拌しながら35℃まで昇温させた。この銅−ニッケル合金粉末が分散した溶液に溶液2を加えて1時間攪拌した後、ろ過し、水洗し、乾燥して、銀により被覆された銅−ニッケル合金粉末(銀被覆銅合金粉末)を得た。
【0031】
このようにして得られた銀被覆銅合金粉末の組成、銀の被覆量、平均粒径および圧粉体抵抗を求めるとともに、銀被覆銅合金粉末の保存安定性(信頼性)の評価を行った。また、銀被覆前の銅合金粉末の組成および平均粒径を求めるとともに、銀被覆前の銅合金粉末の高温安定性の評価を行った。
【0032】
銀被覆前の銅合金粉末中の銅およびニッケルの含有量は、銀被覆前の銅合金粉末(約2.5g)を塩化ビニル製リング(内径3.2cm×厚さ4mm)内に敷き詰めた後、錠剤型成型圧縮機(株式会社前川試験製作所製の型番BRE−50)により100kNの荷重をかけて銀被覆前の銅合金粉末のペレットを作製し、このペレットをサンプルホルダー(開口径3.0cm)に入れて蛍光X線分析装置(株式会社リガク製のRIX2000)内の測定位置にセットし、測定雰囲気を減圧下(8.0Pa)とし、X線出力を50kV、50mAとした条件で測定した結果から、装置に付属のソフトウェアで自動計算することによって求めた。その結果、銀被覆前の銅合金粉末中の銅の含有量は90.1質量%、ニッケルの含有量は9.9質量%であった。
【0033】
銀被覆前の銅合金粉末の平均粒径として、レーザー回折式粒度分布装置により測定した累積50%粒子径(D
50径)を求めたところ、1.7μmであった。
【0034】
銀被覆前の銅合金粉末の高温安定性については、示差熱熱重量同時測定装置(SIIナノテクノロジー株式会社製のEXATERTG/DTA6300型)により、銅合金粉末を大気中において室温(25℃)から昇温速度5℃/分で300℃まで昇温させて計測された重量と加熱前の銅合金粉末の重量の差(加熱により増加した重量)の加熱前の銅合金粉末の重量に対する増加率(%)から、加熱により増加した重量はすべて銅合金粉末の酸化により増加した重量であるとみなして、銅合金粉末の大気中における(酸化に対する)高温安定性を評価した。その結果、銅合金粉末の重量の増加率は2.6%であった。
【0035】
これらの結果を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
銀被覆銅合金粉末中の銅およびニッケルの含有量と、銀被覆銅合金粉末の銀の被覆量は、銀被覆前の銅合金粉末中の銅およびニッケルの含有量と同様の方法により求めた。その結果、銀被覆銅合金粉末中の銅の含有量は58.2質量%、ニッケルの含有量は6.6質量%、銀の被覆量は34.9質量%であった。
【0038】
銀被覆銅合金粉末の平均粒径として、レーザー回折式粒度分布装置により測定した累積50%粒子径(D
50径)を求めたところ、4.5μmであった。
【0039】
銀被覆銅合金粉末の圧粉体抵抗として、銀被覆銅合金粉末6.5gを粉体抵抗測定システムの測定容器(三菱化学アナリテック株式会社製のMCP−PD51型)内に詰めた後に加圧を開始して、20kNの荷重がかかった時点の(圧粉体の)体積抵抗率(初期の体積抵抗率)を測定した。その結果、銀被覆銅合金粉末の初期の体積抵抗率は6.7×10
−5Ω・cmであった。
【0040】
銀被覆銅合金粉末の保存安定性(信頼性)は、一定温度(85℃)、一定湿度(85%)に保たれた試験室内においてシャーレ上に満遍なく広げた状態で1週間保存した銀被覆銅合金粉末6.5gを粉体抵抗測定システムの測定容器(三菱化学アナリテック株式会社製のMCP−PD51型)内に詰めた後に加圧を開始して、20kNの荷重がかかった時点の体積抵抗率(1週間保存後の体積抵抗率)を測定し、体積抵抗率の変化率(%)={(1週間保存後の体積抵抗率)−(初期の体積抵抗率)}×100/(初期の体積抵抗率)によって評価した。その結果、1週間保存後の銀被覆銅合金粉末の体積抵抗率の変化率は226%であり、同様に評価した2週間保存後の銀被覆銅合金粉末の体積抵抗率の変化率は304%であった。
【0041】
これらの結果を表2および表3に示す。
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
次に、得られた銀被覆銅合金粉末65.1gと、フレーク状銀粉(DOWAエレクトロニクス株式会社製のFA−D−6/平均粒子径(D
50径)8.3μm)27.9gと、熱硬化型樹脂としてビスフェノールF型エポキシ樹脂(株式会社ADEKA製のアデカレジンEP−4901E)8.2gと、三フッ化ホウ素モノエチルアミン0.41gと、溶媒としてブチルカルビトールアセテート2.5gと、オレイン酸0.1gとを混練脱泡機で混合した後、三本ロールを5回パスして均一に分散させることによって導電ペーストを得た。
【0045】
この導電ペーストをスクリーン印刷法によってアルミナ基板上に(線幅500μm、線長37.5mmのパターンに)印刷した後、大気中において200℃で40分間焼成して硬化させることによって導電膜を形成し、得られた導電膜の体積抵抗率の算出と保存安定性(信頼性)の評価を行った。
【0046】
導電膜の体積抵抗率は、得られた導電膜のライン抵抗を二端子型抵抗率計(日置電機株式会社製の3540ミリオームハイテスタ)により測定し、膜厚を表面粗さ形状測定機(株式会社東京精密製のサーフコム1500DX型)により測定して、体積抵抗率(Ω・cm)=ライン抵抗(Ω)×膜厚(cm)×線幅(cm)/線長(cm)により算出した。その結果、導電膜の体積抵抗率(初期の体積抵抗率)は14.5×10
−5Ω・cmであった。
【0047】
導電膜の保存安定性(信頼性)は、一定温度(85℃)、一定湿度(85%)に保たれた試験室内において1週間保存した導電膜の体積抵抗率(1週間保存後の体積抵抗率)を算出し、体積抵抗率の変化率(%)={(1週間保存後の体積抵抗率)−(初期の体積抵抗率)}×100/(初期の体積抵抗率)によって評価した。その結果、1週間保存後の導電膜の体積抵抗率の変化率は−3%であり、同様に評価した2週間保存後の導電膜の体積抵抗率の変化率は−9%であった。
【0048】
これらの結果を表4に示す。
【0049】
【表4】
【0050】
[実施例2]
実施例1と同様の銅合金粉末(銅−ニッケル合金粉末)を使用するとともに、溶液1として、EDTA−2Na二水和物61.9gと炭酸アンモニウム61.9gを純水720gに溶解した溶液を使用し、溶液2として、EDTA−2Na二水和物307.1gと炭酸アンモニウム153.5gを純水1223gに溶解した溶液に、硝酸銀51.2gを純水222gに溶解した溶液を加えて得られた溶液を使用した以外は、実施例1と同様の方法により、銀により被覆された銅−ニッケル合金粉末(銀被覆銅合金粉末)を得た。
【0051】
このようにして得られた銀被覆銅合金粉末について、実施例1と同様の方法により、組成、銀の被覆量、平均粒径および圧粉体抵抗を求めるとともに、保存安定性(信頼性)の評価を行った。その結果、銀被覆銅合金粉末中の銅の含有量は69.6質量%、ニッケルの含有量は7.9質量%、銀の被覆量は22.4質量%であった。また、銀被覆銅合金粉末の平均粒径は2.9μmであった。さらに、銀被覆銅合金粉末の初期の体積抵抗率は6.5×10
−5Ω・cmであり、1週間保存後の体積抵抗率の変化率は147%、2週間保存後の体積抵抗率の変化率は202%であった。
【0052】
また、得られた銀被覆銅合金粉末を使用して、実施例1と同様の方法により得られた導電膜について、実施例1と同様の方法により、体積抵抗率の算出と保存安定性(信頼性)の評価を行った。その結果、導電膜の体積抵抗率(初期の体積抵抗率)は12.1×10
−5Ω・cmであり、1週間保存後の導電膜の体積抵抗率の変化率は0%、2週間保存後の導電膜の体積抵抗率の変化率は−1%であった。
【0053】
これらの結果を表1〜表4に示す。
【0054】
[実施例3]
実施例1と同様の銅合金粉末(銅−ニッケル合金粉末)を使用するとともに、溶液1として、EDTA−2Na二水和物19gと炭酸アンモニウム19gを純水222gに溶解した溶液を使用し、溶液2として、EDTA−2Na二水和物252gと炭酸アンモニウム126gを純水1004gに溶解した溶液に、硝酸銀42gを純水100gに溶解した溶液を加えて得られた溶液を使用した以外は、実施例1と同様の方法により、銀により被覆された銅−ニッケル合金粉末(銀被覆銅合金粉末)を得た。
【0055】
このようにして得られた銀被覆銅合金粉末について、実施例1と同様の方法により、組成、銀の被覆量、平均粒径および圧粉体抵抗を求めるとともに、保存安定性(信頼性)の評価を行った。その結果、銀被覆銅合金粉末中の銅の含有量は47.5質量%、ニッケルの含有量は5.6質量%、銀の被覆量は46.8質量%であった。また、銀被覆銅合金粉末の平均粒径は4.9μmであった。さらに、銀被覆銅合金粉末の初期の体積抵抗率は4.6×10
−5Ω・cmであり、1週間保存後の体積抵抗率の変化率は19%、2週間保存後の体積抵抗率の変化率は14%であった。
【0056】
また、得られた銀被覆銅合金粉末を使用して、実施例1と同様の方法により得られた導電膜について、実施例1と同様の方法により、体積抵抗率の算出と保存安定性(信頼性)の評価を行った。その結果、導電膜の体積抵抗率(初期の体積抵抗率)は13.6×10
−5Ω・cmであり、1週間保存後の導電膜の体積抵抗率の変化率は−4%、2週間保存後の導電膜の体積抵抗率の変化率は−4%であった。
【0057】
これらの結果を表1〜表4に示す。
【0058】
[実施例4]
銅7.2kgとニッケル0.8kgの代わりに銅5.6kgとニッケル2.4kgを使用した以外は、実施例1と同様の方法により、銅合金粉末(銅−ニッケル合金粉末)を得た。
【0059】
このようにして得られた銅合金粉末について、実施例1と同様の方法により、組成および平均粒径を求めるとともに、高温安定性の評価を行った。その結果、銅合金粉末中の銅の含有量は70.4質量%、ニッケルの含有量は29.5質量%であった。また、銅合金粉末の平均粒径は1.7μmであった。さらに、銅合金粉末の重量の増加率は0.3%であった。
【0060】
また、得られた銅合金粉末(銅−ニッケル合金粉末)を使用して、実施例1と同様の方法により、銀により被覆された銅−ニッケル合金粉末(銀被覆銅合金粉末)を得た。
【0061】
このようにして得られた銀被覆銅合金粉末について、実施例1と同様の方法により、組成、銀の被覆量、平均粒径および圧粉体抵抗を求めるとともに、保存安定性(信頼性)の評価を行った。その結果、銀被覆銅合金粉末中の銅の含有量は45.9質量%、ニッケルの含有量は19.7質量%、銀の被覆量は34.3質量%であった。また、銀被覆銅合金粉末の平均粒径は5.5μmであった。さらに、銀被覆銅合金粉末の初期の体積抵抗率は8.3×10
−5Ω・cmであり、1週間保存後の体積抵抗率の変化率は180%、2週間保存後の体積抵抗率の変化率は412%であった。
【0062】
また、得られた銀被覆銅合金粉末を使用して、実施例1と同様の方法により得られた導電膜について、実施例1と同様の方法により、体積抵抗率の算出と保存安定性(信頼性)の評価を行った。その結果、導電膜の体積抵抗率(初期の体積抵抗率)は15.5×10
−5Ω・cmであり、1週間保存後の導電膜の体積抵抗率の変化率は−1%、2週間保存後の導電膜の体積抵抗率の変化率は−5%であった。
【0063】
これらの結果を表1〜表4に示す。
【0064】
[実施例5]
銅7.2kgとニッケル0.8kgの代わりに銅7.6kgと亜鉛0.4kgを使用した以外は、実施例1と同様の方法により、銅合金粉末(銅−亜鉛合金粉末)を得た。
【0065】
このようにして得られた銅合金粉末について、実施例1と同様の方法により、組成および平均粒径を求めるとともに、高温安定性の評価を行った。なお、銅合金粉末中の亜鉛の含有量は、実施例1において銅合金粉末中の銅およびニッケルの含有量を算出した方法と同様の方法により算出した。その結果、銅合金粉末中の銅の含有量は95.3質量%、亜鉛の含有量は4.7質量%であった。また、銅合金粉末の平均粒径は2.1μmであった。さらに、銅合金粉末の重量の増加率は4.2%であった。
【0066】
また、得られた銅合金粉末(銅−亜鉛合金粉末)を使用して、実施例1と同様の方法により、銀により被覆された銅−亜鉛合金粉末(銀被覆銅合金粉末)を得た。
【0067】
このようにして得られた銀被覆銅合金粉末について、実施例1と同様の方法により、組成、銀の被覆量、平均粒径および圧粉体抵抗を求めるとともに、保存安定性(信頼性)の評価を行った。なお、銀被覆銅合金粉末中の亜鉛の含有量は、実施例1において銀被覆銅合金粉末中の銅およびニッケルの含有量を算出した方法と同様の方法により算出した。その結果、銀被覆銅合金粉末中の銅の含有量は63.8質量%、亜鉛の含有量は2.7質量%、銀の被覆量は33.3質量%であった。また、銀被覆銅合金粉末の平均粒径は6.6μmであった。さらに、銀被覆銅合金粉末の初期の体積抵抗率は2.4×10
−5Ω・cmであり、1週間保存後の体積抵抗率の変化率は10%、2週間保存後の体積抵抗率の変化率は4%であった。
【0068】
また、得られた銀被覆銅合金粉末を使用して、実施例1と同様の方法により得られた導電膜について、実施例1と同様の方法により、体積抵抗率の算出と保存安定性(信頼性)の評価を行った。その結果、導電膜の体積抵抗率(初期の体積抵抗率)は6.2×10
−5Ω・cmであり、1週間保存後の導電膜の体積抵抗率の変化率は−8%、2週間保存後の導電膜の体積抵抗率の変化率は−7%であった。
【0069】
これらの結果を表1〜表4に示す。
【0070】
[実施例6]
ニッケル0.8kgの代わりに亜鉛0.8kgを使用した以外は、実施例1と同様の方法により、銅合金粉末(銅−亜鉛合金粉末)を得た。
【0071】
このようにして得られた銅合金粉末について、実施例1と同様の方法により、組成および平均粒径を求めるとともに、高温安定性の評価を行った。なお、銅合金粉末中の亜鉛の含有量は、実施例1において銅合金粉末中の銅およびニッケルの含有量を算出した方法と同様の方法により算出した。その結果、銅合金粉末中の銅の含有量は91.9質量%、亜鉛の含有量は7.1質量%であった。また、銅合金粉末の平均粒径は2.2μmであった。さらに、銅合金粉末の重量の増加率は2.2%であった。
【0072】
また、得られた銅合金粉末(銅−亜鉛合金粉末)を使用して、実施例1と同様の方法により、銀により被覆された銅−亜鉛合金粉末(銀被覆銅合金粉末)を得た。
【0073】
このようにして得られた銀被覆銅合金粉末について、実施例1と同様の方法により、組成、銀の被覆量、平均粒径および圧粉体抵抗を求めるとともに、保存安定性(信頼性)の評価を行った。なお、銀被覆銅合金粉末中の亜鉛の含有量は、実施例1において銀被覆銅合金粉末中の銅およびニッケルの含有量を算出した方法と同様の方法により算出した。その結果、銀被覆銅合金粉末中の銅の含有量は66.8質量%、亜鉛の含有量は4.9質量%、銀の被覆量は27.6質量%であった。また、銀被覆銅合金粉末の平均粒径は4.6μmであった。さらに、銀被覆銅合金粉末の初期の体積抵抗率は3.3×10
−5Ω・cmであり、1週間保存後の体積抵抗率の変化率は131%、2週間保存後の体積抵抗率の変化率は78%であった。
【0074】
また、得られた銀被覆銅合金粉末を使用して、実施例1と同様の方法により得られた導電膜について、実施例1と同様の方法により、体積抵抗率の算出と保存安定性(信頼性)の評価を行った。その結果、導電膜の体積抵抗率(初期の体積抵抗率)は10.2×10
−5Ω・cmであり、1週間保存後の導電膜の体積抵抗率の変化率は−6%、2週間保存後の導電膜の体積抵抗率の変化率は−2%であった。
【0075】
これらの結果を表1〜表4に示す。
【0076】
[実施例7]
実施例6と同様の銅合金粉末(銅−亜鉛合金粉末)を使用するとともに、溶液1として、EDTA−2Na二水和物61.9gと炭酸アンモニウム61.9gを純水720gに溶解した溶液を使用し、溶液2として、EDTA−2Na二水和物136.5gと炭酸アンモニウム68.2gを純水544gに溶解した溶液に、硝酸銀22.9gを純水70gに溶解した溶液を加えて得られた溶液を使用した以外は、実施例1と同様の方法により、銀により被覆された銅−亜鉛合金粉末(銀被覆銅合金粉末)を得た。
【0077】
このようにして得られた銀被覆銅合金粉末について、実施例1と同様の方法により、組成、銀の被覆量、平均粒径および圧粉体抵抗を求めるとともに、保存安定性(信頼性)の評価を行った。その結果、銀被覆銅合金粉末中の銅の含有量83.0質量%、亜鉛の含有量は5.7質量%、銀の被覆量は11.0質量%であった。また、銀被覆銅合金粉末の平均粒径は3.3μmであった。さらに、銀被覆銅合金粉末の初期の体積抵抗率は3.8×10
−5Ω・cmであり、1週間保存後の体積抵抗率の変化率は4%、2週間保存後の体積抵抗率の変化率は24%であった。
【0078】
なお、得られた銀被覆銅合金粉末の最表面(分析深さ数nm)の組成を調べるため、走査型オージェ電子分光法による評価を行った。この評価では、走査型オージェ電子分光分析装置(日本電子株式会社製のJAMP−7800型)を使用して、加速電圧10kV、電流値1×10
−7A、測定範囲100μmφの条件で、電子のエネルギー分布を測定し、装置に付属する相対感度係数によってAg、Cu、Zn、Niの各々の原子について半定量分析を行った。この半定量分析により得られた各々の原子の分析値から、銀被覆銅合金粉末の表面全体に占める銀層の割合(銀被覆割合)(面積%)(=Ag分析値/(Ag分析値+Cu分析値+Zn分析値+Ni分析値)×100)を算出したところ、73面積%であった。
【0079】
また、得られた銀被覆銅合金粉末を使用して、実施例1と同様の方法により得られた導電膜について、実施例1と同様の方法により、体積抵抗率の算出と保存安定性(信頼性)の評価を行った。その結果、導電膜の体積抵抗率(初期の体積抵抗率)は7.9×10
−5Ω・cmであり、1週間保存後の導電膜の体積抵抗率の変化率は1%、2週間保存後の導電膜の体積抵抗率の変化率は1%であった。
【0080】
これらの結果を表1〜表4に示す。
【0081】
[実施例8]
銅7.2kgとニッケル0.8kgの代わりに銅5.6kgと亜鉛2.4kgを使用した以外は、実施例1と同様の方法により、銅合金粉末(銅−亜鉛合金粉末)を得た。
【0082】
このようにして得られた銅合金粉末について、実施例1と同様の方法により、組成および平均粒径を求めるとともに、高温安定性の評価を行った。なお、銅合金粉末中の亜鉛の含有量は、実施例1において銅合金粉末中の銅およびニッケルの含有量を算出した方法と同様の方法により算出した。その結果、銅合金粉末中の銅の含有量は72.8質量%、亜鉛の含有量は27.1質量%であった。また、銅合金粉末の平均粒径は1.7μmであった。さらに、銅合金粉末の重量の増加率は0.1%であった。
【0083】
また、得られた銅合金粉末(銅−亜鉛合金粉末)を使用して、実施例1と同様の方法により、銀により被覆された銅−亜鉛合金粉末(銀被覆銅合金粉末)を得た。
【0084】
このようにして得られた銀被覆銅合金粉末について、実施例1と同様の方法により、組成、銀の被覆量、平均粒径および圧粉体抵抗を求めるとともに、保存安定性(信頼性)の評価を行った。なお、銀被覆銅合金粉末中の亜鉛の含有量は、実施例1において銀被覆銅合金粉末中の銅およびニッケルの含有量を算出した方法と同様の方法により算出した。その結果、銀被覆銅合金粉末中の銅の含有量は49.3質量%、亜鉛の含有量は13.4質量%、銀の被覆量は36.9質量%であった。また、銀被覆銅合金粉末の平均粒径は5.6μmであった。さらに、銀被覆銅合金粉末の初期の体積抵抗率は3.9×10
−5Ω・cmであり、1週間保存後の体積抵抗率の変化率は6%、2週間保存後の体積抵抗率の変化率は−17%であった。
【0085】
また、得られた銀被覆銅合金粉末を使用して、実施例1と同様の方法により得られた導電膜について、実施例1と同様の方法により、体積抵抗率の算出と保存安定性(信頼性)の評価を行った。その結果、導電膜の体積抵抗率(初期の体積抵抗率)は7.1×10
−5Ω・cmであり、1週間保存後の導電膜の体積抵抗率の変化率は0%、2週間保存後の導電膜の体積抵抗率の変化率は0%であった。
【0086】
これらの結果を表1〜表4に示す。また、本実施例で得られた銀被覆銅合金粉末の初期状態および1週間保存後のSEM写真をそれぞれ
図1Aおよび
図1Bに示す。
【0087】
[実施例9]
銅7.2kgとニッケル0.8kgの代わりに銅4.0kgと亜鉛4.0kgを使用した以外は、実施例1と同様の方法により、銅合金粉末(銅−亜鉛合金粉末)を得た。
【0088】
このようにして得られた銅合金粉末について、実施例1と同様の方法により、組成および平均粒径を求めるとともに、高温安定性の評価を行った。なお、銅合金粉末中の亜鉛の含有量は、実施例1において銅合金粉末中の銅およびニッケルの含有量を算出した方法と同様の方法により算出した。その結果、銅合金粉末中の銅の含有量は67.5質量%、亜鉛の含有量は32.2質量%であった。また、銅合金粉末の平均粒径は1.8μmであった。さらに、銅合金粉末の重量の増加率は0.3%であった。
【0089】
また、得られた銅合金粉末(銅−亜鉛合金粉末)を使用して、実施例1と同様の方法により、銀により被覆された銅−亜鉛合金粉末(銀被覆銅合金粉末)を得た。
【0090】
このようにして得られた銀被覆銅合金粉末について、実施例1と同様の方法により、組成、銀の被覆量、平均粒径および圧粉体抵抗を求めるとともに、保存安定性(信頼性)の評価を行った。なお、銀被覆銅合金粉末中の亜鉛の含有量は、実施例1において銀被覆銅合金粉末中の銅およびニッケルの含有量を算出した方法と同様の方法により算出した。その結果、銀被覆銅合金粉末銅および中の銅の含有量は46.8質量%、亜鉛の含有量は17.4質量%、銀の被覆量は35.7質量%であった。また、銀被覆銅合金粉末の平均粒径は4.7μmであった。さらに、銀被覆銅合金粉末の初期の体積抵抗率は3.5×10
−5Ω・cmであり、1週間保存後の体積抵抗率の変化率は37%、2週間保存後の体積抵抗率の変化率は50%であった。
【0091】
また、得られた銀被覆銅合金粉末を使用して、実施例1と同様の方法により得られた導電膜について、実施例1と同様の方法により、体積抵抗率の算出と保存安定性(信頼性)の評価を行った。その結果、導電膜の体積抵抗率(初期の体積抵抗率)は11.8×10
−5Ω・cmであり、1週間保存後の導電膜の体積抵抗率の変化率は−7%、2週間保存後の導電膜の体積抵抗率の変化率は−6%であった。
【0092】
これらの結果を表1〜表4に示す。
【0093】
[実施例10]
銅7.2kgとニッケル0.8kgの代わりに銅6.4kgとニッケル0.8kgと亜鉛0.8kgを使用した以外は、実施例1と同様の方法により、銅合金粉末(銅−ニッケル−亜鉛合金粉末)を得た。
【0094】
このようにして得られた銅合金粉末について、実施例1と同様の方法により、組成および平均粒径を求めるとともに、高温安定性の評価を行った。なお、銅合金粉末中の亜鉛の含有量は、実施例1において銅合金粉末中の銅およびニッケルの含有量を算出した方法と同様の方法により算出した。その結果、銅合金粉末中の銅の含有量は84.5質量%、ニッケルの含有量は10.8質量%、亜鉛の含有量は4.3質量%であった。また、銅合金粉末の平均粒径は1.9μmであった。さらに、銅合金粉末の重量の増加率は1.7%であった。
【0095】
また、得られた銅合金粉末(銅−ニッケル−亜鉛合金粉末)を使用して、実施例1と同様の方法により、銀により被覆された銅−ニッケル−亜鉛合金粉末(銀被覆銅合金粉末)を得た。
【0096】
このようにして得られた銀被覆銅合金粉末について、実施例1と同様の方法により、組成、銀の被覆量、平均粒径および圧粉体抵抗を求めるとともに、保存安定性(信頼性)の評価を行った。なお、銀被覆銅合金粉末中の亜鉛の含有量は、実施例1において銀被覆銅合金粉末中の銅およびニッケルの含有量を算出した方法と同様の方法により算出した。その結果、銀被覆銅合金粉末中の銅の含有量は56.0質量%、ニッケルの含有量は7.0質量%、亜鉛の含有量は2.2質量%、銀の被覆量は34.7質量%であった。また、銀被覆銅合金粉末の平均粒径は6.1μmであった。さらに、銀被覆銅合金粉末の初期の体積抵抗率は4.0×10
−5Ω・cmであり、1週間保存後の体積抵抗率の変化率は35%、2週間保存後の体積抵抗率の変化率は44%であった。
【0097】
また、得られた銀被覆銅合金粉末を使用して、実施例1と同様の方法により得られた導電膜について、実施例1と同様の方法により、体積抵抗率の算出と保存安定性(信頼性)の評価を行った。その結果、導電膜の体積抵抗率(初期の体積抵抗率)は8.1×10
−5Ω・cmであり、1週間保存後の導電膜の体積抵抗率の変化率は−3%、2週間保存後の導電膜の体積抵抗率の変化率は−5%であった。
【0098】
これらの結果を表1〜表4に示す。
【0099】
[実施例11]
銅7.2kgとニッケル0.8kgの代わりに銅7.6kgと亜鉛0.4kgを使用した以外は、実施例1と同様の方法により、銅合金粉末(銅−亜鉛合金粉末)を得た。
【0100】
このようにして得られた銅合金粉末について、実施例1と同様の方法により、組成および平均粒径を求めるとともに、高温安定性の評価を行った。なお、銅合金粉末中の亜鉛の含有量は、実施例1において銅合金粉末中の銅およびニッケルの含有量を算出した方法と同様の方法により算出した。その結果、銅合金粉末中の銅の含有量は95.5質量%、亜鉛の含有量は4.5質量%であった。また、銅合金粉末の平均粒径は4.7μmであった。さらに、銅合金粉末の重量の増加率は2.4%であった。
【0101】
また、EDTA−2Na二水和物61.9gと炭酸アンモニウム61.9gを純水720gに溶解した溶液(溶液1)と、EDTA−2Na二水和物307.1gと炭酸アンモニウム153.5gを純水1223.2gに溶解した溶液に、硝酸銀51.2gを純水158.2gに溶解した溶液を加えて得られた溶液(溶液2)を用意した。
【0102】
次に、窒素雰囲気下において、得られた銅合金粉末(銅−亜鉛合金粉末)130gを溶液1に加えて、攪拌しながら35℃まで昇温させた。この銅合金粉末(銅−亜鉛合金粉末)が分散した溶液に溶液2を加えて1時間攪拌した後、分散剤としてパルミチン酸0.4gを工業用アルコール(日本アルコール販売株式会社製のソルミックスAP7)12.6gに溶解させた溶液を添加し、さらに40分間攪拌し、その後、ろ過し、水洗し、乾燥し、解砕して、銀により被覆された銅−亜鉛合金粉末(銀被覆銅合金粉末)を得た。
【0103】
このようにして得られた銀被覆銅合金粉末について、実施例1と同様の方法により、組成、銀の被覆量、平均粒径および圧粉体抵抗を求めるとともに、保存安定性(信頼性)の評価を行った。なお、銀被覆銅合金粉末中の亜鉛の含有量は、実施例1において銀被覆銅合金粉末中の銅およびニッケルの含有量を算出した方法と同様の方法により算出した。その結果、銀被覆銅合金粉末中の銅の含有量は79.9質量%、亜鉛の含有量は3.5質量%、銀の被覆量は16.6質量%であった。また、銀被覆銅合金粉末の平均粒径は5.6μmであった。さらに、銀被覆銅合金粉末の初期の体積抵抗率は2.8×10
−5Ω・cmであり、1週間保存後の体積抵抗率の変化率は−27%、2週間保存後の体積抵抗率の変化率は−5%であった。なお、実施例7と同様の方法により、銀被覆銅合金粉末の表面全体に占める銀層の割合(銀被覆割合)(面積%)を算出したところ、95面積%であった。
【0104】
また、得られた銀被覆銅合金粉末を使用して、実施例1と同様の方法により得られた導電膜について、実施例1と同様の方法により、体積抵抗率の算出と保存安定性(信頼性)の評価を行った。その結果、導電膜の体積抵抗率(初期の体積抵抗率)は5.1×10
−5Ω・cmであり、1週間保存後の導電膜の体積抵抗率の変化率は2%、2週間保存後の導電膜の体積抵抗率の変化率は2%であった。
【0105】
これらの結果を表1〜表4に示す。
【0106】
[実施例12]
実施例11と同様の銅合金粉末(銅−亜鉛合金粉末)353.7gと、直径1.6mmのステンレスボール2144.7gと、工業用アルコール(日本アルコール販売株式会社製のソルミックスAP7)136.3gを湿式メディア攪拌型ミル(タンク容積1リットル、棒状アーム型の攪拌羽根)に投入し、羽根の周速2.5m/秒で30分間攪拌し、得られたスラリーをろ過し、乾燥して、フレーク状銅合金粉末(フレーク状の銅−亜鉛合金粉末)を得た。
【0107】
このようにして得られたフレーク状銅合金粉末について、実施例1と同様の方法により、組成および平均粒径を求めるとともに、高温安定性の評価を行った。なお、フレーク状銅合金粉末中の亜鉛の含有量は、実施例1において銅合金粉末中の銅およびニッケルの含有量を算出した方法と同様の方法により算出した。その結果、フレーク状銅合金粉末中の銅の含有量は95.5質量%、亜鉛の含有量は4.5質量%であった。また、フレーク状銅合金粉末の平均粒径は6.1μmであった。さらに、フレーク状銅合金粉末の重量の増加率は2.9%であった。
【0108】
また、得られたフレーク状銅合金粉末(銅−亜鉛合金粉末)を使用して、実施例11と同様の方法により、銀により被覆されたフレーク状銅−亜鉛合金粉末(銀被覆フレーク状銅合金粉末)を得た。
【0109】
このようにして得られた銀被覆フレーク状銅合金粉末について、実施例1と同様の方法により、組成、銀の被覆量、平均粒径および圧粉体抵抗を求めるとともに、保存安定性(信頼性)の評価を行った。なお、銀被覆フレーク状銅合金粉末中の亜鉛の含有量は、実施例1において銀被覆銅合金粉末中の銅およびニッケルの含有量を算出した方法と同様の方法により算出した。その結果、銀被覆フレーク状銅合金粉末中の銅の含有量は77.5質量%、亜鉛の含有量は3.3質量%、銀の被覆量は19.2質量%であった。また、銀被覆フレーク状銅合金粉末の平均粒径は7.2μmであった。さらに、銀被覆フレーク状銅合金粉末の初期の体積抵抗率は3.0×10
−5Ω・cmであり、1週間保存後の体積抵抗率の変化率は−16%、2週間保存後の体積抵抗率の変化率は−10%であった。なお、実施例7と同様の方法により、銀被覆銅合金粉末の表面全体に占める銀層の割合(銀被覆割合)(面積%)を算出したところ、88面積%であった。
【0110】
なお、銀被覆フレーク状銅合金粉末のアスペクト比は、銀被覆フレーク状銅合金粉末を樹脂と混ぜてペースト化し、銅板に塗布して乾燥させて塗膜を作り、その塗膜側面を電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM)(日立製作所製のS−4700型)によって1000倍の倍率で観察し、その観察した画面に対して垂直に立っている銀被覆フレーク状銅合金粉末の粒子100個について、画像解析式粒度分布測定ソフトウェア(マウンテック社のMac−View Ver4)を用いて、粒子の最長となる長さを測定し、それらを算術平均することにより求めた平均長径Lと、同じ粒子で最短となる長さを測定し、それらを算術平均することにより求めた平均厚さTを用いて、(平均長径L/平均厚さT)をアスペクト比として求めた。その結果、銀被覆フレーク状銅合金粉末のアスペクト比は9であった。
【0111】
また、得られた銀被覆フレーク状銅合金粉末を使用して、実施例1と同様の方法により得られた導電膜について、実施例1と同様の方法により、体積抵抗率の算出と保存安定性(信頼性)の評価を行った。その結果、導電膜の体積抵抗率(初期の体積抵抗率)は6.5×10
−5Ω・cmであり、1週間保存後の導電膜の体積抵抗率の変化率は4%、2週間保存後の導電膜の体積抵抗率の変化率は4%であった。
【0112】
これらの結果を表1〜表4に示す。
【0113】
[比較例1]
銀による被覆を行わない銅合金粉末として、実施例1と同様の銅合金粉末(銅−ニッケル合金粉末)について、実施例1と同様の方法により、組成、銀の被覆量、平均粒径および圧粉体抵抗を求めた。その結果、銅合金粉末中の銅の含有量は90.1質量%、ニッケルの含有量は9.9質量%、銀の被覆量は0質量%であった。また、銀被覆銅合金粉末の平均粒径は1.7μmであった。さらに、銅合金粉末の初期の体積抵抗率は3.3×10
4Ω・cmであった。
【0114】
また、この銅合金粉末を使用して、実施例1と同様の方法により得られた導電膜について、実施例1と同様の方法により、体積抵抗率の算出と保存安定性(信頼性)の評価を行った。その結果、導電膜の体積抵抗率(初期の体積抵抗率)は2146.1×10
−5Ω・cmであり、1週間保存後の導電膜の体積抵抗率の変化率は974%であった。
【0115】
これらの結果を表1〜表4に示す。
【0116】
[比較例2]
実施例1と同様の銅合金粉末(銅−ニッケル合金粉末)を使用するとともに、溶液1として、EDTA−2Na二水和物21.4gと炭酸アンモニウム21.4gを純水249gに溶解した溶液を使用し、溶液2として、EDTA−2Na二水和物8.68gと炭酸アンモニウム4.34gを純水35gに溶解した溶液に、硝酸銀1.45gを純水4.5gに溶解した溶液を加えて得られた溶液を使用した以外は、実施例1と同様の方法により、銀により被覆された銅−ニッケル合金粉末(銀被覆銅合金粉末)を得た。
【0117】
このようにして得られた銀被覆銅合金粉末について、実施例1と同様の方法により、組成、銀の被覆量、平均粒径および圧粉体抵抗を求めるとともに、保存安定性(信頼性)の評価を行った。その結果、銀被覆銅合金粉末中の銅の含有量は87.9質量%、ニッケルの含有量9.9質量%、銀の被覆量は2.2質量%であった。また、銀被覆銅合金粉末の平均粒径は1.7μmであった。さらに、銀被覆銅合金粉末の初期の体積抵抗率は70.0×10
−5Ω・cmであり、1週間保存後の体積抵抗率の変化率は419526798%、2週間保存後の体積抵抗率の変化率は646498597%であった。
【0118】
また、得られた銀被覆銅合金粉末を使用して、実施例1と同様の方法により得られた導電膜について、実施例1と同様の方法により、体積抵抗率の算出と保存安定性(信頼性)の評価を行った。その結果、導電膜の体積抵抗率(初期の体積抵抗率)は79.5×10
−5Ω・cmであり、1週間保存後の導電膜の体積抵抗率の変化率は8%、2週間保存後の導電膜の体積抵抗率の変化率は15%であった。
【0119】
これらの結果を表1〜表4に示す。
【0120】
[比較例3]
実施例1と同様の銅合金粉末(銅−ニッケル合金粉末)を使用するとともに、溶液1として、EDTA−2Na二水和物21.4gと炭酸アンモニウム21.4gを純水249gに溶解した溶液を使用し、溶液2として、EDTA−2Na二水和物22.4gと炭酸アンモニウム11.2gを純水89gに溶解した溶液に、硝酸銀3.73gを純水11.5gに溶解した溶液を加えて得られた溶液を使用した以外は、実施例1と同様の方法により、銀により被覆された銅−ニッケル合金粉末(銀被覆銅合金粉末)を得た。
【0121】
このようにして得られた銀被覆銅合金粉末について、実施例1と同様の方法により、組成、銀の被覆量、平均粒径および圧粉体抵抗を求めるとともに、保存安定性(信頼性)の評価を行った。その結果、銀被覆銅合金粉末中の銅の含有量は85.0質量%、ニッケルの含有量は9.5質量%、銀の被覆量は5.5質量%であった。また、銀被覆銅合金粉末の平均粒径は1.8μmであった。さらに、銀被覆銅合金粉末の初期の体積抵抗率は18.0×10
−5Ω・cmであり、1週間保存後の体積抵抗率の変化率は179844%、2週間保存後の体積抵抗率の変化率は318314%であった。
【0122】
また、得られた銀被覆銅合金粉末を使用して、実施例1と同様の方法により得られた導電膜について、実施例1と同様の方法により、体積抵抗率の算出と保存安定性(信頼性)の評価を行った。その結果、導電膜の体積抵抗率(初期の体積抵抗率)は26.0×10
−5Ω・cmであり、1週間保存後の導電膜の体積抵抗率の変化率は4%、2週間保存後の導電膜の体積抵抗率の変化率は8%であった。
【0123】
これらの結果を表1〜表4に示す。
【0124】
[比較例4]
銅7.2kgとニッケル0.8kgの代わりに銅8.0kgを使用した以外は、実施例1と同様の方法により、銅粉末を得た。
【0125】
このようにして得られた銅粉末について、実施例1と同様の方法により、平均粒径を求めるとともに、高温安定性の評価を行ったところ、平均粒径は2.0μmであり、銅粉末の重量の増加率は8.8%であった。
【0126】
また、得られた銅粉末を使用して、実施例1と同様の方法により、銀により被覆された銅粉末(銀被覆銅粉末)を得た。
【0127】
このようにして得られた銀被覆銅粉末について、実施例1と同様の方法により、組成、銀の被覆量、平均粒径および圧粉体抵抗を求めるとともに、保存安定性(信頼性)の評価を行った。その結果、銀被覆銅粉末中の銅の含有量は72.9質量%、銀の被覆量は27.0質量%であった。また、銀被覆銅合金粉末の平均粒径は4.7μmであった。さらに、銀被覆銅粉末の初期の体積抵抗率は2.9×10
−5Ω・cmであり、1週間保存後の体積抵抗率の変化率は912%、2週間保存後の体積抵抗率の変化率は1709%であった。
【0128】
また、得られた銀被覆銅粉末を使用して、実施例1と同様の方法により得られた導電膜について、実施例1と同様の方法により、体積抵抗率の算出と保存安定性(信頼性)の評価を行った。その結果、導電膜の体積抵抗率(初期の体積抵抗率)は13.6×10
−5Ω・cmであり、1週間保存後の導電膜の体積抵抗率の変化率は11%、2週間保存後の導電膜の体積抵抗率の変化率は43%であった。
【0129】
これらの結果を表1〜表4に示す。また、本比較例で得られた銀被覆銅粉末の初期状態および1週間保存後のSEM写真をそれぞれ
図2Aおよび
図2Bに示す。
【0130】
[比較例5]
アトマイズ法で作製された市販の球状銅粉(日本アトマイズ加工株式会社製のSF−Cu)について、実施例1と同様の方法により、平均粒径を求めるとともに、高温安定性の評価を行ったところ、平均粒径は5.7μmであり、銅粉の重量の増加率は3.3%であった。
【0131】
この球状銅粉120gを2質量%の希塩酸に加えて5分間攪拌させることによって銅粉の表面の酸化物を除去した後、ろ過し、水洗した。このようにして表面の酸化物を除去した球状銅粉を、408.7gの純水と32.7gのAgCNと30.7gのNaCNを含む溶液に加えて60分間攪拌した後、ろ過し、水洗し、乾燥して、銀により被覆された銅粉を得た。
【0132】
このようにして得られた銀被覆銅粉96gと直径5mmのジルコニアボール720gをボールミルの容器(容積400mL、直径7.5cm)内に投入し、回転数116rpmで330分間回転させて形状を変形させることにより、銀により被覆されたフレーク状銅粉末(銀被覆フレーク状銅粉末)を得た。
【0133】
このようにして得られた銀被覆フレーク状銅粉末について、実施例1と同様の方法により、組成、銀の被覆量、平均粒径および圧粉体抵抗を求めるとともに、保存安定性(信頼性)の評価を行った。その結果、銀被覆フレーク状銅粉末中の銅の含有量は80.4質量%、銀の被覆量は19.6質量%であった。また、銀被覆フレーク状銅合金粉末の平均粒径は9.1μmであった。さらに、銀被覆銅粉末の初期の体積抵抗率は8.4×10
−5Ω・cmであり、1週間保存後の体積抵抗率の変化率は38400900801%、2週間保存後の体積抵抗率の変化率は24173914178%であった。なお、実施例7と同様の方法により、銀被覆フレーク状銅粉末の表面全体に占める銀層の割合(銀被覆割合)(面積%)を算出したところ、31面積%であった。また、実施例12と同様の方法により、銀被覆フレーク状銅粉末のアスペクト比を求めたところ、銀被覆フレーク状銅粉末のアスペクト比は7であった。
【0134】
また、得られた銀被覆フレーク状銅粉末を使用して、実施例1と同様の方法により得られた導電膜について、実施例1と同様の方法により、体積抵抗率の算出と保存安定性(信頼性)の評価を行った。その結果、導電膜の体積抵抗率(初期の体積抵抗率)は144.1×10
−5Ω・cmであり、1週間保存後の導電膜の体積抵抗率の変化率は1%、2週間保存後の導電膜の体積抵抗率の変化率は−4%であった。
【0135】
これらの結果を表1〜表4に示す。
【0136】
表1〜表4からわかるように、実施例1〜12および比較例1〜3および5で使用した銅合金粉末は、大気中において300℃に加熱した際の重量の増加率は5%以下と低く、大気中における(酸化に対する)高温安定性が良好であったが、比較例4で使用した銅粉末は、大気中において300℃に加熱した際の重量の増加率は8.8%と高く、大気中における(酸化に対する)高温安定性が良好でなかった。
【0137】
また、実施例1〜12で得られた銀被覆銅合金粉末は、圧粉体の初期の体積抵抗率が9×10
−5Ω・cm以下と低く、1週間保存後の体積抵抗率の変化率が500%以下と低かったが、比較例2〜3で得られた銀被覆銅合金粉末は、圧粉体の初期の体積抵抗率が非常に高く、1週間保存後の体積抵抗率の変化率も極めて高かった。また、比較例4および5で得られた銀被覆銅粉末は、圧粉体の初期の体積抵抗率が低いものの、1週間保存後の体積抵抗率の変化率が高かった。
【0138】
さらに、実施例1〜12で得られた銀被覆銅合金粉末を使用した導電ペーストから得られた導電膜は、初期の体積抵抗率が16×10
−5Ω・cm以下と低く、1週間保存後の体積抵抗率の変化率が−8%〜4%と低かったが、比較例1〜3および5で得られた銀被覆銅合金粉末を使用した導電ペーストから得られた導電膜は、初期の体積抵抗率が高く、1週間保存後の体積抵抗率も高かった。
【0139】
また、
図1A〜
図1Bからわかるように、実施例8で得られた銀被覆銅合金粉末は、1週間保存後でも、表面の平滑性が保たれていたが、比較例4で得られた銀被覆銅粉末は、1週間保存後に、表面の平滑性が失われており、実施例8で得られた銀被覆銅合金粉末の方が保存安定性に優れていた。
【0140】
これらの結果から、実施例1〜12で得られた銀被覆銅合金粉末は、体積抵抗率が低く且つ保存安定性(信頼性)に優れた銀被覆銅合金粉末であることがわかった。
【0141】
なお、参考例として、70質量%の銅と30質量%の錫の合金粉末を10質量%の銀で被覆した銀被覆銅合金粉末と、90質量%の銅と10質量%のアルミニウムの合金粉末を30質量%の銀で被覆した銀被覆銅合金粉末をSEM写真により観察したところ、これらの銀被覆銅合金粉末では、初期状態でも表面が滑らかでなく、表面に斑模様があることがわかった。組成分析からこれらの合金粉末に銀が存在することが確認されたので、これらの合金粉末には、粒子の表面を被覆する銀が斑に存在することがわかった。